(実施形態1)
以下では、本実施形態の電磁石装置10を、図1ないし図4に基づいて説明する。図中においては、同じ部材に対し、同じ符号を付して重複する説明を省略する。各図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。以下の説明において、本実施形態を構成する各要素は、複数の要素を一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼ねる態様としてもよいし、一の部材の機能を複数の部材で分担して実現してもよい。
本実施形態の電磁石装置10は、図1および図2に示すように、コイル3と、ボビン2と、可動鉄芯1と、封止部4と、を備えている。ボビン2は、コイル3が巻き回しされる筒部2aを有している。可動鉄芯1は、筒部2aに収納される。可動鉄芯1は、コイル3で生じる電磁力により、コイル3の軸方向に沿って可動するように構成されている。封止部4は、コイル3を封止する。ボビン2は、軸方向に沿った両端部において、軸方向に対して傾斜する方向に突出する鍔部2bを有している。鍔部2bは、軸方向に沿った断面視において、軸方向に沿った外方へ鍔部2bの表面から突出する突出部2cを有している。突出部2cは、図3に示すように、軸方向から見て、筒部2aの外周よりも外側で環状に設けられている。鍔部2bは、軸方向から見て、突出部2cの外周よりも外側が封止部4で覆われている。図3では、封止部4で覆われた鍔部2bを破線で例示している。鍔部2bは、軸方向から見て、突出部2cと、突出部2cの内周よりも内側の部分と、が封止部4から露出している。
本実施形態の電磁石装置10は、突出部2cの外周よりも外側が封止部4で覆われ、かつ突出部2cと突出部2cの内周よりも内側の部分とが封止部4から露出している構成により、より信頼性の高い構造とすることができる。
以下では、本実施形態の電磁石装置10について、具体的に説明する。
電磁石装置10は、可動鉄芯1と、筒部2aおよび鍔部2bを有するボビン2と、コイル3と、封止部4とに加え、接続端子5と、カバー7と、ケース8と、シールリング9と、可動軸11と、電線12と、を備えている。電磁石装置10は、さらに、第1リング6aと、第2リング6bと、第3リング6cと、第4リング6dと、第1ブッシュ13aと、第2ブッシュ13bと、を備えている。
本実施形態の電磁石装置10は、図2および図4に示すように、電線12から接続端子5を介して、ボビン2に形成されたコイル3へ通電できるように形成されている。電磁石装置10は、コイル3への通電に伴い電磁力を生じる。電磁石装置10は、カバー7、ケース8、シールリング9および可動鉄芯1が、コイル3により生じる磁束を通す磁路を形成している。電磁石装置10は、コイル3の電磁力により、可動鉄芯1と連結された可動軸11の一部が、内部に引っ込んだ状態と、外部により突出した状態とで可動するように構成されている。図1では、可動軸11の一部が外部により突出した状態を、一点鎖線で例示している。すなわち、電磁石装置10は、電磁エネルギを機械的な運動に変換している。
以下では、本実施形態の電磁石装置10に用いられる各構成について、詳述する。
可動鉄芯1は、円柱状の外形形状をしている。可動鉄芯1は、円柱の中心軸に沿って、挿通孔1aaが設けられている。可動鉄芯1は、ボビン2における筒部2aに収納できるように、外径が筒部2aの内径よりも小さく形成されている。可動鉄芯1は、筒部2aの軸方向に沿って移動することができるように構成されている。
可動鉄芯1は、コイル3により生じる磁束を通す材料により形成されている。可動鉄芯1は、強磁性の剛体を用いることができる。可動鉄芯1の材料としては、たとえば、電磁軟鉄、コバルト、ニッケル、ケイ素鋼、パーマロイやフェライトなどを用いることができる。可動鉄芯1は、円柱状だけに限られず、角柱状や立方体など種々の形状とすることができる。可動鉄芯1は、可動鉄芯1の酸化を防止させるために、被覆膜で被覆されていてもよい。被覆膜としては、めっきにより形成させることができる。
