JP6747450B2 - サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック複合体 - Google Patents

サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック複合体 Download PDF

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Description

本発明は、サーモクロミックフィルム及びサーモクロミック複合体に関するものであり、より詳しくは、耐久性及びヘイズの安定性を示すサーモクロミックフィルム等に関する。
近年、車窓から入り込む太陽光の影響によって人肌で感じる暑さを低減するため、高い断熱性又は遮熱性を備えた合わせガラスが市場に流通している。最近では、電気自動車等の普及に伴い、車内の冷房効率を高める観点から、合わせガラスに適用する近赤外光(熱線)遮蔽フィルムの開発が盛んに行われている。
近赤外光遮蔽フィルムは、車体や建物の窓ガラスに適用することにより、車内のエア・コンディショナー等の冷房設備への負荷を低減することができ、省エネルギー対策として有効な手段である。
このような近赤外光遮蔽フィルムとしては、赤外線吸収性物質としてITO(インジウム・スズ酸化物)などの導電体を含む光学フィルムが開示されている。
例えば、特許文献1には、赤外線反射層と赤外線吸収層とを有する機能性プラスチックフィルムを含む近赤外光遮蔽フィルムが開示されている。また、特許文献2は、低屈折率層と高屈折率層とを交互に多数積層させた反射層積層体を有し、当該各屈折率層の層厚を調整することにより、近赤外光を選択的に反射する近赤外光遮蔽フィルムが提案されている。
このような構成の近赤外光遮蔽フィルムは、その高い近赤外光遮蔽効果により、太陽光の照度が高い赤道近傍の低緯度地帯で好ましく利用されている。一方、中緯度〜高緯度地帯の冬場においては、逆に、太陽光をできるだけ車内や室内に取り込みたい場合があり、このような場合に対し、近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を温度により制御するサーモクロミック材料を適用する方法の検討がなされている。その代表的な材料として、二酸化バナジウム(以下、「VO」ともいう。)が挙げられる。VOは、50〜60℃前後の温度領域で相転移を起こし、サーモクロミック性を示すことが知られている。
その一方で、VOは大気中の水分と酸素に触れると、結晶構造が変化し、球状の粒子から針状の粒子に変化する。そのため、フィルム内で光が散乱するようになり、ヘイズが上昇し、フィルムの視認性が悪くなるという問題がある。
特許文献3では、シランカップリング剤及び長鎖アルキル樹脂でVOを保護することが報告されている。また、特許文献4では、ポリカルボン酸で保護することが報告されているが、フィルムのヘイズ変動に関しては何も報告されていない。
また別の問題として、接着剤を介してVOを含有したフィルムをガラスに貼り合わせると、VOの酸化を促進させる現象が生じ、フィルムの劣化が問題となっている。
特開2010−222233号公報 国際公開第2013/065679号 特表2015−513508号公報 特開2012−25629号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐久性及びヘイズの安定性を両立するサーモクロミックフィルム及びサーモクロミック複合体を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、キレート錯体を二酸化バナジウム含有層(サーモクロミック層)に添加することで、粒子形状の変化に起因するヘイズの問題やガラスから抽出されるアルカリ成分の影響を抑えられることが分かった。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
1.サーモクロミック性を示す二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミックフィルムであって、
前記二酸化バナジウム粒子とともに、キレート錯体を含有する二酸化バナジウム含有層を有し、かつ、
前記キレート錯体の含有量が、前記二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、0.1〜20質量%の範囲内であることを特徴とするサーモクロミックフィルム。
.前記キレート錯体の含有量が、前記二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、1〜15質量%の範囲内であることを特徴とする第項に記載のサーモクロミックフィルム。
.第1項又は項に記載のサーモクロミックフィルムをガラスに貼り合わせた複合体であることを特徴とするサーモクロミック複合体。
.前記二酸化バナジウム含有層に隣接して粘着層を有するサーモクロミックフィルムを前記ガラスに貼り合わせた複合体であることを特徴とする第項に記載のサーモクロミック複合体。
本発明の上記手段により、耐久性及びヘイズの安定性を両立するサーモクロミックフィルム及びサーモクロミック複合体を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
二酸化バナジウム含有層にキレート錯体を含有させることにより、キレート錯体が二酸化バナジウムと何らかの相互作用を形成していると考えられる。これにより、二酸化バナジウム粒子が外部から受ける水分や酸素の影響を抑制することができるため、二酸化バナジウム粒子の形状変化を抑制しているものと推察している。
また、発明者の鋭意検討の結果、VOの酸化を促進させる現象については、キレート錯体を二酸化バナジウム含有層に含有させることで、貼り合わせるガラスに由来するアルカリ成分の影響が抑えられることを見いだした。これは、キレート錯体がアルカリ成分を捕捉し、二酸化バナジウム粒子への影響を抑えていることが考えられる。
つまり、二酸化バナジウム含有層にキレート錯体を添加することによって、二酸化バナジウム粒子の形状変化及び構造変化を抑制することができ、結果的に耐久性の高いサーモクロミックフィルムを作製することができたものと推察している。
本発明のサーモクロミックフィルムの概略断面図 本発明のサーモクロミックフィルムの概略断面図 本発明のサーモクロミック複合体の概略断面図 比較例2及び比較例3のサーモクロミック複合体の概略断面図 比較例のサーモクロミックフィルムの透過型電子顕微鏡写真 比較例のサーモクロミックフィルムの透過型電子顕微鏡写真 本発明のサーモクロミックフィルムの透過型電子顕微鏡写真 本発明のサーモクロミックフィルムの透過型電子顕微鏡写真
