図1は、本開示の発明の実施形態に係る動力伝達装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、自動変速機25を有する動力伝達装置20の機械的構成の概略を示す構成図である。
自動車10は、図1および図2に示すように、エンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)16と、エンジン12のクランクシャフト14に取り付けられた流体伝動装置23と、この流体伝動装置23の出力側に入力軸26が接続されると共にギヤ機構42やデファレンシャルギヤ44を介して駆動輪18a,18bに出力軸28が接続され入力軸26に入力された動力を変速して出力軸28に伝達する有段の自動変速機25と、流体伝動装置23や自動変速機25に作動油を供給する油圧制御装置60と、油圧制御装置60を制御することによって流体伝動装置23や自動変速機25を制御する変速機用電子制御ユニット(以下、変速機ECUという)80と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)17と、を備える。ここで、動力伝達装置20としては、主として、流体伝動装置23,自動変速機25,油圧制御装置60,変速機ECU80が該当する。
エンジンECU16は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。エンジンECU16にはクランクシャフト14に取り付けられた回転速度センサ14aからのエンジン回転速度Neなどのエンジン12の運転状態を検出する各種センサからの信号やアクセルペダル91の踏み込み量としてのアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Acc,車速センサ98からの車速Vなどの信号が入力ポートを介して入力されている。エンジンECU16からは、スロットルバルブを駆動するスロットルモータへの駆動信号や燃料噴射弁への制御信号,点火プラグへの点火信号などが出力ポートを介して出力されている。
流体伝動装置23は、図2に示すように、ロックアップクラッチ付きの流体式トルクコンバータとして構成されている。この流体伝動装置23は、エンジン12のクランクシャフト14に接続される入力側のポンプインペラ23pと、自動変速機25の入力軸26に接続される出力側のタービンランナ23tと、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tの内側に配置されてタービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油の流れを整流するステータ23sと、ステータ23sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ23oと、を備える。また、流体伝動装置23は、エンジン12のクランクシャフト14に接続されたフロントカバーと自動変速機25の入力軸26とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するロックアップクラッチ23cと、フロントカバーと自動変速機25の入力軸26との間で振動を減衰するダンパ機構23dと、を備える。ロックアップクラッチ23cは、ピストン,複数の摩擦係合プレート(クラッチプレート),作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有する。
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、図2に示すように、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための4つのクラッチC1,C2,C3,C4,2つのブレーキB1,B2,ワンウェイクラッチF1と、を備える。
自動変速機25の第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する2つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転自在(回転自在)かつ公転自在に複数保持するプラネタリキャリヤ34とを備える。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、入力軸26に一体回転可能に連結されている。第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリヤ34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
自動変速機25の第2遊星歯車機構35は、外歯歯車である第1サンギヤ36aおよび第2サンギヤ36bと、第1および第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ37と、第1サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、第2サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリヤ39とを有する。第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、自動変速機25の出力部材として機能し、入力軸26からリングギヤ37に伝達された動力は、ギヤ機構42、デファレンシャルギヤ44を介して左右の駆動輪18a,18bに伝達される。また、プラネタリキャリヤ39は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持され、プラネタリキャリヤ39の回転方向は、ワンウェイクラッチF1により一方向に制限される。
