JP6729595B2 - 前立腺癌の病理組織診断結果(グリーソンスコア)の推定方法 - Google Patents

前立腺癌の病理組織診断結果(グリーソンスコア)の推定方法 Download PDF

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Description

本発明は、グリーソンスコアとして知られている、前立腺癌の悪性度に係る病理組織の診断結果を推定する方法に関する。
前立腺癌は、主に60歳以上の男性に発病し、欧米諸国では男性の癌において肺癌に次ぐ死亡原因となっている。前立腺癌の治療方針を決める上で、がんの進行度(病期)および悪性度が重要な指標となる。このうち、前立腺癌の悪性度には幅広い分布があり、ほとんど増殖が認められず無治療経過観察が可能であるものから、骨やリンパ節に転移し抗ホルモン薬への抵抗性を示す増悪をきたすものまで様々であるため、前立腺癌の悪性度を正確に判断することが望まれている。
前立腺癌の悪性度を示す分類として、がんの病理組織の診断結果を点数化した「グリーソンスコア」が広く用いられている。前立腺癌のがん組織は、その形態や浸潤増殖様式によってグレード1からグレード5の5段階に分類することができる(グリーソン分類)。グリーソンスコアは、ある病理組織を顕微鏡で観察したときに、最も大きな面積を占める組織像についてグリーソン分類に基づき付与されるグレードと、その次に大きな面積を占める組織像のグレード(これら2つのグレードが同じになる場合もある)を合計した値である。一般的に、グリーソンスコアが2〜6の場合は悪性度が低い、7の場合は中程度、8〜10の場合は悪性度が高いとされ、グリーソンスコアが7以上であるかそうでないかが主要な目安となっている。
しかしながら、このような病理組織診断を行うためには、直腸から針(合計8本以上)を刺して前立腺組織を採取すること(針生検)が必要である。針生検は患者にとって侵襲性が高く、費用も高額である上、針が前立腺癌組織に当たらないと診断ができないという欠点もある。
一方、前立腺癌および前立腺肥大症等の前立腺関連疾患について、患者の血液等の試料中に存在する、特定の糖鎖を有するPSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)との関係性に注目した研究が進められている。従来、試料中の全てのPSA(トータルPSA)を定量し、その値を閾値と比較すること、またはα1−アンチキモトリプシンと結合しない遊離型PSA(フリーPSA)を定量し、全てのPSAの量に対する遊離型PSAの量の比率(フリーPSA/トータルPSA比)を閾値と比較することによって、前立腺癌に罹患しているか否かを診断する方法が知られていた。しかしながら近年では、患者が罹患している疾患によってPSAが有する糖鎖の性状が変化すること、換言すれば特定の糖鎖を有するPSAの量(割合)が変化することが分かってきており、そのことを利用して前立腺癌または前立腺肥大症疾患に罹患しているか否かを診断する方法がいくつか提案されている。
たとえば、特許文献1(国際公開2009/008381号公報)には、質量分析法により、被験者由来の試料中のフコース非結合糖鎖を有するPSAおよびフコース結合糖鎖を有するPSAを、質量分析法により分析し、前者に対して後者の量が多い(前者のシグナル強度に対する後者のシグナル強度の比が1.0を超える)場合に前立腺癌であると識別し、そうでなければ良性前立腺肥大症であると識別する方法が開示されている。
特許文献2(国際公開2010/064683号公報)には、被験者由来の試料中のPSAの、LacdiNAc(N−アセチルガラクトサミン−N−アセチルグルコサミン)を有する糖鎖の量と、LacdiNAcを持たないがLacNAc(ガラクトース−N−アセチルグルコサミン)を有する糖鎖の量とを定量し、前者の量が後者の量の30%を超える場合に前立腺癌であると判定する方法が開示されている。
特許文献3(特開2011−137754号公報)には、被験者由来の試料中のPSAの糖鎖構造を分析し、LacdiNAcを有する3本鎖以上の糖鎖が存在するときに前立腺癌であると判定する方法が開示されている。
特許文献4(国際公開2010/090264号公報)には、患者由来の試料(血清等)中のβ−N−アセチルガラクトサミン残基を有するPSAおよび/またはフコースα(1,2)ガラクトース残基を有するPSAを定量し、それらの絶対量および/またはPSA全体に対する割合を所定のカットオフ値より大きければ前立腺癌、そうでなければ前立腺肥大症と判定する方法が開示されている。β−N−アセチルガラクトサミン残基を有するPSAは、当該残基と親和性を有するレクチン、例えばTJA−II(Trichosanthes japonica agglutinin-II:キカラスウリレクチン−II)またはWFA(Westeria floribunda agglutinin:ノダフジレクチン)を用いて定量で、フコースα(1,2)ガラクトース残基を有するPSAは、当該残基と親和性を有するレクチン、例えばUEA−I(Ulex europaeus agglutinin-I:ハリエニシダレクチン−I)またはTJA−IIを用いて定量できると記載されている。また、前記所定の残基を有するPSAは、例えば、担体にレクチンを結合させたカラム(レクチンアフィニティーカラム)を用いて吸着および溶出させることにより定量できると記載されている。
さらに、特許文献5(特開2013−076666号公報)には、特許文献4と同じ特定の残基を有するPSAを、当該PSAに対する固相一次抗体、および当該PSAが有する残基と高い親和性を有するレクチンを蛍光色素により標識化した二次捕捉分子を用いた、SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)等のサンドイッチアッセイにより定量する方法が記載されている。
しかしながら特許文献1〜5のいずれにも、それらに開示されている方法とグリーソンスコア等の前立腺癌の悪性度との相関性は記載されていない。特に、特許文献4の実施例1では、TJA−IIを用いて前記特定の糖鎖を有するPSAを定量しており、前立腺肥大症患者と前立腺癌患者を区別することが可能であることが示されている一方、グリーソンスコアについては有意差が認められなかったと分析されている。また、特許文献4の実施例2では、WFAを用いて前記特定の糖鎖を有するPSAを定量しており、TJA−IIと同様の傾向を示す(結合率はやや低いがほぼ相関している)こと、β−N−アセチルガラクトサミン残基は有さずフコースα(1,2)ガラクトース残基のみを有するPSAが存在する可能性があることなどが分析されているが、定量の対象としているのは前立腺癌患者由来の3検体のみであり、グリーソンスコアについては全く分析されていない。なお、特許文献4では、TJA−IIおよびWFAはともに、糖鎖の非還元末端(タンパク質と結合している還元末端とは逆側の末端)に結合したβ−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有するレクチンとして例示されているが(段落[0020]参照)、その他の残基に対する親和性においてこれらのレクチンには相違点がある。すなわち、TJA−IIは、β−N−アセチルガラクトサミン残基(GalNAcβ1→R;Rは糖鎖の他の残基またはタンパク質のアミノ酸残基を表す)およびフコースα(1,2)ガラクトース残基(Fucα1→2Galβ1→R)の両方に強い親和性を有するレクチンである(段落[0022]参照)。これに対して、WFAは、β−N−アセチルガラクトサミン残基(GalNAcβ1→R)、例えばGalNAc(β1→4)Gal残基およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基に強い親和性を有するものの、フコースα(1,2)ガラクトース残基(Fucα1→2Galβ1→R)には親和性を有さない(段落[0023]参照)。
