JP6744738B2 - グライコシンターゼ - Google Patents

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Description

本発明は糖鎖転移活性を有する酵素であるグライコシンターゼおよび該酵素をコードするDNAに関する。
詳細には、糖タンパク質、特に免疫グロブリンG(IgG)抗体に結合しているN結合型糖鎖をエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)等のエンドグリコシダーゼで切断し、該タンパク質の糖鎖付加部位であるアスパラギン残基にN−アセチルグルコサミンのみが結合した状態のタンパク質、あるいはそのN−アセチルグルコサミンにコアフコースとよばれるα1,6−結合したフコースが付加した状態のタンパク質をアクセプター基質とし、オキサゾリン糖鎖を含む各種糖鎖をドナー基質とした場合、このアクセプター基質にドナー基質由来の糖鎖を転移する活性を有する酵素(グライコシンターゼ)および該酵素をコードするDNAに関する。
一般に、糖タンパク質の糖鎖は不均一な構造をしているが、これを均一な構造にすることで、該糖タンパク質の機能や安定性の向上、品質の維持などがはかれる可能性がある。また、特定の、あるいは新規の糖鎖構造を有する糖タンパク質を作成することで、該糖タンパク質の機能を向上させたり、新規機能を付加したりすることができる。グライコシンターゼは均一な糖鎖構造をもつ糖タンパク質の製造に有用である。グライコシンターゼは所望する糖鎖構造をもつ糖タンパク質の製造に有用である。すなわち、グライコシンターゼは自在な糖鎖構造をもつ糖タンパク質の製造に有用である。
多くのタンパク質には翻訳後修飾として糖鎖付加がなされている。糖鎖付加の様式には2種類あって、タンパク質中のAsn−Xaa(Pro以外のアミノ酸)−Ser/Thrという配列中のAsnに糖鎖が付加される場合はN結合型糖鎖、タンパク質中のSer、Thrの水酸基を介して糖鎖が付加される場合はO結合型糖鎖とよぶ。
糖鎖はタンパク質が適正なfoldingをとる際に必要であったり、当該タンパク質の分泌促進、機能発現、血中での安定化、分子間相互作用などにも関与していたりする。ところで、糖鎖は遺伝子の直接産物ではない。すなわち、タンパク質の特定の糖鎖付加部位にどういった構造の糖鎖が付加されるのかは、遺伝子によって決まっているわけではなく、各糖転移酵素の発現量や糖ヌクレオチド基質の存在量の違いなどの影響をうけて、その都度変化する。従って、同じタンパク質の同じ糖鎖付加部位に、いつも同じ構造の糖鎖が付加されるわけではなく、むしろ多種多様な構造の糖鎖が付加されるほうが一般的である。つまり、ある糖タンパク質の集団をみると、タンパク質のアミノ酸配列の観点からは均一な集団でも、糖鎖構造の観点からは、通常、不均一な集団である場合が多い。
抗体医薬などの糖タンパク質製剤の場合、このような糖鎖の不均一性によって、品質のばらつきが生じる可能性がある。特に、糖鎖が糖タンパク質製剤としての機能や安定性に直接関わる場合、そういった機能性糖鎖の含量が異なれば、力価や安定性にも影響することが考えられる。このような糖鎖の不均一性は、医薬品として十分な品質管理をする上で問題である。
ところで、糖タンパク質の機能発現や血中内での安定化に関わる機能性糖鎖は、ある特定の糖鎖構造をもつ。例えば、IgG1抗体のFc領域に結合しているN結合型糖鎖の場合、コアフコースがない糖鎖をもつ抗体では、コアフコースがある糖鎖をもつ抗体にくらべて、高い抗体依存性細胞傷害活性を示すことが知られている(非特許文献1参照)。すなわち、IgG1抗体の場合、このようなコアフコース欠失糖鎖含有抗体の割合が多ければ、その分、高い抗体依存性細胞傷害が期待できると考えられる。
しかし実際には、例えば抗体医薬品であるトラスツズマブに結合している糖鎖の構造組成を調べると、このようなコアフコース欠失糖鎖の割合は数パーセントである(非特許文献2参照)。より力価の高い抗体医薬品を得ようとするならば、コアフコース欠失糖鎖のような、ある特定の構造をもつ機能性糖鎖のみが付加された抗体を製造することが望ましい。
このように、天然型では微量な、あるいは、存在しないかもしれない糖鎖構造をもつ抗体などの糖タンパク質製剤が極めて有効である可能性があるが、その作成が困難であるため、開発は容易でない。
抗体の品質管理や機能向上の観点から、抗体に均一構造の糖鎖を結合させる糖鎖リモデリングが試みられている(非特許文献3、特許文献1参照)。この方法によれば、抗体のFc領域に結合しているN結合型糖鎖を、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの一種であり、抗体の糖鎖を特異的に切断する活性を有するEndoSという酵素(非特許文献4参照)を用いて除去する。この際、抗体の糖鎖付加部位であるアスパラギンにはN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)が一残基、あるいはこれにコアフコースが結合した糖鎖が残る。この抗体をアクセプター基質とし、糖鎖の還元末端をオキサゾリン体にしたオキサゾリン糖鎖をドナー基質として、EndoSの糖鎖切断活性を抑制し、かつ糖鎖転移活性を強化させ、グライコシンターゼ化した変異体(EndoS D233A変異体、またはD233Q変異体)を作用させて、抗体へ均一構造の糖鎖を付加させることに成功している(図1)。
一般に、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼなどのグリコシダーゼは、糖鎖切断活性を示すとともに、基質濃度が高いときなどに糖鎖転移活性(トランスグリコシレーション活性)を示すことが知られている。これを利用して、酵素の活性中心付近に変異を導入することにより、糖鎖切断活性を抑制し、かつ糖鎖転移活性を強化させて、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼをグライコシンターゼにする試みがなされてきている。例えば、Mucor hiemalis由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであるEndo−Mは、N175Qの変異によりグライコシンターゼに変換される(非特許文献5参照)。
このようなグライコシンターゼの基質特異性は、もとのエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの基質特異性と密接な関係にあると考えられている。すなわち、該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの基質になる糖タンパク質糖鎖であれば、対応するグライコシンターゼにおいても基質になる(糖鎖転移できる)可能性が高いが、該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼによって切断できない糖タンパク質糖鎖であれば、対応するグライコシンターゼにおいても基質にできないと思われる。
抗体分子の立体構造の関係で、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの中には、抗体のFc領域に結合しているN結合型糖鎖(抗体糖鎖)を基質として切断できないものがある。また、抗体糖鎖には、高マンノース型糖鎖、二本鎖複合型糖鎖、ハイブリッド型糖鎖があり、さらにシアル酸の有無、コアフコースの有無、分岐N−アセチルグルコサミンの有無、結合様式の違い、など様々な種類の糖鎖が存在し得る。この糖鎖構造の違いも、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼが基質として切断できるかに影響してくる。例えば、Endo−Mはコアフコースが結合した抗体糖鎖は切断できないし、EndoSは高マンノース型の抗体糖鎖は切断できない。
現在、抗体糖鎖のリモデリングに使用できるグライコシンターゼは限られており、利用できるものでも基質特異性において制限がある。また、反応時に酵素を大量に必要とする場合があるが、酵素調製操作が煩雑なこともあるため、より少量で反応する比活性の高い酵素が望まれる。そのため、基質特異性が広く、比活性の高いグライコシンターゼの開発が必要である。さらに、酵素や基質の安定性を確保したり、酵素反応を制御する上で、様々なpH条件で酵素反応を行うことが考えられるが、広いpH領域でも高い活性を発揮するグライコシンターゼが望まれている。
国際公開第2013/120066号 国際公開第2013/037824号
Toyohide Shinkawa et al., J. Biol. Chem. 278, 3466−3473 (2003) Carala W. N. Damen et al., J. Am. Soc. Mass Spectrom. 20, 2021−2033 (2009) Wei Huang et al., J.Am. Chem. Soc. 134, 12308−12318 (2012) Mattias Collin et al., EMBO J. 20, 3046−3055 (2001) Midori Umekawa et al.,J. Biol. Chem. 285, 511−521 (2010) Jonathan Sjogren et al., Biochem. J. 455, 107−118 (2013) Jonathan Sjogren et al., Glycobiology 25, 1053−1063 (2015) Beatriz Trastoy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 6714−6719 (2014)
