JP6746045B1 - サイトカイン放出症候群等の改善剤 - Google Patents
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Abstract
Description
最近の研究の進展により、単球やマクロファージの異常活性化及びそれに伴う組織障害(MAS、マクロファージ活性化症候群ともいう)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)やランゲルハンス細胞組織球症(LCH)などと呼ばれる骨病変及び皮膚病変若しくは全身臓器病変がT細胞の活性化に伴って発症することが明らかとなった。
CRS毒性は、CAR-T細胞のがん患者への移入によって必発するもので、CAR-T細胞の適応又は試行を広げる上で、その制御が極めて重要である4)(非特許文献1)。
CAR-T細胞による血液がん細胞やがん組織の認識と破壊の機序は明確であるが、CRS毒性の機序については不明な点が多い。CAR-T細胞療法と同時に承認されたInterleukin(IL)-6R抗体(トシリズマブ)が、CRS毒性を許容域まで制御できることから、CRS毒性機序としてIL-6過剰産生による正常組織の炎症的障害機序が示唆されている5)(非特許文献2)。
その他にも、移入するCAR-T細胞数の増加や抗がん剤前処理によるCAR-T細胞のがん組織アクセスの改善なども、現実的ながん退縮効果増強の方策と考えられる。
そのようなCAR-T細胞療法の改良によって、今後はさらに、併発・必発するCRS毒性14)の許容され得る適切な制御は重要な課題になると考えられる。
JTE-607は炎症性サイトカイン産生を抑制し、myeloid系細胞に選択性を有する化合物であり、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)患者を対象として第二相試験が実施された。第一相後期試験においては、JTE-607はLPS負荷におけるIL-6、IL-8等の炎症性サイトカイン産生を抑制し、C反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)上昇を投与量依存的に抑制することが明らかにされた。また、その後in vitro系で、急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia:AML)細胞株の自己増殖を選択的に抑制することも明らかにされた1)(非特許文献7)。
このTエフェクター細胞の過剰増殖は内生的にも起こる現象で、例えば免疫チェックポイント阻害薬投与による「内在性抗がん作用Tエフェクター細胞の過剰増幅」やウイルス感染・増幅時に惹起される「抗ウイルス性Tエフェクター細胞の過剰増幅」が挙げられる。これら治療及び疾患発症時に併発するirAEsやHLH及びMASにおけるマクロファージ異常活性化・サイトカイン過剰産生は、CAR-T細胞療法に併発するCRS毒性との共通事象として捉えることができる。事実、irAEsへのトシリズマブの効果が検討され、一定の効果が報告されている(非特許文献12)。
(1) 次式I:
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
(3)窒素含有非芳香族アルキル基がアルキルアミノ基であり、Aが炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基であり、R2が酸素原子であり、R3が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R3の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R4がフェニル基であり、R5が−COO−で示される基を表し、R6が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基である、(1)に記載の医薬。
(6)式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式IIIで示される化合物の塩酸塩である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の医薬。
(7)式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、次式IV:
(9)サイトカインの産生及びマクロファージの活性化の少なくとも1つを抑制する、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の医薬。
(10)サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン増殖因子(IGF)、インターフェロン(IFN)-γ、IFN-γ誘導蛋白10(IP-10)、単球走化性因子(MCP)-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、オステオポンチン(OPN)、Receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、サイトカイン受容体gp130、遊離型IL-1受容体(sIL-1R)-1、sIL-1R-2、遊離型IL-6受容体(sIL-6R)、遊離型終末糖化産物受容体(sRAGE)、遊離型TNF受容体(sTNFR)-1、sTNFR-2、IFN-γ誘導モノカイン(MIG)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)-1α及びMIP-1βからなるから選ばれる少なくとも1つである、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の医薬。
(12)サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つの予防又は改善のための、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の医薬。
(13−1)次式I:
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つの予防剤、治療剤又は改善剤。
