JP6657939B2 - 繊維状炭素ナノ構造体分散液および炭素ナノ構造体膜の製造方法 - Google Patents

繊維状炭素ナノ構造体分散液および炭素ナノ構造体膜の製造方法 Download PDF

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本発明は、繊維状炭素ナノ構造体分散液および前記繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いた炭素ナノ構造体膜の製造方法に関する。
近年、導電性、熱伝導性及び機械的特性に優れる材料として、繊維状炭素材料、特にはカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等の繊維状炭素ナノ構造体が注目されている。
しかし、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体は直径がナノメートルサイズの微細な構造体であるため、単体では取り扱い性や加工性が悪い。そこで、例えば、CNTを分散させた分散液を調製し、この分散液を基材等に塗布することで、複数本のCNTを膜状に集合させて、炭素ナノ構造体膜の一種であるカーボンナノチューブ膜(以下、「CNT膜」と称することがある。)を形成し、当該CNT膜を導電膜等として用いることが提案されている。CNTを分散させた分散液としては、例えば、CNT、分子添加剤、および溶媒を含む分散液が知られている(特許文献1)。
米国特許出願公開第2013/0224934号明細書
しかしながら、特許文献1に記載の分散液では、密着性に優れたCNT膜を形成するために、多量の分子添加剤を使用する必要があった。そのため、特許文献1に記載の分散液を用いて形成したCNT膜では、CNT膜中に混入した分子添加剤に起因して導電性、熱伝導性及び機械的特性などの性能を十分に向上させることができなかった。
そこで、本発明は、より少量の分子添加剤で、密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を得ることのできる繊維状炭素ナノ構造体分散液、および前記繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いた炭素ナノ構造体膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、特定の繊維状炭素ナノ構造体を用いることにより、より少量の分子添加剤で、密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成できる繊維状炭素ナノ構造体分散液が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液(以下、単に「分散液」という場合がある)は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体と、分子添加剤と、溶媒とを含むことを特徴とする。吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を用いることにより、少量の分子添加剤でも密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
ここで、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、上記t−プロットの屈曲点の位置が0.2≦t(nm)≦1.5であることが好ましい。t−プロットの屈曲点の位置が0.2≦t(nm)≦1.5である繊維状炭素ナノ構造体を用いれば、さらに少量の分子添加剤で密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
また、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、上記t−プロットから得られる全比表面積S1及び内部比表面積S2が、0.05≦S2/S1≦0.30を満たすことが好ましい。t−プロットから得られる全比表面積S1及び内部比表面積S2が、0.05≦S2/S1≦0.30を満たす繊維状炭素ナノ構造体を用いれば、さらに少量の分子添加剤で密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
さらに、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体としてカーボンナノチューブを含有する分散液を用いれば、さらに、導電性や強度に優れる炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
また、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、前記分子添加剤が、Si、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される少なくとも一つの第14族元素を含み、
前記第14族元素の4つの結合手のうち少なくとも3つが、O、N、P、F、Cl、Br、I、およびHからなる群より選択される少なくとも1つの原子と直接結合していることが好ましい。このような分子添加剤を用いれば、さらに少量の分子添加剤で密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
また、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液中における前記第14族元素の濃度が、0.5〜60質量ppmであることが好ましい。
さらに、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、前記溶媒が、水、非水溶媒、またはそれらの混合物であることが好ましい。
また、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、前記繊維状炭素ナノ構造体が官能基化されていることが好ましい。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の炭素ナノ構造体膜の製造方法は、上述した繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて、基材上に繊維状炭素ナノ構造体の層を形成することを含むことを特徴とする。上述した繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いることにより、少量の分子添加剤で密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
そして、本発明の炭素ナノ構造体膜の製造方法では、さらに、繊維状炭素ナノ構造体の層が形成された基材を、100〜300℃の範囲で、空気中において焼成することが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体分散液が塗布された基材を、100〜300℃の範囲で、空気中において焼成すれば、さらに導電性や強度に優れる炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
本発明によれば、分子添加剤の含有量が少量であっても密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することが可能な繊維状炭素ナノ構造体分散液を提供することができる。
図1は、表面に細孔を有する試料のt−プロットの一例を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(繊維状炭素ナノ構造体分散液)
本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体と、分子添加剤と、溶媒とを含む。
特許文献1に記載されている従来の分散液では、密着性に優れたCNT膜を形成するために、多量の分子添加剤を使用する必要があった。しかし、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液では、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を用いているため、より少量の分子添加剤で、密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を得ることができる。
<繊維状炭素ナノ構造体>
