[第1の実施形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
図1は、本実施形態に係る電力変換器、制御装置およびこれらが適用される直流送電システムを例示するブロック図である。
図1に示すように、直流送電システム100は、交流系統AS1と、交流系統AS2と、直流系統DS1と、を含む。直流送電システム100では、交流系統AS1、交流系統AS2、直流系統DS1の間で、直流と交流とを相互に変換して電力を供給する。交流系統AS1,AS2は、交流電力を供給する系統である。交流系統AS1および交流系統AS2は、いずれも送電側、受電側となることができる。交流系統AS1,AS2を構成する要素としては、電源、負荷、交流送電線等がある。たとえば、交流系統AS1,AS2を、3相または単相の50Hzもしくは60Hzの電源、負荷および交流送電線を備える構成とすることができる。直流系統DS1は、交流系統AS1,AS2との間で、直流電力を供給する電力系統である。
直流送電システム100は、電力変換器1a,1bと、制御装置2a,2bと、を含む。電力変換器1a,1bは、交流電力と直流電力とを相互に変換する。電力変換器1a,1bは、制御装置2a,2bのそれぞれの制御の下に、交流系統AS1、直流系統DS1、交流系統AS2に連系する。
電力変換器1aは、交流系統AS1と直流系統DS1との間に接続されている。電力変換器1bは、直流系統DS1と交流系統AS2との間に接続されている。電力変換器1a,1bは、順変換器としても逆変換器としても機能する。つまり、直流送電システム100では、交流系統AS1と交流系統AS2との間で、双方向に電力を融通することができる。
順変換器は、交流電力を直流電力に変換する電力変換器である。逆変換器は、直流電力を交流電力に変換する電力変換器である。たとえば、交流系統AS1を送電側、電力変換器1aを順変換器として機能させる場合、電力変換器1aは、交流系統AS1からの交流電力を、直流電力に変換して直流系統DS1に供給する。また、交流系統AS2を受電側、電力変換器1bを逆変換器として機能させる場合、電力変換器1bは、直流系統DS1からの直流電力を交流電力に変換して、交流系統AS2に供給する。
図2は、本実施形態の電力変換器を例示する回路図である。
電力変換器1a,1bは、同一の構成を有しており、以下では、電力変換器1とすることがある。図2に示すように、電力変換器1は、3相ブリッジ回路11と、コンデンサ12と、を含む。3相ブリッジ回路11は、3相に対応して並列に接続された3つのレグ13を含む。各レグ13は、正側と負側に直列に接続された単位アーム14を含む。電力変換器1は、直流を3相交流に変換し、または3相交流を直流に変換する。電力変換器1は、入力された直流電圧のレベルを2分割して出力する。
単位アーム14は、スイッチング素子14aと、ダイオード14bと、を含む。スイッチング素子14aは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)、GTO(Gate Turn-Off thyristor)、等の自己消弧型素子である。ダイオード14bは、スイッチング素子14aに逆並列に接続されている。ダイオード14bは、印加電圧とは逆方向の電流を流してスイッチング素子14aの破壊を防止する還流ダイオードである。なお、図示しないが、各スイッチング素子14aには、自己消弧型素子をオン、オフさせる駆動回路および駆動回路のための電源が接続されている。
並列に接続された各レグ13の正側と負側の直流端子15p,15nは、直流系統DS1に接続される。各レグ13における正側と負側の単位アーム14の接続ノードからは、各相の交流端子16u,16v,16wが引き出されている。
正側と負側の単位アーム14の接続ノードと各相の交流端子16u,16v,16wとの間には、変圧器17が接続されている。変圧器17の1次側に交流端子16u,16v,16wを介して、交流系統AS1または交流系統AS2が接続される。変圧器17の2次側には、正側と負側の単位アーム14の接続ノードが接続されている。
変圧器17の1次側の各相には、電圧センサ18aが設けられている。電圧センサ18aは、交流系統の各相の交流電圧を検出して、各相の交流電圧のデータを制御装置2a,2bに供給する。
変圧器17の2次側の各相には、電流センサ19が設けられている。電流センサ19は、電力変換器1a,1bに流れる各相の線電流を検出して、各相の線電流のデータを制御装置2a,2bに供給する。
コンデンサ12は、直流端子15p,15n間に接続され、各レグ13と並列に接続されている。コンデンサ12は、蓄積されたエネルギーを電圧として供給する電圧源である。つまり、3相ブリッジ回路11は、コンデンサ12の電圧を、自己消弧型素子のオン、オフにより擬似交流電圧にして出力することができる。
コンデンサ12の両端の直流電圧は、電圧センサ18bによって検出され、直流電圧検出値として、制御装置2a,2bに供給される。
図3は、本実施形態の制御装置を例示するブロック図である。
制御装置2a,2bは、同一の構成を有しており、以下では、単に制御装置2とすることがある。制御装置2は、直流電圧、各相の交流電圧や交流電流等を入力して、所望の交流電力や直流電力を出力するように、ゲート信号Vgを生成し、電力変換器1に供給する。
図3に示すように、制御装置2は、直流電圧制御部21と、交流電流制御部22と、dq座標変換部23と、逆dq座標変換部24と、ゲート信号生成部25と、を含む。