また、別の態様では、窒素含有非芳香族アルキル基がアルキルアミノ基であり、Aが炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基であり、R2が酸素原子であり、R3が同一又は異なって水素原子又はハロゲン原子であり(但し、R3の少なくとも1つは水素原子ではない。)、R4がフェニル基であり、R5が−COO−で示される基を表し、R6が炭素数1〜10の直鎖状のアルキル基である。
1.概要
本発明は、次式I:
以上より、本発明の化合物は、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患又は症状に対する医薬として、例えばCAR-T細胞療法に併発するCRS毒性の改善・予防に有効な治療ツールとなる。従って、本発明は、本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬を、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患又は症状を有する患者に投与する工程を含む、当該疾患又は症状の予防方法又は改善若しくは治療方法を提供する。
「治療」とは、上記疾患又は症状を阻害すること、すなわち、これらの進行を阻止、遅延又は消失することを意味する。
「改善」とは、上記疾患又は症状を緩和すること、すなわち、上記疾患又は症状の後退、又は症状の進行の逆転を引き起こすことを意味する。
本発明において、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHからなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患又は症状に対する医薬(例えばこれらの疾患の予防、治療又は改善剤)として使用される有効成分となる化合物は、次式Iに示されるものである。本発明の化合物において、式Iに示すものを、「化合物(I)」ともいう。
Aは、単結合、又は置換されていてもよく、かつ鎖中に1若しくは2以上の二重結合若しくは三重結合を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。Aは、炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基であることがさらに好ましい。
R2は、酸素原子、又は−CO−、−COO−、−OCO−若しくは−O−CO−O−で示される基を表す。
R3は、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、又は置換されていてもよく、かつ直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基を表す。但し、R3の少なくとも1つは水素原子ではない。
nは1〜4の整数を表し、3であることが好ましく、そのうちの2つがハロゲン原子、他の1つが水酸基であることがさらに好ましい。
R5は、酸素原子、又は−CO−、−COO−、−OCO−若しくは−O−CO−O−で示される基を表し、−COO−で示される基であることが好ましい。
R6は、水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、若しくは置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基が好ましく、エチル基であることがさらに好ましい。
「窒素含有非芳香族複素環基」とは、少なくとも1 個の窒素原子を有し、硫黄原子又は酸素原子を有していてもよい3〜7員の非芳香族複素環基を意味し、これらはベンゼン環と縮合していてもよい。具体的にはアジリジニル基、チアゼチジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、モルホリニル基、モルホリノ基、オキサジニル基、チアジニル基、ピペラジニル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ジオキサゼピニル基、チアゼピニル基、ジアゼピニル基、パーヒドロジアゼピニル基、アゼピニル基、パーヒドロアゼピニル基、インドリニル基、イソインドリニル基等が挙げられる。好ましくはアジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピラゾリジニル基、モルホリニル基、モルホリノ基、ピペラジニル基、ピペリジル基、ピペリジノ基、パーヒドロアゼピニル基であり、特に好ましくはピペラジニル基、ピペリジル基である。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3、3−ジメチルブチル基、2、2−ジメチルブチル基、1、1−ジメチルブチル基、1、2−ジメチルブチル基、1、3−ジメチルブチル基、2、3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−リデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。アルコキシ基は炭素数1〜20個のアルコキシ基であり、アルコキシ基のアルキル部分は上記に説明したアルキル基と同様である。
複素環基は、少なくとも1個の窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を有していてもよい3〜7員の非芳香族複素環基を意味し、具体的置換基は、「窒素含有非芳香族複素環基」の項で説明した内容と同様である。
炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、硝酸などが挙げられ、有機酸としては、例えば、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、酢酸、乳酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、吉草酸、マロン酸、ニコチン酸、プロピオン酸などが挙げられる。
本発明の好ましい酸付加塩は、塩酸との塩であり、さらに好ましくは二塩酸塩である。
