以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図20は、一実施の形態による乳母車1を説明するための図である。このうち、図1は、一実施の形態による乳母車1を正面方向から示す図である。図1に示す乳母車1では、乳母車本体2に、第1座ユニット8a及び第2座ユニット8bが支持されている。第1座ユニット8a及び第2座ユニット8bは、乳幼児が着座する場所であり、左右に並べて配置されている。座ユニット8a、8bに着座した乳幼児を日差しや風から保護するよう、各座ユニット8a、8bには、幌9a、9bが設けられている。
なお、本明細書中において、乳母車1及びその構成要素に対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車1を、ハンドル20を把持しながら操作する操作者を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」を意味する。さらに詳しくは、「前後方向d1」とは、図1における紙面の表裏方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、ハンドルを押す操作者が向く側であり、図1における紙面の表側が前となる。一方、「上下方向d3」とは前後方向に直交するとともに接地面に直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向d3」とは鉛直方向をさす。また、「左右方向d2」とは幅方向でもあって、「前後方向d1」及び「上下方向d3」のいずれにも直交する方向である。
図2に、乳母車1を座ユニット8a、8bを取り外した状態で側方から示す。図2に示す乳母車本体2は、フレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20とにより構成されている。
フレーム本体10において、複数の車輪ユニット4が支持されたベースフレーム11に、2つの座ユニット8a、8bを支持する上部フレーム12が接続されている。上部フレーム12は、ベースフレーム11に対して傾いた状態で支持されている。上部フレーム12の前方領域とベースフレーム11の前方領域とが前方リンク部材13を介して接続され、上部フレーム12の中間領域とベースフレーム11の後方領域とが中間リンク部材14を介して接続されている。前方リンク部材13及び中間リンク部材14は、リンクとして機能し、上部フレーム12がベースフレーム11に対して回動することを可能にする。
とりわけ、ベースフレーム11には、左右方向d2に離間して配置された左右の前後連結部分11a、11bが設けられている。左右の前後連結部分11a、11bは、前後方向d1に沿って延び、当該左右の前後連結部分11a、11bの後端に、後方連結部分11cが連結されている。
各前後連結部分11a、11bは、その前方領域に前輪用の車輪ユニット4が取り付けられ、その後方領域に後輪用の車輪ユニット4が取り付けられている。図3及び図4に、それぞれ、前方用の車輪ユニット4及び後方用の車輪ユニット4を示す。図3及び図4に示すように、車輪ユニット4を構成する要素として、車輪41に車軸42が接続され、当該車軸42を車軸保持体43が回転可能に支持している。
図3に示すように、前方用の車輪ユニット4には、2つの車輪41が設けられ、当該2つの車輪41は車軸42の両端に回転可能に支持されている。車軸42は、水平面に平行な方向に長手軸をもち、2つの車輪41に共通の回転軸線Ar1を画定している。前方用の車軸保持体43が、2つの車輪41の間で車軸42を支持している。この前方用の車軸保持体43は、いわゆるキャスターとして構成されている。すなわち、車軸保持体43は、回転軸線Ar1を中心として車軸42を回転可能に支持し、且つ、回転軸線Ar1と非平行、本実施の形態では直交する方向に平行な旋回軸線As1を中心として車軸42を回転させることができる。すなわち、前方の車輪41は、自転可能であると共にその向きを変更可能となるように車軸保持体43によって支持されている。
とりわけ、図3に示す車軸保持体43を構成する要素として、ベースフレーム11の前後連結部分11a、11bに固定体43aが固定され、当該固定体43aに対して回転体43cがキャスター軸43bを介して回転可能に設けられている。キャスター軸43bは、上下方向d3に平行な長手軸をもち、キャスター軸線As1を画定している。また、回転体43cには、車軸42が挿入される貫通孔43dが形成されている。車軸42が貫通孔43dに挿入されることにより、車軸42が回転体43cに回転可能に支持される。
これに対して、後方用の車輪ユニット4では、図4に示すように、1つの車輪41が車軸42の一端に接続され、回転軸線Ar2を中心として回転可能となるように支持され、旋回可能にはなっていない。車軸42は、左右方向d2に平行な方向に長手軸をもち、車輪41の回転軸線Ar2を画定している。車軸42の他端は、駆動要素51、52に接続されている。駆動要素51、52については、図6及び図7を参照して後述する。
図4に示す後方用の車軸保持体43は、キャスターとして構成されていない。すなわち、図4に示す後方用の車軸保持体43は、回転軸線Ar2を中心として車軸42を回転可能に支持し、車輪41の向きを一定に維持している。
図2に戻って、このように、前後連結部分11a、11bは、前後方向d1に並んだ2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間に掛け渡され当該2つの車軸保持体43の各々に連結されている。前後連結部分11a、11bは、前方の車輪41と後方の車輪41との間隔を一定に保つべく、全体が一体として変形するリジットフレームとして構成されている。すなわち、前後連結部分11a、11bは、その一部が他の部分に対して回転したり、あるいは、ずれたりしない。図2に示す例では、前後連結部分11a、11bは、単一のパイプを曲げることで一体に成形されている。
