以下、液体噴射装置の実施形態について、図を参照して説明する。液体噴射装置は、例えば、用紙などの媒体に液体の一例であるインクを噴射することによって記録(印刷)を行うインクジェット式のプリンターである。
<液体噴射装置の実施形態>
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置11は、例えばJIS規格のA0判やB0判などといった比較的大きいサイズの媒体Sに印刷を行うラージフォーマットプリンター(LFP)である。
液体噴射装置11は、筐体12と、筐体12を支持する支持脚部13と、筐体12の上に配置される液体供給装置14と、を備える。液体供給装置14は、液体を収容する液体収容体20を装着可能な1または複数(本実施形態では4つ)の収容体保持部16と、収容体保持部16の基端側に設けられた回動軸17と、を備える。収容体保持部16は、装着された液体収容体20を保持する。
筐体12において印刷済みの媒体Sが出てくる側を前側とすると、筐体12の前側には、液体噴射装置11の操作を行う操作部18が設けられている。また、筐体12の前面部分からは、印刷済みの媒体Sを支持しつつ下方に向けて案内する支持突部19が突出している。
図2に示すように、筐体12は、その長手方向(図2では左右方向)において、支持突部19など、媒体Sの搬送路が配置される中央部分と、搬送路の外側となる両端部分とに区分される。液体供給装置14は、媒体Sの搬送路が配置される長手方向の中央部分に配置することが好ましい。
収容体保持部16が複数ある場合、複数の収容体保持部16は、筐体12の長手方向に並ぶように配置するとよい。液体収容体20は、収容体保持部16が図2に示す着脱位置にあるときに、収容体保持部16に着脱される。そのため、収容体保持部16は、着脱位置において、液体収容体20の高さよりも幅及び奥行きが長くなる平置き姿勢になることが好ましい。このような平置き姿勢にすると、大型の液体収容体20であっても、高さを抑えつつ、安定して着脱操作を行うことができる。また、液体収容体20の水平移動により収容体保持部16に対する着脱が行われるようにすると、液体収容体20の自重が着脱操作に影響しにくい。
図3に示すように、液体噴射装置11は、円筒状に巻かれた使用前の媒体S(例えば、ロール紙)を回転可能に保持する給送機構25と、筐体12から出てきた印刷済みの媒体Sを巻き取る巻取機構26と、筐体12から出た媒体Sにテンションを与えるテンションバー27と、を備えてもよい。この構成によれば、円筒状に巻かれた長尺の媒体Sに連続的に記録処理を行うことができる。
筐体12内には、長手方向に延びるガイド軸31と、ガイド軸31に沿って往復移動するキャリッジ32と、キャリッジ32に保持された1または複数(本実施形態では2つ)の液体噴射部33(図4を併せて参照)と、筐体12内で媒体Sの搬送路を形成する支持部34と、筐体12内で媒体Sを搬送する搬送機構35と、が収容されている。
液体噴射部33は、複数のノズル36を有して、搬送機構35より支持部34上を搬送される媒体Sに向けて、ノズル36から液体を噴射することによって、記録処理を行う。本実施形態において、キャリッジ32の移動方向と筐体12の長手方向は一致する。また、支持部34上における媒体Sの搬送路はキャリッジ32の移動方向と交差(好ましくは直交)する。
キャリッジ32には、液体収容体20に収容された液体を液体噴射部33に向けて流動させる供給流路37が接続されている。収容体保持部16は、装着された液体収容体20に収容された液体とノズル36との高低差によって発生する水頭によって、液体を液体噴射部33に供給可能な位置に配置される。なお、「水頭」とは、液体の持つ圧力を液柱の重力方向の高さに置き換えたものであり、長さの次元(例えばm)を持つ。例えば、液体が水で水頭1mを圧力換算した場合、9.8kPaとなる。
収容体保持部16は、図3に実線で示す着脱位置と、図3に二点鎖線で示す供給位置との間で移動可能に設けられる。本実施形態では、収容体保持部16は回動軸17を中心に略90度回動することによって、供給位置と着脱位置との間で移動する。収容体保持部16が複数ある場合、複数の収容体保持部16が個別に回動する構成にしてもよいし、複数の収容体保持部16がまとめて回動する構成にしてもよい。
収容体保持部16は、回動軸17を中心として、図示しない駆動源の駆動力により回動する構成にすることもできるし、手動により回動する構成にすることもできる。収容体保持部16を回動させるための駆動源は、例えば、円筒状に巻かれた未使用の媒体Sを巻き解いたり、印刷済みの媒体Sを巻き取ったりするために設けられたモーターと兼用してもよい。収容体保持部16を手動で回動させる場合、収容体保持部16には取っ手15を設けてもよい。
なお、回動角度を90度より小さくして、液体収容体20が水平に対して斜めになる姿勢を、収容体保持部16の着脱位置または供給位置にしてもよい。いずれにしても、供給位置での液体収容体20に収容された液体とノズル36との高低差によって発生する水頭を圧力換算した値が、記録処理のために液体が噴射されるときに発生する圧力損失よりも大きいことが好ましい。
供給位置において、収容体保持部16に装着された液体収容体20は、着脱位置にあるときよりも高さが長くなる縦置き姿勢になることが好ましい。また、着脱位置においては、装着された液体収容体20の位置が供給位置より低くなることが好ましい。
液体収容体20は、例えば、可撓性を有する袋からなる液体収容部21と、液体収容部21を収容するケース22とを有するカートリッジであってもよいし、液体を直接収容するタンクであってもよい。また、液体収容体20としての可撓性を有する袋からなる液体収容部21を収容体保持部16に着脱可能なトレーにセットし、そのトレーとともに液体収容部21を収容体保持部16に装着する形態であってもよい。液体収容部21は、収容した液体の出口となる導出部23を有し、収容体保持部16への装着時に、導出部23を通じて液体を供給可能な状態になるように、供給流路37の上流端に接続される。供給位置においては、導出部23が液体収容部21の下に配置されるようにすると、水頭によって液体が液体収容部21から流出しやすい。
液体噴射装置11は、液体収容体20から液体噴射部33に向けて液体を強制的に流動させる圧送機構38と、液体噴射装置11が備える各種機構の制御を行う制御部100と、を備える。圧送機構38による液体の加圧力は、供給位置における水頭を圧力換算した値よりも大きいことが好ましい。制御部100は、所定のタイミングで圧送機構38の駆動制御を行うことによって、水頭による液体の供給と圧送機構38による液体の供給とを切り替える。