本発明の課題は、抗体糖鎖のリモデリングに使用できるグライコシンターゼで、従来の酵素より基質特異性が広く、比活性の高い酵素であり、かつより広いpH領域でも活性を示すグライコシンターゼを提供することである。
本発明者らは、Streptococcus pyogenes由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであるEndoS2(特許文献2、非特許文献6参照)について、その活性部位にあるDxxDxDxEモチーフ(xは任意のアミノ酸、EndoS2ではD179〜E186に相当)への変異導入の影響を調べた。その結果、D182またはD184への変異導入により、糖鎖転移活性が強化されることを見出した。糖鎖切断活性を抑制するため、さらなる変異導入を検討したところ、D182QおよびD182A/D184Aの変異体では糖鎖切断活性が十分抑制されていることを確認した。これらの変異体の糖鎖転移活性を調べてみたところ、驚くべきことに、D182Q変異体においては、従来のグライコシンターゼであるEndoSのD233Q変異体よりも、比活性が高く、かつ広いpH領域で高い活性を示すグライコシンターゼであることを見出した。EndoS2はEndoSと異なり、高マンノース型の糖鎖を含むほぼ大部分の二本鎖抗体糖鎖を切断できるほか、α1−酸性糖タンパク質の二本鎖糖鎖も切断できることから(非特許文献6、非特許文献7参照)、その糖鎖転移反応においても広い基質特異性を発揮することが予測され、ここに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下の基質特異性を有することを特徴とするグライコシンターゼが提供される。
以下の基質特異性を有することを特徴とするグライコシンターゼ。
基質特異性:糖鎖成分としてN−アセチルグルコサミンのみが「抗体のFc領域に存在する糖鎖付加部位」に結合した抗体、または「そのN−アセチルグルコサミンにα1,6−結合したフコースが付加した状態の抗体」をアクセプター基質とし、各種糖鎖をドナー基質とした反応系において、pH4以上10以下の条件下で、ドナー基質由来の糖鎖をアクセプター基質に効率よく糖鎖転移する。
好ましくは、本発明により、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するグライコシンターゼが提供される。
(1) 配列表の配列番号1または3に記載されるアミノ酸配列;または
(2) 配列表の配列番号1または3に記載されるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換および/または付加を有するアミノ酸配列を有し、抗体糖鎖のリモデリングに使用できるグライコシンターゼ活性を有するアミノ酸配列:
本発明の別の側面によれば、上記した本発明のグライコシンターゼのアミノ酸配列をコードするグライコシンターゼ遺伝子が提供される。好ましくは、本発明により、下記のいずれかの塩基配列を有するグライコシンターゼが提供される。
(1) 配列表の配列番号2に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列;
(2) 配列表の配列番号2に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列を有し、グライコシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
(3) 配列表の配列番号4に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列;
(4) 配列表の配列番号4に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列を有し、グライコシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
また、本発明の別の側面によれば、上記した本発明のグライコシンターゼ遺伝子を含む組換えベクター(好ましくは、発現ベクター);上記した組換えベクターにより形質転換された形質転換体;ならびに上記した形質転換体を培養し、該培養物から本発明のグライコシンターゼを採取することを特徴とするグライコシンターゼの製造方法が提供される。
また、本発明の別の側面によれば、上記した本発明のグライコシンターゼを用い、一方または両方のH鎖に糖鎖成分としてフコースがα1,6−結合したN−アセチルグルコサミンのみが、「抗体のFc領域に存在する糖鎖付加部位」に結合した抗体をアクセプター基質とし、高マンノース型糖鎖をドナー基質として、ドナー基質由来の高マンノース型糖鎖をアクセプター基質に糖鎖転移する反応工程を含む、1本または2本のコアフコースが付加した高マンノース型糖鎖をもつことを特徴とする抗体の製造方法;ならびに、1本または2本のコアフコースが付加した高マンノース型糖鎖をもつことを特徴とする抗体が提供される。
抗体糖鎖のリモデリング法の概念図である。 Streptococcus pyogenes由来EndoSおよびEndoS2のアミノ酸配列の比較の結果を示す図である。*は同じアミノ酸であることを示す。 各種オキサゾリン糖鎖の構造模式図である。 各種EndoS2変異体による糖鎖転移反応の結果を示す図である。矢印は糖鎖転移反応産物を示す。 基質濃度を高めた場合のEndoS2変異体による糖鎖転移反応の結果を示す図である。矢印は糖鎖転移反応産物を示す。 各種EndoS2変異体による糖鎖切断反応の結果を示す図である。 EndoS2 D182Q変異体、D182A/D184A変異体、およびEndoS D233Q変異体による糖鎖転移反応の結果を示す図である。矢印は糖鎖転移反応産物を示す。 糖鎖転移活性に対するpHの影響の結果を示す図である。矢印は糖鎖転移反応産物を示す。 抗体アクセプター基質に対し、A2−オキサゾリンあるいは高マンノース型糖鎖のオキサゾリンをドナー基質として、EndoS2 D182Q変異体あるいはEndoS D233Q変異体を作用させたときの糖鎖転移反応の結果を示す図である。矢印は糖鎖転移反応産物を示す。 EndoS2 D182X変異体による糖鎖転移反応の結果を示す図である。矢印は糖鎖転移反応産物を示す。 EndoS2 D182X変異体による糖鎖切断反応の結果を示す図である。 EndoS、EndoS2、およびEndoS2欠失変異体のドメイン構造を示す図である。数字はアミノ酸番号を示す。 EndoS2欠失変異体による糖鎖切断反応の結果を示す図である。矢印は糖鎖が切断された基質糖タンパク質を示す。 EndoS2 D182Q欠失変異体による糖鎖転移反応の結果を示す図である。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
<1>本発明の酵素およびタンパク質
本発明のグライコシンターゼは、以下の基質特異性を有することを特徴とする。
以下の基質特異性を有することを特徴とするグライコシンターゼ。
基質特異性:糖鎖成分としてN−アセチルグルコサミンのみが「抗体のFc領域に存在する糖鎖付加部位」に結合した抗体、または「そのN−アセチルグルコサミンにα1,6−結合したフコースが付加した状態の抗体」をアクセプター基質とし、各種糖鎖をドナー基質とした反応系において、pH4以上10以下の条件下で、ドナー基質由来の糖鎖をアクセプター基質に効率よく糖鎖転移する。
ここで、「各種糖鎖」とは、糖鎖の末端にN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及び脱離化合物がその順に結合した糖鎖のことをいう。各種糖鎖の糖鎖構造や形態は特に限定されない。脱離化合物は特に限定されないが、オキサゾリンであることが好ましい。
上記各種糖鎖の例として、糖鎖の末端に、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及び脱離化合物がその順に結合した糖鎖(以下、「オキサゾリン糖鎖」と略記する場合がある)が挙げられる。該オキサゾリン糖鎖の糖鎖構造や形態は特に限定されない。
上記した基質特異性は、本明細書に記載した実施例で取得されたStreptococcus pyogenes NZ131 (serotype M49)株由来EndoS2の変異体について実証された性質である。本発明のグライコシンターゼの由来は同株由来のものに限定されるものではなく、近縁の株に存在し、EndoS2と高度の相同性を示すエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを改変して製造した上記基質特異性を有するグライコシンターゼも、すべて本発明の範囲に属するものである。
このような酵素としては、微生物由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを遺伝子組換え技術により改変した酵素や、その酵素に各種のタグを付加するなどした酵素、または自然突然変異によってグライコシンターゼ活性を獲得した酵素などを挙げることができるが、これらはいずれも本発明の範囲に包含されるものである。