後方連結部分11cは、ティッピングバーとも呼ばれる。ティッピングバー11cは、操作者が足を掛け乳母車1の操縦を補助するための部分である。また、本実施の形態によるティッピングバー11cは、ベースフレーム11の骨格の一部を構成し、ベースフレーム11の剛性を高めている。図2に示すように、ティッピングバー11cを構成する要素として、左右の前後連結部分11a、11bの後端に左右の湾曲領域11d、11eが接続され、左右の湾曲領域11d、11eの間を中間領域11fが連結している。
湾曲領域11d、11eは、前後方向d1に沿った前後連結部分11a、11bと、左右方向d2に沿った中間領域11fと、を繋ぐ部分を構成する。図2に示す各湾曲領域11d、11eは、前後方向d1に沿って後方に向かうほど、左右方向d2における中央に近づくように湾曲している。
中間領域11fは、ティッピングバー11cのうちの操作者の足が掛けられる領域を構成する。図2に示す中間領域11fは、後方の車輪41よりも後方となる位置で左右方向d2に沿って直線状に延びている。
かかるティッピングバー11cを構成する左右の湾曲領域11d、11eと中間領域11fとは、一体に成形されている。さらには、ティッピングバー11cは、左右の前後連結部分11a、11bとも一体に成形され、ベースフレーム11を構成している。この場合、ベースフレーム11の強度を維持しつつ、部品点数を削減することに大きく貢献する。とりわけ、本実施の形態では、前後連結部分11a、11b及びティッピングバー11cは、単一のパイプを曲げることで一体に成形されている。ただし、前後連結部分11a、11b及びティッピングバー11cは、別個に成形されたパイプを連結して構成されてもよく、その具体的な態様は特に限定されない。
上部フレーム12には、左右方向d2に離間して配置された左右の側上部フレーム12a、12bが設けられている。左右の側上部フレーム12a、12bの間には、中間フレーム12cが配置されている。本実施の形態では、左側の側上部フレーム12aと中間フレーム12cとの間に第1座ユニット8aが配置され、右側の側上部フレーム12bと中間フレーム12cとの間に第2座ユニット8bが配置されている。
左右の側上部フレーム12a、12b及び中間フレーム12cの後端は、後方上部フレーム12dにより連結されている。後方上部フレーム12dには、ハンドル20が取り付けられている。ハンドル20は、操作者の手で操作される部分である。ハンドル20については、図10乃至図17を参照して後述する。
なお、図示する例では、左右の側上部フレーム12a、12bと後方上部フレーム12dとが、単一のパイプを曲げて成形することにより一体に形成されている。ただし、左右の側上部フレーム12a、12bと後方上部フレーム12dとは、別個の部品として形成されていてもよい。
左右の側上部フレーム12a、12bの前端は、横連結バー12e及び上部側リンクフレーム13aにより連結されている。このうち、横連結バー12eは、左右方向d2に沿って直線状に形成され、横連結バー12eの中間領域に中間フレーム12cの前端が接続されている。
上部側リンクフレーム13aは、リンクとして機能し、横連結バー12eよりも前方となる領域に突き出した湾曲した形状をもつ。そして、上部側リンクフレーム13aの前方領域と左右の前後連結部分11a、11bの前端とに、ベース側リンクフレーム13bが掛け渡されている。ベース側リンクフレーム13bは、その前端において上部側リンクフレーム13aに固着され、その左右の後端は、横連結リンクバー13cを介して左右の側ベースフレーム11a、11bに回動可能に接続されている。横連結リンクバー13cは、左右方向d2に沿って直線状に形成され、左右の側ベースフレーム11a、11bの前端に回動可能に接続されている。上部側リンクフレーム13aとベース側リンクフレーム13bと横連結リンクバー13cとにより、リンクとして機能する前方リンク部材13が構成される。
なお、左右の中間リンク部材14は、左右の側上部フレーム12a、12bの中間領域と左右の前後連結部分11a、11bの後方領域とに掛け渡されている。各中間リンク部材14は、リンクとして機能し、側上部フレーム12a、12b及び前後連結部分11a、11bの両方に対して回動可能になっている。
以上のようなフレーム構造をもつ乳母車1は、図1及び図2に示す展開状態から、図5に示す折畳状態に折り畳むことができる。図5は、図2に示す乳母車1を折畳状態にて側方から示す図である。
まず、側上部フレーム12a、12bと上部側リンクフレーム13aとのロックを解除し、ハンドル20を自重を利用して下方に下ろしていく。この動作によって、上部側リンクフレーム13a、ベース側リンクフレーム13b及び中間リンク部材14が図2中反時計回り方向に回動して、上部フレーム12がベースフレーム11に重なるように折り畳まれていく。
以上の折り畳み動作の結果、図5に示すように、ベースフレーム11と上部フレーム12とが、乳母車1の側面視において接近して略平行に配置される。図5に示す状態において、ハンドル20は、一対の前後連結部分11bとティッピングバー11cとにより囲まれる空間S内に収まる。すなわち、折り畳み動作によって、ハンドル20は、一対の前後連結部分11bとティッピングバー11cとにより囲まれる空間S内に挿入される。
とりわけ、図2に示す展開状態と、図5に示す折畳状態と、の間で、各前後連結部分11a、11bに連結された2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間の間隔spが一定に維持されている。すなわち、各前後連結部分11a、11bは、折り畳み動作の前後において、当該前後連結部分11a、11bに連結された2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間の間隔spを一定に維持するようになっている。
なお、乳母車1を図5に示す折り畳み状態から、図2に示す展開状態に戻すためには、上述した折畳操作と逆の手順を踏めばよい。
ところで、本実施の形態による乳母車1では、操作者の負担を軽減すべく、車輪ユニット4の車軸42に駆動要素51、52が接続されている。ただし、背景技術の欄で説明したように、従来の乳母車はいわゆる自走式の乳母車として構成されていたため、意図した通りに乳母車を操作することは容易ではなかった。そこで、本実施の形態による乳母車1は、操作者の走行操作に応じて車輪41に駆動力を提供する補助駆動式の手押し乳母車として構成されている。