液体収容体20において、閉じた袋からなる液体収容部21に液体を収容(充填)している場合、その収容された液体には、「水頭中心」が存在する。「水頭中心」とは、内部空間が大気に開放されたいわゆる開放系の液体収容部において、収容される液体の液面に相当するものである。そして、供給位置に配置された液体収容部21に収容された液体により発生するノズル36に対する水頭(液体の持つ位置エネルギー)は、この「水頭中心」とノズル36との高低差により定義される。
「水頭中心」は、開放系の液体収容部に収容される液体の液面と同様に、液体収容部21に収容される液体の残量が少なくなると、重力方向における下方に移動する。本実施形態における未使用状態の液体収容部21には、「水頭中心」が供給位置に配置された液体収容部21の高さの半分程度となるように液体が充填されており、水頭の最大値は図3の高低差Hに相当する。
供給流路37は、収容体保持部16につながる上流側で2つの分岐流路37a,37bに分岐してもよい。この場合、分岐した一方の分岐流路37aに圧送機構38を設け、分岐した他方の分岐流路37bには、下流への液体の流動を許容するとともに上流への液体の流動を抑制する一方向弁40を設けるとよい。
供給流路37において分岐流路37a,37bより上流には、開閉弁39が設けられている。開閉弁39は、開弁状態になったときに液体の流動を許容し、閉弁状態になったときに液体の流動を規制する。開閉弁39は、制御部100の開閉制御により、開弁状態と閉弁状態とに切替可能な構成とすることが好ましい。
図4に示すように、供給流路37は、筐体12内において長手方向の端部で延設方向が反転するように引き回されて、その下流側がキャリッジ32に接続されている。
供給流路37には、液体に混入した気泡等の異物を捕捉するフィルターユニット41を設けることが好ましい。フィルターユニット41は、キャリッジ32の外側に露出させておくと、交換等のメンテナンスを容易に行うことができる。供給流路37には、例えばフィルターユニット41の下流側などに、液体の流れに方向転換や分割などの変化を起こすスタティックミキサー42(図5を併せて参照)を設けると、液体中の濃度の偏りを低減することができる。
図4における右端側をキャリッジ32の往路移動の始端とすると、搬送路の外側となる筐体12内の右側部分には、液体噴射部33のメンテナンスを行うために設けられたメンテナンス機構50が配置されている。メンテナンス機構50は、液体噴射部33を払拭する払拭部材51を有する払拭装置52と、液体噴射部33が噴射する液体を受容する液体受容部53を有するフラッシングユニット54と、液体噴射部33のクリーニングを行うクリーニング機構55と、を備える。払拭装置52、フラッシングユニット54及びクリーニング機構55は、支持部34と長手方向に並ぶように配置される。
払拭装置52は、払拭部材51を液体噴射部33と相対移動させることにより、液体噴射部33を払拭するワイピングを行う。フラッシングユニット54は、ノズル36の目詰まりの予防または解消を目的として、ノズル36から液滴を吐き捨てるフラッシングを行うときに、吐き捨てられた液体を液体受容部53で受容する。液体受容部53は、例えば、回転する無端状のベルトで構成することができる。
図5に示すように、クリーニング機構55は、液体噴射部33との間にノズル36が開口する閉空間を形成するキャップ56と、廃液を収容する廃液収容体57と、キャップ56と廃液収容体57をつなぐ吸引流路58と、吸引流路58に設けられた吸引ポンプ59と、を備える。廃液収容体57は、筐体12の外に配置してもよい(図1参照)。
クリーニング機構55は、キャップ56が閉空間を形成した状態で吸引ポンプ59が駆動することによって、閉空間に負圧を発生させてノズル36から液体を排出させる吸引クリーニングを行う。吸引クリーニングにより、液体噴射部33の中などにある気泡等の異物が液体とともに排出される。ノズル36から排出された液体は、廃液として、吸引流路58を通じて廃液収容体57に収容される。
キャリッジ32に接続された供給流路37には、液体貯留部43、脱気機構45及び圧力調整機構70を設けてもよい。供給流路37において、開閉弁39と圧力調整機構70との間に設けられた液体貯留部43は、壁面の一部が撓み変位可能な可撓性部材43aにより構成され、容積可変の空間を形成する。液体貯留部43は、ばね44の付勢力により加圧された容積可変の空間に液体を貯留し、液体の圧力変動を緩和する。
脱気機構45は、液体を一時貯留する脱気室46と、脱気室46と脱気膜47で区画された減圧室48と、減圧室48につながる減圧流路49と、ポンプ86と、を備える。脱気膜47は、気体を通過させるが液体を通過させない性質を有し、ポンプ86の駆動により減圧流路49を通じて減圧室48を減圧することにより、脱気室46に貯留された液体に混入した気泡や溶存ガスを除去する。
圧力調整機構70は、供給流路37の途中に設けられる供給室71と、供給室71と連通孔72を介して連通可能な圧力室73と、連通孔72を開閉可能な弁体74と、基端側が供給室71に収容されるとともに先端側が圧力室73に収容される受圧部材75と、を備える。弁体74は、例えば供給室71内に位置する受圧部材75の基端部分に取り付けられた弾性体からなる。供給流路37には、供給室71に流入する液体を濾過するフィルター76を設けてもよい。
圧力室73の壁面の一部は、撓み変位可能な可撓膜77により形成される。また、圧力調整機構70は、供給室71に収容される第1付勢部材78と、圧力室73に収容される第2付勢部材79を備える。第1付勢部材78は、受圧部材75を介して、連通孔72を閉塞する方向に弁体74を付勢する。
受圧部材75は、可撓膜77が圧力室73の容積を小さくする方向に撓み変位して押すことにより変位する。弁体74は、可撓膜77の圧力室73側となる内側の面にかかる圧力(内圧)が可撓膜77の圧力室73の反対側となる外側の面にかかる圧力(外圧)より低くなり、かつ、内側の面にかかる圧力と外側の面にかかる圧力との差が所定値(例えば1kPa)以上になると、閉弁状態から開弁状態となる。
なお、所定値とは、第1付勢部材78と第2付勢部材79の付勢力、可撓膜77を変位させるために必要な力、弁体74によって連通孔72を閉塞するために必要な押圧力(シール荷重)、受圧部材75の供給室71側および弁体74の表面に作用する供給室71内の圧力及び圧力室73内の圧力に応じて決まる値である。
すなわち、第1付勢部材78と第2付勢部材79の付勢力が大きいほど、所定値も大きくなる。また、この第1付勢部材78と第2付勢部材79の付勢力は、圧力室73内の圧力がノズル36における気液界面にメニスカスを形成可能な範囲の負圧状態(例えば可撓膜77の外側の面にかかる圧力が大気圧の場合、−1kPa)となるように設定される。
