JP6724584B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents
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Description
地球環境の温暖化防止対策の観点から、電子写真方式の画像形成装置に対しても、省エネルギー化の要請が高まっており、少ないエネルギーで定着できる低温定着トナーの開発が進められている。
一方、トナーに結晶性樹脂を含有させると、トナーが可塑化され柔らかくなってしまうため、定着分離性が低下してしまうという問題があった。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、
前記離型剤が、少なくとも2種類の離型剤A及び離型剤Bからなり、
示差走査熱量測定による降温時に複数の発熱ピークが見られ、
前記複数のピークトップの温度が、いずれも80℃以下に存在し、
前記離型剤Bが、分岐炭化水素系ワックスを含有し、かつ、
含有される前記離型剤のうち、前記離型剤Aの含有量が95〜99質量%の範囲内であり、かつ前記離型剤Bの含有量が1〜5質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
式(1)│TmC−TmWA│<│TmC−TmWB│
式(2)│TmC−TmWA│≦10
トナーの結晶化ピーク(発熱ピーク)は、結晶性をもつ離型剤と結晶性樹脂に由来する。離型剤と結晶性樹脂は、単独ではそれぞれの組成に固有の結晶化ピークが得られるが、トナーに離型剤と結晶性樹脂を併用する場合、結晶性樹脂と離型剤の親和性が高いものを添加するとピークが一体化しやすい。これは、離型剤と結晶性樹脂がそれぞれの単独の結晶とは異なる構造体を形成するためである。
このような単独の結晶とは異なる構造体を形成することで、トナーを定着する際の溶融性や浸み出し性が変化する。特に、低分子である離型剤が先に結晶化してドメインを形成し、高分子である結晶性樹脂が離型剤に誘起されて離型剤ドメインの周辺に結晶性樹脂の結晶ドメインを形成する場合には、定着時の熱が先に結晶性樹脂のドメイン融解に使われる。よって、離型剤ドメインの融解及びトナー表面への浸み出しが遅くなり、定着分離性が悪化すると考えられる。
そこで、本発明においては、結晶性樹脂と離型剤の親和性を低くし、示差走査熱量測定による降温時の発熱ピークが二つ以上となる状態、すなわち離型剤と結晶性樹脂が相互作用せず別々の結晶ドメインを形成することで、低温定着性と定着分離性の両立が可能となると考えている。
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と、離型剤と、着色剤とを含有する静電潜像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、前記離型剤が、少なくとも2種類の離型剤A及び離型剤Bからなり、示差走査熱量測定による降温時に複数の発熱ピークが見られ、かつ前記複数のピークトップの温度が、いずれも80℃以下に存在することを特徴とする。
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:DSC)による降温時にみられる複数の発熱ピークとは、降温速度10℃/minで測定した際にみられる発熱ピークであり、発熱量|ΔH|が0.5J/g以上のものをいう。複数のピークは、ピークトップが分離していればよく、ピークトップの強度は高温側が大きくても低温側が大きくてもどちらでもよい。また、複数のピークは、二つのピークであることがより好ましい。
なお、複数のピークトップ温度は、いずれも30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。本願において、「ピークトップ」とは、DSC曲線において発熱ピークの高さ(発熱量)が極大となる点をいい、当該極大点に対応する位置の温度を「ピークトップ温度」という。
試料5mgをアルミニウム製パンKITNO.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、昇温、降温、昇温の順に温度を変動させる。1回目と2回目の昇温時には、10℃/minの昇温速度で0℃から100℃まで昇温して100℃を1分間保持し、降温時には、10℃/minの降温速度で100℃から0℃まで降温して0℃の温度を1分間保持する。降温時に得られる曲線における、発熱量|ΔH|が0.5J/g以上のピークを発熱ピークとして扱う。
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー母体粒子を含有し、少なくとも結着樹脂と離型剤と、着色剤とを含んで構成されている。
本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー母体粒子又はトナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
本発明に係る結着樹脂は、少なくとも結晶性樹脂を含有する。結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
また、本発明に係る結着樹脂は、非晶性樹脂を含有していることも好ましく、特にスチレン・アクリル樹脂であることが好ましい。
本発明に係る結晶性樹脂は、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂が用いられうるが、なかでも結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。これは、結晶性ポリエステル樹脂が融解温度や結晶構造を制御しやすく、トナー加熱時に溶融して非晶性ポリエステル樹脂へ相溶して非晶性ポリエステル樹脂を軟化する効果をもつためである。
ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
上記の多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率としては、多価カルボン酸成分のカルボキシ基に対する多価アルコール成分のヒドロキシ基の当量比を、1.5/1〜1/1.5の範囲内とすることが好ましく、1.2/1〜1/1.2の範囲内とすることがより好ましい。
具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。
アルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。
これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度や重合時間は特に限定されるものではなく、重合中には必要に応じて反応系内を減圧してもよい。
上記形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向をより高めることができ、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を向上させることができる。
なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、更に、スルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル樹脂ユニット中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニット中であってもよい。
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂ユニットは、上記結晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。
また、非晶性樹脂ユニットは、当該ユニットと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂ユニットである。
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。さらに例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂ユニット)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらも同種の樹脂である。
ビニル樹脂ユニットとしては、ビニル単量体が重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂ユニット、スチレン・アクリル酸エステル樹脂ユニット、エチレン・酢酸ビニル樹脂ユニットなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン・アクリル樹脂ユニットの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとを分子結合させた構造の共重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
この方法では、まず、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体(好ましくは、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体といったビニル単量体)を付加反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。
次に、非晶性樹脂ユニットの存在下で、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。このとき、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合反応させるとともに、非晶性樹脂ユニットに対し、多価アルコール成分又は多価カルボン酸を付加反応させることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が形成される。
若しくは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの形成時、多価アルコール成分又は多価カルボン酸成分と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂ユニットと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
上記の方法を用いることにより、非晶性樹脂ユニットに結晶性ポリエステル樹脂ユニットが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
この方法では、まず、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを重縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する。また、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成する反応系とは別に、上述した非晶性樹脂ユニットを構成する単量体を付加重合させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル樹脂ユニット及び非晶性樹脂ユニットと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル樹脂ユニットと非晶性樹脂ユニットとが分子結合した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成することができる。
この方法では、まず、多価アルコール成分と多価カルボン酸とを重縮合反応させて、結晶性ポリエステル樹脂ユニットを形成しておく。
次に、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの存在下で、非晶性樹脂ユニットを構成する単量体を重合反応させて非晶性樹脂ユニットを形成する。このとき、上記(1)と同様に、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性樹脂ユニット中に、これらユニットが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
上記(1)〜(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は非晶性樹脂ユニット鎖に結晶性ポリエステル樹脂ユニット鎖をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を形成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。