直流電圧制御部21には、直流電圧指令値Vdc*および直流電圧検出値Vdcが入力される。直流電圧指令値Vdc*は、たとえば上位の管理システム(図示せず)によって設定される。直流電圧検出値Vdcは、直流端子15p,15n間の直流電圧である。直流電圧検出値Vdcは、電力変換器1に設けられた電圧センサ18bによって検出される。
直流電圧制御部21では、直流電圧検出値Vdcを所望の直流電圧指令値Vdc*に一致させるようフィードバック制御などを行い、交流有効電流指令値Id*を生成する。
ここで、交流有効電流とは、交流系統電圧と同じ位相を有する電流をいうものとする。交流無効電流とは、交流系統電圧の位相と直交する位相(90°進んだ位相)を有する電流をいうものとする。同様に、交流有効電圧とは、交流系統電圧と同じ位相を有する電圧をいい、交流無効電圧とは、交流系統電圧の位相と直交する位相(90°進んだ位相)を有する電圧をいうものとする。これらの指令値や測定値、検出値についても同様とする。
交流電流制御部22は、交流有効電流指令値(第1指令値)Id*および交流無効電流指令値Iq*を入力する。交流電流制御部22は、交流有効電流測定値Idを、交流電流の測定値を直流電圧制御部21によって生成された交流電流指令値Id*に一致させるように制御を行う。交流有効電流測定値Idは、各相の線電流Iu,Iv,Iwにdq座標変換を施すことによって得られるd軸出力である。後述するように、交流電流制御部22では、dq座標変換等の回転座標変換を利用した非干渉フィードバック制御を使用する。
交流電流制御部22には、ブラックスタート指令BSが入力される。後に詳述するように、交流電流制御部22は、ブラックスタート指令BSの入力にもとづいて、通常時とは異なる動作をする。異なる動作をすることによって、制御装置2は、意図しないインラッシュ電流や不平衡電流を抑制するように、出力電圧の指令値を生成する。
dq座標変換部23は、交流系統の線電流Iu,Iv,Iwの検出値を入力する。検出値は、電力変換器1に設けられた電流センサ19によって検出されて、dq座標変換部23に供給される。dq座標変換部23は、電力系統の位相に同期して、各相の電流をdq座標変換して、交流有効電流測定値Idおよび交流無効電流測定値Iqを出力する。dq座標変換部23は、交流有効電流測定値Idおよび交流無効電流測定値Iqを交流電流制御部22に供給する。
逆dq座標変換部24は、交流電流制御部22の出力に接続されている。逆dq座標変換部24は、電力系統の位相に同期して、交流電流制御部22から出力されるd軸出力電圧指令値Vdおよびq軸出力電圧指令値Vqを、系統の各相に対応する電圧指令値に変換する。
ゲート信号生成部25は、逆dq座標変換部24の出力に接続されている。ゲート信号生成部25は、たとえばPWM制御回路を含んでいる。ゲート信号生成部25は、逆dq座標変換部24から出力された各相に対応する電圧指令値に応じてデューティ等を設定されたゲート信号Vgを出力する。
図4および図5は、図3の制御装置の一部を例示するブロック図である。
図4には、制御装置2の交流電流制御部22の構成例がブロック線図として示されている。図5には、直流分を除去するフィルタ35d,35qであるハイパスフィルタの構成例が示されている。
図1および図4に示すように、交流電流制御部22は、第1の切替部31と、第2の切替部32と、第3の切替部33と、を含む。第1の切替部31、第2の切替部32および第3の切替部33は、2つのスイッチをそれぞれ含む。交流電流制御部22は、交流有効電流に関する部分と、交流無効電流に関する部分と、を含む。交流有効電流に関する部分には、スイッチ31d(第1の切替部31)と、スイッチ32d(第2の切替部32)と、スイッチ33d(第3の切替部33)と、を含む。交流無効電流に関する部分には、スイッチ31q(第1の切替部31)と、スイッチ32q(第2の切替部32)と、スイッチ33q(第3の切替部33)と、を含む。
第1の切替部31のスイッチ31dは、2つの入力のうち一方を加減算器34dに入力する。2つの入力は、交流有効電流測定値Idおよび交流有効電流測定値Idから直流分を除去した信号Id(h)である。
スイッチ31dは、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、フィードバック制御のために交流有効電流指令値Id*から減算する交流有効電流測定値Idを、フィルタ35dを通過した信号Id(h)へ切り替える。これにより、フィードバックする交流有効電流測定値Idから直流分を除くことができる。
図5に示すように、フィルタ35d,35qは、たとえば1次遅れ要素35d1,35q1および加減算器35d2,35q2で構成される。dq回転座標上で直流分を除くことは、交流系統の基本波周波数(たとえば50Hzまたは60Hz)を取り除くことと等価である。なお、交流電流制御に回転座標変換を用いない場合には、フィルタは、交流系統の基本波周波数以外を通すバンドエリミネーションフィルタ等を用いればよい。
第2の切替部32のスイッチ32dは、2つの入力のうち一方を加減算器34dに接続する。2つの入力は、交流有効電流指令値Id*および0(ゼロ)に設定された交流有効電流指令値である。
スイッチ32dは、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、交流有効電流指令値Id*を、0(ゼロ)に切り替える。
加減算器34dは、スイッチ31d,32dのそれぞれの出力から偏差を計算して出力し、比例制御器36dに入力する。比例制御器36dは、偏差をゼロに近づけるようにフィードバック量を生成する。
比例制御器36dは、たとえば比例制御ゲインKpを有する制御器である。比例制御器36dは、ゲイン(Kp+Ki/s)を有する比例積分制御器であってもよい。制御器は、PID制御器であってももちろんよい。
