以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に3台の室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行えるマルチ型の空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2と、室外機2に第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、第4液管8d、および、ガス管9で並列に接続された4台の室内機5a〜5dとを備えている。
上記各構成要素は次のように接続されている。第1液管8aの一端が室外機2の第1液側閉鎖弁28aに、他端が室内機5aの閉鎖弁53aにそれぞれ接続されている。また、第2液管8bの一端が室外機2の第2液側閉鎖弁28bに、他端が室内機5bの閉鎖弁53bにそれぞれ接続されている。また、第3液管8cの一端が室外機2の第3液側閉鎖弁28cに、他端が室内機5cの閉鎖弁53cにそれぞれ接続されている。また、第4液管8dの一端が室外機2の第4液側閉鎖弁28dに、他端が室内機5dの閉鎖弁53dにそれぞれ接続されている。また、ガス管9は一端が室外機2のガス側閉鎖弁29に、他端が分岐して室内機5a〜5dの各閉鎖弁54a〜54dにそれぞれ接続されている。このように、室外機2と室内機5a〜5dとが第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、第4液管8d、および、ガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。
まず、図1(A)を用いて、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、第1室外膨張弁24aと、第2室外膨張弁24bと、第3室外膨張弁24cと、第4室外膨張弁24dと、室外ファン27と、一端に第1液管8aが接続された第1閉鎖弁28aと、一端に第2液管8bが接続された第2閉鎖弁28bと、一端に第3液管8cが接続された第3閉鎖弁28cと、一端に第4液管8dが接続された第4閉鎖弁28dと、一端にガス管が接続されたガス側閉鎖弁29と、室外機制御手段200とを備えている。そして、室外ファン27および室外機制御手段200を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaと吐出管41で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入側は、後述する四方弁22のポートcと吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、圧縮機21の冷媒吐出側と吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。そして、ポートdは、ガス側閉鎖弁29と室外機ガス管44で接続されている。
室外熱交換器23は、後述する室外ファン27の回転により図示しない吸込口から室外機2の内部に取り込まれた外気と冷媒とを熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は上述したように冷媒配管43で四方弁22のポートbに接続され、他方の冷媒出入口には室外機液管45の一端が接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
室外機液管45の他端には、第1液分管46aの一端と第2液分管46bの一端と第3液分管46cと第4液分管46dの一端が各々接続されている。また、第1液分管46aの他端は第1液側閉鎖弁28aと接続され、第2液分管46bの他端は第2液側閉鎖弁28bと接続され、第3液分管46cの他端は第3液側閉鎖弁28cと接続され、第4液分管46dの他端は第4液側閉鎖弁28dと接続されている。
第1液分管46aには、第1室外膨張弁24aが設けられている。また、第2液分管46bには、第2室外膨張弁24bが設けられている。また、第3液分管46cには、第3室外膨張弁24cが設けられている。さらには、第4液分管46dには、第4室外膨張弁24dが設けられている。
第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、第4室外膨張弁24dは、各々電子膨張弁である。第1室外膨張弁24aの開度を調節することで、後述する室内機5aの室内熱交換器51aを流れる冷媒量を調節する。第2室外膨張弁24bの開度を調節することで、後述する室内機5bの室内熱交換器51bを流れる冷媒量を調節する。第3室外膨張弁24cの開度を調節することで、後述する室内機5cの室内熱交換器51cを流れる冷媒量を調節する。第4室外膨張弁24dの開度を調節することで、後述する室内機5dの室内熱交換器51dを流れる冷媒量を調節する。
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ33とが設けられている。吸入管42には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度を検出する室外熱交温度センサ35が設けられている。
第1液分管46aにおける、第1室外膨張弁24aと第1液側閉鎖弁28aとの間には、この間の第1液分管46aを流れる冷媒の温度を検出する第1液温度センサ38aが設けられている。第2液分管46bにおける、第2室外膨張弁24bと第2液側閉鎖弁28bとの間には、この間の第2液分管46bを流れる冷媒の温度を検出する第2液温度センサ38bが設けられている。第3室外膨張弁24cと第3液側閉鎖弁28cとの間には、この間の第3液分管46cを流れる冷媒の温度を検出する第3液温度センサ38cが設けられている。第4室外膨張弁24dと第4液側閉鎖弁28dとの間には、この間の第4液分管46dを流れる冷媒の温度を検出する第4液温度センサ38dが設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ100が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230とを備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態、後述する各種テーブル等を記憶する。通信部230は、室内機5a〜5dとの通信を行うインターフェイスである。