本発明のグライコシンターゼの一例としては、下記のいずれかのアミノ酸配列を有するグライコシンターゼが挙げられる。
(1) 配列表の配列番号1または3に記載のアミノ酸配列;または
(2) 配列表の配列番号1または3に記載のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸の欠失、置換および/または付加を有するアミノ酸配列を有し、抗体糖鎖のリモデリングに使用できるグライコシンターゼ活性を有するアミノ酸配列:
さらに、本発明のグライコシンターゼの活性ドメイン、あるいはそのアミノ酸配列の一部を改変または修飾して得られるグライコシンターゼ活性を有するタンパク質はすべて本発明の範囲の包含されることを理解すべきである。このような活性ドメインの好ましい例としては、配列表の配列番号1および3に記載したアミノ酸配列の1〜440により特定されるグライコシンターゼの活性ドメインを挙げることができる。
本明細書で言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換および/または付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
本発明の酵素またはタンパク質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換えタンパク質でもよい。
組換えタンパク質を作製する場合には、まず当該タンパク質をコードするDNAを入手することが必要である。本明細書の配列表の配列番号1から4に記載したアミノ酸配列および塩基配列の情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、それらを用いて適当なDNAライブラリーを鋳型にしてPCRを行い、場合によってはさらに取得DNAに対して変異導入を行うことにより、本発明の酵素をコードするDNAを取得できる。あるいは人工遺伝子合成により、本発明の酵素をコードするDNAを全合成してもよい。
例えば、配列番号1および配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するグライコシンターゼをコードするDNAを単離する方法は以下の実施例に詳細に説明されている。もっとも、本発明のグライコシンターゼをコードするDNAの単離方法はこれらの方法に限定されることはなく、当業者は下記の実施例に記載された方法を参照しつつ、この方法を適宜修飾ないし変更することにより、容易に目的のDNAを単離することができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の酵素を産生することができる。発現系での発現については本明細書中後記する。
本発明のグライコシンターゼは、発現後に不溶性タンパク質となる可能性がある。上記のグライコシンターゼ活性を有効に利用するために、本酵素の活性を維持し、かつ発現時に可溶性形態のタンパク質を製造することができる。このようなタンパク質としては、本発明のグライコシンターゼとグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質が挙げられる。もっとも、可溶化の方法は上記方法に限定されることはなく、当業者はグライコシンターゼと融合させるタンパク質やタグとなるペプチド配列を適宜選択することができるし、あるいは化学的な手法によって可溶化してもよい。
<2> 本発明の遺伝子
本発明によれば、本発明のグライコシンターゼのアミノ酸配列をコードするグライコシンターゼ遺伝子が提供される。
本発明のグライコシンターゼのアミノ酸配列をコードするグライコシンターゼ遺伝子の具体例としては、下記のいずれかの塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。
(1) 配列表の配列番号2に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列;
(2) 配列表の配列番号2に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列を有し、グライコシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
(3) 配列表の配列番号4に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列;
(4) 配列表の配列番号4に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列を有し、グライコシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
本明細書で言う「1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列」における「1から数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から60個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、さらに好ましくは1から10個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
本発明の遺伝子の取得方法は上述した通りである。また、所定の核酸配列に所望の変異を導入する方法は当業者に公知である。例えば、部位特異的変異導入法、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR、核酸を含む細胞の変異誘発剤または放射線への露出等の公知の技術を適宜使用することによって、変異を有するDNAを構築できる。このような公知の技術は、例えば、Molecular Cloning:A laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 1989、ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons (1987−1997)に記載されている。
<3>本発明の組換えベクター
本発明の遺伝子は適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミドやファージベクター)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。
好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、タンパク質をコードするDNA、およびプロモーター等の転写に必要な要素が機能的に連結されている。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、大腸菌のlac、trp、もしくはtacプロモーターや、哺乳動物細胞で作動可能なSV40プロモーターなどが挙げられる。また、これらの発現ベクターはアンピシリン耐性遺伝子などの適当な選択マーカー遺伝子を含んでいてもよい。発現ベクターの例としては、例えば、pBluescript II SK+ベクター(Stratagene)、pcDNA3.1/Myc−His ver.A(Invitrogen)などが挙げられるが、本発明に用いる発現ベクターはこれらに限定されるものではない。
本発明の遺伝子(DNA)やプロモーター、選択マーカー遺伝子などをそれぞれ連結し、適当なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
<4> 本発明の形質転換体
本発明の遺伝子(DNA)または組換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。
本発明の遺伝子(DNA)または組換えベクターを導入される宿主細胞は、本発明のDNA構築物を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としてはバチルスなどのグラム陽性菌、または大腸菌などのグラム陰性菌が挙げられる。これらの細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行えばよい。
哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞やCHO細胞などが挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
そのほか、酵母細胞、糸状菌細胞、昆虫細胞なども宿主細胞として利用でき、それぞれの宿主に応じた公知の形質転換法を用いてDNA構築物を導入し、形質転換体を得ることができる。
<5>本発明の酵素の製造方法
本発明のグライコシンターゼの製造方法は、上記形質転換体を培養し、該培養物からグライコシンターゼを採取することを特徴とする。
上記の形質転換体は、導入されたDNA構築物の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明の酵素を単離精製するには、通常のタンパク質の単離、精製法を用いればよい。