本発明のサーモクロミックフィルムは、サーモクロミック性を示す二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミックフィルムであって、前記二酸化バナジウム粒子とともに、キレート錯体を含有する二酸化バナジウム含有層を有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。
また、前記キレート錯体の含有量が、前記二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、0.1〜20質量%の範囲内であることが、外部からの水分や酸素の影響をより効果的に抑制できる観点から好ましい。
また、前記キレート錯体の含有量が、前記二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、1〜15質量%の範囲内であることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。
本発明のサーモクロミック複合体は、本発明のサーモクロミックフィルムをガラスに貼り合わせた複合体であることにより、ガラスを支持体として建築用や車両用の様々な分野に応用できる点で好ましい。
また、前記二酸化バナジウム含有層に隣接して粘着層を有するサーモクロミックフィルムを前記ガラスに貼り合わせた複合体であることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<サーモクロミックフィルム>
本発明のサーモクロミックフィルムは、サーモクロミック性を示す二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミックフィルムであって、前記二酸化バナジウム粒子とともに、キレート錯体を含有する二酸化バナジウム含有層を有することを特徴とする。
ここで、サーモクロミック性とは、温度により近赤外光の遮蔽や透過の光学的性質を制御する性質をいう。本発明に係る二酸化バナジウム粒子(以下、単に「VO粒子」ともいう。)が示すサーモクロミック性としては、温度変化によって光透過率や光反射率等の光学特性が可逆的に変化すれば特に限定されるものではない。なお、本発明に係る二酸化バナジウム粒子が示す好ましいサーモクロミック性としては、例えば、25℃・50%RH及び85℃・85%RHにおける光透過率の差が7%以上、より好ましくは10%以上、さらには15%以上である。
上記光透過率は、例えば、分光光度計V−670(日本分光(株)製)を用いて、波長1500nmにおける光透過率として測定することができる。
本発明のサーモクロミック性を示す二酸化バナジウム粒子を含有するものであり、サーモクロミックフィルムに用いる二酸化バナジウム粒子、キレート錯体及びその他の材料等の詳細を説明する。
〔酸化バナジウム〕
本発明に係る二酸化バナジウムは、酸化バナジウムの一態様である。酸化バナジウムは自然界において様々な形態をとり、V、H 、HVO 、HVO 2−、VO 3−、VO2+、VO、V3+、V、V2+、V、V等の構造が挙げられる。それぞれの環境雰囲気によってその形態が変化し、一般的には酸性環境下であればV、還元環境下であればVが形成される。そのため、VOは比較的酸化・還元しやすく、周囲の環境によって結晶構造が変化する。
サーモクロミック性(自動調光性)を示すVOは単斜晶構造で発現するため、本発明で用いるVOは単斜晶である。
〔二酸化バナジウム粒子〕
本発明に係る二酸化バナジウム粒子の結晶形は、サーモクロミック性を効率よく発現させる観点から、ルチル型のVO粒子(以下、単に、VO粒子ともいう。)を用いることが好ましい。
ルチル型のVO粒子は、転移温度以下では、単斜晶系(monoclinic)の構造を有するため、M型とも呼ばれる。本発明に係る二酸化バナジウム粒子においては、目的を損なわない範囲で、A型、又はB型などの他の結晶型のVO粒子や有機化合物、他の金属酸化物など、その他の化合物を含んでもよい。
また、本発明に係るVO粒子は、二酸化バナジウム含有層(以下、サーモクロミック層ともいう。)中において一次粒子及び二次粒子の数平均粒子径が500nm未満で分散されて存在していることが好ましい。
粒子径の測定方法は種々の測定法を適用することができるが、動的光散乱法に従って測定することが好ましい。
本発明に係るVO粒子における一次粒子及び二次粒子の好ましい数平均粒子径は、500nm未満であるが、更に好ましくは1〜200nmの範囲内であり、より好ましくは、5〜100nmの範囲内であり、最も好ましくは5〜60nmの範囲内である。
また、VO粒子のアスペクト比としては、1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。
このような特徴をもつVO粒子では、アスペクト比が十分に小さく、形状が等方的であるので、溶液に添加した場合の分散性が良好である。加えて、単結晶の粒子径が十分に小さいので、従来の粒子に比べて、良好なサーモクロミック性を発揮することができる。
本発明に係るVO粒子では、VOの他に、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)及びリン(P)からなる群から選定された、少なくとも一つの元素を含んでいても良い。
このような元素の添加により、二酸化バナジウム粒子の相転移特性(特に、調光温度)を制御することが可能となる。なお、最終的に得られる二酸化バナジウム粒子に対する、そのような添加物の総量は、バナジウム(V)原子に対して、0.1〜5.0原子%程度で十分である。
(1:二酸化バナジウム粒子水系分散液の製造方法)
一般に、二酸化バナジウム粒子の合成方法は、固相法により合成されたVO焼結体を粉砕する方法と、五酸化バナジウム(V)を原料として、液相でVOを合成しながら粒子成長させる水系合成法が挙げられる。
本発明においては、いずれの方法で作製されたVOでも適用することができる。いずれかの方法で作製したVOに分散剤を添加し、水系又は溶剤系にて分散液として調製する。
分散剤の添加量は、0.1〜1.0質量%の範囲内であることが好ましい。
水系の場合の分散剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、シランカップリング剤等が挙げられ、特に、ポリビニルピロリドン又はセルロース樹脂であることが好ましく、本発明におけるキレート錯体と併用することも可能である。
