以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による貯湯式給湯装置35を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の貯湯式給湯装置35は、ヒートポンプサイクルを利用するHPユニット7と、貯湯タンク8を有するタンクユニット33と、リモコン44とを備える。HPユニット7は、電力を消費して水を加熱する加熱手段の例である。図示の構成では、貯湯式給湯装置35の動作を制御する制御部36がタンクユニット33に内蔵されている。
リモコン44は、貯湯式給湯装置35の制御部36に対し、双方向にデータ通信可能に接続されている。リモコン44は、ユーザーインターフェースの例である。制御部36とリモコン44との間の通信は、有線通信でも無線通信でもよい。リモコン44は、浴室に設置されてもよい。リモコン44は、台所に設置されてもよい。異なる場所に複数のリモコン44が設置されてもよい。リモコン44のほかに、例えばスマートフォンのような携帯情報端末が貯湯式給湯装置35のユーザーインターフェースとして使用可能でもよい。
リモコン44は、表示部44a及び操作部44bを備える。表示部44aは、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイでもよい。表示部44aは、例えば、貯湯式給湯装置35の状態に関する情報、貯湯式給湯装置35の設定内容に関する情報などを表示できる。操作部44bは、使用者が操作するためのボタン、ダイヤル、キーなどを含んでもよい。表示部44aは、操作部の機能を兼ね備えるタッチスクリーンでもよい。リモコン44は、スピーカ、マイク等をさらに備えてもよい。リモコン44の表示部44aは、情報を報知する報知手段としての機能を有する。本実施の形態におけるリモコン44は、表示部44aを報知手段として備えるが、変形例として、例えば音声案内装置のような他の報知手段を備えてもよい。
貯湯式給湯装置35は、沸上運転を実施できる。後述するように、沸上運転は、HPユニット7により貯湯タンク8の水を加熱する運転である。本実施の形態において、貯湯式給湯装置35が利用される住宅または施設(以下、代表して「住宅」と称する)には、太陽光発電装置47(図示省略)が備えられている。貯湯式給湯装置35と、住宅で用いられる他の電気機器とは、太陽光発電装置47で発電された電力により運転可能である。以下の説明では、太陽光発電装置47で発電された電力のうち、貯湯式給湯装置35が使用可能な電力を「余剰電力」と称する。例えば、太陽光発電装置47で発電された電力のうち、貯湯式給湯装置35以外の他の電気機器が消費する電力を除いた分を「余剰電力」とみなしてもよい。貯湯式給湯装置35は、余剰電力によって沸上運転を実施可能である。以下の説明では、余剰電力を用いる沸上運転を「余剰電力沸上運転」と称する。
貯湯式給湯装置35の制御部36に対して、通信アダプタ46が双方向にデータ通信可能に接続されている。制御部36と通信アダプタ46との間の通信は、有線通信でも無線通信でもよい。通信アダプタ46とエネルギー管理装置48との間は、有線通信または無線通信により、双方向にデータ通信可能に接続されている。エネルギー管理装置48は、貯湯式給湯装置35及び太陽光発電装置47を含め、住宅における各種の機器と通信可能に接続され、これらの機器を統合して管理及び制御する。
例えば、エネルギー管理装置48は、太陽光発電装置47の発電量、住宅内の電気機器の消費電力量などの情報を定期的に受信し、メモリに記憶している。また、エネルギー管理装置48は、例えばインターネットのようなネットワークを介して、気象予報情報などを外部情報源から受信可能である。エネルギー管理装置48は、メモリに記憶された情報に基づいて、過去における太陽光発電装置47の発電量、住宅内の電気機器の消費電力量などの値及びその発生時間帯を学習できる。エネルギー管理装置48は、その学習した情報、気象予報情報、日付、曜日の情報などに基づいて、翌日または当日に余剰電力が発生する時間帯と、その発生量とを予測できる。