ここで、繊維状炭素ナノ構造体分散液に用いる繊維状炭素ナノ構造体としては、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すものであれば、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、t−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体としては、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましい。カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、さらに、導電性や強度に優れる炭素ナノ構造体膜を形成することができる分散液が得られる。
なお、本明細書において、「炭素ナノ構造体膜」とは、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素ナノ構造体の集合体よりなる膜をいう。
そして、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ(CNT)のみからなるものを用いてもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物を用いてもよい。
なお、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTの開口処理が施されておらず、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。
ここで、一般に、吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象であり、その原因から、物理吸着と化学吸着に分類される。そして、t−プロットの取得に用いられる窒素ガス吸着法では、物理吸着を利用する。なお、通常、吸着温度が一定であれば、繊維状炭素ナノ構造体に吸着する窒素ガス分子の数は、圧力が大きいほど多くなる。また、横軸に相対圧(吸着平衡状態の圧力Pと飽和蒸気圧P0の比)、縦軸に窒素ガス吸着量をプロットしたものを「等温線」といい、圧力を増加させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「吸着等温線」、圧力を減少させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「脱着等温線」という。
そして、t−プロットは、窒素ガス吸着法により測定された吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得られる。即ち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する試料の典型的なt−プロットを図1に示す。表面に細孔を有する試料では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)〜(3)の過程によって、図1に示すようにt−プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、本発明で用いる繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットは、図1に示すように、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となり、上に凸な形状を示す。かかるt−プロットの形状は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの屈曲点の位置は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0を満たす範囲にあることが更に好ましい。t−プロットの屈曲点の位置が上記範囲であると、さらに少量の分子添加剤で密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
ここで、「屈曲点の位置」とは、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。S2/S1が0.05以上0.30以下であれば、さらに少量の分子添加剤で密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1及び内部比表面積S2は、特に限定されないが、個別には、S1は、600m2/g以上1400m2/g以下であることが好ましく、800m2/g以上1200m2/g以下であることが更に好ましい。一方、S2は、30m2/g以上540m2/g以下であることが好ましい。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1及び内部比表面積S2は、そのt−プロットから求めることができる。具体的には、図1に示すt−プロットにより説明すると、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t−プロットの作成、及び、t−プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用する場合、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブ及び/又は多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、繊維状炭素ナノ構造体の密着性に一層優れる炭素ナノ構造体膜を得ることができる。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」及び「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の密着性に一層優れる炭素ナノ構造体膜を得ることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上15nm以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の密着性に一層優れる炭素ナノ構造体膜を得ることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時に繊維状炭素ナノ構造体に破断や切断等の損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比(長さ/直径)は、10を超えることが好ましい。なお、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径及び長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、400m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が400m2/g以上であれば、得られる分散液を用いて形成した炭素ナノ構造体膜の強度及び自立性を更に高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m2/g以下であれば、得られる炭素ナノ構造体膜の密着性を一層高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
ここで、上述した繊維状炭素ナノ構造体は、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm3以下であれば、液中での繊維状炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、繊維状炭素ナノ構造体分散液中で繊維状炭素ナノ構造体を均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm3以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、複数の微小孔を有することが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体は、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。繊維状炭素ナノ構造体が上記のようなマイクロ孔を有することで、分散液中において繊維状炭素ナノ構造体が凝集しにくくなる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、繊維状炭素ナノ構造体の調製方法及び調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、繊維状炭素ナノ構造体の液体窒素温度(77K)での窒素吸脱着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cm3である。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