図6に、車輪ユニット4の駆動を補助する機構をブロック図にて模式的に示す。図6に示すように、複数の車輪ユニット4のうちのいくつかに、駆動要素51、52が接続されている。駆動要素51、52は、車輪ユニット4を駆動させる構成要素、換言すれば、車輪ユニット4に駆動力を提供する構成要素である。本実施の形態では、2つの駆動要素すなわち第1駆動要素51及び第2駆動要素52が設けられ、第1駆動要素51が左後方の車輪41を駆動し、第2駆動要素52が右後方の車輪41を駆動するようになっている。
図7に、駆動要素51、52の周辺を拡大して示す。図7に示す駆動要素51、52は、車軸42を駆動させる直流モータとして構成されている。図7に示す例では、直流モータ51、52の主軸に、不図示の動力伝達要素(例えばギア)を介して車軸42の端部が連結されている。なお、車軸42は、直流モータ51、52の主軸と一体に構成されていてもよいし、別個の部材として構成されていてもよい。
直流モータからなる駆動要素51、52は、一対の前後連結部分11a、11bに掛け渡された収容ボックス70内に配置され、当該収容ボックス70内で対応する側の前後連結部分11a、11bに支持されている。図8に、直流モータ51、52の接続関係を回路図にて示す。図8に示すように、直流モータからなる2つの駆動要素51、52は、バッテリーとしての電源75に対して直列に接続されている。2つの直流モータ51、52が直列に接続されていることにより、接地面からの負荷に応じて駆動力を調整することに貢献するが、この点については後述する。
図6に戻って、各駆動要素51、52は、収容ボックス70に収容された制御装置7に接続され、当該制御装置7により制御される。この制御装置7には、さらに検知要素6が接続されていて、検知要素6からの情報が入力として取り込まれる。そして、制御装置7は、検知要素6からの情報に基づいて各駆動要素51、52を制御して、各駆動要素51、52から車輪41への駆動力を調整する。このような制御装置7は、例えば、中央処理装置(CPU)及びレジスタ(REGISTER)を供えたマイクロコントローラや、プログラマブルコントローラ(PLC)の形態として実現され得る。
制御装置7は、電池つまり電源75に電気的に接続されている。電源75は、制御装置7及び駆動要素51、52に電流を供給するためのものである。典型的には、電源75は、充電可能になっていて、乳母車本体2から取り外された状態で充電され得る。
図9に、電源75を拡大して示す。図9に示すように、電源75は、バッテリーホルダー76に抜き差し可能に取り付けられている。バッテリーホルダー76は、収容ボックス70に取り付けられ、収容ボックス70を介してベースフレーム11に支持されている(図7参照)。バッテリーホルダー76は、電源75を収容する収容空間76aを有し、電源75は、上下方向d3から収容空間76aにアクセスすることが可能となっている。
バッテリーホルダー76の底部には、ホルダー端子76eが設けられていて、ホルダー端子76eは、配線77を介して制御装置7及び駆動要素51、52に接続されている。電源75がバッテリーホルダー76に収容された状態において、ホルダー端子76eは、電源75に設けられたバッテリー端子75eと電気的に接続される。したがって、電源75がバッテリーホルダー76に収容された状態において、電源75からの電流がホルダー端子76eを介して制御装置7及び駆動要素51、52に送られる。
検知要素6は、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知するものである。検知要素6が検知する走行操作に関する情報は、操作者から乳母車本体2に入力される情報であれば特に限定されない。走行操作に関する情報の一例として、ハンドル20を操作する手からの荷重に関する情報や、操作者が乳母車1を走行させる速度に関連する車輪41の回転数に関する情報を検知してもよい。
図2に戻って、本実施の形態による検知要素6は、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報、換言すれば、ハンドル20に加えられる荷重を特定することが可能な情報を検知するように構成されている。先ず、ハンドル20の構成について説明し、その後、ハンドル20に設けられた検知要素6について説明していく。
図10に、ハンドル20を拡大して示す。図10に示すように、ハンドル20には、操作者の手が掛けられる操作部材21が配置され、操作部材21と乳母車本体2とをハンドル本体22が連結している。ハンドル本体22は、上部フレーム12との連結箇所c1において、当該上部フレーム12に締結されている。
とりわけ、ハンドル本体22を構成する要素として、後方上部フレーム12dからコラム22aが延び出し、コラム22aの両側にサイドバー22b、22cが配置されている。グリップ21は、左右方向d2に間隔を空けて並べられた2つのグリップ21a、21bとして構成され、左側のグリップ21aが、左側のサイドバー22bとコラム22aとの間に掛け渡され、右側のグリップ21bが、右側のサイドバー22cとコラム22aとの間に掛け渡されている。
図11に、コラム22aに設けられた検知要素6を拡大して示し、図12に、検知要素6の回路図を示す。図8及び図9に示すように、検知要素6としての複数の歪ゲージ61が、コラム22a内のインナー角材22dに貼り付けられている。複数の歪ゲージ61は、ハンドル本体22の歪みを計測するようブリッジ回路を構成している。図11に示す例では、角型のインナー角材22dの上側の面に2つの歪ゲージ61が配置され、インナー角材22dの下側の面に2つの歪ゲージ61が配置され、これら4つの歪ゲージ61は互いに同一に構成される。なお、図示するインナー角材22dは中空になっているが、中実であってもよい。
