JP5307716B2 - ドックリンポリペプチドおよびそれを利用した組換え融合タンパク質の精製方法 - Google Patents

ドックリンポリペプチドおよびそれを利用した組換え融合タンパク質の精製方法 Download PDF

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Description

本発明は、組換え融合タンパク質の短時間での精製等に利用可能な新規ポリペプチドおよびそれを用いた組換え融合タンパク質の精製方法等に関する。
ゲノム解析が終了し、全ての発現遺伝子が分かろうとしている今日、タンパク質の機能解析の重要性が増している。また、分子生物学の発達によって、生体組織からタンパク質を精製する代わりに、組換え遺伝子を動植物、酵母、細菌などの細胞中に導入し、組換えタンパク質として大量に発現させることが可能になった。
しかしながら、一般的に組換えタンパク質を得るためには、組換えタンパク質を発現させた後、細胞を磨砕し、大量に存在する細胞由来のタンパク質や核酸、多糖類などの夾雑物から目的とする組換えタンパク質を分離、精製する必要がある。従って、細胞を宿主とした組換えタンパク質の生産においては、目的とする組換えタンパク質の分離、精製を効率よく行うことが、タンパク質の機能解析や利用のために重要な課題となっている。
組換えタンパク質の分離・精製によく用いられる有効な方法の一つがアフィニティークロマトグラフィーである。この方法では、まず、目的とするタンパク質をコードする遺伝子配列と、あるリガンドに対して高い親和性をもつタンパク質フラグメント(以下、アフィニティーペプチドという)をコードする遺伝子配列を利用して、アフィニティーペプチドと目的とするタンパク質とを組み合わせた組換え融合タンパク質を発現させる。次に、この組換え融合タンパク質を、付加したアフィニティーペプチドと結合するリガンドを固定化させた担体を使用することにより、他の夾雑物等から分離し、その後アフィニティーペプチドを解離させることにより、目的ペプチドを簡便に精製することができる。実際に、アフィニティークロマトグラフィーとして知られているものとして、ポリヒスチジンを用いた手法(特許文献1)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を用いた手法(特許文献2)、マルトース結合タンパク質(MBP)を利用する手法などがある。
しかしながら、これまでに開発されたアフィニティークロマトグラフィーの多くには、いくつかの問題があった。例えば、ポリヒスチジンと、目的とするタンパク質とを組み合わせた組換え融合タンパク質のなかには、宿主によって不溶化することがあったり、本来の活性を有さないことがしばしばあった。特に、GSTやMBPのような、その分子量が約30〜50kDaと大きなアフィニティーペプチドを融合させた場合には、正常なホールディングを妨げ、本来の活性を有さない組換え融合タンパク質として発現することがあった。また、多くのアフィニティークロマトグラフィーは、担体として、IgG抗体など非常に高価なリガンドを用いるため、経済的な問題があった。そのほかに、アフィニティーペプチドによっては、組換え融合タンパク質を担体から溶出する際の条件が、目的タンパク質を失活させてしまうようなpHであったり、グアニジンやエチレングリコールなど目的タンパク質を変性させたり活性を阻害したりする物質の添加を必要とする場合も多かった。すなわち、アフィニティークロマトグラフィーは、付加したアフィニティーペプチドとそれに相応するリガンドを利用することにより特異性が高い精製が行えるものの、穏和な条件下で解離がし難く、実用上問題のある場合があった。
このような現状を鑑み、本発明者らは、オオミヤら(非特許文献1)によって報告されているクロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)由来のセルロソームと呼ばれるタンパク質の複合体の一部で、カルシウム結合モチーフドメインをもつタンパク質であるドックリンと、それにカルシウムイオンを介して特異的に結合するコヘシンドメインというタンパク質を利用することにより、組換え融合タンパク質を比較的穏和な条件下で精製分離できることを報告している(特許文献3)。
しかしながら、この精製方法において、組換え融合タンパク質の変性を抑えるために4℃程度の低温下で溶出する場合には、ドックリンとコヘシンドメインの結合が強いため、溶出に6時間〜16時間という長い時間を要するという問題があった。一方、常温下で溶出する場合には短時間で溶出することができるが、この場合はタンパク質の活性などに影響を与えることが危惧されていた。
特許第2686090号 特開平7−184663号公報 WO03/033695号国際公開パンフレット 三重大学生物資源紀要、第19号、pp71−96(1997)
従って、従来のドックリンとコヘシンを用いた精製法の問題点である低温条件下での溶出時間を短縮し、効率的かつ経済的に組換え融合タンパク質の生産・精製を行える新規な精製系の開発が求められており、本発明はこのような精製系の提供をその課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究したところ、ドックリンのアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸を、特定の他のアミノ酸に置換することにより得られるドックリンポリペプチドは、これを従来のドックリンとコヘシンを用いた精製方法に適用した場合に、低温下においても目的タンパク質の溶出時間が著しく短縮されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明はクロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)由来のドックリンのサブドメイン2の14番目のアミノ酸であるイソロイシンまたはロイシンを、スレオニン、グリシン、セリン、チロシンおよびアスパラギンからなる群から選ばれる特定の他のアミノ酸に置換したことを特徴とするドックリンポリペプチドである。
また、本発明は目的タンパク質と、上記ドックリンポリペプチドとを含む組換え融合タンパク質を、カルシウムイオンを介してコヘシンドメインを含むポリペプチドに結合させて複合体を形成させ、その後、金属キレーターで複合体からカルシウムイオンを除去し、組換え融合タンパク質を溶出させることを特徴とする組換え融合タンパク質の精製方法である。
更に、本発明は上記ドックリンペプチドをコードするポリヌクレオチドおよびこれを組み込んだ発現ベクターである。
また更に、本発明は上記発現ベクターと、コヘシンドメインを含むポリペプチドを固定化した担体とを含むことを特徴とする組換え融合タンパク質の精製キットである。
本発明のドックリンポリペプチドは、野生型ドックリンと同等のコヘシンドメインに対する結合親和力を有する。そして、これを従来の野生型ドックリンとコヘシンを用いた組換え融合タンパク質の精製方法に適用した場合には、組換え融合タンパク質の活性に与える影響が少ない低温下での溶出時間を著しく短縮することができる。
従って、本発明のドックリンポリペプチドを利用した組換え融合タンパク質の精製方法は効率的かつ経済的に組換え融合タンパク質を精製することができるものである。
本明細書において、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)由来のドックリンとは、CelB、Aga27A、Cel48A等のクロストリジウム・ジョスイが産生するセルロソームに含まれるものである。例えば、CelBに含まれるドックリンは、CelBのアミノ酸配列(BAA04078またはP37701)の402〜460番目(配列番号1)であり、Aga27Aに含まれるドックリンはAga27Aのアミノ酸配列(BAB83765)の402〜478番目(配列番号2)であり、Cel48Aに含まれるドックリンはCel48Aのアミノ酸配列(BAA32430)の660〜719番目(配列番号3)である。
