JP6641694B2 - 内歯ヘリカルギア製造用金型、内歯ヘリカルギアの製造方法、及び、内歯ヘリカルギア製造用ギアブランク - Google Patents
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内歯ヘリカルギアは、切削加工により製造することもできるが、材料歩留まりを向上させるためには、前方押出法や肉寄せ製法などの鍛造法により製造するのが好ましい。そのため、鍛造法を用いた内歯ヘリカルギアの製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
同文献には、切削加工で歯出し鍛造用金型の溝(雌はす歯)を形成すると、放電加工を用いた場合に比べて、金型を安価に、かつ、短時間で作製することができる点が記載されている。
同文献には、このような方法により、ストレート部の形状が異なる内歯ヘリカルギアであっても、低コストかつ高い材料歩留まりで製造することができる点が記載されている。
同文献には、このような方法により、ヘリカルスプラインの成形から平歯車の成形まで連続した工程(同一工程)で行うことができる点が記載されている。
(a)切削加工による方法、
(b)押し出し、転造、アイヨニング(しごき)などによる歯出し加工による方法
などがある。
これらの内、切削加工は、切り屑が発生するため、歩留まりが悪い。また、はす歯のねじれ角を大きくすることができない。
冷間の前方押し出しは、歯型に対して素材をねじ込んでいくため、歯面の圧力バランスの調整が困難である。そのため、はす歯のねじれ角に加工限界があり、概ね、ねじれ角が20°以上のギアは成形できない。
アイヨニング工法は、素材と型を同時に動かしながら素材を絞り込み、型に押し当てて成形するため、負荷が少なく、高ねじれ角でも成形できる。しかし、押し出し加工と比べて歩留まりが悪い。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、内歯ヘリカルギアを高い材料歩留まりで製造可能な内歯ヘリカルギア製造用金型を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、内歯の形成と同時に、外周面のサイジングも可能な内歯ヘリカルギア製造用金型を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする課題は、このような金型を用いた内歯ヘリカルギアの製造方法、及び、このような方法に適した内歯ヘリカルギア製造用ギアブランクを提供することにある。
板状又はリング状のギアブランクを筒状部材に絞り加工するためのダイス及び第1パンチを備え、
前記第1パンチの外周面には、前記絞り加工と同時に、前記筒状部材の内周面に螺旋状の内歯を転写するための凹凸が形成されている
ことを要旨とする。
前記内歯ヘリカルギア製造用金型は、
(a)前記ダイス及び前記第1パンチを用いて前記絞り加工する際に、前記ギアブランクの加圧領域の全部又は一部に背圧をかけるための第2パンチ、及び/又は、
(b)前記筒状部材の内周面に前記内歯が転写された後、前記筒状部材の外周面のサイジングを行うためのサイジングリング
をさらに備えていてもよい。
本発明に係る方法に用いられ、
リング状の形状を有し、
リングの上下面の内、一方の面には、逆テーパ面が形成され、
他方の面の内周端には、凹部が形成されている
ことを要旨とする。
板状又はリング状のギアブランクを用いた絞り加工は、従来の転造法や押し出し法に比べて変形抵抗が小さい。また、筒状部材が第1パンチの径方向に押し付けられることによって、筒状部材の内周面に歯型が転写されるため、高ねじれ角のはす歯であっても容易に形成することができる。さらに、ギアブランクの形状を最適化すると、材料歩留まりも向上する。
[1. 内歯ヘリカルギア製造用金型]
本発明に係る内歯ヘリカルギア製造用金型は、板状又はリング状のギアブランクを筒状部材に絞り加工するためのダイス及び第1パンチを備えている。また、前記第1パンチの外周面には、前記絞り加工と同時に、前記筒状部材の内周面に螺旋状の内歯を転写するための凹凸が形成されている。
