絶縁性粒子を含む層を表面に設けた正負極を積層することによって、二次電池を構成することが行われている。こうした構成では、従来のセパレータを用いた構成と異なり、正負極を電気的に隔離する絶縁性粒子含有層の厚さが不均一になり得る。また、絶縁性粒子含有層の膜強度が低いことが懸念される。そのため、機械的な振動や二次電池への圧力により短絡が生じることで、容量が減少したり発熱したりする危険があった。
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る電極群は、電気的絶縁層と第1電極と第2電極とを具備する。第2電極は、第1電極と電気的絶縁層を介して第1方向に積層されている。第1電極は第1方向と直交する方向のうち1以上の第2方向の第1端部を複数含む。複数の第1端部は第2方向への異なる位置に配置されている。
第1電極と第2電極と(例えば、正極と負極と)を電気的に隔離する手段として固体電解質粒子やその他の電気的絶縁性粒子を含む層(以後、電気的絶縁層)を用いた二次電池では、電極構造の最小単位として第1電極と第2電極との間に電気的絶縁層が配置された電極組が構成される。二次電池の容量を大きくするために、正極と電気的絶縁層と負極とが幾度も重なり合っている構造の電極群を用いることができる。
このような電極群では、二次電池の外部から印加される圧力や電極群の膨張によって電極の端部に応力などの力が集中することに起因して、短絡が生じ得る。電極群において第1電極の端部と第2電極の端部とが電気的絶縁層を間に挟んで幾重にも積層されている部分では、外部圧力による応力などの力を逃がすことができず、電気的絶縁層の機械的強度を上回る力がかかり得る。その結果、電気的絶縁層が破損し、電気的絶縁層による第1電極と第2電極とを隔離する機能が損なわれて短絡が生じやすくなる。
実施形態に係る電極群では、上述した構成により電極の端部位置での短絡が抑制されている。具体的には、第1電極が含んでいる複数の第1端部が1以上の第2方向における異なる位置に配置されているため、電極群における一つの位置への力の集中が緩和される。これにより、電気的絶縁層の破損が抑えられ、第1電極と第2電極との短絡が抑制される。
第1の実施形態に係る電極群の一例を図1に概略的に表す。
図1は、実施形態に係る電極群の一例を表す概略断面図である。電極群1は、それぞれの厚み方向に交互に積層されている複数の第1電極11及び複数の第2電極12、並びに第1電極と第2電極との間に介在している複数の電気的絶縁層4を含む。また、積層方向の両端にそれぞれ電気的絶縁層4が一つずつ設けられている。別の表現をすると、電極群1が、第1電極と第2電極とが電気的絶縁層4を介して積層されている電極組を複数含み、これら複数の電極組の間に電気的絶縁層4がさらに配置されている。図1は、第1電極11と第2電極12と電気的絶縁層4との積層方向に沿って切断された断面図である。
ここでの説明では、第1方向とは、積層方向に平行な方向を指す。別の表現をすると、第1方向とは、第1電極11の厚み方向、第2電極12の厚み方向、又は電気的絶縁層4の厚み方向と平行である。また、ここでいう第2方向とは、第1方向に直交する方向のうち、第1電極11及び第2電極12の幅方向に平行である方向を指す。つまり、図1の縦方向(垂直方向)が第1方向に対応し、図1の横方向(水平方向)が第2方向に対応する。
図1にて表す例の電極群1では、図示する3つの第2電極12については、第2方向の端部(以後、第2端部12a)の位置が揃えられている。これに対し、図示する3つの第1電極11のうち第1方向に向かって中間に位置する1つの第1電極11の配置が第2方向へずれているため、これら第1電極11の間では第2方向の端部(以後、第1端部11a)の位置が揃っていない。また、何れの第1端部11aの第2方向への位置も、何れの第2端部12aの第2方向への位置と揃っていない。
このように電極群1では、第2方向における第1端部11aの位置が異なる第1電極11が含まれている。つまり、電極群1では、第2方向への何れの位置においても、第1端部11aが幾度も重なることが避けられている。そのため、第1端部の位置で力が集中しにくく、第1電極と第2電極との短絡が生じにくい。
図1にて表す例の電極群1では、第2電極の第2端部の第2方向への位置が揃えられていた。実施形態に係る電極群はこのような態様に限られず、例えば、第2方向への第2端部の位置が異なっている形態も含む。つまり、実施形態に係る電極群は、第1電極の複数の第1端部が第2方向への異なる位置に配置されていると同時に、第2電極の複数の第2端部が第2方向への異なる位置に配置されている形態を含む。
電極群1において、一つの第1端部11aと他の第1端部11aとの第2方向への位置が異なる度合い、つまり第1端部11aの間での第2方向の位置のずれ幅Sは、第1電極11の厚さTに対して5×T以上であることが望ましい。なお、厚さTの単位は、例えば、ミリメートル(mm)であり得る。また、厚さTは、第1電極11が電極群1における第1方向に占める距離に対応し得る。複数の第1端部11aの中でも、第1方向に隣接している2つの第1端部11aの間でずれ幅Sが5×T以上であることで、短絡抑制効果をより確実に発揮することができる。
電池容量を確保する観点からは、ずれ幅Sが50×T以下であることが望ましい。ずれ幅Sが大きくなるに伴って正負極が対向している領域が少なくなり、電池容量が減少する。これ以上の大きさのずれを設けても、短絡抑制効果の向上が少なく、電池容量に対する見返り(トレードオフ)が少ない。また、実際の製造プロセス上では、電極の厚さにかかわらず、制御できる電極のサイズや幅に限界がある。そのため、ずれ幅Sは0.5mm以上5mm以下であることが望ましい。この範囲内のずれ幅Sであれば、製造時のバラツキが生じても十分に短絡抑制効果を得ることができる。
電池に含まれている電極群における電極(例えば、第1電極または第2電極)の厚さT及びずれ幅Sは、例えば、次にようにして確認することができる。
アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解して電極群を取り出す。後述するとおり、電極群に液状またはゲル状の非水電解質が含まれ得る。この場合、電極群を洗浄して真空乾燥により電極群中の非水電解質を除去しても良い。引き続き、グローブボックス中において、電極群の積層方向(例えば、第1方向)に平板を用いて一定荷重(例えば10g/cm2)をかけた状態で電極群の厚さを測定する。平板を電極群に配置した状態のまま、平板と接している電極群表面から電極群厚さの10%、50%、90%に相当する位置に平行に、例えば、それぞれの位置で第1方向に直交する面に沿って電極群を切断する。その結果、電極群厚さと直交する方向に4つに分割された電極群サンプルが得られる。4つの電極群サンプルを、それぞれの面内方向の中心を通る4以上の放射状の切線に沿って切断する。中心にて交差する切線の間の角度はなるべく均等にする。4つの電極群サンプルそれぞれについて、面内方向の中心から放射状の切線に沿って裁断した断面において、裁断前の中心位置の端部とは反対の端部、つまり裁断前の周辺位置に対応する端部を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察する。SEMによる観察倍率は、電極サイズに応じて適宜調節すればよく、例えば、100倍〜1000倍とする。観察したそれぞれの視野において、各電極の厚さTを測定する。また、それぞれの視野において、各電極の端部の位置関係を確認してずれ幅Sを測定する。
電極群は、例えば、一次電池および二次電池を含む電池用の電極群であり得る。
電極群の形態としては、例えば、複数の第1電極と複数の電気的絶縁層と複数の第2電極とが、第1電極−電気的絶縁層−第2電極−電気的絶縁層の順に積層されていることで電極組が複数積層された形態を挙げることができる。また、例えば、1つの第1電極と2つの電気的絶縁層と1つの第2電極とが第1電極−電気的絶縁層−第2電極−電気的絶縁層の順に積層されている帯状の電極積層体が捲回されることで第1電極と電気的絶縁層と第2電極とが幾度も重なり合っている形態もある。その他、例えば、帯状の電極積層体が九十九折にされている形態の電極群もあり得る。
第1電極は、正極および負極の何れか一方であり得る。第2電極は、正極および負極の他方であり得る。つまり、一例の電極群では、第1電極が正極で、第2電極が負極であり得る。また、他の例の電極群では、第1電極が負極で、第2電極が正極であり得る。
また、電極群は、バイポーラ型の電極を含み得る。バイポーラ型の電極は、例えば、1つの電極集電体の一方の面に正極材料の層(例えば、後述する正極活物質含有層)が形成され、その裏側にある他方の面に負極材料の層(例えば、後述する負極活物質含有層)が形成された構造を有し得る。バイポーラ型の電極を含む場合、正極材料層を第1電極とみなし、負極材料層を第2電極とみなすことができる。或いは、負極材料層を第1電極とみなし、正極材料層を第1電極とみなすことができる。
第1の実施形態に係る電極群がとり得る形態の具体的な例として、積層型の電極群の例を説明する。
電気的絶縁層と、第1電極と、第2電極とを含む電極積層体を複数さらに積み重ねて積層型の電極群を構成する場合は、例えば、それぞれ複数ある電気的絶縁層と第1電極と第2電極とを積層させる際、第1電極同士の配置をずらすことができる。積層方向を第1方向とし、この第1方向に直交する平面に含まれる方向を第2方向とする。360°ある少なくとも1つの第2方向に沿って第1電極の配置をずらすことで、第1電極についてこの第2方向への第1端部の位置を第1電極同士の間で異ならせることができる。
或いは、第1電極として、少なくとも一方向の寸法が異なる複数の第1電極を用いることもできる。少なくとも1つの第2方向に沿った寸法が異なる複数の第1電極を用いることで、第1電極についてこの第2方向への第1端部の位置を第1電極同士の間で異ならせることができる。
第2方向に沿って配置をずらした複数の第1電極の間では、上述したずれ幅Sは、ずらした距離に対応し得る。第2方向への寸法が異なる複数の第1電極の間では、第2方向のずれ幅Sは、第2方向への寸法の差分に対応し得る。
複数の第1端部の位置は一次元的、つまり第1方向に直交する360°の第2方向のうち、1つの方向、又は180°の関係にある2つの方向において異ならせてもよい。或いは、複数の第1端部の位置は二次元的、つまり第2方向のうち180°未満の関係にある2つの方向、又は3つ以上の方向において異ならせてもよい。
次に、第1の実施形態に係る電極群の一つの態様である積層型の電極群の例について、図面を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係る電極群の積層型の態様の一例を概略的に示す断面図である。図2に示す積層型の電極群1は、複数の電気的絶縁層4と、第1電極としての複数の正極5と、第2電極としての複数の負極3とを含んでいる。また、これらが電気的絶縁層4−負極3−電気的絶縁層4−正極5の順で積層されている電極積層体が、さらに繰り返し積層されている構造を含む。つまり、積層型の電極群1は、電気的絶縁層4と、第1電極(正極5)と、第2電極(負極3)とを含む電極積層体が複数積層されている積層型電極構造体を含む。