上記繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造した繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、導電性を有する非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接又は接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層又は多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
ここで、GNTは、その合成時から内壁同士が近接又は接着したテープ状部分が全長に亘って形成されており、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成された物質であると推定される。そして、GNTの形状が扁平筒状であり、かつ、GNT中に内壁同士が近接又は接着したテープ状部分が存在していることは、例えば、GNTとフラーレン(C60)とを石英管に密封し、減圧下で加熱処理(フラーレン挿入処理)して得られるフラーレン挿入GNTを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、GNT中にフラーレンが挿入されない部分(テープ状部分)が存在していることから確認することができる。
そして、GNTの形状は、幅方向中央部にテープ状部分を有する形状であることが好ましく、延在方向(軸線方向)に直交する断面の形状が、断面長手方向の両端部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法が、いずれも、断面長手方向の中央部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法よりも大きい形状であることがより好ましく、ダンベル状であることが特に好ましい。
ここで、GNTの断面形状において、「断面長手方向の中央部近傍」とは、断面の長手中心線(断面の長手方向中心を通り、長手方向線に直交する直線)から、断面の長手方向幅の30%以内の領域をいい、「断面長手方向の端部近傍」とは、「断面長手方向の中央部近傍」の長手方向外側の領域をいう。
なお、非円筒形状の炭素ナノ構造体としてGNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、触媒層を表面に有する基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成する際に、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」と称することがある。)を所定の方法で形成することにより、得ることができる。具体的には、GNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、アルミニウム化合物を含む塗工液Aを基材上に塗布し、塗布した塗工液Aを乾燥して基材上にアルミニウム薄膜(触媒担持層)を形成した後、アルミニウム薄膜の上に、鉄化合物を含む塗工液Bを塗布し、塗布した塗工液Bを温度50℃以下で乾燥してアルミニウム薄膜上に鉄薄膜(触媒層)を形成することで得た触媒基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成することで得ることができる。
上記繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の不純物が少なくなり、特性の安定した長寿命の電子部品を作製できる観点から、繊維状炭素ナノ構造体に含まれる金属不純物の濃度が、5000ppm未満であることが好ましく、1000ppm未満であることがより好ましい。
本明細書において、繊維状炭素ナノ構造体に含まれる金属不純物の濃度は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分析(EDAX)、気相分解装置及びICP質量分析(VPD、ICP/MS)等により測定することができる。
ここで、金属不純物とは、繊維状炭素ナノ構造体を製造する際に用いた金属触媒等が挙げられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第3〜13族、ランタノイド族の各族に属する金属元素、Si、Sb、As、Pb、Sn、Bi等の金属元素、及びこれらを含む金属化合物等が挙げられる。より具体的には、Al、Sb、As、Ba、Be、Bi、B、Cd、Ca、Cr、Co、Cu、Ga、Ge、Fe、Pb、Li、Mg、Mn、Mo、Ni、K、Na、Sr、Sn、Ti、W、V、Zn、Zr等の金属元素及びこれらを含む金属化合物が挙げられる。
上記繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、粒径が500nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことが好ましく、粒径が300nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことがより好ましく、粒径が100nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことがさらに好ましく、粒径が45nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことが特に好ましい。
なお、本明細書において、粒子状不純物の濃度は、基材上に繊維状炭素ナノ構造体分散液を塗布し、表面を商品名「surfscan」KLA Tencor Corporation製等を用いて測定することができる。また、本明細書において、「粒子状不純物が実質的に含まれない」とは、不可避的に混入する粒子状物質および分子状添加剤から生じる粒子状物質を除いて、粒子状物質を能動的に配合しないことをいう。
上記繊維状炭素ナノ構造体は、官能基化されていないものであってもよく、官能基化されたものであってもよいが、該繊維状炭素ナノ構造体の溶媒中への分散性の観点からは、官能基化されたものであることが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体を官能基化する方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、硝酸などの酸化性の酸によって繊維状炭素ナノ構造体を酸化し、水酸基、アルデヒド基、カルボニル基、およびカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を該繊維状炭素ナノ構造体に形成することができる。
<分子添加剤>
上記分散液には、分子添加剤が添加される。分子添加剤を使用することにより、該分散液を用いて基材上に炭素ナノ構造体膜を形成した際に、該炭素ナノ構造体膜と基材との密着性を向上させることができる。前記分子添加剤としては、特に限定されることなく、任意の添加剤を使用することができるが、前記分散液に含まれる溶媒に溶解するものであることが好ましい。例えば、前記溶媒として水を用いる場合には、前記分子添加剤として水溶性の物を用いることが好ましい。
また、上記分子添加剤は、金属イオンを含有しないものであることが好ましい。後述するように、分散液に金属不純物が含まれていると、該分散液を使用して形成される炭素ナノ構造体膜の電気的特性が低下する場合がある。そのため、分子添加剤は、金属イオンや、金属イオン源となり得る金属酸化物および金属錯体を含有しないことが好ましい。
さらに、上記分子添加剤は、上記分散液の安定性を低下させないものであることが好ましい。言い換えれば、前記分子添加剤は、コロイド分散系としての前記分散液の安定性を低下させず、貯蔵寿命を縮めないものであることが好ましい。分散液の貯蔵寿命は、3〜5nm以上の大きさを有し、SEMや光学顕微鏡で観察可能なシリケート等の粒子の生成や、しばしばシリカ等のコロイド状酸化物を核として形成される、10nm以上のナノチューブの凝集塊の生成によって判断することができる。
さらに、上記分子添加剤は、上記分散液を使用して形成される炭素ナノ構造体膜の品質や、炭素ナノ構造体膜を不揮発性メモリなどの半導体素子に利用する際の電気的特性に悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。