クラッチC1〜C4は、いずれも、ピストン,複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート),作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有する摩擦式油圧クラッチとして構成されている。クラッチC1は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。クラッチC2は、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39とを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。クラッチC3は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。クラッチC4は、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除することができる。
ブレーキB1,B2は、いずれも、ピストン,複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート),作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、回転系を固定系に接続すると共にその接続の解除が可能な摩擦式油圧ブレーキとして構成されている。ブレーキB1は、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共に第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる。ブレーキB2は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39をトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共にプラネタリキャリヤ39のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる。
ワンウェイクラッチF1は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39に連結(固定)されるインナーレースや、トランスミッションケース22に固定されるアウターレース、インナーレースとアウターレースとの間に配置されたトルク伝達部材(複数のスプラグ等)を有し、プラネタリキャリア39の一方向の回転のみを許容する。
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2は、油圧制御装置60による作動油の給排を受けて動作する。図3に自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2,ワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2を図2の作動表に示す状態とすることで前進1〜8速の変速段と後進1速および2速の変速段とを提供する。具体的には、図3に示すように、前進1速は、クラッチC1を係合することで形成される。なお、前進1速は、エンジンブレーキ時には、ブレーキB2も係合される。前進2速は、クラッチC1とブレーキB1とを係合することで形成される。前進3速は、クラッチC1とクラッチC3とを係合することで形成される。前進4速は、クラッチC1とクラッチC4とを係合することで形成される。前進5速は、クラッチC1とクラッチC2とを係合することで形成される。前進6速は、クラッチC2とクラッチC4とを係合することで形成される。前進7速は、クラッチC2とクラッチC3とを係合することで形成される。前進8速は、クラッチC2とブレーキB1とを係合することで形成される。後進1速は、クラッチC3とブレーキB2とを係合することで形成される。後進2速は、クラッチC4とブレーキB2とを係合することで形成される。
油圧制御装置60は、図4に示すように、エンジン12の動力によって作動して作動油をライン圧用油路63に圧送するオイルポンプ61と、オイルポンプ61から圧送された作動油の一部をクーラ71やギヤ,ベアリング等の潤滑対象72に供給しながら調圧してライン圧用油路63にライン圧PLを発生させるレギュレータバルブ62と、ライン圧用油路63のライン圧PLを調圧してクラッチC1〜C4,ブレーキB1,B2,ロックアップクラッチ23cの各油圧サーボに供給するリニアソレノイドバルブSLC1〜SLC4,SLB1,SLB2,SLU(SLC2〜4とSLB1は図示せず)と、オイルポンプ61からの油圧を蓄圧する蓄圧器としてのアキュムレータ64と、アキュムレータ64とライン圧用油路63との連通と遮断とを行なうオンオフソレノイドバルブ65と、パーキングロック装置が備えるパーキングポールを駆動するパーキングシリンダ66とライン圧用油路63との連通と遮断とを行なうオンオフソレノイドバルブ67と、を備える。
パーキングロック装置は、本実施形態では、自動変速機25の回転軸に設けられたパーキングギヤやパーキングポール,スプリング,パーキングシリンダ66等を有し、油圧式のアクチュエータによってパーキングロックとその解除とを行なうシフトバイワイヤ式のパーキングロック装置として構成されている。パーキングポールは、スプリングの付勢力によってパーキングギヤに押し付けられることでパーキングギヤと係合し、オンオフソレノイドバルブ67を介して供給されるライン圧PLを用いてパーキングシリンダ66によって駆動されることでパーキングギヤとの係合を解除する。