図2の電極群1を説明するうえで、第1方向とは、複数の電極積層体の積層方向に平行な方向を指す。図2は、電極群1の第1方向に沿って切断した断面図である。ここの説明では、第2方向とは、第1方向に直交する方向のうち、正極5及び負極3の幅方向と平行である方向を指す。つまり、図2の縦方向(垂直方向)が第1方向に対応し、図2の横方向(水平方向)が第2方向に対応する。
図2に示す電極群1では、複数の負極3(第2電極)の間で、電極群1における第2方向の端部(第2端部)の位置が揃えられている。これに対し、複数の正極5(第1電極)の間では、第2方向の端部(第1端部)の位置が一部互いに異なっており、揃っていない。つまり、第1電極としての正極5には、第1端部の第2方向への位置が異なる正極5が含まれている。言い換えると、図2に図示す電極群1では、複数の正極5(第1電極)の第1端部の一部の位置が互いにずれた位置関係にある。
具体的には、正極5には、複数の第1端部のうち第1方向に隣接する2つの第1端部の間で、第2方向の位置が揃っている正極5の対が含まれていない。つまり、積層型電極構造体において繰り返し積層されている電極積層体のうち一つの電極積層体に含まれている正極5の第1端部と、その次の電極積層体に含まれている正極5の第1端部とで第2方向における位置が同じになっている部分がない。
このような構造の積層型電極構造体では、第2方向への何れの位置においても正極5と負極3とが連続して対向している部分がない。そのため、電極群1に外部から力が印加されたり電極群1が膨張したりしても何れの第1端部でも力が集中しにくく、正極5と負極3との短絡が生じにくい。
複数の正極5の一部は、第2方向への長さが互いに同じである。例えば、図2では、複数の正極5のうち図の上から2つ目に図示されている正極52の横方向の長さD2と3つ目に図示されている正極53と横方向の長さD3との値が同じである。また、複数の正極5の他の一部は、第2方向への長さが互いに異なる。例えば、図2では、複数の正極5のうち図の上から1つ目に図示されている正極51の横方向の長さD1と2つめに図示されている正極52の横方向の長さD2との値が異なる。複数の正極5は、第2方向への長さが全て異なっていてもよく、或いは、第2方向への長さが全て同じでもよい。
図3は、実施形態に係る電極群の積層型の態様の他の例を概略的に示す断面図である。図3に示す積層型の電極群1は、図2と同様に、電気的絶縁層4と、第1電極(正極5)と、第2電極(負極3)とを含む電極積層体が複数積層されている積層型電極構造体を含む。
図3は、図2と同様に、複数の電極積層体の積層方向に平行な方向である第1方向に沿って切断した断面図である。また、図3の説明においても、第2方向とは、第1方向に直交する方向のうち、正極5及び負極3の幅方向と平行である方向を指す。
図3に示す電極群1では、積層型電極構造体における正極5の複数の第1端部のうち、第1方向の両方の最遠端のそれぞれに位置する2つの第1端部の第2方向への位置は、これら2つの第1端部と第1方向に隣接する他の第1端部とは第2方向への位置が異なる。つまり、繰り返し積層されて積層型電極構造体を構成している複数の電極積層体のうち積層方向への最も外側に位置する電極積層体に含まれている正極5’では、1つ内側にある電極積層体の正極5’’とは第2方向への第1端部の位置が異なる。電極群1の積層方向の両端に設けられているこれら2つの正極5’を除く、その他の正極5及び正極5’’については、第2方向への第1端部の位置が揃っている。
電極群1に含まれている複数の正極5のうち、最も外側に配置されている正極5の第1端部に力が集中しやすい。すなわち、電極群1に含まれている複数の正極5のうち、最も外側に設けられている正極5’の第1端部の位置で短絡が生じるリスクが高い。最外層の正極5’の第1端部の第2方向への位置を、その次の正極5’’の第1端部の第2方向への位置とずらすことで、このリスクを回避できる。
電池容量を確保する観点からは、正極5と負極3とが対向している面積を多くする、即ち第1電極と第2電極とが対向している面積を多くすることが望ましい。第1電極と第2電極とが対向している面積を多くするにあたって、第2電極の第2端部のみならず、図3の電極群1と同様に第1電極の第1端部の位置が第2方向に揃い得る。
図3における電極群1では、電気的絶縁層4と第1電極(正極5)と第2電極(負極3)との積層方向(第1方向)の両端の第1電極の第1端部の位置が、一段内側の第1電極の第1端部と第2方向への位置が異なっていると同時に、積層方向の両端の第1端部以外の第1端部の第2方向への位置が揃っている。この構成により、図3の電極群1では、生じやすい両端の第1端部での短絡を効果的に抑制しつつ、電池容量を確保することができる。
図3の例では、複数の第1端部のうちの第1方向の最遠端に位置する2つの第1端部の両方について、第1方向に隣接する第1端部とは第2方向への位置が異なる形態、即ち積層方向の両端の第1端部の位置がずれている形態を示した。第1方向の最遠端の2つの第1端部のうち一方だけについて、第1方向に隣接する第1端部との第2方向への位置を異ならせた場合でも、上記した効果を得ることができる。
図2及び図3にて図示した具体例では、正極5を第1電極とみなし、負極3を第2電極とみなした。実施形態に係る電極群はこのような態様に限られず、例えば、負極3を第1電極とみなし、正極5を第2電極とみなした形態も含む。また、上記例では、第2電極(負極3)の第2端部の第2方向への位置が揃えられていた。実施形態に係る電極群はこのような態様に限られず、例えば、第2方向への第2端部の位置が異なっている形態も含む。つまり、実施形態に係る電極群は、第1電極の複数の第1端部が第2方向への異なる位置に配置されていると同時に、第2電極の複数の第2端部が第2方向への異なる位置に配置されている形態を含む。
矩形型の電極を積層した積層型の電極群では、例えば、1つの第1電極の第1端部として矩形形状の1辺のみ、2辺、3辺、又は4辺すべての位置を、他の第1電極の第1端部の位置からずらすことができる。或いは、矩形形状の角部を第1端部として、1乃至4つの角部の位置をずらすことでも短絡抑制効果が得られる。矩形形状の辺の位置をずらすことと角部の位置をずらすこととを同時に行ってもよく、或いはどちらか一方のみを実施してもよい。矩形型電極の積層型電極群では、第1端部となり得る周辺全体のうち、角部での短絡の危険性が著しく高い。そのため、矩形型電極では少なくとも角部を第1端部とみなして、位置をずらすことが好ましい。
角部のみの位置をずらす場合は、例えば、対象の電極の角に切欠きを設けることができる。切欠きは、例えば、角部分を斜めに切り取ったり、1/4円の形に丸めたりすることで行うことができる。第1端部としての角部の位置をずらすには、例えば、切欠きのない電極と切欠きを設けた電極とを用いることができる。若しくは、切欠きを設ける電極の間で切欠きの大きさや、丸める際の円弧の半径を異ならせてもよい。角部の位置をずらす場合のずれの大きさ、即ち上記したずれ幅Sは、例えば次のように定義できる。以下の説明では、角に隣接する辺のうち片方の辺から45°の角度で角を始点として引いた直線と切線との交点を第1端部の位置とみなす。
矩形型電極の角部に対し実施できる切欠き加工の具体的な例を図4−図7に示す。図4−図7は、それぞれ矩形型電極の加工例を示す概略図である。
図4は、矩形型電極の角部分を斜めに切り取ることで切欠きを行った例を示す。この例では、切欠く前の電極の角を始点として一辺から45°の角度で引いた直線Eと直交する切線C1に沿って角部が切り取られている。角度45°の直線Eに平行な方向を第2方向とすると、切線C1に沿って切断して得られた断面は、この第1電極11の第1端部に対応する。また、角度45°の直線と切線との交点から角までの距離S1は、第1電極11の第1端部の位置と切欠きを行っていない電極の第1端部の位置とのずれ幅Sに対応し得る。
図5は、矩形型電極の角部分を斜めに切り取ることで切欠きを行った他の例を示す。この例においても、切欠く前の電極の角を始点として一辺から45°の角度で引いた直線Eと直交する切線C1に沿って角部が切り取られている。角度45°の直線Eに平行な方向を第2方向とすると、切線C1に沿って得られた断面は、この第1電極11’の第1端部に対応する。また、角度45°の直線Eと切線との交点から切欠く前の角までの距離S1は、第1電極11’の第1端部の位置と切欠きを行っていない電極の第1端部の位置とのずれ幅Sに対応し得る。図5には、異なる位置で切欠きを行った2つの切線C1,C2の間の距離S2を示す。この距離S2は、第1電極11’とは切欠きの大きさが異なる第1電極11’’との第1端部の間のずれ幅Sに対応し得る。
図6は、矩形型電極の角部分を円弧状に切り抜くことで切欠きを行った例を示す。切欠く前の電極の角を始点として一辺から45°の角度で引いた直線Eに平行な方向を第2方向とすると、角度45°の直線Eと円弧状の切線C3との交点は、第2方向における第1電極11の第1端部の位置に対応する。また、この交点と切欠く前の角との間の距離S1は、第1電極11の第1端部の位置と切欠きを行っていない電極の第1端部の位置とのずれ幅Sに対応し得る。
図7は、矩形型電極の角部分を円弧状に切り抜くことで切欠きを行った他の例を示す。この例においても、角度45°の直線Eに平行な方向を第2方向とすると、角度45°の直線と円弧状の切線C3との交点は、第1電極11’の第1端部の位置に対応する。また、この交点と切欠く前の角との間の距離S1は、第1電極11’の第1端部の位置と切欠きを行っていない電極の第1端部の位置とのずれ幅Sに対応し得る。図7には、異なる位置で切欠きを行った1つの切線C4との間の距離S2を示す。この距離S2は、第1電極11’とは異なる半径の円弧に丸めた第1電極11’’との第1端部の間のずれ幅Sに対応し得る。
図4及び図5では、矩形形状の角に対して45°の角度で引いた直線Eに直交する直線状の切線C1及び切線C2に沿って切欠きを設けた例を示した。また、図6及び図7では、1/4円の形の円弧状の切線C3及び切線C4に沿って切欠きを設けた例を示した。矩形型の電極の角部に設ける切欠きの形状はこれらに限られない。上記したずれ幅Sを確保できればよく、様々な形状の切欠き加工を実施することができる。
図2の電極群1では、第1電極としての正極5の幅方向に沿った一次元の第2方向において、第1電極の間で第1端部の位置がずれている例を示した。各第1電極の第2方向の始点と終点との2つの第1端部について、他の第1電極の2つの第1端部とそれぞれ位置がずれていた。図2の電極群1が矩形型の電極を積層した積層型の電極であり、図2が矩形形状の何れかの辺に平行な切線に沿った断面を示すとすると、第2方向の始点と終点との2つの第1端部は、各第1電極の辺のうち断面に直交する2辺に対応する。図2が矩形形状の1つの角とそれに対向する角とをつなぐ切線に沿った断面を示すとすると、第2方向の始点と終点との2つの第1端部は、各第1電極の角部のうち2つの角に対応する。
第1の実施形態に係る電極群がとり得る形態の別の例として、捲回型の電極群の例を説明する。