例えば、本発明の酵素が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常のタンパク質の単離精製法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、スルホプロピル(SP)セファロース等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
本発明のタンパク質を製造する方法は、細胞を用いる方法に限定されるものではなく、無細胞タンパク質合成系によって製造することもできる。無細胞タンパク質合成系としては、例えば、コムギ胚芽、大腸菌、ウサギ網状赤血球、昆虫細胞などから調製したものが挙げられる。目的タンパク質をコードするDNAを逆転写が可能なベクターに組み込み、これより逆転写反応によって合成したmRNAを適当な無細胞タンパク質合成系に加えて目的タンパク質を合成する。そして、その反応液より目的タンパク質を上記と同様にして精製する。
<6>本発明の酵素を用いた糖鎖改変抗体の製造方法とその反応産物
本発明の抗体の製造方法は、上記グライコシンターゼを用い、一方または両方のH鎖に糖鎖成分としてフコースがα1,6−結合したN−アセチルグルコサミンのみが、「抗体のFc領域に存在する糖鎖付加部位」に結合した抗体をアクセプター基質とし、高マンノース型糖鎖をドナー基質として、ドナー基質由来の高マンノース型糖鎖をアクセプター基質に糖鎖転移する反応工程を含む、1本または2本のコアフコースが付加した高マンノース型糖鎖をもつことを特徴とする抗体を製造する方法である。
また、本発明の抗体は、1本または2本のコアフコースが付加した高マンノース型糖鎖をもつことを特徴とする。
糖鎖成分としてN−アセチルグルコサミンのみが、「抗体のFc領域に存在する糖鎖付加部位」に結合した抗体、または「そのN−アセチルグルコサミンにα1,6−結合したフコースが付加した状態の抗体」をアクセプター基質とし、各種糖鎖をドナー基質とした反応系において、本発明のグライコシンターゼを作用させた場合に、アクセプター基質の原料である抗体とは異なる糖鎖組成を有する抗体を製造することができる。さらに、本発明のグライコシンターゼを用いて、非天然型の糖鎖を有する抗体や、通常の抗体には存在しない糖鎖をもった抗体を製造することができる。
例えば、天然型の高マンノース型糖鎖には、コアフコースは結合していない。しかし、コアフコースが結合した糖鎖をもつ抗体にエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを作用させて糖鎖を切断した抗体をアクセプター基質とし、マンノースを5個(M5)あるいは6個(M6)含む高マンノース型糖鎖のオキサゾリン体をドナー基質として、本発明のグライコシンターゼを作用させた場合に、コアフコースが結合した非天然型の高マンノース型糖鎖(M5またはM6)をもつ抗体を製造することができる。すなわち、コアフコース有無のアクセプター基質と、各種糖鎖のオキサゾリン体ドナー基質の組合せによって、通常の抗体には存在しない糖鎖をもった抗体を製造することが可能である。この場合、ドナー基質は抗体以外の糖タンパク質から調製した抗体糖鎖に含まれない構造をした糖鎖や、化学合成した糖鎖(非天然型糖鎖を含む)をオキサゾリン体にしたものを用いてもよい。
以下に記載する実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
EndoS2変異体の作製
本実施例ではStreptococcus pyogenes由来のEndoS2変異体が有する糖鎖転移活性を調べた。EndoS2は、CAZy (Carbohydrate−Active enZYmes)データーベースにおいてGH18ファミリーに属する843アミノ酸よりなる一種のエンドβ−N−アセチルグルコサミニダーゼで(図2)、IgG抗体のFc領域に結合しているN結合型糖鎖やα1−Acid glycoproteinに結合しているN結合型糖鎖を切断することが報告されている(非特許文献6参照)。
まず、Streptococcus pyogenes NZ131 (serotype M49)株由来ゲノミックDNA(American Type Culture Collection)を鋳型として、プライマーNG1370+、NG1371−(配列表配列番号5、6)とKAPA HiFi HotStart ReadyMix (KAPA BIOSYSTEMS)を用いてPCR増幅を行い、ここで増幅したEndoS2遺伝子の全長DNAをpBluescript II SK+ベクター(Stratagene)のEcoRVサイトにクローニングした。これよりBamHI、XhoIで切り出したDNA断片をpGEX−6P−1(GEヘルスケア)のBamHI−XhoIサイトに挿入したものを、野生型EndoS2(WT)の発現ベクターとした。なお、この発現ベクターを用いると、EndoS2はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)のC末端側に融合した形で発現される。このGSTはPreScission Protease(GEヘルスケア)で処理することにより切断できる。
つぎに、糖鎖切断活性を抑制するとともに、糖転移活性を強化したEndoS2変異体の作製を試みた。GH18ファミリー酵素では、酵素の活性部位近傍のアミノ酸配列においてDxxDxDxE(xは任意のアミノ酸)というモチーフが保存されている。このDやEといった酸性アミノ酸が活性発現に重要な役割を果たし、この部位への変異導入で、糖鎖切断活性が低下するとともに、糖鎖転移活性が顕著になる場合があることが報告されている(非特許文献3、5参照)。そこでEndoS2の当該モチーフ(D179〜E186)にあるD179をAlaに置換したD179A変異体、D182をAlaに置換したD182A変異体、D182をGlnに置換したD182Q変異体、D184をAlaに置換したD184A変異体、D184をGlnに置換したD184Q変異体、D184をAsnに置換したD184N変異体、E186をAlaに置換したE186A変異体、およびD182とD184をAlaに置換したD182A/D184A変異体を作製した。
D179をAlaに置換するためにはプライマーNG1390+、NG1391−(配列表配列番号7、8)の各プライマーの組み合わせと、KAPA HiFi HotStart ReadyMix (KAPA BIOSYSTEMS)を用いて、上記EndoS2遺伝子を含むpBluescript IIプラスミドを鋳型としてPCRによる変異導入を行った。D182をAlaに置換するためにはプライマーNG1392+、NG1393−(配列表配列番号9、10)の各プライマーの組み合わせを用いて、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。D182をGlnに置換するためにはプライマーNG1451+、NG1452−(配列表配列番号11、12)の各プライマーの組み合わせを用いて、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。また、D184をAlaに置換するためにはプライマーNG1374+、NG1375−(配列表配列番号13、14)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。D184をGlnに置換するためにはプライマーNG1381+、NG1382−(配列表配列番号15、16)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。D184をAsnに置換するためにはプライマーNG1383+、NG1384−(配列表配列番号17、18)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。また、E186をAlaに置換するためにはプライマーNG1385+、NG1386−(配列表配列番号19、20)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。さらに、D182とD184をAlaに置換するためにはプライマーNG1419+、NG1420−(配列表配列番号21、22)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。D182をAlaに、D184をGlnに置換するためにはプライマーNG1455+、NG1456−(配列表配列番号23、24)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。D182をGlnに、D184をAlaに置換するためにはプライマーNG1453+、NG1454−(配列表配列番号25、26)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。D182とD184をGlnに置換するためにはプライマーNG1457+、NG1458−(配列表配列番号27、28)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。また、D184とE186をAlaに置換するためにはプライマーNG1387+、NG1388−(配列表配列番号29、30)の各プライマーの組み合わせを用い、上記と同様にしてPCRによる変異導入を行った。