ボビン2は、円筒状の筒部2aと、筒部2aの両端から径方向である外側に突出する鍔部2bと、を有している。鍔部2bは、円環平板状の外形形状をしている。鍔部2bは、軸方向に沿った断面視において、台形状の突出部2cを備えている。突出部2cは、筒部2aの外周から外側に向かうにつれ、鍔部2bの表面から軸方向に沿った外方へ突出する突出量が所定の突出量となるまで徐々に大きくなるように形成されている。言い換えれば、鍔部2bは、突出部2cにより、筒部2aの外周から外方に向かうにつれ、厚みが厚くなるように構成されている。以下では、2つの鍔部2bのうち、一方の鍔部2bを第1鍔体2bsと称し、他方の鍔部2bを第2鍔体2btと称することもある。筒部2aは、軸方向に沿った一端に第1鍔体2bsが設けられている。筒部2aは、軸方向に沿った一端と反対の他端に第2鍔体2btが設けられている。ボビン2は、図4に示すように、接続端子5を保持する端子保持部2fが第1鍔体2bsに備えられている。端子保持部2fは、軸方向から見て、第1鍔体2bsの外周から外側に向かって突出するように設けられている。端子保持部2fは、図3に示すように、軸方向から見て、T字状の外形形状をしている。
ボビン2は、樹脂材料を用いて形成されている。ボビン2の樹脂材料としては、たとえば、PA(Poly Amide)樹脂を用いることができる。ボビン2の樹脂材料は、PA樹脂だけでなく、PBT(Poly Butylene Terephthalate)樹脂、LCP(Liquid Crystal Plastic)樹脂、PET(Poly Ethylene Terephthalate)樹脂、フェノール樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂やPP(polypropylene)樹脂などを用いることができる。ボビン2は、樹脂材料を用いる場合、樹脂材料中にガラス繊維を配合されることで機械的強度が高められていてもよい。ボビン2は、たとえば、樹脂材料中に30重量%のガラス繊維が配合された構成とすることができる。樹脂材料中のガラス繊維は、30重量%だけに限られず、5重量%ないし50重量%の範囲内で適宜に含有されていればよい。
コイル3は、ボビン2の筒部2aに線材3aが巻き回しされて形成される。線材3aは、表面が絶縁処理された金属線材を用いることができる。金属線材には、たとえば、銅線を用いることができる。金属線材は、たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂などの絶縁材により被膜され、表面の絶縁処理が行われている。
封止部4は、コイル3を封止することができるように形成されている。封止部4は、コイル3に加え、ボビン2の一部、接続端子5や電線12の一部を封止することができるように形成される。封止部4は、コイル3、ボビン2、接続端子5や電線12の一部を封止することで、コイル3の電気絶縁性を高めることができる。封止部4は、コイル3、ボビン2、接続端子5や電線12の一部を封止することで、電磁石装置10の機械的強度を高めることができる。言い換えれば、封止部4は、電磁石装置10の防水性や機械的強度を高めることができる。
封止部4は、樹脂材料を用いて形成されている。封止部4の樹脂材料としては、たとえば、PA樹脂、PBT樹脂、LCP樹脂、PET樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂やPP樹脂などを用いることができる。封止部4は、樹脂材料を用いる場合、樹脂材料中にガラス繊維を配合させることで機械的強度を高めてもよい。封止部4は、たとえば、樹脂材料中に30重量%のガラス繊維を配合した構成とすることができる。樹脂材料中のガラス繊維は、30重量%だけに限られず、5重量%ないし50重量%の範囲内で適宜に含有されていればよい。封止部4の表面は、コーティング材で被覆されていてもよい。コーティング材は、たとえば、封止部4の材料がPBT樹脂などの場合、フッ素樹脂などの樹脂材料を用いることができる。