国際公開2009/008381号公報 国際公開2010/064683号公報 特開2011−137754号公報 国際公開2010/090264号公報 特開2013−076666号公報
前述したように、針生検を必要とする従来の病理組織診断は患者にとっての負担が大きい。前立腺癌の悪性度を表すグリーソンスコアのような前立腺癌の病理組織診断結果を、血液検査のように侵襲性が低く、コストも低い方法によって取得することができれば、患者にもたらされる利益は大きい。
本発明は、低侵襲性かつ低コストで実施することができる、前立腺癌の病理組織診断に用いられている指標値を取得する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、血液から調製された検体に含まれるPSAのうち、WFAと結合させることによって定量することのできるPSA、つまり"WFAと親和性を有するPSA"の含有量について、グリーソンスコアが7以上の前立腺癌患者に由来するサンプル群とそれ以外のサンプル群との間、およびグリーソンスコアが6以下の前立腺癌患者に由来するサンプル群とそれ以外のサンプル群との間、それぞれで統計学的に有意な差があり、適切な閾値を設定することにより、グリーソンスコアが7以上または6以下であることを高い精度で推定することができることを見出した。
ここで、特許文献4に既に記載されているように、"TJA−IIと親和性を有するPSA"の含有量は、グリーソンスコアとの相関性を有さず、上記のようなグリーソンスコアの判別は行えない。このような判別の可否の違いは、WFAとTJA−IIの糖鎖認識の違い、すなわちWFAが結合するPSAには、フコースα(1,2)ガラクトース残基を有するPSAは含まれず、β−N−アセチルガラクトサミン残基を有するPSAのみが含まれるのに対し、TJA−IIが結合するPSAには、フコースα(1,2)ガラクトース残基を有するPSAとβ−N−アセチルガラクトサミン残基を有するPSAの両方が含まれる、という違いに起因しているものと推測される。
さらに、本発明者らは上記のように"WFAと親和性を有するPSA"を定量することを拡張および一般化し、β−N−アセチルガラクトサミン残基を有するPSAだけではなく、α−N−アセチルガラクトサミン残基を有するPSA(PSA糖鎖の質量分析の構造解析結果からは、このようなPSAの存在量は低いと考えられる)を定量の対象に含めても同様の判定が可能であること、換言すれば、定量の対象とするPSAは、WFAと親和性を有するPSAだけでなく、N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するPSAと規定することが可能であることを見出した。
このような知見に基づいてなされた本発明は、一つの側面において、「前立腺癌の悪性度を表すグリーソンスコアを推定する方法であって、検体中の、N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するPSAの含有量を測定し、得られた測定値が閾値よりも大きいことをもってグリーソンスコアが7以上であると推定する、またはその測定値が閾値よりも小さいことをもってグリーソンスコアが6以下であると推定する、グリーソンスコアの推定方法」を提供する。
換言すれば、本発明は一つの側面において、「検体中の、N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するPSAの含有量の測定方法であって、少なくとも、N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子を前記PSAに結合させる工程を含む、測定方法」を提供する。この測定方法は、前立腺癌の悪性度を表すグリーソンスコアを推定するために利用することのできるものであり、得られた測定値が閾値よりも大きい場合はグリーソンスコアが7以上であると推定することができ、その測定値が閾値よりも小さい場合はグリーソンスコアが6以下であると推定することができる。
なお、本発明における、グリーソンスコアが7以上であると推定するための閾値およびグリーソンスコアが6以下であると推定するための閾値は、従来技術における異なる目的のための閾値、例えば特許文献4に記載されている、前立腺癌か前立腺肥大症かを判定するための閾値とは相違する。そのような観点から、本発明を従来技術と区別することが可能である。
本発明によって、針生検のように患者に重い負担を強いる検査ではなく、血液検査のように低侵襲性かつ低コストで実施することができる検査によって、診断上重要な意味を持つ前立腺癌の悪性度、すなわちグリーソンスコアが7以上か否か、または6以下か否かを所望の精度で推定することができるようになる。それにより、前立腺癌患者のQOLを維持しつつ、必要な治療をしたり、経過観察をしたりすることが可能となる。
図1は、SPFS測定部材16を用いて検体中のGalNAc−PSA100を定量する際の、流路36内の測定領域38で起きる反応の模式図である。[A]支持体62に担持された抗PSA抗体64に、GalNAc−PSA100を結合させるための捕捉工程における反応。[B]抗PSA抗体64に捕捉されたGalNAc−PSA100に、蛍光標識GalNAc親和性分子80を結合させるための標識工程における反応。 図2は、SPFSシステム1の一般的な実施形態を示す模式図である。[A]誘電体部材12の上面12aに金属薄膜14が直接形成されており、プラズモン励起センサ16aが、誘電体部材12、金属薄膜14および測定領域38によって構成されている実施形態。[B]誘電体部材12と分離可能な透明平面基板13の上面に金属薄膜14が形成されており、プラズモン励起センサ16aが、透明平面基板13、金属薄膜14および測定領域38によって構成されている場合。 図3は、実施例1(Alexa Fluor 647標識WFA)における、各被験試料中のGalNAc−PSA分画量をSPFSで測定した結果を示すグラフである。このグラフは、表1に示す被検試料に付属する診療情報および病理組織診断結果(グリーソンスコア)をもとに層別化されている。 図4は、実施例2(Alexa Fluor 647標識SBA)における、各被験試料中のGalNAc−PSA分画量をSPFSで測定した結果を示すグラフである。このグラフは、グリーソンスコアが7以上か、6以下かで層別化されている。 図5は、実施例3(Alexa Fluor 647標識VVL)における、各被験試料中のGalNAc−PSA分画量をSPFSで測定した結果を示すグラフである。このグラフは、グリーソンスコアが7以上か、6以下かで層別化されている。