電気的絶縁層と、第1電極と、第2電極とを含む電極積層体を捲回して捲回型の電極群を構成する場合は、例えば、第1電極として帯状の電極を用い、この帯状電極の幅を部分的に異ならせることができる。ここでいう帯状電極の幅は、捲回する際の捲回軸に平行な方向の幅、即ち短辺方向の幅を指す。短辺方向の幅が部分的に異なる帯状の電極を捲回することで、捲回軸に平行な方向を第2方向とみなした場合の第1端部、即ち帯状電極の長辺方向に沿う縁の第2方向への位置が異なる捲回型の電極を得ることができる。具体的には、部分的に幅が狭い帯状の電極を捲回することで、幅が狭い部分に対応する第1端部が他の部分の第1端部よりも第2方向に沿って電極群の内側に位置する電極群が得られる。
帯状の電極に短辺幅の異なる部分を設ける場合、短辺幅の異なる部分の長辺方向の長さは捲回した際の捲回1周分以上に対応することが望ましい。こうすることで、捲回後の電極群において捲回された帯状電極の1つの周とその次の周とで短辺幅を異ならせることができる。つまり、1つの周とその次の周とで第2方向への第1端部の位置をずらすことができる。
或いは、短辺幅の異なる複数の帯状電極を第1電極として用いることで、第1端部の位置をずらすこともできる。又は、同じ幅の複数の帯状電極であっても、捲回時に第1電極としての電極同士で長辺方向の縁をずらすように配置することで、第1端部の位置をずらすこともできる。
第1電極が異なる短辺幅の部分を含む帯状電極である場合は、第2方向のずれ幅Sは短辺幅が異なる部分同士の幅の差分に対応し得る。第1電極として異なる幅の複数の帯状電極を用いる場合は、第2方向のずれ幅Sは幅が異なる電極の間の幅の差分に対応し得る。第1電極として同じ幅の複数の帯状電極を用い、長辺方向の縁をずらして配置する場合は、第2方向のずれ幅Sは、捲回時の配置において長辺方向の縁をずらした距離に対応し得る。
次に、第1の実施形態に係る電極群の一つの態様である捲回型の電極群の一例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、実施形態に係る捲回型の電極群が含むことのできる電極の一例を概略的に示す平面図である。図9は、実施形態に係る捲回型の態様の電極群を概略的に示す斜視図である。図10は、図9におけるA部を拡大した概略断面図である。
図8には、第1電極としての正極5と第2電極としての負極3を示す。正極5は、長辺方向の一部に短辺方向の幅が狭い部分15を含む帯状の電極である。負極3は、長辺方向全体に亘って短辺方向の幅が同じである帯状の電極である。
図9に示す電極群1は、扁平型の捲回型電極群である。電極群1は、負極3と正極5と図示しない電気的絶縁層を含む。負極3と正極5とは、それぞれ図8に示す負極3と正極5である。電極群1は、電気的絶縁層と正極5(第1電極)と負極3(第2電極)とを含む電極積層体が捲回されている捲回型電極構造体を含んでいる。捲回型電極構造体において、正極5と負極3とは電気的絶縁層により電気的に隔離されている。
なお、図9に示す扁平状型捲回型の電極群1を説明するうえで、捲回軸に平行な方向を第2方向とみなす。
図10は、図9に示す捲回型の電極群1について第2方向を含んだ一つの平面に沿った断面の一部を示している。図10の横方向(水平方向)が第2方向に対応する。
正極5は、図8に示すように短辺方向の幅が狭くなっている部分15を含んでおり、この部分15と短辺方向の幅が狭くなっていない部分とが長辺方向に沿って交互に配置されている。正極5の短辺方向は、電極群1での第2方向に対応する。正極5の長辺方向へのそれぞれの領域の長さは、例えば、図9の捲回型の電極群1においてそれぞれの領域が位置する捲回の周の周長と一致する。これにより、電極群1では、正極5の長辺方向へのそれぞれの領域が複数の周として互いに積層された形となり、これらの周のうち積層方向に隣接する2つの周の間で正極5の短辺幅が異なる。つまり、図10に示すように、捲回型電極構造体における正極5の一つの周とその次の周とで、第2方向への第1端部の位置が異なる。より具体的には、第1電極としての正極5が異なる2つの幅の領域を含んでいるため、第2方向への第1端部が2つの位置の一方にある周と、第1端部が2つの位置の他方にある周とが交互に積層されている。
図8−図10では、第1電極(正極5)として、長辺方向に沿って短辺幅が異なる2つの領域を含む帯状電極を用いた例を示したが、例えば、短辺幅がそれぞれ異なる3つ以上の領域を含む電極を第1電極として用いたり、短辺幅がそれぞれ異なる2つ以上の電極を第1電極として用いたりすることもできる。
また、図8−図10にて図示した具体例では、正極5を第1電極とみなし、負極3を第2電極とみなした。実施形態に係る電極群はこのような態様に限られず、例えば、負極3を第1電極とみなし、正極5を第2電極とみなした形態も含む。また、上記例では、第2電極(負極3)の第2端部の第2方向への位置が揃えられていた。実施形態に係る電極群はこのような態様に限られず、例えば、第2方向への第2端部の位置が異なっている形態も含む。つまり、実施形態に係る電極群は、第1電極の複数の第1端部が第2方向への異なる位置に配置されていると同時に、第2電極の複数の第2端部が第2方向への異なる位置に配置されている形態を含む。
第1の実施形態に係る電極群は、さらに九十九折型の形態をとり得る。九十九折型の電極群は、例えば、捲回型の電極群において捲回されている電極積層体が、捲回される代わりに九十九折にされている電極群であり得る。
第2方向への第2端部の位置は、第2方向への第1端部の位置と比較して電極群の外側に向かって突出した位置にあることが望ましい。第1端部より外側に突出している第2端部では、第2電極に対し第1電極が対向していないため、電極群に外部から力が印加されたり電極群が膨張したりしても、第2端部に力が集中しにくい。そのため、第2端部において短絡が起こりにくい。
一方で、電極群の外側に向かって突出していない電極の端部では、対極としての他方の電極と対向することになるため、応力などの力を逃がしにくい。特に、電極群を、例えば、金属缶のような硬質な外装部材を備えた二次電池に用いた場合は、電極群の膨張時に電極群が金属缶に押し付けられ得る。この際、電極群のエッジ部分に応力が集中するため、短絡の危険が高まる。第2方向への端部位置が対極電極の端部位置と比較して電極群の外側へ向かって突出していない電極について、第2方向における複数の端部位置の少なくとも一部を互いにずらすことでこの短絡危険性を大きく抑制することが可能である。
第1の実施形態に係る電極群の好ましい態様では、第1電極全体の第2方向への長さが第2電極の第2方向への長さと比較して短い。この長さ関係により、第2方向に沿った両端において、第2電極の第2端部の位置を第1電極の第1端部の位置に対して電極群の外側に向かって突出した位置にすることができる。
積層型の電極群の場合は、例えば、第2電極として面積の大きな電極を用いることができる。例えば、矩形型の電極の縦方向あるいは横方向など一方向の長さを長くすることで、1次元における第2方向への長さを長くすることができる。矩形型電極の縦方向および横方向など二方向の長さを長くすることで、二次元における第2方向、つまり360°すべての第2方向への長さを長くすることができる。逆の視点から、第1電極として面積の小さな電極を用いることで、第2方向への長さを短くすることができる。また、例えば、上述したように矩形型の電極の角部を切欠いて1つ又は2つの第2方向への長さを短くすることができる。
捲回型の電極群の場合は、例えば、捲回軸に対して平行な方向の幅が大きい電極を第2電極として用いることができる。また、九十九折型の電極群の場合は、例えば、折り返される辺に対して直交する方向の幅(短辺方向の幅)が大きい電極を第2電極として用いることができる。
非水電解質二次電池では、負極でのリチウム金属析出を防止するため、負極を大きくすることが多い。リチウム金属の析出を鑑みて、負極の第2方向への長さを正極の第2方向への長さと比較して長くすることが好ましい。例えば、積層型の電極の場合は、面積が大きい負極を用い、より面積が小さい正極を用いることができる。また、例えば、捲回型の電極の場合は、捲回軸に対して平行な方向の幅が大きい負極を用い、幅がより小さい正極を用いることができる。同様に、例えば、九十九折型の電極群の場合は、例えば、折り返される辺に対して直交する方向の幅(短辺方向の幅)が大きい負極を用い、幅がより小さい正極を用いることができる。
ただし、負極の作動電位が0.5V程度となる負極活物質を使用する場合は、負極におけるリチウム金属析出の問題が生じない。そのため、第2方向への長さをより長くする電極は負極および正極の何れでもよい。
或いは、第1電極と第2電極との間で、第2方向への長さが等しくてもよい。このような場合、例えば、第1電極の全体を第2電極に対して第2方向にずらすことで、第2方向への第1電極の第1端部の位置と第2電極の第2端部の位置とを異ならせることができる。ここで、第2方向の一端で第1端部が第2端部に対して電極群の外側に向かって突出し、第2方向の他端で第2端部が第1端部に対して電極群の外側に向かって突出し得る。電極群において、第1端部が第2端部に対して突出している側では、第2方向への異なる位置に配置されている第2端部が含まれていることが望ましい。第2端部が第1端部に対して突出している側では、第1方向への異なる位置に配置されている第1端部が含まれていることが望ましい。つまり、電極群の何れの側においても、電極群の外側に向かって突出していない電極の端部の位置をずらして、外部からの応力や電極の膨張などに起因する力の集中を抑制することが望ましい。
以下、電気的絶縁層、正極、及び負極について詳細に説明する。なお、上述したとおり、正極は、第1電極および第2電極の何れか一方であり得る。また、負極は、第1電極および第2電極の他方であり得る。
(電気的絶縁層)
電気的絶縁層は、例えば、第1電極と第2電極との間に介在し、第1電極と第2電極とを電気的に隔離する。例えば、電気的絶縁層は、正極と負極との間に設けられて正極と負極とを電気的に隔離し得る。
電気的絶縁層は、絶縁性粒子を含み得る。絶縁性粒子としては、例えば、金属酸化物の固体粒子や、リチウムイオン伝導性を有する無機化合物の粒子を用いることができる。絶縁性粒子は、固体電解質の粒子であり得る。
電気的絶縁層は、さらにゲル電解質を含有し得る。絶縁性粒子とゲル電解質とは、複合体を形成し得る。
電気的絶縁層は正極および負極の一方または両方の上に形成されたものであり得る。短絡は電極端部で起きやすいため、より面積の大きい電極の表面に電気的絶縁層を形成することが望ましい。短絡防止の観点からは、正極と負極との両方の上に電気的絶縁層を形成することが望ましい。一方で、製造時の工程が増えるという観点では、一方の電極の上に電気的絶縁層を形成することが望ましい。
また、電気的絶縁層は、電極の片面または両面に形成されたものであり得る。
電気的絶縁層は、単一の層であってもよく、或いは複数の層を含んでいてもよい。
電気的絶縁層の厚さは、電気的絶縁層に含まれている絶縁性粒子の平均粒子径の2倍以上であることが好ましい。この厚さの電気的絶縁層を形成する際、厚さの均一性が得られやすい。電気的絶縁層の厚さが、含まれている絶縁性粒子の粒度分布におけるD90の2倍以上であることがより好ましい。なお、D90は、粒度分布において小粒子径側からの累積頻度が90%となる粒子径を意味する。こうすることにより電気的絶縁層内のリチウムイオン伝導性の偏りを防止することができ、耐久性の向上につながる。