(1)の方法は、非晶性樹脂ユニットをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル樹脂ユニットを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂ユニットの配向が均一になりやすい。したがって、本発明で規定するトナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
本発明に係る非晶性樹脂は、特に非晶性ビニル系樹脂であるスチレン・アクリル樹脂や、非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
本発明に係る非晶性ビニル系樹脂は、ビニル基を有する単量体(以下、「ビニル単量体」という。)を用いて形成されるものであり、非晶性ビニル樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、中でも、スチレン・アクリル樹脂であることが好ましい。
本発明において、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定により得られる吸熱曲線において、昇温時に明確な吸熱ピークを有さない樹脂と定義される。ここで、「明確な吸熱ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。吸熱曲線は、例えば、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定することができる。
ビニル単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル系単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど。
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど。
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど。
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど。
(7)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
また、ビニル単量体としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものが挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなどが挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。
リン酸基を有する単量体としては、アシドホスホオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
非晶性ビニル樹脂の結着樹脂中における含有率は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも2種類の離型剤A及び離型剤Bを含有している。結晶性樹脂の融点、離型剤Aの融点及び離型剤Bの融点が下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1)│TmC−TmWA│<│TmC−TmWB│
離型剤Aの融点と離型剤Bの融点が式(1)の関係を満たすことで、種類の異なる離型剤Bを添加された離型剤Aの離型機能がより高まる点で好ましい。
本発明において、結晶性樹脂の融点、離型剤Aの融点及び離型剤Bの融点は、それぞれについて、示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより求めることができる。示差走査熱量測定には、例えば、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いることができる。
上記測定において、1回目の昇温過程により得られた吸熱曲線から解析を行い、吸熱ピークのピークトップ温度を、融点(℃)とする。
当該範囲内とすることにより、定着分離性を向上させることができる点から好ましい。
離型剤Bとしては、マイクロクリスタリンワックスなどの分岐鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス(例えば、フィッシャー・トロプシュワックス)、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックスが好ましく、特にマイクロクリスタリンワックスが好ましい。
エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステルのいずれも用いることができ、例えば、下記一般式(1)〜(3)で表される構造を有する高級脂肪酸及び高級アルコールのエステル類、下記一般式(4)で表される構造を有するトリメチロールプロパントリエステル類、下記一般式(5)で表される構造を有するグリセリントリエステル類、下記一般式(6)で表される構造を有するペンタエリスリトールテトラエステル類などを挙げることができる。
一般式(1) R1−COO−R2
一般式(2) R1−COO−(CH2)n−OCO−R2
一般式(3) R1−OCO−(CH2)n−COO−R2
一般式(1)〜(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数13〜30の炭化水素基を表す。R1及びR2は、同一であっても、異なっていてもよい。nは、1〜30の整数を表す。
R1及びR2は、炭素数13〜30の炭化水素基を表すが、好ましくは炭素数17〜22の炭化水素基である。
nは、1〜30の整数を表すが、好ましくは1〜12の整数を表す。
R1〜R4が有してもよい置換基としては、本発明の効果を阻害しない範囲において特に限定されず、例えば、直鎖又は分岐アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基、非芳香族複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基、アミノ基、ハロゲン原子、フッ化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、シリル基、重水素原子等が挙げられる。
式(1−1) CH3−(CH2)12−COO−(CH2)13−CH3
式(1−2) CH3−(CH2)14−COO−(CH2)15−CH3
式(1−3) CH3−(CH2)16−COO−(CH2)17−CH3
式(1−4) CH3−(CH2)16−COO−(CH2)21−CH3
