JP6651130B2 - 耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれた表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、Al2O3層で示す)、
前記(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られている。
そこで、硬質被覆層の剥離、チッピングを抑制するために、上部層に改良を加えた各種の被覆工具が提案されている。
その結果、
(1)下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有し、かつ、NaCl型面心立方晶(以下、単に「立方晶」という場合もある。)の結晶構造を有するTi化合物層(好ましくは、Tiの炭窒化物(以下、「TiCN」と記す場合もある。)層)の結晶粒と、上部層を構成するTiAlCN層の結晶粒について、それぞれの結晶粒の{110}の法線が、基体表面の法線方向となす傾斜角の度数分布を測定した場合、前記法線方向に対して0〜10度の傾斜角区分に度数のピークが存在するとともに、該区分の傾斜角度数分布割合が、度数全体の30%以上であり、
(2)下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有し、かつ、立方晶構造を有するTi化合物層(好ましくは、Tiの炭窒化物(TiCN)層)の結晶粒のうち、基体表面の法線方向と{110}の法線がなす傾斜角が0〜10度である結晶粒の基体表面に平行な方向の最大幅に対応する上部層の領域において、{110}の法線方向が基体表面の法線方向となす傾斜角が0〜10度であるTiAlCN結晶粒が存在し、かつ、この結晶粒が基体表面の法線方向と{110}の法線がなす傾斜角が0〜10度であるTiAlCN結晶粒の50%以上であることにより、下部層と上部層のエピタキシャル成長した結晶粒の形成割合を高め、しかも、基体表面の法線方向と{110}の法線がなす傾斜角が0〜10度である結晶粒の形成割合を高めることによって、耐摩耗性を維持しつつ耐チッピング性および下部層と上部層との付着強度が向上し、高速で、かつ、切刃に断続的・衝撃的な高負荷が作用する高速断続切削条件においても、硬質被覆層はすぐれた密着強度を有するとともに、すぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮するという知見を得た。
「(1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層とからなる硬質被覆層が形成された表面被覆切削工具において、
(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなる1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層であって、かつ、その内の1層は、1μm以上で且つ合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層であり、
(b)前記上部層は、1〜20μmの平均層厚を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層であり、
(c)前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を、
組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XaveおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yave(但し、Xave、Yaveはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xave≦0.95、0≦Yave≦0.005を満足し、
(d)前記下部層のうち、合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層の結晶粒はNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、また、前記上部層のTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒は、NaCl型面心立方晶構造単相またはNaCl型面心立方晶構造と六方晶構造の混相からなる結晶構造を有し、
(e)下部層のうちの前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層の結晶粒および上部層の前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の個々の結晶粒の結晶方位を、電子線後方散乱回折装置を用いて縦断面方向から解析した場合、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、基体表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、下部層のうちの前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層および上部層の前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層のいずれにおいても、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の30%以上の割合を示し、
(f)下部層のうちの前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層において、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である結晶粒の基体表面に平行な方向の最大幅に対応する下部層と上部層との界面を介して、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒が隣接して存在し、かつ、該結晶粒は、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒全体の面積の50%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層は、Tiの炭窒化物層であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる上部層の表面に、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を少なくとも含む最表面層がさらに被覆形成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
図1からもわかるように、上部層と下部層の界面には、結晶粒が恰も界面を貫いて成長しているような結晶組織形態が観察される。
本発明でいう「下部層の結晶粒と上部層の結晶粒が{110}面の法線方向にエピタキシャル成長している」とは、このような結晶組織形態をいう。