いずれの場合も変異導入の確認はDNAシーケンスにより行った。変異導入がなされたEndoS2遺伝子は、それぞれpGEX−6P−1(GEヘルスケア)のBamHI−XhoIサイトに挿入し、各変異体の発現ベクターとした。
このようにして構築した各発現ベクターを用いて、大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。得られた形質転換体は、50μg/mLになるようアンピシリンを添加した液体LB培地2mLで一晩37℃で振盪培養した。
つぎに、この種培養より1mLとり、アンピシリン入り液体LB培地100mLに新たに植菌して、37℃で3時間振盪培養した。ここで0.1mMになるようIsopropyl−β−D−thiogalactoside(IPTG)を添加し、さらに3時間、37℃で振盪培養した後、菌体を遠心分離により回収した。この菌体に対し、5mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて撹拌し、さらに超音波処理を行って菌体を破砕した。この菌体破砕液に50μLのTriton X−100を加え、室温で30分間振盪した。その後、再び超音波処理を行い、さらに遠心分離によって、可溶性画分と不溶性画分に分画した。
ここで得られた可溶性画分に対し、適量(〜100μL)のGluthatione Sepharose(GEヘルスケア)を加えて4℃で一晩混和し、GST−EndoS2変異体融合タンパク質を吸着させた。このGluthatione Sepharoseを遠心分離により回収後、PBSで数回洗浄した。そして、PreScission Proteaseによる切断反応用緩衝液(50mM Tris−HCl, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1 mM DTT, pH7.0)とPreScission Proteaseを加え、4℃で16時間、GSTの切断反応を行った。
つぎに、遠心分離によりGluthatione Sepharoseを除去し、得られた反応液をVIVASPIN 500(Sartorius Stedim)によって遠心濃縮するとともに、PBSを加えてバッファー交換を行った。このようにして各EndoS2変異体の酵素溶液を得た。
なお、Streptococcus pyogenes由来のもう一つのエンドグリコシダーゼであるEndoSは、EndoS2とアミノ酸配列比較で37%の相同性を示すが(図2)、この野生型およびD233Q変異体の酵素溶液は、文献を参考にして調製した(非特許文献3参照)。
<実施例2>
糖鎖転移反応
上記により得た酵素溶液を用いて、ヒトIgG抗体に対する糖鎖転移反応を実施した。この転移反応においては、糖鎖の供与体となるドナー基質と、糖鎖が転移されるアクセプター基質が必要である。アクセプター基質としては、抗体医薬品トラスツズマブのFc領域に結合したN結合型糖鎖の主要部分を、EndoS、EndoD、EndoLLといったエンドグリコシダーゼを組み合わせて除去し、糖鎖成分としてはN−アセチルグルコサミンのみが結合した状態にした抗体(原料としてカイコに生産させたトラスツズマブ<ここではHerBと表す>を使用した場合)、またはそのN−アセチルグルコサミンにコアフコースとよばれるα1,6−結合したフコースが付加した抗体(原料としてCHO細胞に生産させたトラスツズマブ<ここではHerCと表す>を使用した場合)を用いた。糖鎖の供与体となるドナー基質には、各種糖鎖、より具体的には図3に示す各種糖鎖のオキサゾリン体を用いた。なお、アクセプター基質の調製法の詳細については、現在出願中である(特願2014−091157、特願2014−222191、特願2015−082388)。
酵素反応液は、50mM Tris−HCl(pH7.4)、10μL中にアクセプター基質を1μg、ドナー基質を1μg、EndoS2変異体を1μg、それぞれ含むように調製した。これを30℃にて反応させ、経時的にサンプリングした。酵素反応は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)用のサンプルバッファーを添加することにより停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色し、抗体のH鎖に着目して転移産物の有無を確認した。
図4は、CHO細胞に生産させたトラスツズマブ(HerC)の糖鎖を各種エンドグリコシダーゼにより切断した抗体をアクセプター基質(HerCアクセプター:コアフコースあり)とし、A2−オキサゾリン(A2−Oxa)あるいはG2−オキサゾリン(G2−Oxa)をドナー基質として、EndoS2変異体による糖鎖転移反応を実施した結果である。図4中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。また矢印は糖鎖転移反応産物を示す。
D182A変異体、D184A変異体、D184N変異体、D184Q変異体では、未反応のアクセプター基質のバンドとともに、転移産物と考えられるバンドが検出された。変異体によっては、長時間反応によりこの転移産物と考えられるバンドが消失したが、これは変異体の糖鎖切断活性が十分に抑制されていないために、転移産物の糖鎖を切断したためと考えられた。
一方、D179A変異体やE186A変異体では、このような転移産物と考えられるバンドは検出されなかった。以上の結果より、EndoS2の場合、糖鎖転移活性を強化するにはDxxDxDxEモチーフのうち、D182またはD184への変異導入が効果的であり、置換するアミノ酸によって、糖鎖切断活性の抑制効果にも差があると考えられた。
ところで、図4の反応条件は、各変異体に糖鎖転移活性があるかどうかをスクリーニングするために用いた条件で、基質濃度が低かった。そこで、基質濃度を高め、より至適化された反応条件で、EndoS2変異体の糖鎖転移活性を調べることにした。非特許文献3に記載されている反応条件を参考にして、酵素反応液は、2μLの50mM Tris−HCl(pH7.4)中に、アクセプター基質を10μg、ドナー基質をその150倍モル比、EndoS2変異体を0.2μg(2.1 pmol)、それぞれ含むように調製した。これを30℃にて反応させ、経時的にサンプリングした。酵素反応は、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することにより停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色し、抗体のH鎖に着目して転移産物の有無を確認した。
図5は、アクセプター基質としてHerCアクセプターを、ドナー基質としてA2−オキサゾリンを用い、EndoS2変異体による糖鎖転移反応を実施した結果である。図5中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。また矢印は糖鎖転移反応産物を示す。
図4の場合と異なり、D182A変異体、D184A変異体、D184N変異体、D184Q変異体、いずれの変異体の場合でも、30分の反応時間でアクセプター基質の8〜9割以上に糖鎖転移がなされた。しかし、反応時間が進むにつれ、転移産物量が減少した。すなわち、これらの変異体は糖鎖転移活性を示すものの、糖鎖切断活性が十分に抑制されていないため、反応時間が長いと転移産物の糖鎖を切断することが考えられた。
そこで、糖鎖切断活性が十分に抑制されたEndoS2変異体のスクリーニングを試みた。反応条件は、20μLのPBS中に、1μgのヒト血清由来IgGと、0.3μgのEndoS2変異体を加え、37℃で16時間反応させた。その後、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することによって酵素反応を停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色した。
その結果、調べた変異体の中では、D182Q変異体、D182A/D184A変異体、D182A/D184Q変異体、D182Q/D184A変異体、D182Q/D184Q変異体、E186A変異体、D184A/E186A変異体の糖鎖切断活性が抑制されていた(図6)。これらの変異体の糖鎖転移活性を調べたところ、D182Q変異体が一番高い糖鎖転移活性を示し、つぎにD182A/D184A変異体が高い糖鎖転移活性を示した。D182A/D184Q変異体、D182Q/D184A変異体、D182Q/D184Q変異体にも糖鎖転移活性は認められたが、E186A変異体、D184A/E186A変異体には糖鎖転移活性はなかった。そこで、D182Q変異体(配列表配列番号1、2)、D182A/D184A変異体(配列表配列番号3、4)の糖鎖転移活性についてさらに詳しく調べることにした。
酵素反応液は、2μLの50mM Tris−HCl(pH7.4)中に、アクセプター基質を10μg、ドナー基質をその150倍モル比、EndoS2変異体を0.2μg、それぞれ含むように調製した。またEndoSのD233Q変異体についても同様の酵素反応液を調製した。これらを30℃にて反応させ、経時的にサンプリングした。酵素反応は、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することにより停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色し、抗体のH鎖に着目して転移産物の有無を確認した。