以下の説明では、エネルギー管理装置48が予測した、翌日または当日の余剰電力の発生時間帯及び発生量に関する情報を「余剰電力予測情報」と称する。制御部36は、通信アダプタ46を介して、余剰電力予測情報をエネルギー管理装置48から受信することができる。
HPユニット7とタンクユニット33との間は、HP往き管14とHP戻り管15と図示しない電気配線とを介して接続されている。タンクユニット33及びHPユニット7が備える弁類、ポンプ類のような各種のアクチュエータの作動は、これらと電気的に接続された制御部36により制御される。
HPユニット7は、圧縮機2、水冷媒熱交換器3、膨張弁4、空気熱交換器6を冷媒管5にて環状に接続し、ヒートポンプサイクルを構成している。水冷媒熱交換器3は、冷媒管5を流れる冷媒とタンクユニット33から導かれた水との間で熱交換を行うためのものである。HPユニット7の加熱能力は、単位時間当たりに水に与える熱量であり、単位はワットである。例えば、圧縮機2の運転周波数を可変にすることで、HPユニット7の加熱能力を調整可能としてもよい。HPユニット7の加熱能力を変えることで、HPユニット7の消費電力を調整可能である。
タンクユニット33には、以下の各種部品及び配管などが内蔵されている。貯湯タンク8は、湯水を貯留するためのものである。温度による水の密度の違いにより、貯湯タンク8内には、上側が高温で下側が低温の温度成層を形成できる。貯湯タンク8の下部に設けられた水導入口8aには、第3給水管9cが接続されている。水道等の水源から供給される水は、減圧弁31で所定圧力に調圧された上で、第3給水管9cを通って貯湯タンク8内に流入する。貯湯タンク8の上部に設けられた温水導入出口8dには、貯湯タンク8内に貯留された湯を貯湯式給湯装置35の外部へ供給するための給湯管21と、送湯管13とが接続されている。沸上運転において、HPユニット7を用いて加熱された高温湯が温水導入出口8dから貯湯タンク8内に流入し、貯湯タンク8内で上から下に向かって徐々に高温湯が蓄積されていく。貯湯タンク8の表面には、複数の貯湯温度センサ42,43が高さを変えて取り付けられている。制御部36は、これら貯湯温度センサ42,43で貯湯タンク8内の湯水の温度分布を検出することにより、貯湯タンク8内の貯湯量及び蓄熱量を検出できる。制御部36は、検出された貯湯タンク8内の貯湯量または蓄熱量に応じて、沸上運転の開始及び停止などを制御してもよい。図示の例では、2個の貯湯温度センサ42,43を設けているが、さらに多くの貯湯温度センサを設けてもよい。
タンクユニット33内には、循環ポンプ12及びふろ用熱交換器20が内蔵されている。循環ポンプ12は、タンクユニット33内の後述する各種の配管に湯水を循環させるためのポンプであり、HP往き管14上に設けられている。ふろ用熱交換器20は、貯湯タンク8またはHPユニット7から供給される高温湯を利用して、2次側の加熱対象水(浴槽水または暖房用水など)を加熱するための熱交換器である。本実施の形態では、ふろ用熱交換器20の2次側の構成として、浴槽30内の湯水を循環させるふろ往き管27とふろ戻り管28を例示し説明する。ふろ用熱交換器20は、ふろ往き管27とふろ戻り管28の途中に設置されている。また、ふろ往き管27とふろ戻り管28の途中には、浴槽水を循環させるためのふろ循環ポンプ29と、浴槽30から出た浴槽水の温度を検出するためのふろ戻り温度センサ38と、ふろ用熱交換器20から出た熱交換後の湯の温度を検出するためのふろ往き温度センサ37とが設置されている。