本明細書において、下記の語句はそれぞれ短縮して称することがある。すなわち、「N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するPSA」は「GalNAc−PSA」と称することがある。「N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子」は「GalNAc残基親和性分子」と称することがある。「N−アセチルガラクトサミン残基」および「β−N−アセチルガラクトサミン残基」は、それぞれ「GalNAc残基」および「β−GalNAc残基」と称し、「N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子/レクチン」および「β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子/レクチン」は、それぞれ「GalNAc残基親和性分子/レクチン」および「β−GalNAc残基親和性分子/レクチン」と称することがある。
本発明によるグリーソンスコアの推定方法は、検体中の、N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するPSA(GalNAc−PSA)の含有量を測定し、その測定値が閾値よりも大きいことをもって、グリーソンスコアが7以上であると推定する、またはその測定値が閾値よりも小さいことをもってグリーソンスコアが6以下であると推定する方法である。
「検体」は、本発明のグリーソンスコアの推定方法を適用する対象から採取される、GalNAc−PSAの含有量を測定するための材料であって、血液、尿、腹水など、非侵襲性ないし低侵襲性の手法によって採取することのできる液性の検体が挙げられる。たとえば、抗凝固処理された全血から調製された検体、好ましくは血清または血漿は、本発明における検体として好適である。GalNAc−PSAの定量方法に応じて必要であれば、検体は希釈液、試薬等を添加して調製された試料であってもよい。
本発明のグリーソンスコアの推定方法の適用対象、すなわち検体を採取する対象は、典型的にはヒトであるが、ヒトの疾患のモデル動物など、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。ヒトの対象としては、典型的には前立腺癌であると確定診断された患者、または前立腺癌に罹患している可能性のある者であって、前立腺癌の悪性度を知る必要のある者が挙げられ、ヒト以外の哺乳動物の対象としては、前立腺癌を発症させたマウス、ラット等のモデル動物が挙げられる。
[定量方法]
検体中のGalNAc−PSAの含有量を測定するための方法は、所定の閾値と比較することのできる精度を有する測定値が得られる限り、特に限定されるものではなく、様々な定量方法を用いることができる。
GalNAc−PSAの定量方法としては、比較的簡便な手段によって実施することのできる、N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子(GalNAc残基親和性分子)をGalNAc−PSAに結合させる工程を含む方法が好ましいが、その他の方法、例えば質量分析法に基づく方法を用いることも可能である。
・GalNAc残基親和性分子
GalNAc残基親和性分子は、好ましくはβ−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子(β−GalNAc残基親和性分子)である。また、GalNAc残基親和性分子としては、GalNAc残基に対して親和性を有するレクチン(GalNAc残基親和性レクチン)またはGalNAc残基をエピトープとする抗体(抗GalNAc抗体)用いることができる。
同様に、β−GalNAc残基親和性分子としては、β−GalNAc残基に対して親和性を有するレクチン(β−GalNAc残基親和性レクチン)またはβ−GalNAc残基をエピトープとする抗体(抗β−GalNAc抗体)を用いることができる。以下に説明されている事項について、「GalNAc残基」は適宜「β−GalNAc残基」に読み替えることができる。
・GalNAc残基親和性レクチン
レクチンは、特定の糖残基に対する親和性を有する、つまり特定の糖残基を認識してそこに結合するタンパク質であり、様々な生物に由来する多数の種類のレクチン(凝集素と呼ばれることもある)が知られている。レクチンの種類によって親和性を有する糖残基は様々であり、また多くのレクチンは、1種類の糖残基だけでなく複数の種類の糖残基と親和性を有する(ただし、特定の糖残基に対する親和性が強く、他の糖残基に対する親和性は弱い)。一般的に、抗GalNAc抗体のように、糖鎖中の特定の糖残基をエピトープとする抗体は作製しにくいのに対し、GalNAc残基親和性レクチンは、安価で大量に入手することができ、また安定性にも優れており長期間保存も可能であるため、GalNAc残基親和性分子として好ましい。
GalNAc残基親和性レクチンとしては様々なものが公知であり、また今後も新たな生物から単離される可能性もある。本発明では、GalNAc残基に対して十分に強い親和性を有している限り、つまり、そのレクチンが、他の糖残基に対する親和性を有さないものであるか、他の糖残基と親和性を有するが、他の糖残基に対する親和性がGalNAc残基に対する親和性よりも十分に小さく(例えば、結合定数が数オーダー低く)、十分な精度でGalNAc−PSAの定量を行うことができる限り、どのようなレクチンを用いてもよい。
GalNAc残基親和性レクチン、好ましくはβ−GalNAc残基親和性レクチンの具体例としては、ノダフジレクチン(Westeria floribunda Agglutinin:WFA)、ダイズ凝集素(Soybean Agglutinin:SBA)およびカラスノエンドウレクチン(Vicia Villosa Lectin:VVL)を挙げることができる。これらのレクチンは、それぞれが由来する生物体、例えば種子から分離(抽出)して精製することもできるし、商品としても市販されているものを入手することもできる。
WFAは、WFL(Westeria floribunda Lectin)と表記されることもある、ノダフジに由来するレクチン(凝集素)である。WFAは、N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(GalNAc)、すなわちα−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(α−GalNAc)およびβ−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(β−GalNAc)の両方に親和性を有し、例えば糖鎖の非還元末端に位置するGalNAc(α1→6)Gal残基、GalNAc(α1→3)Gal/GalNAc残基、GalNAc(β1→4)Gal残基、およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基、ならびに糖鎖の還元末端に位置するGalNAc−Ser/Thr(セリンまたはスレオニン)などに結合することができる。また、WFAは、ラクトースおよびガラクトースに対しても比較的弱い親和性を有する。
