JP6750244B2 - プロピレン系樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

プロピレン系樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Description

本発明は、特に電子機器部品搬送部材用に適したプロピレン系樹脂組成物及びその成形品に関し、詳しくは、搬送の際にも性能低下を起こさずにクリーン性に優れ、かつ成形品の防塵性及び透明性に優れる電子機器部品搬送用成形品を与えるプロピレン系樹脂組成物に関する。
プロピレン系樹脂は、耐熱性、成形性、透明性、耐薬品性に優れるという特徴により、各種工業材料、各種容器、日用品、フィルム及び繊維など様々な用途に幅広く使用されている。
電子機器には、シリコンウエハー、ハードディスク、ディスク基板、ICチップ、光記憶用ディスク、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスク磁気ヘッド素子、レチクル、CCD素子等々の各種部品が使用されている。電子機器の組み立てにおいては、これら部品を組み立てラインに供するため、これら部品を運搬、移送、保管する必要性があり、そのための搬送用ケースが用いられる。従来、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の搬送用ケースがこの目的のため用いられてきた。
近年、電子機器部品は、その微細化、高性能化、高容量化にともない、製造環境、保管、移動中に発生、接触する汚染物質が、電子機器製品の歩留まり、品質、信頼性に大きな影響を及ぼすようになってきた。樹脂が含有する低分子量成分や残留物質に由来する揮発成分は、加工時の発煙、異臭等の発生原因になるばかりか、加工後でも臭気、色相に悪影響を与えることがある。電子機器部品の微細化・高密度化・高集積化が進むにつれて、より高度な清浄空間が必要になる。
また、電子機器部品の微細化が進むにつれ、微細な埃の付着が問題となってきている。帯電防止剤を樹脂に添加することにより、埃の付着は改善できるものの、帯電防止剤の添加は、帯電防止剤に由来する揮発成分の発生や、表面の汚染が問題となるため実現されていなかった。
前記帯電防止剤としては、導電剤であるカーボンブラックや、界面活性剤であるグリセリルモノステアレート、アルコール、アルキルアミン等の低分子量型帯電防止剤が知られている。しかしながらこのような低分子量型帯電防止剤を用いたトレイは、帯電防止剤がブリードすることによって帯電防止性能を発現するため、ブリードした帯電防止剤によって電子部品が汚染されてしまうという問題や、帯電防止性能を長期間維持できないという問題があった。
さらに、電子機器部品の搬送の際、中を確認できる様な透明性が求められてきている。例えば、搬送用ケースの中のバーコードをスキャンできるレベルに到着することが求められたり、基板収納容器の内部のウェハーの整列状態が目視で確認できることが求められている(例えば、特許文献1参照)。また、透明性と帯電防止性を両立させた材料は、レチクルケースの部材などにも活用できる(例えば、特許文献2参照)。
そして、搬送用ケースに収納された上記部品に、性能上の不具合が発生する頻度が増加する問題が生じてきている。例えば、記憶ディスクに有機物や酸性ガスが付着することからくる記憶ディスクの動作不良等の不具合があげられる(例えば、非特許文献1参照。)。搬送用ケースの樹脂材料から発生する有機物汚染ガスや水分の発生を抑えることにより、製品の歩留まり、貯蔵、移動中における品質の低下を防止し、信頼性を向上させることが期待される。
ポリプロピレン系樹脂に係わるこのような問題を解決するために、重合後に低分子量成分を洗浄除去する方法(例えば、特許文献3、4参照。)や、塊状重合後の液相部分を分離除去する方法(例えば、特許文献5、6参照。)が提案されている。いずれの方法を用いても、得られた樹脂中のオリゴマー成分量やこれに由来する揮発成分量は、十分といえるレベルではなく、品質の優れたプロピレン系樹脂の出現が望まれていた。
特開2014−110350号公報 特開2007−329439号公報 特公昭53−4107号公報 特公昭58−41283号公報 特開平10−17612号公報 特開平10−17613号公報
超クリーン化技術 東レリサーチセンター(2005年7月)
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、揮発性成分含有量が極めて少なく、電子機器部品等の搬送の際にも性能低下を起こさず、防塵性及び透明性に優れ、生産性の高いプロピレン系樹脂組成物及び成形品を提供することであり、特に電子機器部品搬送用成形品を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を行い、特定のポリプロピレン系樹脂に特定の帯電防止剤と造核剤を所定の割合で含有させることにより、これを用いた搬送用成形品は、揮発性成分含有量が構成される材料配合から予測される量に対し極めて少なく、電子機器部品の搬送の際にも性能低下を起こさず、防塵性及び透明性に優れる事を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のプロピレン系樹脂組成物及び成形品を提供するもので、特に、電子機器部品搬送部材用に適したプロピレン系樹脂組成物並びに成形品として電子機器部品搬送用成形品及び半導体関連部品搬送ケースを提供するものである。
[1]JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(以下、MFRと略称することがある。)が2〜100g/10分の範囲であるプロピレン系重合体(a)100重量部に対して、ポリマー型帯電防止剤を5〜30重量部及び下記式(1)で示される造核剤(A)を0.01〜1.0重量部含有してなることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期表第3族又は第4族の金属原子を示し、Xは、Mが周期表第3族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期表第4族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。)
[2]JIS K7136に準拠して測定される肉厚1mmのヘイズが30%未満である[1]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[3]揮発性成分含有量が30重量ppm以下である[1]又は[2]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[4]電子機器部品搬送部材用である[1]〜[3]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた電子機器部品搬送用成形品。
[7][1]〜[4]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた半導体関連部品搬送ケース。
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いて製造した成形品、特に電子機器部品搬送用成形品は、従来の搬送ケースと比べ揮発性成分含有量が、構成される材料配合から予測される量に対し極めて少なく、電子機器部品の搬送の際にも性能低下を起こさず、防塵性及び透明性に優れる性能を満足するため有用である。特に、半導体関連部品搬送ケースとして非常に有用である。