図13に、歪ゲージ61が検知した歪みに応じて、駆動要素51、52により提供される駆動力を決定する制御の一例をグラフとして示す。図13のグラフにおいて、横軸は、歪ゲージ61が検知した歪みを示し、インナー角材22dの上側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が延びた場合乃至インナー角材22dの下側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が縮んだ場合を正の値とし、インナー角材22dの上側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が縮んだ場合乃至インナー角材22dの下側の面に貼り付けられた歪ゲージ61が延びた場合を負の値としている。縦軸は、車輪41を駆動させる駆動力を示し、車輪41を前進方向に回転させる駆動力を正の値とし、車輪41を後退方向に回転させる駆動力を負の値としている。
図13に示すように、歪ゲージ61が検知した歪みの大きさが下限値α1よりも小さい場合、制御装置7は、駆動要素51、52による駆動力を車輪41に提供しないように制御する。これにより、外乱や意図しない操作が乳母車1に加えられても、乳母車1が意図せず動いてしまうことを防止することができる。
歪ゲージ61が検知した歪みの大きさが下限値α1よりも大きくなると、制御装置7は、駆動要素51、52による駆動力を、歪ゲージ61が検知した歪みの大きさに比例して車輪41に提供するように制御する。図13のグラフでは、歪ゲージ61が延びた場合には、対象となる車輪41を前進方向に回転させる駆動力を提供し、歪ゲージ61が縮んだ場合には、対象となる車輪41を後退方向に回転させる駆動力を提供する。
一方、ハンドル20に加えられる歪みの大きさが上限値α2よりも大きくなると、制御装置7は、駆動要素51、52による駆動力を、上限駆動力Fとして対象となる車輪41に提供するように制御する。
次に、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
とりわけ、図2から理解されるように、検知要素6を構成する4つの歪ゲージ61は、操作部材21よりも上下方向d3における上方に位置し、操作部材21は、連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置に位置している。このような配置によれば、以下の図14乃至図17に示すように歪ゲージ61が作用する。図14乃至図17は、ハンドル20を操作したときの歪ゲージ61の作用を説明するための図である。なお、以下の説明では、インナー角材22dをその長手方向に平行な平面にて2つの部分に区画したときに、上側となる部分を上領域A1とし、下側となる部分を下領域A2とする(図11参照)。
図14に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における前方に押し進めた場合、インナー角材22dの上領域A1が延び下領域A2が縮む。上領域A1が延び下領域A2が縮んだ情報は、4つの歪ゲージ61にて計測される。歪ゲージ61にて計測された情報は、制御装置7に送られる。情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、駆動要素としての2つの直流モータ51、52が直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を提供する。これにより、直流モータ51、52が回転し、直流モータ51、52に接続された車軸42が車輪41を前進方向に回転させる。このようにして、駆動要素51、52が車輪41の回転を補助することにより、操作者が乳母車1を前方に押す負担が軽減される。
走行面に段差がある場合には、操作者は操作部材21を上下方向d3における下方に押し下げて、前方の車輪41を浮かせようとする。図15に示すように、操作者が操作部材21を下方に押し下げた場合、図14の場合と同様に、インナー角材22dの上領域A1が延び下領域A2が縮む。上領域A1が延び下領域A2が縮んだ情報は、4つの歪ゲージ61にて計測され制御装置7に送られる。情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、2つの直流モータ51、52が直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を提供する。これにより、直流モータ51、52が回転し、直流モータ51、52に接続された車軸42が後方の車輪41を前進方向に回転させる。すなわち、操作部材21が下方に押し下げられた場合、操作部材21が前方に押し進められた場合と同様に、後方の車輪41を前進方向に回転させる。結果として、段差を乗り越える動作中であっても、駆動要素51、52による駆動力の補助を受けることができ、乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
一方、下り坂で乳母車1を押し進める場合には、図16に示すように、操作者が操作部材21を握って乳母車1を前後方向d1における後方に引き寄せることとなる。この場合、図14及び図15の場合とは逆に、インナー角材22dの上領域A1が縮み下領域A2が延びる。上領域A1が縮み下領域A2が延びた情報は、4つの歪ゲージ61にて計測され制御装置7に送られる。情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が後方に引かれたと認識し、2つの直流モータ51、52が直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を、図14及び図15の場合と逆向きに提供する。これにより、直流モータ51、52が回転し、直流モータ51、52に接続された車軸42が後方の車輪41を後退方向に回転させる。このようにして、直流モータ51、52が車輪41の回転を補助することにより、操作者が乳母車1を後方に引く負担が軽減される。