上記ドックリンのアミノ酸配列は共通して二つのサブドメイン、ドックリンサブドメイン1およびサブドメイン2を含む。例えば、CelBに含まれるドックリンのサブドメイン1は配列番号1の3〜27番目までの範囲であり、サブドメイン2は36〜60番目までの範囲である。また、Aga27Aに含まれるドックリンのサブドメイン1は配列番号2の2〜26番目までの範囲であり、サブドメイン2は38〜62番目の範囲である。更に、Cel48Aに含まれるドックリンのサブドメイン1は配列番号3の2〜26番目の範囲であり、サブドメイン2は34〜53番目の範囲である。これらサブドメイン1および2には、それぞれ最初のアミノ酸から、4、6、8、12および15番目にカルシウム結合に関与するアミノ酸(カルシウム結合アミノ酸)が存在し、カルシウムバインディングサイトを形成している。
本発明のドックリンポリペプチドは、上記クロストリジウム・ジョスイ由来のドックリンのサブドメイン2の14番目のアミノ酸(サブドメイン2の最下流側のカルシウム結合アミノ酸の直前のアミノ酸)であるイソロイシンまたはロイシンを、スレオニン、グリシン、セリン、チロシンおよびアスパラギンからなる群から選ばれる特定の他のアミノ酸に置換することにより得られるものである。これらの特定の他のアミノ酸に置換することにより、カルシウムイオン存在下でのコヘシンとの結合親和力を変化させず、キレート剤を作用させた場合のみコヘシンからの解離速度が速まり、コヘシン固定化担体からの精製タンパク質の低温下での溶出時間を顕著に短縮(30分以内に90%以上が溶出)することができる。一方、上記特定の他のアミノ酸以外のアミノ酸、例えば、バリンに置換した場合には、キレート剤を作用させた場合にコヘシンからの解離速度に変化はなく、低温下での溶出時間の短縮も顕著ではない。
上記特定の他のアミノ酸の中でもスレオニンまたはグリシンが好ましく、特にグリシンが好ましい。これらのアミノ酸に置換することにより特に、キレート剤を作用させた場合のみに起こるコヘシンからの解離速度の上昇が顕著であり、低温下での溶出時間が短縮され、カラム精製法において溶出ピークがシャープであり、高濃度の精製蛋白質を短時間で得ることが可能になる。
また、本発明においては、上記サブドメイン2の14番目のアミノ酸であるイソロイシンまたはロイシンを、特定の他のアミノ酸に置換することに加えて、更に、サブドメイン1の14番目のアミノ酸であるロイシンまたはイソロイシンを、スレオニンおよびグリシンからなる群から選ばれる特定の他のアミノ酸に置換することが好ましい。
上記ドックリンポリペプチドの好ましいものとしては、CelBに含まれるドックリンのアミノ酸配列(配列番号1)の、最初のメチオニンから49番目の野生型のアミノ酸であるイソロイシンを、スレオニンに置換したもの(配列番号4)、グリシンに置換したもの(配列番号5)、セリンに置換したもの(配列番号6)、アスパラギンに置換したもの(配列番号7)、チロシンに置換したもの(配列番号9)、最初のメチオニンから16番目の野生型のアミノ酸であるロイシン(L)と49番目の野生型のアミノ酸であるイソロイシンとをそれぞれスレオニンに置換したもの(配列番号8)、最初のメチオニンから16番目の野生型のアミノ酸であるロイシン(L)と49番目の野生型のアミノ酸であるイソロイシンとをそれぞれグリシンに置換したもの(配列番号10)が挙げられる。これらのドックリンポリペプチドの中でも特に最初のメチオニンから49番目の野生型のアミノ酸であるイソロイシンを、グリシンに置換したもの(配列番号5)が好ましい。
本発明のドックリンポリペプチドの作製は、公知のペプチドを形成するアミノ酸を別のアミノ酸に変換する方法を用い、行うことができる。例えば、クロストリジウム・ジョスイ由来のドックリンの遺伝子配列を基に、重複配列を含む2つのPCR産物をハイブリダイズさせ、伸長反応の産物を2次PCRの鋳型に用いるオーバーラップ伸長法(Mikaelian, et al., Nucl. Acids Res., 20, 376 (1992))等のヌクレオチドに変異を導入することのできる方法を用いることにより、野生型ドックリンのサブドメインに含まれるカルシウムバインディングサイトを形成する最後のアミノ酸の直前のアミノ酸を所望のアミノ酸に置換したドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。そして、このポリヌクレオチドを発現ベクターに組込み、更にその発現ベクターを任意の宿主に導入し、宿主を培養することにより本発明のドックリンポリペプチドを得ることができる。
上記のようにして得られた本発明のドックリンポリペプチドは、コヘシンドメインを含むポリペプチド(以下、「コヘシンポリペプチド」という)を利用した目的タンパク質の精製方法(以下、「本発明の精製方法」という)に利用することができる。すなわち、本発明ドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む塩基配列を適当な発現ベクターに組込み、これを適当な宿主中で培養する。そして得られた組換え融合タンパク質を、カルシウムイオンを介してコヘシンポリペプチドに結合させて複合体を形成させ、その後、金属キレーターで複合体からカルシウムイオンを除去し、組換え融合タンパク質を溶出させることにより組換え融合タンパク質を精製することができる。なお、この精製方法はWO03/033695号国際公開パンフレットに準ずる方法で実施可能である。
本発明の精製方法に用いられる組換え融合タンパク質を作製するには、上記本発明のドックリンポリペプチドの発現ベクターの作製において、本発明のドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを目的タンパク質遺伝子の5'領域の上流もしくは、3'領域の下流に組込み、それを任意の発現ベクターのプロモーターの下流に組み込めばよい。また、本発明のドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと目的タンパク質遺伝子との間にはトロンビン切断配列やエントロキナーゼ切断配列等の切断遺伝子を導入してもよい。また、目的タンパク質遺伝子としては、種々の公知のタンパク質をコードする遺伝子が使用できる。
上記組換え融合タンパク質の作製に用いられる発現ベクターとしては、特に制限なく、使用する宿主に応じて適宜選択することができる。例えば、宿主として大腸菌を使用する場合は、pET(ノバジェン製)等が使用され、宿主が昆虫培養細胞または虫体の場合は、バキュロウイルス由来の発現ベクターが好ましく、例えば、ABv(片倉工業製)等が使用でき、特に宿主として虫体を用いる場合はABvを使用することが好ましい。
本発明の精製方法において使用されるコヘシンポリペプチドとしては、前記ドックリンポリペプチドと特異的に結合するものであれば特に限定されない。このようなコヘシンポリペプチドとしては、クロストリジウム・ジョスイ由来のCipA(BAA32429)等のコヘシンポリペプチドが挙げられる。また、コヘシンポリペプチドの調製は、組換え融合タンパク質の調製に準じて行うことができる。例えば、クロストリジウム・ジョスイ由来のCipA全長あるいはCipAのコヘシンドメインを含む領域をクローニングし、これを任意の発現ベクターに組み込んでコヘシンポリペプチドを発現するベクターを構築し、その発現ベクターを宿主に導入し、コヘシンポリペプチドを産生させ、得られたコヘシンポリペプチドをクロマトグラフィー操作により精製、単離することにより得られる。
コヘシンポリペプチドの精製には、タンパク質の精製を行うための常法が用いられる。このようなタンパク質精製のための方法としては、例えば、硫安塩析法、ゲル濾過クロマトグラフィー法、イオン交換クロマトグラフィー法、疎水性クロマトグラフィー法、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー等が挙げられる。また、これらの方法は組み合わせることができ、それにより純度の高いコヘシンポリペプチド含有画分を得ることができる。具体的には、疎水性クロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラフィーを組み合わせることで、高純度のコヘシンポリペプチドを精製できる。