図1は、GPCから得られたクロマトグラムのベースラインと区間に関する図である。 図2は、ポリマー型帯電防止剤である三洋化成工業社製商品名「ペレクトロンUC」のIRチャートの図である。 図3は、ポリマー型帯電防止剤である三洋化成工業社製商品名「ペレクトロンLMP−FS」のIRチャートの図である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレートが2〜100g/10分の範囲であるプロピレン系重合体(a)100重量部に対して、ポリマー型帯電防止剤を5〜30重量部及び特定の構造を有する造核剤を0.01〜1.0重量部含有してなり、揮発性成分含有量が少なく、防塵性と透明性が優れることを特徴とする。
以下、本発明のプロピレン系樹脂組成物及び成形品について、詳細に説明する。
[1] プロピレン系樹脂組成物を構成する成分
(1) プロピレン系重合体(a)
(i)プロピレン系重合体(a)のメルトフローレート(MFR)
本発明で用いられるプロピレン系重合体(a)は、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFR)が2〜100g/10分の範囲のものであり、5〜60g/10分が好ましく、10〜40g/10分がさらに好ましい。メルトフローレート(MFR)が2g/10分以上では、成形加工性の向上をもたらし製品として満足できるものが得られる。また、100g/10分以下であると、機械的強度の向上がもたらされる。
メルトフローレート(MFR)は、プロピレン系重合体(a)の重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する方法における水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
(ii)プロピレン系重合体(a)のα−オレフィン含有量
本発明のプロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(a)は、好ましくはプロピレン単独重合体、プロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体又はこれらの混合物である。
プロピレン系重合体(a)は、剛性の観点では単独重合体が望ましく、透明性の観点ではプロピレンとα−オレフィンとからなるランダム共重合体が望ましい。共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。また、これらプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。また、α−オレフィンの含有量が1重量%未満であると剛性の観点から好ましい。
プロピレン系共重合体の具体的な例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−オクテン−1共重合体などのような、共単量体を任意に若干量組み合わせた二元または三元共重合体が例示できる。
プロピレン系重合体(a)に用いられるα−オレフィン含有量は、好ましくは1重量%未満であり、0.5重量%未満がより好ましい。α−オレフィンの含有量が1重量%未満であると、剛性が向上し、容器を積み重ねた際に変形を起こす恐れがない。
ここで、プロピレン及びα−オレフィンは、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子社製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
(iii)プロピレン系重合体(a)の立体規則性
本発明で用いられるプロピレン系重合体(a)がプロピレン単独重合体の場合は、アイソタクチックペンタッド分率は0.90以上が好ましく、より好ましくは0.94〜0.98である。アイソタクチックペンタッド分率が0.90以上であると、剛性が満足できる。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率は、13C−NMRを用いたプロトンデカップリング法で測定する値である。
(iv)プロピレン系重合体(a)の触媒
本発明に用いるプロピレン系重合体(a)は、用いる触媒としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用する方が好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。好ましくは、低揮発性が期待できるメタロセン触媒を用いた方がより好ましい。
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
メタロセン触媒としては、担持型のものが好ましい。
担持型メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]及び必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
・成分[A]メタロセン錯体
共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期表第4〜6族の遷移金属化合物
・成分[B]助触媒
イオン交換性層状ケイ酸塩
・成分[C]有機アルミニウム化合物
・成分[A]メタロセン錯体
上記の成分[A]としては、具体的には、次の式[I]で表される化合物を使用することができる。
Q(C4−a )(C4−b )MXY ・・・[I]
式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。
Mは、周期表第4〜6族遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示す。
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR又は2個のRがそれぞれ結合してC〜C10環を形成していてもよい。特には、6員環、7員環を形成して、上記共役五員環と共に、インデン環、アズレン環を形成することが好ましい。
a及びbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。特には、シリレン基が好ましい。
メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(20)ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物などの他の第4、5、6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が好ましく挙げられる。本発明の触媒成分及び触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
・成分[B]助触媒(イオン交換性層状ケイ酸塩)
イオン交換性層状ケイ酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。イオン交換性層状ケイ酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