三方弁11は、湯水が流入するaポート及びbポートと、湯水が流出するcポートとを有する流路切替手段である。四方弁18は、湯水が流入するbポート及びcポートと、湯水が流出するaポート及びdポートとを有する流路切替手段であり、4つの経路、a−b、a−c、b−d、c−dの間で流路切替可能に構成されている。また、タンクユニット33は、水導出口管10、温水導入管20a、第1バイパス管16、温水導出管20b、及び第2バイパス管17を有している。水導出口管10は、貯湯タンク8の下部に設けられた水導出口8bと三方弁11のaポートとを接続する。HP往き管14は、三方弁11のcポートとHPユニット7の入口側とを接続する。HP戻り管15は、HPユニット7の出口側と四方弁18のcポートとを接続する。送湯管13は、四方弁18のdポートと、貯湯タンク8上部の温水導入出口8dとを接続する。第1バイパス管16は、四方弁18のaポートと、貯湯タンク8の中央部から下部の間に設けられた温水導入口8cとを接続する。温水導入管20aは、送湯管13の途中から分岐し、ふろ用熱交換器20の1次側入口に接続される。温水導出管20bは、ふろ用熱交換器20の1次側出口と三方弁11のbポートとを接続する。第2バイパス管17は、HP往き管14における循環ポンプ12とHPユニット7の入口側との間から分岐し、四方弁18のbポートに接続される。
さらに、タンクユニット33は、第1給水管9a、第2給水管9b、給湯用混合弁22、ふろ用混合弁23、第1給湯管24、及び第2給湯管25を有している。第1給水管9aの一端は水道等の水源に接続され、第1給水管9aの他端には減圧弁31を介して第2給水管9b及び第3給水管9cが接続されている。第2給水管9bは、途中から分岐してそれぞれ給湯用混合弁22とふろ用混合弁23とに接続されている。また、給湯管21は、途中から分岐してそれぞれ給湯用混合弁22及びふろ用混合弁23に接続されている。第2給湯管25の途中には、第2給湯管25を開閉するふろ用電磁弁26と、第2給湯管25を通る湯の流量を検出するふろ用流量センサ45とが設けられている。第1給水管9aに設けられた給水温度センサ49は、水源から供給される低温水の温度である給水温度を検出する。
給湯用混合弁22及びふろ用混合弁23は、給湯管21から供給される高温湯と、第2給水管9bから供給される低温水との流量比を調整することにより、使用者がリモコン44にて設定した設定温度の湯を生成し、第1給湯管24及び第2給湯管25にそれぞれ流入させる。給湯用混合弁22で温度調整された湯は、第1給湯管24から給湯栓34を経由して、使用者が使用するシャワー及びカラン等の蛇口(図示しない)に供給される。一方、ふろ用混合弁23で設定温度に調整された湯は、第2給湯管25からふろ用流量センサ45、ふろ用電磁弁26、ふろ往き管27、ふろ戻り管28を経て浴槽30に供給される。
三方弁11は、水導出口管10とHP往き管14とが連通する形態と、温水導出管20bとHP往き管14とが連通する形態、の2つの流路形態で、タンクユニット33内の湯水の流路を切り替えて使用する。四方弁18は、HP戻り管15と送湯管13とが連通する形態、HP戻り管15と第1バイパス管16とが連通する形態、第1バイパス管16と第2バイパス管17とが連通する形態、送湯管13と第2バイパス管17とが連通する形態、の4つの流路形態で、タンクユニット33内の湯水の流路を切り替えて使用する。
貯湯式給湯装置35は、電力会社などが保有する電力系統から供給される電力(以下、「商用電力」と称する)を用いて沸上運転を実行可能である。以下の説明では、夜間時間帯に行う沸上運転を「夜間沸上運転」と称する。夜間沸上運転は、電力会社から買電する商用電力によって実行される。
以下の説明では、夜間時間帯以外の時間帯を「昼間時間帯」と称する。夜間時間帯は、例えば、夜22時から翌朝6時までの時間帯でもよい。この場合、昼間時間帯は、朝6時から夜22時までの時間帯となる。また、夜間時間帯は、例えば、夜23時から翌朝7時までの時間帯でもよい。この場合、昼間時間帯は、朝7時から夜23時までの時間帯となる。通常、電力会社から買電する商用電力の料金単価は、昼間時間帯よりも夜間時間帯の方が割安となる。
リモコン44を操作することで、夜間時間帯の開示時刻及び終了時刻の設定を変えられるようにしてもよい。また、制御部36は、エネルギー管理装置48及び通信アダプタ46を介して、電力会社等から電力契約情報等を受信することで、夜間時間帯の開示時刻及び終了時刻を自動で設定してもよい。