Ti化合物層(例えば、Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層および炭窒酸化物(TiCNO)層)は、基本的にはTiAlCN層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか工具基体および上部層のTiAlCN層のいずれにも密着し、硬質被覆層の工具基体に対する密着性を維持する作用を有する。しかしながら、その合計平均層厚が1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方、その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速断続切削加工では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を1〜20μmと定めた。
さらに、下部層の{110}配向を引き継いで上部層をエピタキシャル成長させ、硬質被覆層の付着強度を向上させるために、前記下部層は、少なくとも立方晶構造を有し、平均層厚が1μm以上であって、かつ、下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層(例えば、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭窒酸化物層があげられる)の結晶粒が、{110}配向を備えることが必要である。なお、{110}配向を備えるTi化合物層の平均層厚が1μm未満であるとき、または、下部層の合計平均層厚の50%未満であると、下部層の{110}配向性を引き継いだ上部層のエピタキシャル成長が不十分となり、上部層の耐チッピング性とともに付着強度の向上が図れない。
例えば、{110}配向性を有する下部層のTiCN層は、通常の化学蒸着装置を使用して、例えば、
反応ガス組成(容量%):TiCl4 1.5〜2.0%、N2 5〜10%、CO 0〜2%、CH3CN 1.4〜1.6%、残部H2、
反応雰囲気温度:800〜850℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa、
の条件で目標平均層厚になるまで化学蒸着することによって形成することができる。
本発明の硬質被覆層の上部層は、化学蒸着された1〜20μmの平均層厚を有する立方晶構造単相または立方晶構造と六方晶構造の混相の結晶構造を有するTiAlCN層からなる。
本発明の上部層を構成するTiAlCN層は、{110}配向性を有するため、耐摩耗性を担持しつつすぐれた耐チッピング性を発揮するが、その平均層厚が1μm未満では、層厚が薄いため長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20μmを越えると、結晶粒が粗大化し、チッピングを発生しやすくなる。
したがって、上部層を構成するTiAlCN層の平均層厚は1〜20μmと定めた。
なお、上部層は、立方晶構造単層ばかりでなく、立方晶構造と六方晶構造の混相からなるTiAlCN層であってよい。
ここで、Alの平均含有割合Xave (原子比)が0.60未満であると、TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層は硬さに劣るため、合金鋼等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でない。一方、Alの平均含有割合Xaveが0.95を超えると、相対的にTiの含有割合が減少するため、脆化を招き、耐チッピング性が低下する。
したがって、Alの平均含有割合Xave (原子比)は、0.60≦Xave≦0.95とする。
また、複合窒化物または複合炭窒化物層に含まれるC成分の平均含有割合(原子比)Yaveは、0≦Yave≦0.005の範囲の微量であるとき、上部層と下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果として複合窒化物または複合炭窒化物層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、C成分の含有割合Yaveが0≦Yave≦0.005の範囲を逸脱すると、複合窒化物または複合炭窒化物層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に低下する。
したがって、C成分の含有割合Yave (原子比)は、0≦Yave≦0.005とする。
本発明の下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層、さらに、上部層の立方晶構造を有するTiAlCN層の個々の結晶粒の結晶方位について、電子線後方散乱回折装置を用いて、その縦断面方向から解析した場合、工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対する前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、その傾斜角のうち、法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の30%以上の割合となる傾斜角度数分布形態を示すことが必要である。
ここで、下部層あるいは上部層のいずれかでも、{110}面についての傾斜角度数分布が前記の範囲を外れると、硬質被覆層全体としての{110}面配向性が低下し、耐チッピング性が低下する。
さらに、下部層および上部層それぞれの{110}面配向性に加えて、下部層と上部層のエピタキシャル成長を促すためには、前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層において、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である結晶粒の基体表面に平行な方向の最大幅に対応する下部層と上部層との界面を介して、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiAlCN層の結晶粒が隣接して存在し、かつ、該TiAlCNの結晶粒は、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiAlCN層の結晶粒全体の面積の50%以上の面積割合を占めることが必要である。
つまり、下部層と上部層との間でエピタキシャル成長しているTiAlCN結晶粒の面積割合が、立方晶構造を有するTiAlCN層の結晶粒全体の50%未満である場合には、エピタキシャル成長が十分でないため、下部層と上部層との密着強度向上が図られず、高速断続切削等において剥離等の異常損傷を発生しやすくなるからである。
本発明で定めた下部層の{110}面配向、上部層の{110}面配向とともに、さらに、下部層と上部層間での{110}面配向を有する結晶粒のエピタキシャル成長を促進させることによって、下部層と上部層の密着強度が向上するとともに、硬質被覆層全体としての硬さが向上する。
その結果、このような被覆工具は、例えば、合金鋼の高速断続切削等に供した場合であっても、チッピング、剥離等の発生が抑えられ、しかも、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
図2、図3に、本発明の下部層と上部層について求めた傾斜角度数分布の一例を示すが、図2は、本発明の下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有する立方晶構造のTiCN結晶粒について求めたグラフであり、図3は、上部層の立方晶構造のTiAlCN結晶粒について求めたグラフである。