有機溶剤系の分散剤としては、アルキルアミン、シランカップリング剤、リン酸系等一般的に使用されている有機系分散剤を用いることができる。
そして、これらの分散剤を用いれば分散液中のVO粒子を乾燥させることなく、後述のようにサーモクロミック層形成用塗布液を調製することができる。
この状態のサーモクロミック層形成用塗布液を用いて、サーモクロミック層を形成することにより、一次粒子及び二次粒子の数平均粒子径が150nm未満である好ましい数平均粒子径のVO粒子を含有するサーモクロミック層を形成することができる。
また、VO粒子の製造方法として、必要に応じて、粒子成長の核となる微小なTiO等の粒子を核粒子として添加し、その核粒子を成長させることによりVO粒子を製造することもできる。
なお、バインダー樹脂として水溶性バインダー樹脂を使用する場合、上述のVO粒子を含む水系分散液として調製したあと、水系分散液中のVO粒子を乾燥させることなく、VO粒子が離間している分散状態で水溶性バインダー樹脂溶液と混合して、サーモクロミック層形成用塗布液を調製することが好ましい。
次いで、本発明に好適な水熱法によるVO粒子の製造方法について、その詳細をさらに説明する。
以下に、代表的な水熱法によるVO粒子の製造工程を示す。
(工程1)
バナジウム(V)を含む物質(I)と、ヒドラジン(N)又はその水和物(N・nHO)と、水とを混ぜて溶液(A)を調製する。この溶液(A)は、物質(I)が水中に溶解した水溶液であっても良いし、物質(I)が水中に分散した懸濁液であっても良い。
物質(I)としては、例えば、五酸化二バナジウム(V)、バナジン酸アンモニウム(NHVO)、三塩化酸化バナジウム(VOCl)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)等が挙げられる。なお、物質(I)としては、五価のバナジウム(V)を含む化合物であれば、特に限定されない。ヒドラジン(N)及びその水和物(N・nHO)は、物質(I)の還元剤として機能するものであって、水に容易に溶解する性質を有する。
溶液(A)は、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)の単結晶粒子に元素を添加するため、添加する元素を含む物質(II)を更に含有していてもよい。添加する元素としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)又はリン(P)が挙げられる。
これらの元素を、最終的に得られる二酸化バナジウム(VO)の単結晶粒子に添加することにより、二酸化バナジウム粒子のサーモクロミック性、特に、転移温度を制御することができる。
また、この溶液(A)は、酸化性又は還元性を有する物質(III)を更に含有していてもよい。物質(III)としては、例えば、過酸化水素(H)が挙げられる。酸化性又は還元性を有する物質(III)を添加することにより、溶液のpHを調整したり、物質(I)であるバナジウム(V)を含む物質を均一に溶解させたりすることができる。
(工程2)
次に、調製した溶液(A)を用いて、水熱反応処理を行う。ここで、「水熱反応」とは、温度と圧力が、水の臨界点(374℃、22MPa)よりも低い熱水(亜臨界水)中において生じる化学反応を意味する。水熱反応処理は、例えば、オートクレーブ装置内で行われる。水熱反応処理により、二酸化バナジウム(VO)含有の単結晶粒子が得られる。
水熱反応処理の条件(例えば、反応物の量、処理温度、処理圧力、処理時間等。)は、適宜設定されるが、水熱反応処理の温度は、例えば、250〜350℃の範囲内であり、好ましくは250〜300℃の範囲内であり、より好ましくは250〜280℃の範囲内である。温度を低くすることにより、得られる単結晶粒子の粒子径を小さくすることができるが、過度に粒子径が小さいと、結晶性が低くなる。また、水熱反応処理の時間は、例えば1時間〜5日の範囲内であることが好ましい。時間を長くすることにより、得られる単結晶粒子の粒子径等を制御することができるが、過度に長い処理時間では、エネルギー消費量が多くなる。
(工程3)
必要に応じて、得られた二酸化バナジウム粒子の表面に、樹脂によるコーティング処理又は表面改質処理を行っても良い。これにより、二酸化バナジウム粒子の表面が保護され、表面改質された単結晶粒子を得ることができる。本発明では、その中でも、二酸化バナジウム粒子の表面をガラス転移温度が65℃以下である、本発明に係るバインダー樹脂で被覆されていることが好ましい態様である。
なお、本発明でいう「被覆」とは、二酸化バナジウム粒子に対し、当該樹脂により粒子全面が完全に覆われている状態であってもよいし、粒子表面の一部が樹脂により覆われている状態であってもよい。好ましくは、当該粒子表面の全面積の50%以上が被覆されている状態がよく、80%以上被覆されている状態がより好ましい。
以上の工程1〜工程3を経て、サーモクロミック性を有するVO含有の単結晶粒子を含む分散液が得られる。
〔VOの粉砕方法〕
VOを微粒子化する方法は種々の方法があるが、ビーズミル、超音波破砕、高圧ホモジナイザー等種々の方法があり、いずれの方法を用いてもVO粒子を作製することができる。
ビーズミルでは、種々のビーズを用いることができるが、硬度、価格の観点からジルコニアビーズを利用するのが好ましい。
〈二酸化バナジウム粒子水系分散液中の不純物の除去処理〉
上記水系合成法により調製された二酸化バナジウム粒子の分散液中には、合成過程で生じた残渣などの不純物が含まれており、サーモクロミック層を形成する際に、二次凝集粒子発生のきっかけとなり、サーモクロミック層の長期保存での劣化要因となることがあり、分散液の段階で不純物を除去することが好ましい。
二酸化バナジウム粒子水系分散液中の不純物を除去する方法としては、従来公知の異物や不純物を分離する手段を適用することができ、例えば、VO粒子水系分散液に遠心分離を施し、二酸化バナジウム粒子を沈殿させ、上澄み中の不純物を除去し、再び分散媒を添加、分散する方法でも良いし、限外濾過膜などの交換膜を用いて不純物を系外へ除去する方法でも良いが、二酸化バナジウム粒子の凝集を防止する観点からは、限外濾過膜を用いる方法が最も好ましい。
限外ろ過膜の材質としては、セルロース系、ポリエーテルスルホン系、ポリテトラフルオロエチレン(略称:PTFE)などを挙げることができ、その中でも、ポリエーテルスルホン系、PTFEを用いることが好ましい。