次に、乳母車1を旋回させる際には、図17に示すように、2つのグリップ21a、21bを前方に押す力に差異を生じさせることにより、乳母車1を旋回させることができる。図17に示す例では、左側のグリップ21aよりも右側のグリップ21bに掛かる力を大きくすることにより、乳母車1を左回りに旋回させることができる。2つのグリップ21a、21bに異なる力を掛けても、図14の場合と同様に、インナー角材22dの上領域A1が延び下領域A2が縮む。上領域A1が延び下領域A2が縮んだ情報は、4つの歪ゲージ61にて計測され制御装置7に送られる。歪ゲージ61が検知した情報を受け取った制御装置7は、操作部材21が前方に押し進められた若しくは下方に押し下げられたと認識し、2つの直流モータ51、52が直列に接続された回路に、歪ゲージ61が計測した値に応じた電流を提供する。図8に示す直列回路では、2つの直流モータ51、52が同一に構成されている場合、2つの直流モータ51、52に流れる電流の大きさも等しいため、2つの直流モータ51、52が車輪41に提供する駆動力も相等しいとも思われる。
ただし、乳母車1を左回りに旋回させると、内輪となる左側の車輪ユニット4に外輪となる右側の車輪ユニット4よりも接地面からの大きな抵抗が掛かり、内輪となる左側の車輪ユニット4に接続された直流モータ51が回転し難くなる。内輪となる左側の車輪ユニット4に接続された直流モータ51の回転数が低下すると、当該直流モータ51に生じる逆起電力が低下し、直列回路により多くの電流が流れやすくなる。結果として、外輪となる右側の車輪ユニット4に接続された直流モータ52に流れる電流が相対的に多くなり、外輪となる右側の車輪41により大きな駆動力を提供することが可能となる。これにより、外輪となる右側の車輪41を回転させ易くなり、この結果、旋回動作をスムーズに行うことができる。
以上のように、本実施の形態による乳母車1は、車輪41、当該車輪41に接続された車軸42、及び、当該車軸42を回転可能に支持する車軸保持体43をそれぞれ含む複数の車輪ユニット4と、座ユニット8a、8bと、複数の車輪ユニット4を支持するベースフレーム11、及び、ベースフレーム11に連結され座ユニット8a、8bを支持する上部フレーム12、を有する乳母車本体2と、複数の車輪ユニット4のうちの少なくとも1つの車輪ユニット4の車軸42に接続され、当該車軸42を駆動させる駆動要素51、52と、を備え、ベースフレーム11は、前後方向d1に並んだ2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間に掛け渡され当該2つの車軸保持体43の各々に連結された前後連結部分11a、11bを含んでいる。走行中に前方の車輪41を障害物に当ててしまった場合、障害物からの反力が前方の車輪41と後方の車輪41とを近づけるように乳母車1に作用する。この点、本実施の形態によれば、前後連結部分11a、11bが前後方向d1に並んだ2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間を連結するため、前後連結部分11a、11bが前方の車輪41と後方の車輪41とを近づける障害物からの反力に耐えることができる。その上、駆動要素51、52によって後方の車輪41を駆動させる場合、障害物に当たって乳母車1が停止しても、駆動要素51、52が後方の車輪41を駆動させ続ける。このため、乳母車1は、駆動要素51、52からの駆動力によって後方の車輪41を前方の車輪41に近づけるような作用を受ける。この点、本実施の形態によれば、前後連結部分11a、11bが前後方向d1に並んだ2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間を連結するため、停止中に駆動要素51、52が後方の車輪41を駆動させ続けても、前後連結部分11a、11bが前方の車輪41と後方の車輪41とを近づけるような作用に耐えることができる。
このように、本実施の形態によれば、前後連結部分11a、11bによって走行中に前方の車輪41と後方の車輪41とを近づけるような負荷(作用)にも十分に耐えることができ、駆動要素51、52により車輪41を駆動させる乳母車1に適したフレーム構造を提供することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知する検知要素6と、検知要素6が検知した情報に基づいて駆動要素51、52を制御して、当該駆動要素51、52から車軸42を介して車輪41へ伝わる駆動力を調整する制御装置7と、をさらに備える。このような形態によれば、乳母車1の走行操作に合わせて、駆動要素51、52による車輪41への駆動力を調整することができるため、乳母車1を意図した通りに操作することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、前後連結部分11a、11bに連結された前方の車輪ユニット4の車軸保持体43は、キャスターとして構成され、前後連結部分11a、11bに連結された後方の車輪ユニット4の車軸42は、駆動要素51、52に接続されている。前方の車輪41がキャスター3を介してベースフレーム11に支持されていることで、乳母車1の旋回操作をスムーズに行うことができる。また、操作者が操作するハンドル20が後方に位置することや、乳母車1に乗車する乳幼児の重心を考慮すると、後方の車輪41は荷重が掛かり易く接地面に安定して接地するといえる。安定して接地した後方の車輪41に駆動要素51、52からの駆動力が提供されることで、駆動要素51、52による駆動補助を安定して実現することができる。
また、本実施の形態によれば、ベースフレーム11は、前後連結部分11aに連結された2つの車輪ユニット4とは異なる2つの車輪ユニット4であって、前後方向d1に並んだ2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間に掛け渡され、当該2つの車軸保持体43の各々に連結された更なる前後連結部分11bを含んでいて、前後連結部分11aと更なる前後連結部分11bとは、左右方向d2に間隔を空けて配置されている。この場合、前後連結部分11aに加えて更なる前後連結部分11bも設けられることで、走行中に前方の車輪41と後方の車輪41とを近づけるような負荷(作用)に益々耐えることができる。このため、駆動要素51、52により車輪41を駆動させる乳母車1に一層適したフレーム構造を提供することが可能となる。