連通孔72が開放されて供給室71から圧力室73に液体が流入すると、圧力室73の内圧が上昇する。そして、圧力室73の内圧が上述の所定値になると、弁体74が連通孔72を閉塞する。
圧力室73の内圧は、液体噴射部33からの液体の排出に伴って低下する。そして、弁体74は、圧力室73の外圧(大気圧)と圧力室73の内圧との差圧に応じて自律的に連通孔72を開閉する。そのため、圧力調整機構70は差圧弁(差圧弁の中でも特に減圧弁)に分類される。
圧力調整機構70には、強制的に連通孔72を開いて液体を液体噴射部33に供給する開弁機構81を付加してもよい。開弁機構81は、例えば、可撓膜77により圧力室73と区画された収容室82に収容された加圧袋83と、加圧袋83内に気体を流入させる加圧流路84とを備える。そして、加圧流路84を通じて流入する気体により加圧袋83がふくらみ、可撓膜77を圧力室73の容積を小さくする方向に撓み変位させることによって、強制的に連通孔72を開く。開弁機構81が強制的に連通孔72を開くことによって、液体噴射部33から加圧した液体を流出させる加圧クリーニングを行うことができる。
この場合、加圧流路84は減圧流路49に接続するとともに、ポンプ86を加圧と減圧の両方の駆動が可能な構成にしてもよい。そして、減圧流路49に一方向弁85を設けて、ポンプ86が加圧駆動することによって加圧袋83に気体を送出し、ポンプ86が減圧駆動することによって減圧室48を減圧するとよい。
液体噴射部33は、ノズル36に連通する液室91と、液室91と振動板92により区画された収容部93と、収容部93に収容されたアクチュエーター94と、圧力室73から流出した液体を一時貯留して複数の液室91に液体を供給する共通液室95と、を備える。圧力室73と共通液室95の間には、液体を濾過するフィルター96を配置してもよい。
アクチュエーター94は、例えば、駆動電圧が印加された場合に収縮する圧電素子である。アクチュエーター94の収縮に伴って振動板92を変形させた後、駆動電圧の印加を解除すると、容積が変化した液室91内の液体がノズル36から液滴として噴射される。
このとき、ノズル36に気泡が混入すると、液滴が適切に噴射されず、噴射不良となる。また、ノズル36に固形物などの異物が詰まった場合や、乾燥等により液体の粘度が上昇した場合にも、噴射不良が生じる。こうした噴射不良を予防するため、供給流路37にはフィルターユニット41やフィルター76,96を設けて、気泡等の異物を除去することが好ましい。
共通液室95には、例えばフィルターユニット41と開閉弁39の間の供給流路37に液体を返送する返送流路97を接続し、共通液室95から返送流路97に向けて液体を流動させる循環ポンプ98を返送流路97に配置してもよい。この構成によれば、循環ポンプ98の駆動により、返送流路97と供給流路37の間で液体を循環させることによって、供給流路37にあるフィルターユニット41及びフィルター76,96で気泡等の異物を補足することができる。また、液体が顔料等の沈降成分を含んでいる場合には、液体を循環させたりスタティックミキサー42を通過させたりすることによって、液体を攪拌して濃度を均一にすることができる。
次に、圧送機構38の構成について例示する。
圧送機構38は、例えばダイアフラムポンプであり、供給流路37を構成する分岐流路37aの途中に設けられるポンプ室61と、ポンプ室61の壁面の一部を構成する変位部材62と、ポンプ室61の外側に配置されるばね63と、変位機構64と、を備える。変位部材62は、ポンプ室61の容積を増減する方向に変位する。ばね63は、ポンプ室61の容積を減少させる方向に変位部材62を付勢する。ただし、ばね63の付勢力によりポンプ室61の容積が最も小さくなった状態でも液体が流動するように、ポンプ室61の壁面の一部に連通溝61aを設けておくことが好ましい。
変位機構64は、例えば、ポンプ室61と変位部材62により区画された気体室65と、通気路66を通じて気体室65を吸引する吸気ポンプ67とを有し、吸気ポンプ67の駆動により、ばね63の付勢力に抗して、変位部材62をポンプ室61の容積を増大させる方向に変位させる。なお、吸気ポンプ67が駆動を停止すると、通気路66を通じて気体室65に気体が流入するとともに、ばね63の付勢力により変位部材62がポンプ室61の容積を減少させる方向に変位するように構成するとよい。
また、圧送機構38は、収容体保持部16とポンプ室61の間に設けられる吸引弁68と、ポンプ室61と液体噴射部33の間に設けられる吐出弁69と、を備える。吸引弁68は、ポンプ室61に流入する液体の流れを許容するとともにポンプ室61から流出する液体の流れを規制する一方向弁である。吐出弁69は、ポンプ室61から流出する液体の流れを許容するとともにポンプ室61に流入する液体の流れを規制する一方向弁である。そして、吸気ポンプ67が駆動することによってポンプ室61に液体が流入する吸引駆動が行われ、吸気ポンプ67が駆動を停止することによってばね63の付勢力によりポンプ室61から液体が流出する吐出駆動が行われる。
次に、液体噴射装置11の作用について、制御部100が行う制御の内容とともに説明する。
液体収容体20が新しいものに交換された直後など、液体の残量が多いときには、制御部100は圧送機構38を駆動させず、液体収容体20に収容された液体のノズル36に対する水頭によって、液体を供給する。
圧送機構38のポンプ室61に連通溝61aを設けたり、圧送機構38が配置された分岐流路37aとは別ルートの分岐流路37bを設けたりしておくと、ポンプ室61の容積が最も小さくなった状態でも液体収容体20と液体噴射部33との間の供給流路37の連通状態を維持することができ、水頭により液体を供給することができる。
液体が液体収容部21に収容されている場合、液体の残量が少なくなると、袋である液体収容部21の反力により液体が流出しにくくなるため、制御部100が圧送機構38による液体の供給に切り替えるべく、圧送機構38を駆動させることが好ましい。この構成によれば、圧送機構38の駆動によって、液体収容部21内の液体を吸引して、液体噴射部33の方に加圧供給することができる。
<チューブポンプの第1実施形態>
続いて、チューブポンプの第1実施形態について、図を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態のチューブポンプ110は、中空部111aが流路を形成するチューブ111の途中に設けられるチューブポンプであって、例えば図5に示す液体噴射装置11のポンプ86または吸引ポンプ59として使用することができる。