〔キレート錯体〕
本発明に係るキレート錯体とは、複数の配位座を持つ配位子が少なくとも一つ金属イオンに配位結合している金属錯体をいう。
ここで、金属錯体とは、金属原子を分子構造内に持ち、その金属原子に配位子が配位結合によって結合している化合物である。
キレート錯体を二酸化バナジウム含有層に添加することにより、キレート錯体が二酸化バナジウムと何らかの相互作用を形成していると考えられる。これにより、二酸化バナジウム粒子が外部から受ける水分や酸素の影響を抑制することができるため、二酸化バナジウム粒子の形状変化を抑制しているものと推察している。
本発明に係るキレート錯体に用いられる中心金属としては、チタン、アルミニウム及び亜鉛が特に好ましい。
キレート配位子としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EDA(エチレンジアミン)、BAPTA(1,2−ビス(o−アミノフェノキシド)エタン−N,N,N′,N′−テトラ酢酸)及びクラウンエーテル(12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジアザ−18−クラウン−6)等を用いることができるが、これに限定するものではない。
また、構造の例としては、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどが好ましく挙げられるが、これらに限定するものではない。
キレート錯体としては、市販品を用いてもよく、チタンジプロポキシジアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスTC−100:商品名)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスTC−400:商品名)、チタンジオクトキシジオクチレングリコレート(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスTC−200:商品名)、チタンジポロポキシジエチルアセテート(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスTC−750:商品名)、チタニウム2−(2−アミノエチルアミノ)エトキシド(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスTC−510:商品名)、ヒドロキシジルコニウムトリス(アンモニウムラクテート)(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスZC−300:商品名)ジルコニウムモノアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル(株)、オルガチックスZC−540:商品名)等が市販品として挙げられる。
キレート錯体の含有量は、二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、0.1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、1〜15質量%の範囲内であることがより好ましい。
当該範囲内でキレート錯体を含有することによって、外部からの水分や酸素の影響を抑制することができ、優れたサーモクロミック性を示すサーモクロミックフィルムが得られるものと考えられる。
〔サーモクロミックフィルムの層構成の概要〕
本発明のサーモクロミックフィルムの代表的な構成例について、図を参照して説明する。
本発明のサーモクロミックフィルムの好ましい態様の一つは、透明基材上に、二酸化バナジウム含有層(サーモクロミック層)が形成されている構成である。
図1は、本発明で規定する二酸化バナジウム粒子とバインダー樹脂を含有するサーモクロミック層を有するサーモクロミックフィルムの基本的な構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すサーモクロミックフィルム1は、透明基材2上に、サーモクロミック層3を積層した構成を有している。このサーモクロミック層3は、サーモクロミック層に含有されるバインダー樹脂B1中に、二酸化バナジウム粒子が分散された状態で存在している。この二酸化バナジウム粒子には、二酸化バナジウム粒子が独立して存在している二酸化バナジウムの一次粒子VOと、2個以上の二酸化バナジウム粒子の集合体(凝集体ともいう)を構成している、VOの二次粒子VOが存在している。本発明では、2個以上の二酸化バナジウム粒子の集合体を総括して二次粒子と称し、二次粒子凝集体、又は二次凝集粒子ともいう。
本発明においては、サーモクロミック層3中におけるVO粒子の一次粒子VO及び二次粒子VOの全粒子による数平均粒子径が、150nm未満であることが好ましい。
サーモクロミック層中におけるVO粒子の上記数平均粒子径は、下記の方法に従って求めることができる。
本発明のサーモクロミックフィルムの好ましい態様の他の一つは、サーモクロミック層が透明基材を兼ねたハイブリッド構成である。
図2は、本発明のサーモクロミックフィルムの基本的な構成の他の一例を示す概略断面図であり、図1で示した透明基材2とサーモクロミック層3が同一層で構成されているハイブリッドサーモクロミック層(2+3)で構成されており、透明基材を構成している樹脂として、サーモクロミック層に含有されるバインダー樹脂B2を用い、当該バインダー樹脂B2中に、VO粒子が上記VOの一次粒子VOと、二酸化バナジウム粒子の上記二次粒子VOが分散されて、単層で透明基材を兼ね備えたサーモクロミック層を形成している構成である。
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、サーモクロミック層に加えて、700〜1000nmの波長範囲内の光の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層4を有していてもよい。
本発明のサーモクロミックフィルムの光学特性として、JIS R3106−1998で測定される可視光透過率としては、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。また、波長900〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
《サーモクロミックフィルムの各構成材料》
以下、本発明のサーモクロミックフィルムの構成要素であるサーモクロミック層、必要により設ける透明基材、近赤外光遮蔽層の詳細について説明する。