変速機ECU80は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備える。変速機ECU80には、自動変速機25の入力軸26に取り付けられた回転速度センサ26aからの入力軸回転速度Nin,自動変速機25の出力軸28に取り付けられた回転速度センサ28aからの出力軸回転速度Nout,ライン圧用油路63の作動油の圧力(油圧)を検出する油圧センサ63aからのライン圧PL,アキュムレータ64内の圧力を検出する圧力センサ64aからのアキュムレータ内圧Pacc,油圧制御装置60内の作動油の油温を検出する油温センサからの油温Toil,シフトレバー95の位置を検出するシフトポジションセンサ96からのシフトポジションSP,車速センサ98からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。変速機ECU80からは、油圧制御装置60(リニアソレノイドバルブSLC1,SLB2,SLU,オンオフソレノイドバルブ65,67)への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
シフトレバー95のシフトポジションSPとしては、本実施形態では、駐車時に用いるパーキングポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)が用意されている。
なお、エンジンECU16とブレーキECU17と変速機ECU80は、相互に通信ポートを介して接続されており、相互に制御に必要な各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。変速機ECU80は、アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度AccをエンジンECU16を介して通信により入力したり、ブレーキペダル93の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ94からのブレーキ開度BをブレーキECU17を介して通信により入力したりしている。
こうして構成された本実施形態の自動車10では、変速機ECU80は、エンジン12の運転中にアクセル開度Accと車速Vとに基づいて自動変速機25の目標変速段が変更された(変速要求が行なわれた)ときには、変速制御として、クラッチC1〜C4およびブレーキB1,B2のうち自動変速機25の変速要求に応じて係合すべき係合要素としての変速係合要素に対して、係合状態となるようにサーボ制御,待機制御,トルク相制御,イナーシャ相制御,終期制御を行なう。変速係合要素としては、例えば、前進第1速から前進第2速に切り替える際にはブレーキB1が該当する。サーボ制御では、対象の係合要素(変速制御では変速係合要素)の油圧を上昇させることによって、油圧サーボのピストンと摩擦係合プレートとの隙間が詰まる(ピストンがストロークする)ように油圧制御装置60を制御する。待機制御では、対象の係合要素の油圧が比較的低い待機圧で保持されるように油圧制御装置60を制御する。トルク相制御では、対象の係合要素の油圧を徐々に上昇させることによって、トルクの伝達が変更前の変速段による伝達から変更後の変速段による伝達に変更されるように油圧制御装置60を制御する。イナーシャ相制御では、対象の係合要素の油圧を徐々に上昇させることによって、自動変速機25の入力軸26の回転速度Ninが変速後の変速段に応じた回転速度に近づくように油圧制御装置60を制御する。終期制御では、対象の係合要素の油圧が更に上昇するように油圧制御装置60を制御する。なお、変速制御では、変速係合要素を係合する際に、自動変速機25の変速要求に応じて解放すべき係合要素としての変速解放要素に対して、解放状態となるように油圧制御装置60を制御する解放制御を行なう。
また、本実施形態の自動車10では、変速機ECU80は、エンジン12の運転中にロックアップクラッチ23cの完全係合(ロックアップ)条件や半係合(スリップ)条件,解放条件が成立したときには、ロックアップ制御として以下の制御を行なう。完全係合条件が成立したときには、ロックアップクラッチ23cのサーボ制御や待機制御を行なってから、ロックアップクラッチ23cの完全係合が実行されるように油圧制御装置60を制御する完全係合制御を行なう。ロックアップクラッチ23cのサーボ制御や待機制御は、変速係合要素のサーボ制御や待機制御と同様に行なうことができる。半係合条件が成立したときには、ロックアップクラッチ23cのサーボ制御や待機制御を行なってから、ロックアップクラッチ23cの半係合(スリップ係合)によってエンジン12と自動変速機25の入力軸26との回転速度差(スリップ速度)が目標スリップ速度となるように油圧制御装置60を制御する半係合(スリップ)制御を行なう。解放条件が成立したときには、ロックアップクラッチ23cが解放されるように油圧制御装置60を制御する解放制御を行なう。
加えて、本実施形態の自動車10では、変速機ECU80は、エンジン12の運転中にシフトポジションSPがPポジションのときやシフトレバー95がPポジションからDポジションにシフト操作されたときなどには、ガレージ制御として以下の制御を行なう。シフトレバー95がDポジションにシフト操作されると、オンオフソレノイドバルブ67を開弁してパーキングシリンダ66に油圧を供給することにより、パーキングポールを駆動してパーキングポールとパーキングギヤとの係合を解除し、パーキングロックの解除を行なう。以下、この制御を「Pリリース制御」という。なお、シフトレバー95がPポジションにシフト操作されたときには、オンオフソレノイドバルブ67を閉弁してパーキングシリンダ66への油圧を供給を遮断することにより、スプリングの付勢力によってパーキングポールをパーキングギヤに係合させてパーキングロックを行なう。
