JP6645514B2 - リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents
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Description
このような小型、軽量な高容量の二次電池としては、今日、リチウムイオンを層間から放出するリチウムインターカレーション化合物を正極物質に、リチウムイオンを結晶面間の層間に充放電時に吸蔵放出(インターカレート)できる黒鉛などに代表される炭素質材料を負極物質に用いた、ロッキングチェア−型のリチウムイオン電池の開発が進み、実用化されて一般的に使用されている。
そこで、かかるリチウム金属に代わる負極活物質として、リチウムを吸蔵、放出する炭素系負極が用いられるようになった。
炭素系負極を使用するリチウムイオン二次電池は、炭素の多孔性構造のため、本質的に低い電池容量を有する。例えば、使用されている炭素として最も結晶性の高い黒鉛の場合にも、理論的な容量は、LiC6の組成であるとき、372mAh/gほどである。これは、リチウム金属の理論的な容量が3860mAh/gであることに比べれば、僅か10%ほどに過ぎない。そこで、金属負極が有する既存の問題点にもかかわらず、再びリチウムのような金属を負極に導入し、電池の容量を向上させようという研究が活発に試みられている。
例えば、特許文献1にはケイ素濃度傾斜のあるケイ素酸化物に酸化チタンを被覆した材料をリチウムイオン二次電池の負極活物質として使用し、高容量で改良されたサイクル特性を有する電地を得ることが開示されている。
また、特許文献2にはケイ素ナノ粒子分散したケイ素酸化物粒子表面に酸化チタンを被覆した材料が二次電池用負極材として提案されている。
さらにまた、非特許文献1にはケイ素酸化物にアナターゼ型の酸化チタンを被覆した材料がリチウムイオン電池の負極材料に用いることが開示されている。
さらに、負極材料を得るには製造方法として生産性に劣り、結果として高いコストを必要とする技術であった。
本発明の課題は、その要求に応える、充放電サイクル劣化が極めて抑制された、高容量で優れた充放電特性を有する二次電池用負極活物質を高い生産性で以って製造する方法を提供することである。
ケイ素−チタン酸化物複合体を含んでなるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、
該リチウムイオン二次電池用負極活物質に含まれるケイ素−チタン酸化物複合体は、ケイ素酸化物に、酸化チタンを被覆することによって得られ、
該ケイ素酸化物は、
a)式(1)で示されるケイ素化合物を加水分解および縮合反応をさせて得られる、水素シルセスキオキサン重合物(HPSQ)を、不活性ガス雰囲気下で、熱処理して得られ、
b)ケイ素(Si)、酸素(O)及び水素(H)を含有し、
c)赤外分光法により測定したスペクトルにおいて、820〜920cm-1にあるSi−H結合に由来するピーク1の強度(I1)と1000〜1200cm-1にあるSi−O−Si結合に由来するピーク2の強度(I2)の比(I1/I2)が0.01から0.35の範囲にあり、
d)一般式SiOxHy(1<x<1.8、0.01<y<0.4)で表示されるものであることを特徴とする、
リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
(式中、Rは、それぞれ同一あるいは異なる、ハロゲン、炭素数1〜10の置換または非置換のアルコキシ、炭素数6〜20の置換または非置換のアリールオキシ、および炭素数7〜30の置換または非置換のアリールアルコキシから選択される基である。但し、炭素数1〜10の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリールオキシ基、および炭素数7〜30の置換または非置換のアリールアルコキシ基において、任意の水素はハロゲンで置換されていてもよい。)
また、本発明の製造方法で得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質を用いて得られるリチウムイオン二次電池は、充放電サイクル劣化が極めて抑制された、高容量で優れた充放電特性を有している。
<水素シルセスキオキサン重合物(HPSQ)の製造>
本発明に用いる水素シルセスキオキサン重合物(HPSQ)は、式(1)で示されるケイ素化合物を加水分解および縮合反応をさせて得られる。
式(1)において、Rは、それぞれ同一あるいは異なる、ハロゲン、水素、炭素数1〜10の置換または非置換のアルコキシ、および炭素数6〜20の置換または非置換のアリールオキシから選択される基である。但し、炭素数1〜10の置換または非置換のアルコキシ基、および炭素数6〜20の置換または非置換のアリールオキシ基において、任意の水素はハロゲンで置換されていてもよい。