[サーモクロミック層]
本発明で用いられるサーモクロミック層は、少なくともVO粒子と、樹脂バインダーを含有していることが好ましい。本発明に適用可能なバインダー樹脂としては、水溶性バインダー樹脂や溶剤系バインダーなどが挙げられ、特に制限はないが、中でも水溶性バインダー樹脂であることが好ましい。
(水溶性バインダー樹脂)
上述のように、本発明で用いられるサーモクロミック層においては、バインダー樹脂として、水溶性バインダー樹脂も使用できる。
ここでいう水溶性バインダー樹脂とは、25℃における水100gに対し、1.0g以上溶解する樹脂又は分散する樹脂である。また、熱水に溶解させた後、25℃で同様に溶解している樹脂も、本発明でいう水溶性バインダー樹脂として定義する。
サーモクロミック層の形成に有用な水溶性バインダー樹脂としては、例えば、ゼラチン類、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等のタンパク質、セルロース類、アルギン酸ソーダ、セルロース硫酸エステル、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸塩等の糖誘導体、増粘多糖類等の天然由来素材や、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。
中でも、VO粒子との親和性が高く、膜形成の乾燥時にも粒子の凝集を防ぐ効果の高い、ヒドロキシ基を有する繰り返し単位成分を50mol%以上含有するポリマーであることが好ましく、こうしたポリマーとしては、セルロース類、ポリビニルアルコール類、ヒドロキシ基を有するアクリル系樹脂などを挙げることができ、その中でも、ポリビニルアルコール類、セルロース類が最も好ましく利用できる。
樹脂バインダーの耐水性を得るための使用可能な架橋剤として、イソシアネート化合物類、メラミン系化合物、グリオキザール系化合物、オキサゾリン系化合物、アジリジン、チタンキレート、尿素ホルマリン樹脂、グルタルアルデヒド、タンニン酸、カルボジイミド系化合物等を用いることができる。添加濃度は樹脂に対して、1〜50質量%の範囲内が好ましい。
また、耐水性を向上させるために水系エマルジョンも添加することもできる。好例としては、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン等が挙げられる。
(サーモクロミック層のその他の添加剤)
本発明に用いられるサーモクロミック層に、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、及び特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、及び特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオン又はノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、防カビ剤、帯電防止剤、マット剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、赤外線吸収剤、色素、顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
(サーモクロミック層の形成方法)
上記サーモクロミック層の形成に用いる湿式塗布方式としては、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、又は米国特許第2761419号明細書、米国特許第2761791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。
[透明基材]
本発明に適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性)の観点からは、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
透明基材の厚さは、30〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜100μmの範囲内であり、更に好ましくは35〜70μmでの範囲内である。透明基材の厚さが30μm以上であれば、取り扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、例えば合わせガラスを作製する場合、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明のサーモクロミックフィルムを具備した合わせガラスを、自動車のフロントガラスとして用いる場合には、延伸フィルムがより好ましい。
透明基材は、サーモクロミックフィルムのシワの生成や赤外線反射層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜3.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜3.0%の範囲内であることがより好ましく、1.9〜2.7%の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明のサーモクロミックフィルムに適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限されることはないが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
ポリエステルフィルム(以降、単にポリエステルと称す。)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、及びこれらのポリエステルの2種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
透明基材として透明樹脂フィルムを用いる場合、取り扱いを容易にするために、透明性を損なわない範囲内で粒子を含有させてもよい。本発明で用いる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子や、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。また粒子を添加する方法としては、原料とするポリエステル中に粒子を含有させて添加する方法、押出機に直接添加する方法等を挙げることができ、このうちいずれか一方の方法を採用してもよく、二つの方法を併用してもよい。本発明では必要に応じて上記粒子の他にも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。
