JP6645627B2 - 熱間金型用Ni基合金及びそれを用いた熱間鍛造用金型 - Google Patents
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Description
なお、本発明で言う熱間鍛造とは、熱間鍛造用金型の温度を鍛造素材の温度まで近づけるホットダイ鍛造と鍛造素材と同じ温度にする恒温鍛造を含むものである。
本発明の目的は、高い高温圧縮強度と良好な耐酸化性を有し、熱間鍛造等における作業環境の劣化及び形状劣化が抑制可能な熱間金型用Ni基合金およびそれを用いた熱間鍛造用金型を提供することである。
すなわち本発明は、W:7.0〜15.0%、Mo:2.5〜11.0%、Al:5.0〜7.5%、Cr:0.5〜3.0%、Ta:0.5〜7.0%、S:0.0010%以下、希土類元素、Y及びMgから選択される1種または2種以上を合計として0〜0.020%、残部はNi及び不可避的不純物でなる熱間金型用Ni基合金である。
本発明では、上記組成に加えて、更に、Zr、Hfの元素から選択される1種または2種を合計として0.5%以下を含有することができる。
また、本発明では、上記組成に加えて、更に、Ti、Nbの元素から選択される1種または2種を合計として3.5%以下、TaとTiとNbの含有量の総和が1.0〜7.0%となる範囲内で含有することができる。
また、本発明では、上記組成に加えて、更に、Coを15.0%以下含有することができる。
また、本発明では、上記組成に加えて、更に、C:0.25%以下、B:0.05%以下の元素から選択される1種または2種を含有することができる。
また、本発明においては、試験温度:1000℃、歪速度:10−3/secでの0.2%圧縮強度が500MPa以上であることが好ましい。
更に好ましくは、試験温度:1100℃、歪速度:10−3/secでの0.2%圧縮強度が300MPa以上である。
また、本発明は、前記熱間金型用Ni基合金を用いた熱間鍛造用金型である。
<W:7.0〜15.0%>
Wは、オーステナイトマトリックスに固溶するとともに、析出強化相であるNi3Alを基本型とするガンマプライム相(γ’相)にも固溶して合金の高温強度を高める。一方、Wは、耐酸化性を低下させる作用や、TCP(Topologically Close Packed)相等の有害相を析出しやすくする作用を有する。高温強度を高め、且つ、耐酸化性の低下と有害相の析出をより抑制する観点から、本発明におけるNi基合金中のWの含有量は7.0〜15.0%とする。Wの効果をより確実に得るための好ましい下限は10.0%であり、好ましい上限は12.0%であり、更に好ましい上限は11.0%である。
<Mo:2.5〜11.0%>
Moは、オーステナイトマトリックスに固溶するとともに、析出強化相であるNi3Alを基本型とするガンマプライム相にも固溶して合金の高温強度を高める。一方、Moは、耐酸化性を低下させる作用を有する。高温強度を高め、且つ、耐酸化性の低下をより抑制する観点から、本発明におけるNi基合金中のMoの含有量は2.5〜11.0%とする。なお、Wと後述するTa、Ti、Nbの添加に伴うTCP相等の有害相の析出を抑制するため、W、Ta、Ti、Nb含有量との兼ね合いで好ましいMoの下限を設定するのが好ましく、Moの効果をより確実に得るための好ましい下限は4.0%であり、更に好ましい下限は4.5%である。また、好ましいMoの上限は10.5%であり、更に好ましい上限は、10.2%である。
Alは、Niと結合してNi3Alからなるガンマプライム相を析出し、合金の高温強度を高め、合金の表面にアルミナの被膜を生成し、合金に耐酸化性を付与する作用を有する。一方、Alの含有量が多過ぎると、共晶ガンマプライム相を過度に生成し、合金の高温強度を低める作用もある。耐酸化性及び高温強度を高める観点から、本発明におけるNi基合金中のAlの含有量は5.0〜7.5%とする。Alの効果をより確実に得るための好ましい下限は5.5%であり、更に好ましい下限は6.1%である。また、好ましいAlの上限は6.7%であり、更に好ましい上限は6.5%である。
<Cr:0.5〜3.0%>
Crは、合金表面もしくは内部におけるアルミナの連続層の形成を促進し、合金の耐酸化性を向上させる作用を有する。そのため、0.5%以上のCrの含有が必要になる。一方、Crの含有量が多すぎると、TCP相等の有害相を析出しやすくする作用もある。特に、W、Mo、Ta、Ti、Nbなどの合金の高温強度を向上させる元素を多く含有している場合には、有害相が析出しやすい。耐酸化性を向上させ、且つ、高温強度を向上させる元素の含有量を高い水準に維持しつつ有害相の析出を抑制する観点から、本発明におけるCrの含有量は0.5〜3.0%とする。Crの効果をより確実に得るための好ましい下限は1.3%であり、好ましいCrの上限は2.0%である。