式(1−5) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)17−CH3
式(1−6) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)21−CH3
式(1−7) CH3−(CH2)25−COO−(CH2)25−CH3
式(1−8) CH3−(CH2)28−COO−(CH2)29−CH3
上記一般式(2)及び一般式(3)で表される構造を有するジエステルの具体例としては、例えば、以下の式(2−1)〜(2−7)、及び式(3−1)〜(3−3)で表される構造を有する化合物を例示することができる。
式(2−1) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)4−OCO−(CH2)20−CH3
式(2−2) CH3−(CH2)18−COO−(CH2)4−OCO−(CH2)18−CH3
式(2−3) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)2−OCO−(CH2)20−CH3
式(2−4) CH3−(CH2)22−COO−(CH2)2−OCO−(CH2)22−CH3
式(2−5) CH3−(CH2)16−COO−(CH2)4−OCO−(CH2)16−CH3
式(2−6) CH3−(CH2)26−COO−(CH2)2−OCO−(CH2)26−CH3
式(2−7) CH3−(CH2)20−COO−(CH2)6−OCO−(CH2)20−CH3
式(3−1) CH3−(CH2)21−OCO−(CH2)6−COO−(CH2)21−CH3
式(3−2) CH3−(CH2)23−OCO−(CH2)6−COO−(CH2)23−CH3
式(3−3) CH3−(CH2)19−OCO−(CH2)6−COO−(CH2)19−CH3
上述のように、本発明に係る離型剤として、マイクロクリスタリンワックスを使用してもよい。
ここで、マイクロクリスタリンワックスとは、石油ワックスの中で、主成分が直鎖状炭化水素(ノルマルパラフィン)であるパラフィンワックスとは異なり、直鎖状炭化水素の他に分岐鎖状炭化水素(イソパラフィン)や環状炭化水素(シクロパラフィン)を多く含むワックスをいい、一般に、マイクロクリスタリンワックスは、低結晶性のイソパラフィンやシクロパラフィンが多く含有されているために、パラフィンワックスに比べて結晶が小さく、分子量が大きいものである。
マイクロクリスタリンワックスにおける分岐の有無及びその割合は、具体的には、下記条件における13C−NMR測定方法により得られるスペクトルにより、下記式(i)により算出することができる。
式(i):分岐の割合(%)=(C3+C4)/(C1+C2+C3+C4)×100
式(i)中、C1は1級炭素原子に係るピーク面積、C2は2級炭素原子に係るピーク面積、C3は3級炭素原子に係るピーク面積、C4は4級炭素原子に係るピーク面積を表す。
測定装置 :FT NMR装置 Lambda400(日本電子社製)
測定周波数 :100.5MHz
パルス条件 :4.0μs
データポイント:32768
遅延時間 :1.8sec
周波数範囲 :27100Hz
積算回数 :20000回
測定温度 :80℃
溶媒 :ベンゼン−d6/o−ジクロロベンゼン−d4=1/4(v/v)
試料濃度 :3質量%
試料管 :径5mm
測定モード :1H完全デカップリング法
着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
カラーのトナーを得るための着色剤としては、染料、有機顔料などの公知のものを任意に使用することができ、有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同238、同269、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントブルー15:3、同60、同76などを挙げることができ、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同68、同11、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同69、同70、同93、同95などを挙げることができる。
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2〜8質量部の範囲内である。
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部の範囲内とされる。
本発明に係るトナー母体粒子は、そのままで本発明の静電潜像現像用トナーを構成することができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、当該トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤などの外添剤を添加してもよい。
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、光沢処理が行われていることが好ましい。
[トナー母体粒子の製造方法]
本発明に係るトナー母体粒子の製造方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法等を挙げることができるが、中でも乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コスト及び製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。
昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。
当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて上記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子の分散液[a1]を調製した。
スチレン 520質量部
n−ブチルアクリレート 212質量部
メタクリル酸 68質量部
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、当該溶液を80℃に加熱後、80質量部の樹脂粒子の分散液[a1](固形分換算)と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液[b]とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社製、「CLEARMIX」(登録商標))により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