また、このコヘシンポリペプチドは、常法に従い担体に結合させることにより固定化することができる。例えば、このコヘシンポリペプチドは共有結合を利用することにより直接担体に結合させることができる。具体的にコヘシンポリペプチドは架橋剤等により活性化担体に結合させることができる。活性化担体としては、CNBr−activated Sepharose 4 Fast Flow、CNBr−activated Sepharose 4B、EAH Sepharose 4B、ECH Sepharose 4B、Epoxy−activated Sepharose 6B、NHS−Activated Sepharose 4FF(いずれもGEヘルスケアバイオサイエンス製)等が挙げられる。また、このコヘシンポリペプチドは水素結合を利用して担体に結合させることもできる。この場合には、コヘシンポリペプチドとして、コヘシンポリペプチドとセルロース結合ドメイン(CBD)を含むCipA等を用い、これに含まれるCBDとセルロースの吸着を利用してセルロース担体に結合させることができる。セルロース担体としては、CBinD 100 Resin(ノバジェン製)等が挙げられる。
上記のようにしてコヘシンポリペプチドを固定化した担体に、組換え融合タンパク質を結合させる方法としては特に限定されず、例えば、バッチ法、カラム法等が挙げられる。いずれの方法でも、組換え融合タンパク質を含む試料にカルシウムイオンを添加した後、それをコヘシンドメインポリペプチドを固定化した担体に接触させ、必要であれば一定時間放置することにより、組換え融合タンパク質のみをコヘシンドメインを含むポリペプチドを固定化した担体に結合させて、複合体とすることができる。この操作において複合体を形成しなかった不要物は、適当な緩衝液で洗浄することにより除去することが可能である。
上記複合体から組換え融合タンパク質を溶出するには、金属キレーターを含む適当な緩衝液を添加すればよい。この溶出は室温下で行うことも可能であるが、組換え融合タンパク質の失活を防ぐためには、4℃といった低温下で行うことが特に好ましい。本発明のドックリンポリペプチドを用いることにより、従来は、低温下でバッチ法により6時間以上かかっていた溶出時間が30分〜1時間に短縮される。また、カラム法では、溶出ピークがシャープになり、0.5ml/分の流速で10分以内に溶出タンパク質のほぼ全てが回収される。
上記溶出に使用される緩衝液としては、従来のドックリンとコヘシンを用いた精製法と同じく、グッド緩衝液やリン酸緩衝液等が挙げられる。また、金属キレーターとしては、EDTAやEGTA等が挙げられる。これらの金属キレーターは緩衝液中にEDTAでは50mM程度、EGTAでは5mM程度で含有させればよい。
上記した本発明の精製方法を容易に実施するためには、上記ドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクターと、コヘシンドメインを含むポリペプチドを固定化した担体とを含む組換え融合タンパク質の精製キットを利用してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
実 施 例 1
ドックリンポリペプチドをコードする遺伝子の作製:
以下に記載のクロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)のCelB由来の野性型ドックリンのアミノ酸配列(配列番号1)において、最初のアミノ酸であるメチオニンから16番目(ドックリンのサブドメイン1の14番目)のロイシン(L)および/または49番目(ドックリンのサブドメイン2の14番目)のイソロイシン(I)のアミノ酸を以下の表1に示したアミノ酸に置換したドックリンポリペプチドをコードする遺伝子を以下のようにして作製した。
Figure 0005307716
上記アミノ酸の置換はオーバーラップ伸長法(Mikaelian, et al., Nucl. Acids Res., 20, 376 (1992))を利用して行った。オーバーラップ伸長法に用いたPCRプライマー等を下記に示す。なお、以下の実施例においてPCRサンプルの調製、PCR反応条件は、特に断りのない限り下記と同様にして行った。また、以下のPCRプライマーにおいてN末端付加用とは、トランスファーベクターへの挿入のためにドックリンの5'端に制限酵素NcoI認識配列および3'端に制限酵素NheI認識配列を付加させるものをいい、C末端付加用とはトランスファーベクターへの挿入のためにドックリンの5'端に制限酵素Eco81I認識配列および3'端に制限酵素SnaBI認識配列を付加させるものをいう。
<PCRプライマー>
N末端付加用プライマー
nDock1プライマー:(制限酵素NcoI配列付加)
5'−gatccATgggTTTAAAAggCgATgTCAATAATg−3'
nDock2プライマー:(制限酵素NheI配列付加)
5'−cttCCGctagcATTcAGcAGTTTAAcTTTTAGcTG
−3'
C末端付加用プライマー
cDock1プライマー:(制限酵素Eco81I配列付加)
5'−CTggCCTCAggATgggTTTAAAAgg−3'
cDock2プライマー:(制限酵素SnaBI配列付加)
5'−GAATTATTAAAATACGTACAACAATTGTCTGTAAA
TC−3'
L16T置換用プライマーセット
L16Tセンスプライマー:
5'−ggTgCTATAgATgCCacTgATATTgCTgCg−3'
L16Tアンチセンスプライマー:
5'−cGcAGcAATATcAgtGGcATcTATAGcAcc−3'
I49T置換用プライマーセット
I49Tセンスプライマー:
5'−cggAAATATTgATgCCAcTgATTTTgCTCAg−3'
I49Tアンチセンスプライマー:
5'−cTGAGcAAAATcAgTGGcATcAATATTTccg−3'
I49G置換用プライマーセット
I49Gセンスプライマー:
5'−ggAAATATTgATgcCggcgATTTTgCTCAg−3'
I49Gアンチセンスプライマー:
5'−cTGAGcAAAATcgccGgcATcAATATTTcc−3'
I49S置換用プライマーセット
I49Sセンスプライマー:
5'−ggAAATATTgATgcCtccgATTTTgCTCAg−3'
I49Sアンチセンスプライマー:
5'−cTGAGcAAAATcggaGgcATcAATATTTcc−3'
I49N置換用プライマーセット
I49Nセンスプライマー:
5'−ggAAATATTgATgcCaaTgATTTTgCTCAg−3'
I49Nアンチセンスプライマー:
5'−cTGAGcAAAATcAttGgcATcAATATTTcc−3'
L16G置換用プライマーセット
L16Gセンスプライマー:
5'−ggTgCTATAgATgCCggTgATATTgCTgCg−3'
L16Gアンチセンスプライマー:
5'−cGcAGcAATATcAccGGcATcTATAGcAcc−3'
I49Y置換用プライマーセット
I49Yセンスプライマー:
5'−cggAAATATTgATgCCtAcgATTTTgCTCAg−3'
I49Yアンチセンスプライマー:
5'−cTGAGcAAAATcgTAGGcATcAATATTTccg−3'
I49V置換用プライマーセット
I49Vセンスプライマー:
5'−ggAAATATTgATgcCgTTgATTTTgCTCAg−3'
I49Vアンチセンスプライマー:
5'−cTGAGcAAAATcAAcGgcATcAATATTTcc−3'
Figure 0005307716
<PCR反応条件>
手順1:94.0℃、2分
手順2:94.0℃、15秒
手順3:52.0℃、30秒
手順4:68.0℃、1kbpにつき1分
手順5:手順2〜手順4を30回繰り返す
(1)N末端付加用I49T置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
組換えバキュロウイルス作製用トランスファーベクターpM000001(片倉工業製)に、クロストリジウム・ジョスイのCelB由来の野性型ドックリンの遺伝子配列(BAA04078)をマルチクローニングサイトの上流に組み込んだベクターpM0NDT10を作製した。このpM0NDT10を鋳型とし、上記nDock1プライマーとI49Tアンチセンスプライマーを用いてPCRを行いドックリンの前半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。また、nDock2プライマーとI49Tセンスプライマーを用いてPCRを行い、ドックリンの後半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。このドックリンポリペプチドの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を用いて以下の遺伝子結合用PCRサンプルを調製し、ドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を以下の遺伝子結合用PCR反応条件でアニールした。このアニール後のサンプルにnDock1プライマーとnDock2プライマーを加え、アニールした遺伝子を鋳型としてPCRを行い、野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをTに置換したN末端付加用ドックリンポリペプチドをコードする遺伝子(以下、これを「N末端付加用I49T置換遺伝子」という)を合成した。
