JP6642587B2 - プラズマcvd成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって長尺の基材上に成膜するプラズマCVD成膜装置に関する。
従来、プラスチック製の基材やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア(ガス遮断)性を付与したフィルム(以下、ガスバリア性フィルムともいう。)が知られている。ガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品、工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途等に広く用いられている。また、ガスバリア性フィルムは、包装用途以外にも、液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する。)素子等で使用されている。特に、液晶表示素子や有機EL素子などでは、水蒸気や空気の内部浸透が品質の劣化を招く要因となるため、高度なガスバリア性が要求されている。
ガスバリア性フィルムの水蒸気や空気を遮断する性能の向上に対する要望は、近年ますます厳しいものとなってきており、そのために様々な試みがなされている。
例えば、特許文献1には、樹脂フィルム上にバリア膜及び透明導電膜を形成することにより、積層フィルムを製造する積層フィルムの製造方法が記載されている。そして、当該製造方法において、バリア膜の形成は、ロール間放電プラズマCVD法により行うと記載されている。なお、透明導電膜の形成は、物理気相成長法により行うことが好ましく、樹脂フィルムとしては、ポリエステル樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルムを用いることが好ましいと記載されている。
米国特許第9011985号明細書
特許文献1に記載されているようなロール間放電プラズマCVD法(及びこれを行う装置)は、磁界を利用して電極ロールの表面に電子を局在化させることによって高密度プラズマを発生させ、当該高密度プラズマを用いることで、基材の表面に緻密な膜を形成する。しかしながら、このような方法・装置で成膜すると、イオン衝撃による基材への熱負荷が大きく、特に基材の端部にカールや波打ち変形が発生し易いという問題があった。なお、イオン衝撃とは、スパッタ成膜中の薄膜表面へのスパッタリングイオンの入射による衝撃をいう。
基材の端部にカールや波打ち変形が発生すると、生産性が落ちるだけでなく、ガスバリア性フィルムとして十分なガスバリア性を得ることができない。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、ガスバリア性フィルムとして十分なガスバリア性能を有し、かつ、基材に変形が生じないプラズマCVD成膜装置を提供することを課題とする。
本発明に係る前記課題は、以下の手段により解決される。
1.長尺の基材上に成膜するプラズマCVD成膜装置であり、内部に磁場を形成する磁場形成手段を備え、対向して配置された一対の電極ロールを有し、前記一対の電極ロールは、それぞれの両端部の周長方向に、最大比透磁率が5000〜190000である高透磁率材を備えていることを特徴とするプラズマCVD成膜装置。
2.前記最大比透磁率が50000〜190000である前記1に記載のプラズマCVD成膜装置。
3.前記基材の幅と前記両端部に備えられた高透磁率材の幅との総和Sと、前記電極ロールの面長Lとが、1.0<(S/L)<1.4の関係にある前記1又は2に記載のプラズマCVD成膜装置。
4.前記基材の幅と前記両端部に備えられた高透磁率材の幅との総和Sと、前記電極ロールの面長Lとが、1.0<(S/L)<1.2の関係にある前記1又は2に記載のプラズマCVD成膜装置。
本発明は前記手段を有しているため、ガスバリア性フィルムとして十分なガスバリア性能を有し、かつ、基材に変形が生じないプラズマCVD成膜装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図である。 本発明に係る成膜装置が備えている一対の電極ロールの構成を説明する概略断面図である。 電極ロールの一変形例を説明した概略断面図である。 電極ロールの具体的態様の一例を示す概略断面図である。 電極ロール及び磁場形成手段の拡大断面説明図である。
[プラズマCVD成膜装置]
以下、図1及び図2を参照して本発明の一実施形態に係るプラズマCVD成膜装置について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマCVD成膜装置31(以下、単に「成膜装置31」と呼称することもある)は、プラズマCVD法によって長尺の基材2上に成膜をするものであり、内部に磁場を形成する磁場形成手段43、44を備え、対向して配置された一対の電極ロール39、40を有している。
また、成膜装置31は、これらの構成の他にも、一対の電極ロール39、40に向けて基材2を送り出す送り出しロール32と、搬送ロール33、34、35、36と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、基材2上に膜3が成膜されたフィルム1を巻き取る巻取りロール45とを備えている。また、このような成膜装置31においては、少なくとも電極ロール39、40と、ガス供給管41と、磁場形成手段43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、この真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、当該真空ポンプによって真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。成膜装置31は、プラズマCVD法を利用しながらロールツーロール方式で基材2の表面に膜3を成膜することができる装置である。成膜装置31は、ロールツーロール方式で基材2の表面に膜3を成膜することができるので、生産性が高いという特長を有している。
成膜装置31においては、一対の電極ロール(電極ロール39と電極ロール40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各電極ロールはそれぞれ相互に絶縁されていると共に、共通するプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、成膜装置31においては、プラズマ発生用電源42から電極ロール39と電極ロール40に電力を供給し、電極ロール39と電極ロール40との間の空間に放電することができ、これにより電極ロール39と電極ロール40との間の空間にプラズマを発生させることができる。また、成膜装置31においては、一対の電極ロール39、40は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置されている。すなわち、一対の電極ロール39、40は、平行に延在して対向配置されている。このようにして、一対の電極ロール39、40を配置することにより、2つの電極ロールを用いない場合と比較して成膜レートを倍にすることができ、なおかつ、同じ構造の膜を成膜することができる。一対の電極ロール39、40は導電性材料で形成され、それぞれ回転しながら基材2を搬送する。つまり、成膜装置31では、一対の電極ロール39、40により基材2の一方の面に逐次搬送して2回成膜するので、1つの放電プラズマSPを使用した成膜レートを2倍にすることができる。