スチレン 276質量部
n−ブチルアクリレート 104質量部
メタクリル酸 20質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
離型剤1(ベヘン酸ベヘニル) 181質量部
離型剤5(マイクロクリスタリン) 10質量部
次いで、上記分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、得られた分散液を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子の分散液[b1]を調製した。
さらに、樹脂粒子の分散液[b1]にイオン交換水400質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、上記分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)からなる非晶性樹脂粒子分散液(「非晶性分散液」ともいう。)A1を調製した。
スチレン 344質量部
n−ブチルアクリレート 129質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 12質量部
得られた非晶性分散液A1について物性を測定したところ、非晶性樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50v)は210nmであり、ガラス転移温度(Tg)は45℃であり、重量平均分子量(Mw)は21000であった。
第2段重合における離型剤1及び離型剤5を、表1に示す離型剤及び比率に変更した以外は非晶性分散液A1の調製と同様にして、表3に示すとおり非晶性樹脂粒子分散液(非晶性分散液)A2〜A6、A8〜A14のそれぞれを得た。なお、非晶性分散液A1〜A6及びA8〜A14については、表3に示すように、非晶性樹脂に離型剤が含有されている。
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、及び精留塔を備えた反応容器に、多価カルボン酸成分として、テレフタル酸139.5質量部、イソフタル酸15.5質量部及び多価アルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンプロピレンオキサイド2モル付加物(分子量=460)290.4質量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンエチレンオキサイド2モル付加物(分子量404)60.2質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(OBu)4を2.0質量%となる量を投入した。
さらに、生成される水を留去しながら反応系の温度を同温度から6時間かけて240℃に上昇させ、さらに240℃に維持した状態で脱水縮合反応を9時間継続して行い、非晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた非晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量(Mw)が22000であった。
その後、得られた非晶性ポリエステル樹脂をハンマーミルで粗粉砕したものを徐々に添加して撹拌し、完全に溶解させて油相となるポリエステル樹脂溶液を得た。
次いで、撹拌されている油相に希アンモニア水溶液を数量滴下して、さらに、この油相をイオン交換水に滴下して転相乳化させた後、エバポレーターで減圧しながら溶剤の除去を行った。
テトラデカン二酸259質量部及び1,4−ブタンジオール75質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れた。反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、Ti(OBu)4を0.1質量部添加し、得られた混合液を窒素ガス気流下、約180℃で8時間撹拌し、反応を行った。
さらに、当該混合液にTi(OBu)4を0.2質量部添加し、当該混合液の温度を約220℃に上げ6時間、当該混合液を撹拌し、反応を行った。
その後、反応容器内の圧力を1333.2Paまで減圧し、減圧下で反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。結晶性ポリエステル樹脂1の重量平均分子量(Mw)は18000であり、融点(Tm)は70℃であった。
1,4−ブタンジオールを1,6−ヘキサンジオールに変更する以外は結晶性ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。結晶性ポリエステル樹脂2の重量平均分子量(Mw)は、19200であり、融点(Tm)は73℃であった。
テトラデカン二酸をドデカン二酸に、1,4−ブタンジオールを1,10−デカンジオールに変更する以外は結晶性ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂3を得た。結晶性ポリエステル樹脂3の重量平均分子量(Mw)は19000であり、融点(Tm)は78℃であった。
結晶性ポリエステル樹脂1を30質量部溶融させた状態で、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)へ毎分100質量部の移送速度で移送した。
同時に、濃度0.37質量%の希アンモニア水を熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で上記乳化分散機へ移送した。上記希アンモニア水は、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈して調製した。
そして、上記乳化分散機を、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm2(490kPa)の条件で運転することにより、固形分量が30質量部である結晶性ポリエステル樹脂1の結晶性樹脂粒子分散液(結晶性分散液)1を調製した。
結晶性分散液1における結晶性ポリエステル樹脂1の粒子の体積基準のメジアン径(D50v)は210nmであった。
結晶性ポリエステル樹脂1に代えて結晶性ポリエステル樹脂2を用いる以外は結晶性分散液1の調製と同様にして、結晶性樹脂粒子分散液(結晶性分散液)2を調製した。結晶性分散液2における結晶性ポリエステル樹脂2の粒子のD50vは220nmであった。