第3の切替部33のスイッチ33dは、交流有効電圧測定値Vdacと交流有効電圧指令値Vdac*とを切り替える。ここで、交流有効電圧指令値Vdac*とは、あらかじめ設定された電圧指令値であり、所定の振幅、周波数を有する。また、交流有効電圧測定値Vdacは、電力系統の各相の電圧を測定し、dq座標変換したd軸電圧である。
なお、交流有効電圧、交流無効電圧、交流有効電流および交流無効電流は、ブラックスタート時においては、この交流有効電圧指令値Vdac*の位相を基準とするものとする。つまり、交流無効電圧や交流無効電流は、交流有効電圧指令値Vdac*の位相に直交する位相(90°進んだ位相)を有する。交流有効電流は、交流有効電圧指令値Vdac*と同じ位相を有するものとする。dq座標変換部23および逆dq座標変換部24は、ブラックスタート時においては、交流有効電圧指令値Vdac*の位相に同期して動作する。
スイッチ33dは、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、交流有効電圧測定値Vdacを、交流有効電圧指令値Vdac*に切り替えて交流有効電圧指令値Vdac*を加算器37dに供給する。加算器37dは、比例制御器36dから出力されるフィードバック量とスイッチ33dの出力とを加算して、出力電圧を設定する指令値のためのd軸出力電圧Vdとして出力する。
交流無効電流に関する部分についても交流有効電流に関する部分と同様に構成されている。すなわち、第1の切替部31のスイッチ31qは、交流無効電流指令値Iq*を0か0でない指令値かを切り替えて出力する。第2の切替部32のスイッチ32qは、交流無効電流測定値Iqと、フィルタ35qから出力される交流無効電流測定値Iqの高調波成分の信号Iq(h)とを切り替えて、出力する。スイッチ31q,32qは、加減算器34qに入力される。加減算器34qは、計算された偏差を比例制御器36qに供給する。スイッチ33qは、2つの入力の一方を、交流無効電圧測定値Vqacから交流無効電圧指令値Vqac*に切り替える。比例制御器36qの出力およびスイッチ33qの出力は、加算器37qによって加算され、出力電圧設定するq軸出力電圧Vqとして出力する。
交流有効電流の部分の比例制御器36dから出力されるフィードバック量は、−1倍されて、減算器38dによって交流無効電流測定値にω×Lを乗じた非干渉量がさらに減算される。
交流無効電流の部分の比例制御器36qから出力されるフィードバック量も、−1倍されて、加減算器38qによって交流有効電流測定値に(ω×L)を乗じた非干渉量が加算される。
このように、有効電流側および無効電流側にそれぞれ非干渉量を付加することによって、相互の干渉を排除することができる。そのため、制御装置2では、有効電流側および無効電流側に対する操作をそれぞれ独立して行うことができる。なお、これら比例制御器36d,36qおよび非干渉量演算については、通常時の運用に際しても用いられる構成要素である。本実施形態の制御装置2では、第1〜第3の切替部31〜33を追加することによって、通常用いられる交流電流制御部を流用してそのまま用いることができる。
本実施形態の制御装置2の動作について、詳細に説明する。上述したように、交流有効電流および交流無効電流については、それぞれ独立して操作することができるので、ここでは、交流有効電流について説明する。交流無効電流についても同様である。
まず、ブラックスタート指令BSがない場合について説明する。第1の切替部31のスイッチ31dは、交流有効電流測定値Idを、フィルタ35dを介さずに加減算器34dに供給する。第2の切替部32のスイッチ32dは、0でない交流有効電流指令値Id*を加減算器34dに供給する。
加減算器34dによって、交流有効電流指令値Id*と交流有効電流測定値Idとの偏差が求められ、偏差は、比例制御器36dに入力される。比例制御器36dは、偏差に対して、ゲインを乗算し、フィードバック量を計算する。
さらに、比例制御器36dは、上述のフィードバック量を−1倍して出力する。比例制御器36dから出力から交流無効電流測定値を(ω×L)倍した非干渉量を減算する。ωは交流系統の角周波数、Lは連系インダクタンスである。
第3の切替部33のスイッチ33dは、交流有効電圧測定値を加算器37dに供給する。加算器37dは、非干渉化されたフィードバック量に交流有効電圧測定値Vdacを加算して、電力変換器1が出力すべき電圧の指令値を出力する。以上の演算によって、交流有効電流測定値Idは、交流有効電流指令値Id*と一致するように制御される。
次にブラックスタート指令BSが入力された場合の動作について説明する。ブラックスタート指令BSが入力された場合には、第1の切替部31のスイッチ31dは、加減算器34dへの入力を、フィルタ35dを介した信号Id(h)に切り替える。第2の切替部32のスイッチ32dは、加減算器34dへの入力をゼロに切り替える。フィルタ35dがハイパスフィルタのため、信号Id(h)は、直流分が除去されており、交流系統の基本波成分以外の高調波成分を含んでいる。比例制御器36dは、交流系統の高調波成分がゼロになるように、フィードバック量を計算する。
第3の切替部33のスイッチ33dは、加算器37dへの入力を、交流有効電圧測定値Vdacから交流有効電圧指令値Vdac*に切り替える。ブラックスタート時には、交流系統が遮断されており、制御装置2は、系統電圧を得ることができない。そのため、制御装置2は、通常の交流系統の電圧に相当する指令値を内部で生成して、固定の交流電圧指令値Vdac*として用いる。