とりわけ、本実施の形態によれば、複数の車輪ユニット4のうちの駆動要素51に接続された車輪ユニット4とは異なる車輪ユニット4の車軸42に接続され、当該車軸42を駆動させる更なる駆動要素52を備え、更なる前後連結部分11bに連結された前方の車輪ユニット4の車軸保持体43は、キャスターとして構成され、更なる前後連結部分11bに連結された後方の車輪ユニット4の車軸42は、更なる駆動要素52に接続されている。この場合、安定して接地した後方の車輪41に更なる駆動要素52からの駆動力が提供されることで、更なる駆動要素52による駆動補助も安定して実現することができる。
また、本実施の形態によれば、前後連結部分11a、11bは、前後方向d1に沿っている。障害物からの反力や駆動要素51、52からの駆動力は、前後方向d1に沿って作用し得ることから、前後連結部分11a、11bが前後方向d1に沿っている場合、障害物からの反力や駆動要素51、52からの駆動力に効果的に耐えることができる。
また、本実施の形態によれば、上部フレーム12は、リンク部材13、14を介してベースフレーム11に接続され、リンク部材13、14に対して回動することで当該ベースフレーム11に対して折り畳み可能になっていて、前後連結部分11a、11bは、上部フレーム12がベースフレーム11に対して折り畳まれる状態の前後において、当該前後連結部分11a、11bに連結された2つの車輪ユニット4の車軸保持体43間の間隔spを一定に維持する。このような形態によれば、前後連結部分11a、11bが乳母車1の姿勢によらず2つの車輪ユニット4の間隔spを維持することができる。このため、走行状態によらず前後連結部分11a、11bが前方の車輪41と後方の車輪41とを近づけるような負荷(作用)を安定して支えることができる。この結果、駆動要素51、52により車輪41を駆動させる乳母車1に一層適したフレーム構造を提供することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、駆動要素51から駆動力を提供される車輪ユニット4と、更なる駆動要素52から駆動力を提供される車輪ユニット4とは、左右方向d2における位置が異なっており、駆動要素51及び更なる駆動要素52は、直流モータをそれぞれ含み、駆動要素51の直流モータと更なる駆動要素52の直流モータとは、バッテリーとしての電源75に対して直列に接続されている。乳母車1を旋回させる場合、内輪となる車輪41に外輪となる車輪41よりも接地面からの大きな抵抗が掛かる。このため、2つの駆動要素51、52の直流モータを直列に接続した場合、内輪となる車輪41に接続された直流モータ51が回転し難くなる。内輪となる車輪41に接続された直流モータ51の回転数が低下すると、直流モータ51に生じる逆起電力が低下し、直列回路により多くの電流が流れやすくなる。結果として、外輪となる車輪41に接続された直流モータ52に流れる電流が相対的に多くなり、外輪となる車輪41により大きな駆動力を提供することが可能となる。以上のことから、2つの駆動要素51、52の直流モータを直列に接続した場合、旋回動作中に外輪となる車輪41を回転させ易くなり、旋回動作をスムーズに行うことができる。
また、本実施の形態によれば、乳母車本体2は、複数の車輪ユニット4を支持するフレーム本体10と、フレーム本体10に接続されたハンドル20と、を有し、検知要素6は、ハンドル20に設けられ、当該ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を検知する。乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報として、ハンドル20に加えられる荷重に関する情報を選択することで、操作者の走行操作に関する意図に応じて駆動要素51、52から車輪41に駆動力を提供することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、ハンドル20は、操作者の手が掛けられる操作部材21と、操作部材21と乳母車本体2とを連結するハンドル本体22と、を有し、制御装置7は、検知要素6によって、操作部材21が前方に押された情報または下方に押し下げられた情報が検知されると、駆動要素51、52に車輪41を前進させる駆動力を提供させ、検知要素6によって操作部材21が後方に引かれた情報が検知されると、駆動要素51、52に車輪41を後退させる駆動力を提供させる。このような形態によれば、操作者による操作部材21の操作に合わせて、駆動要素51、52が車輪41を駆動させる向きを調整することができる。とりわけ、接地面の段差等を乗り越えるために前方の車輪41を浮かせるよう操作部材21を下方に押し下げた場合であっても、駆動要素51、52が後方の車輪41を前進させるように駆動する。このため、段差を乗り越える動作中であっても、駆動要素51、52による駆動力の補助を受けながら乳母車1を過度な負担なく押し進ませることができる。
また、本実施の形態によれば、検知要素6は、ハンドル20のハンドル本体22に取り付けられた複数の歪ゲージ61を含み、少なくとも1つの歪ゲージ61は、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると延び操作部材21が後方に引かれると縮む、または、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると縮み操作部材21が後方に引かれると延びるようになっている。このような形態によれば、検知要素6が歪ゲージ61によって実現されるため、操作者が操作部材21を操作する情報を、複雑な構造を回避しつつ安定して検知することができる。操作者が操作部材21を操作する情報をさらに安定して検知する観点から、操作部材21は、ハンドル本体22とフレーム本体10との連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置または前方且つ上方となる位置に位置しているのがよい。