CPU210は、各種センサでの検出値を取り込むとともに、室内機5a〜5dから送信される運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら取り込んだ各種検出値や入力された各種情報に基づいて、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24cおよび第4室外膨張弁24dの開度制御や、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御、四方弁22の切り換え制御を行う。
次に、4台の室内機5a〜5dについて説明する。4台の室内機5a〜5dは、室内熱交換器51a〜51dと、第1液管8aと第2液管8bと第3液管8cと第4液管8dがそれぞれ接続された液側閉鎖弁53a〜53dおよび分岐したガス管9の他端がそれぞれ接続されたガス側閉鎖弁54a〜54dと、室内ファン55a〜55dと、室内機制御手段500a〜500dとを備えている。そして、室内ファン55a〜55dおよび室内機制御手段500a〜500dを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50dを構成している。
尚、室内機5a〜5dの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5c、5dについては説明を省略する。また、図1(A)では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからb、cおよびdにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5c、5dの構成装置となる。
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aの回転により室内機5aに備えられた図示しない吸込口から室内機5aの内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が液側閉鎖弁53aに室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口がガス側閉鎖弁54aに室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
室内ファン55aは、室内熱交換器51aの近傍に配置される樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5aの内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を室内機5aに備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内熱交換器51aには、室内熱交換器51aの温度を検出する室内熱交温度センサ61aが設けられている。また、室内機ガス管72aには第1ガス温度センサ63aが設けられている。さらに、室内機5aの図示しない吸込口付近には、室内機5a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ62aが備えられている。
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aとを備えている。
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。
CPU510aは、各種センサでの検出値を取り込むとともに、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転条件やタイマー運転設定等を含んだ信号が図示しないリモコン受光部を介して入力される。CPU510aは、これら取り込んだ各種検出値や入力された各種情報に基づいて室内ファン55aの駆動制御を行う。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ運転情報信号を、通信部530aを介して室外機2に送信する。
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5dが暖房運転を行う場合について説明し、冷房運転/除霜運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1(A)における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
図1(A)に示すように、室内機5a〜5dが暖房運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51dが凝縮器として機能する。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41から四方弁22を介して室外機ガス管44に流入し、室外機ガス管44からガス側閉鎖弁29を介してガス管9に流入する。ガス管9に流入した冷媒は分岐して、ガス側閉鎖弁54a〜54dを介して室内機5a〜5dに流入する。
室内機5a〜5dに流入した冷媒は、室内機ガス管72a〜72dを流れて室内熱交換器51a〜51dに流入する。室内熱交換器51a〜51dに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55dの回転により図示しない吸込口から室内機5a〜5dの内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51a〜51dが凝縮器として機能し、室内熱交換器51a〜51dで冷媒と熱交換を行って暖められた室内空気が図示しない吹出口から室内機5a〜5dが設置されている部屋に吹き出されることによって、各部屋の暖房が行われる。
室内熱交換器51a〜51dから流出した冷媒は室内機液管71a〜71dを流れ、液側閉鎖弁53a〜53dを介して第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、および第4液管8dに流入する。第1液管8a、第2液管8b、第3液管8c、および第4液管8dから第1液側閉鎖弁28a、第2液側閉鎖弁28b、第3液側閉鎖弁28c、および第4液側閉鎖弁28dを介して室外機2に流入した冷媒は、第1液分管46a、第2液分管46b、第3液分管46c、および第4液分管46dを流れて第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および第4室外膨張弁24dを通過して減圧された後、室外機液管45に流入する。尚、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、第4室外膨張弁24dの開度制御については後述する。