このように、交流系統の電流の基本波成分以外の成分をゼロに制御することによって、制御装置2は、変圧器のインラッシュ電流や不平衡負荷による不平衡電流を抑制することができる。
交流有効電圧指令値Vdac*は、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、ゼロ等の低い値から時間とともに上昇する波形としてもよい。交流有効電圧指令値Vdac*をこのような時間変化する波形とすることによって、出力をソフトスタートさせることができ、負荷への影響を低減することが可能になる。
本実施形態の制御装置2の効果について説明する。
本実施形態の制御装置2では、交流電流制御部22は、第1の切替部31と、第2の切替部32と、第3の切替部33と、を含んでいる。第1の切替部31、第2の切替部32および第3の切替部33は、ブラックスタート指令BSの入力に応じて入力を切り替える。ブラックスタート指令BSが入力された場合に、第1の切替部31は、交流有効電流測定値Idおよび交流無効電流測定値Iqの基本波成分をそれぞれ除去して高調波成分の信号Id(h),Iq(h)に切り替える。第2の切替部32は、交流有効電流指令値Id*および交流無効電流指令値Iq*をゼロに切り替える。制御装置2は、交流有効電流測定値Idおよび交流無効電流測定値Iqの高調波成分を含む信号Id(h),Iq(h)をゼロにするように出力電圧の指令値を生成して、これにもとづいてゲート信号を電力変換器1に供給する。
第3の切替部33は、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、交流有効電圧測定値Vdacおよび交流無効電圧測定値Vqacを、交流有効電圧指令値Vdacおよび交流無効電圧指令値Vqacにそれぞれ切り替える。そのため、系統電圧が存在しないブラックスタート時であっても、制御装置2は動作を継続することができる。
ブラックスタート時等に変圧器に流れるインラッシュ電流や、不平衡負荷によって流れる不平衡電流等は、交流有効電流測定値Idおよび交流無効電流測定値Iqの高調波成分として抽出される。本実施形態の制御装置2では、上述のように、これらの高調波成分をゼロに制御するので、インラッシュ電流や不平衡電流等を抑制することができる。したがって、制御装置2は、インラッシュ電流や不平衡電流等によって、電力変換器1の電流保護機能等を意図せずに動作させて送電動作を停止させることを防止することができる。
本実施形態の制御装置2では、ブラックスタート時に必要な交流系統の電圧位相が存在しなくても、本実施形態の制御装置2では、制御装置2の内部等で生成された交流有効電圧指令値を用いることができるので、安定して動作を継続することができる。
[変形例]
図6は、本変形例の制御装置の一部を例示するブロック図である。
上述の実施形態の場合では、ブラックスタート指令BSの入力時には、第3の切替部33は、ソフトスタート経過以降には固定の交流電圧指令値Vdac*を入力することとした。電力変換器の負荷には、電力系統が連系されているため、負荷変動が大きい場合もある。そのため、負荷のインピーダンスによらず、一定の電圧を供給する設定の場合には、過負荷状態等を生ずる場合もある。
本変形例では、負荷に応じて流れる電流に合わせて、ブラックスタート時の交流有効電圧指令値Vdac*を補正する。図6に示すように、本変形例では、交流電流制御部122は、スロープゲイン部131と加減算器132とをさらに含む。
スロープゲイン部131には、交流有効電流測定値Idが入力される。スロープゲイン部131は、交流有効電流測定値Idに応じた電圧補正値Vcorを出力する。たとえば、スロープゲイン部131は、一定値に設定されたスロープゲインGslopeを有する係数器である。したがって、スロープゲイン部131は、Gslope×交流有効電流測定値Idを電圧指令値の電圧補正値Vcorとして出力する。
スロープゲイン部131から出力された補正値は、加減算器132によって交流有効電圧指令値Vdac*から減算される。フィードバック量には、このように補正された交流有効電圧指令値Vdac(cor)が加算される。
単に固定値の交流電圧指令値とすると、負荷によって電力が変化するので、負荷が重い場合には、必要以上に大きな電流を流してしまう可能性がある。そこで、本変形例では、スロープゲインを用いて、電流センサによって測定された電流に応じて、電流を抑えた交流電圧指令値となるように調節する。適用のゲイン、インピーダンスをかけることにより、余分な電流となる分を、電圧指令値から減ずることにより、負荷が重い場合でも、電流を抑えることができる。
上述した実施形態変形例のブロック図やブロック線図等は、一例であり、図示した場合に限られない。たとえば、制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)を含むコンピュータを所定のプログラムで制御することによって実現してもよい。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、上記のような各部の処理を実現することができる。ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。ブロック線図の一部あるいは全部をプログラムに置き換えてもよい。制御装置2a,2bを共通のコンピュータにより実現したシステムとして構成してもよい。
また、図示はしないが、制御装置2は、測定値、指令値等、上記の各部の処理に必要な情報を記憶する記憶部を含む。外部から入力されて一時的に記憶される情報や各部の間で処理タイミングの相違を吸収してやり取りされる情報の記憶領域も、記憶部として捉えることができる。これらの事情は、後述する他の実施形態の場合についても適用される。