上記分子添加剤としては、上記分散液中で酸化物を生成し得る化合物および酸化物自体の少なくとも一方を用いることが好ましい。また、(1)第14族元素と酸素原子とを分子内に含有し、前記分散液に溶解可能な化合物、(2)前記分散液中で第14族元素の酸化物を生成し得る第14族元素含有化合物、および(3)第14族元素の酸化物自体、からなる群より選択される少なくとも1つを前記分子添加剤として用いることがより好ましい。前記第14族元素としては、Si、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される少なくとも1つを用いることがさらに好ましい。具体的には、例えば、Si、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される少なくとも一つの第14族元素を含み、前記第14族元素の4つの結合手のうち少なくとも3つが、O、N、P、F、Cl、Br、I、およびHからなる群より選択される少なくとも1つの原子と直接結合している分子を用いることがさらに好ましい。このような分子添加剤を、繊維状炭素ナノ構造体とともに用いることにより、より密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を形成することのできる分散液を得ることができる。
前記分子添加剤としては、例えば、SiO2等のケイ素酸化物;SiCl4等のケイ素ハロゲン化物;シリコンテトラエトキシド等のシリコンアルコキシド;ジクロロシラン等を使用することができる。また、例えば、O原子と、少なくとも8個のSi原子とを分子内に含有する、かご型化合物を前記分子添加剤として用いることもできる。前記かご型化合物としては、例えば、シルセスキオキサンを用いることができる。なお、シルセスキオキサンは、立方体、六角柱、八角柱など、様々な立体形状をとり得るが、本明細書において分子が「かご型」であるとは、該分子を構成する原子が共有結合して、対称性を有する多面体を形成している場合を意味するものとする。
前記シルセスキオキサンは、Si原子に結合した1つまたは2つ以上の置換基を有するものであってよく、前記置換基は、例えば、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリレン基、−O-、−CH2CH2(OCH2CH2mOCH3(m〜13.3)、−CH2CH2CH2+3Cl-、−CH2CH2CH2−NH−C(=CH2)−CHCHCOOHなどであってよい。炭素ナノ構造体膜の密着性向上の観点からは、前記シルセスキオキサンとして、オクタキス(テトラメチルアンモニウム)−T8−シルセスキオキサン(PSS水和物−オクタキス(テトラメチルアンモニウム置換体とも称される)を用いることが好ましい。
前記オクタキス(テトラメチルアンモニウム)−T8−シルセスキオキサンとしては、例えば、ハイブリッドプラスチックス社製のOctaTMA POSS(登録商標)が、商業的に利用可能である。前記OctaTMA POSSは、Si原子に結合した置換基として負電荷を帯びた酸素原子(O-)を備えており、対イオンとして、テトラメチルアンモニウム(TMA)イオンを備えている。オクタキス(テトラメチルアンモニウム)−T8−シルセスキオキサンは、水性の炭素ナノ構造体分散液に溶解してSiO2等のケイ素酸化物を形成し、該分散液を用いて形成される炭素ナノ構造体膜の密着性を向上させると考えられる。また、前記OctaTMA POSSのように、対イオンとしてTMAイオンを用いることにより、炭素ナノ構造体膜の特性を低下させるおそれのある金属イオンを用いずに分子添加剤の電気的中性を達成することができる。
同様に、O原子と、少なくとも8個のGe原子とを分子内に含有する、かご型化合物を前記分子添加剤として用いることができる。前記かご型化合物としては、例えば、ゲルミルセスキオキサンを用いることができる。また、前記分子添加剤としては、GeO2、GeO2水和物等のゲルマニウム酸化物;GeCl4等のゲルマニウムハロゲン化物;ゲルマニウム水素化物;アルコキシド、アミド、カルボキシレート等のヘテロ原子配位子を含有するゲルマニウム化合物を用いることもできる。前記ヘテロ原子配位子を含有するゲルマニウム化合物としては、例えば、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシド等のゲルマニウムアルコキシド;ビス(2−カルボキシエチルゲルマニウム)セスキオキサイド等のゲルマニウムカルボキシレートを用いることができる。これらのゲルマニウム化合物は、加水分解して、粒径が0.5〜3nm程度である酸化ゲルマニウムのナノ粒子を生じる。また、適切な条件下においては、加水分解により8個のGe原子を有する酸化ゲルマニウムクラスターのナノ粒子を生成することが報告されている。
また、酸化スズ、酸化鉛等も前記分子添加剤として用いることができる。
上記分散液中における上記分子添加剤の濃度は、特に限定されず、任意の濃度とすることができる。一実施形態においては、分散液中における分子添加剤の濃度を、飽和濃度以下とすることが好ましい。例えば、Si等の第14族元素を含有する分子添加剤を使用する場合、前記第14族元素の濃度を飽和濃度とすることによって、SiO2等の酸化物が、該分散液を用いて形成される炭素ナノ構造体膜中に、一般的な分子のサイズである0.5〜3nmを超えた大きさを有するコロイド状の粒子として析出することを防止できる。具体的には、分散液中における前記第14族元素の濃度を、0.5〜60質量ppmとすることが好ましい。
<溶媒>
上記溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、水、非水溶媒、またはそれらの混合物などを用いることができる。前記水としては、例えば、蒸留水や脱イオン水を用いることができる。また、前記非水溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコール、メトキシプロパノール、プロピレングリコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、α−ヒドロキシカルボン酸のエステル、ベンジルベンゾエート(安息香酸ベンジル)等のエステル類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系極性有機溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、等の芳香族炭化水素類;サリチルアルデヒド、ジメチルスルホキシド、4−メチル−2−ペンタノン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。中でも、分散性に特に優れる観点から、水、乳酸エチル、イソプロパノール、メチルエチルケトンが好ましい。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の濃度は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の濃度が0.005質量%以上であれば、導電性や強度に優れる炭素ナノ構造体膜を形成することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の濃度が5質量%以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して、繊維状炭素ナノ構造体の分散性に一層優れる分散液を得ることができる。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、分散剤を実質的に含まないことが好ましい。本明細書において、「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合を除いて能動的に配合はしないことをいい、具体的には、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の含有量が、0.05質量%未満であることが好ましく、0.01質量%未満であることがより好ましく、0.001質量%未満であることが更に好ましい。
なお、上記分散剤としては、界面活性剤、合成高分子、天然高分子等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
また、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩又は誘導体等が挙げられる。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、個数基準モード径が500nmより大きい繊維状炭素ナノ構造体が実質的に含まれないことが好ましい。特に、個数基準モード径が300nmより大きい繊維状炭素ナノ構造体が実質的に含まれないことが好ましい。