化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のカルボキシル基が、エチル基、ピバロイルオキシメチル基、1−(アセチルオキシ)エチル基、1−(エトキシカルボニルオキシ)エチル基、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル基、カルボキシルメチル基、(5−メチル−2−オキソ−1、3−ジオキソール−4−イル)メチル基、フェニル基、o−トリル基等で修飾された化合物などが挙げられる。また、化合物(I)の水酸基が、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、ジメチルカルバモイル基、スルホ基で修飾された化合物等が挙げられる。
特に、本発明においては、CRS、irAEs、HLH、MAS及びLCHのうち1つ又は複数の疾患又は症状に対する医薬として有効である。
「サイトカイン」としては、例えば腫瘍壊死因子(TNF)-α、IL-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン増殖因子(IGF)、インターフェロン(IFN)-γ、IFN-γ誘導蛋白10(IP-10)、単球走化性因子(MCP)-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、オステオポンチン(OPN)、Receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、サイトカイン受容体gp130、遊離型IL-1受容体(sIL-1R)-1、sIL-1R-2、遊離型IL-6受容体(sIL-6R)、遊離型終末糖化産物受容体(sRAGE)、遊離型TNF受容体(sTNFR)-1、sTNFR-2、IFN-γ誘導モノカイン(MIG)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)-1α、MIP-1βなどが挙げられる。
免疫チェックポイント阻害薬とは、免疫チェックポイント分子(自己に対する免疫応答を抑制するとともに過剰な免疫反応を抑制する分子群)又はそのリガンドに結合して免疫抑制シグナルの伝達を阻害することで、免疫チェックポイント分子によるT細胞の活性化抑制を解除する薬剤であり、例えば抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体などが挙げられる。
改変T細胞受容体発現T(TCAR-T)細胞療法は、例えばがん抗原エピトープを特定ヒト白血球抗原(HLA)拘束性に認識する特定TCR遺伝子を、体外でエフェクターT細胞に遺伝子導入し、増幅した後に体内に投与する療法であり、CAR-T細胞療法に類似の細胞療法である。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因する、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するサイトカイン放出症候群に対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するマクロファージ活性化症候群に対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因する血球貪食性リンパ組織球症に対する医薬。
・キメラ抗原受容体発現T細胞療法と組み合わせて使用するための、式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するサイトカイン放出症候群に対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するマクロファージ活性化症候群に対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因する血球貪食性リンパ組織球症に対する医薬。
・改変T細胞受容体発現T細胞療法と組み合わせて使用するための、式Iで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、サイトカイン放出症候群、マクロファージ活性化症候群及び血球貪食性リンパ組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つに対する医薬。
ここで、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-18、IFN-γ及びMCP-1からなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
ここで、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-18、IFN-γ及びMCP-1からなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
・自己免疫疾患により誘発されるランゲルハンス細胞組織球症に対する医薬。ここで、IL-18、MCP-1及びOPNからなる群から選ばれる少なくとも1つの、より好ましくは複数の、サイトカインの産生を抑制する医薬が好ましい。
本発明の化合物(特に化合物(III)又はその薬学的に許容される塩)が成人に静脈内投与される場合、例えば、1日の用量として、通常、約0.01〜100 mg/kg (例えば、約0.01〜95 mg/kg、好ましくは約0.01〜50 mg/kg)であり、一回又は数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10回又はそれ以上)に分けて投与することができる。あるいは、本発明の化合物 (特に化合物(III)又はその薬学的に許容される塩)は、期間(例えば、数時間から一日又はそれ以上)を選択して、持続静脈内投与してもよい。持続投与の一日総投与量は、通常、非持続静脈内投与で使用される一日投与量と同じである。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
1.1 材料
1.1.1 細胞
Cryopreserved Human PBMC(PBMC):BIOPREDIC
CD3/CD28シグナル配列含有CD19-CAR-T細胞(CAR-T細胞):東京大学医科学研究所分子療法分野より提供
CD19発現K562細胞株(標的細胞):東京大学医科学研究所分子療法分野より提供
Human Monocyte(単球): BIOPREDIC
Lenti-X293T 細胞:Clontech
RPMI1640 medium:Thermo fisher (Gibco)