Taは、Ni3Alからなるガンマプライム相にAlサイトを置換する形で固溶して合金の高温強度を高める。更に、合金表面に形成された酸化物皮膜の密着性と耐酸化性を高め、合金の耐酸化性を向上させる。一方、Taの含有量が多すぎると、TCP相等の有害相を析出しやすくする作用や、共晶ガンマプライム相を過度に生成し、合金の高温強度を低める作用もある。耐酸化性及び高温強度を高め、且つ、有害相の析出を抑制する観点から、本発明におけるTaの含有量は0.5〜7.0%とする。Taの効果をより確実に得るための好ましい下限は2.5%であり、好ましいTaの上限は6.5%である。なお、後述するTi乃至はNbとともにTaを含有する場合の好ましいTaの上限は3.5%である。
また、本発明における熱間金型用Ni基合金において、S(硫黄)は、合金表面に形成される酸化物被膜と合金との界面への偏析とそれらの化学結合の阻害により酸化物被膜の密着性を低下させる。そのため、Sの上限を0.0010%以下(0%を含む)に規制しつつ、Sと硫化物を形成する希土類元素、Y及びMgの元素から選択される1種または2種以上を合計として0.020%以下の範囲で含有させることが好ましい。これら希土類元素、Y及びMgについては、過剰な添加はかえって靭性を低下させることになる。そのため、希土類元素、Y及びMgの合計量の上限は0.020%とする。なお、Sは不純物として含有され得る成分であり、0%を越えて少なからず残留する。そのSの含有量が0.0001%(1ppm)以上となるおそれのあるときに、希土類元素、Y及びMgの元素から選択される1種または2種以上をSの含有量以上含有させるようにするとよい。なお、本発明のNi基合金において、希土類元素、Y及びMgの元素は、0%でもかまわない。
前記希土類元素のなかではLaを用いるのが好ましい。LaはSの偏析を防止する作用に加えて、後述する酸化物被膜の結晶粒界における拡散の抑制作用も有し、且つ、それらの作用が優れているため、希土類元素のなかではLaを選択するのが良い。経済的な観点からすると、Mgを用いるのが好ましい。また、Mgは鋳造時の割れを防止する効果も期待できるため、希土類元素、Y及びMgの何れかを選択する場合はMgを用いることが好ましい。Mgの効果を確実に得るには、Sの有無に係らず、0.0002%以上含有させるとよい。好ましくは0.0005%以上であり、更に好ましくは0.0010%以上である。
本発明における熱間金型用Ni基合金は、Zr、Hfから選択される1種または2種を合計として0.5%以下(0%を含む)の範囲で含有することができる。Zr、Hfは、酸化物被膜の結晶粒界への偏析によりその粒界での金属イオンと酸素の拡散を抑制する。この粒界拡散の抑制は、酸化物被膜の成長速度を低下させ、また、酸化物被膜の剥離を促進する様な成長機構を変化させることで酸化物被膜と合金の密着性を向上させる。すなわち、これらの元素は、前述した酸化物被膜の成長速度の低下と酸化物被膜の密着性の向上によって合金の耐酸化性を向上させる作用を有する。この効果を確実に得るためには、Zr、Hfの元素から選択される1種または2種を合計として0.01%以上含有することがよい。好ましい下限は0.02%であり、更に好ましい下限は0.05%である。一方、ZrやHfの添加量が多すぎると、Ni等との金属間化合物を過度に生成して合金の靱性を低下させるため、Zr、Hfの元素から選択される1種または2種の合計としての上限は0.5%である。好ましい上限は0.2%であり、さらに好ましい上限は0.15%である。ところで、Hfは鋳造時の割れを防止する効果も期待できるため、ZrとHfの何れかを選択する場合はHfを用いることが好ましい。
なお、希土類元素、Yも酸化物被膜の結晶粒界における拡散の抑制作用を有する。しかし、これらの元素はZr、Hfに比べて靭性を低める作用が高く含有量の上限値が低い。そのため、この作用を目的として含有させる元素としては、希土類元素、YよりもZr、Hfの方が好適である。耐酸化性と靭性とをバランスよく高めるには、HfとMgとを同時に用いることが特に好ましい。