図7には、各種糖鎖のオキサゾリン体をドナー基質、HerCアクセプターまたはHerBアクセプターをアクセプター基質としたときの、D182Q変異体およびD182A/D184A変異体の糖鎖転移活性測定の結果を示す。
図7中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。また、図7中の丸数字1はEndoS2のD182Q変異体による糖鎖転移反応の結果、丸数字2はEndoS2のD182A/D184A変異体による糖鎖転移反応の結果、丸数字3はEndoSのD233Q変異体による糖鎖転移反応の結果を示す。図7中のバンドは抗体H鎖であり、矢印で示す高分子側にシフトしたバンドは糖鎖転移がなされた抗体H鎖である。
アクセプター基質としてHerCアクセプターを用いた場合、ドナー基質の種類によらず、糖鎖転移活性はEndoS2のD182Q変異体>EndoSのD233Q変異体>EndoS2のD182A/D184A変異体の順に高かった(図7)。また、カイコに生産させたトラスツズマブ(HerB)の糖鎖を各種エンドグリコシダーゼにより切断した抗体をアクセプター基質(HerBアクセプター:コアフコースなし)とした場合でも、同様の傾向が観察されたが、基質によってはEndoS2のD182A/D184A変異体のほうがEndoSのD233Q変異体よりも転移効率が高い場合があった。なおHerBアクセプターの場合、糖鎖転移産物のほかに未反応のアクセプター基質由来のバンドが常に観察されるが、これはアクセプター基質の中に、もともと糖鎖が全く結合していない抗体が含まれているためである。
つぎに、反応に用いる緩衝液を変えて、様々なpHにおけるこれらの変異体の糖鎖転移活性を調べてみた。pH3.5から6.0までは50mM クエン酸緩衝液、pH7.4から8.8までは50mM Tris−HCl、pH10.0とpH11.0は50mM グリシン−NaOH緩衝液を用い、上記と同様にして酵素反応を行った。
結果を図8に示す。図8中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。また、図8中の丸数字は、図7と同じ酵素による糖鎖転移反応の結果を示す。図8中のバンドは抗体H鎖であり、矢印で示す高分子側にシフトしたバンドは糖鎖転移がなされた抗体H鎖である。
その結果、アクセプター基質としてHerCアクセプターを用いた場合、いずれの変異体もpH4から10の間では糖鎖転移活性が認められたが、pH6から8の間で高い活性が得られた(図8)。このうち、EndoS2のD182Q変異体は、他の変異体と異なり、30分間の反応時間でも、pH4から10の間で明瞭な転移産物が確認されており、最も糖鎖転移活性が高かった。なお、アクセプター基質としてHerBアクセプターを用いた場合では、いずれの変異体でもpH6から8.8の間では糖鎖転移活性が確認されたが、この場合もEndoS2のD182Q変異体の糖鎖転移活性が最も高かった。
<実施例3>
高マンノース型糖鎖の糖鎖転移反応
抗体糖鎖の切断に関して、EndoSとEndoS2の酵素学的諸性質の違いとして、EndoSは高マンノース型糖鎖を切断しないが、EndoS2はこれを切断することが報告されている(非特許文献7参照)。上記のEndoS変異体およびEndoS2変異体による糖鎖転移反応では、複合型糖鎖(A2−Oxa,G2−Oxa,G0−Oxa)およびパウチマンノース型糖鎖(M3−Oxa)の転移について調べ、両者ともにこれら糖鎖の転移活性があることを示したが、高マンノース型糖鎖の転移活性については不明であった。そこで、EndoS D233Q変異体およびEndoS2 D182Q変異体について、糖鎖切断活性と同様に高マンノース型糖鎖の転移活性に違いがあるのか調べることにした。
高マンノース型糖鎖は、牛膵臓由来のリボヌクレアーゼBをエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの一種であるEndoH(New England Biolabs)で処理することにより調製し、これを化学的手法にてオキサゾリン体にしたものを糖鎖転移反応のドナー基質(high M−Oxa)として用いた。なお、高マンノース型糖鎖の組成を質量分析により調べたところ、マンノース5個からなるM5糖鎖が最も多く含まれており、次いでマンノース6個からなるM6糖鎖が多くふくまれ、その他のマンノース7〜9個からなるM7、M8、M9糖鎖は微量であった。
高マンノース型糖鎖を用いた糖鎖転移反応の酵素反応液は、2.5μLの50mM Tris−HCl(pH7.0)中に、アクセプター基質(HerCまたはHerBより調製したもの)を10μg、ドナー基質を6mM、EndoS D233Q変異体あるいはEndoS2 D182Q変異体を0.2μg、それぞれ含むように調製した。これを30℃にて反応させ、経時的にサンプリングした。酵素反応は、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することにより停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色し、抗体のH鎖に着目して転移産物の有無を確認した。なお対照として、ドナー基質としてA2−オキサゾリン(A2−Oxa)を用いた場合についても、上記と同様にして反応させ、解析した。
図9は、上記反応産物をSDS−PAGEにて解析した結果である。図9中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。また矢印は糖鎖転移反応産物を示す。EndoS D233Q変異体の場合、ドナー基質としてA2−オキサゾリンを用いたときには、EndoS2 D182Q変異体にくらべて転移効率は低いが、HerCアクセプター、HerBアクセプターともに5時間以内でほとんどのアクセプターに糖鎖が転移された。なお、転移反応後もHerBアクセプターの位置に見られるバンドは、もともと糖鎖が全く結合していない抗体に由来するものである。一方、ドナー基質として高マンノース型糖鎖のオキサゾリンを用いたときには、HerCアクセプター、HerBアクセプターともに明確な糖鎖転移は観察されなかった。反応1時間後の反応産物について質量分析を行ったが、転移産物は検出されなかった。このことから、EndoS変異体には高マンノース型糖鎖の転移能がないと考えられた。
EndoS2 D182Q変異体の場合、ドナー基質としてA2−オキサゾリンを用いたときには、HerCアクセプター、HerBアクセプターともに1時間以内でほとんどのアクセプターに糖鎖が転移された。また、ドナー基質として高マンノース型糖鎖のオキサゾリンを用いたときには、HerCアクセプターについては、1時間以内に約半数のアクセプターに糖鎖が転移され、その後、反応時間をのばしても、転移産物量に変化はなかった。HerBアクセプターについては、反応1時間で5〜6%の糖鎖転移効率であったが、その後、反応時間をのばしても、転移産物量に大きな変化はなかった。
HerBアクセプターについては、コアフコースがないので主たる転移産物として質量分析によりM5糖鎖が検出された。一方、HerCアクセプターの場合、その9割以上にはコアフコースが含まれているので、上記転移産物にはほとんどがコアフコース結合糖鎖として含まれている。実際、質量分析により抗体上にフコース付きM5糖鎖とフコース付きM6糖鎖が検出された。通常、高マンノース型糖鎖にはコアフコースは結合していないことから、本転移反応においては、驚くべきことに、非天然型のコアフコースを有する高マンノース型糖鎖が生じたことを示している。
以上の結果から、高マンノース型糖鎖のオキサゾリンでは、A2−オキサゾリンの場合とくらべると糖鎖転移効率が低くなるが、EndoS2 D182Q変異体は高マンノース型糖鎖の転移能をもつといえる。さらに、この転移反応においては非天然型の糖鎖が生じていた。この点において、本発明は従来のグライコシンターゼであるEndoS D233Qより、基質特異性が広い酵素であり、かつ通常の抗体が持たない糖鎖をも抗体に付加することができる応用性の広い酵素であるといえる。
<実施例4>
EndoS2 D182X変異体の解析
EndoS2のD182を置換した変異体は、上述したようにD182AおよびD182Qの変異体を作製した。一方、この残基をさらにほかのアミノ酸に置換することによって、より糖鎖転移活性の高い、あるいは残存水解活性が抑制された変異体が得られる可能性も考えられる。そこで、D182をAlaやGln以外のアミノ酸に置換した変異体を作製し、その糖鎖転移活性と糖鎖切断活性について調べることにした。