例えば、トリクロロシラン、トリフルオロシラン、トリブロモシラン、ジクロロシラン等のトリハロゲン化シランやジハロゲン化シラン、トリn−ブトキシシラン、トリt−ブトキシシラン、トリn−プロポキシシラン、トリi−プロポキシシラン、ジn−ブトキシエトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシシラン等のトリアルコキシシランやジアルコキシシラン、更にはトリアリールオキシシラン、ジアリールオキシシラン、ジアリールオキシエトキシシラン等のアリールオキシシランまたはアリールオキシアルコキシシランが挙げられる。
この時、加水分解反応に加えて、加水分解物の縮重合反応も部分的に進行する。
ここで、縮重合反応が進行する程度は、加水分解温度、加水分解時間、酸性度、及び/又は、溶媒等によって制御でき、例えば、後述するように目的とするケイ素酸化物に応じて適宜に設定することができる。
反応条件としては、撹拌下、酸性水溶液中に式(1)で表されるケイ素化合物を添加し、−20℃〜50℃、好ましくは0℃〜40℃、特に好ましくは10℃〜30℃の温度で0.5時間〜20時間、好ましくは1時間〜10時間、特に好ましくは1時間〜5時間反応させる。
具体的には、有機酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸などが例示され、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが例示されるが、加水分解反応およびその後の重縮合反応を制御して行うことが容易にでき、入手やpH調整、および反応後の処理も容易であることから塩酸が好ましい。
<ケイ素酸化物の製造>
熱処理は、詳細を前に述べた通り、不活性ガス雰囲気下で行う必要がある。酸素が存在する雰囲気下で熱処理を行うと二酸化ケイ素が生成することにより、所望の組成とSi-H結合量が得られない(上述の通り、不活性ガスは、本発明の目的を達成できる程度に酸素が除去されていればよい。)。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。これらの不活性ガスは、一般に使用されている高純度規格のものであれば問題なく使用できる。また、不活性気体を用いることなく、高真空により酸素を除去した雰囲気にし、熱処理することもできる。
従って、高容量と良好なサイクル特性を共に発現させるには適量のSi−H結合を残存させることが必要となり、そのような条件を満足させる熱処理温度は600℃から950℃、好ましくは650℃から900℃である。
熱処理時間は、特に限定されないが、通常30分から10時間、好ましくは1から8時間である。
本発明に用いる、ケイ素−チタン酸化物複合体は上記の方法で得られたケイ素酸化物に酸化チタンを被覆することにより得られる。
被覆する方法は種々の方法が用いられる。
例えば酸化チタン粒子が溶媒中に懸濁した懸濁液中にケイ素酸化物を添加し、その後濾過、乾燥、熱処理する方法が挙げられるが、好ましいのはアルコキチタン溶液中にケイ素酸化物を懸濁させた後、縮合反応させ酸化チタンの被膜をケイ素酸化物表面に被覆させてから、濾過、乾燥、熱処理する方法である。
<ケイ素−チタン酸化物複合体の製造>
熱処理時間は、特に限定されないが、通常30分から10時間、好ましくは1から8時間である。
本発明に用いるケイ素酸化物はそれ自身が高い充放電サイクル安定性を有するが、酸化チタンを被覆することで、以上のような作用が加わり更に高い充放電サイクル安定性が得られるものと考えられる。
本発明は、上記の本発明の方法で得られたケイ素−チタン酸化物複合体を含んでなるリチウムイオン二次電池用負極活物質を提供する。
従って、前記ケイ素−チタン酸化物複合体に炭素系物質を複合させることも本発明の一態様である。
炭素系物質を複合させるには、メカノフュージョンなどの機械的融合処理法やCVD(chemical vapor deposition)等の蒸着法により、前記ケイ素−チタン酸化物複合体に炭素系物質を複合化させる方法や、 ボールミルあるいは振動ミル等を用いた機械的混合法等により、前記ケイ素−チタン酸化物複合体内に炭素系物質を分散させる方法が挙げられる。
例えば、メタン、エチレン、プロピレンやアセチレン等の炭化水素ガス類、スクロース、グルコース、セルロース等の糖類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリピロール、更には石油ピッチ、コールタールピッチ、アセチレンブラックが挙げられる。
本発明により製造されるリウムイオン二次電池における負極は、前記ケイ素−チタン酸化物複合体あるいは前記炭素系物質を複合させたケイ素−チタン酸化物複合体を含有する負極活物質を用いて製造される。