[第2の実施形態]
上述の実施形態では、電力変換器として3相2レベル変換器を用いた例について説明した。電力変換器の構成は、これに限らない。他の例として、電力変換器としてMMC(Modular Multilevel Converter)を用いた場合について説明する。
図7は、本実施形態に係る電力変換器、制御装置およびこれらが適用される直流送電システムを例示するブロック図である。
図8(a)は、本実施形態の電力変換器を例示するブロック図である。図8(b)は、図8(a)の電力変換器の一部を例示するブロック図である。
図7に示すように、制御装置202a,202bは、電力変換器201a,201bにそれぞれ接続されている。電力変換器201a,201bは、同一の構成を有しており、以下では電力変換器201として説明することがある。また、制御装置202a,202bも同一の構成を有しており、以下では、制御装置202として説明することがある。
図8(a)に示すように、電力変換器201は、3相に対応して並列に接続されたレグ261を有する。各レグ261は、正側と負側に直列に接続された単位アーム262a,262bを有する。
単位アーム262a,262bは、単位セル263を多段直列接続することにより構成されている。単位セル263は、チョッパセルと呼ばれる単位変換器である。
各単位アーム262a,262bには、電流センサ266が設けられている。電流センサ266は、単位アーム262a,262bの電流をそれぞれ検出して、制御装置202に電流のデータを供給する。
図8(b)に示すように、単位セル263は、スイッチング素子263aと、ダイオード263bと、コンデンサ263cと、を含む。スイッチング素子263aは、自己消弧型の半導体素子である。スイッチング素子263aは、直列に2個接続されている。図示しないが、各スイッチング素子263aには、自己消弧型素子をオン、オフさせる駆動回路および電源が接続されている。
ダイオード263bは、還流ダイオードである。2個のダイオード263bは、直列に接続されているスイッチング素子263aにそれぞれ逆並列に接続されている。
コンデンサ263cは、直列に接続された2個のスイッチング素子263aに並列に接続されている。
単位セル263は、2つの端子T1,T2によって、他の単位セル263等とカスコード接続される。複数の単位セル263をカスコードに接続するためには、一方の単位セル263の端子T1を他方の単位セル263の端子T2に接続する。
並列に接続された各レグ261の正側と負側の端子は、直流系統DS1に接続される直流端子215p,215nである。各レグ261における正側と負側の単位アーム262a,262bは、バッファリアクトル264を介して接続されている。正側と負側のバッファリアクトル264の中点からは、変圧器265を介して、各相の交流端子216u〜216wが引き出されている。
電力変換器201は、単位セル263の動作タイミングをずらすことによって、階段状のマルチレベル波形を出力することができる。そのため、電力変換器201は、出力の波形を正弦波に近づけることができる。MMCによる電力変換器201では、3相2レベル変換器で必要であった交流フィルタの容量を低減もしくは不要とすることができる。電力変換器201では、3相2レベル変換器のような高耐圧のコンデンサが不要となる。
なお、単位アーム262a,262bは、n個の単位セル263を直列に接続すればよい。上述では、n=2としたが、n≧1であればよい。また、変圧器265のリアクタンス成分を利用して、バッファリアクトル264を削減する回路構成としてもよい。
図示しないが、単位セル263ごとに電圧センサが設けられている。この電圧センサは、コンデンサ263cの両端の電圧を検出して、電圧のデータを制御装置202に供給する。
以上のような電力変換器201は、制御装置202から出力されるゲート信号に応じて、各スイッチング素子263aがオンオフすることにより動作する。
図9に示すように、制御装置202は、コンデンサ電圧制御部221と、交流電流制御部22と、循環電流制御部223と、第4の切替部224と、第5の切替部225と、を含む。交流電流制御部22は、上述の他の実施形態の場合と同一の構成を有している。同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
コンデンサ電圧制御部221は、セルコンデンサ電圧指令値Vc*および全セルコンデンサ平均電圧Vcを入力する。コンデンサ電圧制御部221は、単位セルのコンデンサ263cに必要な電圧を要求する指令値を出力する。
交流電流制御部22は、第4の切替部224のスイッチ224aを介して加算器226の出力に接続されている。加算器226は、コンデンサ電圧制御部221の出力と第5の切替部225の出力とを加算して出力する。交流電流制御部22は、コンデンサ電圧制御部221からの指令値が付加された交流有効電流指令値(第2指令値)Id*およびあらかじめ設定された交流無効電流指令値Iq*にもとづいて、電力変換器201の交流側に必要な電圧を要求する電圧指令値を出力する。
循環電流制御部223は、零相循環電流指令値Ic0*および循環電流指令値Icα*,Icβ*を入力する。循環電流制御部223は、加算器227によって直流電流指令値Idc*が付加された零相循環電流指令値Idc0*および循環電流指令値Icα*,Icβ*にもとづいて、電力変換器201の内部に流れる循環電流に必要な電圧を要求する指令値を出力する。この指令値は、加算器228によって、交流電流制御部22から出力される電圧指令値に付加される。循環電流は、主にコンデンサ電圧の均一化を図るために、各レグ261を循環する電流である。ここでいう循環電流には、電力変換器201の外部に出て行かずに滞留する成分も、直流側に出て行く成分も含まれる。