(ア)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(イ)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
本発明で使用する珪酸塩は、上記(ア)、(イ)の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。
本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。
これら珪酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤などで化学処理することにより活性向上を図ることができる。
酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の表面の不純物を除く、又は層間陽イオンの交換を行うほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられるが、好ましくは無機酸、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5〜50重量%の酸の水溶液を60〜100℃の温度で1〜24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状珪酸塩から分離除去する操作である。
塩類処理で用いられる塩類としては、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn、Hfの陽イオンが好ましい。
具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。
陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、Li(ClO)、Li(C)、LiNO、Li(OOCCH)、Li(C)等を挙げることができる。
陽イオンがNiのものとしては、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等を挙げることができる。
陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI等を挙げることができる。
陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI等を挙げることができる。
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100〜800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
・成分[C]有機アルミニウム化合物
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、下記式[II]で示される化合物が最適である。
(AlR 3−p・・・[II]
式[II]中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1〜3の整数、qは1〜2の整数である。
としては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウム及びジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して、又は併用して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合又は本重合時にも添加して使用することができる。
(v)プロピレン系重合体(a)の製造方法
プロピレン系重合体(a)の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー重合法、溶液重合法、実質的に溶媒を用いない気相重合法、重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系重合体(a)の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
メタロセン触媒を用いる場合は、本重合が行われる前に予備重合処理することが望ましい。予備重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、1,3−ブタジエン等のジエン化合物、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物を用いることができる。
この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒(成分[A]と成分[B]の合計)1gあたり、0.01〜1,000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、又は不存在下に行われる。本発明においては、固体触媒(固体触媒を予備重合処理した場合は、予備重合で生成した重合体を含まない。)当たりのポリマー生成量をできるだけ大きくすることが望ましい。ポリマー生成量を大きくするために、重合温度、重合圧力はいずれも高めに設定することが望ましい。
通常、重合温度は60〜90℃、重合圧力は1.5〜4MPa程度から選択される。特に、バルク重合法の場合、重合温度は60〜80℃で、重合圧力は温度と相関して2.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。一方、気相重合法の場合は、重合温度は70〜90℃で、1.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。
さらに、固体触媒の滞留時間を長くすることによっても、固体触媒当たりのポリマー生産量を上げることが可能であるが、あまり長くし過ぎると生産性に影響を与える。好ましい滞留時間は、1〜8時間、さらに好ましくは1〜6時間である。担体を含めた固体触媒1gあたりのポリマー生産量は20kg以上、好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上となるように、重合条件を設定することが望ましい。
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。更に、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
本発明においては、重合終了後、得られたプロピレン系重合体(a)を、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性飽和炭化水素溶剤や液状α−オレフィンなどを用いて、さらに好ましくは炭素数3又は4の不活性炭化水素溶剤や液状α−オレフィンを用いて、洗浄を行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に制限はなく、撹拌槽での接触処理後上澄みのデカンテーション、向流洗浄、サイクロンによる洗浄液との分離など、公知の方法を用いることができる。
また、洗浄前又は洗浄と同時に、失活剤を添加してもよい。失活剤に関しては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類など、又はこれらの混合物を用いることができる。