SBAは、ダイズに由来するレクチン(凝集素)である。SBAも、N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(GalNAc)、すなわちα−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(α−GalNAc)およびβ−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(β−GalNAc)の両方に親和性を有するが、前者に対する親和性の方が後者に対する親和性よりもやや強く、例えば糖鎖の非還元末端に位置するGalNAc(α1→3)Gal残基、GalNAc(β1→4)Gal残基、およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基に結合することができる。また、SBAは、ガラクトースに対しても比較的弱い親和性も有する。
VVLは、VVA(Vicia villosa Agglutinin)と表記されることもある、ヘアリーベッチに由来するレクチン(凝集素)である。VVLも、N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(GalNAc)、すなわちα−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(α−GalNAc)およびβ−N−アセチル−D−ガラクトサミン残基(β−GalNAc)の両方に対する親和性を有し、例えば糖鎖の非還元末端に位置するGalNAc(α1→3)Gal残基、GalNAc(β1→4)Gal残基、およびGalNAc(β1→4)GlcNAc残基に結合することができる。
・GalNAc−PSAの定量方法の実施形態
GalNAc残基親和性分子をGalNAc−PSAに結合させる工程を含む、GalNAc−PSAの定量方法の代表的な実施形態(第1実施形態)としては、GalNAc残基親和性分子と共に、これとは別のPSAに特異的に結合する分子をGalNAc−PSAに結合させ、これら3分子からなるサンドイッチ型複合体を形成させることを含む方法が挙げられる。このサンドイッチ型複合体の具体例としては、支持体に担持された(固相化された)PSAタンパク質をエピトープとする抗PSA抗体と、GalNAc−PSAと、蛍光標識されたGalNAc親和性レクチンまたは抗GalNAc抗体とからなるサンドイッチ型複合体が挙げられる。
「抗PSA抗体」は、一般的な手法により作製することも可能であり、市販されているものを購入することも可能である。測定の安定性からポリクローナル抗体よりもモノクローナル抗体を用いることが好ましい。また、糖鎖中の特定の糖残基(本発明においてはGalNAc)を蛍光標識レクチンが認識して結合することを妨げないよう、PSAの糖鎖ではなくタンパク質の部分をエピトープとする抗体が好ましい。そのようなPSAタンパク質をエピトープとする抗PSAモノクローナル抗体としては、例えば、PS2、PS3、PS4、PS5、PS6、PS15、2H9、3B4、5A6、5G6、8G4、9A8、9G2、PS1、8A6、2H9、1H12、No.79などのクローンが公知であり、市販もされている。抗GalNAc抗体、好ましくは抗β−GalNAc抗体も同様にして作製することができ、例えば、100−2H5−A、114−2H12−C、259−2A1、273−3F2、99−2A5−B、SMLDN1.1などのクローンが公知である。
蛍光標識されたGalNAc親和性レクチンは、前述したようなGalNAc親和性レクチンに一般的な手法を用いて所望の蛍光物質を結合させることにより作製することができ、その際には市販されている蛍光物質ラベリングキットなどを用いることもできる。蛍光物質は特に限定されるものではなく、SPFSによって適切な蛍光を発することのできる蛍光色素などを用いることができる。蛍光標識された抗GalNAc抗体も同様にして作製することができる。
上記のようなGalNAc残基親和性分子を含むサンドイッチ型複合体の形成量、すなわち検体中のGalNAc−PSAの含有量を定量するための方法としては、測定対象を高感度かつ高精度で定量することができる方法として知られている、SPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)が好適である。SPFSによって測定される、サンドイッチ型複合体に含まれる蛍光物質から発せられる蛍光強度に基づいて、検体中のGalNAc−PSAを定量することができる。
GalNAc残基親和性分子をGalNAc−PSAに結合させる工程を含む、GalNAc−PSAの定量方法の別の実施形態(第2実施形態)としては、GalNAc残基に対して親和性を有するレクチンが結合した担体を充填したカラム(レクチンアフィニティーカラム)を利用する方法が挙げられる。すなわち、上記レクチンアフィニティーカラムに検体をアプライしてGalNAc−PSAをそのレクチンに結合させ、次いでハプテン糖を含有する溶出用緩衝液をアプライしてGalNAc−PSAを解離させ、GalNAc−PSAを含有する画分を回収した後、その画分のGalNAc−PSAの含有量を免疫測定法によって測定することができる。第2実施形態において、GalNAc−PSA含有画分中のGalNAc−PSAを定量する際には、当該画分中のPSAは実質的に全てGalNAc残基を有するものになっているため、標識化されたGalNAc残基親和性分子(レクチン)を用いる必要は無く、PSAタンパク質をエピトープとする標識化された抗PSA抗体を用いることができる。例えば、抗PSA抗体結合磁性粒子/PSA/アルカリフォスファターゼ標識抗PSA抗体からなる免疫複合体を形成したのち、化学発光基質を添加して発光強度を測定する化学発光酵素免疫測定法や、固相化抗PSA抗体/PSA/蛍光標識抗PSA抗体からなる免疫複合体を形成したのち、SPFSにより蛍光強度を測定するSPFS法により、GalNAc−PSA含有画分中のGalNAc−PSAを定量することができる。
・SPFS測定法
SPFSは、誘電体部材の上面に形成された金属薄膜に裏面(誘電体部材と接触している側)から、全反射減衰(ATR)が生じる角度で入射光を照射したときに、金属薄膜を透過して表面(測定領域が形成されている側)に生じるエバネッセント波が表面プラズモンとの共鳴により数十倍〜数百倍に増強されることを利用し、その増強されたエバネッセント波を励起光として、測定領域に捕捉された測定対象物を標識している蛍光物質から効率的に蛍光を発生させる方法である。その蛍光の強度を測定することによって検体中の測定対象物を定量することができ、各検体についての測定値を、濃度が既知の標準試料を用いて測定したときの蛍光の強度の測定値と対比することにより、検体中の測定対象物の含有量(濃度)に換算することができる。このようにして行われるSPFSは、ELISAのような従来の蛍光標識法などに比べて極めて感度が高いため、検体中の測定対象物の濃度が極めて低い場合の定量法として好適である。
なお、本発明では、GalNAc−PSAの検体中の含有量(濃度)に基づいてグリーソンスコアを推定するが、SPFS等の定量方法によって所定の測定プロトコールに従って得られた「測定値」を、ng/mL、U(ユニット)/mL等の所定の単位で表される「濃度」に換算しないまま、分析に用いることも可能である。たとえば、SPFSでは通常、蛍光強度の測定値を任意単位(arbitrary unit: a.u.)で表すが、同一条件下において各検体について測定された任意単位で表される測定値に基づいて当該単位の閾値を設定し、同一条件下で測定された検体の測定値からグリーソンスコアの推定を行うようにしてもよい。