第4の切替部224は、2つのスイッチ224a,224bを含む。一方のスイッチ224aは、ブラックスタート指令BSによって、1つの入力を2つの出力のいずれかに切り替える。スイッチ224aの入力は、加算器226の出力に接続されている。加算器226は、コンデンサ電圧制御部221の出力と、第5の切替部225の出力とを加算して出力する。
他方のスイッチ224bは、ブラックスタート指令BSによって、2つの入力を切り替えて1つの出力に接続する。スイッチ224bの一方の入力には、スイッチ224aの出力が接続されている。スイッチ224bの他方の入力には、直流電流指令値Idc*が供給される。スイッチ224bの出力は、加算器227を介して循環電流制御部223に供給される。
第4の切替部224は、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、零相循環電流指令値Ic0*に付加される直流電流指令値Idc*を、コンデンサ電圧制御部221から出力される交流有効電流指令値Id*に切り替える。
第5の切替部225は、2つの入力のいずれかを1つの出力に切り替える。第5の切替部225の一方の入力には、測定値にもとづく直流電力の値が供給される。第5の切替部225の他方の入力には、測定値にもとづく交流電力の値が供給される。この例では、測定値にもとづく直流電力は、乗算器229によって計算される。乗算器229には、直流電流の測定値Idcおよび直流電圧指令値Vdc*が入力される。測定値にもとづく交流電力は、乗算器230によって計算される。乗算器230には、電流センサ266によって検出された交流有効電流測定値Idおよび上位系等によってあらかじめ設定されている交流有効電圧指令値Vdac*が入力される。
第5の切替部225は、コンデンサ電圧制御部221からの指令値に付加する電力を、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、直流電力から交流電力に切り替える。つまり、第5の切替部225は、コンデンサ電圧制御部221からの出力にフィードフォワードさせる電力を、直流電力と交流電力との間で切り替える。
以下、上記の各部の詳細を説明する。なお、以下の各部におけるゲインは、偏差に対するPID制御を行い、電流指令値、電圧指令値の相互変換等をする制御ブロックである。また、制御装置202に入力される各種の測定値は、電流センサ266、コンデンサ263cの電圧センサ、系統に設置されたセンサ等からの電圧値、電流値およびこれらの値からの演算により求める。さらに、各種の指令値等を決定し、制御装置2に入力する上位の管理システムを上位系と呼ぶ。測定値の演算または測定値にもとづく指令値の演算は、制御装置202の外部で演算してもよいし、制御装置202内部の演算部が演算してもよい。つまり、上位系等の外部で演算された値を用いるか、制御装置202の内部で演算された値を用いるかは自由である。
図10に示すように、コンデンサ電圧制御部221は、加減算器211aと、比例制御器221bと、を含む。コンデンサ電圧制御部221は、加減算器211aによって、各セルのコンデンサ電圧指令値Vc*と全セルのコンデンサ平均電圧Vcとの偏差をとる。加減算器221aから出力される偏差は、比例制御器221bに入力され、比例制御器221bは、たとえばPID制御により、偏差に応じた電流指令値を生成する。コンデンサ電圧指令値Vc*は、上位系から入力される。コンデンサ平均電圧Vcは、コンデンサ263cの電圧センサからの測定値にもとづいて演算により求める。
通常時は、電力変換器201から直流側に出力する電力に相当するエネルギーを、交流の指令値に含めるために、コンデンサ電圧制御部221からの電流指令値に、当該電力を換算した直流電流値を付加して、フィードフォワードさせる。つまり、直流送電において供給している電力は、コンデンサ263cのエネルギーとは別に、電力変換器201が融通している電力である。この融通電力分を合わせた電流指令値が、以下に述べる交流有効電流指令値Id*となる。
図11に示すように、循環電流制御部223は、加減算器223aと、比例制御器223bと、リミッタ223cと、設定部223dと、加算器223eと、を含む。循環電流制御部223の零相分については、循環電流制御部223は、加減算器223aによって直流電流指令値Idc0*と直流電流測定値Idcとの偏差をとる。そして、比例制御器223bによって偏差に応じた電圧指令値を生成する。さらに、この電圧指令値には、直流電圧指令値Vdc*が付加される。直流電圧指令値Vdc*は、上位系から入力される指令値である。後述するように、この直流電流指令値Idc0*には、零相循環電流指令値Ic0*が付加されている。零相循環電流指令値Ic0*は、測定値からαβ0変換部231により得られた零相分に相当する指令値である。直流電流指令値Idc*は、上位系から入力される指令値である。循環電流制御部223の出力は、交流電流制御部22の出力に付加される。
さらに、循環電流制御部223は、リミッタ223cと設定部223dとを含む。リミッタ223cは、零相循環電流指令値Ic0*の変動幅を規定する。リミッタ223cの上下限値は、上位系から入力されたリミット値が設定部223dによって設定される。この例では、リミット値は、絶対値の等しい正負の値に設定される。