前記内歯ヘリカルギア製造用金型は、
(a)前記ダイス及び前記第1パンチを用いて前記絞り加工する際に、前記ギアブランクの加圧領域の全部又は一部に背圧をかけるための第2パンチ、及び/又は、
(b)前記筒状部材の内周面に前記内歯が転写された後、前記筒状部材の外周面のサイジングを行うためのサイジングリング
をさらに備えていてもよい。
本発明において、内歯ヘリカルギアは、板状又はリング状のギアブランクの外周部分をダイスと第1パンチとで内側に曲げ起こし、さらに、起き上がった側壁部分を所定の厚さにしごくことにより製造される。すなわち、一種の「絞り加工(あるいは、絞り・しごき加工)」により、板状又はリング状のギアブランクから筒状部材(内歯ヘリカルギアの粗形材)を製造する。この点が、従来とは異なる。
ギアブランクの絞り加工を円滑に行うためには、ダイスは、ギアブランクの押圧方向に向かって、逆テーパー部、ストレート部、及び逃がし部がこの順で設けられているものが好ましい。このような構造を備えたダイスは、逆テーパー部からストレート部に向かって内径が連続的に減少している。そのため、板状又はリング状のギアブランクを筒状部材に塑性変形させる際の変形抵抗が小さくなる。
ギアブランクは、逆テーパー部の大径側から挿入され、ストレート部に向かって第1パンチで押圧される。そのため、逆テーパー部の形状(すなわち、大径部の内径、小径部の内径、側面の角度、逆テーパー部の高さなど)は、加工効率、ダイスの寿命、ダイスのコストなどに影響を与える。
「小径部の内径」とは、逆テーパー部の大径端近傍と小径端近傍に内接する円錐と、ストレート部に内接する円筒とが交わる円の直径をいう。変形抵抗を小さくするためには、逆テーパー部とストレート部の境界線近傍に適度な面取りを施し、軸方向(z方向)の内径(R)の変化率(dR/dz)を連続的に変化させるのが好ましい。
逆テーパー部の側面の平均角度は、ダイスのコストや変形抵抗に影響を与える。一般に、平均角度が小さくなりすぎると、大径部の内径をギアブランクの外径以上とするために必要なダイスの高さが過度に大きくなる。従って、側面の平均角度は、5°以上が好ましい。平均角度は、さらに好ましくは、10°以上である。
一方、平均角度が大きくなりすぎると、絞り加工時の成形荷重が過度に大きくなる。従って、側面の平均角度は、45°以下が好ましい。平均角度は、さらに好ましくは、30°以下である。
ストレート部は、外径がほぼ一定である筒状部材を形成するための機能を備えた部分である。このような機能を備えている限りにおいて、ストレート部の形状は、特に限定されるものではなく、必ずしも内径が一定である円筒形である必要はない。
「ストレート部の内径」とは、ストレート部に内接する円筒の内径をいう。ストレート部は、逆テーパー部との境界線近傍、及び/又は、逃がし部との境界線近傍において、適度な面取りが施されていても良い。また、筒状部材を形成可能な限りにおいて、ストレート部の表面は、曲面状であっても良い。
ストレート部の高さは、ダイスの寿命や変形抵抗に影響を与える。ストレート部の高さが低すぎると、ダイスの寿命が低下する。従って、ストレート部の高さは、逆テーパー部の高さの5%以上が好ましい。ストレート部の高さは、さらに好ましくは、逆テーパー部の高さの10%以上である。
一方、ストレート部の高さが大きくなりすぎると、摩擦抵抗が増大する。従って、ストレート部の高さは、逆テーパー部の高さの100%以下が好ましい。ストレート部の高さは、さらに好ましくは、逆テーパー部の高さの50%以下である。
逃がし部は、ストレート部を通過した後の円筒状部材とダイスとの摩擦力を軽減するための部分である。逃がし部は、内径がストレート部の内径より大きくなっていれば良く、その形状や高さは特に限定されない。例えば、逃がし部は、ストレート部の内径より大きい内径を有する円筒状であっても良く、あるいは、テーパー状の円錐であっても良い。
「逃がし部の内径」とは、逃がし部の最も大きい部分の内径をいう。