Figure 0005307716
<遺伝子結合用PCR反応条件>
手順1:94℃、15秒
手順2:52℃、30秒
手順3:74℃、30秒
手順4:手順1〜3を2回繰り返す
(2)N末端付加用I49G置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
I49T置換用プライマーセットに代えてI49G置換用プライマーセットを用いる以外は、上記(1)と同様にして野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをGに置換したN末端付加用I49G置換ドックリンポリペプチド遺伝子(以下、これを「N末端付加用I49G置換遺伝子」という)を合成した。
(3)N末端付加用I49S置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
I49T置換用プライマーセットに代えてI49S置換用プライマーセットを用いる以外は、上記(1)と同様にして野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをSに置換したN末端付加用I49S置換ドックリンポリペプチド遺伝子(以下、これを「N末端付加用I49S置換遺伝子」という)を合成した。
(4)N末端付加用I49N置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
I49T置換プライマーセットに代えてI49N置換プライマーセットを用いる以外は、上記(1)と同様にして野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをNに置換したN末端付加用I49N置換ドックリンポリペプチド遺伝子(以下、これを「N末端付加用I49N置換遺伝子」という)を合成した。
(5)N末端付加用I49Y置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
I49T置換プライマーセットに代えてI49Y置換プライマーセットを用いる以外は、上記(1)と同様にして野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをYに置換したN末端付加用I49Y置換ドックリンポリペプチド遺伝子(以下、これを「N末端付加用I49Y置換遺伝子」という)を合成した。
(6)N末端付加用I49V置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
I49T置換プライマーセットに代えてI49V置換プライマーセットを用いる以外は、上記(1)と同様にして野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをVに置換したN末端付加用I49V置換ドックリンポリペプチド遺伝子(以下、これを「N末端付加用I49V置換遺伝子」という)を合成した。
(7)N末端付加用L16G/I49G置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
上記(2)で合成したN末端付加用I49G置換遺伝子を鋳型とし、上記nDock1プライマーとL16Gアンチセンスプライマーを用いてPCRを行いドックリンの前半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。また、nDock2プライマーとL16Gセンスプライマーを用いてPCRを行い、ドックリンの後半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。このドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を用いて上記した遺伝子結合用PCRサンプルを調製し、ドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を上記遺伝子結合用PCR反応条件でアニールした。このアニール後のサンプルにnDock1プライマーとnDock2プライマーを加え、アニールした遺伝子を鋳型としてPCRを行い、野生型ドックリンの16番目のアミノ酸LをG、49番目のアミノ酸IをGに置換したN末端付加用ドックリンポリペプチドをコードする遺伝子(以下、これを「N末端付加用L16G/I49G置換遺伝子」という)を合成した。
(8)N末端付加用L16T/I49T置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
上記(1)で合成したN末端付加用I49T置換遺伝子を鋳型とし、上記nDock1プライマーとL16Tアンチセンスプライマーを用いてPCRを行いドックリンの前半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。また、nDock2プライマーとL16Tセンスプライマーを用いてPCRを行い、ドックリンの後半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。このドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を用いて上記した遺伝子結合用PCRサンプルを調製し、ドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を上記遺伝子結合用PCR反応条件でアニールした。このアニール後のサンプルにnDock1プライマーとnDock2プライマーを加え、アニールした遺伝子を鋳型としてPCRを行い、野生型ドックリンの16番目のアミノ酸LをT、49番目のアミノ酸IをTに置換したN末端付加用ドックリンポリペプチドをコードする遺伝子(以下、これを「N末端付加用L16T/I49T置換遺伝子」という)を合成した。
(9)C末端付加用I49T置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
組換えバキュロウイルス作製用トランスファーベクターpM000001(片倉工業製)に、クロストリジウム・ジョスイのCelB由来の野性型ドックリンの遺伝子配列(BAA04078)を常法によりマルチクローニングサイトの下流に組み込んだベクターpM0CDT17を作製した。このpM0CDT17を鋳型とし、上記cDock1プライマーとI49Tアンチセンスプライマーを用いてPCRを行いドックリンの前半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。また、cDock2プライマーとI49Tセンスプライマーを用いてPCRを行い、ドックリンの後半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。このドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を用いて上記の遺伝子結合用PCRサンプルを調製し、ドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を上記遺伝子結合用PCR反応条件でアニールした。このアニール後のサンプルにcDock1プライマーとcDock2プライマーを加え、アニールした遺伝子を鋳型としてPCRを行い、野生型ドックリンの49番目のアミノ酸IをTに置換したC末端付加用ドックリンポリペプチドをコードする遺伝子(以下、これを「C末端付加用I49T置換遺伝子」という)を合成した。
(10)C末端付加用L16T/I49T置換ドックリンポリペプチド遺伝子の合成