接続端子5は、ボビン2から導出した線材3aと電気的かつ機械的に接続できるように構成されている。接続端子5は、端子保持部2fに保持される。接続端子5は、電磁石装置10の内部に配置されるコイル3と、電磁石装置10の外部に導出する電線12と、を電気的に接続させる。接続端子5は、第1コイル端子5aと、第2コイル端子5bと、を備えている。第1コイル端子5aは、ボビン2から導出した線材3aの一端と電気的に接続される。第2コイル端子5bは、ボビン2から導出した線材3aの一端と反対の他端と電気的に接続される。第1コイル端子5aと第2コイル端子5bとは、軸方向から見て、第1鍔体2bsの外周方向に沿って、所定の間隔を隔てて配置されている。接続端子5は、軸方向から見て、第1コイル端子5aと、第2コイル端子5bとを、線対象の構造としている。以下では、接続端子5の構成を主として第1コイル端子5aで説明する。
第1コイル端子5aは、図4に示すように、端子本体部5sと、フック部5tと、挟持部5uと、固着部5vと、を有している。端子本体部5sとフック部5tと挟持部5uと固着部5vとは、一体的に形成されている。
端子本体部5sは、軸方向から見て、長尺の板状の外形形状をしている。端子本体部5sは、先端が端子保持部2fの端面に設けられた挿入孔に圧入され、ボビン2に保持される。端子本体部5sは、鍔部2bの外周から外側へ突出するように設けられる。フック部5tは、端子保持部2fに圧入された端子本体部5sの先端側から分岐するように設けられている。フック部5tは、ボビン2から導出した線材3aを巻き付けて引っ掛けることができるように構成されている。フック部5tは、線材3aを巻き付けて引っ掛けることにより、線材3aの弛みを抑制できる。挟持部5uは、フック部5tに巻き付けられた線材3aの先端を挟み持つことができるように構成されている。挟持部5uは、接続端子5の一側縁から幅方向に突出する側端縁を折り曲げ加工することにより形成される。
固着部5vは、端子本体部5sにおける端子保持部2fに保持された先端と反対側に設けられている。固着部5vは、コイル3の軸方向に沿って配置される。固着部5vは、端子本体部5sにおける端子保持部2fに保持された先端と反対側が、屈曲されて形成されている。固着部5vは、電線12の芯線12aが固着される。固着部5vは、スポット溶接により、電線12と電気的かつ機械的に接続される。電磁石装置10は、スポット溶接により接続端子5と電線12とを接合させる構成だけに限られず、半田付けやレーザ溶着により接続させてもよい。
接続端子5は、平板状の金属材を用いて形成することができる。接続端子5は、平板状の金属材に、打ち抜き加工、折り曲げ加工や押圧加工などを施して形成することができる。接続端子5は、導電性の高い材料を用いることが好ましい。接続端子5の材料としては、たとえば、黄銅を用いることができる。接続端子5の材料は、黄銅だけに限られず、リン青銅、鉄、ステンレスなどを用いることができる。接続端子5は、表面をスズや銀でめっきした構造としてもよい。
第1リング6a、第2リング6b、第3リング6cおよび第4リング6dのそれぞれは、可撓性リングを用いて構成されている。可撓性リングは、たとえば、Oリングを用いることができる。可撓性リングは、たとえば、径方向断面がO字形状のOリングだけに限られず、径方向断面がX字形状のXリングを用いてもよい。可撓性リングは、シール材としての機能を果たすことができる。可撓性リングは、たとえば、フッ素ゴムを用いることができる。可撓性リングの材料として、フッ素ゴムだけに限られず、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴムなどを用いてもよい。第1リング6a、第2リング6b、第3リング6cおよび第4リング6dのそれぞれは、円環状の外形形状をしている。第1リング6aと第2リング6bとは、同じ大きさに形成されている。第3リング6cと第4リング6dとは、同じ大きさに形成されている。第3リング6cと第4リング6dとは、第1リング6aおよび第2リング6bよりも大きく形成されている。第1リング6aと第2リング6bとは、図1に示すように、円筒状のシールリング9の内部に収納される。第1リング6aは、カバー7とシールリング9との間の気密性を高めることができる。第2リング6bは、ケース8とシールリング9との間の気密性を高めることができる。第1リング6aと第2リング6bとは、可動鉄芯1が可動する電磁石装置10における内部の空洞10aaと外部とが連なって通じないように設けられている。第1リング6aと第2リング6bとは、電磁石装置10における内部の空洞10aaに油がある場合でも、外部に油が漏れないように構成されている。