本明細書において、個数基準モード径とは、以下の方法で求めることができる。
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA−960」等)を用いて、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に含まれる繊維状炭素ナノ構造体の粒子径を測定する。そして、横軸を粒子径、縦軸を繊維状炭素ナノ構造体の個数とした粒子径分布曲線を得て、その極大値における粒子径を、繊維状炭素ナノ構造体の個数基準のモード径として求める。
なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に含有されている繊維状炭素ナノ構造体のモード径は、繊維状炭素ナノ構造体や繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造条件を調節することによって、任意に変更することができる。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の金属不純物の濃度が、1×1018原子/cm3未満であることが好ましく、15×1010原子/cm3未満であることがより好ましい。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の重金属不純物の濃度が、1×1018 原子/cm3未満であることが好ましく、1×1011原子/cm3未満であることがより好ましい。
本明細書において、重金属とは、比重5g/cm3以上の金属をいう。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の第1族元素及び第2族元素の不純物の濃度が、1×1018原子/cm3未満であることが好ましく、1×1011原子/cm3未満であることがより好ましい。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の遷移金属元素の不純物の濃度が、1×1018原子/cm3未満であることが好ましく、1×1011原子/cm3未満であることがより好ましい。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上し、また、均一な炭素膜を形成できる観点から、繊維状炭素ナノ構造体の沈殿物及び凝集物が実質的に含まれないことが好ましい。
なお、本明細書において、沈殿物、凝集物とは、10000Gで20分間遠心して沈殿する繊維状ナノ構造体をいう。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性が一層向上する観点から、粒径が300nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことが好ましく、粒径が100nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことがより好ましく、粒径が45nm超の粒子状不純物が実質的に含まれないことがさらに好ましい。
なお、本明細書において、粒子状不純物の粒径及び濃度は、基材上に繊維状炭素ナノ構造体分散液を塗布し、表面を商品名「surfscan」KLA Tencor Corporation製等を用いて測定することができる。
<物性>
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、0.5mPa・s以上であることが好ましく、1mPa・s以上であることがより好ましく、1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度が0.5mPa・s以上1000mPa・s以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の分散性に優れる。
なお、本発明において、「繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度」は、JIS Z8803に準拠して、温度25℃で測定することができる。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液の、分光光度計を用いて測定した吸光度は、分散性の観点から、光路長:1mm、波長:1000nmにおいて、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体分散液の吸光度が0.1以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の量を十分に確保することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体分散液の吸光度が5.0以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に含まれている分散性の高い繊維状炭素ナノ構造体の割合を高め、また、導電性及び強度に優れる炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液の吸光度比は、凝集物が少なく高純度となり、また、繊維状炭素ナノ構造体の分散性に優れる観点から、0.5以上であることが好ましく、0.7〜1.0であることがより好ましい。
なお、本発明において「吸光度比」は、以下の方法によって求めることができる。
まず、後述の実施例に記載した精製処理を施す前と施した後の繊維状ナノ構造体それぞれを、乳酸エチルに添加して分散液を調製する。次いで、各分散液について、分光光度計(日本分光社製、商品名「V670」)等を用いて、光路長10mm、波長550nmでの吸光度を測定する。精製処理を施す前と施した後のサンプルの吸光度を、それぞれ「未精製分散液の吸光度」および「精製後分散液の吸光度」としたとき、吸光度比は、(精製後分散液の吸光度)/(未精製分散液の吸光度)として求められる。
<用途>
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、ロジック回路等の電子回路、DRAM、SRAM、NRAM等のメモリ、半導体装置、インターコネクト、相補型MOS、バイポラートランジスタ等の電子部品;微量ガス等の検出器等の化学センサー;DNA、タンパク質等の測定器等のバイオセンサー;太陽電池、タッチパネル等の導電膜;等の電子工学品を製造する際に用いることができ、例えば、電子工学品を製造する際の塗工液や構成材料として用いることができる。中でも、導電性や強度に優れる製品が得られるという観点から、半導体装置の構成材料として好適である。
(繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法)
本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法は、例えば、複数本の繊維状炭素ナノ構造体と、溶媒とを含む分散混合液を遠心分離し、複数本の繊維状炭素ナノ構造体の一部を沈殿させる工程(遠心分離工程)と、遠心分離工程で遠心分離した分散混合液から上澄み液を分取する工程(分取工程)と、分子添加剤を前記上澄み液に添加する工程(分子添加剤添加工程)を含む方法等が挙げられる。また、上記遠心分離工程前に、溶媒中に、複数本の繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を分散処理に供して分散混合液を得る工程(分散混合液調製工程)を設けてもよい。
前記分散混合液調製工程を設ける場合には、例えば、多量の繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に添加して粗分散液を形成し、該粗分散液を超音波等により撹拌して分散させて分散混合液を得てもよい。
また、遠心分離後の沈殿物に、再度溶媒を添加して混合し、超音波処理で分散させた後に、遠心分離をして、繊維状炭素ナノ構造体を含む上澄み液を回収してもよい。前記沈殿物からの繊維状炭素ナノ構造体を含む上澄み液の回収は、複数回繰り返してもよい。
上記繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法によれば、凝集した繊維状炭素ナノ構造体や不純物が少ない、繊維状炭素ナノ構造体の分散性に優れる分散液が得られる。
<分散混合液調製工程>