室外機液管45から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43を流れて四方弁22に流入し四方弁22から吸入管42へと流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
尚、室内機5a〜5dが冷房運転あるいは除霜運転を行う場合、つまり、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は、室外機2では、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り換えられる。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51dが蒸発器として機能する。
次に、図1〜図5を用いて、本実施形態の空気調和装置1が暖房運転を行っているときの、第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および第4室外膨張弁24dの開度制御について詳細に説明する。
尚、以下の説明では、高圧センサ31で検出する圧縮機21の吐出圧力をPd、吐出圧力Pdを用いて算出する室内熱交換器51a〜51dでの凝縮温度をTc、室外熱交温度センサ35で検出する室外熱交換器23での蒸発温度をTe、吐出温度センサ33で検出する圧縮機21の吐出温度をTd、目標吐出温度をTdtg、吐出温度Tdと目標吐出温度Tdtgとの差(Td−Tdtg)である吐出温度差をΔTdとする。尚、目標吐出温度Tdtgは、冷媒回路の安定時に圧縮機21に吸入される冷媒の状態が適正となる温度であり、本実施形態では、凝縮温度Tcと蒸発温度Teとを用いて算出する。
また、第1液温度センサ38a、第2液温度センサ38b、第3液温度センサ38c、第4液温度センサ38dで検出する熱交出口温度をそれぞれTl1、Tl2、Tl3、Tl4とし、凝縮温度Tcと熱交出口温度Tl1、Tl2、Tl3、Tl4それぞれとの温度差(Tc−Tl1、Tc−Tl2、Tc−Tl3、Tc−Tl4)をそれぞれ過冷却度SC1、SC2、SC3、SC4とする。また、過冷却度SC1、SC2、SC3、SC4のうち最も大きな値のものを過冷却度の最大値SCmax、最も小さな値のものを過冷却度の最小値SCmin、最大値SCmaxと最小値SCminの差をΔSCとする。
空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、吐出温度Tdが目標吐出温度Tdtg(目標値)となるように吐出温度差ΔTdに基づいて第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および第4室外膨張弁24dの開度調節を行う(吐出温度調節ステップ)。
また、上記の吐出温度調節ステップと並行して、暖房運転時は、過冷却度SC1、SC2、SC3、SC4の値が所定の目標値となるように第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および第4室外膨張弁24dの開度調節を個別に行う(過冷却度調節ステップ)。なお、過冷却度調節ステップは、各室内熱交換器51a〜51dの負荷に応じた循環量の冷媒を流すように第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および第4室外膨張弁24dの開度調節を個別に行う制御であり、冷房運転を行っているときは、過熱度SH1、SH2、SH3、SH4の値が所定の目標値となるように第1室外膨張弁24a、第2室外膨張弁24b、第3室外膨張弁24c、および第4室外膨張弁24dの開度調節を個別に行う(過熱度調節ステップ)。
上記の過冷却度調節ステップおよび過熱度調節ステップは、室内機毎に異なる空調負荷に対して適切な冷媒循環量を各室内機へ分配する目的で行われる。このとき、ユーザが1台の室内機5に対して運転開始若しくは運転停止を指示する操作を行うと、運転する室内機(サーモオン状態の室内機)容量の変化によって、各室内機に流れる冷媒循環量が急激に変化する。そのため、各室内機5が必要とする冷媒循環量と実際に流入した冷媒循環量とが大きく離れてしまい、圧縮機21への液バックや吐出温度Tdの過昇という問題が生じる場合がある。この問題の解決策として、運転台数が変化した際に予め室外膨張弁24の開度を調整する方法がある。例えば、変化した台数に応じたパルスを各室外膨張弁24に加減算する方法や、外気温又は室温に対応した開度となるように各膨張弁24を制御する方法がある。しかし、これらの方法はいずれも運転台数変化前に各室外膨張弁24が適正開度(各室内機5で必要としている冷媒循環量を適切に分配できる開度)となっていても、運転台数が変化すると再度適正開度となるまで室外膨張弁24を制御する必要があり、各室外膨張弁24の開度が安定するまでに時間を要していた。
したがって、室内機5の運転台数が変化しても各室外膨張弁24が適正開度に近い状態となっているようにすることが好ましい。
そこで、本発明では、サーモオン状態の室内機の台数(運転台数)が変化したとき、変化前からサーモオン状態だった室内機5の各室外膨張弁24の開度流量の比率を維持し、且つ、全ての室内機5の開度流量の合計値は運転台数の変化前と変わらないように各室外膨張弁を開度制御している。これによって、各室内機5で必要としている冷媒循環量を適切に分配できる開度に早く安定させることができる。
以下、図2〜5を用いて本発明に関わる処理について詳細に説明する。尚、図2〜4に示すフローチャートでは、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。また、図2〜5では、本発明に関わる処理を中心に説明しており、空気調和装置1が冷房運転や除霜運転を行うときの処理や、使用者の指示した設定温度や風量などの運転条件に対応した冷媒回路10の制御、等といった一般的な処理については説明を省略する。