結晶性ポリエステル樹脂1に代えて結晶性ポリエステル樹脂3を用いる以外は結晶性分散液1の調製と同様にして、結晶性樹脂粒子分散液(結晶性分散液)3を調製した。結晶性分散液3における結晶性ポリエステル樹脂2の粒子のD50vは200nmであった。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。
次いで、得られた分散液を、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子が分散されてなる着色剤粒子分散液(着色剤分散液)Bkを調製した。着色剤分散液Bkにおける体積基準のメジアン径D50vを、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、120nmであった。
離型剤としてベヘン酸ベヘニル(離型剤1):377.5質量部及びマイクロクリスタリン(離型剤5):72.5質量部、ラウリル硫酸ナトリウム50質量部及びイオン交換水3500質量部を80℃に加熱して、IKA社製のウルトラタラクスT50にて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積基準のメジアン径が190nmの離型剤の粒子が分散された離型剤粒子分散液(W)を調製した。
下記成分を下記の量で含有する、両反応性モノマー(アクリル酸)を含む単量体混合液4を滴下ロートに入れた。ジ−t−ブチルパーオキサイドは、重合開始剤である。
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
ジ−t−ブチルパーオキサイド 16質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
100質量部のシェル用非晶性樹脂s1を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、得られた混合液を、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(株式会社日本精機製作所製)によって、V−LEVELが300μAの条件で30分間超音波分散後した。その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を用いて上記混合液を減圧下で3時間撹拌して酢酸エチルを完全に除去した。こうして、固形分量が13.5質量%のシェル用樹脂粒子分散液(シェル用分散液)S1を調製した。シェル用分散液S1におけるシェル用樹脂粒子の体積基準のメジアン径(D50v)は160nmであった。
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、288質量部の非晶性分散液A1(固形分換算)及び2000質量部のイオン交換水を投入した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液をさらに添加して当該反応容器中の分散液のpHを10(測定温度25℃)に調整した。
上記分散液に、30質量部の着色剤分散液Bk(固形分換算)を投入した。次いで、凝集剤として塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて上記分散液に添加した。
「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて上記混合液中で会合した粒子の粒径を測定し、当該粒子の体積基準のメジアン径D50vが6.0μmになった時点で、37質量部のシェル用分散液S1(固形分換算)を上記混合液に30分間かけて投入した。
次いで、冷却した上記反応液から上記粒子を分離、脱水し、得られたケーキを、イオン交換水への再分散と固液分離とを3回繰り返して洗浄し、その後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子1を得た。
非晶性分散液A1に代えて非晶性分散液及び結晶性樹脂粒子分散液を表2及び表3に示したように変更すること以外はトナー母体粒子1の製造と同様にして、トナー母体粒子2〜6、8〜16をそれぞれ製造した。
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂分散液A7を374質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液1を46質量部(固形分換算)、離型剤粒子分散液(W)を37質量部(固形分換算)及びイオン交換水2000質量部を投入後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、着色剤粒子の水系分散液(Bk)24質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。
その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて85℃まで昇温し、85℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径が6.0μmになった時点で、37質量部のシェル用分散液S1(固形分換算)を上記混合液に30分間かけて投入した。
さらに、上記反応液を80℃に加熱し撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、上記反応液中の粒子を測定装置「FPIA−2100」(シスメックス株式会社製)を用いて(HPF検出数を4000個)測定し、当該粒子の平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/分の冷却速度で上記反応液を30℃に冷却した。
次いで、冷却した上記反応液から上記粒子を分離、脱水し、得られたケーキを、イオン交換水への再分散と固液分離とを3回繰り返して洗浄し、その後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子7を得た。
100質量部のトナー母体粒子1〜16に対し、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、これらを「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業株式会社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去した。このような外添剤処理を行って、静電潜像現像用のトナー粒子1〜16を製造した。