第3リング6cは、シールリング9とボビン2とケース8との間に設けられる。第3リング6cは、ボビン2における台形状の突出部2cとシールリング9とケース8との間に設けられた空間に収納されている。第4リング6dは、ボビン2とカバー7との間に設けられる。第4リング6dは、ボビン2における台形状の突出部2cとカバー7との間に設けられた空間に収納されている。第3リング6cおよび第4リング6dは、カバー7とケース8とシールリング9とで形成される空洞10aaへの水、塵やごみなどが入り込むことを防止するように構成されている。第3リング6cおよび第4リング6dは、電磁石装置10の内部でボビン2が振れ動くことを抑制することもできる。
カバー7は、平板部7aと、筒状部7bと、を備えている。カバー7は、平板部7aと筒状部7bとで、有底円筒状の外形形状をしている。平板部7aは、図2に示すケース8の凹部8aaを塞ぐことができるように形成されている。平板部7aは、筒状部7bで囲まれる中央部に凹所7aaを備えている。筒状部7bは、外径がボビン2の筒部2aの内径よりも若干小さく形成されている。カバー7の筒状部7bは、ボビン2の筒部2aに挿通される。筒状部7bは、内径が可動鉄芯1の外径よりも若干大きく形成されている。筒状部7bは、可動鉄芯1がコイル3の軸方向に沿って可動する場合、可動鉄芯1を案内することができるように構成されている。筒状部7bは、シールリング9を介して、ケース8に嵌め合されるように構成されている。
カバー7は、コイル3と磁気的に結合することができるように構成されている。カバー7は、可動鉄芯1と同様に、コイル3により生じる磁束を通す材料により形成されている。カバー7は、磁性金属材料を用いることができる。カバー7の材料としては、たとえば、電磁軟鉄により形成することができる。カバー7の材料としては、電磁軟鉄だけに限られず、コバルト、ニッケル、ケイ素鋼、パーマロイやフェライトなどを用いることができる。カバー7は、可動鉄芯1と同じ材料を用いて構成されてもよいし、異なる材料を用いて構成されてもよい。
ケース8は、有底円筒状のケース本体部8aと、円筒状の取付部8bと、を備えている。ケース本体部8aは、底壁部8cと、底壁部8cを囲むように筒状に設けられた側壁8dと、底壁部8cの中央部から側壁8dに囲まれるように突出する突起枠8eと、を備えている。側壁8dと底壁部8cとで囲まれた領域は、ケース8の凹部8aaを構成している。突起枠8eは、円筒状の外形形状をしている。突起枠8eの内側には、内突部8fが設けられている。内突部8fには、底壁部8cに窪んだ窪部8abが設けられている。ケース本体部8aには、側壁8dの外周面に雄ねじが形成されている。
ケース本体部8aには、コイル3が封止部4で封止されたボビン2が収納される。ケース本体部8aは、図2に示すように、凹部8aaの開放端側から切り欠かれるように、溝部8daが側壁8dに設けられている。ケース本体部8aは、側壁8dにおける溝部8daを介して、凹部8aaからケース本体部8aの外部に接続端子5を導出させることができるように構成されている。溝部8daは、ボビン2から突出する接続端子5を封止する封止部4を案内できるように構成されている。
取付部8bは、図1に示すように、軸方向に沿って、底壁部8cから側壁8dと反対側に突出するように設けられている。取付部8bは、円筒状の内周面に雌ねじが形成されている。
ケース8は、側壁8dの外周面に形成された雄ねじや取付部8bの内周面に形成された雌ねじを利用して、電磁石装置10の外部の取付部材に取り付けられるように構成されている。ケース8は、コイル3と磁気的に結合できるように構成されている。ケース8の材料としては、たとえば、電磁軟鉄を用いることができる。ケース8の材料としては、電磁軟鉄だけに限られず、コバルト、ニッケル、ケイ素鋼、パーマロイやフェライトなどを用いることができる。