とりわけ、本実施の形態によれば、操作部材21は、連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置に位置し、歪ゲージ61は、ハンドル本体22のうちの、操作部材21との接続箇所と連結箇所c1との間となる部分に取り付けられている。この場合、操作者から操作部材21に加えられる荷重に連動して、ハンドル本体22のうちの歪ゲージ61が貼り付けられた部分が感度良く伸縮する。このため、歪ゲージ61によって、操作者が操作部材21を操作する情報をさらに精度良く検知することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、駆動要素51、52に電流を供給する充電可能な電源75と、ベースフレーム11に支持され、電源75が抜き差し可能に取り付けられるバッテリーホルダー76と、をさらに備え、電源75からの電流がバッテリーホルダー76に設けられた端子76aを介して駆動要素51、52に送られるようになっている。このような形態によれば、バッテリーホルダー76から電源75を取り外して充電した後、再びバッテリーホルダー76に電源75を差し込めば、電源75から駆動要素51、52に電流を供給することが可能となる。すなわち、本実施の形態による乳母車1は、電源75の充電及び装着を容易に行うことができる。
さて、長時間の利用等によって電源の充電が切れてしまう場合も想定され得る。電源75の充電が切れた場合、乳母車1を押し進めるべく車輪41を回転させようとしても、駆動要素としての直流モータ51、52が負荷として作用し、乳母車1を押し進めることは、直流モータを備えていない乳母車と比べて容易ではない。とりわけ、走行面にある段差を乗り越える際には、前方の車輪41を浮かせて後方の車輪41で乳母車1を走行させる必要がある。かかる場合、図18に示すように、ティッピングバー11cを利用して前方の車輪41を浮かせることが便宜である。図18は、ティッピングバー11cを足で操作する状態を示す全体斜視図である。
図18に示す場合においては、駆動要素51、52が停止しているため、図15に示す操作に加えて、足でティッピングバー11cを踏み付ける操作を行う。具体的には、操作者がハンドル20の操作部材21を手で下方に押し下げると共に、ティッピングバー11cを足で下方に踏み込む。この操作により、乳母車1上の2箇所に互いに逆向きとなる水平方向の一対の力を負荷することができる。この互いに逆向きとなる一対の力からなる偶力は、乳母車1全体を回転させるモーメントを発生させる。この結果、後方の車輪41を基準として、乳母車1全体を鉛直方向に対して後方に傾斜させ、前方の車輪41を容易に浮き上がらせることができる。
前方の車輪41を浮き上がらせた後、操作者は、今度はハンドル20の操作部材21を手で前方に押すと共に、ティッピングバー11cを足でそのまま前方に押し出す。これにより、足の力も利用しながら乳母車1を前方に比較的容易に押し進ませることができる。
とりわけ、操作者がハンドル20を把持しながら乳母車1を押し進ませているときには、ティッピングバー11cが足よりもやや前方に位置する場合に、ティッピングバー11cを足で前方に押し出し易い。この点を考慮して、ティッピングバー11cの後端11gは、乳母車1の展開状態において、ハンドル20の後端20aよりも前方に配置されている。
さらに、図19を参照してティッピングバー11cの配置について説明する。図19は、ベースフレーム11の後方部分を拡大して示す側面図である。
図19に示すように、ティッピングバー11cは、最も後方に位置する車輪41の回転軸線Ar2、さらには最も後方に位置する車輪41の後端41aよりも後方に突き出ている。すなわち、ティッピングバー11cの少なくとも一部は、最も後方に位置する車輪41の後端41aよりも後方に位置している。この場合、操作者がハンドル20を把持しながら乳母車1を押し進ませている状態において、無理のない姿勢でティッピングバー11cに足を掛けることに寄与する。ただし、ティッピングバー11cは、最も後方に位置する車輪41の回転軸線Ar2よりも後方に突き出ていなくてもよい。
また、図19において、ティッピングバー11cは、上下方向d3において最も後方に位置する車輪41の回転軸線Ar2と最も後方に位置する車輪41の上端41bとの間の高さにある。すなわち、ティッピングバー11cは、最も後方に位置する車輪41の回転軸線Ar2よりも上方で最も後方に位置する車輪41の上端41bよりも下方となる位置に配置されている。ティッピングバー11cが最も後方に位置する車輪41の回転軸線Ar2よりも上方に位置することで、乳母車1の走行中に足の指先がティッピングバー11cに接触し難くなる。一方、ティッピングバー11cが最も後方に位置する車輪41の上端41bよりも下方に位置することで、乳母車1の走行中に脚の脛がティッピングバー11cに接触し難くなる。
このように、本実施の形態によれば、ベースフレーム11は、最も後方に位置する車輪41の回転軸線Ar2よりも後方に突き出たティッピングバー11cをさらに有する。このような形態によれば、駆動要素51、52が停止した状態であっても、ティッピングバー11cを足で操作することにより、前方の車輪41を容易に浮かせ走行面にある段差を容易に乗り越えることができる。結果として、駆動要素51、52により車輪41を駆動させる乳母車1の操作性を改善することができる。
また、本実施の形態によれば、左右方向d2に離間して配置された一対の前後連結部分11a、11bの後端同士が、ティッピングバー11cによって連結されている。この場合、ティッピングバー11cがベースフレーム11のうちの左右方向d2に延びる骨格構造としても機能するため、ベースフレーム11の剛性を効果的に高めることに寄与する。
また、本実施の形態によれば、上部フレーム12がベースフレーム11に対して折り畳まれた状態において、上部フレーム12に接続された乳母車本体2のハンドル20が、一対の11a、11bとティッピングバー11cとにより囲まれる空間S内に挿入される。このような形態によれば、乳母車1を折り畳んだ状態において、ハンドル20が一対の11a、11bとティッピングバー11cとにより囲まれる空間S内に収容されるため、一対の11a、11bとティッピングバー11cとによってハンドル20を保護することができる。とりわけ、ハンドル20に検知要素6が配置されている場合、ハンドル20を保護することで検知要素6に物理的な衝撃が伝わることを抑制することができ、検知要素6が損傷を受けることを避けることもできる。