Fetal Bovine Serum (FBS):Thermo fisher (Gibco)
D-PBS(-):和光純薬工業
エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物(EDTA):純正化学
Albumin from bovine serum(BSA):SIGMA
Dimethyl Sulfoxide(DMSO):SIGMA
Penicillin-Streptomycin-Glutamine:Thermo fisher
2-Mercaptoethanol:SIGMA
Trypan Blue Stain 0.4%(トリパンブルー溶液):Thermo fisher (Gibco)
1 mol/L HEPES Buffer Solution:ナカライテスク
1 mol/L Sodium Hydroxide Solution:FUJIFILM Wako Pure Chemical Corporation
CD4 MicroBeads human:Miltenyi Biotec
CD8 MicroBeads human:Miltenyi Biotec
CD14 MicroBeads human:Miltenyi Biotec
MACS BSA Stock Solution:Miltenyi Biotec
AutoMACS Rinsing Solution:Miltenyi Biotec
Dynabeads Human T-Activator CD3/28(T細胞刺激ビーズ):Thermo fisher (Gibco)
Recombinant Human M-CSF:Pepro Tech
Recombinant Human IFN-γ:Pepro Tech
JTE-607 dihydrochloride(カタログ名としての記載):Tocris Cat. No. 5185
プレドニゾロン(PSL):和光純薬工業 Cat. No.165-11491
トシリズマブ:absolute antibody Cat. No.L6529-1MG
Lipopilysaccharides from Escherichia coli 055:B55(LPS):SIGMA
アデノシン 5'-三リン酸 二ナトリウム塩 水和物(ATP):SIGMA
Human IFN-γ DuoSet ELISA:R&D systems
Human IL-6 DuoSet ELISA:R&D systems
Human CCL2/MCP-1 DuoSet ELISA:R&D systems
Human TNF-α DuoSet ELISA:R&D systems
Human OPN DuoSet ELISA:R&D systems
Human IL-1β DuoSet ELISA:R&D systems
Human IL-18 DuoSet ELISA:R&D systems
Human VEGF DuoSet ELISA:R&D systems Human IL-8 DuoSet ELISA:R&D systems
DuoSet ELISA Ancillary Reagent Kit 2:R&D systems
HQPlex Premixed Analyte Kit(マルチプレックスアッセイ):Bay bioscience
In-Fusion HDクローニングキット:タカラバイオ
MidiMACS Separator:Miltenyi Biotec
MidiMACS - LS columns(分離用カラム):Miltenyi Biotec
ポリプロピレンコニカルチューブ(チューブ):FALCON
Tissue Culture Plate, 96 well, Flat Bottom with Low Evaporate Lid(96 well plate):FALCON
10% FBS RPMI (medium):
RPMI1640に、非働化FBS 50 mL、Penicillin-Streptomycin-Glutamine 5 mL、0.1 M 2-Mercaptoethanol 250 μLを添加し、全量を500 mLとした。4℃で保存し、使用前に恒温槽で37℃に加温して使用した。
2 mM EDTA, 0.5%BSA-PBS(MACS Buffer):
D-PBS(-) 44 mLに、5%BSA溶液5 mL及び100 mM EDTA溶液1 mLを添加した。調製後は4℃で保存した。
恒温槽:Thermal ROBO TR-1A、AS ONE
遠心機:AX-320、TOMY
CO2インキュベーター:MCO-170AICUVH、PANASONIC
プレートリーダー:SPECTRAmax 384plus、Molecular Devices
FACSVerseTM フローサイトメーター:Becton, Dickinson and Company
EnSpire 2300:パーキンエルマージャパン
1.2.1 CD8+T細胞のT細胞刺激ビーズによるIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温、300g、10分間)を行い、上清を除去後、mediumに懸濁し、一部をトリパンブルー溶液と混合し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、細胞1×107 cellsあたりMACS Buffer 80 μLを加え懸濁後、さらにHuman CD8 MicroBeads 20 μLを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Buffer 2 mLを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)を50 μL/well添加し、T細胞刺激ビーズ10 μL/well(T細胞刺激ビーズ原液2 μL相当)及びmedium 40 μL/wellを加えCO2インキュベーター内で3日間培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IFN-γ DuoSet ELISAを用いてIFN-γの定量を行った。
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