上記()で合成したC末端付加用I49T置換遺伝子を鋳型とし、上記cDock1プライマーとL16Tアンチセンスプライマーを用いてPCRを行いドックリンの前半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。また、cDock2プライマーとL16Tセンスプライマーを用いてPCRを行い、ドックリンの後半の部分配列をコードする遺伝子を合成した。このドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を用いて上記遺伝子結合用PCRサンプルを調製し、ドックリンの前半部分をコードする遺伝子と後半部分をコードする遺伝子産物を上記遺伝子結合用PCR反応条件でアニールした。このアニール後のサンプルにcDock1プライマーとcDock2プライマーを加え、アニールした遺伝子を鋳型としてPCRを行い、野生型ドックリンの16番目のアミノ酸LをT、49番目のアミノ酸IをTに置換したC末端付加用ドックリンポリペプチドをコードする遺伝子(以下、これを「C末端付加用L16T/I49T置換遺伝子」という)を合成した。
実 施 例 2
トランスファーベクターの構築(1):
(1)N末端付加用I49T置換遺伝子の精製
実施例1(1)で合成したN末端付加用I49T置換遺伝子のPCR産物5μlに制限酵素NcoIおよびNheI(共に宝酒造製)を8〜24U加え、制限消化することにより末端配列を露出させた。次に、これをキアゲンスピンカラム(QIAquick:キアゲン製)に通し、制限酵素処理N末端付加用I49T置換遺伝子を精製した。
(2)N末端付加用I49T置換遺伝子のトランスファーベクターへの挿入
実施例1(1)で調製したpM0NDT10の制限酵素認識サイトNcoI・NheIを、制限酵素NcoIおよびNheI(共に宝酒造製)で開いてトランスファーベクターを線状化した後、これの制限酵素切断末端をアルカリフォスファターゼ(宝酒造製)により脱リン化した。このトランスファーベクター0.1μg(2μl)と、上記(1)で精製した制限酵素処理N末端付加用I49T置換遺伝子断片0.1μg(3μl)を混合し、ライゲーションキット(宝酒造製)を用いて16℃で1時間反応した後に、反応溶液すべてを用いて大腸菌DH5α(インビトロジェン製)を形質転換した。この形質転換体から常法に従いアンピシリン耐性形質転換体を選抜し、プラスミドの精製を行った。次にいくつかのクローンの塩基配列確認を以下のyng.forプライマーを用い、ABIシーケンスキット(ABI製)を用いて反応させた後、DNAシーケンサー(ABI製)を用いて、N末端付加用I49T置換遺伝子が導入されているかどうかを解析した。N末端付加用I49T置換遺伝子が導入され、その他の部分に変異のないクローンをpM0NDT10−DV(I49T)ベクターとした。
また、実施例1の(2)〜(8)で合成した遺伝子を用い、上記と同様の方法によりN末端付加用I49G置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(I49G)、N末端付加用I49S置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(I49S)、N末端付加用I49N置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(I49N)、N末端付加用I49Y置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(I49Y)、N末端付加用I49V置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(I49V)、N末端付加用L16G/I49G置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(L16G/I49G)、およびN末端付加用L16T/I49T置換遺伝子を挿入したベクターをpM0NDT10−DV(L16T/I49T)とした(図1)。
クローンの塩基配列確認用プライマー
yng.forプライマー:
5'−aaccatctcgcaaataaata−3'
実 施 例 3
トランスファーベクターの構築(2):
(1)C末端付加用I49T置換遺伝子の調製
実施例1()で合成したC末端付加用I49T置換遺伝子のPCR産物の5μlに制限酵素Eco81IおよびSnaBI(共に宝酒造製)を8〜24U加え、制限消化することにより末端配列を露出させた。次に、これをキアゲンスピンカラム(QIAquick:キアゲン製)に通し、制限酵素処理C末端付加用I49T置換遺伝子を精製した。
(2)C末端付加用I49T置換遺伝子のトランスファーベクターへの挿入
実施例1()で調製したpM0CDT17の制限酵素認識サイトEco81I・SnaBIを、制限酵素Eco81IおよびSnaBI(共に宝酒造製)で開いてトランスファーベクターを線状化した後、これの制限酵素切断末端をアルカリフォスファターゼ(宝酒造製)により脱リン化した。このトランスファーベクター0.1μg(2μl)と、上記(1)で精製した制限酵素処理C末端付加用I49T置換遺伝子0.1μg(3μl)を混合し、ライゲーションキット(宝酒造製)を用いて16℃で1時間反応した後に、反応溶液すべてを用いて大腸菌DH5α(インビトロジェン製)を形質転換した。この形質転換体から常法に従いアンピシリン耐性形質転換体を選抜し、プラスミドの精製を行った。次にいくつかのクローンの塩基配列確認を上記yng.forプライマーを用い、ABIシーケンスキット(ABI製)を用いて反応させた後、DNAシーケンサー(ABI製)を用いてC末端付加用I49T置換遺伝子が導入されているかどうかを解析した。C末端付加用I49T置換遺伝子が導入され、その他の部分に変異のないクローンをpM0CDT17−DV(I49T)ベクターとした。
また、実施例1の(10)で合成した遺伝子を用い、上記と同様の方法によりC末端付加用L16T/I49T置換遺伝子を挿入したベクターをpM0CDT17−DV(L16T/I49T)とした(図2)。
実 施 例 4
組換え融合タンパク質の調製:
(1)JNK3遺伝子の取得
プロテインキナーゼJNK3(mitogen-activated protein kinase 10 isoform 3)の 遺伝子が導入されたベクターであるFLJ42801(社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBiC))を鋳型とし、JNK3遺伝子調製用のJNK3−5'プライマーとJNK3−3'TGAプライマーを用いてPCRを行った。このJNK3遺伝子の5'端に制限酵素XhoI認識配列および3'端に制限酵素EcoRV認識配列が付加されたPCR産物5μlに、制限酵素XhoIおよびEcoRV(共に宝酒造製)を加え、制限消化することにより末端配列を露出させた。次に、これをキアゲンスピンカラム(QIAquick:キアゲン製)により制限酵素処理JNK3遺伝子を精製した。
JNK3遺伝子調製用プライマー
JNK3−5'プライマー(制限酵素XhoI配列付加):
5'−gatctcgagatgagcaaaagcaaagttg−3'
JNK3−3'TGAプライマー(制限酵素EcoRV配列付加):
5'−gcgatatctcactgctgcacctgtgctgaag−3'
(2)JNK3遺伝子のトランスファーベクターへの挿入
実施例2および3で作製した各種トランスファーベクターを、それぞれXhoIおよびEcoRV(共に宝酒造製)で消化し、これにJNK3遺伝子をライゲーションキット(宝酒造製)を用いて挿入し、組換え融合タンパク質発現用トランスファーベクターを調製した。更に、このトランスファーベクターで大腸菌DH5α(インビトロジェン製)を形質転換し、アンピシリン耐性クローンについてプラスミド精製を行い、DNAシーケンサー(ABI製)でJNK3遺伝子の挿入および読み枠が合っていること、また、JNK3遺伝子に変異のないことを確認した。
(3)組換え融合タンパク質発現用ウイルスの作製
上記(2)で調製した組換え融合タンパク質発現用トランスファーベクターとEco81I(宝酒造製)で直鎖化したABvNPVのDNA(片倉工業製)をTC−100培地(無血清)中で2.5:1の割合(質量比)で混合し、これをカチオン性脂質試薬(リポフェクチン(登録商標)試薬:インビトロジェン製)とともにBm−N細胞(TC−100培地で培養)にコ・トランスフェクションした。25℃で7日間静置培養後、その培養上清を組換え融合タンパク質発現用ウイルス原液とした。