また、透明樹脂フィルムは、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸成膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃の範囲内である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲内で行われることが好ましく、より好ましくは弛緩率が2〜6%の範囲内で処理されることである。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上し、さらに、寸法安定性が良好になる。
透明樹脂フィルムは、成膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、成膜工程中での下引塗布をインライン下引という。
[近赤外光遮蔽層]
本発明のサーモクロミックフィルムにおいては、サーモクロミック層に加え、700〜1000nmの範囲内の光波長範囲内の少なくとも一部を遮蔽する機能を有する近赤外光遮蔽層を設ける構成とすることもできる。
本発明に適用可能な近赤外光遮蔽層の詳細については、例えば、特開2012−131130号公報、特開2012−139948号公報、特開2012−185342号公報、特開2013−080178号公報、特開2014−089347号公報等に記載されている構成要素及び形成方法等を参考にすることができる。
<サーモクロミック複合体>
本発明のサーモクロミックフィルムの用途としては、サーモクロミックフィルムを構成要素として備えているサーモクロミック複合体6として使用することができる。具体的には、本発明のサーモクロミック複合体6は、ガラス部材5に本発明のサーモクロミックフィルム1を貼りあわせる(図3及び図4参照)、又は1対のガラス部材に挟持させて、合わせガラスを構成することも好ましい。また、図示は省略するが、本発明のサーモクロミックフィルム複合体は、前記二酸化バナジウム含有層に隣接して粘着層を有することも好ましい。
図3及び図4に示したとおり、サーモクロミックフィルムを構成するサーモクロミック層の配置は、透明基材とガラスに挟まれている配置(図3参照)であっても、挟まれていない配置(図4参照)であっても構わないが、図3に示す透明基材とガラスに挟まれている配置の方が、外部からの影響を受けにくく、かつサーモクロミック層に含有されるキレート錯体がガラスに由来するアルカリ成分の影響を抑制させヘイズを改善させることができるものと考えている。
合わせガラスの場合は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましい。上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
[ガラス]
ガラス部材としては、無機ガラス及び有機ガラス(樹脂グレージング)が挙げられる。無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、及び、グリーンガラス等の着色ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラス(樹脂グレージング)としては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。本発明においては、外部から衝撃が加わって破損した際の安全性の観点からは、無機ガラスであることが好ましい。特に、ガラスに由来するアルカリ成分がサーモクロミック性を阻害することが考えられるため、無アルカリガラスであることがより好ましい。
また、ガラス以外にも適用することができ、ガラスを含めたサーモクロミックフィルムの支持体全般とサーモクロミックフィルムから構成されている複合体とすることができる。
[粘着層]
粘着層を構成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。また、市販品であってもよく、例えば、日東電工社製の透明粘着シートLUCIACS CS9621Tを好ましく用いることができる。
本発明のサーモクロミックフィルムは、窓ガラス等に貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面にサーモクロミックフィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が張り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
使用されるアクリル系粘着剤は、溶剤系及びエマルジョン系どちらでもよいが、粘着力等を高めやすいことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。このような溶剤系アクリル系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとして、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクリルアクリレート等のアクリル酸エステル、凝集力を向上させるためのコモノマーとして、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等、さらに架橋を促進し、安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。該積層フィルムの粘着層には、主ポリマーとして、特に高タック性を要するため、ブチルアクリレート等のような低いガラス転移温度(Tg)を有するものが特に有用である。
この粘着層には、添加剤として、例えば安定剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を含有させることもできる。特に、本発明のように窓貼用として使用する場合は、紫外線によるサーモクロミックフィルムの劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。
粘着層の厚さは1〜100μmが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。1μm以上であれば粘着性が向上する傾向にあり、十分な粘着力が得られる。逆に100μm以下であればサーモクロミックフィルムの透明性が向上するだけでなく、サーモクロミックフィルムを窓ガラスに貼り付けた後、剥がしたときに粘着層間で凝集破壊が起こらず、ガラス面への粘着剤残りが無くなる傾向にある。