(vi)プロピレン系重合体(a)の分子量分布(Mw/Mn)及び重量平均分子量(Mw)
本発明に用いるプロピレン系重合体(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる分子量分布〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕は1.5〜4.0が好ましい。
分子量分布の下限は好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上であり、上限は好ましくは3.8以下、より好ましくは3.5以下である。
分子量分布の下限が一定以上であると、プロピレン系重合体(a)の製造や精製の条件範囲が広がるため生産効率が向上し好ましい。また、上限が一定以下であると、分子鎖の長さが非常に揃っていることを示し、揮発性成分の発生の原因になると考えられる未反応モノマー、ダイマー、低分子量化合物、非晶質成分、オリゴマーなどの、比較的低分子量の成分の含有量が少なくなるため好ましい。
また、本発明に用いるプロピレン系重合体(a)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜60万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量Mwが60万以下であると成形が容易になる。一方、重量平均分子量Mwが10万以上では、低結晶成分が減少し、金型汚染、ブリードアウト、溶媒溶出等を抑制する上、成形品の耐衝撃性が向上するため、実用的である。
(vii)プロピレン系重合体(a)の平均溶出温度(T50)及び溶出分散度(σ)
メタロセン触媒を用いる場合は、本発明に用いるプロピレン系重合体(a)の平均溶出温度(T50)は90〜105℃が好ましく、溶出分散度(σ)は9℃以下が好ましい。
ここで、平均溶出温度は、o−ジクロロベンゼンを溶媒とする温度上昇溶離分別法による重合体の溶出曲線に基づく値であり、溶出重合体の積算質量が50質量%となるときの温度を表す。溶出分散度は、温度上昇溶離分別法による溶出量が溶出温度に対して正規確率分布に従うと仮定し、質量積算溶出量I(t)が下記の数式(1)で表されると定義した際のσの値である。
溶出分散度は具体的には、σ=T50−T15.9である。なお、T15.9は積算質量が15.9質量%となるときの温度を示す。
平均溶出温度が90〜105℃であることにより、成形品を電子機器部品搬送用成形品とした場合、プロピレン系重合体(a)の分子量及び融点を成形のために適切なものとすることができ、寸法精度を向上させることができる。平均溶出温度が90℃以上のときにはプロピレン系重合体(a)の分子量及び融点が低くなり過ぎることはなく、電子機器部品搬送用成形品の寸法精度が良好となり、105℃以下のときにはプロピレン系樹脂の分子量及び融点が高くなり過ぎることはなく好ましい。
また、溶出分散度(σ)が9℃以下であることにより、温度上昇に伴う成分の溶出を抑えることができると共に、寸法精度を高めることができる。溶出分散度(σ)はより好ましくは7℃以下、更に好ましくは6℃以下である。
(2)ポリマー型帯電防止剤
ポリマー型帯電防止剤としては、2以上の構成単位を有する帯電防止剤であり、好ましくは、例えば、数平均分子量が1,000以上のポリマー型の帯電防止剤であれば、使用でき、非イオン性、カチオン性又はアニオン性のポリマー型帯電防止剤でも制限はされない。
このうち、非イオン性のものが好ましく、特に、親水性セグメントを有し、その親水性セグメントの吸湿性によって帯電防止性が付与されたポリマー型帯電防止剤が好ましい。
こうしたポリマー型帯電防止剤としては、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体等の親水性ポリマー/親油性ポリマーブロック共重合体等が好ましく挙げられる。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体では、ポリエーテルのブロックが親水性セグメントとして機能するとともに、ポリオレフィンのブロックが親油性セグメントとして機能する。すなわち、親水性セグメントは、その吸湿性によって成形体の表面抵抗を低下させる作用を奏し、親油性セグメントは、基材であるプロピレン系樹脂との相溶性を高める作用を奏することから、特に優れた帯電防止剤である。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成するポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマー等が含まれる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、及びポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンが含まれる。
ポリエーテルを構成するオキシアルキレン基は、例えばアルキレンの炭素数が2〜4のオキシアルキレン基であるエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。ポリエーテルを構成するオキシアルキレン鎖中におけるオキシエチレン基の占める割合は、帯電防止性を高めるという観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは60〜100質量%である。なお、ポリエーテルの数平均分子量は150〜20,000が好ましい。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成するポリオレフィンとしては、好ましくは炭素数2〜30のオレフィンから選ばれる少なくとも一種を重合して得られるポリオレフィン、より好ましくはエチレン及びプロピレンの少なくとも一種を重合して得られるポリオレフィンである。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体は、親水性ポリマーであるポリエーテル(a)のブロックと、親油性ポリマーであるポリオレフィン(b)のブロックとを構成単位とする。ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成する(a)のブロックと、(b)のブロックの重量比(a/b)は、帯電防止性及び耐水性の観点から、好ましくは20/80〜90/10であり、より好ましくは25/75〜80/20であり、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体を構成する(a)のブロックと、(b)のブロックとが結合した構造には、(a)−(b)型、(a)−(b)−(a)型、(b)−(a)−(b)型及び[(a)−(b)]型(nは平均繰り返し数を表す。)が含まれる。ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体の構造としては、帯電防止性の観点から(a)と(b)とが繰り返し交互に結合した[(a)−(b)]型のものが好ましい。[(a)−(b)]型の構造におけるnは、帯電防止性及び成形品の機械特性の観点から、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2.3〜30、特に好ましくは2.7〜20、最も好ましくは3〜10である。この平均繰り返し数nは、特開2005−97596号公報に記載の方法、すなわちポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体の数平均分子量Mn及びH−NMR分析により求めることができる。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体の数平均分子量Mnは、好ましくは2,000〜60,000、より好ましくは5,000〜40,000、さらに好ましくは8,000〜30,000である。