さらに、一対の電極ロール39、40は、内部に磁場形成手段43、44が格納されている。磁場形成手段43、44は、空間に磁場を形成する部材であり、電極ロール39及び電極ロール40と共には回転しないようにしてそれぞれ格納されている。
磁場形成手段43、44は、電極ロール39、電極ロール40の延在方向と同方向に延在する中心磁石(例えば、図1におけるN極)と、中心磁石の周囲を囲みながら電極ロール39、電極ロール40の延在方向と同方向に延在して配置される円環状の外部磁石(例えば、図1におけるS極)と、を有している。磁場形成手段43では、中心磁石と外部磁石とを結ぶ磁力線(磁界)が、無終端のトンネルを形成している。磁場形成手段44においても同様に、中心磁石と外部磁石とを結ぶ磁力線が、無終端のトンネルを形成している。
この磁力線(磁場)と、電極ロール39と電極ロール40との間の空間に形成される電場と、が交差するマグネトロン放電によって、成膜ガスの放電プラズマSP(図2参照)を生じさせる。すなわち、この空間は、プラズマCVD成膜を行う成膜空間として用いられ、基材2において電極ロール39及び電極ロール40に接しない面(成膜面)には、成膜ガスを形成材料とする膜が形成される。
このような成膜装置31によれば、プラズマCVD法により基材2の表面上に膜3を形成することができる。つまり、電極ロール39上において基材2の表面上に成膜成分を堆積させつつ、さらに電極ロール40上においても基材2の表面上に成膜成分を堆積させることができる。
以上のような成膜装置31においては、以下のようにして基材2に対し成膜が行われる。まず、真空チャンバ内を減圧環境とし、電極ロール39、電極ロール40に電圧を印加して空間に電場を生じさせる。電極ロール39及び電極ロール40からは真空チャンバ内に電子が放出される。この際、磁場形成手段43、44では上述した無終端のトンネル状の磁場を形成しているため、成膜ガスを導入することにより、該磁場と空間に放出される電子とによって、該トンネルに沿ったドーナツ状の成膜ガスの放電プラズマが形成される。この放電プラズマは、数Pa近傍の低圧力で発生可能であるため、真空チャンバ内の温度を室温近傍とすることができる。
一方、磁場形成手段43、44が形成する磁場に高密度で捉えられている電子の温度は高いので、当該電子と成膜ガスとの衝突により生じる放電プラズマが生じる。すなわち、空間に形成される磁場と電場により電子が空間に閉じ込められることによって、空間に高密度の放電プラズマが形成される。より詳しくは、無終端のトンネル状の磁場と電場とが重なる(交差する)空間においては、高密度・高強度の放電プラズマが形成され、無終端のトンネル状の磁場と電場とが重ならない(交差しない)空間においては低密度の(低強度の)放電プラズマが形成される。これら放電プラズマの強度は、連続的に変化するものである。
以下、装置を構成する各部について説明する。
(電極ロール)
図2は、本発明に係る成膜装置31が備えている一対の電極ロール39、40の構成を説明する概略断面図である。本発明では、一対の電極ロール39、40を用いているので、図1に示すように、成膜時に一方の電極ロール39上に存在する基材2の表面部分を成膜しつつ、もう一方の電極ロール40上に存在する基材2の表面部分も同時に成膜することができ、効率良く膜3を成膜することができる。また、前記したように、一対の電極ロールを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にすることができる。なおかつ、成膜装置31では略同じ構造の膜3を成膜できるので、後記する炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることができ、後記する(i)〜(iii)を全て満たす膜3(バリア層)を効率良く形成することができる。
図2に示すように、一対の電極ロール39、40は、それぞれの両端部391、401の周長方向Aに、最大比透磁率が5000〜190000である高透磁率材392、402を備えている。ここで、電極ロール39、40の両端部391、401とは、電極ロール39、40の端面から中央部に向かって300mmまでの区間をいう。なお、電極ロールの全長は、例えば、1000〜3000mmなどとすることができる。また、最大比透磁率とは、ヒステリシス曲線に基づいて測定され、絶対透磁率を真空の透磁率で除した比透磁率の最大値をいう。ヒステリシス曲線は、市販されている任意のオシロスコープを用いて測定することができる。
対向配置された電極ロール39、40においては、基材2の一方の面のみを保持し、他方の面は保持されない。そのため、基材2の両端部は膜応力(内部応力)による変形が最も大きくなる箇所である。
前記したように、本発明においては、一対の電極ロール39、40の両端部391、401の周長方向Aに高透磁率材392、402を備えているので、一対の電極ロール39、40の端部の磁場を低減することができる。そのため、基材2の端部の膜応力を低減することができ、基材2のカールや波打ち変形を抑制することができる。なお、電極ロール39、40の両端部391、401にのみ高透磁率材392、402を備えているので、基材2の中央部の磁場に殆ど影響せず、プラズマ密度を低下させることにはならない。そのため、ガスバリア性フィルムとしてより高いガスバリア性能を得ることができる。従って、成膜されたフィルム1において、電極ロール39の両端部391に備えられた高透磁率材392と高透磁率材392の間、及び、電極ロール40の両端部401に備えられた高透磁率材402と高透磁率材402の間にて成膜された部分から、適宜の形状・サイズにて切り出すことにより、十分なガスバリア性能を有し、かつ、基材に変形が生じないガスバリア性フィルムを得ることができる。
一対の電極ロール39、40が高透磁率材392、402を備えていないと、前記した効果を得ることができず、基材2のカールや波打ち変形を抑制することができない。
また、高透磁率材392、402が電極ロール39、40の外周全てを覆うように備えられていると、基材2の中央部の磁場が高透磁率材392、402の影響を受けてプラズマ密度が低下し、ガスバリア性能が低下する。
また、高透磁率材392、402の最大比透磁率が5000未満であると、一対の電極ロール39、40の端部の磁場を十分に低減することができないため、基材2のカールや波打ち変形を十分に抑制することができない。
その一方で、高透磁率材392、402の最大比透磁率が190000を超えると、基材2の中央部の磁場が高透磁率材392、402の影響を受けてプラズマ密度が低下し、ガスバリア性能が低下する。
よって、高透磁率材392、402の最大比透磁率は前記したとおり、5000〜190000とする。なお、基材2のカールや波打ち変形をより抑制させるため、高透磁率材392、402の最大比透磁率は50000以上とするのが好ましい。また、ガスバリア性能を向上させるため、高透磁率材392、402の最大比透磁率は150000以下とするのが好ましい。