本発明における熱間金型用Ni基合金は、Ti、Nbから選択される1種または2種を合計として3.5%以下(0%を含む)の範囲で含有することができる。Ti、Nbは、Taと同様にNi3Alからなるガンマプライム相にAlサイトを置換する形で固溶して、合金の高温強度を高める。また、Taに比べて安価な元素であるため金型コストの点で有利である。一方、Ti、Nbの含有量が多すぎると、Taと同様に、TCP相等の有害相を析出しやすくする作用や、共晶ガンマプライム相を過度に生成し、合金の高温強度を低める作用もある。加えて、Ti、Nbは、Taに比べて高温強度を高める作用が弱く、また、Taと異なり耐酸化性を向上させる作用を有さない。
以上のことから、有害相の析出と共晶ガンマプライム相の過度な生成に伴う高温強度の低下を抑制する観点より、TaとTiとNbの含有量の総和を制限しつつ、高温強度特性と耐酸化性がTaのみを含有した場合と同水準に維持される範囲内で、Taを金型コストの点で有利なTi乃至はNbに置換することが望ましい。本発明では、TaとTiとNbの含有量の総和の上限を7.0%とするとともに、Ti、Nbの元素から選択される1種または2種の含有量の上限を3.5%とする。TaとTiとNbの含有量の総和の好ましい上限は6.5%であり、Ti、Nbの元素から選択される1種または2種の含有量の好ましい上限は2.7%である。また、高温強度を高める効果を確実に得る観点から、TaとTiとNbの含有量の総和の下限を1.0%とするとともに、金型コストを低下させる効果を確実に得る観点から、Ti、Nbの元素から選択される1種または2種の含有量の下限を0.5%とすると良い。TaとTiとNbの含有量の総和の好ましい下限は3.0%であり、さらに好ましい下限は4.0%である。Ti、Nbの元素から選択される1種または2種の含有量の好ましい下限は1.0%である。
経済的な観点からするとTiのみを用いることが特に好ましく、高温強度を特に重視する場合はNbのみを用いることが特に好ましい。金型コストと高温強度の両者を重視する場合は、TiとNbを同時に用いることが特に好ましい。
本発明における熱間金型用Ni基合金は、Coを含有することができる。Coは、オーステナイトマトリックスに固溶し、合金の高温強度を高める。一方、Coの含有量が多すぎると、CoはNiに比べて高価な元素であるため金型コストを高め、また、TCP相等の有害相を析出しやすくする作用もある。高温強度を高め、金型コストの上昇と有害相の析出を抑制する観点から、15.0%以下の範囲(0%を含む)でCoを含有することができる。なお、Coの効果を確実に得るための好ましい下限は0.5%であり、更に好ましくは2.5%である。また、好ましい上限は13.0%である。
<C及びB>
本発明における熱間金型用Ni基合金は、0.25%以下(0%を含む)のC(炭素)と、0.05%以下(0%を含む)のB(硼素)から選択される1種または2種の元素を含有することができる。C、Bは、合金の結晶粒界の強度を向上させ、高温強度や延性を高める。一方、C、Bの含有量が多すぎると、粗大な炭化物やホウ化物が形成され、合金の強度を低下させる作用もある。合金の結晶粒界の強度を高め、粗大な炭化物やホウ化物の形成を抑制する観点から、本発明におけるCの含有量は0.005〜0.25%、Bの含有量は0.005〜0.05%とすることが好ましい。Cの効果を確実に得るための好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.15%である。Bの効果を確実に得るための好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.03%である。
経済性や高温強度を重視する場合はCのみを用いることが特に好ましく、延性を特に重視する場合はBのみを使用することが特に好ましい。高温強度と延性の両者を重視する場合は、CとBを同時に用いることが特に好ましい。
本発明の熱間金型用Ni基合金における前述した元素以外はNi及び不可避的不純物である。本発明における熱間金型用Ni基合金においてNiはガンマ相を構成する主要元素であるとともに、Al、Ta、Ti、Nb、Mo、Wとともにガンマプライム相を構成する。また、不可避的不純物としては、P、N、O、Si、Mn、Fe等が想定され、P、N、Oはそれぞれ0.003%以下であれば含有されていてもかまわなく、また、Si、Mn、Feはそれぞれ0.03%以下であれば含有されていてもかまわない。なお、前述の不純物元素の他に、特に制限すべき元素としてCaが挙げられる。本発明で規定する組成にCaが添加されるとシャルピー衝撃値を著しく低下させるため、Caの添加は避けるべきである。また、本発明のNi基合金は、Ni基耐熱合金と呼ぶこともできる。