使用するポリマー型帯電防止剤は、ポリマー型帯電防止剤からの揮発性成分やナトリウム、カリウムイオン溶出量が問題とならない範囲で、使用することが好ましい。
このようなポリマー型帯電防止剤を用いることにより、プロピレン系樹脂との分散性が良好となり、成形性に優れ、かつ成形体の帯電防止性が長期間に渡り良好となる。
ポリマー型帯電防止剤の数平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは2,000〜60,000、さらに好ましくは3,000〜30,000である。
このようなポリマー型帯電防止剤としては、例えば商品名「ペレクトロン」(三洋化成工業(株)製商品名)や「スタットライト」(The Lubrizol Corporation社製商品名)が挙げられる。
ポリマー型帯電防止剤の含有量はプロピレン系重合体(a)100重量部に対して、5〜30重量部の範囲である。より好ましくは10〜15重量部の範囲である。ポリマー型帯電防止剤の含有量が5重量部以上であると十分な帯電防止性能が得られる。ポリマー型帯電防止剤の含有量が30重量部以下であると、成形品の強度が向上し、揮発成分が減少し、さらに製造費用が安価となるため好適である。
(3)造核剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(a)100重量部に対して、下記式(1)で示される造核剤(A)を0.01〜1.0重量部含有する。該造核剤を用いることにより、プロピレン系樹脂の結晶が緻密に生成され、電子機器部品搬送用成形品が含有する揮発性成分が成形品の外部へ漏れ出ることを抑制できるとともに、プロピレン系樹脂の結晶化を促進することで生産性を向上することが出来る。また、該造核剤を用いることにより、透明性が向上できる。さらに、前述のとおり、電子機器部品搬送用成形品にはリブ部等、他の部分よりも肉厚の厚い部分があり、薄肉部と比べて冷却が遅れ成形品内部にボイドが発生しやすいものであるが、該造核剤の含有により、ボイドの発生を大きく抑制することができる。その機構は定かではないが、該造核剤による結晶化の促進により厚肉部と薄肉部の冷却時間の差が小さくなることでボイドが発生しにくくなるためであると考えられる。
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期表第3族又は第4族の金属原子を示し、Xは、Mが周期表第3族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期表第4族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。)
式(1)で示される造核剤(A)の具体例としては、例えば、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]及びこれらの2種以上の混合物を例示することができる。
式(1)で示される造核剤(A)は、有機アルカリ金属塩と併用させることが効果的である。該有機アルカリ金属塩とは、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩を示すことができる。該有機アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸、β−ドデシルメルカプト酢酸、β−ドデシルメルカプトプロピオン酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−ラウロイルアミノプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式モノ又はポリカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族モノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。
上記アルカリ金属β−ジケトナートを構成するβ−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ピバロイルアセトン、パルミトイルアセトン、ベンゾイルアセトン、ピバロイルベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等が挙げられる。
また、上記アルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩を構成するβ−ケト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸ラウリル等が挙げられる。
該有機アルカリ金属塩の成分であるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート又はアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩は、各々上記アルカリ金属とカルボン酸、β−ジケトン化合物又はβ−ケト酢酸エステルとの塩であり、従来周知の方法で製造することができる。また、これら各アルカリ金属塩化合物の中でも、アルカリ金属の脂肪族モノカルボン酸塩、特に、リチウムの脂肪族カルボン酸塩が好ましく、とりわけ炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸塩が好ましい。
この様な造核剤(A)及び有機アルカリ金属塩からなる複合型造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブNA−21を挙げることができる。
造核剤(A)の含有量が0.01重量部以上であるとポリプロピレンの結晶を緻密に生成でき、揮発性成分含有量が増加したり、ボイドが発生するのを抑制したりできるので好ましく透明性を向上させることができる。造核剤(A)の含有量が本発明で規定する上限値以下であると、造核剤に由来する揮発性成分の発生が抑制され、さらに製造費用が抑制されるため好適である。
造核剤(A)の含有量の下限は、好ましくは0.02重量部、より好ましくは0.05重量部、更に好ましくは0.10重量部以上である。また、造核剤(A)の含有量の上限は好ましくは0.50重量部、より好ましくは0.25重量部、更に好ましくは0.15重量部である。
(4)その他添加剤
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤や、紫外線吸収剤、光安定剤、中和剤等の添加剤を配合することができる。
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