(4)組換え融合タンパク質の発現
上記(3)で調製した組換え融合タンパク質発現用ウイルス原液を、テルモシリンジでカイコ(錦秋鐘和)蛹2頭に接種した後、7日目のものを回収、凍結保存し、これを組換え融合タンパク質発現用ウイルス感染カイコとした。このカイコ2頭を50mlチューブに入れ、グリセロールを10質量%(以下、「%」という)含むPBSを10ml、ステンレスビーズを1個、ジルコニアビーズを5g、500mMの2−メルカプトエタノールを100μl、1Mのベンズアミンを100μlおよび100mMのPMSFを100μl加え、ホモジナイザーを用いて、4℃で3分間磨砕した。この磨濁液を3,000rpm、4℃の条件で10分間遠心後、ガーゼで濾過し、上清を得た。この上清をさらに超遠心分離機(BECKMAN COULTER Avanti(商標登録) Centrifuge HP-30I)を用い、100,000gで60分間超遠心分離し、組換え融合タンパク質を含む超遠心上清を得た。
実 施 例 5
組換えコヘシンタンパク質の調製およびコヘシンカラムの作製:
(1)組換えコヘシンタンパク質の調製
クロストリジウム・ジョスイのCipA遺伝子(BAA32429)を組み込んだバキュロウイルスを、上記実施例4と同様の方法で作製し、そのウイルス溶液をテルモシリンジでカイコ蛹(錦秋鐘和)2頭に接種した。ウイルス接種後、7日目のものを回収、凍結保存し、これを組換えコヘシンタンパク質発現用ウイルス感染カイコとした。このカイコ2頭を50mlチューブに入れ、グリセロールを10%含むPBS10ml、ステンレスビーズを1個、ジルコニアビーズを5g、500mMの2−メルカプトエタノールを100μl、1Mのベンズアミンを100μlおよび100mMのPMSFを100μl加え、ホモジナイザーを用いて、4℃で3分間磨砕した。この磨濁液を3,000rpm、4℃の条件で10分間遠心後、ガーゼで濾過し、上清を得た。超遠心分離機(BECKMAN COULTER Avanti(商標登録) Centrifuge HP-30I)を用い、100,000gで60分間超遠心分離し、組換えコヘシンタンパク質を含む超遠心上清を得た。
(2)組換えコヘシンタンパク質の精製
上記で得られた超遠心上清は、4倍容積の緩衝液A(50mMのリン酸水素カリウム−塩酸および1Mの硫酸アンモニウムを含む、pH6.8)で希釈し、0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、緩衝液Aで平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラム(Phenyl Sepharose HP:GEヘルスケアバイオサイエンス製)に供した。この操作により組換えコヘシンタンパク質は担体に吸着した。担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)を、緩衝液Aを用いて洗い流した後、硫酸アンモニウム濃度を1〜0Mまで直線的に変化させて組換えコヘシンタンパク質を溶出させ、硫酸アンモニウム濃度が約0.3〜0.2Mの溶出画分を回収した。
疎水性クロマトグラフィーで得られた組換えコヘシンタンパク質を含む画分をそれぞれ集めて、緩衝液B(50mMのリン酸水素カリウム−塩酸を含む、pH6.0)に対して透析し、0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、緩衝液Bで平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(Q-Sepharose HP:GEヘルスケアバイオサイエンス製)に供して担体に吸着させた。非吸着タンパク質を緩衝液Aで洗い流した後、塩化カリウム濃度を0〜1Mまで直線的に変化させて吸着した組換えコヘシンタンパク質の溶出を行い、塩化カリウム濃度が約0.1Mの画分で組換えコヘシンタンパク質を回収した。
上記陰イオン交換クロマトグラフィーで得られた組換えコヘシンタンパク質を含む画分をそれぞれ集めて、遠心濾過膜(セントリコンプラス−20バイオマックス−5メンブレン:ミリポア製)に供し、蛋白質溶液の濃縮と、リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)への交換を行い、組換えコヘシンタンパク質の粗精製品を得た。
(3)コヘシン融合NHS−セファロースの作製
上記で得た組換えコヘシンタンパク質の粗精製品は、小バッチ精製のために、共有結合でNHS−セファロース(NHS-Activated Sepharose 4FF:GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。この組換えコヘシンタンパク質融合NHS−セファロース(以下、「コヘシン担体」とする)は、緩衝液(25mMのトリス−塩酸、250mMの塩化ナトリウムおよび2.5mMの塩化カルシウムを含む、pH7.4)中、4℃で保存した。また、上記で得た組換えコヘシンタンパク質の粗精製品は、クロマトグラフィーシステム(AKTAprime:GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて精製を行うために、カラム(HiTrap NHS-activated HP:GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。
実 施 例 6
組換え融合タンパク質の精製比較試験:
実施例4で調製した組換え融合タンパク質を含む各超遠心上清の200μlに、実施例5で調製したコヘシン担体を200μlおよび結合用緩衝液(25mMのトリス−塩酸、250mMの塩化ナトリウムおよび2.5mMの塩化カルシウムを含む)を600μl加え、回転震とう器を用い、1時間混合した。その後、3,000rpmで5分間遠心し、上清を取り除いた。次に、コヘシン担体に洗浄緩衝液(25mMのトリス−塩酸および250mMの塩化ナトリウムを含む)を1ml添加し、コヘシン担体を洗浄した。洗浄後、コヘシン担体に溶出用緩衝液(25mMのトリス−塩酸、250mMの塩化ナトリウムおよび5mMのEGTAを含む)を200μl添加することにより、組換え融合タンパク質を溶出させた。溶出液は、5分、30分、1時間、6時間ごとに、15μlずつサンプリングした。なお、上記操作の何れもが4℃で行われた。
上記サンプルは、電気泳動ゲル(Perfect NT Gel A 10-20%:DRC社製)を用いたSDS−PAGEにより分離した。JNK3のN末端に、L16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルおよびJNK3のN末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルのSDS−PAGEの結果を図3に示した。また、JNK3のC末端に、L16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルおよびJNK3のC末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルのSDS−PAGEの結果を図4に示した。
JNK3のN末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質は、図3(A)のレーン6〜9から明らかなように時間経過ごとに溶出量が増加し、レーン9の6時間後にピークをむかえていた。一方、JNK3のN末端に、L16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質は、レーン7の30分後には溶出量のピークをむかえていることが明らかになった。また、野生型ドックリンのアミノ酸を置換したことによる精製純度への影響はなかった。
また、JNK3のC末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質は、図4(A)のレーン6〜9から明らかなように時間経過ごとに溶出量が増加し、レーン9の6時間後にピークをむかえていた。一方、JNK3のC末端に、L16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質は、レーン7の30分後には溶出量のピークをむかえていることが明らかになった。また、野生型ドックリンのアミノ酸を置換したことによる精製純度への影響はなかった。