変異体の作製、および変異酵素の調製は、前述した方法と同様にして行った。なお、D182をPheに置換するためにはプライマーNG1520+、NG1521−(配列表配列番号31、32)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をLeuに置換するためにはプライマーNG1522+、NG1523−(配列表配列番号33、34)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をIleに置換するためにはプライマーNG1524+、NG1525−(配列表配列番号35、36)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をMetに置換するためにはプライマーNG1526+、NG1527−(配列表配列番号37、38)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をSerに置換するためにはプライマーNG1530+、NG1531−(配列表配列番号39、40)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をProに置換するためにはプライマーNG1532+、NG1533−(配列表配列番号41、42)の各プライマーの組み合わせを用いた。
D182をThrに置換するためにはプライマーNG1534+、NG1535−(配列表配列番号43、44)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をTyrに置換するためにはプライマーNG1536+、NG1537−(配列表配列番号45、46)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をHisに置換するためにはプライマーNG1538+、NG1539−(配列表配列番号47、48)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をAsnに置換するためにはプライマーNG1540+、NG1541−(配列表配列番号49、50)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をLysに置換するためにはプライマーNG1542+、NG1543−(配列表配列番号51、52)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をGluに置換するためにはプライマーNG1544+、NG1545−(配列表配列番号53、54)の各プライマーの組み合わせを用いた。
D182をCysに置換するためにはプライマーNG1546+、NG1547−(配列表配列番号55、56)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をTrpに置換するためにはプライマーNG1548+、NG1549−(配列表配列番号57、58)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をArgに置換するためにはプライマーNG1550+、NG1551−(配列表配列番号59、60)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をGlyに置換するためにはプライマーNG1552+、NG1553−(配列表配列番号61、62)の各プライマーの組み合わせを用いた。D182をValに置換するためにはプライマーNG1554+、NG1555−(配列表配列番号63、64)の各プライマーの組み合わせを用いた。
糖鎖転移反応の酵素反応液は、2.5μLの50mM Tris−HCl(pH7.0)中に、HerCアクセプターを10μg、A2−オキサゾリンを6mM、EndoS2変異体を0.2μg、それぞれ含むように調製した。これらを30℃にて反応させ、経時的にサンプリングした。酵素反応は、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することにより停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色し、抗体のH鎖に着目して転移産物の有無を確認した。
図10には、各EndoS2変異体の糖鎖転移活性測定の結果を示す。図10中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。図10中のバンドは抗体H鎖であり、矢印で示す高分子側にシフトしたバンドは糖鎖転移がなされた抗体H鎖である。この結果から、各変異体は3つのグループに大別される。すなわち、丸数字1は、糖鎖転移活性が高く、かつ糖鎖切断活性が抑制されている変異体のグループ(D182C、D182H、D182L、D182M、D182N、D182Q、D182S、D182T、D182V)、丸数字2は、糖鎖切断活性が残存している変異体のグループ(長時間反応で糖鎖転移産物の糖鎖が切断される。D182A、D182E、D182G、D182Iおよび野生型EndoS2)、丸数字3は糖鎖転移活性の低い変異体のグループ(D182F、D182K、D182P、D182R、D182W、D182Y)である。このうち、糖鎖転移活性の低い丸数字3のグループは、D182をLysやArgといった塩基性アミノ酸、またはPhe,Trp,Tyrといった芳香環をもつアミノ酸やProに置換した変異体で構成されていた。
つぎに、各変異体の糖鎖切断活性を調べた。反応条件は、10μLの緩衝液中(50mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、50mM Tris−HCl(pH7.0)、またはPBS)に、1μgのヒト血清由来IgGと、0.2μgのEndoS2変異体を加え、30℃で15時間反応させた。その後、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することによって酵素反応を停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色した。
図11にその結果を示す。図11中のバンドは抗体H鎖であり、hIgGの表示のあるレーンのバンドの位置は糖鎖が結合した状態のもの、PNGaseFの表示のあるレーンのバンドの位置は糖鎖が切断された状態のものである。丸数字1〜3は図10のグループ分けに準ずる。この場合、丸数字3のグループの変異体には糖鎖切断活性がなかった。また丸数字1、2のグループの変異体の多くは、15時間反応では糖鎖切断活性を示したが、反応条件によっては糖鎖切断活性が抑制されているものもあった(D182H、D182L、D182M、D182Q、D182A)。すなわち、糖鎖転移活性が高い変異体を用い、糖鎖切断活性が抑制される反応条件で糖鎖転移反応を行えば、従来よりも効率の良い糖鎖転移反応が行えるといえる。
<実施例5>
EndoS2欠失変異体の解析
EndoSの結晶構造が報告されており(非特許文献8参照)、それによるとEndoS(全長995アミノ酸)のアミノ酸番号1〜36はシグナルペプチド(SP)、アミノ酸番号37〜97はputative coiled coil領域(CC)、アミノ酸番号98〜445は触媒ドメイン(Catalytic D)、アミノ酸番号446〜631はロイシンリッチリピートドメイン(LRR)、アミノ酸番号632〜764はhybrid Igドメイン(Hybrid Ig D)、アミノ酸番号765〜923はcarbohydrate−binding module(CBM)、アミノ酸番号924〜995はthree−helix bundleドメイン(3H)となっている(図12)。
アミノ酸配列の相同性からEndoS2(全長843アミノ酸)のドメイン構造を類推すると、アミノ酸番号1〜36はシグナルペプチド、putative coiled coil領域に相当する部分は欠失しており、アミノ酸番号37〜384が触媒ドメイン、アミノ酸番号385〜547はLRR、アミノ酸番号548〜677はhybrid Igドメイン、アミノ酸番号678〜843はCBMで、three−helix bundleドメインに相当する部分は欠失している(図12)。このようなドメイン構造を欠失させた場合、酵素活性にどのような影響があらわれるのかを調べてみた。
EndoS2欠失変異体としては、CBMを欠失させたEndoS2 Δ(679−843)、Hybrid IgドメインとCBMを欠失させたEndoS2 Δ(548−843)、およびLRR、Hybrid Igドメイン、CBMを欠失させたEndoS2 Δ(386−843)を構築した(図13)。EndoS2 Δ(679−843)をコードするDNAは、EndoS2全長をコードするDNAを鋳型として、プライマーNG1370+、NG1560−(配列表配列番号5、65)とKAPA HiFi HotStart ReadyMix (KAPA BIOSYSTEMS)を用いてPCR増幅を行って合成し、ここで増幅したDNAをpBluescript II SK+ベクター(Stratagene)のEcoRVサイトにクローニングした。これよりBamHI、XhoIで切り出したDNA断片をpGEX−6P−1(GEヘルスケア)のBamHI−XhoIサイトに挿入したものを、EndoS2 Δ(679−843)の発現ベクターとした。
EndoS2 Δ(548−843)をコードするDNAは、EndoS2全長をコードするDNAを鋳型として、プライマーNG1370+、NG1559−(配列表配列番号5、66)とKAPA HiFi HotStart ReadyMix (KAPA BIOSYSTEMS)を用いてPCR増幅を行って合成し、ここで増幅したDNAをpBluescript II SK+ベクター(Stratagene)のEcoRVサイトにクローニングした。これよりBamHI、XhoIで切り出したDNA断片をpGEX−6P−1(GEヘルスケア)のBamHI−XhoIサイトに挿入したものを、EndoS2 Δ(548−843)の発現ベクターとした。