抗PSA抗体/GalNAc−PSA/蛍光標識GalNAc残基親和性分子からなるサンドイッチ型複合体を形成させたのち、その複合体(蛍光物質)から発せられる蛍光の強度をSPFSによって測定する際の一般的な実施形態を、図1に基づいて説明する。
SPFSを実施する際に行われる工程は、「測定前段階」の工程と「測定段階」の工程に大別することができる。測定前段階の工程は、抗PSA抗体/GalNAc−PSA/蛍光標識GalNAc残基親和性分子からなるサンドイッチ型複合体を形成するまでの段階の工程であって、典型的には、図1[A]に示されているような、GalNAc−PSA100を抗PSA抗体64に結合させて測定領域38内に捕捉する工程(捕捉工程)、および図1[B]に示されているような、蛍光標識GalNAc残基親和性分子80をGalNAc−PSA100に結合させて蛍光標識化する工程(標識工程)などを含む。一方、測定段階の工程は、金属薄膜14の裏面に入射光を照射し、測定領域38に形成された所定のサンドイッチ型複合体から発生する蛍光の強度を測定する工程(測定工程)などを含む。
SPFSには、誘電体部材12と、その上面に形成された金属薄膜14と、その表面に形成された測定領域38とを備えたプラズモン励起センサ16aが用いられる。測定領域38は、所定のサンドイッチ型複合体を形成するための反応が行われる場であって、金属薄膜14の表面に形成されたSAM60と、そのSAM60の表面に結合した支持体62と、その支持体62に結合(担持)された抗PSA抗体64とによって構成されることが好ましい。このようなプラズモン励起センサ16aは、捕捉工程に先だってあらかじめ作製しておくようにする。
SAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)60は、支持体62を金属薄膜14の表面側に連結させる足場を提供するとともに、蛍光物質84が金属薄膜14と接触することにより励起光が照射されても蛍光を発しなくなる、金属消光を防止するために形成される。SAM60は、金属薄膜14と直接的または間接的に反応可能な官能基、および支持体62を構成する分子と直接的または間接的に反応可能な官能基を、両末端に有するシランカップリング剤で形成することが好ましい。
支持体62は、測定領域38内に抗PSA抗体64がより高密度で含まれるようにするために形成される。すなわち、SAM60に抗PSA抗体64を直接結合させる場合よりも、SAM60に支持体62を結合させ、その支持体62に抗PSA抗体64を結合させる場合の方が、支持体62が高さ方向への空間的な広がりを持っているため、単位面積当たりの抗PSA抗体64の個数(つまり密度)を高めることができる。このような支持体62としては、疎水結合が一因となっている非特異的吸着を抑制するとともに、抗PSA抗体64と反応可能な官能基を多数有する親水性高分子、例えばデキストランからなる主鎖にカルボキシル基が多数導入されたカルボキシメチルデキストラン(CMD)が好ましい。
例えば、シランカップリング剤である10−カルボキシ−1−デカンチオールを含有する溶液を、金属薄膜14の表面に接触させることにより、当該分子からなるSAM60を形成することができる。続いて、10−カルボキシ−1−デカンチオールから形成されたSAM60に、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)および水溶性カルボジイミド(WSC)を反応させることにより、SAM60の表面側に配向しているカルボキシル基を活性エステル化した後、CMDを含有する溶液を接触させることで、CMDからなる支持体62を固相化することができる。さらに、CMDにNHSおよびWSCを反応させ、CMDが有するカルボキシル基を活性エステル化した後、抗PSA抗体64を含有する溶液を接触させることで、CMDからなる支持体62に多数の抗PSA抗体64を担持させることができる。
捕捉工程では、GalNAc−PSA100および非GalNAc−PSA110を含有する検体を、流路36に導入して測定領域38に接触させるようにする。図1に示す実施形態においては、前述したようなレクチンアフィニティーカラムを用いた分画は事前に行われていないため、GalNAc−PSA100とともに非GalNAc−PSA110が検体中に含まれている。したがって、測定領域38の抗PSA抗体64には、GalNAc−PSA100だけでなく非GalNAc−PSA110も結合して捕捉されることになる。
標識工程では、蛍光標識GalNAc親和性分子80を含有する溶液を、流路36に導入して測定領域38に接触させるようにする。蛍光標識GalNAc親和性分子80は、測定領域38に捕捉されているGalNAc−PSA10に結合して、所定のサンドイッチ型複合体が形成されるが、GalNAc残基を有さない非GalNAc−PSA110には(非特異的吸着によるやむを得ない結合を除いて)結合しない。
捕捉工程と標識工程の間、および標識工程の後には、流路36に洗浄液(例えば界面活性剤を含有する緩衝液)を導入し、測定領域38(支持体62、抗PSA抗体64、SAM60など)に非特異的に吸着している、非GalNAc−PSA110や蛍光標識GalNAc親和性分子80を除去するようにすることが好ましい。測定工程では、流路36を洗浄液または緩衝液で満たした状態で、蛍光の強度を測定することが好ましい。
・SPFSシステム
続いて、上記のようなSPFSを行うために好適なSPFSシステムの一実施形態を、図2に基づいて説明する。
SPFSシステム1は、SPFS測定部材16、SPFS測定装置10、および制御演算装置40によって構成されている。
図2[A]は、誘電体部材12の上面12aに直接金属薄膜14が形成されている実施形態を表しており、プラズモン励起センサ16aは、誘電体部材12、金属薄膜14および測定領域38からなる。図2[B]は、誘電体部材12と分離可能な透明平面基板13の上面に金属薄膜14が形成されている実施形態を表しており、プラズモン励起センサ16aは、透明平面基板13、金属薄膜14および測定領域38からなる。
SPFS測定部材16はプラズモン励起センサ16aおよび流路部材16bで構成されている。プラズモン励起センサ16aの上面の一部または全部、すなわち流路36の底面の一部または全部において、支持体62および抗PSA抗体64からなる層が形成されている領域が測定領域38となる。測定領域38の面積は通常、一般的にレーザー光として照射される入射光22の照射面積と等しいかそれより広くなるよう調整され、たとえば、入射光22のスポット径が1mmφ程度であれば、測定領域38は通常、少なくとも数mm四方の面積を有する。