次に、ティッピングバー11cと他の構成要素の配置関係について説明する。図7によく示されているように、2つの駆動要素51、52、制御装置7及び電源75は、ティッピングバー11cよりも前後方向d1における前方に配置されている。より詳細には、2つの駆動要素51、52、制御装置7及び電源75は、一対の前後連結部分11a、11bとティッピングバー11cとにより囲まれる空間S内に配置されている。この場合、一対の前後連結部分11a、11bとティッピングバー11cとによって、2つの駆動要素51、52、制御装置7及び電源75を保護することができる。
ここで、2つの駆動要素51、52、制御装置7及び電源75に代表される車輪41を駆動させるための部品は、重量があり、乳母車1の重量バランスを崩させ易い。そこで、本実施の形態による乳母車1では、乳母車1の重量バランスを保つべく、以下のような工夫が施されている。図20に、ベースフレーム11の後方部分を背面図として模式的に示す。
図20に示すように、重量のある2つの駆動要素51、52、制御装置7及び電源75は、左右の後方の車輪41の間に配置されている。この配置によれば、これらの部品51、52、7、75の高さが左右の後方の車輪41の高さに近くなる。このため、重量のあるこれらの部品51、52、7、75を相対的に低い位置に配置することができ、乳母車1の重心が安定する。さらに、この配置によれば、これらの部品51、52、7、75の前後方向d1における位置が後方の車輪41の前後方向d1における位置に近くなる。この場合、重量のあるこれらの部品51、52、7、75の自重は、主として左右の後方の車輪41によって受け止められ易い。この結果、左右の後方の車輪41を走行面に安定して押し付けることができ、駆動要素51、52によって後方の車輪41を駆動させた場合に、後方の車輪41を安定して駆動させることに寄与する。
とりわけ、第1駆動要素51、第2駆動要素52及び制御装置7は、後方の車輪41の上端41bよりも低い位置に配置されている。この場合、これらの部品51、52、7をさらに低い位置に配置することができ、乳母車1の重心がさらに安定する。
さらに、第1駆動要素51と第2駆動要素52の間に制御装置7が配置されている。この場合、左右方向d2において2つの駆動要素51、52及び制御装置7をバランスよく配置することができ、乳母車1の重量バランスを高めることに寄与する。
また、本実施の形態によれば、駆動要素51、52に加えて制御装置7及び電源75も、左右の後方の車輪41の間に配置されている。この場合、重量のある制御装置7及び電源75も相対的に低い位置に配置することができるため、乳母車1の重心がさらに安定する。また、駆動要素51、52、制御装置7及び電源75を、左右の後方の車輪41の間にまとめて配置することで、これらを連結する配線の長さを短くし、コスト削減に貢献する。
また、本実施の形態によれば、ベースフレーム11は、左右方向d2に離間して配置された一対の前後連結部分11a、11bと、一対の前後連結部分11a、11bの後端同士を連結する後方連結部分11cと、を有し、一対の前後連結部分11a、11bに掛け渡された収容ボックス70に、駆動要素51、52及び制御装置7が収容されている。この場合、収容ボックス70内に駆動要素51、52及び制御装置7をまとめて配置することができ、組立作業を効率よく行うことができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態では、左右に並べて2つの座ユニット8a、8bが設けられる例を示したが、座ユニット8a、8bの数は、このような例に限定されない。例えば、単一の座ユニットが設けられていてもよいし、2つ以上の座ユニットが設けられ、この2つ以上の座ユニットが前後に並べられていてもよい。
また、上述した実施の形態では、駆動要素51、52としての2つの直流モータがバッテリーとしての電源75に対して直列に接続された例を示したが、直流モータ51、52に関する回路設計は、上述した例に限定されない。駆動要素51、52としての直流モータが電源75に対して並列に接続されていてもよい。
また、上述した実施の形態では、検知要素6が歪ゲージ61からなる例を示したが、検知要素6の形態は、上述した例に限定されない。検知要素6は、乳母車本体2に入力される走行操作に関する情報を検知することができる限り任意であり、他の例として、ハンドル本体22に取り付けられたトルクセンサや圧力センサや磁歪センサ等として構成されていてもよい。例えば、圧力センサとしては、ハンドル20に加えられる荷重を作動流体の圧力の変化として捉え、この圧力の変化をダイヤフラムを介して感圧素子で計測した後、電気信号として出力するタイプのものであってもよい。
また、上述した実施の形態では、単一の支柱からなるコラム22aが、後方上部フレーム12dと操作部材21とを連結する例を示したが、ハンドル本体22の形態は、上述した例に限定されない。コラム22aが複数の支柱からなり、後方上部フレーム12dと操作部材21とを連結してもよい。
また、上述した実施の形態では、操作部材21が連結箇所c1よりも後方且つ下方となる位置に位置した例を示したが、操作部材21の配置は、上述した例に限定されない。少なくとも1つの歪ゲージ61が、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると延び操作部材21が後方に引かれると縮む、または、操作部材21が前方に押される若しくは下方に押し下げられると縮み操作部材21が後方に引かれると延びるようになっている限り、操作部材21の配置は任意である。例えば、操作部材21が、連結箇所c1よりも前方且つ上方となる位置に位置し、歪ゲージ61が、操作部材21よりも後方となる位置でハンドル本体22に取り付けられていてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。