上記分散混合液調製工程では、溶媒中に複数本の繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を分散処理に供して、複数本の繊維状炭素ナノ構造体と、溶媒とを含む分散混合液を得ることができる。
なお、上記製造方法では、分散混合液調製工程を実施することなく、複数本の繊維状炭素ナノ構造体を溶媒に分散させてなる市販の繊維状炭素ナノ構造体の分散混合液を用いて後述する遠心分離工程を実施してもよいが、所望の分散性を有する繊維状炭素ナノ構造体分散液を容易に得る観点からは、分散混合液調製工程を実施して調製した分散混合液を用いることが好ましい。
溶媒に添加する繊維状炭素ナノ構造体は、添加する前に、金属や非晶性炭素等の粒子状不純物を分離し、アルカリ金属イオン、ハロゲンイオン、オリゴマー、ポリマーを減らすために、前処理を行ってもよい。
金属を分離する精製処理としては、例えば、硝酸、塩酸等の酸溶液中に繊維状炭素ナノ構造体を分散させて金属不純物を溶解させる精製処理、磁力精製処理等が挙げられる。中でも、酸溶液中に繊維状炭素ナノ構造体を分散させて金属不純物を溶解させる精製処理が好ましい。
また、粒子状不純物を分離する前処理としては、例えば、超高速遠心機等を用いた高速遠心処理;重力ろ過、クロスフローろ過、真空ろ過等を用いたフィルターろ過処理;非フラーレン炭素材料の選択的酸化;これらの組み合わせ;等の精製処理が挙げられる。
[粗分散液]
上記粗分散液は、特に限定されることなく、上述した繊維状炭素ナノ構造体と、上述した溶媒とを既知の方法で混合することにより得ることができる。なお、繊維状炭素ナノ構造体と、溶媒とは任意の順序で混合することができる。また、粗分散液には、上述した成分以外に、繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造に一般に用いられる添加剤を更に添加してもよい。
前記粗分散液には、界面活性剤や樹脂などの高分子を添加しないことが好ましい。
[分散処理]
上記粗分散液を分散処理に供して分散混合液を調製する際の分散処理方法としては、特に限定されることなく、繊維状炭素ナノ構造体を含む液の分散に使用されている既知の分散処理方法を用いることができる。中でも、粗分散液に施す分散処理としては、キャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理が好ましい。キャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理を使用すれば、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができるので、得られる繊維状炭素ナノ構造体分散液の分散性を更に高めることができる。
[[キャビテーション効果が得られる分散処理]]
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することにより生じる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができる。
そして、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理及び高剪断撹拌による分散処理等が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行なってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行なってもよい。より具体的には、例えば、超音波ホモジナイザー、ジェットミル及び高剪断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものなど、任意のものを使用すればよい。
繊維状炭素ナノ構造体の分散に超音波ホモジナイザーを用いる場合には、粗分散液に対し、超音波ホモジナイザーにより超音波を照射すればよい。照射する時間は、繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、3分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、また、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。また、例えば、出力は20W以上500W以下が好ましく、100W以上500W以下がより好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
また、ジェットミルを用いる場合、処理回数は、繊維状炭素ナノ構造体の量等により適宜設定すればよく、例えば、2回以上が好ましく、100回以下が好ましく、50回以下がより好ましい。また、例えば、圧力は20MPa以上250MPa以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
さらに、高剪断撹拌装置を用いる場合には、粗分散液に対し、高剪断撹拌装置により撹拌及び剪断を加えればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分以上4時間以下が好ましく、周速は5m/秒以上50m/秒以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
なお、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理は、50℃以下の温度で行なうことがより好ましい。溶媒の揮発による濃度変化が抑制されるからである。
[[解砕効果が得られる分散処理]]
また、解砕効果が得られる分散処理は、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散できることは勿論、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波による繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる点で有利である。
この解砕効果が得られる分散処理では、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、粗分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に均一に分散させることができる。
なお、粗分散液に背圧を負荷する場合、粗分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
ここに、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体をさらに分散させるには、例えば、以下のような構造の分散器を有する分散システムを用いればよい。
すなわち、分散器は、粗分散液の流入側から流出側に向かって、内径がd1の分散器オリフィスと、内径がd2の分散空間と、内径がd3の終端部と(但し、d2>d3>d1である。)、を順次備える。
そして、この分散器では、流入する高圧(例えば10〜400MPa、好ましくは50〜250MPa)の粗分散液が、分散器オリフィスを通過することで、圧力の低下を伴いつつ、高流速の流体となって分散空間に流入する。その後、分散空間に流入した高流速の粗分散液は、分散空間内を高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、粗分散液の流速が低下すると共に、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散する。そして、終端部から、流入した粗分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の流体が、繊維状炭素ナノ構造体が分散した液として流出することになる。
なお、粗分散液の背圧は、粗分散液の流れに負荷をかけることで粗分散液に負荷することができ、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、粗分散液に所望の背圧を負荷することができる。
そして、粗分散液の背圧を多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に分散混合液を大気圧に開放した際に、分散混合液中に気泡が発生するのを抑制できる。
また、この分散器は、粗分散液を冷却するための熱交換器や冷却液供給機構を備えていてもよい。というのは、分散器でせん断力を与えられて高温になった粗分散液を冷却することにより、粗分散液中で気泡が発生するのをさらに抑制できるからである。
なお、熱交換器等の配設に替えて、粗分散液を予め冷却しておくことでも、繊維状炭素ナノ構造体を含む液中で気泡が発生することを抑制できる。