制御部36は、余剰電力予測情報に基づいて、翌日の余剰電力沸上運転が実行可能かどうかを予測できる。以下の説明では、翌日の余剰電力沸上運転により生成されると予測される熱量を「余剰電力熱量」と称する。翌日の余剰電力沸上運転が実行可能と予測される場合、制御部36は、余剰電力予測情報に基づいて、余剰電力熱量を計算できる。例えば、制御部36は、予測される余剰電力によって沸上運転を行ったと仮定したときのHPユニット7の加熱能力に、余剰電力沸上運転の予測運転時間を乗じることで、余剰電力熱量を計算できる。変形例として、制御部36以外の機器、例えばエネルギー管理装置48が、翌日の余剰電力沸上運転が実行可能かどうかの予測と、余剰電力熱量の計算とを行ってもよい。
制御部36は、翌日の給湯負荷分を賄うための要求熱量を計算できる。制御部36は、例えば、過去の使用湯量を学習したデータなどに応じて、要求熱量を計算してもよい。
昼間時間帯に貯湯タンク8の蓄熱量が不足に陥り、かつ余剰電力沸上運転が実行不可能である場合には、昼間時間帯の割高な商用電力を買電して沸上運転を行わなければならないので、経済性が悪くなる。本実施の形態において、制御部36は、余剰電力予測情報に基づいて翌日の余剰電力沸上運転が実施不可能と予測される場合には、要求熱量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施することが望ましい。要求熱量に相当する熱量を夜間沸上運転で貯湯タンク8に貯えておけば、昼間時間帯に沸上運転が必要になることを抑制できるので、昼間時間帯の割高な商用電力を貯湯式給湯装置35が使用することを抑制できる。
本実施の形態では、沸上運転により生成される熱量、貯湯タンク8の蓄熱量などの熱量を、典型的な給湯温度である42℃の湯に換算した湯量で表す場合がある。この場合、湯量と熱量とは、例えば、次式により換算できる。
熱量[kcal]=(42℃−給水温度)×湯量[L]
熱量[kJ]=(42℃−給水温度)×湯量[L]×4.19
本実施の形態の貯湯式給湯装置35は、余剰電力を沸上運転に活用する程度を使用者が選択するためのモードとして、「活用なし」モードと、余剰活用「中」モードと、余剰活用「高」モードとを設定可能になっている。使用者は、リモコン44を操作することで、これらのモードのうちのいずれかを設定することができる。「活用なし」モードは、余剰電力沸上運転を実施しないモードである。例えば、余剰電力を電力系統へ逆潮流させて売電することを優先したい使用者は、「活用なし」モードを設定することで、売電量を多くすることができる。
余剰活用「中」モードは、貯湯タンク8の湯切れが発生することを確実に抑制できる範囲において余剰電力を沸上運転に活用可能とするモードである。この余剰活用「中」モードは、第一の余剰電力活用モードに相当する。余剰活用「高」モードは、余剰活用「中」モードよりも多くの余剰電力を沸上運転に活用可能とするモードである。余剰活用「高」モードでは、湯切れの発生を確実に抑制できない可能性がある。余剰活用「高」モードは、第二の余剰電力活用モードに相当する。
図2は、本実施の形態において夜間目標貯湯量を決定する処理を示すフローチャートである。夜間目標貯湯量は、夜間沸上運転により貯える目標熱量である夜間目標熱量に相当する。以下の説明では、制御部36が本処理を実行するものとして説明するが、変形例として、制御部36以外の機器、例えばエネルギー管理装置48が本処理を行ってもよい。制御部36は、夜間時間帯が開始する前に本処理を実行する。
まず、ステップS1で、制御部36は、翌日の給湯負荷分を賄うための要求貯湯量を算出する。この要求貯湯量は、前述した要求熱量に相当する。制御部36は、例えば、過去2週間における一日の使用湯量を統計的に処理した値(例えば平均値)を用いて要求貯湯量を算出してもよい。
次に、ステップS2として、制御部36は、「活用なし」モードが設定されているかどうかを判断する。「活用なし」モードが設定されている場合には、制御部36は、ステップS9として、要求貯湯量に等しい値を夜間目標貯湯量として決定する。