高透磁率材392、402の最大比透磁率は、高透磁率材として用いる材料を種々変更したり、厚みを変更したりすることによって任意に変更可能である。高透磁率材392、402としては、例えば、鉄などの磁性を有する金属を用いた板、箔、メッシュ、金属インク、発泡金属などを用いることができる。高透磁率材392、402として好ましくは、パーマロイ(例えば、PCパーマロイ(Ni−Mo,Cu−Fe合金)、低温焼純型IPCパーマロイなど)、ミューメタルなどの電磁シールド材として用いられているものを挙げることができ、より好ましくは日立金属株式会社製FM SHIELD(登録商標)を挙げることができる。FM SHIELDは、厚みが約0.1mmであるため、厚みによる基材2の変形も生じ難く、この点からも好適である。なお、高透磁率材392、402の厚みは約0.1〜1mmであれば厚みによる基材2の変形は生じ難く、特に問題とはならない。
高透磁率材392、402の厚みが厚い場合は、例えば、図3に示すような態様とすればよい。なお、図3は、一対の電極ロール39、40のうち電極ロール39を例示して一変形例を説明した概略断面図である。図3に示すように、高透磁率材392、402の表面と、電極ロール39、40の表面とが面一となるように、高透磁率材392、402の厚みの分だけ両端部391、401を凹ませればよい。つまり、高透磁率材392、402を設ける両端部391、401の部分だけ直径を小さくすればよい。ここで、面一とは、相接する2つの部材の表面に段差が無くフラットな状態のことをいう。このようにすると、電極ロール39、40と高透磁率材392、402との間に段差がないので、高透磁率材392、402の厚みが厚い場合であっても基材2に変形が生じないようにすることができる。
図4は、一対の電極ロール39、40のうち電極ロール39を例示してその具体的態様を説明した概略断面図である。なお、図4において電極ロール39と基材2の間に若干の隙間をあけて図示しているが、実際には基材2の弾性変形によってこれらの間に隙間は略存在しておらず、当接した状態となっている。
図4に示すように、基材2の幅S1と一対の電極ロール39、40(図4では電極ロール39のみ図示)の両端部391に備えられた高透磁率材392の幅S2、S3との総和Sと、電極ロール39の面長Lとは、1.0<(S/L)<1.4の関係にあるのが好ましい。なお、電極ロールの面長とは、ロール面の軸方向の長さをいう。このようにすると、基材2の幅S1と、高透磁率材392の幅S2、S3と、電極ロール39の面長Lとの関係が適切であるので、基材2のカールや波打ち変形をより抑制することができる。
また、基材2の幅S1と、高透磁率材392の幅S2、S3との総和Sと、電極ロール39の面長Lとは、1.0<(S/L)<1.2の関係にあるのがより好ましい。このようにすると、基材2の幅S1と、高透磁率材392の幅S2、S3と、電極ロール39の面長Lとの関係がさらに適切であるので、基材2のカールや波打ち変形をさらに抑制することができるだけでなく、基材2の中央部の磁場が高透磁率材392、402の影響を受け難くなり、プラズマ密度が低下し難くなるので、ガスバリア性能が低下し難くなる。
なお、一対の電極ロール39、40は、高透磁率材392、402を備えることができるものであればどのような素材で構成されていてもよい。一対の電極ロール39、40は、例えば、SUS(ステンレス鋼)製の電極を用いることができる。
また、電極ロール39及び電極ロール40は、より効率良く薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような電極ロール39及び電極ロール40の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が50〜1000mmφの範囲、特に100〜500mmφの範囲が好ましい。電極ロールの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、電極ロールの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
(磁場形成手段)
前記したように、一対の電極ロール39、40の内部には、それぞれ電極ロール39、40が回転しても回転しないようにして固定された磁場形成手段43、44が設けられている。図5に示すように、磁場形成手段43、44は、同じ極性の磁極が対向するように配置されている。そのため、磁場形成手段43、44においてそれぞれ中央に配置された磁極(N極)から出た磁力線LMFが効率的に外側の磁極(S極)に導かれる。この磁力線LMFは、それぞれの電極ロール39、40においてロール表面から放電プラズマSP(図2参照)の発生する空間に向けて膨らんだ、断面が二つの山形を成すマグネトロン放電用の磁場MFを発生させる。つまり、磁場形成手段43、44は、一方の電極ロール39に設けられた磁場形成手段43と他方の電極ロール40に設けられた磁場形成手段44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場形成手段43、44がほぼ閉じた磁気回路を形成することができる。そのため、このような磁場形成手段43、44を設けることによって、各電極ロール39、40の対向側表面付近に、磁力線LMFが膨らんだ磁場MFの形成を促進することができる。そして、当該磁場MFには放電プラズマSPが収束され易いため、成膜効率を向上させることができる。
また、磁場形成手段43、44は、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。磁場形成手段43、44は、それぞれロール軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、図1に示すように、一方の磁場形成手段43と他方の磁場形成手段44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場形成手段43、44とすると、それぞれの磁場形成手段43、44について、磁力線が対向するロール側の磁場形成手段にまたがることなく、ロール軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したロール表面付近にレーストラック状(ドーナッツ状)の磁場を容易に形成することができる。そのため、当該磁場にプラズマを収束させることができ、ロール幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2の上に、効率的に膜3を形成することができる。
なお、電極ロール39、40の端部にCVD膜が成膜されるのを抑制するため、また異常放電抑制するため、電極ロール39、40の端部をリング形状の絶縁部材で被覆してもよい。
(送り出しロール、搬送ロール及び巻取りロール)
成膜装置31に用いる送り出しロール32及び搬送ロール33、34、35、36としては、適宜公知のロールを用いることができる。また、巻取りロール45としても、基材2上に膜3を形成したフィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のロールを用いることができる。
(ガス供給管及び真空ポンプ)
ガス供給管41及び真空ポンプとしては、原料ガス(成膜ガス)等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管41は、電極ロール39と電極ロール40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方、つまり、ガス供給管41から離間した位置、好ましくはガス供給管41と対向する位置に設けることが好ましい。このようにガス供給管41と真空ポンプを配置することによって、電極ロール39と電極ロール40との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる。