シールリング9は、円筒状の外形形状をしている。シールリング9は、軸方向に沿って、第1溝9aaと第2溝9abとが並んで設けられている。第1溝9aaは、円筒状の内部において、周方向に沿って設けられており、第1リング6aの一部を収納することができるように構成されている。第2溝9abは、円筒状の内部において、周方向に沿って設けられており、第2リング6bの一部を収納することができるように構成されている。シールリング9は、ボビン2の筒部2aに収納された状態で、カバー7における筒状部7bの先端部と第1リング6aを介して結合することができるように構成されている。シールリング9は、ボビン2の筒部2aに収納された状態で、ケース8における突起枠8eの先端部と第2リング6bを介して結合することができるように構成されている。シールリング9は、円筒状の形状だけに限られず、角筒状など種々の外形形状とすることができる。シールリング9は、筒状に形成する場合、内形を内部に収納するカバー7における筒状部7bの先端部およびケース8における突起枠8eの先端部の外形と相似形で若干大きな形状とすることが好ましい。シールリング9は、カバー7における筒状部7bの先端部と、ケース8における突起枠8eの先端部とを空隙を介して、対向するように配置させることができるように構成されている。
シールリング9は、非磁性体で形成されている。シールリング9の材料としては、たとえば、日本工業規格で定められたSUS303であるオーステナイト系のステンレスや樹脂などを用いることができる。
可動軸11は、長尺の丸棒状の軸部11aと、環状のストッパ部11bと、を備えている。可動軸11は、軸部11aが可動鉄芯1の挿通孔1aaに挿通される。ストッパ部11bは、軸部11aにおける長手方向の中央部に設けられている。ストッパ部11bは、可動鉄芯1の挿通孔1aaおよび軸部11aの外形よりも大きく形成されている。可動軸11は、ストッパ部11bにより可動鉄芯1の抜け止めがなされている。可動軸11は、長手方向の中央部に可動鉄芯1が固定されている。可動軸11は、非磁性材料にて形成することができる。可動軸11の材料としては、たとえば、SUS303であるステンレスなどの金属材料を用いることができる。
電線12は、図4に示すように、芯線12aと、絶縁被覆12bと、を備えている。芯線12aの材料としては、たとえば、銅などの金属材料を用いることができる。絶縁被覆12bの材料としては、たとえば、塩化ビニルを用いることができる。電線12は、コイル3に給電できるように、2本設けられている。2本の電線12は、合成樹脂のシース12cで覆われている。接続端子5の固着部5vに固着させた電線12は、導出方向がコイル3の軸方向と一致するように配置されている。
第1ブッシュ13aおよび第2ブッシュ13bそれぞれは、円筒状の外形形状をしている。第1ブッシュ13aおよび第2ブッシュ13bそれぞれは、可動軸11に挿通される。第1ブッシュ13aは、可動軸11における一端を保持することができるように構成されている。第1ブッシュ13aは、カバー7の凹所7aaに圧入される。第2ブッシュ13bは、可動軸11における一端と反対の他端を保持することができるように構成されている。第2ブッシュ13bは、ケース8の窪部8abに圧入される。第1ブッシュ13aおよび第2ブッシュ13bの材料としては、たとえば、ステンレスなどの金属材料を用いることができる。第1ブッシュ13aおよび第2ブッシュ13bの表面は、フッ素樹脂などの被膜が形成されていてもよい。
本実施形態の電磁石装置10では、電線12からの給電によりコイル3が通電される。電磁石装置10は、コイル3からの磁力線が磁気的に結合されたカバー7およびケース8に透入される。電磁石装置10は、カバー7、可動鉄芯1およびケース8が、コイル3により生じる磁束を通す磁路を形成している。カバー7およびケース8は、電磁力により生じる吸着力を増強させることができる。電磁石装置10は、コイル3で生じる電磁力により、コイル3の軸方向に沿って、可動鉄芯1を可動させることができる。電磁石装置10は、可動鉄芯1の可動により、可動鉄芯1が固定された可動軸11を移動させることができる。