ここにMACS Bufferを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14+細胞を分離した。CD14+細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2.4×105又は3×105 cells/mL細胞懸濁液を調製し、96 well plateに播種(2.4×104 cells/well)し、CO2インキュベーター内に1〜2時間静置した。
回収した培養上清は、Human IL-6 DuoSet ELISAを用いてIL-6の定量を行った。
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 10 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、1×106 cells/mLになるようmediumを加え、細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×105 cells/well)した。0.12%DMSO溶液、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)又はPSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)を30 μL/well添加し、LPS溶液を5 μL/well添加した(最終濃度3 ng/mL)。CO2インキュベーター内で3日間培養し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human IL-6 DuoSet ELISAを用いてIL-6の定量を行った。
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 10 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、1×106 cells/mLになるようmediumを加え、細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×105 cells/well)し、CO2インキュベーター内に1〜2時間静置させた。
回収した培養上清は、Human IFN-γ DuoSet ELISA及びHuman IL-6 DuoSet ELISAを用いてIFN-γ及びIL-6の定量を行った。
凍結human PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 10 mLに懸濁し、生細胞数の計数を行った。残りの細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、細胞1×107 cellsあたりMACS Buffer 80 μL及びHuman CD4 MicroBeads 20 μLを添加し懸濁を行った。氷上で15分間静置させ、MACS Buffer 2 mLを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。MACS Buffer 500 μLを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD4-細胞(CD4+細胞の素通り画分)を分離した。CD4-細胞の画分にmediumを加え、15 mLとし遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、再度medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。1×106 cells/mLになるようmediumを加えた細胞懸濁液を96 well plateに100 μL/wellで播種(1×105 cells/well)し、CO2インキュベーター内に1〜2時間静置させた。
回収した培養上清は、Human IFN-γ DuoSet ELISA及びHuman IL-6 DuoSet ELISAを用いてIFN-γ及びIL-6の定量を行った。
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
ここにMACS Bufferを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14+細胞を分離した。CD14+細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2.4×105又は3×105 cells/mL細胞懸濁液を調製し、96 well plateに播種(2.4×104 cells/well)し、CO2インキュベーター内に1〜2時間静置した。
回収した培養上清は、Human CCL2/MCP-1 DuoSet ELISAを用いてMCP-1の定量を行った。
1.2.1で回収した培養上清を、Human TNF-α DuoSet ELISAを用いてTNF-αの定量を行った。
1.2.2で回収した培養上清を、Human TNF-α DuoSet ELISAを用いてTNF-αの定量を行った。
1.2.2で回収した培養上清を、Human TNF-α DuoSet ELISAを用いてTNF-αの定量を行った。
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。ここにMACS Bufferを添加し、細胞を懸濁した後、分離用カラムを用いてCD14+細胞を分離した。CD14+細胞の画分にmediumを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)を行った。上清を除去し、medium 1 mLに懸濁し、生細胞数の計測を行った。Mediumを加え2.4×105又は3×105 cells/mL細胞懸濁液を調製し、96 well plateに播種(2.4×104 cells/well)し、CO2インキュベーター内に1〜2時間静置した。
回収した培養上清は、Human OPN DuoSet ELISAを用いてOPNの定量を行った。
1.2.10で回収した培養上清を、Human IL-1β DuoSet ELISAを用いてIL-1βの定量を行った。