(プラズマ発生用電源)
プラズマ発生用電源42としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された一対の電極ロール39、40に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率良くプラズマCVDを実施することが可能となることから、一対の電極ロール39、40の極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率良くプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力が0.1kW〜10kW、交流の周波数が50Hz〜500kHzであることがより好ましい。
(基材)
基材2は長尺帯状を呈しており、送り出しロール32に巻かれた状態で成膜装置31に供される。
基材2としては、樹脂又は樹脂を含む複合材料からなるフィルム又はシートが好適に用いられる。このような樹脂フィルム又はシートは、透光性を有していても良く、また、不透明であってもよい。
基材2を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルサルファイド(PES)が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。透明性、耐熱性、線膨張性等の必要な特性に合わせて、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂から選ばれることが好ましく、PET、PEN、環状ポリオレフィンがより好ましい。また、樹脂を含む複合材料としては、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサンなどのシリコーン樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高いという観点から、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板が好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
基材2の厚みは、基材2を製造する際の安定性等を考慮して適宜設定されるが、真空中においても基材2の搬送が容易であることから、5μm〜250μmであることが好ましい。さらに、本実施形態で採用するガスバリア膜の形成では、基材2を通して放電を行うことから、基材2の厚みは50μm〜200μmであることがより好ましく、50μm〜150μmであることが特に好ましい。
なお、基材2は、形成するガスバリア膜との密着性の観点から、その表面を清浄するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
(膜)
膜3の一例として挙げられるバリア層(ガスバリア層)は、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能を発揮する層である。膜3としてバリア層を形成する場合は、以下の(i)〜(iii)を満たすことが好ましい。
(i)バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(Lb)と、ケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lbとケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、並びに前記Lbとケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、前記バリア層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C);
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する;
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Cmax−Cmin差」とも称する)が3原子%(at%)以上である。
バリア層(膜3)が、前記(i)を満たすと、得られたガスバリア性フィルムのガスバリア性や屈曲性を十分なものとすることができる。ここで、前記炭素分布曲線において、前記(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)及び(炭素の原子比)の関係は、バリア層の膜厚の、少なくとも90%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましく、少なくとも93%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましい。ここで、バリア層の膜厚の少なくとも90%以上とは、バリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で前記した関係を満たしていればよい。
また、バリア層(膜3)が、前記(ii)を満たすと、得られたガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性を十分なものとすることができる。なお、ガスバリア性をより十分なものとする観点から、バリア層は、前記炭素分布曲線が少なくとも3つの極値を有することが好ましく、少なくとも4つの極値を有することがより好ましいが、5つ以上有してもよい。炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。炭素分布曲線の極値の数は、バリア層の膜厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
ここで、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する1つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(Lb)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、バリア層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、バリア層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックをより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において「極値」とは、前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(Lb)に対する元素の原子比の極大値又は極小値のことをいう。また、本明細書において「極大値」とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素又は炭素)の原子比の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少していればよい。同様にして、本明細書において「極小値」とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素又は炭素)の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離をさらに4〜20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上増加していればよい。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合における極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果が高いため特に制限されないが、バリア層の屈曲性、クラックの抑制効果や防止効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