例えば、前記のケイ素−チタン酸化物複合体あるいは前記炭素系物質を複合させたケイ素−チタン酸化物複合体を含んで形成された負極活物質および結着剤を含む負極混合材料を一定の形状に成形してもよく、該負極混合材料を銅箔などの集電体に塗布させる方法で製造されたものでもよい。負極の成形方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本発明のケイ素酸化物を含んでなる負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、次のように製造できる。
まず、Liを可逆的に吸蔵及び放出可能な正極活物質、導電助剤、結着剤及び溶媒を混合して正極活物質組成物を準備する。前記正極活物質組成物を負極と同様、通常に行われているとおり、金属集電体上に直接コーティング及び乾燥し、正極板を準備する。
前記正極活物質組成物を別途、支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを金属集電体上にラミネートして正極を製造することも可能である。正極の成形方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
この時、カソード活物質、導電助剤、結着剤及び溶媒の含有量は、リチウムイオン二次電池で一般的に使用することができる量とする。
より具体的には、リチウムイオン二次電池の場合には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような材料からなる巻き取り可能なセパレータを使用し、リチウムイオンポリマー電池の場合には、有機電解液含浸能に優れたセパレータを使用するが、かかるセパレータの成形方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、下記方法によって製造可能である。
前記高分子樹脂は、特に限定されず、電極板の結着剤に使われる物質が何れも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン/六フッ化プロピレン共重合体、フッ化ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート及びその混合物などが使用できる。
FECを添加すると、初回充電時にFECが負極上で還元分解されLiFやLi2CO3など分解生成物を形成する。これらの分解生成成分は負極活物質表面で重合して安定化し優良な被膜を形成する。この被膜は過酷な充放電環境下でも安定して存在し、リチウムイオンの移動を促進するとともに、電解液の分解反応を抑止する役割も果たすと考えられる。
なお、前記環状フッ素化カーボネートおよび鎖状フッ素化カーボネートは、エチレンカーボネートなどのように、溶媒として用いることもできる。
各実施例及び比較例における「赤外分光法測定」を始めとした各種分析に用いた測定装置及び測定方法、並び「電池特性の評価」は、以下のとおりである。
赤外分光法測定は、赤外分光装置として、Thermo Fisher Scientific製 Nicolet iS5 FT-IRを用いて、KBr法による透過測定(分解能4cm-1、スキャン回数16回、データ間隔 1.928cm-1、検出器 DTGS KBr)にて、820〜920cm-1にあるSi−H結合に由来するピーク1の強度(I1)および、1000〜1200cm-1にあるSi−O−Si結合に由来するピーク2の強度(I2)を測定した。なお、各々のピーク強度は、対象のピークの始点と終点を直線で結び、部分的にベースライン補正を行った後、ベースラインからピークトップまでの高さを計測して求めた。
元素組成分析については、試料粉末をペレット状に固めたのち、2.3MeVに加速したHeイオンを試料に照射し、後方散乱粒子のエネルギースペクトル、及び前方散乱された水素原子のエネルギースペクトルを解析することにより水素を含めた確度の高い組成値が得られるRBS(ラザフォード後方散乱分析)/HFS(水素前方散乱分析)法により行った。ケイ素、酸素、チタンの含有量はRBSスペクトル解析にて計測し、水素含有量はRBSとHFSのスペクトルを用いた解析により計測した。また、酸化チタン含有量は、チタンが全て二酸化チタン化していると仮定し、チタン含有量を(TiO2/Ti=79.87/47.87=1.67)1.67倍することにより換算した。
測定装置はNational Electrostatics Corporation製 Pelletron 3SDHにて、入射イオン:2.3MeV He、RBS/HFS同時測定時入射角:75deg.、散乱角:160deg.、試料電流:4nA、ビーム径:2mmφの条件で測定した。