本発明では、上記の合金組成を有する熱間金型用Ni基合金を用いた熱間鍛造用金型を構成することができる。本発明の熱間鍛造用金型は合金粉末の焼結もしくは鋳造により得ることができる。合金粉末の焼結よりも製造費の安価な鋳造の方が好ましく、更に、凝固時の応力による素材の割れの発生を抑制するため、その鋳型には砂型又はセラミックス型を用いることが好ましい。本発明の熱間鍛造用金型の成形面または側面の少なくとも一方の面を、酸化防止剤の塗布層を有する面とすることができる。これにより、高温での大気中の酸素と金型の母材との接触による金型表面の酸化とそれに伴うスケール飛散を防止し、作業環境の劣化及び形状劣化をより確実に防止できる。前述した酸化防止剤は、窒化物、酸化物、炭化物の何れか1種類以上でなる無機材料であることが好ましい。これは、窒化物や酸化物や炭化物の塗布層により緻密な酸素遮断膜を形成し、金型母材の酸化を防ぐためである。なお、塗布層は窒化物、酸化物、炭化物の何れかの単層でも良いし、窒化物、酸化物、炭化物の何れか2種以上の組み合わせの積層構造であっても良い。更に、塗布層は窒化物、酸化物、炭化物の何れか2種以上からなる混合物であっても良い。
以上、説明する本発明の熱間金型用Ni基合金を用いた熱間鍛造用金型は、高い高温圧縮強度と良好な耐酸化性を有し、高温での大気中の酸素と金型の母材との接触による金型表面の酸化とそれに伴うスケール飛散を防止し、作業環境の劣化及び形状劣化をより確実に防止できる。
本発明の熱間金型用Ni基合金を用いた熱間鍛造用金型を用いて鍛造製品を製造する場合の代表的な工程について説明する。
先ず、第一の工程として鍛造素材を所定の鍛造温度に加熱する。鍛造温度は材質に応じて異なるため、適宜温度を調整する。本発明の熱間金型用Ni基合金を用いた熱間鍛造用金型は、高温での大気中の雰囲気においても恒温鍛造やホットダイ鍛造が可能な特性を有するため、難加工性材料として知られるNi基超耐熱合金やTi合金等の熱間鍛造に好適である。代表的な鍛造温度としては1000〜1150℃の範囲である。
そして、前記第一の工程で加熱された鍛造素材を事前に加熱された熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造(第二の工程)する。前記のホットダイ鍛造や恒温鍛造の場合、第二工程の熱間鍛造は、型鍛造であることが好ましい。また、本発明の熱間金型用Ni基合金は前述したように、特にCr含有量を調整した成分とすることにより1000℃以上の高温で大気中の熱間鍛造が可能である。
本発明例の合金No.1乃至18および比較例の合金No.21乃至24の試験片を用いて、試験片をSiO2とAl2O3からなるセラミックス製の容器の上に置いた状態で1100℃に加熱された炉に投入し、1100℃にて3時間保持した後に炉から取り出して空冷させる加熱試験を行った。加熱試験は、繰り返しの使用に対する耐酸化性を評価するため、冷却した後再投入することで10回繰り返し行った。
各試験片に対し、1回目の加熱試験前に試験片の表面積と質量の測定を行い、また、1乃至10回目の加熱試験後に室温まで冷却した後表面のスケールをブロワーにて除去した試験片質量を測定した。各試験後に測定した質量から1回目の試験前に測定した質量を引き、その値を1回目の試験前に測定した表面積にて割ることで、各試験後における試験片の単位表面積あたりの質量変化を算出した。質量変化の値の絶対値が大きいほど単位面積当たりのスケール飛散量が大きいということである。各繰り返し回数後における質量変化は以下のように計算した。
質量変化=(試験後質量−1回目試験前質量)/1回目試験前表面積
図1(a)に示すように、本発明例No.1乃至5は比較例No.21及び22の合金よりもスケールの生成(飛散)が抑制され質量変化の値の絶対値が小さくなっており、繰り返しの使用に対する良好な耐酸化性を有することが分かる。なかでも特に、CrとTaに加えてHfを添加したNo.3、CrとTaに加えてMgを添加したNo.4については、CrとTaのみを添加したNo1及び2と比較してスケールの飛散が抑制されており、繰り返しの使用に対する耐酸化性が特に優れていることが分かる。
また、図1(b)に示すように、HfとMgをともに添加したNo.5は、前述したNo.3やNo.4と比較しても、繰り返しの使用に対する耐酸化性が更に優れていることが分かる。