EndoS2 Δ(386−843)をコードするDNAは、EndoS2全長をコードするDNAを鋳型として、プライマーNG1370+、NG1558−(配列表配列番号5、67)とKAPA HiFi HotStart ReadyMix (KAPA BIOSYSTEMS)を用いてPCR増幅を行って合成し、ここで増幅したDNAをpBluescript II SK+ベクター(Stratagene)のEcoRVサイトにクローニングした。これよりBamHI、XhoIで切り出したDNA断片をpGEX−6P−1(GEヘルスケア)のBamHI−XhoIサイトに挿入したものを、EndoS2 Δ(386−843)の発現ベクターとした。
また、各EndoS2欠失変異体に対応するグライコシンターゼも構築した。この場合は、EndoS2 D182QをコードするDNAを鋳型として、上記と同様にしてPCR増幅を行い、EndoS2 D182Q Δ(679−843)、EndoS2 D182Q Δ(548−843)、EndoS2 D182Q Δ(386−843)の各発現ベクターを作製した。
このようにして作製した各発現ベクターを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、前述した方法と同様にして各欠失変異体の発現と精製を行って、酵素溶液を調製した。
上記により得た各EndoS2欠失変異体の酵素溶液を用いて、ヒト血清由来IgG(hIgG)、ヒト血漿由来α1−acid glycoprotein(α1−AGP)、およびウシ膵臓由来ribonuclease B(RNase B)の各糖タンパク質糖鎖の切断実験を行った。酵素反応液は、50mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、10μL中に基質糖タンパク質を1μg、EndoS2欠失変異体を0.2μg、それぞれ加え、30℃で20時間反応させた。また、対照として、Peptide:N−Glycosidase F(PNGase F、タカラバイオ)による反応も行った。その後、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することによって酵素反応を停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色した。
図13にその結果を示す。EndoS2欠失変異体のうち、EndoS2 Δ(679−843)とEndoS2 Δ(548−843)は、野生型EndoS2と同様に、hIgGとα1−AGPの糖鎖を切断する活性を有していた。矢印で示すバンドは、糖鎖が切断された基質タンパク質である。α1−AGPの場合、PNGase Fによる消化のときとくらべると、EndoS2、EndoS2 Δ(679−843)、およびEndoS2 Δ(548−843)による消化では、一部の糖鎖しか切断されなかった。また、EndoS2と異なり、EndoSはα1−AGPの糖鎖を切断しなかった。EndoS2 Δ(386−843)はhIgG、α1−AGPの糖鎖を切断しなかったことから、EndoS2には糖鎖切断活性を発揮する上でLRRの全領域、あるいは一部の領域が必要であるといえる。なお、これらの欠失変異体は、もともとEndoS2の基質ではないRNase Bの糖鎖は切断しなかった。
つぎに、EndoS2 D182Qの欠失変異体の糖鎖転移活性について調べた。糖鎖転移反応の酵素反応液は、2.5μLの50mM Tris−HCl(pH7.0)中に、HerCアクセプターを10μg、A2−オキサゾリンを6mM、EndoS2 D182Qの欠失変異体を0.2μg、それぞれ含むように調製した。これらを30℃にて反応させ、経時的にサンプリングした。酵素反応は、SDS−PAGE用のサンプルバッファーを添加することにより停止させた。このサンプル溶液を煮沸処理後、SDS−PAGEに供した。泳動終了後、Quick−CBB(和光純薬)により染色し、抗体のH鎖に着目して転移産物の有無を確認した。
図14には、EndoS2 D182Qの各欠失変異体の糖鎖転移活性測定の結果を示す。図14中の横軸の数字は、酵素反応を開始してからの時間を示す(単位:時)。図14中のバンドは抗体H鎖であり、EndoS2 D182Qのカラムで見られる、反応時間の経過とともに高分子側にシフトしたバンドは糖鎖転移がなされた抗体H鎖である。EndoS2 D182Q Δ(679−843)、EndoS2 D182Q Δ(548−843)、EndoS2 D182Q Δ(386−843)の各カラムにおいても、反応時間の経過とともに高分子側にシフトしたバンドが少量、検出された。しかし、酵素なし(No enzyme)のカラムにおいても、3および5時間経過時に高分子側にシフトしたバンドが少量、検出されていた。これはA2−オキサゾリンが非特異的に抗体H鎖に結合したものと考えられる。現時点では、EndoS2 D182Q Δ(679−843)、EndoS2 D182Q Δ(548−843)、EndoS2 D182Q Δ(386−843)の各カラムにおいて検出される高分子側にシフトしたバンドが、転移産物なのか、非特異的な反応産物なのかは不明であるが、EndoS2 D182QをC末端側からドメインごとに欠失させていくと、その糖鎖転移活性は著しく低下するといえる。このことは、欠失変異体型のグライコシンターゼを構築する上で注意しなければならないことである。
以上のように、本発明のグライコシンターゼは、従来のグライコシンターゼであるEndoS D233Q変異体にくらべて、より広いpH領域で、より高い糖鎖転移活性を示す酵素であることが示された。また基質特異性に関しても、EndoS D233Q変異体にはない高マンノース型糖鎖の転移活性を有していた。実施例でオキサゾリン糖鎖をドナー基質としたときに効率よく糖鎖転移反応が確認されたので、オキサゾリン糖鎖以外の各種糖鎖をドナー基質として使用したときも同様の効果が得られる。このようなグライコシンターゼを糖タンパク質糖鎖の糖鎖リモデリングに用いれば、活性が高いため、オキサゾリン糖鎖を含む各種糖鎖をドナー基質とした糖鎖転移反応が効率よく進む。
本発明のグライコシンターゼは、不均一な構造をもつ糖鎖が結合した抗体などの糖タンパク質から、均一な構造をもつ糖鎖が結合した糖タンパク質を製造するのに有用であり、これによって該糖タンパク質の機能や安定性の向上、品質の維持などがはかれる可能性がある。また、特定の糖鎖構造をもつことで高機能性を発揮するような糖タンパク質を製造するのに有用である。

Claims (8)

  1. 下記のいずれかのアミノ酸配列を有するグライコシンターゼ。
    (1)配列表の配列番号1または3に記載されるアミノ酸配列;または
    (2)配列表の配列番号1または3に記載されるアミノ酸配列において1から20個のアミノ酸の欠失、置換および/または付加を有するアミノ酸配列を有し、抗体糖鎖のリモデリングに使用できるグライコシンターゼ活性を有するアミノ酸配列:
  2. 請求項に記載のグライコシンターゼのアミノ酸配列をコードすることを特徴とするグライコシンターゼ遺伝子。
  3. 下記のいずれかの塩基配列を有する請求項に記載のグライコシンターゼ遺伝子。
    (1)配列表の配列番号2に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列;
    (2)配列表の配列番号2に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列を有し、グライコシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
    (3)配列表の配列番号4に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列;
    (4)配列表の配列番号4に記載の塩基配列中の塩基番号1から2532で特定される塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換および/または付加を有する塩基配列を有し、グライコシンターゼ活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
  4. 請求項または請求項3に記載のグライコシンターゼ遺伝子を含むことを特徴とする組換えベクター。
  5. 発現ベクターである、請求項に記載の組換えベクター。
  6. 請求項または請求項に記載の組換えベクターにより形質転換されたことを特徴とする形質転換体。
  7. 請求項に記載の形質転換体を培養し、該培養物からグライコシンターゼを採取することを特徴とするグライコシンターゼの製造方法。
  8. 請求項1に記載のグライコシンターゼを用い、一方または両方のH鎖に糖鎖成分としてフコースがα1,6−結合したN−アセチルグルコサミンのみが、「抗体のFc領域に存在する糖鎖付加部位」に結合した抗体をアクセプター基質とし、高マンノース型糖鎖をドナー基質として、ドナー基質由来の高マンノース型糖鎖をアクセプター基質に糖鎖転移する反応工程を含む、1本または2本のコアフコースが付加した高マンノース型糖鎖をもつことを特徴とする抗体の製造方法。
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