以下では、本実施形態の電磁石装置10と、突出部2cを備えていない以外は同様の構成とした比較例の電磁石装置と、を比較して説明する。
電磁石装置は、たとえば、移動体のサスペンション装置に使用される場合、移動体が使用される高温から低温までの温度変化に晒される場合がある。電磁石装置には、振動や外力による負荷が掛かる場合がある。
電磁石装置では、コイルが形成されたボビンが封止部で封止されていても、温度変化、振動や外力による負荷が掛かった状況においては、水などが封止部で封止された内部のコイルにまで入り込むおそれがある。突出部2cがない比較例の電磁石装置では、封止部によって鍔部が封止されていても、外力などにより、鍔部が変形することで、水などが入り込むおそれがある。電磁石装置では、内部に入り込んだ水などでコイルに損傷を生じることで、信頼性が低下する場合がある。
本実施形態の電磁石装置10は、突出部2cが備えられ、鍔部2bの厚みが厚くなるように形成されている。電磁石装置10は、コイル3の軸方向から見て、突出部2cの外周よりも外側が封止部4に覆われ、突出部2cと突出部2cの内周よりも内側の部分とが封止部4から露出している構成により、鍔部2bの機械的強度を向上させることができる。本実施形態の電磁石装置10は、鍔部2bの機械的強度を向上させることで、温度変化、振動や外力が加わった状況においても、封止部4で封止されたコイル3に水などが入り込むことを抑制できる。本実施形態の電磁石装置10は、封止部4で封止されたコイル3に水などが入り込むことを抑制することで、より信頼性の高い構造とすることができる。
本実施形態の電磁石装置10では、鍔部2bは、図3に示すように、軸方向から見て、突出部2cの外周よりも外側に凸部2dを有している。凸部2dは、図1に示すように、軸方向に沿った断面視において、軸方向に沿った外方へ鍔部2bの表面から突出する突出量が突出部2cよりも小さくなるように構成されている。
本実施形態の電磁石装置10は、凸部2dの突出量が突出部2cよりも小さいので、封止部4で突出部2cを覆うことができる。電磁石装置10は、突出部2cよりも外周に凸部2dを有しているので、凸部2dを有しない構成と比較して、外部に露出する封止部4とボビン2の鍔部2bとの界面からコイル3までの沿面距離を長くでき、コイル3に水などが入り込むことを抑制できる。電磁石装置10は、軸方向から見て、同心円状に複数の凸部2dを備えた構成とすることが、より好ましい。電磁石装置10は、軸方向から見て、同心円状に複数の複数の凸部2dを備えることで、より信頼性を高めることができる。
本実施形態の電磁石装置10では、図3および図4に示すように、凸部2dは、軸方向から見た一部に、軸方向に沿った断面視において、窪んだ段部2baを備えている。言い換えれば、凸部2dは、コイル3の軸方向から見て、段部2baにより複数の弧状に形成されている。
本実施形態の電磁石装置10では、凸部2dは、軸方向から見た一部に、軸方向に沿った断面視において、窪んだ段部2baを備えていることで、鍔部2bと封止部4との接着力を高めるアンカー効果を得ることが可能となる。電磁石装置10は、温度変化、振動や外力による負荷が掛かった状況においても、より信頼性を高めることができる。
本実施形態の電磁石装置10では、段部2baには、軸方向に沿った断面視において、軸方向に沿った外方へ鍔部2bの表面から突出する突起部2eが設けられている。
本実施形態の電磁石装置10は、段部2baに鍔部2bの表面から突出する突起部2eが設けられていることで、周方向に加わる力に対してボビン2と封止部4との接着力を、より高めたアンカー効果を得ることができる。突起部2eは、ボビン2を射出成形により形成させる場合、ゲート残りを利用して形成することもできる。電磁石装置10は、温度変化、振動や外力による負荷が掛かった状況においても、さらに信頼性を高めることができる。
以下では、電磁石装置10の組立工程について、説明する。
電磁石装置10の組立工程では、所定の金型で予めボビン2が成形される。ボビン2は、たとえば、射出成形機を用いて、金型内に樹脂材料を射出成形することで、鍔部2bに円環状の突出部2cを備えた形状に形成される。