更に、その他の野生型ドックリンのアミノ酸を置換したドックリンポリペプチド(I49T、I49G、I49N、I49S、I49V)をJNK3のN端側に導入した場合についても、同様の精製比較試験を行い、6時間後の溶出量(最大溶出量)を100として、各時間における溶出割合をデンシトメトリー解析(CS Analyzer:ATTO製)により求めた(表2)。その結果、I49Vを除きどのドックリンポリペプチドを融合させた場合においても、溶出を始めて30分後には、ほぼ全てが溶出していることが分かった。また、JNK3のC末端にドックリンポリペプチドを導入した場合であっても同じ結果を示した(表3)。
Figure 0005307716
Figure 0005307716
また、カラム精製におけるドックリンの変異の効果を確かめるため、次の実験を行った。実施例5で調製したカラム(HiTrap NHS-activated HP)をクロマトグラフィーシステム(AKTAprime)に装着し、実施例4で調製したJNK3のN末端にI49G置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質を含む各超遠心上清の0.1mlを結合用緩衝液(25mMのトリス−塩酸、250mMの塩化ナトリウム、1mMの塩化カルシウムおよび10%のグリセロールを含む)で5倍に希釈し、1分間に1mlの速さで流した。次に、洗浄緩衝液(25mMのトリス−塩酸、250mMの塩化ナトリウムおよび10%グリセロールを含む)で非吸着画分を取り除き、溶出用緩衝液(25mMのトリス−塩酸、250mMの塩化ナトリウム、5mMのEGTAおよび10%グリセロールを含む)を1分間に0.1mlの速さで流し、組換え融合タンパク質を溶出させた。その結果を図5に示した。また、溶出液は1mlごとにサンプリングを行った。
JNK3のN末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質は、溶出を始めて2フラクション目から連続的に溶出し、20フラクションを超えても溶出していた(図5(A))。一方、JNK3のN末端にI49G置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質は、溶出を始めて2フラクション目から溶出が始まり、3フラクション目(溶出が開始から10分)には終わっていた(図5(B))。また、上記と同様に、溶出用緩衝液を1分間に0.5mlの速さで流した場合も、JNK3のN末端にI49G置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質は、溶出開始から10分以内に溶出が完了した。
実 施 例 7
相互作用解析による組換え融合タンパク質と組換えコヘシンタンパク質との
親和性解析:
ビアコアT−100(ビアコア製)を用いた表面プラズモン共鳴法(以下、「SPR法」と略す)により、JNK3のN末端に野生型ドックリンを結合させた組換え融合タンパク質に対する、組換えコヘシンタンパク質の結合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)を測定した。測定には、ビアコアT−100の推奨品であるHBS−P(0.01MのHEPES(pH7.4)、0.15Mの塩化ナトリウムおよび0.005%の界面活性剤(P20))と同様の組成のランニング緩衝液を使用した。
センサーチップCM5(ビアコア製)にrProteinA(29435−14:ナカライテスク製)をアミンカップリング法により共有結合させた。このとき、rProteinAの固定化量は約12,000RUであった。このrProteinAを共有結合させたセンサーチップCM5(以下、「ProteinAチップ」と略す)に抗JNK3抗体(55A8:Cell Signaling製)を約1,300RUになるように固定化し、さらに、JNK3のN末端に野生型ドックリンを融合させた組換えタンパク質を約100RUになるようにキャプチャーさせた。これに、組換えコヘシンタンパク質(5nM、10nMまたは20nM)と終濃度1mMになるように塩化カルシウムを添加し、組換えコヘシンタンパク質とN末端に野生型ドックリンを融合したJNK3との相互作用解析を行い、結合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)、解離定数(K)を測定した。それらの結果を表4に示した。同様に、JNK3のN末端に各種変異導入ドックリンポリペプチド(I49T、I49G、I49N、I49S、I49V、L16T/I49T)を融合させた組換えタンパク質について、組換えコヘシンタンパク質との相互作用解析を行った。これらの結果も表4に併せて示した。
Figure 0005307716
さらに、キレート剤の添加によるコヘシンと各種変異導入ドックリンとの解離速度の変化を調査するため、ランニング緩衝液に5mMのEGTAを添加し、同様の方法で組換えコヘシンタンパク質とJNK3のN末端に各種変異導入ドックリンを融合した蛋白質の相互作用解析を行った。これらの結果を図6〜8および表4に示した。
上記測定結果から算出された解離定数(K)は、野生型ドックリンでは、カルシウムイオン存在下で6.5E−09(K)であったのに対し、キレート剤添加時で3.9E−09(K)であり、キレート剤作用による解離速度の上昇はほとんど認められなかった。これに対し、変異型ドックリンでは、I49Tがカルシウムイオン存在下で3.8E−09(K)、キレート剤添加時で1.9E−08(K)、I49Gがカルシウムイオン存在下で2.2E−09(K)、キレート剤添加時で1.7E−07(K)、I49Nがカルシウムイオン存在下で3.7E−09(K)、キレート剤添加時で5.6E−08(K)、I49Sがカルシウムイオン存在下で4.5E−09(K)、キレート剤添加時で6.7E−08(K)、L16T/I49Tがカルシウムイオン存在下で3.2E−09(K)、キレート剤添加時で1.2E−08(K)であり、いずれもキレート剤を作用させた場合に解離速度が10倍程度(最高100倍)高まった。一方、カルシウムイオン存在下での解離定数については、野生型と各種変異導入ドックリンでは大差なく、カルシウムイオン存在下でのコヘシンとの結合特性は、これらの変異導入により特に変化が認められず、キレート剤を作用させた場合のみ結合特性が変化することが判明した。
一方、I49Vの変異型ドックリンでは、カルシウムイオン存在下での解離定数が7.6E−09(K)、キレート剤添加時の解離定数が8.1E−09(K)であり、キレート剤を作用させても顕著な解離速度の上昇は認められなかった(図8)。
以上の相互作用解析の結果から、キレート剤を含む緩衝液で溶出させた際に、低温下においても各種変異導入ドックリン融合タンパク質がコヘシン担体から溶出する時間が著しく短縮する効果は、特定のアミノ酸への置換によってドックリンポリペプチドとコヘシンの相互作用特性がキレート剤存在下において変化(解離速度が上昇)するためであることが示唆された。すなわち、特定のアミノ酸を置換した変異型ドックリンは、カルシウムイオン存在下では、何らコヘシンとの結合特性に変化は認められず、精製工程でのカラム担体への吸着効率を低下させたり洗浄時の脱落を増加させたりすることはない。一方、キレート剤を添加する溶出時のみコヘシンとの結合親和性が低下し、カラム担体からの精製タンパク質の溶出効率が低温下においても劇的に改善することがわかった。
なお、上記実施例では、ドックリンポリペプチドと、目的タンパク質としてプロテインキナーゼ(JNK3)を融合させた組換え融合タンパク質の解析例を示したが、目的タンパク質として他のプロテインキナーゼやサイトカインを用いたものについても同様の試験を行い、同じ結果を得た。
また、クロストリジウム・ジョスイのCelB由来の野性型ドックリンのアミノ酸配列(配列番号1)において、最初のアミノ酸であるメチオニンから48番目(ドックリンのサブドメイン2の13番目)のアミノ酸であるアラニン(A)をセリン(S)に置換したドックリンポリペプチドをプロテインキナーゼ(JNK3)のN末端に付加した組換え融合タンパク質を実施例1〜4と同様に作製した。そして、この組換え融合タンパク質と、実施例5と同様に作製した組換えコヘシンタンパク質との相互作用解析を実施例7と同様に行った。その結果、キレート剤を作用させた場合のコヘシンとの解離定数(K)は5.2E−09であり、野生型の解離定数と同等であった。