酸化チタン被覆層の分析は、X線光電子分光分析装置 PHI Quanera SXM[ULVAC-PHI]を用い、X線源に単色化されたAlKα、出力15kV/25W、ビーム径100μmφで行い、Ti2p、O1sのピーク位置とピーク形状から結合状態を特定した。
粒度分布測定は、レーザー回折散乱式粒度分測定装置(ベックマンコールター社製、LS−230)を用いて、試料粉末を純水中に超音波分散させレーザー回折法により測定した。
BET比表面積は、試料粉末1gを測定セルに投入後、窒素ガスでパージしながらマントルヒーターを用いて、250℃で2時間乾燥後、1時間かけて室温まで冷却したのち、マルバーン社製、Nove4200eにて測定した。
本発明により製造されるケイ素−チタン酸化物複合体を含有する負極活物質を用いたリチウムイオン二次電池等の充放電特性は、次のようにして測定した。
株式会社ナガノ製BTS2005Wを用い、ケイ素−チタン酸化物複合体1g重量あたり、100mAの電流で、Li電極に対して0.001Vに達するまで定電流充電し、次に0.001Vの電圧を維持しつつ、電流が活物質1g当たり20mA以下の電流値になるまで定電圧充電を実施した。
充電が完了したセルは、約30分間の休止期間を経た後、活物質1g当たり100mAの電流で電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行った。
また、充電容量は、定電圧充電が終了するまで積算電流値から計算し、放電容量は、電池電圧が1.5Vに到達するまでの積算電流値から計算した。各充放電の切り替え時には、30分間、開回路で休止した。
なお、充放電効率は、初回(充放電の第1サイクル目)の充電容量に対する放電容量の比率とし、容量維持率は初回の放電容量に対する、充放電100サイクル目の放電容量の比率とした。
(合成例1)
300mlの三つ口フラスコに、純水96gを仕込んだ後、フラスコ内を窒素にて置換した。続いてフラスコを氷冷しながら、撹拌下にトリクロロシラン16.0g(118mmol)を20℃にて滴下した。滴下終了後、撹拌しながら20℃にて加水分解反応および縮合反応を2時間行った。
反応時間経過後、メンブランフィルター(孔径0.45μm、親水性)を用いて反応物をろ過し、固体を回収した。得られた固体を80℃にて10時間、減圧乾燥し、水素シルセスキオキサン重合物(1)6.03gを得た。
3lのセパラブルフラスコに、36重量%濃度の塩酸12.2g(120mmol)及び純水1.19kgを仕込み、撹拌下にトリメトキシシラン(東京化成)167g(1.37mol)を25℃にて滴下した。滴下終了後、撹拌しながら25℃にて加水分解反応および縮合反応を2時間行った。
反応時間経過後、反応物をメンブランフィルター(孔径0.45μm、親水性)にてろ過し、固体を回収した。得られた固体を80℃にて10時間、減圧乾燥し、水素シルセスキオキサン重合物(2)76.0gを得た。
(ケイ素酸化物の調製)
SSA−Sグレードのアルミナ製ボートに、合成例1と同様にして得られた水素シルセスキオキサン重合物(1)20.0gをのせた後、該ボートを真空パージ式チューブ炉 KTF43N1−VPS(光洋サーモシステム社製)にセットし、熱処理条件として、アルゴンガス雰囲気下(高純度アルゴンガス99.999%)にて、アルゴンガスを250ml/分の流量で供給しつつ、4℃/分の割合で昇温し、900℃で1時間焼成することで、ケイ素酸化物を得た。
次いで、得られたケイ素酸化物を乳鉢にて5分間解砕粉砕し、目開き32μmのステンレス製篩を用いて分級することにより最大粒子径が32μmである粉粒状のケイ素酸化物(1)、18.9gを得た。得られたケイ素酸化物(1)の赤外分光測定の結果を図1に、元素分析結果を表1に示す。
エタノール(和光純薬:特級試薬)95mlを仕込んだ300mlナス型フラスコに、得られたケイ素酸化物(1)18.9gを投入し、超音波洗浄器で3分間、マグネチックスターラーで5分間分散処理を行う。分散処理後、撹拌しながらテトライソプロポキシチタニウム(Alfa Aesar 95%試薬)3.64gを滴下し、室温下で撹拌を1.5時間継続した。1.5時間後、撹拌を停止しエバポレータを使って溶媒を濃縮した。溶媒が揮発したところでフラスコごと減圧乾燥器に移し、1時間60℃で加熱減圧乾燥してケイ素−チタン酸化物複合体前駆体粉末を回収した。
ケイ素−チタン酸化物複合体(1)の元素分析結果を表1に示す。
また、ケイ素−チタン酸化物複合体(1)のチタンの化学状態を調べるため、X線光電子分光装置を用いて、表面分析を行った結果、チタンは酸化チタンとして表面に結合していることを確認した。X線光電子分光分析 Ti2p及びO1sのスペクトルを図4に示す。
ケイ素−チタン酸化物複合体(1)のRBS元素分析法で測定したチタン含有量は、2.9重量%で、酸化チタンに換算すると4.9重量%に相当する含有量であった。