また、電気的絶縁層の厚さが、正極および負極中に含まれる粒子のうち最大の平均粒子径を有する粒子の1.5倍以上であることが望ましい。こうすることで、短絡に対する耐性がさらに高まる。なお、正極に含まれる粒子は、後述する正極活物質の粒子および導電剤の粒子を含み得る。負極に含まれる粒子は、後述する負極活物質の粒子および導電剤の粒子を含み得る。また、導電剤が、例えば、グラファイト等の鱗片状もしくは楕円状などのアスペクト比が大きい形状である場合は、正極活物質粒子もしくは負極活物質粒子の平均粒子径を基準に、電気的絶縁層の厚さを判断する。
金属酸化物の固体粒子としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物の粒子を挙げることができる。中でも、酸化アルミニウム(アルミナ)又は酸化ジルコニウム(ジルコニア)を用いることで、より安価かつ簡便に電気的絶縁層を形成することができる。そのほかに、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ガリウム、及び酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物や、酸化ランタンなどのランタノイド系酸化物などを用いることもできる。
酸化アルミニウムや酸化ジルコニウムの粒子を用いる場合、純度が低くても機能を発現するものの、高純度の固体粒子が望ましい。高純度の酸化アルミニウム粒子や酸化ジルコニウム粒子を用いることにより、高温環境下にて起こりやすい電気的絶縁層と電極との界面での副反応などの問題を回避することができる。
金属酸化物の固体粒子の平均粒子径が0.1μm以上5μm以下であることが望ましい。平均粒子径が0.1μm未満であると、イオン伝導経路が制限されて内部抵抗が大きくなり得る。平均粒子径が5μmを超えると、正負極間に設けられる粒子数が少なくなり、正極と負極とが接触する可能性が高まる。
リチウムイオン伝導性を有する無機化合物の粒子としては、例えば、リチウムイオン伝導性及び耐還元性が高く、電気化学窓が広い利点があることから、ガーネット型構造の無機固体粒子を用いることが好ましい。ガーネット型構造の無機固体粒子としてLi5+xAxLa3-xM2O12(AはCa,Sr,及びBaからなる群より選択される少なくとも1つ、MはNb及びTaからなる群より選択される少なくとも1つ、0≦x≦0.5)、Li3M2-xL2O12(MはTa及びNbからなる群より選択される少なくとも1つ、LはZr、0≦x≦0.5)、Li7-3xAlxLa3Zr3O12(0≦x≦0.5)、Li7La3Zr2O12が挙げられる。中でもLi6.25Al0.25La3Zr3O12やLi7La3Zr2O12はリチウムイオン伝導性が高く電気化学的に安定なため、放電性能とサイクル寿命性能に優れ、さらに微粒子化しても有機溶媒に対して化学的に安定な利点がある。また、欠陥ペロブスカイト型構造チタン含有酸化物(La0.56Li0.33TiO3)、NASICON型化合物(Li14Zn(GeO4)4)、Li−βアルミナ、LISICON型化合物(Li3.6Si0.6P0.4O4)、ガラスセラミックス(Li2S−SiS2−Li3PO4)などを用いることも可能である。
リチウムイオン伝導性の無機化合物の粒子を用いる場合は、リチウムイオン伝導性が室温(25℃)で1×10-10Scm-2以上であるものを用いることが好ましい。この好ましい例のリチウムイオン伝導性無機化合物の粒子は、ゲル電解質と複合化した際に、電気的絶縁層と電極との接触界面においてリチウムイオン濃度を高めることが可能となる。好ましいリチウムイオン伝導性無機化合物の平均粒子径(直径)は、0.01μm以上8μm以下である。この範囲であるとイオン伝導性が高められる。平均粒子径は、より好ましくは0.05μm以上0.2μm以下である。8μmよりも大きい粒子の時は、分極が生じた際に表面へのリチウムイオンの拡散が難しく、効果が得られにくい。
電気的絶縁層は、結着剤を更に含むことができる。結着剤は、絶縁性粒子間を結着させることができる。結着剤の例には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリビニルピロリドン、アクリル系バインダー、スチレン−ブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
ゲル電解質は、例えば、ゲル化剤と有機溶媒とを混合して調製した混合物にリチウム塩が溶解されているゲル状非水電解質であり得る。リチウム塩の濃度は、0.2M以上2M以下であることが好ましい。
ゲル化剤としては、例えば、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide;PEO)、ポリフッ化ビリニデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリメチルメタクリレートなどの高分子材料、又はこれら高分子材料の混合物を用いることができる。
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、酢酸エチル(ethyl acetate:EA)、トルエン、キシレン、又は酢酸メチル(methyl acetate;MA)などを用いることができる。
リチウム塩としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiTFSI;LiN(CF3SO2)2)、ビスペンタフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiBETI;LiN(C2F5SO2)2)などのリチウム塩を用いることができる。これらのリチウム塩の1つを単独で用いてもよく、或いは2つ以上を混合塩として用いてもよい。より良好なサイクル性能を得ることができることから、LiPF6やLiBF4が望ましい。
絶縁性粒子とゲル電解質との複合体が形成されている場合は、第1電極および第2電極にもゲル電解質が浸透され得る。
電気的絶縁層は、例えば、以下の手順で形成することができる。まず、絶縁性粒子と結着剤とを、溶媒を用いて混合してスラリーを調製する。ここで、溶媒としては、例えば、水、アルコール、及びN−メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone;NMP)等を用いることができる。このスラリーを、基材(例えば、後述する正極活物質含有層、又は負極活物質含有層)に塗布し、塗膜を乾燥させることにより形成ことができる。
絶縁性粒子とゲル電解質との複合体は、例えば、次の手順で形成することができる。先ず、上記の有機溶媒にゲル化剤およびリチウム塩を溶解させて溶液を得る。この溶液を、例えば、上記のとおり形成した電気的絶縁層に含浸させる。或いは、電気的絶縁層と第1電極と第2電極とを含む電極群に溶液を含浸させる。加熱により溶液をゲル化させることで、絶縁性粒子とゲル電解質との複合体を得ることができる。
(正極)
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はリチウムイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y<1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-x-yCoxMnyO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-x-yCoxMnyO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
中でもリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、及びリチウムマンガン複合酸化物は、リチウムの酸化還元電位に対し3.8V(vs.Li/Li+)以上の充放電電位を有し、高い電池容量を実現できるため望ましい。
電池の電解質としてイオン液体を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物はイオン液体との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。イオン液体の詳細については、後述する。
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、エチレン−プロピレン−ジェン共重合体、スチレン−ブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。炭素質物の形態は、例えば、炭素粒子、粉末、繊維状粉末などを含む。粉末、繊維状粉末等の形状が望ましい。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属を含む金属箔、金属合金箔、薄板、メッシュ、又は金網等を用いることができる。正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極端子を接続するための接続部として働くことができる。
正極は例えば次の方法により作製することができる。正極活物質と導電剤とに結着剤を加えて混練し、圧延することによりシート状の正極を作製することができる。
或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。溶媒としては、例えばトルエンやN−メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone;NMP)等を用いることができる。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、正極活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、必要に応じてこの積層体にプレスを施す。
積層型の電極群に用いる正極を作製する場合は、例えば、矩形型の正極を作製することができる。捲回型の電極群や九十九折型の電極群に用いる正極を作製する場合は、例えば、帯状の正極を作製することができる。何れの場合も、例えば、正極集電体の少なくとも一辺においてスラリーを塗布しない部分を残すことで、正極端子に接続するための接続部を設けることができる。
(負極)
負極は、負極集電体と、負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
負極活物質としては、二次電池を充電したときに到達する最低電位がリチウムの酸化還元電位に対して0.6V以上1.45V以下(vs.Li/Li+)であり、放電時に到達する最高電位がリチウムの酸化還元電位に対して1.6V以上2.5V以下(vs.Li/Li+)である化合物を用いることが望ましい。これらの条件を満たす化合物を負極活物質として用いることで、充電時の金属リチウムの析出を防止することができるため、安全性が高まる。負極活物質としてチタン含有複合酸化物を用いることがさらに望ましい。チタン含有複合酸化物を用いることにより負極全体の電子導電性を低減することができ、内部短絡に対する安全性を高められる。負極は、負極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい
チタン含有酸化物の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、斜方晶型チタン含有複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
上記斜方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つでる。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、−0.5≦σ≦0.5である。斜方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LiaTiMbNb2+βO7+δで表される単斜晶構造のニオブチタン複合酸化物が挙げられる。ここで、Mは、Fe,V,Mo,及びTaからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦5、0≦b≦0.3、−0.3≦β≦0.3、−0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z≦2、−0.3≦δ≦0.3である。
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物のさらに他の例として、Ti1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦y<1、0≦z≦2、−0.3≦δ≦0.3である。
上記化合物の中でも単斜晶構造のニオブチタン複合酸化物は重量当たりの容量が大きい。そのため、電池容量を高めることができるので、負極活物質としてより望ましい。
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。炭素質物の形態は、例えば、炭素粒子、粉末、繊維状粉末などを含む。粉末、繊維状粉末等の形状が望ましい。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
負極集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。負極集電体としては、これらの材料からなる箔、薄板、メッシュ、又は金網等を用いることができる。負極集電体は、5μm以上20μm以下の厚さを有する箔であることが好ましい。このような厚さの箔である負極集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極端子を接続するための接続部として働くことができる。
負極は例えば次の方法により作製することができる。負極活物質と導電剤とに結着剤を加えて混練し、圧延することによりシート状の負極を作製することができる。
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。溶媒としては、例えば水やN−メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone;NMP)等を用いることができる。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、必要に応じてこの積層体にプレスを施す。
積層型の電極群に用いる負極を作製する場合は、例えば、矩形型の負極を作製することができる。捲回型の電極群や九十九折型の電極群に用いる負極を作製する場合は、例えば、帯状の負極を作製することができる。何れの場合も、例えば、負極集電体の少なくとも一辺においてスラリーを塗布しない部分を残すことで、負極端子に接続するための接続部を設けることができる。
第1の実施形態に係る電極群は、電気的絶縁層と第1電極と第2電極とを具備する。第1電極と第2電極とは、電気的絶縁層を介して第1方向に積層されている。第1電極は第1方向と直交する方向のうち1以上の第2方向の第1端部を複数含む。複数の第1端部は第2方向への異なる位置に配置されている。
上記構成を含むため、第1の実施形態に係る電極群は、短絡耐性が優れている二次電池および電池パック、並びにこの電池パックが搭載されている車両を実現することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、電極群と外装部材とを含む二次電池が提供される。外装部材は、電極群を収容する。
第2の実施形態に係る二次電池は、電極群として第1の実施形態に係る電極群を含む。
二次電池は、絶縁性粒子として電気的絶縁層に含むことのできる固体電解質や絶縁性粒子と複合体を形成するゲル電解質とは別に、電解質をさらに含むことができる。電解質は、外装部材内に収容される。電解質は、電極群に保持され得る。
また、二次電池は、正極に電気的に接続された正極端子および負極に電気的に接続された負極端子を更に具備することができる。
第2の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
以下、外装部材、負極端子、正極端子、及び電解質について詳細に説明する。
(外装部材)
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、金属製、樹脂製、又はセラミックス製の容器を用いることができる。
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、ステンレスなどからなる材料を用いることができる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
ラミネートフィルムからなる容器を用いた場合は、内部ガスが発生した際、それを電池外観の変化として検出することができる。そのため、ラミネートフィルム製の外装部材を用いることが望ましい。
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
金属製容器は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
(正極端子)
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下 の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金、チタニウムが挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
正極端子の形状は、特に限定されない。正極端子の形状は、例えば、リボン状、板状、又は棒状であってよい。
正極端子は、例えば、一端が正極に電気的に接続され、他端が外装部材の外部に引き出され得る。この正極端子を介して、正極と電池外部との間で通電させることができる。正極端子と正極とを電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、正極端子を正極集電体に溶接してもよい。
(負極端子)
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する 材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、軽量かつ溶接接続性に優れたアルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
負極端子の形状は、特に限定されない。負極端子の形状は、例えば、リボン状、板状、又は棒状であってよい。
負極端子は、例えば、一端が負極に電気的に接続され、他端が外装部材の外部に引き出され得る。この負極端子を介して、負極と電池外部との間で通電させることができる。負極端子と負極とを電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば、負極端子を負極に溶接してもよい。
(電解質)
絶縁性粒子として電気的絶縁層に含むことのできる固体電解質とは別の電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有したイオン液体を用いてもよい。
イオン液体は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。イオン液体には、単体で液体として存在するイオン液体、電解質塩と混合させることで液体となるイオン液体、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられるイオン液体の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般にイミダゾリウム系やピペリジニウム系などの4級アンモニウム骨格を有する。
第2の実施形態に係る二次電池の一例を図面を参照して説明する。
図11は、第2の実施形態に係る一例の二次電池の概略断面図である。より詳細には、図11は、後述する正負極端子が外装部材から延出されている方向に沿って切断することで得られる断面である。図11に示す二次電池100は、外装部材2と電極群1とを具備する。電極群1は、外装部材2内に収納されている。なお、図11は、電極群1の第1方向に沿って切断した断面図である。
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる袋状外装部材である。
電極群1は、図11に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、第1の実施形態に係る電極群の積層型の態様の一例である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間に電気的絶縁層4を介在させながら交互に積層した構造を有している。図11では、電極群1の最上層および最下層、つまり第1方向の最遠端の両方に位置する負極3の外側にも電気的絶縁層4が設けられている。外装部材2の材料として、例えば、ラミネートフィルムのような電気的絶縁性を有する材質を含む材料を用いた場合は、最遠端の負極3の外側に設けられた電気的絶縁層4を省略してもよい。
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。各負極3の負極集電体3aは、その一辺において何れの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。また、複数の部分3cは、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。各正極5の正極集電体5aは、その一辺において何れの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分5cを含む。また、正極集電体5aにおいて正極活物質含有層5bが担持されていない部分5cは、負極集電体3aにおける負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cに対し電極群1の反対側に位置している。複数の部分5cは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