チューブポンプ110は、円筒状の内周面112cを有するフレーム112を備え、内周面112cに沿うように、チューブ111を環状に湾曲させた状態で収容する。また、チューブポンプ110は、回転軸114を有してチューブ111の環111cの内周側に配置される回転体120と、回転体120に回転自在に支持される押圧ローラー113F,113Sと、を備える。
フレーム112は、チューブ111を挿通する2つの挿通口112a,112bを有する。チューブ111は、挿通口112a,112bからフレーム112内に入って内周面112cに沿って湾曲し始めた部分が内周面112cの軸方向に重なって交差している。そのため、平面視においてチューブ111の環111cにとぎれる部分(リークポイント)はない。
回転体120は、駆動源109の動力により、チューブ111の環111cの内周側に位置する回転軸114を中心として、第1回転方向(図6に矢印で示す反時計方向)と第1回転方向の反対方向である第2回転方向(図6における時計方向)とに自転する。押圧ローラー113F,113Sは、フレーム112内において、自転する回転体120に係止されることによってチューブ111を押圧しながら公転する。これにより、チューブ111内の流体が回転体120の回転方向に圧送される。
回転体120は、第1回転方向への自転時に第1押圧ローラー113Fを係止する第1係止部121と、第2回転方向への自転時に第2押圧ローラー113Sを係止する第2係止部122と、を有する。また、回転体120は、第1係止部121から第1回転方向に向けて回転軸114に近づくように渦巻き状に湾曲した第1案内曲部123と、第2係止部122から第2回転方向に向けて回転軸114に近づくように渦巻き状に湾曲した第2案内曲部124と、を有する。押圧ローラー113F,113Sは、回転軸114と軸方向が平行をなすように配置され、その両端側には回転体120と係合する係合軸部113aが設けられる。
本実施形態の回転体120は、第1係止部121及び第1案内曲部123が形成された溝状の第1案内部125と、第2係止部122及び第2案内曲部124が形成された溝状の第2案内部126とを有する。第1案内部125と第2案内部126は、図6に示す平面視において、回転軸114の軸心を通る直線を対称軸として線対称に配置することが好ましい。
本実施形態のチューブポンプ110は、押圧ローラーとして、第1案内部125に係合する第1押圧ローラー113Fと、第2案内部126に係合する第2押圧ローラー113Sと、を備える。そして、第1押圧ローラー113Fと第2押圧ローラー113Sは、フレーム112内で環状をなすチューブ111の環111cの異なる領域を押圧する。
図7に示すように、回転体120は、回転軸114と、回転軸114の一端側に配置される円盤状の大径プレート115と、回転軸114の他端側に配置される小径プレート116と、を有する。大径プレート115には、第1案内部125と第2案内部126が貫通孔として形成され、小径プレート116には第1案内部125と第2案内部126が外縁を切り欠いた切り欠きとして形成されている。
押圧ローラー113F,113Sは、軸方向の両端に突出する係合軸部113aが大径プレート115と小径プレート116の案内部125,126にそれぞれ係合することによって、回転体120の自転に伴って回転軸114の周りを公転する。なお、押圧ローラー113F,113Sがそれぞれ係止部121,122に係止されたときの位置を押圧位置と称し、押圧ローラー113F,113Sが案内部125,126の係止部121,122とは反対側の端部に係止されたときの位置を解除位置と称する。また、案内部125,126の係止部121,122とは反対側の端部も、それぞれ案内曲部123,124の一部とする。そして、押圧ローラー113F,113Sは必ずしも解除位置まで到達しなくても、それぞれ係止部121,122から離れることによってチューブ111の押圧を解除する。
次に、チューブポンプ110の動作について説明する。
図6において、フレーム112の外にあるチューブ111の右側(上流)から左側(下流)に流体を流動させる場合、駆動源109の動力により、回転体120を第1回転方向(図6に矢印で示す反時計方向)に自転させる。
すると、図6に示すように、第1押圧ローラー113Fが第1案内部125の第1係止部121に係止される押圧位置に配置され、第2押圧ローラー113Sが第2案内部126の解除位置に配置される。その後、第1押圧ローラー113Fはチューブ111を押圧した状態で、また、第2押圧ローラー113Sはチューブ111を押圧しない状態で、フレーム112の内周面112cに沿って公転する。これにより、チューブ111内の流体が下流となる第1回転方向に押し出されると同時に、押圧が解除された部分のチューブ111が広がって上流から流体を吸引する。
また、この状態から、流体の流動方向を反転させる場合、回転体120の自転方向を第1回転方向から第2回転方向(図6における時計方向)に反転させる。すると、第1係止部121に係止されていた第1押圧ローラー113Fが第1案内曲部123に案内されながら解除位置に移動する。また、第2案内部126の解除位置にあった第2押圧ローラー113Sが第2案内曲部124に案内されながら押圧位置に移動し、第2係止部122に係止される。こうした反転の過程では、一方の押圧ローラー113Fがチューブ111の押圧が解除して、2つの押圧ローラー113F,113Sが同じタイミングで案内曲部123,124に係合してチューブ111内を大気圧に戻した後、他方の押圧ローラー113Sがチューブ111の押圧を開始する。
その後、第1押圧ローラー113Fはチューブ111を押圧しない状態で、また、第2押圧ローラー113Sはチューブ111を押圧した状態で、フレーム112の内周面112cに沿って公転する。これにより、チューブ111内の流体が第2回転方向に押し出されると同時に、押圧が解除された部分が広がって流体を吸引する。
流体の圧送を終了するときには、回転体120の回転方向を反転させ、2つの押圧ローラー113F,113Sがそれぞれ案内曲部123,124に係合する位置で回転体120の自転を停止する。これにより、チューブ111内を大気圧に戻した状態で、チューブポンプ110の駆動が停止される。このように、押圧ローラー113による押圧を解除してチューブ111内を大気圧に戻すことを、ポンプレリースという。
案内部125,126においては、回転軸114を中心とした案内曲部123,124の形状及び長さを一致させるとよい。そうすると、回転体120が反転したときに、第1押圧ローラー113Fが第1案内曲部123に係合するのと同じタイミングで第2押圧ローラー113Sが第2案内曲部124に係合する。