流路部材16bは、プラズモン励起センサ16aの上部に、両末端に開口を有する流路36を形成するための部材であり、流路部材16bの上部に設けられる蛍光検出手段32によって蛍光32の強度の測定が正確に行えるよう、無色透明な素材、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)で作製されている。流路部材16bは、プラズモン励起センサ16a(図2[A]では誘電体部材12、図2[B]では透明平面基板13)と圧着されており、必要に応じて接着剤、マッチングオイル、透明粘着シートなどを用いて、隙間からの溶液の漏出を防止するようにしてもよい。また、流路部材16bは、側壁部(スペーサー)と天板部とを組みあわせることによって構成されていてもよい。この場合、側壁部としては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)製で、流路となる貫通穴を中央部に有するシート状の部材を用いることができる。天板部としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)製の無色透明で、側壁部の貫通穴(流路)の両端に相当する位置に2つの貫通穴を有するプレート状の部材を用いることができる。
このような「流路型」のSPFS測定部材16では、検体、蛍光標識GalNAc親和性分子80の溶液、洗浄液等の各種の溶液は、送液手段(図示せず)によって、両端に設けられている開口から流路36に導入され、往復送液または循環送液される。
なお、溶液を往復送液または循環送液する必要がない場合、SPFS測定部材16は溶液を貯留する「ウェル型」とすることができる。その場合、流路部材16bの代わりに、プラズモン励起センサ16aの上面に流路よりも容積の大きいウェルを形成することのできる、ウェル部材を用いればよい。ウェルの上部は開放されていてよく、たとえばピペット状の器具を用いることにより、各種の液体をウェルに添加し、除去することができる。
SPFS測定装置10は、基本的に、測定部材装填部18、照射手段20、受光手段26および蛍光検出手段32を備え、必要に応じてさらに、送液手段(図示せず)を備えていてもよい。
測定部材装填部(ステージ)18には、SPFS測定部材16が着脱可能になっている。図2[A]に示すような、誘電体部材12を含むプラズモン励起センサ16aの使用が想定される場合、測定部材装填部18はプリズム形状の誘電体部材12を設置できるようになっている。図2[B]に示すような、透明平面基板13を含むプラズモン励起センサ16aの使用が想定される場合、測定部材装填部18にはあらかじめプリズム形状の誘電体部材12が設置されており、その上面12aに透明平面基板13を密着して載置できるようになっている。
送液手段(図示せず)は、例えば、移動手段を備えたピペット状の器具によって構成することができる。試料、試薬等の各種の溶液の収容部(図示せず)においてそれらの溶液を吸引した後、流路型のSPFS測定部材16の流路36の末端に設けられている開口において吸引されていた溶液を吐出することで、その溶液を流路36に導入することができる。必要に応じて、その場で吸引および吐出を繰り返すことにより、溶液を流路36内で往復送液させ、測定領域38における反応を促進させることができる。SPFS測定部材16がウェル型の場合は、そのウェル内に吸引されていた溶液を吐出すればよい。また、SPFS測定部材16が流路型の場合は、送液手段は、外部流路およびポンプによって構成することもできる。外部流路は、SPFS測定部材16の流路36の両末端に設けられた開口とポンプとを連通させる部材である。ポンプは、この外部流路を介して、試料、試薬等の各種の溶液を流路36に導入し、往復送液または循環送液させることができる。
照射手段20は、光源および光源可動手段を備え、必要に応じてさらに、光源と誘電体部材12との間に偏光フィルタおよび減光フィルタを備えていてもよい。光源は、蛍光標識レクチン80が有する蛍光物質84を励起させるのに適した波長および強度を有する入射光22を照射するものであり、一般的にはレーザーダイオードである(つまり入射光22はレーザー光である)。光源可動手段は、入射光22が誘電体部材12の入射側面12bから金属薄膜14の裏面に、所定の入射角α1で照射されるよう、光源を移動させる。偏光フィルタは、光源から照射される入射光22を、金属薄膜14が表面プラズモン共鳴を効率的に発生させることができるP偏光にするために用いられる。減光フィルタは、蛍光検出手段32が適切な強度の信号値を取得できるよう、光源から照射される入射光22の強度(フォトン量)を調整するために用いられる。
受光手段26は、受光器および受光器可動手段を備える。受光器は、入射光22が金属薄膜14の裏面で反射された光である、反射光24を受光し、その強度を測定することができる。受光器可動手段は、光源可動手段による入射光22の入射角α1の変化と同期して、反射角が変化した反射光24を確実に受光できるよう、受光器を移動させることができる。入射光22の強度に対する反射光24の強度の比率、すなわち反射率が最も低いときに、表面プラズモン共鳴による電場増強効果が最も高くなり、そのような入射角α1において蛍光32の強度を測定する測定工程を行うことが好ましい。
蛍光検出手段32は、検出器、集光レンズおよびフィルタを備える。検出器は、プラズモン励起センサ16aの表面から発せられる、すなわち測定領域38に捕捉された蛍光標識レクチン80が有する蛍光物質84から発せられる蛍光30を受光し、その強度を測定するためのものであり、例えば光電子倍増管(PMT)を用いることができる。集光レンズは、蛍光30を検出器に集中させてその強度を正確に測定できるようにするためのものであり、例えば顕微鏡と同様の対物レンズを用いることができる。フィルタは、蛍光30を含む所定の範囲の波長の光のみを透過させて検出器に到達させるためのものであり、その範囲を外れる波長を有する、散乱光等のノイズとなる光を除去することができる。
なお、SPFS測定部材16(プラズモン励起センサ16a)、照射手段20および受光手段26からなる構成は、SPR測定部28と称されることがある。SPR測定部28は、蛍光30を測定するのではなく、測定領域38に目的物質が捕捉されることで反射光24の強度が減衰することによって目的物質を定量する、SPR法(表面プラズモン共鳴法)のための装置と基本的に共通する構成を有するためである。一方で、SPFS測定部材16(プラズモン励起センサ16a)、照射手段20および蛍光検出手段32からなる構成は、SPFS測定部34と称されることがある。
制御演算装置40は、照射手段20、受光手段26、蛍光検出手段32、および必要に応じて備えられる送液手段(図示せず)と接続されており、各手段が備える部材の動作を制御することができるとともに、各手段で測定された情報を記録ないし記憶し演算することができるよう、信号が送受信される。制御演算装置40は、所定の制御演算用のプログラムおよび情報を記憶することのできる、パーソナルコンピュータを用いて構成することができる。
制御演算装置40は、たとえば、送液手段が所定の手順で、所定の量の試料や試薬等の溶液を送液し、測定領域38に所定の複合体を形成させた後、照射手段20が所定のタイミングおよび入射角で入射光22を照射し、蛍光検出手段32が測定領域38で発生する蛍光30の強度を測定するよう、プログラムに従って自動的にそれらの各手段を作動させることができる。また、制御演算装置40は、検体ごとに測定される蛍光30の強度のデータを蛍光検出手段32から受信して記憶し、好ましくは直ちに、その測定値をあらかじめ記憶させておいた所定の閾値と対比して、グリーソンスコアの推定結果をさらに記憶するようにしてもよい。
[推定方法]