図11に示す二次電池100を説明するうえで、正極5を第1電極とみなし、負極3を第2電極とみなす。また、ここの説明でいう第2方向とは、正極5と負極3との積層方向(第1方向)に直交する方向のうち、正極5及び負極3の幅方向と平行である方向を指す。つまり、ここの説明での第2方向とは、図11において負極端子6と正極端子7とを結ぶ線に対し平行な方向を指し、負極端子6から正極端子7へ向かう方向と、その反対方向である正極端子7から負極端子6へと向かう方向とを含む。
図11に示すとおり複数の負極3(第2電極)の間で、電極群1における第2方向の端部(以後、第2端部)が揃えられている。これに対し、複数の正極5(第1電極)の間では、第2方向の端部(以後、第1端部)の位置が一部互いに異なっており、揃っていない。
図11に図示する電極群1では、複数の正極5(第1電極)の第1端部の一部の位置が互いにずれた位置関係にある。そのため、二次電池100の外部から力が印加されたり電極群1が膨張したりしても第1端部に力が集中しにくく、第1端部において短絡が起こりにくい。
第2の実施形態に係る二次電池は、図11に示す構成の二次電池に限らず、例えば図12及び図13に示す構成の電池であってもよい。
図12は、第2の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。図13は、図12に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
図12及び図13に示す二次電池100は、図12に示す袋状の外装部材2と、図12及び図13に示す捲回型の電極群1と、図示しない電解質とを具備する。電極群1は、袋状の外装部材2内に収納されている。なお、図12及び図13は、それぞれ電極群1の捲回軸と直交する面に沿って切断した断面図およびその部分拡大図である。
袋状の外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図12に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。この捲回型の電極群1は、第1の実施形態に係る捲回型の態様の一例であり、例えば、図9に示した電極群1であり得る。扁平状で捲回型である電極群1は、図13に示すように、負極3と、電気的絶縁層4と、正極5とを含む。電気的絶縁層4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、図13に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図12に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状の外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状の外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
第2の実施形態に係る二次電池は、図11−図13にて図示した具体例に限られず、電極群1は第1の実施形態に係る電極群がとり得る何れもの形態の電極群であり得る。例えば、図11−図13では正極5を第1電極とみなし、負極3を第2電極とみなした。実施形態に係る二次電池はこのような態様に限られず、例えば、負極3を第1電極とみなし、正極5を第2電極とみなした形態も含む。また、二次電池100が含む電極群1は、積層型の電極群や捲回型の電極群に限られず、例えば九十九折形状の電極群であり得る。
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極群を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る二次電池は、優れた短絡耐性を示すことができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、組電池が提供される。第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第3の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第3の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図14は、第3の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図14に示す組電池200は、5つの単電池100a〜100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a〜100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図14の組電池200は、5直列の組電池である。
図14に示すように、5つの単電池100a〜100eのうち、左端に位置する単電池100aの正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100a〜100eうち、右端に位置する単電池100eの負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を具備する。したがって、優れた短絡耐性を示すことができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第4の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第4の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第4の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図15は、第4の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図16は、図15に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図15及び図16に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
図15に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
単電池100は、例えば、図12に示す構造を有し得る。複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図16に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延出する面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と外部機器への通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。したがって、優れた短絡耐性を示すことができる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第5の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第5の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
第5の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
第5の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、電池パックは、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
次に、第5の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図17は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図17に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図17に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
図17では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図18を参照しながら、第5の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図18は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示した図である。図18に示す車両400は、電気自動車である。
図18に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図18に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
3つの電池パック300a、300b及び300cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとの間には、通信バス412が接続されている。通信バス412は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図18に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411、あるいは車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置411内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子に接続されている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置415を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子に接続されている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置411を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。したがって、電池パックの短絡耐性が優れていることから高い信頼性を示すことができる。
[実施例]
以下、実施例を詳細に説明する。
<二次電池の作製>
(実施例1)
正極活物質として粒径5μm(D50値)のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)粉末を準備した。この正極活物質90重量%、アセチレンブラック2重量%、粒径3μm(D50値)の人造黒鉛3重量%、ポリフッ化ビニリデン5重量%を混合し、N−メチルピロリドン(NMP)を溶媒として加えてスラリーを得た。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させた後、圧延することで厚さ100μmの正極シートを作製した。正極シートを幅67mm、長さ92mmに切り出した3枚をAサイズ正極とした。幅66mm、長さ92mmに切り出した3枚をBサイズ正極とした。幅65mm、長さ92mmに切り出した3枚をCサイズ正極とした。スラリーをアルミニウム箔に塗布する際、長さ方向末端5mm部分にはスラリーを塗布せず、この部分を活物質層未担持部として残した。