さらに、耐NOxガス変色性が良好な下記式(2)や下記式(3)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等のラクトン系酸化防止剤、下記式(4)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:DHT−4A、協和化学工業(株)製の下記式(5)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(商品名、水澤化学工業(株)製の下記式(6)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO …(5)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[AlLi(OH)X・mHO …(6)
[式中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
さらに、その他に、既知の各種添加剤、例えばポリマー型帯電防止剤以外の帯電防止剤、造核剤(A)以外の造核剤、滑剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、染料、顔料等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物の性質、機能、透明性などの特性を損なわない範囲で、プロピレン系重合体(a)以外の他の重合体、例えば、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、アクリレート重合体、のような一元、二元、三元共重合体を、プロピレン系重合体(a)100重量部に対して、1〜30重量部を任意に添加することができる。同様に、天然ゴム、ブチルゴム、ジエン系ゴム、EPR、EPDMのような、エラストマーをブレンドすることも可能である。さらに、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、石膏、マイカ、のような汎用の無機フィラーを併用することも可能である。
[2] プロピレン系樹脂組成物の特性
(1)ヘイズ
本発明のプロピレン系樹脂組成物のヘイズは、JIS K7152−3に準拠して成形したタイプD1試験片(60×60×1mm)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。この値が小さいほど透明であることを意味する。30%未満が好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。ヘイズが30%未満で透明性が良好であると内容物の確認やバーコード等の読み取りが容易となり好ましい。
(2)揮発性成分含有量
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、揮発性成分含有量が好ましくは30重量ppm以下であり、より好ましくは15重量ppm以下、さらに好ましくは10重量ppm以下である。揮発性成分含有量が前記上限以下であることにより、プロピレン系樹脂組成物を成形し集積度や加工精度が高い電子機器部品搬送用成形品とした際、揮発性成分の電子機器部品への付着による汚染を抑制し、部品性能の不具合発生頻度を減少させることが可能となる。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、組成物に含まれるハロゲンの含有量、例えば、塩素の含有量が10重量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5重量ppm以下である。ハロゲン含有量が少ないと腐食性を発現することがないので、好ましい。
[3]プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(a)、ポリマー型帯電防止剤及び造核剤、並びに、必要に応じて他の添加剤の各所定量を、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190〜260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
[4]成形品
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた成形品、電子機器部品搬送用成形品、電子機器部品搬送ケース及び半導体関連部品搬送ケースを製造するには、プロピレン系樹脂組成物を、射出成形法等により所望形状の成形品及びケースに成形する。搬送ケースとは、各種マガジン、トレイ、ボックス、容器等で保存目的も含めたケースである。
なお、ここで電子機器部品とは、特に限定されないが、例えば、シリコンウエハー、ハードディスク、マイクロプロセッサー、発光ダイオード、サファイアウエハ、ディスク基板、ICチップ、光磁気ディスク(MO)、DVD、BD、各種メモリー、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスク用磁気抵抗ヘッド、CCD、CCDデバイス、レチクル、光学機器半導体部品等の各種電子機器用の部品をいう。ここで半導体関連部品とは、特に限定されないが、例えば、シリコンウエハー、マイクロプロセッサー、発光ダイオード、各種メモリー等の各種半導体関連の部品をいう。
射出成形法としては、公知の成形法が挙げられ、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例で限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例において、プロピレン系重合体(a)及びプロピレン系樹脂組成物の物性測定は下記の方法に従ったものである。
<1.測定の方法>
(1) メルトフローレート(MFR):
JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
(2)エチレン含有量の算出
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含有量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
(3)分子量及び分子量分布の測定:
プロピレン系重合体(a)の分子量分布Mw/Mnは、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定し、算出した。測定条件は以下の通りである。
装置:WATERS社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本直列)
移動相溶媒:ο−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
(4)融解ピーク温度(融点)(Tm、単位:℃):
示差走査熱量計(DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、一旦200℃まで温度を上げて、熱履歴を消去した後、200℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させて結晶化させ、再び昇温速度10℃/分にて測定して融解させた際の、吸熱ピークトップの温度を融解ピーク温度(融点)(Tm)とした。
(5)ヘイズ値