さらに、バリア層(膜3)が、前記(iii)を満たすと、得られたガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性を十分なものとすることができる。なお、前記(iii)において、Cmax−Cmin差は5at%以上であることが好ましく、7at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。このようにすると、ガスバリア性をより向上することができる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。ここで、Cmax−Cmin差の上限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
本発明においては、前記バリア層の前記酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することがさらに好ましい。前記酸素分布曲線が極値を少なくとも1つ有すると、得られたガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。なお、酸素分布曲線の極値の上限は特に制限されないが、例えば、20以下とするのが好ましく、10以下とするのがより好ましい。酸素分布曲線の極値の数においても、バリア層の膜厚に起因する部分があり一概に規定できない。また、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する1つの極値及び該極値に隣接する極値における前記バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックをより有効に抑制・防止できる。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、特に制限されないが、ガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
加えて、本発明において、前記バリア層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Omax−Omin差」とも称する)が3at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。前記Omax−Omin差を3at%以上とすると、得られたガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性をより向上させることができる。ここで、Omax−Omin差の上限は特に制限されないが、ガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
本発明において、前記バリア層の前記ケイ素分布曲線におけるケイ素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Simax−Simin差」とも称する)が10at%以下であることが好ましく、7at%以下であることがより好ましく、3at%以下であることがさらに好ましい。前記Simax−Simin差を10at%以下とすると、得られたガスバリア性フィルムのガスバリア性がより向上する。ここで、Simax−Simin差の下限は、Simax−Simin差が小さいほどガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果が高いため、特に制限されないが、ガスバリア性などを考慮すると1at%以上であることが好ましく、2at%以上であることがより好ましい。
また、本発明において、バリア層の膜厚方向に対する炭素及び酸素原子の合計量は略一定であることが好ましい。これにより、バリア層は適度な屈曲性を発揮し、ガスバリア性フィルムを屈曲させた際に発生するクラックをより有効に抑制・防止することができる。より具体的には、バリア層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離(Lb)とケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する、酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素及び炭素の原子比)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素及び炭素の原子比の合計の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「OCmax−OCmin差」とも称する)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記OCmax−OCmin差が5at%未満であれば、得られたガスバリア性フィルムのガスバリア性がより向上する。なお、OCmax−OCmin差の下限は、OCmax−OCmin差が小さいほど好ましいため、0at%であるが、0.1at%以上であれば十分である。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線、及び前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記バリア層の膜厚方向における前記バリア層の表面からの距離(Lb)に概ね相関することから、「バリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるバリア層の表面からの距離を採用することができる。なお、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成することができる。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+);
エッチング速度(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm;
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名”VG Theta Probe”;
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