負極活物質として粒径3μm(D50値)の単斜晶型ニオブチタン複合酸化物(Nb2TiO7)粉末を準備した。このニオブチタン複合酸化物粉末90重量%、粒径5μm(D50値)の人造黒鉛5重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%をNMP溶液に加えて混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを厚さが25μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥させた後、圧延することで厚さ78μmの負極シートを作製した。負極シートを幅68mm、長さ93mmに切出して負極を得た。スラリーをアルミニウム箔に塗布する際、長さ方向に平行な一端部(幅5mm)にはスラリーを塗布せず、この部分を活物質層未担持部として残した。負極は10枚作製した。
電気的絶縁層の絶縁性粒子として、平均一次粒子径が0.1μmのLi7La3Zr2O12粒子を準備した。次のようにして、電気的絶縁層として、この絶縁性粒子とゲル状非水電解質との厚さ10μmの複合電解質層を負極上に形成した。
先ず、PVdFバインダーをNMP溶媒に溶解したバインダー溶液に、準備した絶縁性粒子を分散させた。得られた分散液を負極の両面に塗装用スプレーを用いて塗布した。加熱乾燥後、各正極および負極を次のとおり積層させることで、積層型電極群を構築した。
各正極および負極は、負極−Cサイズ正極−負極−Aサイズ正極−負極−Bサイズ正極−負極−Cサイズ正極−負極−Aサイズ正極−負極−Bサイズ正極−負極−Cサイズ正極−負極−Aサイズ正極−負極−Bサイズ正極−負極の順に積層した。積層させる際、各正極および各負極の面内方向の中心が重なるようにした。
次いで、正極の活物質層未担持部を束ねて、正極端子としてのアルミニウム箔を溶接した。また、負極の活物質層未担持部を束ねて、負極端子としてのアルミニウム箔を溶接した。こうして電極群を構築した。
なお、構築した積層型電極群では、Aサイズ正極とBサイズ正極との間で幅方向(短辺方向)の両端の位置が異なっており、ずれ幅Sは0.5mmだった。Aサイズ正極とCサイズ正極との間では、幅方向のずれ幅Sは1mmだった。Bサイズ正極とCサイズ正極との間では、幅方向のずれ幅Sは0.5mmだった。一方、すべての正極の間で、長さ方向(長辺方向)の両方の端部の位置が揃っていた。すべての負極の間では、幅方向および長さ方向の何れも両方の端部の位置が揃っていた。
別途、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比1:2)を調製し、この混合溶媒にLiPF6を1.2M溶解することで液状非水電解質を調製した。ゲル化剤としてのポリアクリルニトリル(PAN)高分子体を液状非水電解質に添加し、2重量%のPANを含んだ混合溶液を得た。
得られた電極群をラミネートフィルム製の外装シート2枚に挟み込むようにして包んだ。ラミネートフィルムとしては、アルミニウム層と樹脂層とを含む多層フィルムを用いた。2枚の外装シートの3辺を重ねて袋状になるように熱シールしたのち、PANを含んだ混合溶液を電極群に含浸させた。混合溶液の量は、絶縁性粒子(Li7La3Zr2O12粒子)と混合溶媒(PC/DEC混合溶媒)とゲル化剤(PAN)との重量比が96:3.2:0.8となるようにした。外装シートで形成した袋を熱シールして閉じることで電極群と混合溶液とを収容したのち、加熱することで混合溶液をゲル化させた。
このようにして、図2に示す構造を有する実施例1の二次電池を作製した。
(実施例2)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。正極シートを幅67mm、長さ92mmで9枚切出して正極を得た。
実施例1と同様の手順で負極シートを作製した。負極シートを幅67mm、長さ92mmで切り出した4枚をAサイズ負極とし、幅66mm、長さ92mmで切り出した3枚をBサイズ負極とし、幅65mm、長さ92mmで切り出した3枚をCサイズ負極とした。
各正極および各負極の上に絶縁性粒子の分散液を塗布し、加熱乾燥した後、これら正極および負極を、Aサイズ負極−正極−Bサイズ負極−正極−Cサイズ負極−正極−Aサイズ負極−正極−Bサイズ負極−正極−Cサイズ負極−正極−Aサイズ負極−正極−Bサイズ負極−正極−Cサイズ負極−正極−Aサイズ負極の順に積層して積層型電極群を構築した。積層させる際、各正極および各負極の面内方向の中心が重なるようにした。
なお、構築した積層型電極群では、Aサイズ負極とBサイズ負極との間で幅方向(短辺方向)の両端の位置が異なっており、ずれ幅Sは0.5mmだった。Aサイズ負極とCサイズ負極との間では、幅方向のずれ幅Sは1mmだった。Bサイズ負極とCサイズ負極との間では、幅方向のずれ幅Sは0.5mmだった。一方、すべての負極の間で、長さ方向(長辺方向)の両方の端部の位置が揃っていた。すべての正極の間では、幅方向および長さ方向の何れも両方の端部の位置が揃っていた。
得られた積層型電極群を用いたことを除き、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(実施例3)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。正極シートを幅67mm、長さ92mmで切り出した3枚をDサイズ正極とし、幅66mm、長さ91mmで切り出した3枚をEサイズ正極とし、幅65mm、長さ90mmで切り出した3枚をFサイズ正極とした。
実施例1と同様の手順で負極シートを作製した。負極シートを幅67mm、長さ92mmで10枚切出して負極を得た。
各正極および各負極の上に絶縁性粒子の分散液を塗布し、加熱乾燥した後、これら正極および負極を、負極−Fサイズ正極−負極−Eサイズ正極−負極−Dサイズ正極−負極−Eサイズ正極−負極−Dサイズ正極−負極−Fサイズ正極−負極−Dサイズ正極−負極−Fサイズ正極−負極−Eサイズ正極−負極の順に積層して積層型電極群を構築した。積層させる際、各正極および各負極の面内方向の中心が重なるようにした。
なお、構築した積層型電極群では、Dサイズ正極とEサイズ正極との間で幅方向(短辺方向)の両端の位置が異なっており、ずれ幅Sは0.5mmだった。Dサイズ正極とFサイズ正極との間では、幅方向のずれ幅Sは1mmだった。Eサイズ正極とFサイズ正極との間では、幅方向のずれ幅Sは0.5mmだった。
また、すべての正極の間で、Dサイズ正極とEサイズ正極との間で長さ方向(長辺方向)の両端の位置が異なっており、ずれ幅Sは0.5mmだった。Dサイズ正極とFサイズ正極との間では、長さ方向のずれ幅Sは1mmだった。Eサイズ正極とFサイズ正極との間では、長さ方向のずれ幅Sは0.5mmだった。
すべての負極の間では、幅方向および長さ方向の何れも両方の端部の位置が揃っていた。
得られた積層型電極群を用いたことを除き、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(実施例4)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。正極シートを幅67mm、長さ92mmで9枚切出した。そのうちの3枚について、距離S1’が1mmとなるように、角から引いた角度45°の直線と直交する直線を切線として、四隅に切欠きを設けた。さらに別の3枚について、距離S1’’が2mmとなるように四隅に同様な切欠きを設けた。
実施例1と同様の手順で負極シートを作製した。負極シートを幅67mm、長さ92mmで10枚切出して負極を得た。
各正極および各負極の上に絶縁性粒子の分散液を塗布し、加熱乾燥した後、これら正極および負極を、負極−正極(S1’’=2mm)−負極−正極(S1’=1mm)−負極−正極(切り欠けなし)−負極−正極(S1’=1mm)−負極−正極(切欠きなし)−負極−正極(S1’’=2mm)−負極−正極(切欠きなし)−負極−正極(S1’=1mm)−負極−正極(S1’’=2mm)−負極の順に積層して積層型電極群を構築した。積層させる際、各正極および各負極の面内方向の中心が重なるようにした。
なお、構築した積層型電極群では、切欠きを設けなかった正極と1mmの距離S1’で切欠いた正極とで、四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは距離S1’に対応し、1mmだった。切欠きを設けなかった正極と2mmの距離S1’’で切欠いた正極とで、四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは距離S1’’に対応し、2mmだった。1mmの距離S1’で切欠いた正極と2mmの距離S1’’で切欠いた正極とで、四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは距離S2に対応し、1mmだった。
得られた積層型電極群を用いたことを除き、実施例1と同様にして図5に示す構造を含む二次電池を作製した。
(実施例5)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。正極シートを幅67mm、長さ92mmで切り出した3枚をAサイズ正極とし、幅66mm、長さ92mmで切り出した3枚をBサイズ正極とし、幅65mm、長さ92mmで切り出した3枚をCサイズ正極とした。これらの正極のすべてについて、距離S1が1mmとなるように、角から引いた角度45°の直線と直交する直線を切線として、四隅に切欠きを設けた。
実施例1と同様の手順で負極シートを作製した。負極シートを幅67mm、長さ92mmで10枚切出して負極を得た。
各正極および各負極の上に絶縁性粒子の分散液を塗布し、加熱乾燥した後、これら正極および負極を、負極−Cサイズ正極(切欠き有り)−負極−Aサイズ正極(切欠き有り)−負極−Bサイズ正極(切欠き有り)−負極−Cサイズ正極(切欠き有り)−負極−Aサイズ正極(切欠き有り)−負極−Bサイズ正極(切欠き有り)−負極−Cサイズ正極(切欠き有り)−負極−Aサイズ正極(切欠き有り)−負極−Bサイズ正極(切欠き有り)−負極の順に積層して積層型電極群を構築した。積層させる際、各正極および各負極の面内方向の中心が重なるようにした。
なお、構築した積層型電極群では、Aサイズ正極とBサイズ正極との間で幅方向(短辺方向)の両端の位置が異なっており、ずれ幅Sは0.5mmだった。Aサイズ正極とCサイズ正極との間では、幅方向のずれ幅Sは1mmだった。Bサイズ正極とCサイズ正極との間では、幅方向のずれ幅Sは0.5mmだった。
また、Aサイズ正極とBサイズ正極との間では、切欠き加工をした四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは0.7mmだった。Aサイズ正極とCサイズ正極との間では、切欠き加工をした四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは0.14mmだった。Bサイズ正極とCサイズ正極との間では、切欠き加工をした四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは0.7mmだった。