組立工程では、ボビン2とは別途に接続端子5が金属製の平板の打ち抜き加工、曲げ加工により形成される。組立工程では、ボビン2における端子保持部2fの挿入孔に、接続端子5において端子本体部5sの先端が圧入される。
次に、組立工程では、ボビン2の筒部2aに線材3aが巻き回しされてコイル3が形成される。コイル3から導出した線材3aは、接続端子5のフック部5tに巻き付けて引き掛けることにより、弛みの防止が行われる。
組立工程では、筒部2aに巻き回しされたコイル3の線材3aが接続端子5の挟持部5uに仮かしめされる。組立工程では、線材3aが挟持部5uに仮かしめされた後、ヒュージングより線材3aが接続端子5に機械的に固定され、電気的に接続される。組立工程では、たとえば、接続端子5から突出する不要な線材3aがカットされた後、接続端子5をコイル3の軸方向に曲げる折り曲げ加工がおこなわれる。組立工程では、接続端子5をコイル3の軸方向に折り曲げ加工が行われた後、電線12の芯線12aが固着部5vにスポット溶接される。組立工程では、電線12の芯線12aが接続端子5の固着部5vと重なるように配置された上で、スポット溶接が行われる。スポット溶接は、スポット溶接機の一対の電極の間に固着部5vと電線12の芯線12aとを挟んだ状態で電流を流すことにより、固着部5vと芯線12aとを固着できる。
次に、組立工程では、射出成形により、コイル3が形成されたボビン2を封止部4で封止する封止部形成工程を行う。封止部4は、たとえば、図5に示す金型材50を用いた射出成形機で、コイル3を封止するようにボビン2と一体的に形成される。金型材50は、第1金型50aと、第1金型50aと対向する第2金型50bと、を備えている。第1金型50aと第2金型50bとは、第1金型50aと第2金型50bとが合わされた状態で、封止部4を形成するための空洞部50caが構成される。
封止部形成工程は、型締め工程と、射出工程と、を有している。型締め工程は、第1金型50aと第2金型50bとが合わされた状態で、円筒状の空洞部50caが内部に構成される。型締め工程は、第1金型50aが第2鍔体2btの突出部2cと当たるように空洞部50caの長手方向の一端を塞ぐ。型締め工程は、第2金型50bが第1鍔体2bsの突出部2cに当たるように空洞部50caの長手方向の一端と反対の他端を塞ぐ。型締め工程では、第1金型50aと第2金型50bとが嵌め合わせられることで、突出部2cが鍔部2bを支えている。
続いて、射出工程では、空洞部50caに導入孔50ccからボビン2に向かって樹脂材料が射出される。射出工程では、空洞部50caに樹脂材料が充填される。封止部形成工程では、射出工程の後、封止部4でコイル3が封止されたボビン2を、金型材50から取り出される。言い換えれば、封止部形成工程では、コイル3が形成されたボビン2を2次成形することで、モールドコイルを形成している。
ところで、封止部形成工程では、図6に示すように、突出部2cを備えていない比較例の電磁石装置における封止部を形成する場合、射出成形による樹脂材料の射出圧力によって、金型材の空洞部内で鍔部2bに変形が生じるおそれがある。図6では、変形した鍔部2bを、一点鎖線で例示している。封止部形成工程では、たとえば、金型材の空洞部内で鍔部2bが変形し図6の両矢印の向きに振動すると、筒部2aに巻き回しされた線材3aの巻き回しにばらつきが生じるおそれがある。封止部形成工程では、たとえば、金型材の空洞部内で鍔部2bが変形し図6の両矢印の向きに振動すると、筒部2aに巻き回しされた線材3aが解けるおそれがある。比較例の電磁石装置では、線材3aの巻き回しばらつきや線材3aが解けることに起因する特性ばらつきや信頼性の低下を生じるおそれがある。
本実施形態の電磁石装置10では、環状の突出部2cが鍔部2bに設けられるので、軸方向から見て、ボビン2における筒部2aの近傍となる根元の厚みが厚くすることができる。組立工程では、ボビン2における筒部2aの近傍となる根元の厚みが厚くすることができるため、樹脂材料による射出圧で鍔部2bが変形することを抑制することもできる。組立工程では、樹脂材料による射出圧で鍔部2bが変形することを抑制することで、筒部2aに巻き回しされた線材3aが解けることを防止することができる。組立工程では、筒部2aに巻き回しされた線材3aが解けることを防止することで、封止部4の外部に解けた線材3aが露出することを防止し、封止信頼性を更に向上させることができる。