図2のフローチャートによる処理は、ユーザがいずれかの室内機5に対して運転開始若しくは運転停止を指示する操作を行い、サーモオン状態の室内機5の台数が変化したら開始する。CPU210は、各室外膨張弁24の現在の開度を検出し、これに基づいて各室外膨張弁24の開度流量Faa〜Fadおよびその合計値Fsumを算出する(ST1)。ここで、開度流量Faは、膨張弁の入口側と出口側とが所定の圧力差の場合において、その開度で室外膨張弁24を通過する冷媒循環量を示す。開度流量Faは、試験等により求めた室外膨張弁24の開度との相関関係が予め記憶部220に記憶されており、これを基に算出される。
ST1の処理を終えたCPU210は、現在の圧縮機21の回転数Nを検出して記憶部220にN1として記憶する(ST2)。
その後、CPU210は、サーモオン状態の室内機5の台数が増加したか否かを判定する(ST3)。台数が増加していた場合(ST3−YES)、CPU210はST4に処理を進め、図3の増加時制御へ移行する。増加時制御へ移行するとき、圧縮機21の回転数は増加する。台数が増加していない、つまり、減少していた場合(ST3−NO)、CPU210はST5に処理を進め、図4の減少時制御へ移行する。減少時制御へ移行するとき、圧縮機21の回転数は減少する。
(1)増加時制御
ST4の増加時制御について図3と図5(A)を用いて説明する。図3は増加時制御における制御フローを示しており、図5(A)は増加時制御による各室外膨張弁の開度流量Faの変化を示す表である。なお、図5に記載されている数値は概念的なものを示している。図3の増加時制御では、CPU210は、台数変化時点で既に運転停止(サーモオフ状態)であって、台数変化後においても運転停止である室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbとして、台数変化前の開度流量Faをそのまま割り当てる(STB1)。図5(A)において、台数変化時点で既に運転停止(サーモオフ状態)であって、台数変化後においても運転停止となる室内機である室内機5dの台数変化前開度流量Fad=1を室内機5dの台数変化後開度流量Fbdにそのまま割り当てる。
次に、CPU210は、台数変化時点で既に運転停止(サーモオフ状態)であって、台数変化後においても運転停止である室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量Faの合計値である停止機合計値Foffを算出するとともに、運転機合計値Fon(=Fsum−Foff)を算出する(STB2)。
次に、CPU210は、サーモオン状態に移行した室内機5の能力比率QRを算出する(STB3)。能力比率QRは、全てのサーモオン状態の室内機5の能力の合計値に占める当該室内機5の能力の比率であり、ここで、室内機5の能力とは簡易的には各室内機5の定格能力を使用する。これによって、当該室内機5が必要としている冷媒循環量を推定できる。なお、室内温度センサ62で検出された室内温度や室内ファン55の回転数等を考慮することで精度を向上させることができる。図5(A)において、運転を開始した室内機5cの能力は10である。また、サーモオン状態の室内機は室内機5a、5bおよび5cであり、各室内機の能力の合計値は25である。したがって、室内機5cの能力比率QR=2/5となる。
また、CPU210は、台数変化時にサーモオン状態に移行した室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbを算出する。サーモオン状態に移行した室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbは、運転機合計値Fonに当該室内機5の能力比率QRを乗算して算出される。図5(A)において、変化前開度流量Faの合計値Fsum=21であり、停止機の合計値Foff=1であるため、運転機の合計値Fon=20となる。また、サーモオン状態に移行した室内機5cの能力比率QRc=2/5であるため、室内機5cの変化後開度流量Fbc=20*2/5=8が割り当てられる。
さらに、CPU210は、運転機合計値Fonからサーモオン状態に移行した室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbを減じた値Fon’を算出し、記憶部220に記憶させる。図5(A)において、運転機の合計値Fon=20であり、サーモオン状態に移行した室内機5cの変化後開度流量Fbc=8であるため、Fon’=12となる。
STB3の処理を終えたCPU210は、台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機5に対応する室外膨張弁24各々の開度流量比率FRを算出する(STB4)。台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量比率FRは、当該台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量Faが、台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量Faの合計値に占める比率である。図5(A)において、台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機は室内機5aと5bである。室内機5aに対応する室外膨張弁の開度流量Faa=12であり、室内機5bに対応する室外膨張弁の開度流量Fab=6である。したがって、室内機5aに対応する室外膨張弁24aの開度流量比率FRa=12/(12+6)=2/3となり、室内機5bに対応する室外膨張弁24bの開度流量比率FRb=6/(12+6)=1/3となる。
また、CPU210は、台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機5に対応する室外膨張弁24各々の台数変化後開度流量Fbを算出する。台数変化時に既にサーモオン状態だった室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbは、STB3で算出したFon’に当該室内機5の開度流量比率FRを乗算して算出される。図5(A)において、Fon’=12であり、室内機5aの開度流量比率FRa=2/3であり、室内機5bの開度流量比率FRb=1/3である。したがって、室内機5aに対応する室外膨張弁24aの台数変化後開度流量Fba=12*2/3=8となり、室内機5bに対応する室外膨張弁24bの台数変化後開度流量Fbb=12*1/3=4となる。