カルボキシメチルセルロースの2重量%水溶液20g中に、前記ケイ素−チタン酸化物複合体(1)3.2gと0.4gのアセチレンブラックを加え、フラスコ内で攪拌子を用いて15分間混合した後、固形分濃度が15重量%となるよう蒸留水を加え、さらに15分間撹拌してスラリー状組成物を作成した。このスラリー状組成物をプライミックス社製の薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミックス40-40型)に移し、回転数20m/sで30秒間、撹拌分散を行った。分散処理後のスラリーを、ドクターブレード法により、銅箔ロール上にスラリーを200μmの厚さにて塗工した。
図4に示す構造の2032型コイン電池を作成した。負極1として上記負極体、対極3として金属リチウム、セパレータ2として微多孔性のポリプロピレン製フィルムを使用し、電解液としてLiPF6を1モル/Lの割合で溶解させたエチレンカーボネートとジエチルカーボネート1:1(体積比)混合溶媒にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を5重量%添加したものを使用した。
次いで、リチウムイオン二次電池の電池特性の評価を既述の方法で実施した。
結果を表1に示す。
ケイ素酸化物の調製において、水素シルセスキオキサン重合物(1)の代わりに合成例2で合成した、水素シルセスキオキサン重合体(2)を用いてケイ素酸化物(2)を得た。引き続いて実施例1と同様の手順であるがテトライソプロポキシチタニウムの滴下量を半分に減らして酸化チタン被覆処理を行い、ケイ素−チタン酸化物複合体(2)を得た。
該ケイ素−チタン酸化物複合体(2)について、実施例1と同様に負極体を作成し、リチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。
ケイ素酸化物(2)の元素分析結果ならびにケイ素−チタン酸化物複合体(2)の元素分析結果および電池特性評価結果を表1に示す。
また、ケイ素−チタン酸化物複合体(2)のチタン含有量は1.5重量%で、酸化チタンに換算すると2.4重量%に相当する含有量であった。
ケイ素酸化物の調製において、熱処理における焼成温度を700℃にしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ケイ素酸化物(3)およびケイ素−チタン酸化物複合体(3)を得た。
該ケイ素−チタン酸化物複合体(3)について、実施例1と同様に負極体を作成し、リチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。
ケイ素酸化物(3)の赤外分光測定の結果を図1、元素分析結果を表1に示す。またケイ素−チタン酸化物複合体(3)の元素分析結果および電池特性評価結果を表1に示す。
実施例1と同様の方法で得られたケイ素−チタン酸化物複合体(1)4.25gおよびアセチレンブラック0.5gを、アルギン酸ナトリウムの2重量%水溶液25g中に加えた後、フラスコ内で攪拌子を用いて15分混合しスラリー状組成物を作成した。該スラリー状組成物を用いること以外は実施例1と同様に負極体を作成し、リチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。
実施例1と同様の負極体を使用し、二次電池作成の際に使用する電解液にフルオロエチレンカーボネートを添加していない以外は、実施例1と同様に電池を作製し評価した。電池特性評価結果を表1に示す。
(ケイ素酸化物の調製)
ケイ素酸化物の調製において、熱処理における焼成温度を1100℃にしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ケイ素酸化物(4)を得た。
得られたケイ素酸化物(4)の赤外分光測定の結果を図1に、元素分析結果を表1に示す。
前記ケイ素酸化物(4)を用いた以外は、実施例1と同様に酸化チタン被覆を行い、得られたケイ素−チタン酸化物複合体(4)を使用して負極体を作成した。
負極体として、前記ケイ素−チタン酸化物複合体(4)から作成された負極体を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作成し、電池特性を評価した。電池特性評価結果を表1に示す。
ケイ素酸化物の調製において、熱処理における焼成温度を500℃にしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ケイ素酸化物(5)を得た。
得られたケイ素酸化物(5)の赤外分光測定の結果を図1に、元素分析結果を表1に示す。