なお、本発明例6乃至18についても、表2より、比較例No.21及び22の合金よりもスケールの生成(飛散)が抑制され質量変化の値の絶対値が小さくなっており、繰り返しの使用に対する良好な耐酸化性を有することが分かる。
表3に本発明例No.2乃至8と比較例No.23及び24の室温におけるシャルピー衝撃値を示す。また、図2にこれらのシャルピー衝撃値を図示する。図2に示すように、本発明のNo.2乃至8は、比較例No.23及び24の合金よりもシャルピー衝撃値が大きくなっており、熱間鍛造中に金型が割れる可能性が十分低いことが分かる。
本発明例No.7及び8と比較例No.23及び24の比較からすると、比較例のシャルピー衝撃値が低い理由は、靭性を低下させる作用が高い希土類元素(La)とYを過剰添加したことによるものである。
この圧縮試験片を用いて圧縮試験を行った。圧縮試験温度を1000℃と1100℃の2条件とした。これは、試験温度が1000℃のものは主として“ホットダイ鍛造”への適用を確認するためのものであり、試験温度が1100℃のものは主として“恒温鍛造”への適用を確認するためのものである。試験条件は、試験温度1000℃及び1100℃にて、歪速度10−3/sec、圧縮率10%の条件で圧縮試験を行った。圧縮試験により得られた応力―歪曲線より0.2%圧縮強度を導出し、高温圧縮強度の評価を行った。この圧縮試験は、熱間鍛造用の金型として、高温下においても十分な圧縮強度を有しているかを試験するものであり、恒温鍛造を想定した試験温度1100℃において、300MPa以上あれば十分な強度を有すると言える。好ましくは350MPa以上であり、更に好ましくは380MPa以上である。また、ホットダイ鍛造を想定した試験温度1000℃において、500MPa以上あれば十分な強度を有すると言える。好ましくは550MPa以上であり、更に好ましくは600MPa以上である。
表4に本発明例No.1乃至18と比較例No.21乃至24の試験片の各試験温度における0.2%圧縮強度を示す。表4より、本発明例No.1の1000℃での歪速度10−3/secでの圧縮強度は500MPa以上であることがわかる。また、本発明例No.1乃至18の1100℃での歪速度10−3/secでの圧縮強度が300MPa以上であり、何れの本発明の熱間金型用Ni基合金においても高い高温圧縮強度を有することがわかる。特に、Ti乃至はNbを含有しないとともにTa含有量の多いNo.5と、Ti乃至はNbを含有するとともに比較的Ta含有量の少ないNo.9〜11より、Taを本発明の範囲内で金型コストの点で有利なTi乃至はNbに置換しても、十分な高温強度が維持されることが分かる。また、Coを含有しないNo.12と、No.12にCoを添加した組成であるNo.14とNo.15より、Coを含有させることで高温強度が高くなることが分かる。
以上説明する本発明の熱間金型用Ni基合金を所定の形状に加工して、熱間鍛造用金型とすることができる。前述した特性を有する本発明の熱間金型用Ni基合金製の熱間鍛造用金型は、大気中でのホットダイ鍛造や恒温鍛造に好適であることがわかる。
Claims (7)
- 質量%で、W:7.0〜15.0%、Mo:2.5〜11.0%、Al:5.0〜7.5%、Cr:0.5〜3.0%、Ta:0.5〜7.0%、S:0.0010%以下、希土類元素、Y及びMgから選択される1種または2種以上を合計として0〜0.020%、並びにC:0.25%以下、B:0.05%以下の元素から選択される1種または2種、残部はNi及び不可避的不純物でなる熱間金型用Ni基合金。
- 質量%で、Zr、Hfの元素から選択される1種または2種を合計として0.5%以下を更に含有する請求項1に記載の熱間金型用Ni基合金。
- 質量%で、Ti、Nbの元素から選択される1種または2種を合計として3.5%以下を更に含有し、TaとTiとNbの含有量の総和が1.0〜7.0%である請求項1または2に記載の熱間金型用Ni基合金。
- 質量%で、15.0%以下のCoを更に含有する請求項1乃至3の何れかに記載の熱間金型用Ni基合金。
- 試験温度:1000℃、歪速度:10−3/secでの0.2%圧縮強度が500MPa以上である請求項1乃至4の何れかに記載の熱間金型用Ni基合金。
- 試験温度:1100℃、歪速度:10−3/secでの0.2%圧縮強度が300MPa以上である請求項1乃至5の何れかに記載の熱間金型用Ni基合金。
- 請求項1乃至6の何れかに記載の熱間金型用Ni基合金を用いた熱間鍛造用金型。
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