これに対し、「活用なし」モードが設定されていない場合、すなわち余剰活用「中」モードまたは余剰活用「高」モードが設定されている場合には、制御部36は、ステップS3として、制御部36は、要求貯湯量から余剰電力湯量を差し引いた値を夜間目標貯湯量として算出する。余剰電力湯量は、前述した余剰電力熱量に相当する。例えば、制御部36は、次式により余剰電力湯量を計算できる。
余剰電力湯量[L]=HPユニット7の加熱能力[kW]×余剰電力沸上運転の予測運転時間[h]×860÷(42℃−給水温度)
次いで、ステップS4として、制御部36は、余剰活用「中」モードが設定されているかどうかを判断する。余剰活用「中」モードが設定されている場合には、制御部36は、ステップS5として、ステップS3で算出した夜間目標貯湯量が第一集中湯量よりも少ないかどうかを判断する。
ここで、第一集中湯量について説明する。第一集中湯量は、一日のうちで集中的に使用されると想定される最大の湯量として制御部36が記憶している値である。制御部36は、例えば以下のような処理によって第一集中湯量を算出してもよい。一日の中で所定時間(例えば5分)以内に湯の使用があった場合には、使用された湯量を積算していき、所定時間内に湯の使用がなければ積算を終了し、その積算された値を集中湯量として記憶する。この際、42℃の湯の量に換算して使用湯量を計算する。その日のうちで最も大きい集中湯量をメイン集中湯量とする。過去2週間におけるメイン集中湯量を統計的に処理した値を第一集中湯量として算出する。例えば、過去2週間のうちで最も大きいメイン集中湯量の値を第一集中湯量としてもよい。典型的には、浴槽30の湯はりに使用される湯の量が第一集中湯量として記憶される場合が多い。なお、上記所定時間は、湯の使用状況に応じて変化させてもよい。
次に、第二集中湯量について説明する。第二集中湯量は、一日のうちで集中的に使用されると想定される湯量のうち2番目に大きい湯量として制御部36が記憶している値である。制御部36は、例えば以下のような処理によって第二集中湯量を算出してもよい。上記のようにして計算された一日の集中湯量のうちでメイン集中湯量の次に大きい値をサブ集中湯量とする。過去2週間におけるサブ集中湯量を統計的に処理した値を第二集中湯量として算出する。例えば、過去2週間のうちで最も大きいサブ集中湯量の値を第二集中湯量としてもよい。第二集中湯量は、例えばシャワーに使用される湯の量に相当する。
図2のフローチャートに戻って説明する。ステップS3で算出した夜間目標貯湯量が第一集中湯量以上である場合には、制御部36は、本フローチャートの処理を終了する。この場合には、ステップS3で算出した値が夜間目標貯湯量として決定する。
これに対し、ステップS3で算出した夜間目標貯湯量が第一集中湯量よりも少ない場合には、ステップS5からステップS6へ移行する。ステップS6で、制御部36は、夜間目標貯湯量を、第一集中湯量に等しい値に変更する。すなわち、この場合には、第一集中湯量に等しい値が夜間目標貯湯量として決定する。
また、ステップS4で余剰活用「中」モードが設定されていない場合、すなわち余剰活用「高」モードが設定されている場合には、制御部36は、ステップS7として、ステップS3で算出した夜間目標貯湯量が第二集中湯量よりも少ないかどうかを判断する。ステップS3で算出した夜間目標貯湯量が第二集中湯量以上である場合には、制御部36は、本フローチャートの処理を終了する。この場合には、ステップS3で算出した値が夜間目標貯湯量として決定する。
これに対し、ステップS3で算出した夜間目標貯湯量が第二集中湯量よりも少ない場合には、ステップS7からステップS8へ移行する。ステップS8で、制御部36は、夜間目標貯湯量を、第二集中湯量に等しい値に変更する。すなわち、この場合には、第二集中湯量に等しい値が夜間目標貯湯量として決定する。
制御部36は、以上のようにして決定された夜間目標貯湯量に相当する熱量を、夜間時間帯の終了時点までに生成して貯湯タンク8内に貯えるように、夜間沸上運転を制御する。制御部36は、夜間時間帯の開始時刻に夜間沸上運転を開始してもよいが、例えば、以下のようにしてもよい。制御部36は、夜間目標貯湯量に相当する熱量の値と、HPユニット7の加熱能力の値と、夜間沸上運転前の貯湯タンク8の蓄熱量などに基づいて、夜間沸上運転の必要運転時間を計算する。夜間時間帯の終了時刻(例えば7時)から、この必要運転時間だけ遡った時刻に夜間沸上運転を開始する。すなわち、夜間時間帯の終了時点に夜間沸上運転が終了するようにする。これにより、夜間沸上運転の終了から、給湯利用までの時間をなるべく短くできるので、貯湯タンク8から散逸する熱量を低減できる。