測定された検体中のGalNAc−PSAの含有量(濃度)から、グリーソンスコアが7以上であると判定するための閾値、およびグリーソンスコアが6以下であると推定するための閾値はそれぞれ、他の診断マーカーまたは腫瘍マーカーについての閾値に準じた一般的な手法によって設定することができる。
たとえば、前立腺癌と確定診断され、グリーソンスコアも検査されている複数の患者に由来する検体について、GalNAc−PSAの濃度を測定したときに、測定値がある濃度以上の集団において実際のグリーソンスコアが7以上である検体が所望の割合以上を占めるようになる濃度を求めることができ、この濃度をグリーソンスコアが7以上であると推定するための閾値とすることができる。前記「所望の比率」が、グリーソンスコアが7以上であるとの推定に関する信頼性、即ち、推定が正しい確率に相当する。測定データの母集団であるサンプル数を多くするほど、信頼性の高い閾値を設定することが可能となる。ある検体中のGalNAc−PSAの含有量(濃度)の測定値を、そのようにして設定された閾値と比較し、測定値が閾値よりも大きければその検体を採取した前立腺癌患者はグリーソンスコアが7以上であると、所定の確率でもって推定することができる。グリーソンスコアが7以上であるという推定をなるべく高い精度で行うことができる閾値を設定し、測定値の濃度が閾値よりも大きいことをもって、侵襲性の高い針生検を行うことなく、グリーソンスコアが7以上であると推定(診断)することができるようになることが望ましい。
上記と同様にして、GalNAc−PSAの濃度を測定したときに、測定値がある濃度以下の集団において実際のグリーソンスコアが6以下である検体が所望の割合以上を占めるようになる濃度を求めることができ、この濃度をグリーソンスコアが6以下であると推定するための閾値とすることができる。グリーソンスコアが7以上と推定するための閾値と、6以下であると推定するための閾値は、異なる値となる可能性が高い。
以上のような、GalNAc−PSAのように特定の糖残基を含む糖鎖を有する糖タンパク質の定量方法、特にSPFS法に基づく定量方法や、そのような含有量を所定の閾値を比較して診断等に用いることのできる特定の情報を得る方法に関して、本明細書に記載されている事項以外の一般的な事項や実施形態のバリエーションについては、例えば、国際公開2010/090264号公報(特許文献4)、特開2013−076666号公報(特許文献5)などを参照することができる。
(1)SPFS測定装置の構築
図2[B]に示す実施形態に準じたSPFS測定装置を自作し、以下の実施例に使用した。照射手段20の光源としては、波長635nmの光を照射することができるレーザーダイオード(LD)を用い、光源と誘電体部材12との間には、減光フィルタ(中性濃度フィルタ)を設けてフォトン量を調整できるようにした。誘電体部材12としては、60度のプリズム(シグマ光機(株))を用いた。この誘電体部材12の上面12aに、次に述べるようにして作製した、透明平面基板13を含むプラズモン励起センサ16aと流路部材16bとからなる部材(センサーチップ)を固定することによって、測定部材16を構成した。蛍光検出手段32の光検出器としては、光電子倍増管(PMT)を用い、集光レンズとして対物レンズを設けた。
(2)流路型SPFS測定部材の作製
屈折率1.72、厚さ1mmのガラス製の透明平面基板((株)オハラ「S−LAL 10」)をプラズマ洗浄し、この基板の片面にクロム薄膜をスパッタリング法によって形成した。その後、その表面にさらに金薄膜をスパッタリング法によって形成した。クロム薄膜の厚さは1〜3nm、金薄膜の厚さは44〜52nmであった。
このようにして金薄膜が形成された基板を、10−カルボキシ−1−デカンチオールを1mM含むエタノール溶液に24時間以上浸漬し、金薄膜の表面に当該分子からなるSAMを形成した。基板をこの溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールで洗浄した後、エアガンを用いて乾燥した。
この基板に、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)0.5mM、水溶性カルボジイミド(WSC)0.5mMおよびカルボキシメチルデキストラン(CMD)(名糖産業(株)「CMD−500−06I4」,平均分子量50万,置換度0.51)1mg/mLを含む25mMのMES緩衝生理食塩水と、10mMのNaCl溶液(pH6.0)とを、それぞれ0.8mLずつ滴下し、20分間反応させてSAMにCMDを結合させることで、プラズモン励起センサの表面にCMD膜を形成した。
CMD膜が形成されたプラズモン励起センサ上に、幅2mm、長さ14mmの貫通穴を有する、厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)製のスペーサーを積載した。さらにその上に、スペーサーの貫通穴の両端に対応する位置に貫通穴を有する、厚さ2mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)製の天板を積載した。プラズモン励起センサ、スペーサーおよび天板を圧着し、ビスで固定することで、天板の貫通穴を通じて試料、試薬等を送液することのできるスペーサーの貫通穴からなる流路を備えた、流路型SPFS測定部材を作製した。
(3)抗体固相化基板の調製
[調製例1]抗PSAモノクローナル抗体固相化基板
上記のように作製した流路型SPFS測定部材に外部流路およびペリスタポンプを接続し、超純水を10分間、その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を20分間、室温(25℃)、流量500μL/分の条件で循環送液させ、プラズモン励起センサの表面を平衡化した。
続いて、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)を50mMと、水溶性カルボジイミド(WSC)を100mMとを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mLを、20分間循環送液した後、抗PSAモノクローナル抗体溶液2.5mLを30分間循環送液することで、CMDに当該抗体を結合させ、抗PSAモノクローナル抗体固相化CMD膜(測定領域)を調製した。
その後、1重量%牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を30分間循環送液することによって、流路内の非特異吸着防止処理を行った。
(4)蛍光標識レクチンの作製
[作製例1]Alexa Fluor 647標識WFA
標記の蛍光標識レクチンを、蛍光物質ラベリングキット「Alexa Fluor(登録商標)647 タンパク質ラベリングキット」(インビトロジェン社)を利用して作製した。WFA(VECTOR Laboratories社「L−1350」)100μg相当と、上記キットに含まれる0.1M重炭酸ナトリウムと、Alexa Fluor 647 reactive dyeとを混合し、室温で1時間反応させた後、ゲル濾過クロマトグラフィーおよび限外濾過を行い、標識に利用されなかったAlexa Fluor 647 reactive dyeを取り除いて、蛍光標識WFAレクチンを得た。その後、吸光度を測定して標記の蛍光標識レクチンの濃度を定量した。