本実施形態の自動車10では、エンジンECU16は、エンジン12の運転中に車速Vが所定車速以下でアクセルオフされているなどのエンジン12の自動停止条件が成立すると共にエンジン12の自動停止を許可する自動停止許可信号を変速機ECU80から受信したときには、エンジン12を自動停止(いわゆるアイドルストップ)する。また、エンジン12の自動停止中にブレーキオフおよびアクセルオンなどのエンジン12の自動始動条件が成立したときには、エンジン12をクランキングして自動始動する。
変速機ECU80は、エンジン12の運転中にアキュムレータ内圧Paccが停止許可閾値Paccsp以上のときには、エンジン12の自動停止を許可する自動停止許可信号をエンジンECU16に送信する。また、エンジン12が運転中のときには、必要に応じてオンオフソレノイドバルブ65を開弁してオイルポンプ61からの油圧(ライン圧用油路63の作動油)を蓄圧(充填)し、エンジン12が自動停止されるときには、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁してアキュムレータ64に蓄圧された油圧を保持する。そして、次回にエンジン12が自動始動されるときには、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してアキュムレータ64に蓄圧された油圧(作動油)をライン圧用油路63に放出し、エンジン12が自動始動してオイルポンプ61が作動するまで、アキュムレータ64からの油圧を用いて前進1速を形成するクラッチC1を係合する係合制御を行なう。
次に、こうして構成された本実施形態の動力伝達装置20の動作、特に、エンジン12の運転中にアキュムレータ64に作動油を蓄圧(充填)する際の動作について説明する。図5は、本実施形態の変速機ECU80によって実行される充填制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、繰り返し実行される。なお、本ルーチンの実行開始時には、オンオフソレノイドバルブ65は閉弁状態となっている。
充填制御ルーチンが実行されると、変速機ECU80は、圧力センサ64aからのアキュムレータ内圧Paccを入力し(ステップS100)、入力したアキュムレータ内圧Paccを用いてアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれているか否かを判定する(ステップS110)。ここで、アキュムレータ64への作動油の充填要求は、アキュムレータ内圧Paccが閾値Pacc1未満に至ったときに行なわれ(開始され)、その後に、アキュムレータ64に作動油が充填されてアキュムレータ内圧Paccが閾値Pacc1よりも大きい閾値Pacc2以上に至ったときに解除される(終了される)ものとした。アキュムレータ内圧Paccが閾値Pacc1未満になるときとしては、自動停止中のエンジン12を自動始動してアキュムレータ64からの油圧をクラッチC1の係合に用いたことによってアキュムレータ内圧Paccが低下したときや、アキュムレータ64への作動油の充填が完了した後にアキュムレータ64からの作動油の漏れによってアキュムレータ内圧Paccが低下したときなどを挙げることができる。なお、上述の停止許可閾値Paccspとしては、基本的に、閾値Pacc1よりも大きく且つ閾値Pacc2以下の値が用いられる。
ステップS110でアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれていないときには、本ルーチンを終了する。一方、アキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれているときには、自動変速機25やロックアップクラッチ23cの制御状態を入力し(ステップS120)、入力した制御状態を用いて、アキュムレータ64への作動油の充填を許可するか禁止するかを判定する(ステップS130)。そして、アキュムレータ64への作動油の充填が禁止されているときには、本ルーチンを終了する。
図6は、自動変速機25やロックアップクラッチ23cの制御状態とアキュムレータ64への作動油の充填の許可または禁止との関係の一例を示す説明図である。図6に示すように、変速制御において、変速係合要素のサーボ制御や待機制御を行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止し、変速係合要素のトルク相制御やイナーシャ相制御,終期制御を行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を許可する。ロックアップ制御において、ロックアップクラッチ23cのサーボ制御や待機制御を行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止し、ロックアップクラッチ23cの半係合(スリップ)制御や完全係合制御,解放制御を行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を許可する。ガレージ制御において、Pリリース制御を行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止する。