凍結PBMCを37℃恒温槽で手早く解凍し、mediumの入ったチューブに添加した。遠心分離(室温,300g,10分間)を行い、上清を除去後、mediumに再懸濁し、生細胞数の計測を行った。細胞懸濁液を遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清除去後、MACS Bufferを加え懸濁後、さらにHuman CD14 MicroBeadsを添加した。氷上で15分間静置させた後、MACS Bufferを加え、遠心分離(室温,300g,10分間)し、上清を除去した。
回収した培養上清は、Human IL-18 DuoSet ELISAを用いてIL-18の定量を行った。
CD14+細胞を20 ng/mL M-CSF入りのRPMI培地で37℃で5日間培養し、マクロファージへ分化誘導した(その間,2日に1回 20 ng/mL M-CSF入りRPMI培地を追加した)。マクロファージを5×105cells/mLで96 well plateに播種し、JTE-607溶液(最終濃度10, 30, 100, 300 nM)、PSL溶液(最終濃度0.03, 0.3, 3, 30 μM)又はトシリズマブ(最終濃度10, 100, 1000 ng/mL)を添加しを添加後37℃で30分間インキュベートした。その後,RPMI培地のみ,又はLPS(最終濃度100 ng/mL)で37℃で3日間刺激し、培養上清を回収した。
回収した培養上清は、Human VEGF DuoSet ELISAを用いてVEGFの定量を行った。
FMC63 scFv、CD28のヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン及びCD3-ζ細胞質ドメインを用いて、Kochenderferらの方法15)に基づいて抗CD19 CARの構築を行った。配列はGenBank(HM852952)から入手し、IDTコドン最適化ツール(http://sg.igtdna.com/CodonOpt)を用いてFMC63内部のBamHI認識配列を除いた。最適化したFMC63-28z配列を化学合成し、以下のプライマーセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。
5'‐CGCTACCGTCGTCGAATTCGCCGCCACCATGCTTC‐3'(配列番号1)
5'‐GAAGTTCGTGCTCCGGGATCCCGCGAGGGGGCAG‐3'(配列番号2)
PCR産物を、In-Fusion HDクローニングキットを用いて、レンチウイルスプラスミドCSII-EF-MCS-2A-eGFPのマルチクローニングサイト(EcoRI及びBamHI)に挿入し、CSII-EF-FMC63-28z-2A-eGFPを得た。レンチウイルスベクターは、CSII-EF-FMC63-28z-2A-eGFPとパッケージングプラスミド(pMDLg/p.RRE、pRSV-rev及びpMD.G)をLenti-X293T 細胞に共トランスフェクションして作製した。作製したレンチウイルスベクターを抗CD3抗体、抗CD28抗体及びIL-2で刺激した末梢血単核球に感染させ、CD3陽性及びeGFP陽性分画をFACSソーティングしてCAR-T細胞とした。
Kochenderferらの方法15)に基づいてヒトCD19のオープンリーディングフレームを合成し、以下のプライマーを用いるPCRによって増幅した。
5'-ccggttcgaattcgccatATGCCACCTCCCGCCTC-3'(配列番号3)
5'-cgatgttaactctagatcaCCTGGGTGCTCCAGGTGC-3'(配列番号4)
PCR産物を、In-Fusion HDクローニングキットを用いて、EcoRI及びXbaI部位を用いてレンチウイルス骨格プラスミドCSII-EF-MCSに挿入し、CSII-EF-hCD19を得た。また、ホタルルシフェラーゼ(fLuc)発現プラスミドは、fLuc cDNAを以下のプライマーセットを用いpmirGLOプラスミド(Promega社)を鋳型としてPCRにより増幅した。
5'-GAATTCGCCACCATGGAAGATGCCAA -3'(配列番号5)
5'-GGATCCCACGGCGATCTTGCCGCC-3'(配列番号6)
PCR産物をEcoRI及びBamHIで切断後、CSII-EF-MCS-2A-eGFPのマルチクローニングサイトに挿入してCSII-EF-fLuc-2A-eGFPを得た。レンチウイルスベクターは、CSII-EF-hCD19又はCSII-EF-fLuc-2A-eGFPとパッケージングプラスミド(pMDLg/p.RRE, pRSV-rev及びpMD.G)をLenti-X293T細胞に共トランスフェクションして作製した。作製したレンチウイルスベクターはK562細胞に感染させ、CD19及びeGFP陽性分画をFACSソーティングし標的細胞とした。
標的細胞(3×103cells/well)を96 well plateに播種し、そこにE/T比が0,0.1,0.3,1,3及び10になるようにCAR-T細胞を加えた培養系に、CD14+細胞(1.5×104 cells/well)を添加又は非添加の条件で3日間インキュベートした。その後、ルシフェラーゼ活性をEnSpire 2300を用いて発光強度を検出した。
CAR-T細胞(5×104 cells/well)及び標的細胞(1×104 cells/well)を96 well plateに播種したところに、CD14+細胞 (1×104 cells/well)を添加又は非添加の条件でインキュベートした。培養開始後,0,4,24,48及び72時間後の上清を回収し、上清中のIFN-γ,TNF-α,MCP-1,IL-6及びIL-4をFACSのマルチプレックスアッセイで測定した。
CAR-T細胞(5×104cells/well)、標的細胞(1×104cells/well)及びCD14+細胞(5×104 cells/well)を96 well plateに播種し、JTE-607溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100, 1000 nM)、PSL溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100 μM)を添加し2日間インキュベートした。その後、ルシフェラーゼ活性を、EnSpire 2300を用いて発光強度により検出した。