本発明は、1〜20μmの平均層厚を有する立方晶単相あるいは立方晶と六方晶の混相の結晶構造を有するTiAlCN層からなる上部層の表面に、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を少なくとも含む最表面層をさらに被覆形成することができる。
最表面層の酸化アルミニウム層は、硬質被覆層の高温硬さと耐熱性を高めるが、最表面層の平均層厚が1μm未満では前記特性を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方、その平均層厚が25μmを越えると、切削時に発生する高熱と切刃に作用する断続的かつ衝撃的高負荷によって、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになるため、その平均層厚は1〜25μmとすることが望ましい。
本発明の下部層及び最表面層は通常の化学蒸着方法、装置によって形成することができる。
例えば、平均層厚が1μm以上、かつ、下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層として、TiC層、TiN層、TiCN層等を形成する場合には、通常の化学蒸着装置を使用して、
反応ガス組成(容量%):TiCl4 1.5〜2.0%、N2 5〜10%、CO 0〜2%、CH3CN 1.4〜1.6%、残部H2、
反応雰囲気温度:800〜850℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa、
の条件で目標平均層厚になるまで化学蒸着することによって、{110}面配向性を有するTiC層、TiN層、TiCN層等を成膜することができる。
また、上部層についても、通常の化学蒸着方法によって形成することもできるが、例えば、次のような蒸着法によって成膜することもできる。
即ち、工具基体を装着した化学蒸着反応装置へ、NH3とH2からなるガス群Aと、TiCl4、AlCl3、NH3、N2、C2H4、H2からなるガス群Bを、おのおの別々のガス供給管から反応装置内へ供給し、工具基体表面における反応ガス組成をガス群Aとガス群Bの供給条件を調節して制御し、反応雰囲気圧力:2〜5kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃として、所定時間、熱CVD法を行うことにより、所定の目標層厚、目標組成のTiAlCN層を成膜することができる。
まず、表3に示される形成条件で、表6に示される下部層を形成し、
次いで、表5、表6に示される形成条件A〜J、すなわち、NH3とH2からなるガス群Aと、TiCl4、AlCl3、NH3、N2、C2H4、H2からなるガス群B、および、おのおのガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)を、ガス群AとしてNH3:1.5〜3.0%、H2:50〜75%、ガス群BとしてTiCl4:0.1〜0.15%、AlCl3:0.3〜0.5%、N2:0〜2%、C2H4:0〜0.05%、H2:残、反応雰囲気圧力:2〜5kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃、供給周期1〜5秒、1周期当たりのガス供給時間0.15〜0.25秒、ガス供給Aとガス供給Bの位相差0.10〜0.20秒として、所定時間、熱CVD法を行って上部層を形成することにより、本発明被覆工具1〜10を作製した。
なお、本発明被覆工具 8〜10 については、表3に示される形成条件で、表7に示される最表面層を形成した。
なお、比較被覆工具8〜10については、本発明被覆工具8〜10と同様に、表4に示される形成条件で、表8に示される上部層を形成した。
また、Cの平均含有割合Yaveについては、二次イオン質量分析(Secondary−Ion−Mass−Spectroscopy:SIMS)により求めた。イオンビームを試料表面側から70μm×70μmの範囲に照射し、スパッタリング作用によって放出された成分について深さ方向の濃度測定を行った。Cの平均含有割合YaveはTiAlCN層についての深さ方向の平均値を示す。ただしCの含有割合には、意図的にガス原料としてCを含むガスを用いなくても含まれる不可避的なCの含有割合を除外している。具体的にはC2H4の供給量を0とした場合のTiAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)を不可避的なCの含有割合として求め、C2H4を意図的に供給した場合に得られるTiAlCN層に含まれるC成分の含有割合(原子比)から前記不可避的なCの含有割合を差し引いた値をYaveとして求めた。
表7および表8に、その結果を示す。
表7および表8に、その結果を示す。
すなわち、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10について、上部層と下部層の界面からの下部層の厚さ方向へ下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層1.0μmを含む範囲、また、上部層の厚さ方向へ1.0μm、さらに、工具基体表面と平行方向に50μmの断面研磨面の測定範囲(2.0μm以上×50μm)を、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、2.0以上×50μmの測定領域を0.1μm/stepの間隔で、工具基体表面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層における該結晶粒の基体表面に平行な方向の最大幅に対応する下部層と上部層との界面を介して、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒が隣接して存在することで本発明に規定するエピタキシャル関係を確認し、かつ、該結晶粒は、該測定領域である2.0以上×50μmの領域における基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒全体の面積の50%以上の面積割合を占めるか否かを求め、本発明に規定するかを判定する。
また前記電子後方散乱解析装置による測定で、下部層が立方晶である事を確認し、上部層のTiAlCNが立方晶又は立方晶と六方晶の混合である事を確認した。
表7、表8にこれらの値を示す。
切削試験:乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
被削材:JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材、
回転速度:994 min−1、
切削速度:390 m/min、
切り込み:1.0 mm、
一刃送り量:0.1 mm/刃、
切削時間:8分、
なお、本発明被覆工具18〜20については、表3に示される形成条件で、表12に示すような上部層を形成した。
なお、本発明被覆工具18〜20と同様に、比較被覆工具18〜20については、表4に示される形成条件で、表13に示される上部層を形成した。
また、硬質被覆層の下部層および上部層の立方晶結晶構造を有する結晶粒の{110}面の法線が、工具基体表面の法線対してなす傾斜角および傾斜角度数分布については、実施例1と同様にして求めた。
さらに、界面を介して相互に隣接する下部層の結晶粒の{110}面の法線方向に対してエピタキシャル成長をなす上部層のTiAlCN結晶粒の面積割合については、実施例1と同様にして求めた。