[作製例2]Alexa Fluor 647標識SBA
WFAの代わりにSBA(VECTOR Laboratories社「L-1010」)を用いたこと以外は作製例1と同様にして、標記の蛍光標識SBAを作製し、その濃度を定量した。
[作製例3]Alexa Fluor 647標識VVL
WFAの代わりにVVL(VECTOR Laboratories社「L-1230」)を用いたこと以外は作製例1と同様にして、標記の蛍光標識SBAを作製し、その濃度を定量した。
(5)血清検体中のN−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の末端に有する前立腺特異抗原(GalNAc−PSA)の定量
[実施例1]Alexa Fluor 647標識WFAを用いたSPFS測定
表1に示す各被験試料に含まれるGalNAc−PSAを、抗PSAモノクローナル抗体固相化基板を備えた流路型SPFS測定部材(調製例1)および蛍光標識WFA(作製例1)を用いて、SPFSにより定量した。詳しくは以下の通りである。
Figure 0006729595
被験試料(血清)20μLに希釈溶液100μLを添加し、チューブ内でよく撹拌して混合液を調製した。この混合液100μLを流路に循環送液し、測定領域と60分間反応させた。その後、「Tween(登録商標)20」を0.05重量%含有するTBS(TBS−T)を送液して、3分間洗浄した。続いて、作製例1で得られたAlexa Fluor 647標識WFA溶液(WFA濃度:10μg/mL)100μLを流路に循環送液し、測定領域と10分間反応させた。その後再び、TBS−Tを送液して、5分間洗浄した。そして、TBS−Tで流路を満たした状態で励起光を照射し、Alexa Fluor 647の蛍光強度(シグナル)をSPFSにより測定した。
各被験試料の蛍光強度の測定値と、濃度が既知の調製試料を用いて作成した検量線に基づいて、各被験試料のGalNAc−PSAの濃度(分画量)を算出した。結果を図3に示す。前立腺癌患者に由来する被験試料のうち、グリーソンスコア(GS)が7以上の群と6未満の群との間には統計学的に有意な差(Mann−WhitneyのU検定、P=0.00031)があることが明らかとなった。
上記の結果に基づいて設定した、グリーソンスコアが7以上であること、およびグリーソンスコアが6以下であることについての、被験試料中のGalNAc−PSAの濃度に関するカットオフ値と的中率(予測性能)を、それぞれ表2および表3にまとめる。
Figure 0006729595
Figure 0006729595
[実施例2]Alexa Fluor 647標識SBAを用いたSPFS測定
表1に示した被験試料から、グリーソンスコアが7以上の前立腺癌患者由来の4検体およびグリーソンスコアが6未満の前立腺癌患者由来の4検体の合計8検体をランダムに選択して測定の対象とし、またAlexa Fluor 647標識WFA溶液(WFA濃度:10μg/mL)の代わりに、作製例2で得られたAlexa Fluor 647標識SBA(SBA濃度:10μg/mL)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、Alexa Fluor 647の蛍光強度(シグナル)をSPFSにより測定し、各被験試料のGalNAc−PSAの濃度(分画量)を算出した。
結果を図4に示す。レクチンとしてSBAを用いた場合も、WFAを用いた場合と同様の傾向を示すことが確認された(Mann−WhitneyのU検定、P=0.00428)。
[実施例3]Alexa Fluor 647標識VVLを用いたSPFS測定
表1に示した被験試料のうち、グリーソンスコアが7以上の前立腺癌患者由来の4検体およびグリーソンスコアが6未満の前立腺癌患者由来の4検体の合計8検体をランダムに選択して測定の対象とし、またAlexa Fluor 647標識WFA溶液(WFA濃度:10μg/mL)の代わりに、作製例3で得られたAlexa Fluor 647標識VVL(SBA濃度:10μg/mL)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、Alexa Fluor 647の蛍光強度(シグナル)をSPFSにより測定し、各被験試料のGalNAc−PSAの濃度(分画量)を算出した。
結果を図5に示す。レクチンとしてVVLを用いた場合も、WFAを用いた場合と同様の傾向を示すことが確認された(Mann−WhitneyのU検定、P=0.00141)。
1 SPFSシステム
10 SPFS測定装置
12 誘電体部材
12a 上面
12b 入射側面
12c 反射側面
13 透明平面基板
14 金属薄膜
16 SPFS測定部材(流路型)
16a プラズモン励起センサ
16b 流路部材
18 測定部材装填部
20 照射手段
22 入射光
24 反射光
26 受光手段
28 SPR測定部
30 蛍光
32 蛍光検出手段
34 SPFS測定部
36 流路
38 測定領域
40 制御演算手段
60 SAM
62 支持体
64 抗PSA抗体
80 蛍光標識GalNAc親和性分子
82 GalNAc親和性分子
84 蛍光物質
100 GalNAc−PSA
102 PSAタンパク質
104 非還元末端にGalNAcを有する糖鎖
104a GalNAc
110 非GalNAc−PSA
114 非還元末端にGalNAcを有さない糖鎖

Claims (4)

  1. 前立腺癌の悪性度を表すグリーソンスコア推定に用いることができる情報を得る方法であって、
    検体中の、N−アセチルガラクトサミン残基を糖鎖の非還元末端に有するPSA(Prostate Specific Antigen:前立腺特異抗原)の含有量を測定し、その測定値が閾値よりも大きいことをもってグリーソンスコアが7以上であると推定する、またはその測定値が閾値よりも小さいことをもってグリーソンスコアが6以下であると推定する、グリーソンスコアの推定に用いることができる情報を得る方法。
  2. 前記PSAの定量を、β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子を前記PSAに結合させる工程を含む方法によって行う、請求項1に記載のグリーソンスコアの推定に用いることができる情報を得る方法。
  3. 前記β−N−アセチルガラクトサミン残基に対して親和性を有する分子が、ノダフジレクチン(Westeria floribunda Lectin:WFA)、ダイズ凝集素(Soybean Agglutinin:SBA)またはカラスノエンドウレクチン(Vicia Villosa Lectin:VVL)、あるいは抗β−N−アセチルガラクトサミン抗体である、請求項2に記載のグリーソンスコアの推定に用いることができる情報を得る方法。
  4. 前記PSAの定量を表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)を用いて行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグリーソンスコアの推定に用いることができる情報を得る方法。
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