粘着剤には各種添加剤を添加することができ、好適には紫外線吸収剤、酸化防止剤を含有することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。なお、以下の説明及び表中の「フィルム」とはサーモクロミックフィルムを表すものとする。表1においてはフィルム番号に対応するサーモクロミックフィルムを用いた複合体(サーモクロミック複合体)のヘイズ、光透過率及び光透過率変化を示した。
《サーモクロミックフィルムの作製》
〔フィルム101の作製〕
(VO粒子水系分散液1の調製)
純水425mLに、二酸化バナジウム粒子(VO、新興化学社製)74.9g混合し、ビーズミル用の300μmのジルコニアビーズを200g使用し、Apexミル(寿工業社製)を用い、粉砕を行った。粉砕後の粒子に対して標準酸化還元電位を330mV、25℃におけるpHが6.5になるようにアンモニア水を添加し、二酸化バナジウム粒子水系分散液1を調製した。
(サーモクロミック層形成用塗布液1の調製)
下記の各構成材料を順次添加、混合及び溶解して、水系のサーモクロミック層形成用塗布液1を調製した。
15質量%のVO粒子水系分散液1(溶媒:水) 9.0質量%
5質量%のポリビニルピロリドン/酢酸ビニルの共重合体S−630
(ISP JAPAN社製) 76.0質量%
オルガチックス TC−400(チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート);マツモトファインケミカル社製) 15.0質量%
(サーモクロミック層の形成)
厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製U40、両面易接着層)の透明基材上に、押出コーターを用いて、上記調製したサーモクロミック層形成用塗布液1を、乾燥後の層厚が1.5μmとなる条件で湿式塗布を行い、次いで110℃の温風を2分間吹きつけて乾燥させて、サーモクロミック層を形成して、図1に記載の構成のサーモクロミックフィルム1(フィルム101)を作製した。
〔フィルム102の作製〕
サーモクロミックフィルム101の作製において、TC−400の濃度を20.0質量%にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム102を作製した。
〔フィルム103の作製〕
サーモクロミックフィルム102の作製において、TC−400の濃度を21.0質量%にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム103を作製した。
〔フィルム104の作製〕
サーモクロミックフィルム103の作製において、TC−400の濃度を1.0質量%にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム104を作製した。
〔フィルム105の作製〕
サーモクロミックフィルム104の作製において、TC−400の濃度を0.1質量%にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム105を作製した。
〔フィルム106の作製〕
サーモクロミックフィルム101の作製において、TC−400の代わりにオルガチックス TC−510(チタンアミノエチルアミノエタノレート;マツモトファインケミカル社製)にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム106を作製した。
〔フィルム107の作製〕
サーモクロミックフィルム104の作製において、TC−400の代わりにTC−510にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム107を作製した。
〔フィルム108の作製〕
サーモクロミックフィルム105の作製において、TC−400の代わりにTC−510にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム108を作製した。
〔フィルム109の作製〕
サーモクロミックフィルム101の作製において、TC−400の代わりにZC−300にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム109を作製した。
〔フィルム110の作製〕
サーモクロミックフィルム104の作製において、TC−400の代わりにZC−300にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム110を作製した。
〔フィルム111の作製〕
サーモクロミックフィルム105の作製において、TC−400の代わりにZC−300にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム111を作製した。
〔フィルム112の作製〕
サーモクロミックフィルム101の作製において、TC−400の代わりにオルガチックス ZC−540(ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート;マツモトファインケミカル社製)にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム112を作製した。
〔フィルム113の作製〕
サーモクロミックフィルム104の作製において、TC−400の代わりにZC−540にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム113を作製した。
〔フィルム114の作製〕
サーモクロミックフィルム105の作製において、TC−400の代わりにZC−540にした以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム114を作製した。
〔フィルム115の作製(比較例1〜3)〕
サーモクロミックフィルム101の作製において、TC−400を添加しないで作製した以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム115を作製した。
〔フィルム116の作製(比較例4)〕