次に、チューブポンプ110の作用について説明する。
チューブポンプ110では、回転体120が何れの回転方向に自転する場合にも、押圧ローラー113F,113Sのうちの一方がチューブ111を押圧した状態を保ったままで連続回転することができるので、流体を継続して圧送することができる。
ここで、例えば上流から下流に流体を圧送しているチューブ111内の圧力は、第1押圧ローラー113Fが押圧している箇所より上流は負圧(圧送を開始するときの初期圧力より減圧された状態)になり、その箇所より下流は正圧(圧送を開始するときの初期圧力より加圧された状態)になっている。そのため、案内部125,126がそれぞれ案内曲部123,124を備えず、単に押圧ローラー113F,113Sの公転方向を反転させて逆方向への圧送を開始した場合には、反転開始時の初期圧力の値がばらついてしまう、という課題がある。そして、この課題を解決するには、圧力センサー等でチューブ111内の圧力を測定して、目的の圧力になるまで回転体120を自転させる必要がある。
その点、本実施形態のチューブポンプ110では、押圧ローラー113F,113Sのうちの一方がチューブ111の押圧が解除してチューブ111内の加圧状態及び減圧状態を解消した後に、押圧ローラー113F,113Sのうちの他方がチューブ111の押圧を開始する。
すなわち、回転体120の回転方向が反転したときに、押圧ローラー113F,113Sが第1案内曲部123及び第2案内曲部124に係合して、チューブ111の押圧を解除するので、チューブ111の端部において中空部111aが大気に開放されている場合、反転の過程でチューブ111内の圧力が大気圧にリセットされる。そのため、圧力センサー等を設けることなく、反転により別方向への圧送を開始するときの初期圧力を大気圧として、回転体120の回転数または回転角度に基づいてチューブポンプ110の駆動を制御することができる。
また、チューブポンプ110の駆動を停止するときには、2つの押圧ローラー113F,113Sをそれぞれ案内曲部123,124に係合させておくことによって、チューブ111の押圧を解除できる。そのため、チューブポンプ110の上流と下流とでチューブ111に流体を流動させることができる。また、押圧によりチューブ111にかかる負荷を低減することができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)チューブポンプ110は、2つの案内部125,126を有する1つの回転体120と、案内部125,126にそれぞれ係合する押圧ローラー113F,113Sを備えるので、第1押圧ローラー113Fの押圧により流体を第1回転方向に圧送し、第2押圧ローラー113Sの押圧により流体を第2回転方向に圧送することができる。
<チューブポンプの第2実施形態>
次に、チューブポンプの第2実施形態について、図を参照して説明する。
図8に示すように、第2実施形態のチューブポンプ110Sは、第1実施形態と同じく、中空部111aが流路を形成するチューブ111の途中に設けられるチューブポンプであるので、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
チューブポンプ110Sが備える回転体120は、第1係止部121と第2係止部122を両端に有し、第1係止部121と第2係止部122の間に第1案内曲部123と第2案内曲部124が連続して配置された一の案内部127を有する。そして、案内部127には一の押圧ローラー113が係合し、回転体120の回転方向が反転したときに、押圧ローラー113が第1案内曲部123及び第2案内曲部124を通過して、第1係止部121と第2係止部122の間を移動する。
例えば、図8において、フレーム112の外にあるチューブ111の右側(上流)から左側(下流)に流体を流動させる場合、駆動源109の動力により、回転体120を第1回転方向(図8に矢印で示す反時計方向)に自転させる。
すると、図8に示すように、押圧ローラー113は、案内部127の第1係止部121に係止される押圧位置に配置された後、チューブ111を押圧した状態でフレーム112の内周面112cに沿って公転する。これにより、チューブ111内の流体が下流となる第1回転方向に圧送される。
また、この状態から、回転体120の自転方向を第1回転方向から第2回転方向(図8における時計方向)に反転させると、第1係止部121に係止されていた押圧ローラー113の係合軸部113aが第1案内曲部123に案内されながら解除位置(図8に二点鎖線で示す)に移動する。これにより、押圧ローラー113によるチューブ111の押圧が解除され、チューブ111の端部において中空部111aが大気に開放されている場合、チューブ111内が大気圧に戻る。
続いて、解除位置にあった押圧ローラー113が第2案内曲部124に案内されながら第2係止部122に係止される押圧位置に移動すると、押圧ローラー113がチューブ111を押圧した状態でフレーム112の内周面112cに沿って公転する。これにより、チューブ111内の流体が第2回転方向に圧送される。
流体の圧送を終了するときには、回転体120の自転方向を反転させ、押圧ローラー113が第1案内曲部123または第2案内曲部124に係合する位置で回転体120の自転を停止する。これにより、押圧ローラー113による環111cの押圧を解除してチューブ111内を大気圧にリセットした状態で、チューブポンプ110の駆動が停止される。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(2)一の押圧ローラー113と一の案内部127を設ければよいため、構成を簡素化することができる。
<チューブポンプの第3実施形態>
次に、チューブポンプの第3実施形態について、図を参照して説明する。
図9に示すように、第3実施形態のチューブポンプ110Tは、第1実施形態と同じく、中空部111aが流路を形成するチューブ111の途中に設けられるチューブポンプであるので、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
本実施形態のチューブポンプ110Tは、軸方向(軸中心を図9に一点鎖線で示す)に並ぶ第1ポンプ108Fと第2ポンプ108Sを含む。チューブポンプ110Tは、フレーム112として、第1ポンプ108Fを構成する第1フレーム112Fと、第2ポンプ108Sを構成する第2フレーム112Sと、を備える。また、チューブポンプ110Tは、駆動源109の動力を第1ポンプ108Fと第2ポンプ108Sに伝達する動力伝達機構131を備える。