第1パンチの外周面には、絞り加工と同時に、筒状部材の内周面に螺旋状の内歯を転写するための凹凸(雌はす歯)が形成されている。本発明において、歯すじのねじれ角やピッチは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。本発明において、ギアブランクが筒状部材に絞り加工される際に、筒状部材が第1パンチに押し付けられることによって、筒状部材の内周に内歯が転写される。そのため、高ねじれ角のはす歯であっても容易に形成することができる。
第2パンチは、その先端面にギアブランクを載置するためのものであると同時に、ダイス及び第1パンチを用いて絞り加工する際に、ギアブランクの加圧領域の全部又は一部に背圧をかけるためのものでもある。「ギアブランクの加圧領域」とは、ギアブランクの表面の内、第1パンチと接触する領域をいう。
このような場合には、第2パンチを用いてギアブランクの加圧領域に背圧をかけながらプレスを行うのが好ましい。
例えば、第2パンチの外径は、第1パンチの外径と同一であっても良く、あるいは、第1パンチの外径より小さくても良い。
また、第2パンチの端面は、平面であっても良く、あるいは、外周部にリング状の突起が形成されている凹面であっても良い。
本発明に係る内歯ヘリカルギア製造用金型は、筒状部材の内周面に内歯が転写された後、筒状部材の外周面のサイジングを行うためのサイジングリングをさらに備えていても良い。サイジングリングは、具体的には、第1パンチの押圧方向の下流側であって、ダイスの逃げ部に隣接して設けるのが好ましい。
サイジングリングを備えた金型を用いてギアブランクの加工を行うと、ダイスを通過した筒状部材がサイジングリングに到達し、筒状部材の外周面が矯正される。そのため、1回のプレスで高精度なリング形状に成形することができる。
ギアブランクは、製造されるギアの高さより厚さが薄い板状又はリング状であって、筒状部材に成形可能なものあれば良い。
ギアブランクのその他の部分の形状については、特に限定されない。例えば、ギアブランクは、中実の板状であっても良く、中空のリング状であっても良い。材料歩留まりを向上させるためには、ギアブランクは、中空のリング状であるものが好ましい。
図1に、本発明の一実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造用金型の断面模式図を示す。図1において、内歯ヘリカルギア製造用金型10は、ダイス12と、第1パンチ14と、第2パンチ16と、サイジングリング18とを備えている。
ストレート部12cは、ほぼ円筒形を呈しており、逆テーパー部12bとの境界線近傍は面取りが施されている。さらに、ストレート部12cの下方には、ストレート部12cの内径より大きい内径を有する円筒状の逃がし部12dが形成されている。
さらに、逃がし部12dの下方には、ストレート部12c及び逃がし部12dを通過した筒状部材の外周面を矯正するためのサイジングリング18が設けられている。
図1に示す例において、第2パンチ16は、第1パンチ14と同等の外径を有している。第2パンチ16の先端面の外周には、ギアブランク30を第1下パンチ14の下面に押圧するためのリング状の突起16aが設けられている。第2パンチ16の下面には、第2パンチ16に背圧を付与するためのロッド20が接続されている。
図2に、本発明の一実施の形態に係る内歯ヘリカルギア製造用ギアブランクの平面図(上図)、及び、そのA−A’線断面図(下図)を示す。図2において、ギアブランク30は、中空のリング状の形状を有している。ギアブランク30の上下面の内、一方の面には、すり鉢状の逆テーパ面30aが形成されている。また、ギアブランク30の他方の面の内周端には、凹部30bが形成されている。
ここで、「ギアブランク30の幅(W)」とは、ギアブランク30の外周面の半径(R1)とギアブランクの内周面の半径(R2)との差(ΔR=R1−R2)をいう。
「ギアブランク30の厚さ(t1)」とは、ギアブランク30の最も厚い部分の厚さをいう。
凹部30bの厚さ(t2)は、プレス中にギアブランク30を確実に挟持できる厚さであれば良い。
ここで、「凹部30bの厚さ(t2)」とは、凹部30bの最も薄い部分の厚さをいう。