トナー粒子1〜16と、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径32μmのフェライトキャリアとを、トナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合した。こうして、二成分現像剤であるトナー1〜16を製造した。
表4に各トナーの構成及び各材料の融点を示し、表5に各トナーの評価結果について示した。なお、表4に示した離型剤は、トナーに含まれる離型剤を表している。
(融点測定)
結晶性樹脂の融点、離型剤Aの融点及び離型剤Bの融点は、それぞれについて、示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより求めた。示差走査熱量測定には、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いた。
測定は、各材料3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットして行った。リファレンスとして空のアルミニウム製パンを使用した。
また、測定は、昇温速度10℃/minで室温(25℃)から150℃まで昇温し、5分間150℃で等温保持する1回目の昇温過程、冷却速度10℃/minで150℃から0℃まで冷却し、5分間0℃で等温保持する冷却過程、及び昇温速度10℃/minで0℃から150℃まで昇温する2回目の昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって行った。
上記測定において、1回目の昇温過程により得られた吸熱曲線から解析を行い、吸熱ピークのトップ温度を、融点(℃)とした。
各色トナーのトナー粒子を、熱分析装置「Diamond DSC」(パーキンエルマー社製)を用いて前述の条件で測定することにより、DSC曲線が得られた。得られたDSC曲線から各トナーの発熱ピーク数、降温時の発熱ピーク温度を測定した。
一例として、トナー1の測定結果を図1に示した。図1のDSC曲線では、二つの発熱ピークが見られ、高温側のピークトップ温度は68.10℃であった。また、二つの発熱ピークの発熱量|ΔH|は、17.8589J/gであった。
複写機「bizhub PRO(登録商標)C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を、定着用ヒートローラの表面温度を90〜210℃の範囲で変更することができるように改造したものに上記のトナー1〜16をそれぞれ装填した。評価紙として、「NPi上質紙(128g/m2)」(日本製紙社製)を用い、常温常湿(温度20℃、相対湿度55%)において、トナー付着量8mg/10cm2のベタ画像を定着させる定着実験を、設定される定着温度を95℃から5℃刻みで増加させるよう変更しながら200℃まで繰り返し行った。
ランク5:全く折れ目なし
ランク4:一部折れ目に従った剥離あり
ランク3:折れ目に従った細かい線状の剥離あり
ランク2:折れ目に従った太い線状の剥離あり
ランク1:大きな剥離あり
◎:最低定着温度が150℃以下
○:最低定着温度が150℃を超え160℃以下
△:最低定着温度が160℃を超え180℃以下
×:最低定着温度が180℃を超える
複写機「bizhub PRO(登録商標)C6501」(コニカミノルタ株式会社製)において、定着装置を、定着用ヒートローラの表面温度を90〜210℃の範囲で変更することができるように改造したものに上記のトナー1〜16をそれぞれ装填した。定着装置を加熱ローラーの表面温度を190℃に設定し、常温常湿(温度20℃、相対湿度55%)において、縦送りで搬送したA4サイズの記録紙「OKプリント上質(52.3g/m2)(王子製紙社製)」上に、トナー付着量8mg/10cm2の加熱ローラーの軸方向に伸びる10cm幅のベタ帯状画像を定着させ、その分離性を下記の評価基準に従って評価した。なお、「◎」、「○」、「△」が合格レベルとする。
◎:記録紙がカールすることなく加熱ローラーと分離できる、画像劣化なし
○:記録紙がカールすることなく加熱ローラーと分離できる、ごく軽微な画像劣化あり
△:記録紙が加熱ローラーと分離するが、画像上に白スジが観察される
×:加熱ローラーヘの巻付きが発生してしまい当該加熱ローラーと分離できない
Claims (9)
- 少なくとも結着樹脂と、離型剤と、着色剤とを含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、
前記離型剤が、少なくとも2種類の離型剤A及び離型剤Bからなり、
示差走査熱量測定による降温時に複数の発熱ピークが見られ、
前記複数のピークトップの温度が、いずれも80℃以下に存在し、
前記離型剤Bが、分岐炭化水素系ワックスを含有し、かつ、
含有される前記離型剤のうち、前記離型剤Aの含有量が95〜99質量%の範囲内であり、かつ前記離型剤Bの含有量が1〜5質量%の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。 - 前記結晶性樹脂の融点(TmC)及び前記離型剤Aの融点(TmWA)及び前記離型剤Bの融点(TmWB)が、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
式(1)│TmC−TmWA│<│TmC−TmWB│ - 前記結晶性樹脂及び前記離型剤Aの融点が、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
式(2)│TmC−TmWA│≦10 - 前記複数の発熱ピークが、二つの発熱ピークであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記離型剤Bが、炭化水素系ワックスを含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結着樹脂が、さらに非晶性ビニル系樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結着樹脂が、さらに非晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 重量平均分子量が、2〜8万の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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