例えばチューブポンプ110Tが図5に示すポンプ86である場合、図9に示すチューブ111の第1フレーム112Fから露出した露出部111fは、加圧した気体を加圧袋83に送る加圧流路84及び減圧室48を減圧するための減圧流路49と連通するように加圧流路84と減圧流路49とが分岐する分岐部に接続される。チューブポンプ110Tの駆動に伴ってチューブ111の端部111eから加圧された気体が排出される場合、端部111eを駆動源109等に向けて配置すると、排気を駆動源109の冷却に用いることができる。冷却する対象は駆動源109に限らず、他の構成部材を駆動させるモーターまたは電源回路等であってもよい。
チューブ111は、露出部111fにつながる部分が第1ポンプ108Fの挿通口112aを通じて第1フレーム112F内に入り、第1フレーム112Fの挿通口112bから出たチューブ111は第2ポンプ108Sの挿通口112aを通じて第2フレーム112S内に入る。そして、第2フレーム112Sの挿通口112bから出たチューブ111の端が端部111eである。
図10に示すように、チューブポンプ110Tは、回転体120として、第1案内部125を有して第1フレーム112Fに収容される第1回転体120Fと、第2案内部126を有して第2フレーム112Sに収容される第2回転体120Sと、を備える。案内部125,126には、それぞれ押圧ローラー113F,113Sが係合する。また、チューブポンプ110Tは、第1回転体120Fとは別体の第1回転軸114Fと、第2回転体120Sとは別体の第2回転軸114Sと、を備える。
第1回転体120Fと第2回転体120Sとは、一の駆動源109(図9参照)の動力により回転する回転軸114F,114Sの軸方向に並ぶように配置される。チューブ111は、回転体120F,120Sをそれぞれ囲むフレーム112F,112S内に収容される部分がそれぞれ異なる環111cを形成する。そして、押圧ローラー113F,113Sは、それぞれチューブ111の異なる環111cを形成する領域を押圧する。
例えば、回転体120F,120Sが図10に矢印で示す第1回転方向に自転する場合、第1押圧ローラー113Fはチューブ111を押圧した状態で、また、第2押圧ローラー113Sはチューブ111を押圧しない状態で公転し、チューブ111の端部111eから露出部111fの方に向けて流体を圧送する。また、回転体120F,120Sが第2回転方向に自転する場合、第1押圧ローラー113Fはチューブ111を押圧しない状態で、また、第2押圧ローラー113Sはチューブ111を押圧した状態で公転し、チューブ111の露出部111fから端部111eの方に向けて流体を圧送する。
駆動源109(図9参照)の動力は、第1回転軸114Fを介して第1回転体120Fに伝達され、さらに、第1回転体120Fから第2回転軸114Sを介して第2回転体120Sに伝達される。ここで、動力伝達機構131は、第1回転体120Fの回転を遅延させて第2回転軸114S及び第2回転体120Sに伝える回転遅延部132を有することが好ましい。
図11に示すように、回転遅延部132は、例えば、係合突部133aを有する第1回転部材133と、係合突部133aが係合可能なカム溝134aを有する第2回転部材134と、によって構成される。カム溝134aは、第2回転軸114Sの軸心を中心とする円周に沿って延びる円弧状をなす。また、第2回転部材134は、カム溝134aの始端と終端を形成する係止突部134bを有する。
第1回転部材133は第1回転軸114Fと一体に回転するように組み付けられ、第2回転部材134は第2回転軸114Sと一体に回転するように組み付けられる。また、第2回転部材134のカム溝134aに第1回転部材133の係合突部133aを挿入する態様で、第1回転部材133と第2回転部材134を組み合わせる。
この構成において、第1回転軸114Fが図11に矢印で示す第1回転方向に回転すると、第1回転体120Fが第1回転方向に自転し、第1押圧ローラー113Fがチューブ111を押圧する。また、第1回転軸114Fとともに第1回転部材133が回転すると、係合突部133aがカム溝134aに沿って回転する。そして、係合突部133aが係止突部134bにぶつかると、係合突部133aに押されて第2回転部材134が自転を開始する。すると、第2回転部材134とともに第2回転軸114S及び第2回転体120Sが第1回転方向に自転する。このように、第1回転体120Fの回転は、係合突部133aがカム溝134aに沿って回転する回転角度の分、遅延して第2回転体120Sに伝えられる。
この状態から第1回転軸114Fの回転方向が反転すると、第1回転体120Fが第2回転方向に自転し、第1押圧ローラー113Fが押圧位置から解除位置に移動して、チューブ111の押圧を解除する。この間、第1回転軸114Fとともに第1回転部材133が回転するが、係合突部133aがカム溝134aに沿って第2回転方向に回転する間、第2回転部材134は第1回転部材133に押されないので、第2回転軸114S及び第2回転体120Sは回転しない。そのため、第1押圧ローラー113Fが押圧位置から離れて第1案内曲部123に移動すると、チューブ111内は大気圧にリセットされる。
そして、第2回転方向に回転する係合突部133aが係止突部134bにぶつかると、第2回転部材134とともに第2回転軸114S及び第2回転体120Sが第2回転方向への自転を開始する。これにより、第2押圧ローラー113Sが第2案内曲部124から第2係止部122に移動して、チューブ111を押圧しながら公転する。このように、第1回転体120Fが反転したときにも、その回転は、係合突部133aがカム溝134aに沿って回転する回転角度の分、遅延して第2回転体120Sに伝えられる。
回転体120F,120Sと回転軸114F,114Sの間には、それぞれ一又は複数(本実施形態では2つずつ)の付勢部材129を介装し、回転体120F,120Sを介して押圧ローラー113F,113Sがチューブ111に向けて付勢されるようにすることが好ましい。付勢部材129として、例えばコイルばねまたは板ばねなどのばねを使用することができる。付勢部材129がコイルバネの場合、回転軸114F,114Sには付勢部材129の基端部を収容する係止凹部114aを設け、回転体120F,120Sには付勢部材129の先端部を収容する係止凹部120aを設けるとよい。
また、回転軸114F,114Sには軸中心から外径を広げるように突出した突出部114bを設け、この突出部114bに係止凹部114aを形成するとよい。また、回転体120F,120Sにおいて、係止凹部120aの内部空間が軸中心を含むように係止凹部120aの深さを設定するとよい。