ここで、変速制御やロックアップ制御でサーボ制御や待機制御を行なっているときは、変速係合要素やロックアップクラッチ23cのストローク詰めを行なっているときであると考えることができる。この「ストローク詰めを行なっているとき」は、係合(半係合を含む)前に油圧サーボのピストンを移動させているとき、言い換えれば、係合直前となるようにピストンを移動させているときを意味する。
本実施形態では、変速制御やロックアップ制御で変速係合要素やロックアップクラッチ23cのストローク詰めを行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止するものとした。これらのときには、ライン圧用油路63から対象の油圧サーボに比較的多くの作動油を供給する必要がある。このため、アキュムレータ64への作動油の充填を行なうと、対象の油圧サーボに供給する作動油の量の精度が低下し、ストローク詰め時間が変化し(バラついて)、ストローク詰めの精度(ピストンのストローク量の精度)が低下することがある。本実施形態では、これらのときには、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止することにより、ストローク詰め時間が変化するのを抑制し、ストローク詰めの精度が低下するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、ガレージ制御でPリリース制御を行なっているときにも、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止するものとした。これにより、パーキングシリンダ66に油圧を供給するのに要する時間が長くなるのを抑制し、パーキングロックの解除に要する時間が長くなるのを抑制することができる。
ステップS130でアキュムレータ64への作動油の充填が許可されているときには、油圧センサ63aからライン圧PLを入力し(ステップS140)、入力したライン圧PLをアキュムレータ64に作動油を充填する際の充填用ライン圧PLaccと比較する(ステップS150)。そして、ライン圧PLが充填用ライン圧PLacc未満のときには、ライン圧PLが充填用ライン圧PLaccとなるようにレギュレータバルブ62を制御する上昇制御を実行し(ステップS160)、ライン圧PLが充填用ライン圧PLaccに至ると、ライン圧PLが充填用ライン圧PLaccで保持されるようにレギュレータバルブ62を制御する充填用保持制御の実行を開始する(ステップS170)。こうしてライン圧PLの充填用保持制御の実行を開始すると、オンオフソレノイドバルブ65を開弁する(ステップS180)。
次に、ステップS100,S110の処理と同様に、アキュムレータ内圧Paccを用いてアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれているか否かを判定する(ステップS190,S200)。そして、アキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれていないときには、ステップS120,S130の処理と同様に、自動変速機25やロックアップクラッチ23cの制御状態を用いてアキュムレータ64への作動油の充填を許可するか禁止するかを判定する(ステップS210,S220)。そして、アキュムレータ64への作動油の充填が許可されているときには、ステップS190に戻る。
こうしてステップS190〜S220の処理を繰り返し実行して、ステップS200でアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれていない(解除された)と判定されると、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁し(ステップS240)、ライン圧PLの充填用保持制御の実行を終了し(ステップS250)、ライン圧PLがアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれていないときの油圧に低下するようにレギュレータバルブ62を制御する低下制御を実行して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。このようにして、アキュムレータ64への作動油の充填要求が解除されるまで即ちアキュムレータ内圧PLaccが閾値PLacc2以上に至るまでアキュムレータ64に作動油を充填することができる。
ステップSS190〜S220の処理を行なっている最中にステップS220でアキュムレータ64への作動油の充填が禁止された(許可から禁止になった)ときには、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。これにより、アキュムレータ64への作動油の充填が中断される。
上述したように、アキュムレータ64への作動油の充填が禁止されるときとしては、変速制御やロックアップ制御で変速係合要素やロックアップクラッチ23cのストローク詰めを行なっているときが含まれる。これらのときに、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止することにより、ストローク詰め時間が変化する(バラつく)のを抑制し、ストローク詰めの精度が低下するのを抑制することができる。なお、この場合、ライン圧PLについては、充填用保持制御の実行の継続により、充填用ライン圧PLaccで保持される。