上記したように、この解砕効果が得られる分散処理では、キャビテーションの発生を抑制できるので、時として懸念されるキャビテーションに起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷、特に、気泡が消滅する際の衝撃波に起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる。加えて、繊維状炭素ナノ構造体への気泡の付着や、気泡の発生によるエネルギーロスを抑制して、繊維状炭素ナノ構造体を均一かつ効率的に分散させることができる。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)等がある。そして、解砕効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
<遠心分離工程>
遠心分離工程では、複数本の繊維状炭素ナノ構造体と、溶媒とを含む分散混合液を遠心分離し、複数本の繊維状炭素ナノ構造体の一部を沈殿させることができる。そして、遠心分離工程では、凝集性の高い繊維状炭素ナノ構造体が沈殿し、分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体は上澄み液中に残存する。
分散混合液の遠心分離は、特に限定されることなく、既知の遠心分離機を用いて行うことができる。
中でも、得られる上澄み液中に分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体を適度に残存させ、分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る観点からは、分散混合液を遠心分離する際の遠心加速度は、2000G以上であることが好ましく、5000G以上であることがより好ましく、20000G以下であることが好ましく、15000G以下であることがより好ましい。
また、得られる上澄み液中に分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体を適度に残存させ、分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る観点からは、分散混合液を遠心分離する際の遠心分離時間は、20分間以上であることが好ましく、30分間以上であることがより好ましく、120分間以下であることが好ましく、90分間以下であることがより好ましい。
<分取工程>
分取工程では、遠心分離工程で遠心分離した分散混合液から上澄み液を分取することができる。そして、上澄み液の分取は、例えば、デカンテーションやピペッティング等により、沈殿層を残して上澄み液を回収することにより行うことができる。具体的には、例えば、遠心分離後の分散混合液の液面から5/6の深さまでの部分に存在する上澄み液を回収すればよい。
[上澄み液]
ここで、遠心分離後の分散混合液から分取した上澄み液には、遠心分離により沈殿しなかった繊維状炭素ナノ構造体が含まれている。そして、当該上澄み液を本実施形態の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いることができる。
<分子添加剤添加工程>
分子添加剤の添加は、特に限定されることなく任意のタイミングで行うことができる。例えば、上述の工程を経て得られた上記上澄み液に、分子添加剤を添加することができる。
分散液に添加される分子添加剤は、任意の形態であってよいが、一実施形態においては、水等の適当な溶媒に分子添加剤を溶解させた溶液を、前記分散液に添加することができる。その場合、前記分子添加剤を溶解させた溶液を分散液に添加する前に、ろ過を行って粒子状不純物を除去しておくことが好ましい。前記ろ過には、例えば、孔径0.1μmのフィルターを用いることができる。さらに、前記ろ過に先立って、前記分子添加剤を溶解させた溶液に対してイオン交換処理を施して、不純物として含まれる遊離の金属イオンを除去しておくことが好ましい。
(炭素ナノ構造体膜の製造方法)
上記のようにして得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液を基材上に塗布することによって炭素ナノ構造体膜を製造する。炭素ナノ構造体膜の製造方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、前記分散液を基材上に塗布する工程(塗布工程)を行った後、塗布された前記分散液から溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)を行うことによって炭素ナノ構造体膜を形成することができる。
[基材]
ここで、上記基材としては、特に限定されることなく、製造する炭素ナノ構造体膜の用途に応じて既知の基材を用いることができる。
具体的には、樹脂基材、ガラス基材などを用いることができる。前記樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどからなる基材を挙げることができる。また、前記ガラス基材としては、通常のソーダガラスよりなる基材を挙げることができる。
また、後述するように、塗布された分散液からの溶媒の除去のためにろ過を利用する場合には、上記基材として、ろ紙や、セルロース、ニトロセルロース、アルミナ等からなる多孔質シートなど、多孔質基材を用いることができる。
[塗布工程]
上記分散液を基材上に塗布する方法としては、任意の塗布方法を採用できる。具体的には、前記塗布方法として、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法などを用いることができる。
[溶媒除去工程]
次に、基材上へ塗布された前記分散液から溶媒を除去する。前記溶媒の除去方法は特に限定されず、任意の方法で行うことができる。一実施形態においては、乾燥、ろ過、焼成等の方法を、単独または組み合わせて用いることで溶媒の除去を行うことができる。
[[乾燥]]
乾燥によって溶媒を除去する方法は特に限定されず、任意の乾燥方法を採用できる。乾燥方法としては、例えば、風乾法、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等を用いることができる。乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、室温〜200℃とすることができる。また、乾燥時間は、特に限定されないが、0.1〜150分とすることができる。
[[ろ過]]
ろ過によって溶媒を除去する場合には、上述したように基材として多孔質基材状を使用し、溶媒のみを選択的に該多孔質基材を透過させることによって、該多孔質基材状に炭素ナノ構造体膜を形成することができる。ろ過によって溶媒を除去すれば、容易かつ迅速に溶媒を除去することができる。ろ過方法としては、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過など、任意の方法を用いることができるが、中でも減圧ろ過を用いることが好ましい。減圧ろ過を用いれば、より容易かつ迅速に溶媒を除去することができる。
[[焼成]]
焼成を行って溶媒を除去する場合には、特に限定されることなく、任意の方法で焼成を行うことができる。前記焼成は、100〜300℃の条件下で行うことが好ましく、また、空気中において行うことが好ましい。なお、溶媒の除去は、焼成のみによって行うこともできるが、乾燥やろ過を行った後にさらに焼成を行うこともできる。
なお、炭素ナノ構造体膜の製造においては、分散液中の溶媒を完全に除去する必要はなく、溶媒の除去後に残った繊維状炭素ナノ構造体が膜状の集合体(炭素ナノ構造体膜)としてハンドリング可能な状態であれば、多少の溶媒が残留していても問題はない。
そして、分散液から溶媒を除去して得た炭素ナノ構造体膜は、特に限定されることなく、イソプロピルアルコール等のアルコールや、水などを用いて洗浄することができる。
また、基材上に形成された炭素ナノ構造体膜は、特に限定されることなく、エタノール等のアルコール中で該基材から剥離することができる。
更に、減圧ろ過を用いて溶媒を除去した場合には、減圧ろ過の終了後、任意に得られた炭素ナノ構造体膜を洗浄した後で、炭素ナノ構造体膜に空気を15分間以上通気させることが好ましい。炭素ナノ構造体膜に空気を通気すれば、炭素ナノ構造体膜を強化することができる。
(炭素ナノ構造体膜)
そして、上述した炭素ナノ構造体膜の製造方法を用いて製造される本発明の炭素ナノ構造体膜は、複数本の繊維状炭素ナノ構造体が膜状に集合したものであり、優れた密着性を有している。そして、本発明の炭素ナノ構造体膜は、特に限定されることなく、太陽電池やタッチパネルなどの導電膜として好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」、は、特に断らない限り、質量基準である。