厚さ1mmのシート片を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
(6)表面固有抵抗
ダイアインスツルメンツ社製ハイレスタIP高抵抗率計(MCP−HT260)を用い、印加電圧は10V、電極は、2重リング法(HRSプローブ)を採用した。電圧印加後、10秒後の値を測定値として採用した。
(7)曲げ弾性率
JIS K7171に準拠して測定した。
(8)揮発性成分含有量の測定
プロピレン系樹脂組成物中から発生する揮発性成分含有量(炭素数30以下のオリゴマー量)は、ダイナミックヘッドスペース(DHS)−GC/MSによって測定をした。揮発性成分含有量は、プロピレン系樹脂組成物に対する揮発性成分含有量の割合(単位:重量ppm)である。以下に測定法を示す。
(I)測定及び評価概要
プロピレン系樹脂組成物のペレット試料を100℃に加熱し、そこで発生する揮発性成分を−150℃で捕集した後、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で各揮発性成分の分離・検出及び同定を行った。検量線は、炭素数10〜32まで炭素数2毎の脂肪族直鎖飽和炭化水素を、n−ヘプタン溶媒で濃度1000μg/mlの標準混合溶液とし、試料と同条件で測定を行ってガスクロマトグラム/質量分析法で測定し作成した。定量はn−エイコサンを標準とした値で計算した。
(II)装置及び測定方法
(i)加熱追出し(ダイナミックヘッドスペース)装置:
プロピレン系樹脂組成物のペレット試料を約50mg精秤して、加熱追出し管(GERSTEL社製TDS管)に充填をし、その両端に約10mgの石英ウール(GL Sciences社製、Cat.No.3001−12404)を詰めた。先のTDS管を40℃の加熱抽出装置(GERSTEL社製 TDS−A)に装入した後、管内をヘリウムで置換し、60℃/分の速度で100℃まで昇温し、100℃で30分間加熱した。この加熱期間中、TENAXを充填したGC注入口(GERSTEL社製 CIS4)を−150℃に冷却することにより、試料より発生した揮発性成分を捕集した。捕集した成分は、捕集部分を320℃まで急速に加熱することにより、気化させてGCカラムに導入した。
(ii)ガスクロマトグラフ(GC):
アジレント社製 HP6890
カラム:DB−5ms
カラムの昇温条件:40℃×5min〜10℃/min〜300℃×15min
(iii)マススペクトロメーター(MS):
アジレント社製 Mass Sensitive Detector 5973N
測定成分のイオン化には、電子衝撃(EI)法を用いた。
(9)Mn 数平均分子量の測定
ポリマー型帯電防止剤のMnは下記の通りGPCにて測定した値である。
装 置 : Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検 出 器 : FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長 : 3.42μm)
カ ラ ム : 昭和電工社製AT806MS(3本)
移動相溶媒 : ο−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流 速 : 1.0ml/分
注 入 量 : 0.2ml
試料の調製 : 試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1のように行う。
<2. 樹脂、添加剤>
2−1.プロピレン系重合体(a)の製造
(1)製造例1
(i)触媒の調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
(a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理: セパラブルフラスコに蒸留水1130g、96%硫酸750gを加え、内温を90℃に保ち、そこに平均粒径25μmの造粒スメクタイト(水澤化学工業(株)製商品名「ベンクレイSL」)300gを添加し、5時間反応させた。
洗浄: 1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH=3.69まで洗浄した。このときの洗浄倍率は1/10,000以下であった。この段階の固体を一部乾燥させて、酸処理による溶出率を求めたところ33.5%であった。
塩類処理: 硫酸リチウム1水和物211gを蒸留水521gに溶かし、さらに上記酸処理で得られた固体100g(乾燥重量)を加え、室温で120分間撹拌した。このスラリーを濾過し、得られた固体に蒸留水3000gを加え、5分間室温で撹拌した。更に、このスラリーを濾過した。得られた固体に蒸留水2500gを加え、5分間撹拌後再び濾過した。この操作をさらに4回繰り返した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイトを得た。
(b)珪酸塩の活性化処理
上記の化学処理スメクタイト200gを、内容積3Lの攪拌翼のついたガラス製反応器に導入し、ノルマルヘプタン750ml、さらに、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(500mmol)を加え、室温で攪拌した。1時間後、ノルマルヘプタンにて洗浄(残液率1%未満)し、スラリー量を2000mLに調整した。
(c)予備重合触媒の調製
次に、(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド3mmolのトルエンスラリー870mLとトリイソブチルアルミニウム(15mmol)のヘプタン溶液42.6mLを、あらかじめ室温にて1時間反応させておいた混合液を、上記の化学処理スメクタイトスラリーに加え、1時間攪拌しスメクタイト/錯体スラリーを調製した。続いて、窒素で十分置換を行った内容積10Lの攪拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1Lを導入し、40℃に保持した。そこに、先に調製したスメクタイト/錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところで、プロピレンを100g/時間の速度で供給し、その温度を維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。回収した予備重合触媒スラリーから、上澄みを約3L除き、トリイソブチルアルミニウム(30mmol)のヘプタン溶液を170mL添加し、10分間撹拌した後に、40℃にて減圧下熱処理した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.30gを含む予備重合触媒が得られた。
(ii)プロピレン系重合体(a)の製造
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、循環ライン液力分級器、濃縮器、向流ポンプ及び洗浄液受け槽からなる失活洗浄システム、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽及び乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン−エチレン共重合体の連続製造を実施した。