バリア層の厚み(乾燥膜厚)は、前記した(i)〜(iii)を満たす限り、特に制限されない。バリア層の厚みは、20〜3000nmであることが好ましく、50〜2500nmであることがより好ましく、100〜1000nmであることが特に好ましい。このような厚みであれば、ガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性及び屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果を発揮することができる。なお、バリア層が2層以上から構成される場合には、各バリア層が前記したような厚みを有することが好ましい。また、バリア層が2層以上から構成される場合のバリア層全体の厚みは特に制限されないが、バリア層全体の厚み(乾燥膜厚)が1000〜2000nm程度であることが好ましい。このような厚みであれば、ガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性及び屈曲させた際に発生するクラックの抑制効果や防止効果を発揮することができる。
本発明では、膜面全体において均一でかつ優れたガスバリア性を有するバリア層を形成するという観点から、前記バリア層が膜面方向(バリア層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、バリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか若しくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記バリア層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記式1で表される条件を満たすことをいう。

(dC/dx)≦0.5 ・・・式1
得られるガスバリア性フィルムにおいて、前記した(i)〜(iii)を全て満たすバリア層は、1層のみを備えていてもよいし、2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなバリア層を2層以上備える場合には、複数のバリア層の材質は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、及び前記炭素分布曲線において、ケイ素の原子比、酸素の原子比、及び炭素の原子比が、該バリア層の膜厚の90%以上の領域において前記(i)を満たす場合には、前記バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率は、20〜45at%であることが好ましく、25〜40at%であることがより好ましい。また、前記バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、45〜75at%であることが好ましく、50〜70at%であることがより好ましい。さらに、前記バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子、及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、0〜25at%であることが好ましく、1〜20at%であることがより好ましい。
[ガスバリア性フィルムの製造方法]
図1に示す本発明に係る成膜装置31は、プラズマCVD法により成膜することのできるどのようなフィルム1の製造にも用いることができる。しかしながら、本発明に係る成膜装置31は、特にガスバリア性を示すフィルム(ガスバリア性フィルム)の製造に、好適に用いることができる。以下、好ましい実施形態として、成膜装置31を用いたガスバリア性フィルムの製造方法について説明する。すなわち、本発明によれば、本発明に係る成膜装置31を用いて、基材2上にガスバリア層(膜3)を成膜する工程を有するガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。つまり、前記したガスバリア性フィルム(フィルム1)は、成膜装置31によって基材2上にバリア層(膜3)が成膜されたものである。
なお、本明細書において、ガスバリア性を示すとは、ガスバリア性フィルムが、全体として、水蒸気透過率0.01g/m2/day以下、酸素透過率0.01ml/m2/day/atm以下を示すことをいう。水蒸気透過率は、JIS K 7129Bや特開2004−333127号公報等に記載された方法により測定することができる(g/m2/day)。また、酸素透過率についても同じく、JIS K 7126B等に記載された方法で測定することができる(ml/m2/day/atm)。前記のガスバリア性を有するためには、ガスバリア性フィルムは、併せて1×10-14g・cm/(cm2・sec・Pa)以下の水蒸気透過係数を有するように形成されることが好ましい。また、水蒸気透過係数は以下の方法で測定することができる。既知の支持体(例えばセルローストリアセテートフィルム;厚み100μm)上に試料膜を形成し、この試料膜を挟んで隔てた一次側と二次側の2つの容器を真空にする。一次側に相対湿度92%の水蒸気を導入し、試料膜を透過し二次側に出てきた水蒸気量を、250℃において真空計を用いて計測する。これを経時で測定し、縦軸に二次側水蒸気圧(Pa)、横軸に時間(秒)をとり、透過曲線を作成する。この透過曲線の直線部の勾配を用いて水蒸気透過係数(g・cm・cm-2・sec-1・Pa-1)を求める。支持体の水蒸気透過係数は既知なので、この厚み及び支持体上に形成した試料膜の厚みから、水蒸気透過係数を計算することができる。
本実施形態に係る製造方法では、成膜装置31を用いて、例えば、原料ガス等の成膜ガスの種類、プラズマ発生用電源42から電極ロール39、40に供給する電力、真空チャンバ内の圧力、一対の電極ロール39、40の直径、及び基材2の搬送速度を適宜調整することによって基材2の表面上にバリア層(膜3)を成膜し、フィルム1の製造を行う。
具体的には、本実施形態に係る製造方法は、成膜装置31を用いて、成膜ガスを真空チャンバ内に供給しつつ、一対の電極ロール39、40の間に放電を発生させることにより、前記成膜ガスをプラズマによって分解し、電極ロール39上の基材2の表面上及び電極ロール40上の基材2の表面上に、プラズマCVD法によりバリア層(膜3)を成膜する。
成膜の際、一対の電極ロール39、40のロール軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したロール表面付近にレーストラック状の磁場が形成され、この磁場にプラズマが収束する。このため、基材2が、図1中の電極ロール39のA地点及び電極ロール40のB地点を通過する際に、バリア層で炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材2が、図1中の電極ロール39のC1及びC2地点並びに電極ロール40のC3及びC4地点を通過する際に、バリア層で炭素分布曲線の極小値が形成される。
このため、一対の電極ロール39、40に対して、通常、五つの極値が生成する。また、バリア層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値におけるガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離(Lb)の差の絶対値)は、一対の電極ロール39、40の回転速度(基材2の搬送速度)によって調節できる。