リミット値は、直流系統DS1の両端に設置された一対の電力変換器201a,201bのうち、ブラックスタート指令BSを受けている側の電力変換器201aを、電流制御端とするリミット値を設定する。他方の電力変換器201bは、電圧制御端とするようにリミット値が設定される。
電流制御端とするリミット値は、0でない値であり、電圧制御端とするリミット値は、0である。リミット値が0でない場合には、入力された値は、変動することが許容され、その変動の上限下限が規定される。リミット値が0の場合には、直流電圧指令値がそのまま出力される。電流制御端、電圧制御端については、後述する。
循環電流指令値は、相間バランス制御操作量と、PN間バランス制御操作量にもとづいて、αβ0変換することにより得られる循環電流の零相分である。相間バランス制御操作量は、3相のコンデンサ電圧のバランスをとる電圧に相当する電流値である。PN間バランス制御操作量は、正側と負側の単位アーム262a,262bのコンデンサ電圧のバランスをとるための電圧に相当する電流値である。相間バランス制御操作量およびPN間バランス制御操作量は、コンデンサ263cの電圧センサからの測定値から演算により求める。
αβ0変換部231は、α相およびβ相の2相成分(3相2相変換)と、零相成分に変換する。この零相成分は、零相循環電流指令値Ic0*として、直流電流指令値Idc*に付加される。なお、α相成分、β相成分も演算に用いられる場合があるが、本実施形態の原理的な説明には必ずしも必要ないため、その演算の説明は省略する。
第4の切替部224は、スイッチ224a,224bを有する。スイッチ224aは、上位系からのブラックスタート指令BSにもとづいて、コンデンサ電圧制御部221からの電流指令値の出力先を、交流電流制御部22から循環電流制御部223に切り替える。スイッチ224bは、スイッチ224aの切り替えとともに、循環電流制御部223へ入力される直流電流指令値Idc*を、コンデンサ電圧制御部221からの電流指令値へ切り替える。
第5の切替部225は、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、コンデンサ電圧制御部221からの出力にフィードフォワードさせる電力を、直流電力から交流電力に切り替えるスイッチである。この直流電力は、電流センサ266からの測定値と、上位系からの直流電圧指令値Vdc*と、により求める。この直流電圧指令値Vdc*は、循環電流制御部223に入力される直流電圧指令値Vdc*と同じである。交流電力は、電流センサ19からの測定値と、上位系からの交流電圧の指令値により求める。なお、ここでフィードフォワードさせる電力は、電力を電流の次元に換算した値である。
本実施形態の制御装置202の動作について説明する。なお、以下では、電力変換器201aが送電側の順変換器、電力変換器201bが受電側の逆変換器として機能する場合のうち、順変換器である電力変換器201aを制御する例として説明する。また、通常時とは、交流系統AS1における電源からの交流電力を電力変換器201aが直流電力に変換して直流系統DS1に供給し、この直流電力を電力変換器201bが交流電力に変換して交流系統AS2に供給している状態をいう。
まず、ブラックスタート指令BSが入力されない通常時の動作について説明する。コンデンサ電圧制御部221は、全セルのコンデンサ平均電圧Vcと、各セルのコンデンサ電圧指令値Vc*の偏差から、現在のコンデンサ電圧として必要な電圧を求め、電流指令値に換算して出力する。たとえば、コンデンサ平均電圧Vcが、コンデンサ電圧指令値Vc*よりも低い場合には電圧を高くし、コンデンサ電圧指令値Vc*よりも高い場合には電圧を下げるように、電流指令値を出力する。
この電流指令値には、直流電力から換算した電流値がフィードフォワードされ、交流有効電流指令値Id*として、交流電流制御部22に入力される。つまり、コンデンサ263cの制御電流と融通電力である直流側のエネルギーとの和で、交流側の有効電力を決める。
交流電流制御部22は、交流有効電流指令値Id*および交流無効電流指令値Iq*にもとづいて、電力変換器201に要求する有効電流および無効電流に相当する交流電圧の指令値を出力する。この指令値には、系統から得た交流電圧測定値が付加され、さらに、後述の循環電流制御部223からの電圧指令値が付加され、電力変換器201に対する電圧指令値として出力される。つまり、系統電圧に、コンデンサ263cに必要な電圧、循環電流に必要な電圧を要求する指令値を付加して、電圧指令値とする。
循環電流制御部223は、上記のように零相循環電流指令値Ic0*を付加された直流電流指令値Idc0*と、測定された直流電流Idcとの偏差から、必要な電圧指令値を求め、さらに、上位系からの直流電圧指令値Vdc*を合わせた電圧指令値を出力する。
ここで、HVDCで送電端と受電端に使用されている電力変換器201a,201bは、電圧を決めている電圧制御端、電流を決めている電流制御端のいずれかになる。通常は、送電端が電圧制御端となり、電圧一定の制御をする。そして、受電端は電流制御端となり、電圧を可変として電流を制御する。これにより、受電端は、ある範囲内で、流したい電流が得られる指令値を生成して、電圧を自由に動かすことができる。このような電圧制御端と電流制御端の2台の電力変換器201a,201bにおける動作点は、電圧制御端の一定の電圧と、電流制御端の変動する電圧との交差点となる。いずれの電圧も自由に変動することになると、動作点が定まらなくなるためである。
たとえば、上記のように、電力変換器201aが送電端の順変換器、電力変換器201bが受電端の逆変換器であるとする。送電端の制御装置202aのリミッタ223cは、上下限値に0が設定される。このため、直流電圧指令値Vdc*がそのまま出力されるので、電圧一定になる。これにより、電力変換器201aは、電圧を固定する電圧制御端として機能する。