このようにすると、図12に示すように、軸中心と重なるように付勢部材129を配置することができる。これにより、付勢部材129を軸中心と押圧ローラー113F,113Sの間に配置する場合よりも、フレーム112F,112Sの直径を小さくすることができる。
また、例えば図12に示す第2ポンプ108Sでは、第2押圧ローラー113Sが第2案内曲部124と第2係止部122の間で移動するときに付勢部材129の付勢力が強く作用するように、付勢部材129による付勢方向(図12では矢印で示す)を設定することが好ましい。同様に、第1ポンプ108Fでは、第1押圧ローラー113Fが第1案内曲部123と第1係止部121の間で移動するときに付勢部材129の付勢力が作用するように、付勢部材129による付勢方向を設定することが好ましい。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3)押圧ローラー113F,113Sは回転体120F,120Sを介して付勢部材129に付勢されているので、押圧ローラー113F,113Sがそれぞれ案内曲部123,124と係止部121,122の間で移動するときに、精度よくチューブ111の押圧を開始したり押圧を解除したりすることができる。
(4)第1押圧ローラー113F及び第1回転体120Fと、第2押圧ローラー113S及び第2回転体120Sとは、それぞれ異なるフレーム112F,112Sに収容されているので、軸中心と重なるように付勢部材129を配置することができる。これに対して、一のフレーム112に収容した2つの押圧ローラー113F,113Sをそれぞれ付勢部材129で付勢する場合、軸中心と押圧ローラー113F,113Sの間に付勢部材129を配置することになるため、付勢部材129の長さの分、フレーム112F,112Sの直径が拡大する。したがって、本実施形態によれば、付勢部材129の配置に伴うフレーム112の大径化を抑制することができる。
(5)フレーム112F,112Sの直径が小さくなるにつれて、案内曲部123,124の長さが短くなるため、押圧ローラー113F,113Sを同じタイミングでそれぞれ案内曲部123,124に係合させてチューブ111の押圧を解除することが難しくなる。その点、回転遅延部132により第1回転体120Fの回転を遅延させて第2回転体120Sに伝えることにより、その遅延させた時間の分、押圧ローラー113F,113Sのうちの一方が押圧を解除してから、押圧ローラー113F,113Sのうちの他方が押圧位置に移動するまでの時間を長くすることができる。したがって、案内曲部123,124が短い小径のフレーム112F,112Sであっても、押圧ローラー113F,113Sが同じタイミングで押圧を解除する構成を実現しやすい。また、回転を反転させてから次の圧送を開始するタイミングをカム溝134aの長さにより調整することができる。
上記実施形態は以下に示す変更例のように変更してもよい。また、上記実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
・図13に示す変更例のように、圧送機構38は、供給流路37を構成する撓み変位可能なチューブ101の途中に設けられたチューブポンプであってもよい。この場合、圧送機構38は、チューブ101を押圧する押圧ローラー102と、押圧ローラー102を移動させる移動機構103と、を有して、チューブ101を押圧した押圧ローラー102を移動機構103が移動させることで液体を圧送する。
移動機構103は、例えば、チューブ101を収容する円筒状のフレーム104と、押圧ローラー102を係止する案内溝105を有してフレーム104内に収容される回転体106と、図示しない駆動源の駆動力により回転する回転軸107と、を備える。そして、回転軸107とともに回転体106が自転することによって、押圧ローラー102を公転させる。なお、チューブ101の中空部が供給流路37を形成し、図13における右側が供給流路37の上流側であり、図13における左側が供給流路37の下流側である。
案内溝105は、回転中心からの距離を変化させておき、案内溝105の回転中心から遠い方の第1端に配置される係止部105aに押圧ローラー102が係止されるとチューブ101を押圧し、案内溝105の回転中心に近い方の第2端105bに押圧ローラー102が近づくと、チューブ101の押圧が解除されるようにするとよい。この場合、回転体106が図13に矢印で示す第1回転方向に自転すると、係止部105aに係止された押圧ローラー102がチューブ101を押圧しながら移動するので、チューブ101内の液体が圧送される。また、回転体106が第1回転方向の反対方向である第2回転方向に回転すると、押圧ローラー102が案内溝105の第2端105bの方に移動し、チューブ101の押圧が解除されるので、液体が圧送されなくなる。
この場合、制御部100は、チューブポンプである圧送機構38による液体の供給を水頭による液体の供給に切り替える際に、移動機構103を制御して、押圧ローラー102によるチューブ101の押圧を解除させるとよい。この構成によれば、チューブポンプによる液体の圧送が行われていない場合でも、液体収容体20と液体噴射部33との間の供給流路37の連通状態を維持することができ、水頭により液体を供給することができる。
なお、上記実施形態のチューブポンプ110,110S,110Tは、流体の流動方向を反転可能なのに対して、図13に示す圧送機構38としてのチューブポンプは、一方向のみに流体を流動させるものである。そして、図13に示すチューブポンプでは、回転方向を反転させると、チューブ101の押圧が解除されて圧送が終了する。これに対して、チューブポンプ110,110S,110Tでは、回転方向を反転させると、チューブ111の押圧が解除された後に、反対方向への流体の圧送が開始される。
・圧送機構38は、収容体保持部16に装着された液体収容体20(例えば、ケース22と液体収容部21の間の空間)に加圧した気体を送出することにより、液体収容体20内の液体を加圧して、供給流路37に流出させるようにしてもよい。
・液体噴射装置11は、水頭による液体供給を行わず、常時、圧送機構38の駆動により液体を供給してもよい。
・図14に示す変更例のように、収容体保持部16が移動しない構成にしてもよい。また、収容体保持部16をキャリッジ32上に配置してもよい。
・図14に示す変更例のように、液体噴射装置11は、支持脚部13を備えなくてもよい。また、液体噴射装置11は、給送機構25、巻取機構26及びテンションバー27に代えて、所定のサイズに裁断された単票紙である媒体Sを収容するカセット28を着脱可能に装着するようにしてもよい。