ケイ素酸化物として、市販の一酸化珪素(アルドリッチ社製 under325mesh)を32μmのステンレス製篩を用いて分級することにより最大粒子径が32μmである一酸化ケイ素粉末を用いた。
用いた一酸化ケイ素の赤外分光測定の結果、及び元素分析結果を表1に示す。
上記一酸化ケイ素をケイ素酸化物(1)の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に酸化チタン被覆を行った後に負極体を作成し、得られた負極体を用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作成し、電池特性を評価した。電池特性評価結果を表1に示す。
なお、該ケイ素−チタン酸化物複合体のチタン含有量は2.9重量%で酸化チタンに換算すると4.9重量%に相当する含有量であった。
また、比較例2において示したSi−H結合の多すぎるケイ素酸化物から作成された負極活物質を用いた負極を採用した電池特性は、サイクル特性は良好なものの、初回の放電容量が極めて低く実用性に乏しい。
2:セパレータ
3:リチウム対極
Claims (7)
- ケイ素−チタン酸化物複合体を含んでなるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、
該リチウムイオン二次電池用負極活物質に含まれるケイ素−チタン酸化物複合体は、ケイ素酸化物に、酸化チタンを被覆することによって得られ、
該ケイ素酸化物は、
a)式(1)で示されるケイ素化合物を加水分解および縮合反応をさせ、濾過分離または 遠心分離により液体部分を分離除去して得られる、水素シルセスキオキサン重合物(HPSQ)を、不活性ガス雰囲気下で、熱処理して得られ、
b)ケイ素(Si)、酸素(O)及び水素(H)を含有し、
c)赤外分光法により測定したスペクトルにおいて、820〜920cm-1にあるSi−H結合に由来するピーク1の強度(I1)と1000〜1200cm-1にあるSi−O−Si結合に由来するピーク2の強度(I2)の比(I1/I2)が0.01から0.35の範囲にあり、
d)一般式SiOxHy(1<x<1.8、0.01<y<0.4)で表示されるものであることを特徴とする、
リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
HSi(R) 3 (1)
(式中、Rは、それぞれ同一あるいは異なる、ハロゲン、水素、炭素数1〜10の置換または非置換のアルコキシ、炭素数6〜20の置換または非置換のアリールオキシ、および炭素数7〜30の置換または非置換のアリールアルコキシから選択される基である。但し、炭素数1〜10の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜20の置換または非置換のアリールオキシ基、および炭素数7〜30の置換または非置換のアリールアルコキシ基において、任意の水素はハロゲンで置換されていてもよい。) - 前記ケイ素酸化物は、さらに
e)球状粒子である一次粒子がさらに凝集し比表面積が3〜8m 2 /gである2次凝集体を 形成していることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。 - 前記、式(1)で示されるケイ素化合物がトリハロゲン化シランまたはトリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
- 前記、水素シルセスキオキサン重合物(HPSQ)を、不活性ガス雰囲気下で、熱処理する際の温度が600℃から950℃であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか 1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
- 前記、水素シルセスキオキサン重合物(HPSQ)を、不活性ガス雰囲気下で、熱処理する際の温度が650℃から900℃であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか 1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
- 前記、ケイ素酸化物への、酸化チタンの被覆が、不活性ガス雰囲気下で200℃から900℃の温度範囲で熱処理されてなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
- 前記、ケイ素酸化物への、酸化チタンの被覆が、不活性ガス雰囲気下で250℃から850℃の温度範囲で熱処理されてなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
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