そして、次回に本ルーチンを実行したときに、ステップS100〜S130で、アキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれているがアキュムレータ64への作動油の充填が禁止されている(禁止が継続している)ときには、本ルーチンを終了する。その後に、ステップS130でアキュムレータ64への作動油の充填が許可される(禁止から許可になる)と、ライン圧PLの充填用保持制御の実行の継続によって、ステップS150でライン圧PLが充填用ライン圧PLaccに等しいと判定され、オンオフソレノイドバルブ65を開弁し(ステップS180)、ステップS190以降の処理を実行する。これにより、アキュムレータ64への作動油の充填が再開される。
そして、その後にステップS200でアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれていない(解除された)と判定されると、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁し(ステップS240)、ライン圧PLの充填用保持制御の実行を終了して低下制御を実行して(ステップS250,S260)、本ルーチンを終了する。
本実施形態では、変速制御でトルク相制御やイナーシャ相制御,終期制御を行なっているとき,ロックアップ制御でロックアップクラッチ23cの半係合(スリップ)制御や完全係合制御を行なっているときには、アキュムレータ64に作動油を充填するものとした。これにより、これらのときにアキュムレータ64に作動油を充填しない(充填を禁止する)ものに比して、アキュムレータ64への作動油の充填をより早期に完了させることができる。この結果、アキュムレータ内圧Paccを停止許可閾値Pacc3以上により早期に上昇させることができるから、エンジン12の自動停止条件が成立しているときに、エンジン12を自動停止する機会や期間を増加させることができ、燃費の向上を図ることができる。なお、これらのときには、ストローク詰めを行なっているときに比して、ライン圧用油路63から対応する油圧サーボに新たに供給する(追加する)必要のある作動油の量が少ないことから、変速制御やロックアップ制御の精度が低下する可能性は低いと考えられる。
ここで、アキュムレータ64への作動油の充填中に変速制御やロックアップ制御でのサーボ制御や待機制御のために作動油の充填を中断し、その後に、変速制御でトルク相制御やイナーシャ相制御,終期制御を行なったりロックアップ制御でロックアップクラッチ23cの半係合制御や完全係合制御を行なったりすると共にアキュムレータ64への作動油の充填を再開するときを考える。このときに、ライン圧PLの充填用保持制御の実行の継続によってライン圧PLを充填用ライン圧PLaccで保持することにより、変速制御やロックアップ制御の精度が低下するのを抑制することができる。
本実施形態では、ロックアップ制御でロックアップクラッチ23cの解放制御を行なっているときにも、アキュムレータ64に作動油を充填するものとした。これにより、このときにアキュムレータ64に作動油を充填しない(充填を禁止する)ものに比して、アキュムレータ64への作動油の充填をより早期に完了させることができる。
図7は、アキュムレータ64への作動油の充填中に変速制御が行なわれたときの目標変速段,アキュムレータ内圧Pacc,アキュムレータ64への作動油の充填要求の有無,オンオフソレノイドバルブ65の状態,ライン圧PL,クラッチC1,C2の油圧PSLC1,PLSB2の様子の一例を示す説明図である。図示するように、アキュムレータ内圧Paccが閾値Pacc1未満になってアキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれると(時刻t11)、ライン圧PLの上昇制御を行なって充填用保持制御を開始してからオンオフソレノイドバルブ65を開弁する。すると、アキュムレータ64に作動油が充填されてアキュムレータ内圧Paccが上昇する。そして、アキュムレータ64への作動油の充填中に自動変速機25の目標変速段が前進1速から前進2速になると(時刻t12)、クラッチC1を係合状態で保持しつつ、ブレーキB1についてのサーボ制御,待機制御,トルク制御,イナーシャ相制御,終期制御を行なう。その際において、ブレーキB1についてのサーボ制御や待機制御を行なっているときには(時刻t13〜t14)、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁するから、ストローク詰め時間が変化する(バラつく)のを抑制し、ストローク詰めの精度が低下するのを抑制することができる。そして、ブレーキB1についてのトルク相に至ると(時刻t14)、オンオフソレノイドバルブ65を開弁してアキュムレータ64への作動油の充填を再開し、その後にアキュムレータ内圧Paccが閾値Pacc2以上に至ると、アキュムレータ64への充填が完了したと判断し、オンオフソレノイドバルブ65を閉弁し、ライン圧PLの低下制御を行なう。これにより、ブレーキB1についての終期制御が完了した後に(時刻t15)オンオフソレノイドバルブ65を開弁するものに比して、アキュムレータ64への作動油の充填をより早期に完了させることができる。この結果、アキュムレータ内圧Paccを停止許可閾値Pacc3以上により早期に上昇させることができるから、エンジン12の自動停止条件が成立しているときに、エンジン12を自動停止する機会や期間を増加させることができ、燃費の向上を図ることができる。