図3に、図1に示す金型を用いた内歯ヘリカルギアの製造方法の工程図を示す。まず、図3(a)に示すように、第1パンチ14と第2パンチ16でギアブランク30の内周端近傍を挟む。
次に、ロッド20を介して第2パンチ16に適度な背圧を付与した状態で、第1パンチ14を下降させる。その結果、図3(b)に示すように、ギアブランク30の外周部分がダイス12の逆テーパー部12bにより内側に曲げ起こされ、次第に筒状部材30’に絞り加工される。
第1パンチ14をさらに下降させると、筒状部材30’がストレート部12cを通過し、筒状部材30’の内周面に歯型が転写される。第1パンチ14をさらに下降させると、図3(c)に示すように、筒状部材30’がサイジングリング18を通過し、筒状部材30’の外周面が矯正される。
図4(a)に示すように、ギアブランク30の凹部30bに第2パンチ16の突起16aを挿入する。この状態で、第1パンチ14を下降させ、第1パンチ14及び第2パンチ16でギアブランク30の内周端近傍を挟む。
筒状部材30’がストレート部12cを完全に通過した時には、図4(d)に示すように、所定の厚さ及び高さを有し、かつ、内周面に内歯が転写された筒状部材30’(内歯ヘリカルギアの粗形材)が得られる。
さらに、筒状部材30’を金型10から取り出した後、筒状部材30’から余肉を切り落とし、仕上げ加工を施すと、内歯ヘリカルギアが得られる。
ダイスと、外周面に凹凸を形成した第1パンチとを用いて板状又はリング状のギアブランクを絞り加工すると、ギアブランクが筒状部材に塑性変形すると同時に、筒状部材の内周面に歯型が転写される。
板状又はリング状のギアブランクを用いた絞り加工は、従来の転造法や押し出し法に比べて変形抵抗が小さい。また、筒状部材が第1パンチの径方向に押し付けられることによって、筒状部材の内周面に歯型が転写されるため、高ねじれ角のはす歯であっても容易に形成することができる。さらに、ギアブランクの形状を最適化すると、材料歩留まりも向上する。
12 ダイス
14 第1パンチ
16 第2パンチ
18 サイジングリング
30 ギアブランク
30’ 筒状部材
Claims (6)
- リング状のギアブランクを筒状部材に絞り加工するためのダイス及び第1パンチと、
前記ダイス及び前記第1パンチを用いて前記絞り加工する際に、前記ギアブランクの加圧領域(前記ギアブランクの表面の内、前記第1パンチの端面と接触する領域)の全部又は一部に背圧をかけるための第2パンチであって、前記第1パンチ及び前記第2パンチにより前記ギアブランクの前記加圧領域の全部又は一部を挟んだ状態で前記ギアブランクのプレスを行うものと
を備え、
前記第1パンチの外周面には、前記絞り加工と同時に、前記筒状部材の内周面に螺旋状の内歯を転写するための凹凸が形成されている
内歯ヘリカルギア製造用金型。 - 前記ダイスは、前記ギアブランクの押圧方向に向かって、逆テーパー部、ストレート部、及び逃がし部がこの順で設けられ、
前記逆テーパー部の大径側の内径は、前記ギアブランクの外径以上であり、
前記逃がし部の内径は、前記ストレート部の内径より大きい
請求項1に記載の内歯ヘリカルギア製造用金型。 - 前記逆テーパー部の側面の平均角度は、5°以上45°以下であり、
前記ストレート部の高さは、前記逆テーパー部の高さの5%以上100%以下である
請求項2に記載の内歯ヘリカルギア製造用金型。 - 前記筒状部材の内周面に前記内歯が転写された後、前記筒状部材の外周面のサイジングを行うためのサイジングリングをさらに備えた請求項1から3までのいずれか1項に記載の内歯ヘリカルギア製造用金型。
- 請求項1から4までのいずれか1項に記載の内歯ヘリカルギア製造用金型を用いて、リング状のギアブランクを筒状部材に絞り加工すると同時に、前記筒状部材の内周面に螺旋状の内歯を形成するプレス工程を備えた内歯ヘリカルギアの製造方法。
- 請求項5に記載の方法に用いられ、
リングの上下面の内、一方の面には、逆テーパ面が形成され、
他方の面の内周端には、凹部が形成されている
内歯ヘリカルギア製造用ギアブランク。
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