一方、受電端の制御装置202bのリミッタ223cは、上下限値に0でない値が設定される。このため、直流電圧指令値は、変動することが許容される。この直流電圧指令値が、状況に応じて変動幅の範囲で変化することにより、電力変換器201bは、電流を変化させる電流制御端として機能する。
このようにして、制御装置202bは、生成された交流電圧の指令値にもとづいて、ゲート信号Vgを電力変換器201bに供給する。
次にブラックスタート指令BSが入力された場合について説明する。ブラックスタート時には、第4の切替部224のスイッチ224aは、コンデンサ電圧制御部221の出力先を、交流電流制御部22から切り離す。これとともに、スイッチ224bは、循環電流制御部223に入力される直流電流指令値Idc*を、コンデンサ電圧制御部221から出力される指令値に切り替える。
通常時には、系統電圧が存在するため、上記のように、系統電圧と電力変換器が出力する電流により電力を生成して出力することができる。しかし、ブラックスタート時には、交流側の電源がなく、負荷に依存して電流が流れることになる。
そこで、制御装置202は、コンデンサ電圧制御部221の出力先を切り替えることによって、零相循環電流指令値Ic0*に付加される指令値を、コンデンサ電圧制御部221から出力される電流指令値とする。つまり、コンデンサ263cが必要とする電圧を、交流側の交流有効電流指令値Id*に含めて交流電流制御部22から要求して得るのではなく、直流側の零相循環電流指令値Ic0*に含めて循環電流制御部223から要求するように変更する。
また、ブラックスタート指令BSを受けて、第5の切替部225は、コンデンサ電圧制御部221から出力される電流指令値に付加される電流値を、交流電力から換算した電流値へ切り替える。つまり、ブラックスタート時は、直流側で指令値を制御することになるので、今度は、交流電力をあらかじめ付加してフィードフォワードする。
この交流電力における交流電圧は、交流有効電圧指令値Vdacである。この交流電力における交流電流は、電流センサ266によって検出される交流有効電流測定値Idである。この例では、交流電力は、乗算器230に交流有効電圧指令値Vdac*および交流有効電流測定値Idを入力することによって求める。
交流系統AS1がブラックスタートとなった場合、循環電流制御部223のリミッタ223cのリミット値の設定を変える。たとえば、交流系統AS1の電源がなくなって、送電端の電力変換器201aがブラックスタートする場合には、ブラックスタート指令BSを受けた制御装置202aでは、リミッタ223cが、上位系からのリミット値として0でない値を設定する。これにより、通常時とは異なり、電力変換器201aは、電流を変化させる電流制御端として機能することができる。
一方、受電端の電力変換器201bの制御装置202bでは、リミッタ223cが、上位系からのリミット値として0を設定する。これにより、通常時とは異なり、電力変換器201bは、電圧を固定する電圧制御端として機能する。
以上の切り替え動作により、循環電流制御部223は、コンデンサ電圧制御部221からの指令値に循環電流指令値を付加した直流電流指令値と、測定された直流電流との偏差から、必要な電圧指令値を求め、さらに、上位系からの直流電圧指令値を合わせた電圧指令値を出力する。
この電圧指令値に、固定の交流電圧指令値を付加したものが、電力変換器201aへの電圧指令値として出力される。
本実施形態の制御装置202の効果について説明する。本実施形態の制御装置202は、MMCである電力変換器201にゲート信号を供給して制御する。制御装置202は、第4の切替部224を備える。第4の切替部224は、交流系統AS1の電源がない状態で運転するブラックスタート指令BSの入力に応じて、零相循環電流指令値Ic0*に付加される直流電流指令値Idc*を、コンデンサ電圧制御部221からの指令値に切り替える。
このため、ブラックスタート時において、交流側の制御から、直流側の制御に切り替えることにより、コンデンサ電圧を維持することができる。
また、本実施形態の制御装置202は、第5の切替部225を備える。第5の切替部225は、電力変換器201が出力する電力を得るために、コンデンサ電圧制御部221からの指令値に付加する電力を、ブラックスタート指令BSの入力に応じて、直流電力から交流電力に切り替える。
このため、コンデンサ電圧制御部221からの指令値に、電力変換器201が得るべき交流電力を含めて、循環電流制御部223に要求することができる。
循環電流制御部223は、零相循環電流指令値Ic0*の変動幅を規定し、リミット値を設定する設定部223dを有する。リミッタ223cは、直流系統DS1の両端に設置された一対の電力変換器201a,201bのうち、ブラックスタート指令BSを受けている側の電力変換器201aを、電流制御端とするリミット値を設定し、他方の電力変換器201bを、電圧制御端とするリミット値を設定する。
交流系統AS1の電源がない状況では、受電端側で要求される電力を自由に供給することはできない。このため、受電端側を電圧制御端とし、送電端側を電流制御端とすることにより、ブラックスタートとなった送電端側で電流を制御できる。しかも、電圧制御端と電流制御端の切り替えを、直流側の情報のみで行うことができる。
以上説明した実施形態によれば、ブラックスタート時に電力変換器の運転を継続することができる電力変換器の制御装置を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。