以上説明した本実施形態の動力伝達装置20では、アキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれているときでも、変速制御で変速係合要素のストローク詰めを行なっている(サーボ制御や待機制御を行なっている)ときやロックアップ制御でロックアップクラッチ23cのストローク詰めを行なっている(サーボ制御や待機制御を行なっている)ときには、オンオフソレノイドバルブ65の開弁を禁止する。これにより、変速係合要素やロックアップクラッチのストローク詰め時間が変化する(バラつく)のを抑制し、ストローク詰めの精度(ピストンのストローク量の精度)が低下するのを抑制することができる。一方、アキュムレータ64への作動油の充填要求が行なわれているときで、変速制御で変速係合要素のトルク相制御やイナーシャ相制御を行なっているときやロックアップ制御でロックアップクラッチ23cの半係合制御や完全係合制御を行なっているときには、オンオフソレノイドバルブ65の開弁を許可する。これにより、これらのときにもアキュムレータ64への作動油の充填を禁止するものに比して、アキュムレータ64への作動油の充填をより早期に完了することができる。この結果、アキュムレータ内圧Paccを停止許可閾値Pacc3以上により早期に上昇させることができるから、エンジン12の自動停止条件が成立しているときに、エンジン12を自動停止する機会や期間を増加させることができ、燃費の向上を図ることができる。
本実施形態の動力伝達装置20では、図5の充填制御ルーチンのステップS150でライン圧PLが充填用ライン圧PLacc未満のときには、ライン圧PLの上昇制御を行なって充填用保持制御の実行を開始してからオンオフソレノイドバルブ65を開弁するものとした。しかし、ステップS150でライン圧PLが充填用ライン圧PLacc未満のときでも、変速制御でトルク相制御やイナーシャ相制御,終期制御を行なっているときには、ライン圧PLの上昇制御以降の処理を行なわない(ステップS160以降の処理を行なわずに本ルーチンを終了する)ものとしてもよい。
本実施形態の動力伝達装置20では、アキュムレータ64への作動油の充填を中断したときでも、ライン圧PLの充填用保持制御の実行を継続する(ライン圧PLを充填用ライン圧PLaccで保持する)ものとした。しかし、アキュムレータ64への作動油の充填を中断したときには、ライン圧PLの充填用保持制御の実行を終了(一旦終了)してライン圧PLを低下させるものとしてもよい。
本実施形態の動力伝達装置20では、変速制御で変速係合要素のストローク詰めを行なっているとき、および、ロックアップ制御でロックアップクラッチ23cのストローク詰めを行なっているときには、アキュムレータ64への作動油の充填を禁止するものとした。しかし、変速制御で変速係合要素のストローク詰めを行なっているときと、ロックアップ制御でロックアップクラッチ23cのストローク詰めを行なっているときと、のうちの何れかだけアキュムレータ64への作動油の充填を禁止するものとしてもよい。
本実施形態の動力伝達装置20では、アキュムレータ内圧Paccを圧力センサ64aによって検出するものとした。しかし、圧力センサ64aを用いずにアキュムレータ内圧Paccを推定するものとしてもよい。なお、アキュムレータ内圧Paccの推定は、アキュムレータ64に作動油が充填されている充填状態と、アキュムレータ64に充填された作動油が保持されている保持状態と、アキュムレータ64に充填された作動油が吐出されている吐出状態と、のうちいずれの状態にあるかに応じて推定することができる。例えば、アキュムレータ64が充填状態あるときには、作動油が充填される際の単位時間あたりの油圧の変化量(充填レート)を油温に基づいて決定(油温が低いほど作動油の粘性が低くなるため、単位時間あたりの変化量は小さくなる)し、決定した充填レートで上昇する油圧を時間積分することにより推定することができる。また、アキュムレータ64が保持状態にあるときには、アキュムレータ64から作動油が漏れる際の単位時間あたりの油圧の変化量(漏れレート)を油温に基づいて決定し、決定した漏れレートで下降する油圧を時間積分することにより推定することができる。アキュムレータ64が吐出状態にあるときには、アキュムレータ64から作動油が吐出される際の単位時間あたりの油圧の変化量(吐出レート)を油温に基づいて決定し、決定した吐出レートで下降する油圧を時間積分することにより推定することができる。
本実施形態の動力伝達装置20では、自動変速機25としては、第1速〜第8速の前進段および第1速,第2速の後進段を形成可能な変速機を用いるものとした。しかし、これに限定されるものではなく、如何なる変速段の自動変速機であっても構わない。
以上説明したように、本開示の動力伝達装置は、原動機(12)を備える車両(10)に搭載され、出力軸(28)が車軸に接続されると共に複数の係合要素(C1〜C4,B1,B2)を有する変速機(25)と、前記原動機(12)と前記変速機(25)の入力軸(26)との間に設けられたロックアップクラッチ(23c)と、を備え、前記原動機(12)からの動力を前記車軸に伝達する動力伝達装置(20)であって、前記原動機(12)からの動力を用いてライン圧用油路(63)に作動油を供給するポンプ(61)と、前記ライン圧用油路(63)の作動油を蓄圧する蓄圧器(64)と、前記蓄圧器(64)とライン圧用油路(63)との連通および遮断を行なうバルブ(65)と、を有し、前記ライン圧用油路(63)の作動油を制御して前記複数の係合要素(C1〜C4,B1,B2)および前記ロックアップクラッチ(23c)をそれぞれ係合させる油圧制御装置(60)と、前記蓄圧器(64)への作動油の充填要求に応じて前記バルブ(65)を開閉制御する制御手段(80)と、を備え、前記制御手段(80)は、前記蓄圧器(64)への作動油の充填要求が行なわれているときに、前記変速機(25)の変速要求に応じて前記複数の係合要素(C1〜C4,B1,B2)のいずれかのストローク詰めを行なっているときおよび/または前記ロックアップクラッチ(23c)の係合要求に応じて該ロックアップクラッチ(23c)のストローク詰めを行なっているときには、前記バルブ(65)の開弁を禁止する、ことを要旨とする。