一方、すべての正極の間で、長さ方向(長辺方向)の両方の端部の位置が揃っていた。また、すべての負極の間では、幅方向および長さ方向の何れも両方の端部の位置が揃っていた。
得られた積層型電極群を用いたことを除き、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(実施例6)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。正極シートを幅67mm、長さ92mmで9枚切出した。そのうちの3枚について、距離S1Iが1mmになるように1/4円弧形状の切欠きを四隅に設けた。さらに別の3枚について、距離S1IIが2mmとなるように1/4円弧形状の切欠きを四隅に設けた。残り3枚については、距離S1IIIが3mmとなるように1/4円弧形状の切欠きを四隅に設けた。
実施例1と同様の手順で負極シートを作製した。負極シートを幅67mm、長さ92mmで10枚切出して負極を得た。
各正極および各負極の上に絶縁性粒子の分散液を塗布し、加熱乾燥した後、これら正極および負極を、負極−正極(S1III=3mm)−負極−正極(S1II=2mm)−負極−正極(S1I=1mm)−負極−正極(S1I=1mm)−負極−正極(S1II=2mm)−負極−正極(S1I=1mm)−負極−正極(S1III=3mm)−負極−正極(S1II=2mm)−負極−正極(S1III=3mm)−負極の順に積層して積層型電極群を構築した。積層させる際、各正極および各負極の面内方向の中心が重なるようにした。
なお、構築した積層型電極群では、1mmの距離S1Iで切欠いた正極と2mmの距離S1IIで切欠いた正極とで、四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは距離S2に対応し、1mmだった。1mmの距離S1Iで切欠いた正極と3mmの距離S1IIIで切欠いた正極とで、四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは2mmだった。2mmの距離S1IIで切欠いた正極と3mmの距離S1IIで切欠いた正極とで、四隅のそれぞれの端部の位置のずれ幅Sは距離S2に対応し、1mmだった。
得られた積層型電極群を用いたことを除き、実施例1と同様にして図7に示す構造を含む二次電池を作製した。
(実施例7)
負極活物質として粒径3μm(D50値)のチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)粉末を準備した。準備したチタン酸リチウム粉末90重量%、粒径5μm(D50値)の人造黒鉛5重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%を、NMP溶液に加えて混合してスラリーを調製した。このスラリーを用いて厚さ113μmの負極シートを作製し、実施例1と同様の寸法で10枚の負極を切出した。
この負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(実施例8)
負極活物質として粒径2μm(D50値)の斜方晶型のチタン含有複合酸化物(Li2Na1.5Ti5.5Nb0.5O14)粉末を準備した。この斜方晶型チタン含有複合酸化物粉末90重量%、粒径5μm(D50値)の人造黒鉛5重量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)5重量%を、NMP溶液に加えて混合してスラリーを調製した。このスラリーを用いて厚さ131μmの負極シートを作製し、実施例1と同様の寸法で10枚の負極を切出した。
この負極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(比較例1)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。実施例1におけるAサイズ正極と同じ寸法で10枚の正極を切り出した。電極群を構築する際、これらAサイズ正極の端部が揃うようにした。
この正極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
(比較例2)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。実施例1におけるAサイズ正極と同じ寸法で10枚の正極を切り出した。電極群を構築する際、これらAサイズ正極の端部が揃うようにした。
この正極を用いたこと以外は、実施例7と同様にして二次電池を作製した。
(比較例3)
実施例1と同様の手順で正極シートを作製した。実施例1におけるAサイズ正極と同じ寸法で10枚の正極を切り出した。電極群を構築する際、これらAサイズ正極の端部が揃うようにした。
この正極を用いたこと以外は、実施例8と同様にして二次電池を作製した。
<評価>
実施例1−6及び比較例1で得られた各二次電池を2.9V及び1Aで5時間の定電流−定電圧(CCCV)充電を行い、満充電状態とした。実施例7−8及び比較例2−3で得られた各二次電池を2.7V及び1Aで5時間のCCCV充電を行い、満充電状態とした。
充電後の各二次電池を樹脂製の平底バット内に置き、各二次電池の上に600gのステンレス製板を載せた。この状態で25℃環境下で24時間静置させた後、各二次電池の電圧を測定した。
静置後の二次電池の電圧は、実施例1において2.83V、実施例2において2.81V、実施例3において2.86V、実施例4において2.81V、実施例5において2.85V、実施例6において2.82V、及び比較例1において2.73Vであった。
また、静置後の二次電池の電圧は、実施例7では2.64V、実施例8では2.63V、比較例2では2.59V、及び比較例3では2.57Vであった。
実施例1−6及び比較例1の二次電池では、静置前の電池電圧が2.9Vだった。実施例1−6の二次電池と比較して、比較例1の二次電池では静置する前後の電池電圧の減少量が多かった。このことから、実施例1−6と比較して、比較例1では自己放電量が多かったことが分かる。
実施例7−8及び比較例2−3の二次電池では、静置前の電池電圧が2.7Vだった。実施例7−8の二次電池と比較して、比較例2−3の二次電池では静置する前後の電池電圧の減少量が多かった。このことから、実施例7−8と比較して、比較例2−3では自己放電量が多かったことが分かる。
実施例1−8と比較例1−3との比較から、実施例1−8では、短絡耐性が向上していたと判断できる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、電気的絶縁層と第1電極と第2電極とを具備する電極群が提供される。第2電極は、電気的絶縁層を介して第1電極と第1方向に積層されている。第1電極は第1方向と直交する方向のうち1以上の第2方向の第1端部を複数含む。複数の第1端部は第2方向への異なる位置に配置されている。この構成の電極群は、短絡耐性が優れている二次電池および電池パック、並びにこの電池パックが搭載されている車両を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
[1] 電気的絶縁層と
第1電極と、
前記電気的絶縁層を介して前記第1電極と第1方向に積層されている第2電極と
を具備し、
前記第1電極は前記第1方向と直交する方向のうち1以上の第2方向の第1端部を複数含み、複数の前記第1端部は前記第2方向への異なる位置に配置されている電極群。
[2] 前記第2電極は、前記第2方向の第2端部を複数含み、複数の前記第2端部は前記第2方向に揃った位置に配置されている[1]に記載の電極群。
[3] 複数の前記第1端部のうち、前記第1方向の両方の最遠端にそれぞれ位置する2つの前記第1端部の一方または両方の前記第2方向への位置は、前記第1端部の一方または両方と前記第1方向に隣接する他の前記第1端部の前記第2方向への位置と異なる[1]又は[2]に記載の電極群。
[4] 複数の前記第1端部のうち前記第1方向に隣接する2つの前記第1端部の間で、前記第2方向の位置のずれ幅Sが前記第1電極の厚さTに対して5×T以上である[1]から[3]の何れか1つに記載の電極群。
[5] 前記電気的絶縁層と、前記第1電極と、前記第2電極とを含む電極積層体が複数積層されている積層型電極構造体を含む[1]から[4]の何れか1つに記載の電極群。
[6] 前記電気的絶縁層と、前記第1電極と、前記第2電極とを含む電極積層体が捲回されている捲回型電極構造体を含む[1]から[4]の何れか1つに記載の電極群。
[7] 前記第1電極は前記捲回型電極構造体において積層されている複数の周を含み、複数の前記周のうち積層方向に隣接する2つの前記周の間で前記第1電極の前記捲回型電極構造体の捲回軸方向に平行な幅が異なる[6]に記載の電極群。
[8] 前記第1電極および前記第2電極のうち一方は、Li 4+x Ti 5 O 12 で表され0≦x≦3であるチタン酸リチウム、Li a TiM b Nb 2+β O 7+δ で表されMはFe,V,Mo,Taからなる群より選択される少なくとも1つであり、0≦a≦5、0≦b≦0.3、−0.3≦β≦0.3、−0.3≦δ≦0.3であるニオブチタン複合酸化物、及びLi 2+a M(I) 2-b Ti 6-c M(II) d O 14+σ で表されM(I)はSr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Kから選ばれる少なくとも1つであり、M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Alからなる群より選択される少なくとも1つであり、0≦a≦6、0<b<2、0<c<6、0<d<6、−0.5≦σ≦0.5である斜方晶型チタン含有複合酸化物からなる群より選択される少なくとも1つを含む[1]から[7]の何れか1つに記載の電極群。
[9] 前記電気的絶縁層は絶縁性粒子を含む、[1]から[8]の何れか1つに記載の電極群。
[10] 前記絶縁性粒子は、アルミナ及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも1つを含む[9]に記載の電極群。
[11] 前記絶縁性粒子は、リチウムイオン伝導性の無機化合物の粒子を含む[9]に記載の電極群。
[12] 前記電気的絶縁層はゲル電解質をさらに含む[1]から[11]の何れか1つに記載の電極群。
[13] [1]から[12]の何れか1つに記載の電極群と、
前記電極群を収容する外装部材と
を具備する二次電池。
[14] [13]に記載の二次電池を具備する電池パック。
[15] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[14]に記載の電池パック。
[16] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[14]又は[15]に記載の電池パック。
[17] [14]から[16]の何れか1つに記載の電池パックを搭載した車両。
[18] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む、[17]に記載の車両。