上記で調製した予備重合触媒を流動パラフィン(東燃社製商品名「ホワイトレックス335」)に濃度15重量%で分散させて、触媒成分として0.35g/hrで液相重合槽に導入した。さらに、この重合槽に液状プロピレンを40kg/hr、エチレンを0.4kg/hr、水素を0.25g/hr、トリイソブチルアルミニウムを18g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し、重合を行った。液相重合槽から重合体と液状プロピレンの混合スラリーを重合体として12.0kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。重合体は分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m/hrの流量で流した。乾燥後の重合体は、ホッパーから取り出した。
一方、分級器、濃縮器を経て、重合体と分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体(PP−1)の固体触媒1g当たりの収量は34.3kg、エチレン含有量=0.75wt%、MFR=30.6g/10分、分子量分布(Mw/Mn)2.8、Tm=141.7℃であった。
2−2.プロピレン系重合体(a)
(PP−1)製造例1で重合して得られたプロピレン系樹脂
2−3.ポリマー型帯電防止剤
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体
(T−1)三洋化成工業社製商品名「ペレクトロンUC」
Mn:3596。IRチャート:図2参照。
(T−2)三洋化成工業社製商品名「ペレクトロンLMP−FS」
Mn:4130。IRチャート:図3参照。
2−4.造核剤(N)
(N−1)ヒドロキシアルミニウムビス(2,4,8,10−テトラ−トランス−ブチル−6−ヒドロキシ−12−ジベンゾ[d,g][1.3.2]ジオキサフォスフォシン−6−オキサイド(式(1)で表される化合物(Rが水素原子、R及びRがtert−ブチル基、Mがアルミニウム、Xが水酸基である。))を主成分とした混合物からなる複合型造核剤 (株)ADEKA製 商品名「アデカスタブNA−21」
(N−2)リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリ
ウム。 (株)ADEKA製 商品名「アデカスタブNA−11」
(N−3)1・3,2・4−ジベンジリデンソルビトール、1・3,2・4−ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール。 新日本理化(株)製 商品名「ゲルオールMD」
(N−4)1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール。 ミリケン・アンド・カンパニー社製 商品名「ミラッドNX8000J」
(N−5)1,3,5−トリス[2,2−ジメチルプロピオニルアミノ]ベンゼン。BASFジャパン(株)製 商品名「イルガクリアXT−386」
(N−6)ジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート。 ミリケン・アンド・カンパニー社製 商品名「ハイパフォームHPN−68L」
(N−7)ヒドロキシ−ジ(p−tert−ブチル安息香酸)アルミニウム) 。 共同薬品(株)社製 商品名「AL−PTBBA」
(N−8)N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミド。新日本理化株式会社製 商品名「エヌジェスターNU−100」
2−5.その他添加剤(A)
(A−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤「IR1010」:テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン BASFジャパン(株)製商品名「IRGANOX1010」
<3.実施例1〜9、比較例1〜11>
重合体及び添加剤を表1に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械製TEM−35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて、物性を測定した。それらの評価結果を表1に示す。
表1より明らかなように、実施例1〜9は、本発明にかかわるプロピレン系重合体(a)、ポリマー型帯電防止剤及び造核剤(A)を規定量含有したもので、帯電防止性能に優れ、剛性と透明性が良好で、揮発性成分が少ないことが判る。比較例1は剛性と透明性のバランスは優れるもののポリマー型帯電防止剤を含有していない為、帯電防止性能が認められない。比較例3と4は造核剤(A)を含有していないもので、透明性が十分ではない。比較例5〜11は、造核剤(A)以外の造核剤を含有したもので、一般的にNU100を除き、含有することで透明性が向上する造核剤であるが、予想に反して悪化するものもある。
本発明のプロピレン系樹脂組成物及び成形品、特に電子機器部品搬送部材用プロピレン系樹脂組成物及び電子機器部品搬送用成形品は、搬送の際にも性能低下を起こさずにクリーン性に優れ、かつケースの防塵性に優れ、更に透明性に優れる電子機器部品搬送用部材を得るのに有用であることが判り、特に電子機器部品搬送用成形品に好適である。

Claims (7)

  1. JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレートが2〜100g/10分の範囲であるプロピレン系重合体(a)100重量部に対して、数平均分子量が3,000〜30,000であり、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体であるポリマー型帯電防止剤を5〜30重量部及び下記式(1)で示される造核剤(A)を0.01〜1.0重量部含有してなることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
    ・・・(1)
    (式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期表第3族又は第4族の金属原子を示し、Xは、Mが周期表第3族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期表第4族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。)
  2. JIS K7136に準拠して測定される肉厚1mmのヘイズが30%未満である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  3. 揮発性成分含有量が30重量ppm以下である請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. 電子機器部品搬送部材用である請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた電子機器部品搬送用成形品。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた半導体関連部品搬送ケース。
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