この本開示の動力伝達装置では、蓄圧器への作動油の充填要求に応じてバルブを開閉制御するものにおいて、蓄圧器への作動油の充填要求が行なわれているときに、変速機の変速要求に応じて複数の係合要素のいずれかのストローク詰めを行なっているときおよび/またはロックアップクラッチの係合要求に応じてロックアップクラッチのストローク詰めを行なっているときには、バルブの開弁を禁止する。ここで、「変速機の変速要求に応じて複数の係合要素のいずれか」は、変速機の変速要求に応じて係合すべき係合要素(変速係合要素)である。また、「ストローク詰めを行なっているとき」は、係合(半係合を含む)前にピストンを移動させているとき、言い換えれば、係合直前となるようにピストンを移動させているときを意味する。「バルブの開弁を禁止する」は、バルブが開弁しているときには閉弁し、バルブが閉弁しているときにはその状態を保持する(開弁しない)ことを意味する。こうした制御により、変速係合要素やロックアップクラッチのストローク詰め時間が変化する(バラつく)のを抑制し、ストローク詰めの精度(ピストンのストローク量の精度)が低下するのを抑制することができる。また、変速係合要素やロックアップクラッチのストローク詰めを行なっているときでなければ、バルブの開弁を禁止しないから、変速係合要素の係合が完了するまでバルブの開弁を禁止するものやロックアップクラッチの係合(半係合を含む)を行なっているときにもバルブの開弁を禁止するものに比して、蓄圧器への作動油の充填をより早期に完了させることができる。この結果、エンジンの自動停止条件が成立しているときに蓄圧器の内圧が所定圧以上であればエンジンの自動停止を許可するものにおいて、エンジンを自動停止する機会や期間を増加させることができ、燃費の向上を図ることができる。なお、変速係合要素やロックアップクラッチのストローク詰めが完了した後にこれらを係合(半係合を含む)する際には、ストローク詰めを行なっているときに比して新たに必要とする作動油の量が少ないから、蓄圧器への作動油の充填を行なっても変速係合要素やロックアップクラッチの係合に与える影響は小さいと考えられる。
こうした本開示の動力伝達装置(20)において、前記制御手段(80)は、前記蓄圧器(64)への作動油の充填要求が行なわれているときに前記変速機(25)の変速段を変更する際には、トルクの伝達を変速前の変速段による伝達から変速後の変速段による伝達に変更するトルク相になるまでは前記バルブ(65)の開弁を禁止し、前記トルク相になった以降は前記バルブ(65)の開弁を許可する、ものとしてもよい。こうすれば、変速機の変速段を変更する際に変速係合要素のストローク詰めの精度が低下するのを抑制することができると共に、変速段の変更が完了するまでバルブの開弁を禁止するものに比して蓄圧器への作動油の充填をより早期に完了させることができる。
また、本開示の動力伝達装置(20)において、前記制御手段(80)は、前記蓄圧器(64)への作動油の充填要求が行なわれているときに前記ロックアップクラッチ(23c)を係合する際には、前記ロックアップクラッチ(23c)が少なくとも半係合になるまで前記バルブ(65)の開弁を禁止し、前記ロックアップクラッチ(23c)が少なくとも半係合になった以降は前記バルブ(65)の開弁を許可する、ものとしてもよい。こうすれば、ロックアップクラッチを係合(半係合を含む)する際にロックアップクラッチのストローク詰めの精度が低下するのを抑制することができると共に、ロックアップクラッチを半係合しているときでもバルブの開弁を禁止するものに比して蓄圧器への作動油の充填をより早期に完了させることができる。
なお、シフトポジションがドライブポジションでの車両の停車中に、発進用クラッチ(例えば、クラッチC1)を待機状態とすると共にその他の係合要素の油圧を全て解放するニュートラル制御中は、前記バルブ(65)の開弁は許可されてもよい。
加えて、本開示の動力伝達装置(20)において、前記制御手段(80)は、前記蓄圧器(64)への作動油の充填要求が行なわれているときに、シフトレバー(95)がパーキングポジションから他のポジションにシフト変更されるのに応じて油圧を用いてパーキングロックの解除を行なっているときには、前記バルブ(65)の開弁を禁止する、ものとしてもよい。こうすれば、パーキングロックの解除に要する時間が長くなるのを抑制することができる。
本開示の動力伝達装置(20)において、前記油圧制御装置(60)は、前記ライン圧用油路(63)の油圧を調節するレギュレータバルブ(65)を更に備え、前記制御手段(80)は、前記蓄圧器(64)への作動油の充填要求が行なわれたときには、前記ライン圧用油路(63)の油圧が所定油圧に上昇して保持されるように前記レギュレータバルブ(65)を制御し、該ライン圧用油路(63)の油圧が前記所定油圧になってから前記バルブ(65)を開弁し、その後に前記蓄圧器(64)への作動油の充填が完了したときには、前記バルブ(65)を閉弁してから前記ライン圧用油路(63)の油圧が低下するように前記レギュレータバルブ(65)を制御する、ものとしてもよい。こうすれば、ライン圧用油路の油圧を所定油圧で保持しながら蓄圧器に作動油を充填することができる。
この場合、前記制御手段(80)は、前記蓄圧器(64)への作動油の充填を中断したときでも、前記ライン圧用油路(63)の油路が前記所定油圧で保持されるように前記レギュレータバルブ(62)を制御する、ものとしてもよい。こうすれば、その後に蓄圧器への作動油の充填が再開するときにライン圧が変動するのを抑制することができる。
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。