表12、表13にこれらの値を示す。
切削条件1:
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:390 m/min、
切り込み:1.0 mm、
送り:0.15 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、 220m/min)、
切削条件2:
被削材:JIS・FCD700の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:325 m/min、
切り込み:1. mm、
送り:0.2 mm/rev、
切削時間:5 分、
(通常の切削速度は、 200m/min)、
表14に、切削試験の結果を示す。
なお、本発明被覆工具25〜26については、表3に示される形成条件で、表16に示される上部層を形成した。
なお、比較被覆工具25〜26については、表4に示される形成条件で、表17に示される上部層を形成した。
また、硬質被覆層の下部層および上部層の立方晶結晶構造を有する結晶粒の{110}面の法線が、工具基体表面の法線対してなす傾斜角および傾斜角度数分布については、実施例1と同様にして求めた。
さらに、界面を介して相互に隣接する下部層の結晶粒の{110}面の法線方向に対してエピタキシャル成長をなす上部層のTiAlCN結晶粒の面積割合については、実施例1と同様にして求めた。
表16、表17にこれらの値を示す。
被削材: JIS・SCr420(硬さ:HRC62)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 255 m/min、
切り込み: 0.12 mm、
送り: 0.12 mm/rev、
切削時間: 4分、
表18に、前記切削試験の結果を示す。
これに対して、比較被覆工具1〜26では、高速断続切削加工においては、硬質被覆層のチッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生、耐摩耗性の低下により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (3)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層とからなる硬質被覆層が形成された表面被覆切削工具において、
(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなる1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層であって、かつ、その内の1層は、1μm以上で且つ合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層であり、
(b)前記上部層は、1〜20μmの平均層厚を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層であり、
(c)前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を、
組成式:(Ti1−xAlx)(CyN1−y)
で表した場合、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合XaveおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合Yave(但し、Xave、Yaveはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦Xave≦0.95、0≦Yave≦0.005を満足し、
(d)前記下部層のうち、合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層の結晶粒はNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、また、前記上部層のTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒は、NaCl型面心立方晶構造単相またはNaCl型面心立方晶構造と六方晶構造の混相からなる結晶構造を有し、
(e)下部層のうちの前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層の結晶粒および上部層の前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の個々の結晶粒の結晶方位を、電子線後方散乱回折装置を用いて縦断面方向から解析した場合、基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{110}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、基体表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計したとき、下部層のうちの前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層および上部層の前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層のいずれにおいても、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在するとともに、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の30%以上の割合を示し。
(f)下部層のうちの前記合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層において、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である結晶粒の基体表面に平行な方向の最大幅に対応する下部層と上部層との界面を介して、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒が隣接して存在し、かつ、該結晶粒は、基体表面の法線方向に対する{110}面の法線の傾斜角が0〜10度の範囲内である前記立方晶構造を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層の結晶粒全体の面積の50%以上の面積割合を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記下部層の合計平均層厚の50%以上の平均層厚を有するTi化合物層は、Tiの炭窒化物層であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
- 前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層からなる上部層の表面に、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を少なくとも含む最表面層がさらに被覆形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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