上述したように、本実施の形態では、余剰活用「中」モードが設定されている場合には、以下のようになる。夜間目標貯湯量が第一集中湯量以上である場合には夜間目標貯湯量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施し、夜間目標貯湯量が第一集中湯量よりも少ない場合には第一集中湯量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施する。これにより、余剰活用「中」モードでは、最低でも第一集中湯量に相当する熱量が貯湯タンク8に貯えられるように夜間沸上運転が制御される。このため、湯切れの発生を確実に抑制しつつ、余剰電力の活用を図ることができる。例えば、余剰電力沸上運転が開始される前に第一集中湯量に相当する給湯需要が発生したような場合においても、湯切れの発生を確実に抑制できる。本実施の形態では、第一集中湯量に相当する熱量が「第一下限熱量」に相当する。
また、余剰活用「高」モードが設定されている場合には、以下のようになる。夜間目標貯湯量が第二集中湯量以上である場合には夜間目標貯湯量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施し、夜間目標貯湯量が第二集中湯量よりも少ない場合には第二集中湯量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施する。これにより、余剰活用「高」モードでは、最低でも第二集中湯量に相当する熱量が貯湯タンク8に貯えられるように夜間沸上運転が制御される。第二集中湯量は、第一集中湯量よりも小さい。このため、余剰活用「高」モードでは、夜間沸上運転で生成する熱量を余剰活用「中」モードよりもさらに少なくできるので、夜間沸上運転のときに電力系統から買電する電力量がさらに少なくなり、より経済的になる。また、余剰電力沸上運転が開始される前でも、最低でも第二集中湯量に相当する熱量が貯湯タンク8に貯えられているので、湯切れの発生をなるべく抑制できる。本実施の形態では、第二集中湯量に相当する熱量が「第二下限熱量」に相当する。
前述したように、第一集中湯量は、典型的には浴槽30の湯はりに使用されるものであるので、夕方から晩の時間帯に使用される場合が多い。すなわち、余剰電力沸上運転が開始される前に第一集中湯量に相当する給湯需要が発生する可能性は、比較的小さい。このため、余剰活用「高」モードが設定されている場合であっても、湯切れが発生する可能性は比較的小さい。
しかしながら、余剰活用「高」モードが設定されている場合において、余剰電力沸上運転が開始される前に第一集中湯量に相当する給湯需要が発生した場合には、湯切れが発生する可能性がある。このため、制御部36は、余剰活用「高」モードが設定されている場合には、貯湯タンク8が湯切れする可能性があることを、リモコン44の表示部44aまたは音声案内などにより、使用者に報知することが望ましい。例えば、「余剰電力の発生が予測される場合に朝方の給湯機の湯量を少なくするため、注意してお湯をご使用ください」のようなメッセージをリモコン44の表示部44aに表示したり音声案内すればよい。また、制御部36は、余剰活用「中」モードが設定されている場合においても、上記と類似の方法により、湯の使い方への注意を喚起する情報を使用者に報知してもよい。
本実施の形態であれば、余剰活用「中」モード及び余剰活用「高」モードを備えたことで、使用者の需要に合わせて、余剰電力をより有効活用することが可能となる。例えば、湯切れを確実に防止しつつ余剰電力の活用を図りたい使用者は余剰活用「中」モードを選択し、余剰電力の活用をさらに優先したい使用者は余剰活用「高」モードを選択することができるので、優れた使い勝手が得られる。