CAR-T細胞(1.5×104cells/well)、標的細胞(3×103cells/well)と単球(1.5×104cells/well)を96 well plateに播種し、JTE-607溶液(最終濃度1, 10, 100, 1000 nM)、PSL溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100 μM)又はトシリズマブ溶液(最終濃度0.1, 1, 10, 100 μg/mL)を添加しインキュベートした。培養開始72時間後に上清を回収し、上清中の各種サイトカインをFACSのマルチプレックスアッセイにて測定した。
1.3.1 CD8+T細胞のT細胞刺激ビーズによるIFN-γ等産生に対するJTE-607及びPSLの作用
JTE-607はT細胞刺激ビーズによるCD8+T細胞からのIFN-γ産生に対し顕著な抑制作用を示さなかった(IC50値= >300 nM)。一方、PSLは当該IFN-γ産生を濃度依存的に抑制した(IC50値= 0.1494 μM)。JTE-607はCD8+T細胞に対する直接的な作用は弱いことが明らかとなった(図1、図3及び表1)。
CD14+細胞からのIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、IC50値は52.9 nM、0.151 μMであった。JTE-607はこれまで報告されていた通りmyeloid系細胞に対し作用を示すことが明らかとなった(図2、図3及び表1)。
PBMCからのIL-6産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、IC50値は17.7 nM、0.176 μMであった(図4及び表1)。
T細胞刺激ビーズ及びLPSの共刺激によるPBMCからのIL-6及びIFN-γ産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607は、共刺激によるIL-6及びIFN-γ産生を濃度依存的に抑制し、そのIC50値はIL-6が40.4 nM、IFN-γが50.1 nMであった。また、IL-6とIFN-γのIC50値に対する比(ratio)は0.81であった。一方、PSLはIL-6産生よりもIFN-γ産生を強く抑制した。JTE-607は、T細胞機能に強く作用するPSLとは異なることが明らかとなった(図5、図6及び表1)。
T細胞刺激ビーズ及びLPSの共刺激系におけるCD4+T細胞の関与を明らかにするためPBMCからCD4+T細胞を除去したCD4+T細胞欠如PBMCを用いてJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607は、共刺激によるIL-6及びIFN-γ産生を濃度依存的に抑制し、そのIC50値は同程度(IL-6 IC50値= 42.2 nM、IFN-γ IC50値= 80.9 nM)であった。また、IL-6とIFN-γのIC50値に対する比(ratio)は0.52であり、JTE-607はIL-6産生阻害作用に偏った作用を示した。一方、PSLはIFN-γ産生を濃度依存的に抑制(IC50値=0.042 μM)したが、IL-6産生は抑制しなかった(図7、図8及び表1)。PBMCとCD4+T細胞欠如PBMCを用いた検討において同様の結果を取得出来たため、T細胞刺激ビーズ及びLPSの共刺激系においてCD4+T細胞の関与は低いものであると考えられた。
CD14+細胞からのMCP-1産生に対するJTE-607及びPSLの作用を評価した。JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、IC50値はそれぞれ21.3 nM、6.598 μMであった。JTE-607はMCP-1産生阻害を介して強いマクロファージ活性化阻害作用を示すことが示唆された(図9及び表1)。
T細胞刺激ビーズによるCD8+T細胞からのTNF-α産生に対し、PSLの抑制作用(IC50値= 0.0348 μM)と比較し、JTE-607の抑制作用(IC50値= 231.4 nM)は弱いことが明らかとなった(図10及び表1)。
LPS刺激によるCD14+細胞からのTNF-α産生に対し、PSLは抑制作用が認められた(IC50値= 0.0417 μM)。一方、JTE-607は添加濃度に依存して抑制作用を示すもののIC50値の算出には至らなかった。一般的にCD14+細胞からのTNF-α産生は刺激直後より一過性に上昇することが知られている。今回測定に使用した培養上清はIL-6のように漸増するサイトカインの至適評価条件下で実施しており、TNF-αは産生量が低下している条件での評価であったためJTE-607の明確な抑制が認められなかったものと考えられた(図11及び表1)。
JTE-607及びPSLともに抑制活性を示し、そのIC50値は30.7 nM、0.073 μMであった(図12及び表1)。種々の細胞が混在しているPBMCにおいては相互的に刺激し合うことで持続的な産生が認められるためJTE-607は抑制作用を示したと考えられた。
CD14+細胞からのOPN産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を評価した。JTE-607は抑制活性を示し、IC50値は132.1 nMであった。一方、PSL及びトシリズマブにはOPN産生抑制作用は認められなかった(図13及び表1)。JTE-607は、OPN産生阻害を介して、LCH病変に見られる破骨細胞活性化を阻害することが示唆された。
JTE-607はIL-1β産生抑制活性を示し、IC50値は3.45 nMであった。一方、PSL及びトシリズマブにはIL-1β産生抑制作用は認められなかった(図14及び表1)。JTE-607にはPSL及びトシリズマブなどの既存薬とは異なる作用があることが示唆された。
LPS前処置CD14+細胞からのIL-18産生に対するJTE-607、PSL及びトシリズマブの作用を評価した。JTE-607は抑制活性を示し、IC50値は2.40 nMであった。一方、PSL及びトシリズマブにはIL-18産生抑制作用は認められなかった(図15及び表1)。JTE-607は、IL-18産生を阻害することにより、高いIL-18産生を特徴とする疾患群の病態を改善することが示唆された。IL-18は、IL-6に独立して高産生が維持される炎症性サイトカインであり、トシリズマブ投与で隠される炎症性病態へのJTE-607作用が示唆された。