サーモクロミックフィルム101の作製において、TC−400の代わりにチタネート系カップリング剤(プレンアクトTTS(味の素ファインテクノ社製))を4.0質量%添加した以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム116を作製した。
〔フィルム117の作製(比較例5)〕
サーモクロミックフィルム1の作製において、TC−400の代わりにポリカルボン酸(日油社製マリアリムシリーズ(AFB−0561))を0.5質量%添加した以外は同様にして作製し、サーモクロミックフィルム117のフィルムを作製した。
以上により作製したサーモクロミックフィルム101〜117の構成を、表1に示す。
Figure 0006747450
《サーモクロミック複合体の作製》
上記作製した各サーモクロミックフィルム101〜117を、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス白縁磨」)のサイズ15cm×20cmに、透明粘着シート(日東電工社製、LUCIACS CS9621T)を用いて貼り合わせた。その時にVO含有層を粘着面に貼り合わせ、ポリエチレンテレフタレートが外に向くように貼り合わせ、サーモクロミック複合体201〜214、217、220及び221を上記作製した各サーモクロミックフィルムについて作製した(図3参照)。
サーモクロミック複合体215としては、サーモクロミックフィルム101を用いて透明基材のVO含有層形成面と反対側に粘着層を形成し、ガラスに貼合したものを作製した(図4参照)。またサーモクロミック複合体216においてはサーモクロミック複合体201のガラスを無アルカリガラスに変更した以外は同様に作製した。
サーモクロミック複合体218(比較例2)としては、サーモクロミックフィルム115を用いて透明基材のVO含有層形成面と反対側に粘着層を形成し、ガラスに貼合したものを作製した(図4参照)。またサーモクロミック複合体219(比較例3)においてはサーモクロミック複合体217(比較例1)のガラスを無アルカリガラスに変更した以外は同様に作製した。
《ヘイズ測定》
NDH7000(日本電色社製)を用い、サーモクロミック層形成面から光を入射させ、その時の光のヘイズ値を測定した。さらに、85℃・85%RH、10日経過前後におけるヘイズ値を測定した。
《サーモクロミック性の光透過率評価》
分光光度計V−670(日本分光社製)を用いて、作製した各サーモクロミック複合体を25℃(室温)における波長1500nmでの光透過率を測定した。また、加温測定装置を用い、75℃(高温)における波長1500nmでの光透過率を測定した。さらに、85℃・85%RH、7日経過前後における光透過率を測定した。
《TEM観察》
作製したサーモクロミックフィルムを湿熱性解析前後で透過型電子顕微鏡(TEM、装置名:JEM−2000FX、メーカー:日本電子(株))により観察した(図5A〜D参照)。
図5A及び図5Cは、湿熱前のサーモクロミックフィルムのTEM像、図5B及び図5Dは、85℃・85%RHで湿熱後のサーモクロミックフィルムのTEM像である。
図5A及び図5BのTEM像から、湿熱前後で二酸化バナジウム粒子の形状が、粒状から針状へ変化していることが確認できる。
一方、二酸化バナジウム含有層にキレート錯体を添加したサーモクロミックフィルムの場合を図5C及び図5Dに示す。湿熱前の二酸化バナジウム粒子の形状は、キレート錯体を添加していない場合と大きな違いは見られないが、85℃・85%RHで湿熱後の針状粒子の形成を抑制できていることが分かった。
<評価結果>
表1の結果から、比較例におけるキレート錯体が含まれていないサーモクロミック複合体217〜221は、85℃・85%RHの劣化試験後にサーモクロミック性が低下しているのに対して、本発明のサーモクロミック複合体201〜216は劣化幅が小さく、耐久性が高いことが分かった。
また、サーモクロミック複合体217(比較例1)とサーモクロミック複合体218(比較例2)を比べると比較例1の方が湿熱試験後の劣化幅が大きい。比較例1はVO含有層がガラスに近いのに対して、比較例2はVO含有層が最外層に形成されている構成であるので、比較例1は水分や酸素からの影響が小さいにも関わらず、劣化が大きい。また比較例3はほとんど劣化していないことを考慮するとガラスからのアルカリ成分の移行が抑えられていると考えられる。
一方、本発明のサーモクロミック複合体に関しては、ガラスからのアルカリ成分の移行がある状況下でも劣化が抑えられており、キレート錯体がサーモクロミック性の維持に効果があることが立証され、明らかに本発明のサーモクロミックフィルムが優れたサーモクロミック性を示すことが分かった。
また、ヘイズについても本発明のサーモクロミック複合体201〜216については、ヘイズ変化率が全て4.0%以下であり、実用に適していることが分かった。
以上の結果より、本発明に記載された方法を用いることにより、耐久性及びヘイズの安定性を両立するサーモクロミックフィルムを作製することができたことが示された。
本発明により、耐久性及びヘイズの安定性を両立するサーモクロミックフィルム及びサーモクロミックフィルム複合体を得ることができ、近赤外光遮蔽フィルム等に好適に利用できる。
1 サーモクロミックフィルム
2 透明基材
3 サーモクロミック層(二酸化バナジウム含有層)
4 近赤外光遮蔽層
5 ガラス部材
6 サーモクロミック複合体
B1、B2 バインダー樹脂
VO 一次粒子
VO 二次粒子

Claims (4)

  1. サーモクロミック性を示す二酸化バナジウム粒子を含有するサーモクロミックフィルムであって、
    前記二酸化バナジウム粒子とともに、キレート錯体を含有する二酸化バナジウム含有層を有し、かつ、
    前記キレート錯体の含有量が、前記二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、0.1〜20質量%の範囲内であることを特徴とするサーモクロミックフィルム。
  2. 前記キレート錯体の含有量が、前記二酸化バナジウム含有層の全質量に対して、1〜15質量%の範囲内であることを特徴とする請求項に記載のサーモクロミックフィルム。
  3. 請求項1又は請求項に記載のサーモクロミックフィルムをガラスに貼り合わせた複合体であることを特徴とするサーモクロミック複合体。
  4. 前記二酸化バナジウム含有層に隣接して粘着層を有するサーモクロミックフィルムを前記ガラスに貼り合わせた複合体であることを特徴とする請求項に記載のサーモクロミック複合体。
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