本実施の形態では、第一集中湯量を給湯可能な熱量を第一下限熱量として設定しているが、第一下限熱量の値はこれに限定されるものではない。例えば、第一集中湯量を給湯可能な熱量に所定値を加算した熱量に相当する値を第一下限熱量として設定してもよい。
本実施の形態では、第二集中湯量を給湯可能な熱量を第二下限熱量として設定しているが、第二下限熱量の値はこれに限定されるものではない。例えば、第二集中湯量を給湯可能な熱量に所定値を加算した熱量に相当する値を第二下限熱量として設定してもよい。
過去に、夜間時間帯の終了時点から余剰電力沸上運転の開始前に第一集中湯量を使用した実績がある場合には、余剰活用「高」モードが設定されると湯切れの懸念があると考えられる。この場合には、制御部36は、第二下限熱量の値が大きくなるように補正してもよい。これにより、湯切れの発生をなるべく抑制できる。
エネルギー管理装置48から余剰電力予測情報を受信するための通信が一定時間(例えば1時間)途絶した場合には、制御部36は、余剰活用「中」モード及び余剰活用「高」モードの設定を自動で解除し、「活用なし」モードを設定してもよい。余剰電力予測情報を受信するための通信が途絶している場合には、余剰電力沸上運転が実施できるかどうかを正確に予測することができないので、「活用なし」モードを設定することで、湯切れの発生を確実に防止することができる。
制御部36は、湯切れを予防するための沸上運転である湯切れ予防運転を行う機能を有する。湯切れ予防運転を開始する契機となる貯湯タンク8の蓄熱量の値を以下「起動貯湯量」と称する。制御部36は、貯湯タンク8の蓄熱量が起動貯湯量に相当する熱量を下回ると、湯切れ予防運転を開始する。
図3は、本実施の形態において起動貯湯量を決定する処理を示すフローチャートである。以下の説明では、制御部36が本処理を実行するものとして説明するが、変形例として、制御部36以外の機器、例えばエネルギー管理装置48が本処理を行ってもよい。
まず、ステップS11で、制御部36は、余剰電力予測情報に基づいて、余剰電力沸上運転が実施可能であるかどうかを判断する。余剰電力沸上運転が実施可能と予測される場合にはステップS12へ移行し、余剰電力沸上運転が実施不可能と予測される場合にはステップS16へ移行する。
ステップS12で、制御部36は、余剰活用「高」モードが設定されているかどうかを判断する。余剰活用「高」モードが設定されている場合にはステップS13へ移行し、余剰活用「中」モードまたは「活用なし」モードが設定されている場合にはステップS16へ移行する。
ステップS13で、制御部36は、現在時刻が夜間時間帯終了時点から余剰電力沸上運転の開始前の間にあるかどうかを判断する。現在時刻が夜間時間帯終了時点から余剰電力沸上運転の開始前の間である場合にはステップS14へ移行し、そうでない場合にはステップS16へ移行する。
ステップS14で、制御部36は、当日の浴槽30の湯はり状況を確認する。浴槽30の湯はりが開始されていれば、ステップS16へ移行する。ステップS16では、第一集中湯量に等しい値を起動貯湯量として決定する。この場合には、貯湯タンク8の蓄熱量が、第一集中湯量を給湯可能な熱量を下回ったときに、湯切れ予防運転が実施されることになる。この場合の湯切れ予防運転を以下「第一の湯切れ予防運転」と称する。
一方、ステップS14で浴槽30の湯はりがまだ開始していない場合には、ステップS15へ移行する。ステップS15では、第二集中湯量に等しい値を起動貯湯量として決定する。この場合には、貯湯タンク8の蓄熱量が、第二集中湯量を給湯可能な熱量を下回ったときに、湯切れ予防運転が実施されることになる。この場合の湯切れ予防運転を以下「第二の湯切れ予防運転」と称する。
本実施の形態では、余剰活用「高」モードが設定されている場合には、余剰電力沸上運転が開始するときまでは、ステップS13からステップS15までの処理により、第一集中湯量よりも少ない第二集中湯量が起動貯湯量として設定される。すなわち、余剰活用「高」モードが設定されている場合には、制御部36は、余剰電力沸上運転が開始するときまでは、第一の湯切れ予防運転を禁止する。これにより、余剰活用「高」モードが設定されている場合に、余剰電力沸上運転の開始前に湯切れ予防運転が実施されることをなるべく抑制できるので、使用者の意向に沿って、余剰電力をより多く活用することが可能となる。