なお、このような成膜に際しては、基材2が送り出しロール32や電極ロール39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上にガスバリア層が形成される。
(成膜ガス)
ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独又は2種以上を混合して用いることができる。バリア層の形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するバリア層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、バリア層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。さらに、原料ガスとして、上述の有機ケイ素化合物の他にモノシランを含有させ、形成するバリア膜のケイ素源として使用することとしてもよい。
また、成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素を用いることができる。
成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合における原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるバリア層によって、優れたガスバリア性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、成膜ガスが前記した有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、成膜ガス中の酸素の含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。
ここで、原料ガスとして有機ケイ素化合物であるヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CH36Si2O)を用い、反応ガスとして酸素(O2)を含有するものを用いて、ケイ素−酸素系の膜3を製造する場合を例に挙げ、これらのガスの好適な比率等について説明する。
ヘキサメチルジシロキサンと酸素とを含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させると、下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。

(CH36Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2 ・・・(1)
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない)ため、前記した(i)〜(iii)を全て満たすバリア層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、バリア層を形成する際には、前記反応式1の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。
なお、実際のプラズマCVD成膜装置における真空チャンバ内の反応では、原料ガスのヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素は、ガス供給管41から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料ガスのヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)をヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上とする場合もある)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比率でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がバリア層中に取り込まれ、前記した(i)〜(iii)を全て満たすバリア層を形成することが可能となって、得られるガスバリア性フィルムにおいて優れたガスバリア性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。
なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、空間の圧力が0.1Pa〜50Paであることが好ましい。気相反応を抑制する目的により、プラズマCVDを低圧プラズマCVD法とする場合は0.1Pa〜10Paであることが好ましい。また、プラズマ発生用電源42から電極ロール39、40に供給する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1kW〜10kWであることが好ましい。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1m/min〜100m/minであることが好ましく、0.5m/min〜20m/minであることがより好ましい。ライン速度をこの範囲とすると、熱に起因して基材2に皺が発生することもなく、また、成膜されるバリア層の厚みが薄くなり過ぎることもない。搬送する際には、搬送ロールから送り出され、電極ロール39上で成膜された基材2は、成膜面をターンバーに巻き掛けながら電極ロール40に搬送される。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
〔ガスバリア性フィルムの製造〕
(樹脂基材の準備)
2軸延伸のポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を樹脂基材として用いた。
(アンカー層の形成)
前記樹脂基材の易接着面に、JSR株式会社製UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTARZ7501を乾燥後の層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した。その後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm2で硬化を行い、アンカー層を形成した。
(ガスバリア層の形成)
(樹脂基材の幅S1と高透磁率材の幅S2、S3の総和S)/電極ロールの面長Lが1.2(すなわち、(S/L)が1.2)となるように、一対の電極ロールの両端部に高透磁率材を取り付けた(図2参照)。高透磁率材は、日立金属製FM SHILD(最大比透磁率100000)を用いた。そして、当該一対の電極ロールを有するプラズマCVD装置を用いて下記の成膜条件(プラズマCVD条件)にてアンカー層上に厚さが100nmとなる条件でガスバリア層を成膜し、ガスバリア性フィルムを製造した。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:100sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O2)の供給量:800sccm
真空チャンバ内の真空度:2Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材の搬送速度:5m/min
[実施例2]