(実施例1)
<繊維状炭素ナノ構造体の調製>
特許第4621896号公報に記載のスーパーグロース法に従い、以下の条件において、繊維状炭素ナノ構造体としてのSGCNTを合成した。
・原料炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
・雰囲気:ヘリウム/水素混合ガス;供給速度1000sccm
・圧力:1大気圧
・水蒸気添加量:300ppm
・反応温度:750℃
・反応時間:10分
・金属触媒:鉄薄膜(厚さ1nm)
・基材:シリコンウェハー。
(硝酸処理工程)
得られた単層カーボンナノチューブ(SWNT)1gを、15M 硝酸125mLと超純水125mLの混合液に混合した。得られた混合液を8時間撹拌した後、125℃で12時間還流させ、250mLの混合液を7倍の超純水1.75Lで希釈した。
前記混合液に35%アンモニア水を滴下することにより、pHを1.5±0.1に調整した。
(超音波処理工程)
超音波洗浄装置(本田電子製、製品名「WTC−1200−40」)を用いて、4〜5℃に冷却した超音波水槽中で60分間、超音波処理した。
超音波照射後、専用の0.5ミクロンのセラミック膜を用いてクロスフロー濾過を行った。pH4.0になるまで、セラミック膜を通した。セラミック膜を通過した液体を透過液として廃棄し、フィルターの孔を通過しない液体を保持液として回収した。前記保持液に0.1%アンモニア水を添加することによって、保持液のpHを7.1に再調整した。その後、4〜5℃の超音波水槽中で2時間、再び超音波処理し、さらに2時間浸漬させた。
(超遠心分離工程)
液中の大きな粒子を除去するために超遠心分離を行った。超遠心分離機(日立工機製、製品名「CP−80NX」)を用いて最初に、25,000rpmで2時間、遠心分離を行った。上方の上澄み液を別のバイアルに移し、下方の沈殿物を廃棄した。次に、得られた上澄み液を25,000rpmで75分間、遠心分離を行い、さらに上澄み液を得た。
(分子添加剤添加工程)
得られた上澄み液に、分子添加剤としてのオクタキス(テトラメチルアンモニウム)−T8−シルセスキオキサン(アルドリッチ社製)を添加し、分散液中の分子添加剤濃度が異なる5つの繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製した。
(塗布、焼成工程)
得られた炭素ナノ構造体膜分散液を、基板上に塗布し、焼成して炭素ナノ構造体膜を形成した。前記基板としては、シリコンウェハーを使用した。また、塗布は、スピンコーティングによって行い、焼成は、温度250℃の空気中において、10分間行った。前記スピンコーティングは、以下の手順で行った。
得られた塗布液を直径100mmの二酸化ケイ素基板上に4〜6mL、展開することにより、基板上にスピンコートした。前記スピンコートにおいては、最初に、1秒間500rpmで、次に、180秒間60rpmで、次に、乾燥させるために20秒間2,000rpmで、最後に20秒間60rpmで基板を回転させた。
[評価]
(1)t−プロットの形状
以下の方法で、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの形状を確認した。まず、分子添加剤を添加する前の繊維状炭素ナノ構造体分散液(上澄み液)30mLを、温度120℃で10分間乾燥させて、水を揮発させた。そして、乾燥させた繊維状炭素ナノ構造体20mgを、110℃、5hr以上の熱処理で十分乾燥させ、全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製、製品名「Macsorb(登録商標)HM model−1210」)専用のセル内に入れた。その後、セルを測定装置の所定の位置に備え付け、自動操作によりBET比表面積を測定した。なお、この装置の測定原理は、液体窒素の77Kでの吸着等温線を作成し、この吸着等温曲線から、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法にて比表面積を測定する方法に従うものである。
上述のBET比表面積の測定で得られた吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより、t−プロットを作成した。作成したt−プロットから、t−プロットの形状を観察し、t−プロットの屈曲点の位置、全比表面積(m2/g)、内部比表面積(m2/g)を算出した。その結果、t=0.6nm、S2/S1=0.24(S1=1050m2/g、S=250m2/g)であった。
なお、t−プロットの測定原理は、de Boerらによるt−プロット法に従うものである。
(2)炭素ナノ構造体膜の密着性
基板上に形成された炭素ナノ構造体膜の表面にシルバーテープを貼り付け、該シルバーテープを剥離した際に炭素ナノ構造体膜がはがれるかどうかによって密着性を評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:炭素ナノ構造体膜が剥がれなかった
△:炭素ナノ構造体膜の一部が剥がれた
×:炭素ナノ構造体膜が剥がれた
第14族元素含有濃度(Si)と、炭素ナノ構造体膜の密着性の評価結果を表1に示す。
Figure 0006657939
表1に示したように、t−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を含む繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いることによって、5ppm以下という低い第14族元素含有濃度(Si)であっても、優れた密着性を有する炭素ナノ構造体膜を形成することができた。
本発明によれば、より少量の分子添加剤で、密着性に優れた炭素ナノ構造体膜を得ることのできる繊維状炭素ナノ構造体分散液、および前記繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いた炭素ナノ構造体膜の製造方法を提供することができる。

Claims (9)

  1. 吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体と、分子添加剤と、溶媒とを含み、
    前記分子添加剤が、Si、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される少なくとも一つの第14族元素を含み、
    前記第14族元素の4つの結合手のうち少なくとも3つが、O、N、P、F、Cl、Br、I、およびHからなる群より選択される少なくとも1つの原子と直接結合しており、
    前記第14族元素の濃度が、0.5〜5質量ppm(ただし、シリコンおよび/またはゲルマニウムの濃度が5質量ppmの場合を除く)である、繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  2. 前記t−プロットの屈曲点の位置が0.2≦t(nm)≦1.5である、請求項1記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  3. 前記t−プロットから得られる全比表面積S1及び内部比表面積S2が、0.05≦S2/S1≦0.30を満たす、請求項1又は2記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  4. 前記繊維状炭素ナノ構造体がカーボンナノチューブを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  5. 前記繊維状炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  6. 前記溶媒が、水、非水溶媒、またはそれらの混合物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  7. 前記繊維状炭素ナノ構造体が官能基化されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて、基材上に繊維状炭素ナノ構造体の層を形成することを含む、炭素ナノ構造体膜の製造方法。
  9. 前記繊維状炭素ナノ構造体の層が形成された基材を、100〜300℃の範囲で、空気中において焼成することを含む、請求項に記載の炭素ナノ構造体膜の製造方法。
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