次に、組立工程では、カバー7の筒状部7bにおける中央部に設けられた凹所7aaに、第1ブッシュ13aが圧入される。カバー7の筒状部7bの外周には、筒状部7bにおける平板部7a側に第4リング6dが挿入される。同様に、組立工程では、ケース8の凹部8aa内における中央部に設けられた窪部8abに第2ブッシュ13bが圧入される。組立工程では、予めシールリング9の第1溝9aaに第1リング6aが装着され、シールリング9の第2溝9abに第2リング6bが装着される。
組立工程では、第2リング6bを介して、ケース8とシールリング9との隙間を封止するように、ケース8の突起枠8eの先端部にシールリング9が圧入される。組立工程では、突起枠8eにシールリング9が圧入された後、シールリング9の外周に第3リング6cが装着される。組立工程では、可動軸11の先端をケース8の窪部8abに圧入された第2ブッシュ13bに挿通させる。可動軸11には、予め可動鉄芯1が、かしめられている。
次に、組立工程では、封止部4でコイル3が封止されたボビン2を、ケース8の凹部8aaに収納する。組立工程では、コイル3、ボビン2や可動鉄芯1などが収納された状態で、第4リング6dが挿入されたカバー7を、ケース8の凹部8aaを塞ぐように被せる。組立工程では、カバー7とケース8とが、かしめられ固定されることで、電磁石装置10が形成される。
(実施形態2)
図7に示す本実施形態の電磁石装置10は、凸部2dと封止部4との間に空隙10ccを有する以外、図1に示す電磁石装置10と同様の構成としている。実施形態1と同様の構成には、同一の符号を付して説明は省略する。
本実施形態の電磁石装置10では、図7に示すように、凸部2dと封止部4との間には、空隙10ccを有している。
本実施形態の電磁石装置10は、凸部2dと封止部4との間に空隙10ccを有することで、外部に露出する封止部4と、ボビン2の鍔部2bとの界面から水などが入り込むことを空隙10ccの表面張力などで抑制させることができる。
空隙10ccは、封止部4を形成する樹脂材料の射出圧や凸部2dの形状を適宜に調整することにより設けることができる。
(実施形態3)
図8に示す本実施形態の移動体30は、図1に示す電磁石装置10を備えた構成としている。実施形態1と同様の構成には、同一の符号を付して説明は省略する。
本実施形態の移動体30は、図8に示すように、実施形態1の電磁石装置10と、電磁石装置10を搭載する本体31と、を備えている。
本実施形態の移動体30は、実施形態1の電磁石装置10を用いることで、より信頼性を高めることが可能となる。
以下では、電磁石装置10を備えた移動体30について、簡単に説明する。
移動体30としては、たとえば、自動車などが挙げられる。移動体30は、自動車だけに限られず、自動二輪車や電車などであってもよい。移動体30の本体31には、たとえば、電磁石装置10が組み込まれたサスペンション装置32が設けられている。
サスペンション装置32には、たとえば、シリンダと、ピストンと、バルブと、を備えている。ピストンは、シリンダ内を移動できるようにシリンダに挿入され、シリンダを伸側室と圧側室とに区画できるように構成されている。シリンダ内には、油が充填される。シリンダやピストンには、伸側室と圧側室とを連通するように油が流れる流路が設けられる。バルブは、流路の途中に設けられる。電磁石装置10は、可動軸11の伸縮によりバルブの開閉状態を変化させることができるように構成されている。サスペンション装置32は、制御装置33からの指令により、電磁石装置10がバルブの開閉状態を変化させることで、減衰力特性を変化させることができる。図8では、制御装置33から電磁石装置10への指令を、破線の矢印で例示している。制御装置33は、たとえば、本体31に搭載されたECU(Electronic Control Unit)を利用して構成することができる。
本実施形態の移動体30は、実施形態1の電磁石装置10を用いる構成だけに限られず、実施形態2の電磁石装置10を用いる構成であってもよい。