本発明のドックリンポリペプチドは、野生型ドックリンと同等のコヘシンドメインに対する結合親和力を有する。そして、これを従来の野生型ドックリンとコヘシンを用いた組換え融合タンパク質の精製方法に適用した場合には、組換え融合タンパク質の活性に与える影響が少ない低温下での溶出時間を著しく短縮する。この効果は、カラム精製時においても溶出ピークをシャープにし、高濃度の精製蛋白質を短時間で得られることから実用性が高い。
従って、本発明のドックリンポリペプチドを利用した組換え融合タンパク質の精製方法は効率的かつ経済的に組換え融合タンパク質を精製することができる。
ドックリンポリペプチドN末端付加用ベクターの構成を示す図面である(下線:カルシウム結合に関与するアミノ酸、囲み:置換されたアミノ酸)。 ドックリンポリペプチドC末端付加用ベクターの構成を示す図面である(下線:カルシウム結合に関与するアミノ酸、囲み:置換されたアミノ酸)。 SDS−PAGEの結果を示す図面である((A)JNK3のN末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルの結果、(B)JNK3のN末端に、L16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルの結果、レーンM:分子量マーカー(Magic Mark)、レーン1:組換え融合タンパク質を発現させた蛹磨砕液の超遠心上清、レーン2:レーン1の組換え融合タンパク質をコヘシン担体に結合させた後の画分、レーン3:コヘシン担体洗浄画分1、レーン4:コヘシン担体洗浄画分2、レーン5:コヘシン担体洗浄画分3、レーン6:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(5分)、レーン7:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(30分)、レーン8:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(1時間)、レーン9:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(6時間))。 SDS−PAGEの結果を示す図面である((A)JNK3のC末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルの結果、(B)JNK3のC末端に、L16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルの結果、レーンM:分子量マーカー(Magic Mark)、レーン1:組換え融合タンパク質を発現させた蛹磨砕液の超遠心上清、レーン2:レーン1の組換え融合タンパク質をコヘシン担体に結合させた後の画分、レーン3:コヘシン担体洗浄画分1、レーン4:コヘシン担体洗浄画分2、レーン5:コヘシン担体洗浄画分3、レーン6:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(5分)、レーン7:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(30分)、レーン8:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(1時間)、レーン9:EGTAを含む緩衝液で組換え融合タンパク質を溶出した画分(6時間))。 クロマトグラフィーシステムを用いた組換え融合タンパク質の精製の結果を示す図面である((A)JNK3のN末端に野生型ドックリンを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルの結果、(B)JNK3のN末端にI49G置換ドックリンポリペプチドを付加した組換え融合タンパク質を含むサンプルの結果)。 表面プラズモン共鳴法によるコヘシンタンパク質と各種変異導入ドックリンとの相互作用解析の結果を示す図面である。カルシウムイオン添加時とキレート剤添加時での結果を並列して示す((A)組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端に野生型ドックリンを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析の結果、(B)組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端にI49T置換ドックリンポリペプチドを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析の結果、(C)組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端にI49G置換ドックリンポリペプチドを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析の結果)。 表面プラズモン共鳴法によるコヘシンタンパク質と各種変異導入ドックリンとの相互作用解析の結果を示す図面である。カルシウムイオン添加時とキレート剤添加時での結果を並列して示す((A)組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端にI49N置換ドックリンポリペプチドを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析の結果、(B)組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端にI49S置換ドックリンポリペプチドを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析の結果、(C)組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端にL16T/I49T置換ドックリンポリペプチドを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析の結果)。 表面プラズモン共鳴法によるコヘシンタンパク質と各種変異導入ドックリンとの相互作用解析の結果を示す図面である。カルシウムイオン添加時とキレート剤添加時での結果を並列して示す(組換えコヘシンタンパク質と、JNK3のN末端にI49V置換ドックリンポリペプチドを融合させた組換えタンパク質との相互作用解析結果)。

Claims (8)

  1. 配列番号4〜10に記載のアミノ酸配列の何れかからなる、クロストリジウム・ジョスイ(Clostridium josui)由来のドックリンポリペプチド。
  2. 目的タンパク質と、請求項1記載のドックリンポリペプチドとを含む組換え融合タンパク質を、カルシウムイオンを介してコヘシンドメインを含むポリペプチドに結合させて複合体を形成させ、その後、金属キレーターで複合体からカルシウムイオンを除去し、組換え融合タンパク質を溶出させることを特徴とする組換え融合タンパク質の精製方法。
  3. コヘシンドメインを含むポリペプチドが、担体に固定化されたものである請求項記載の組換え融合タンパク質の精製方法。
  4. 請求項1記載のドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  5. 請求項記載のドックリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ発現ベクター。
  6. 更に、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを組み込んだものである請求項記載の発現ベクター。
  7. バキュロウイルス由来のものである請求項または記載の発現ベクター。
  8. 請求項ないしの何れかに記載の発現ベクターと、コヘシンドメインを含むポリペプチドを固定化した担体とを含むことを特徴とする組換え融合タンパク質の精製キット。
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