マクロファージからのVEGF産生に対しPSLは強い作用を示し,最低評価濃度の30nMにおいても50%以上の抑制率であったためIC50値の算出には至らなかった。一方、JTE-607は抑制傾向は認められるもののその作用はマージナルであった。トシリズマブにおいてはVEGF産生抑制作用は認められなかった(図16及び表1)。
CRS毒性に繋がるサイトカイン遊離を検出するために、CAR-T細胞の標的細胞認識(キラー活性)の培養系と、それに末梢血CD14+細胞を添加した培養系を比較した。標的細胞へのキラー活性については、CD14+細胞共存培養ではCD14+非添加培養に比べて上昇した(図17)。
次に、CD14+細胞非添加及び添加培養における各種サイトカイン産生を経時的に定量した。CAR-T細胞に由来するサイトカインのIFN-γ産生は大きく違わなかった。一方で、IL-6やMCP-1産生は、数倍から10倍以上の産生が認められ、CD14+細胞の活性化状態が著しいことを反映する結果と考えられた(図18)。ちなみに、IL-6及びMCP-1ともCRS毒性の重症化を予測かつ判定するバイオマーカーとして報告16)されている。以上、3種類の細胞「CAR-T細胞、標的細胞及びCD14+細胞」混合培養系は、CAR-T細胞療法における“標的がん細胞キラー活性”と“CRS毒性”を同時に評価することが可能なin vitro培養系であると考えられた。
CAR-T細胞のキラー活性に対し、PSLは濃度に応じて抑制作用を示すものの、JTE-607は影響を及ぼさなかった(図19)。
キラー活性評価時の培養上清中の各サイトカインに対する評価を実施した。IFN-γ産生に対し、JTE-607とPSLは同程度の抑制活性が認められた。IL-6産生に対し、JTE-607のIC50値は187.5 nMであった。一方、PSLは抑制作用を示さなかった(図20及び表2)。MCP-1産生に対し、JTE-607は濃度依存的な抑制作用を示し、そのIC50値は37.6 nMであった。またPSLのIC50値は71.8 μMであった。一方、トシリズマブは抑制作用を示さなかった(図21及び表2)。IL-8産生に対し、JTE-607は抑制作用を示し、そのIC50値は153.8 nMであった。一方でPSL及びトシリズマブは抑制作用を示さなかった(図22及び表2)。TNF-α及びIL-1βに対して、JTE-607は抑制作用を示し、そのIC50値はそれぞれ413.1 nM、358.9 nMであった。一方でPSL及びトシリズマブは抑制作用を示さなかった(図23、図24及び表2)。IL-18については今回評価した条件では殆ど産生が認められず評価には至らなかった(25及び表2)。
免疫チェックポイント阻害薬やウイルス感染等によって過剰増幅するTエフェクター細胞は、共存する組織常在性マクロファージや抗原提示細胞等と相互に影響し合い、抗がん作用・抗ウイルス作用に加えて自己免疫疾患関連副作用等を引き起こす。プレドニゾロン(PSL)による免疫抑制作用は、それらの副作用及び症状を改善するが、同時に抗がん・抗ウイルス作用Tエフェクター機能も全面的に阻害する。
以上より図26では、JTE-607が主要なTエフェクター細胞機能に大きく影響を与えず、マクロファージ活性化を抑制し臓器傷害を改善する効果が期待されることを示している。
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Claims (9)
- 次式II:
- 式IIで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、次式III:
- 式IIで示される化合物、又はその薬学的に許容される塩が、式IIIで示される化合物の塩酸塩である、請求項1又は2に記載の医薬。
- 式IIIで示される化合物の塩酸塩が、次式IV:
- 疾患又は症状が、免疫チェックポイント阻害薬の使用に起因するもの、キメラ抗原受容体発現T細胞療法に起因するもの、改変T細胞受容体発現T細胞療法に起因するもの、又は感染症、がん及び自己免疫疾患からなる群から選ばれる少なくとも1つにより誘発されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬。
- サイトカインの産生及びマクロファージの活性化の少なくとも1つを抑制する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬。
- サイトカインが、腫瘍壊死因子(TNF)-α、インターロイキン(IL)-1β、IL-4、IL-6、IL-8、IL-1RA、IL-2Rα、IL-10、IL-18、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン増殖因子(IGF)、インターフェロン(IFN)-γ、IFN-γ誘導蛋白10(IP-10)、単球走化性因子(MCP)-1、血管内皮増殖因子(VEGF)、オステオポンチン(OPN)、Receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、サイトカイン受容体gp130、遊離型IL-1受容体(sIL-1R)-1、sIL-1R-2、遊離型IL-6受容体(sIL-6R)、遊離型終末糖化産物受容体(sRAGE)、遊離型TNF受容体(sTNFR)-1、sTNFR-2、IFN-γ誘導モノカイン(MIG)、マクロファージ炎症蛋白(MIP)-1α及びMIP-1βからなるから選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬。
- サイトカインが、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-18、IFN-γ、MCP-1及びOPNからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項7に記載の医薬。
- サイトカイン放出症候群、自己免疫疾患関連副作用、マクロファージ活性化症候群、血球貪食性リンパ組織球症及びランゲルハンス細胞組織球症からなる群から選ばれる少なくとも1つの予防、治療又は改善のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬。
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