本実施の形態では、余剰活用「高」モードが設定されている場合において、余剰電力沸上運転が開始する前に浴槽30の湯はりが開始された場合には、ステップS13、ステップS14、ステップS16の処理により、第一集中湯量が起動貯湯量として設定される。すなわち、余剰活用「高」モードが設定されている場合であっても、余剰電力沸上運転が開始する前に第一集中湯量に相当する給湯が開始された場合には、制御部36は、第一の湯切れ予防運転の禁止を解除し、第一の湯切れ予防運転の実施を許容する。これにより、余剰活用「高」モードが設定され、かつ余剰電力沸上運転が開始する前に第一集中湯量に相当する給湯が開始された場合であっても、湯切れが発生することをなるべく抑制することができる。
上述したステップS15では、第二集中湯量に等しい値を起動貯湯量として決定したが、変形例として、使用者の湯の使い方の変動あるいは貯湯タンク8からの放熱などを考慮して、第二集中湯量に湯量マージン(例えば50L)を加算した値を起動貯湯量として決定してもよい。
上述したステップS16では、第一集中湯量に等しい値を起動貯湯量として決定したが、変形例として、使用者の湯の使い方の変動あるいは貯湯タンク8からの放熱などを考慮して、第一集中湯量に湯量マージン(例えば50L)を加算した値を起動貯湯量として決定してもよい。
上述したステップS14では、浴槽30の湯はりが開始したかどうかを判断しているが、変形例として、浴槽30への給湯量が判定値を超えたかどうかを判断してもよいし、浴槽30の湯はりに限らず第一集中湯量と同等の湯の使用があったかどうかを判断してもよい。
制御部36は、エネルギー管理装置48からの余剰電力予測情報を定期的に受信する。例えば気象予報の内容が変化したことなどにより、余剰電力予測情報の内容が変化する可能性がある。例えば、気象予報の内容が好天の予報から悪天の予報に変わると、余剰電力予測情報の内容が、余剰電力沸上運転を実施可能であることを示す内容から余剰電力沸上運転を実施不可能であることを示す内容へ変化する可能性がある。このようなことに鑑みて、以下のようにしてもよい。余剰活用「高」モードが設定されている場合に、余剰電力予測情報の内容が、余剰電力沸上運転を実施可能であることを示す内容から余剰電力沸上運転を実施不可能であることを示す内容へ変化した場合には、制御部36は、第一の湯切れ予防運転の禁止を解除し、第一の湯切れ予防運転の実施を許容する。これにより、予定していた余剰電力沸上運転が実施できない見込みになった場合であっても、湯切れが発生することをより確実に抑制できる。
また、余剰電力予測情報の内容が、余剰電力沸上運転を実施可能であることを示す内容から余剰電力沸上運転を実施不可能であることを示す内容へ変化した場合には、制御部36は、余剰活用「中」モード及び余剰活用「高」モードの設定を自動で解除し、「活用なし」モードを設定してもよい。これにより、予定していた余剰電力沸上運転が実施できない見込みになった場合であっても、湯切れが発生したり、昼間時間帯に電力系統からの買電によって湯切れ予防運転が必要になったりすることをより確実に抑制できる。
上述した実施の形態では、余剰活用「中」モード(第一の余剰電力活用モード)及び余剰活用「高」モード(第二の余剰電力活用モード)の二つの余剰電力活用モードを備えた例について説明したが、三つ以上の余剰電力活用モードを備えるように構成してもよい。例えば、夜間目標熱量が第二下限熱量よりも小さい第三下限熱量以上である場合には夜間目標熱量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施し、夜間目標熱量が第三下限熱量よりも少ない場合には第三下限熱量に相当する熱量を貯えるように夜間沸上運転を実施する第三の余剰電力活用モードをさらに設定可能としてもよい。