高透磁率材として鉄(最大比透磁率5000)を用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例3]
高透磁率材として鉄(最大比透磁率5000)を用い、(S/L)を1.0とした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例4]
高透磁率材としてミューメタル(最大比透磁率50000)を用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例5]
(S/L)を1.1とした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例6]
(S/L)を1.3とした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例7]
(S/L)を1.4とした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例8]
(S/L)を1.0とした以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例9]
高透磁率材としてPCパーマロイ(Ni−Mo,Cu−Fe合金)(最大比透磁率150000)を用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[実施例10]
高透磁率材として低温焼純型IPCパーマロイ(最大比透磁率190000)を用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[比較例1]
一対の電極ロールの両端部に高透磁率材を取り付けなかったこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[比較例2]
一対の電極ロールの全面(全周・全幅)に高透磁率材を取り付けたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[比較例3]
高透磁率材として軟鉄(最大比透磁率2000)を用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
[比較例4]
高透磁率材として純鉄(最大比透磁率200000)を用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを製造した。
製造した実施例1〜10及び比較例1〜4に係るガスバリア性フィルムを用い、以下のようにしてバリア性能及びカール性を評価した。
〔バリア性能〕
バリア性能は下記の装置等を用い、以下の測定方法で水蒸気透過率を測定することにより評価した。
(装置等)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
原材料:水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気透過率評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置JEE−400)を用い、ガスバリア性フィルムの片側の面(ガスバリア層を形成した面)において金属カルシウムを蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、真空条件下で金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、ガスバリア性フィルムの前記片側の全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させて、前記金属カルシウムを蒸着させた部分を封止した。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止したフィルム試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。下記の評価ランクで水蒸気透過率を評価した。なお、評価ランクが3以上のものを優れている(合格)と評価し、2以下のものを劣っている(不合格)と評価した。
<評価ランク>
5:6×10-3g/m2/day未満
4:6×10-3g/m2/day以上、8×10-3g/m2/day未満
3:8×10-3g/m2/day以上、1×10-2g/m2/day未満
2:1×10-2g/m2/day以上、3×10-2g/m2/day未満
1:3×10-2g/m2/day以上
〔カール性〕
カール性は、ガスバリア性フィルムを10cm四方に切り取り、25℃、相対湿度65%の環境下で48時間放置後、浮き上がった高さを測定し、下記の評価ランクでカール性を評価した。なお、評価ランクが3以上のものを優れている(合格)と評価し、2以下のものを劣っている(不合格)と評価した。
<評価ランク>
5:0mm
4:0mmを超え、0.5mm未満
3:0.5mm以上、1mm未満
2:1mm以上、3mm未満
1:3mm以上
実施例1〜10及び比較例1〜4に係るガスバリア性フィルムを製造する際に用いた高透磁率材の最大比透磁率と、(樹脂基材の幅S1と高透磁率材の幅S2、S3の総和S)/電極ロールの面長Lの比(S/L)と、バリア性能と、カール性とを表1に示す。
Figure 0006642587
表1に示すように、実施例1〜10は、本発明の要件を満たしていたので、バリア性能及びカール性に優れていた。つまり、実施例1〜10を製造した成膜装置は、ガスバリア性フィルムとして十分なガスバリア性能を有し、かつ、基材に変形が生じない成膜装置であることが確認された。
これに対し、比較例1〜4は、本発明の要件を満たしていなかったので、バリア性能又はカール性に劣っていた。
以上、本発明に係るプラズマCVD成膜装置について、実施形態及び実施例により具体的に説明したが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
2 基材
31 プラズマCVD成膜装置(成膜装置)
43、44 磁場形成手段
39、40 電極ロール
391、401 両端部
392、402 高透磁率材

Claims (4)

  1. 長尺の基材上に成膜するプラズマCVD成膜装置であり、
    内部に磁場を形成する磁場形成手段を備え、対向して配置された一対の電極ロールを有し、
    前記一対の電極ロールは、それぞれの両端部の周長方向に、最大比透磁率が5000〜190000である高透磁率材を備えていることを特徴とするプラズマCVD成膜装置。
  2. 前記最大比透磁率が50000〜190000であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマCVD成膜装置。
  3. 前記基材の幅と前記両端部に備えられた高透磁率材の幅との総和Sと、前記電極ロールの面長Lとが、1.0<(S/L)<1.4の関係にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラズマCVD成膜装置。
  4. 前記基材の幅と前記両端部に備えられた高透磁率材の幅との総和Sと、前記電極ロールの面長Lとが、1.0<(S/L)<1.2の関係にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラズマCVD成膜装置。
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