・脱気機構45の脱気室46を、圧力調整機構70の圧力室73と液体噴射部33のフィルター96との間を接続する供給流路37に設けてもよい。あるいは、脱気機構45の脱気室46を、供給流路37のキャリッジ32上に位置しない領域に設けてもよい。
・液体噴射部33が噴射する液体はインクに限らず、例えば機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体などであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
・媒体Sは用紙に限らず、プラスチックフィルムや薄い板材などでもよいし、捺染装置などに用いられる布帛であってもよい。また、媒体SはTシャツなど、任意の形状の衣類等であってもよいし、食器または文具のような任意の形状の立体物であってもよい。
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
[思想1]
中空部が流路を形成するチューブの途中に設けられるチューブポンプであって、
前記チューブを環状に湾曲させた状態で収容するフレームと、
駆動源の動力により、前記チューブの環の内周側に位置する回転軸を中心として、第1回転方向と前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向とに自転する回転体と、
自転する前記回転体に係止されることによって前記チューブを押圧しながら公転する押圧ローラーと、
を備え、
前記回転体は、前記第1回転方向への自転時に前記押圧ローラーを係止する第1係止部と、前記第2回転方向への自転時に前記押圧ローラーを係止する第2係止部と、前記第1係止部から前記回転軸に近づくように渦巻き状に湾曲した第1案内曲部と、前記第2係止部から前記回転軸に近づくように渦巻き状に湾曲した第2案内曲部と、を有し、
前記押圧ローラーは、前記回転体の回転方向が反転したときに、前記第1案内曲部及び前記第2案内曲部に係合して、前記チューブの押圧を解除することを特徴とするチューブポンプ。
上記[思想1]によれば、回転体が第1回転方向または第2回転方向に自転している間、押圧ローラーは回転体に係止されてチューブを押圧しながら公転するので、回転体の回転に伴って流体を継続して圧送することができる。また、回転体の回転方向が反転したときに押圧ローラーが第1案内曲部及び第2案内曲部に係合するので、圧送方向を反転するタイミングでチューブの押圧を解除することができる。
[思想2]
前記回転体は、前記第1係止部と前記第2係止部を両端に有し、前記第1係止部と前記第2係止部の間に前記第1案内曲部と前記第2案内曲部が連続して配置された案内部を有し、
前記押圧ローラーは、前記回転体の回転方向が反転したときに、前記第1案内曲部及び前記第2案内曲部を通過して、前記第1係止部と前記第2係止部の間を移動することを特徴とする[思想1]に記載のチューブポンプ。
上記[思想2]によれば、案内部には、両端にある第1係止部と第2係止部の間に第1案内曲部と第2案内曲部が連続して配置されているので、回転体が何れの回転方向に反転したときにも、押圧ローラーによるチューブの押圧を解除することができる。
[思想3]
前記回転体は、前記第1係止部及び前記第1案内曲部が形成された第1案内部と、前記第2係止部及び前記第2案内曲部が形成された第2案内部とを有し、
前記押圧ローラーとして、前記第1案内部に係合する第1押圧ローラーと、前記第2案内部に係合する第2押圧ローラーと、を備え、
前記第1押圧ローラーが前記第1案内曲部に係合するタイミングで前記第2押圧ローラーが前記第2案内曲部に係合することを特徴とする[思想1]に記載のチューブポンプ。
上記[思想3]によれば、2つの案内部にそれぞれ異なる押圧ローラーが係止されるが、それら押圧ローラーは同じタイミングで案内曲部に係合するので、回転体が何れの回転方向から反転したときにも、押圧ローラーによるチューブの押圧を解除することができる。
[思想4]
前記第1押圧ローラーと前記第2押圧ローラーは、前記チューブの異なる領域を押圧することを特徴とする[思想3]に記載のチューブポンプ。
上記[思想4]によれば、チューブの異なる領域を押圧する第1押圧ローラーと第2押圧ローラーが、同じタイミングで第1案内曲部と第2案内曲部に係合することによって、チューブ内を大気圧に戻すことができる。
[思想5]
前記回転体として、前記第1案内部を有する第1回転体と、前記第2案内部を有する第2回転体と、を備え、
前記第1回転体と前記第2回転体とは、一の前記駆動源の動力により回転する前記回転軸の軸方向に並ぶように配置されることを特徴とする[思想4]に記載のチューブポンプ。
上記[思想5]によれば、2つの回転体がそれぞれ第1案内部と第2案内部を有するので、1つの回転体に2つの案内部を設ける場合よりも、回転体を小径化することができる。
[思想6]
前記駆動源の動力を前記回転体に伝達する動力伝達機構を備え、
前記動力伝達機構は、前記第1回転体の回転を遅延させて前記第2回転体に伝える回転遅延部を有することを特徴とする[思想5]に記載のチューブポンプ。
上記[思想6]によれば、第1回転体の回転を遅延させて第2回転体に伝えることによって、第1押圧ローラーが第1案内曲部に係合したあと、第2押圧ローラーが第2案内曲部に係合するまで、第1押圧ローラーを第1案内曲部に係合させておくことができる。これにより、2つの押圧ローラーをそれぞれ異なる案内曲部に同じタイミングで係合させやすくなる。
[思想7]
ノズルを有して、前記ノズルから液体を噴射する液体噴射部と、
中空部が流路を形成するチューブと、
前記チューブの途中に設けられるチューブポンプと、
を備え、
前記チューブポンプは、
前記チューブを環状に湾曲させた状態で収容するフレームと、
駆動源の動力により、前記チューブの環の内周側に位置する回転軸を中心として、第1回転方向と前記第1回転方向の反対方向である第2回転方向とに自転する回転体と、
自転する前記回転体に係止されることによって前記チューブを押圧しながら公転する押圧ローラーと、
を備え、
前記回転体は、前記第1回転方向への自転時に前記押圧ローラーを係止する第1係止部と、前記第2回転方向への自転時に前記押圧ローラーを係止する第2係止部と、前記第1係止部から前記回転軸に近づくように渦巻き状に湾曲した第1案内曲部と、前記第2係止部から前記回転軸に近づくように渦巻き状に湾曲した第2案内曲部と、を有し、
前記押圧ローラーは、前記回転体の回転方向が反転したときに、前記第1案内曲部及び前記第2案内曲部に係合して、前記チューブの押圧を解除することを特徴とする液体噴射装置。
上記[思想7]によれば、上記[思想1]と同様の作用効果を得ることができる。