STB4の処理が終わるまでに、全ての室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbが算出される。台数変化後開度流量Fbの合計値と台数変化前開度流量Faの合計値を比較すると同じ値となり、運転台数が変化しても各室内機5で必要としている冷媒循環量を適切に分配できる開度に早く安定させることができる。図5(A)において、台数変化後開度流量Fbの合計値と台数変化前開度流量Faの合計値は21で同じ値となっている。
STB4の処理を終えたCPU210は、算出した室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbを室外膨張弁24の開度に変換し、当該開度となるように各室外膨張弁24の開度制御を行う(STB5)。なお、開度流量Faと室外膨張弁24の開度との相関関係は予め記憶部220に記憶されている。
STB5の処理を終えたCPU210は、圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgに到達したか否かを判定する(STB6)。所定回転数Ntgは、全ての室内機5から要求された能力を発揮するための目標となる回転数である。圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgに到達していた場合(STB6−YES)、増加時制御を終了する。圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgに到達していない場合(STB6−NO)、圧縮機21の回転数Nが図2のST2の時点で検出した圧縮機21の回転数N1から10%増加したか否かを判定する(STB7)。回転数N1から10%増加していなかった場合(STB7−NO)、STB6へ処理を戻す。
圧縮機21の回転数Nが図2のST2の時点で検出した圧縮機21の回転数N1から10%増加していた場合(STB7−YES)、室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbを圧縮機21の回転数Nに合わせて10%増加させ、増加させた台数変化後開度流量Fbを室外膨張弁24の開度に変換し、当該開度となるように各室外膨張弁24の開度制御を行う(STB8)。
その後、回転数N1を更新してSTB6へ処理を戻し、圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgとなるまでこの処理を繰り返す。
(2)減少時制御
ST5の減少時制御について図4と図5(B)を用いて説明する。図4は減少時制御における制御フローを示しており、図5(B)は減少時制御による各室外膨張弁の開度流量Faの変化を示す表である。図4の減少時制御では、CPU210は、台数変化時点で既に運転停止(サーモオフ状態)であって、台数変化後においても運転停止である室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbとして、台数変化前の開度流量Faをそのまま割り当てる(STC1)。図5(B)において、台数変化時点で既に運転停止(サーモオフ状態)であって、台数変化後においても運転停止となる室内機である室内機5dの台数変化前開度流量Fad=1を室内機5dの台数変化後開度流量Fbdにそのまま割り当てる。また、CPU210は、台数変化時に運転停止した室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbに所定値αを割り当てる。所定値αは、運転停止中の室内機の初期開度に相当する開度流量であって、冷房運転時においては0であり、暖房運転時においては室内熱交換器に冷媒が溜らない程度の微小な開度流量である。図5(B)において、所定値α=1であり、台数変化時に運転停止した室内機5cに対応する室外膨張弁24cの台数変化後開度流量Fbc=1を割り当てる。
次に、CPU210は、台数変化後に運転停止(サーモオフ状態)となる室内機5に対応する室外膨張弁24の変化後開度流量Fbの合計値である停止機合計値Foffを算出するとともに、運転機合計値Fon(=Fsum−Foff)を算出する(STC2)。図5(B)において、台数変化後に運転停止(サーモオフ状態)となる室内機5は室内機5cと室内機5dである。室内機5cに対応する室外膨張弁24cの開度流量Fbcと室内機5dに対応する室外膨張弁24dの開度流量Fbdはともに1である。したがって、停止機合計値Foff=1+1=2である。また、図5(B)において、各室外膨張弁24の開度流量Faa〜dの合計値Fsum=20である。したがって、運転機合計値Fon=20−2=18となる。
STC2の処理を終えたCPU210は、台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機5に対応する室外膨張弁24各々の開度流量比率FRを算出する(STC3)。台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量比率FRは、当該台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量Faが、台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機5に対応する室外膨張弁24の開度流量Faの合計値に占める比率である。図5(B)において、台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機は室内機5aと5bである。室内機5aに対応する室外膨張弁の開度流量Faa=8であり、室内機5bに対応する室外膨張弁の開度流量Fab=4である。したがって、室内機5aに対応する室外膨張弁24aの開度流量比率FRa=8/(8+4)=2/3となり、室内機5bに対応する室外膨張弁24bの開度流量比率FRb=4/(8+4)=1/3となる。
また、CPU210は、台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機5に対応する室外膨張弁24各々の台数変化後開度流量Fbを算出する。台数変化時に既にサーモオン状態であって、台数変化後も運転を継続する室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbは、STC2で算出したFonに当該室内機5の開度流量比率FRを乗算して算出される。図5(B)において、Fon=18であり、室内機5aの開度流量比率FRa=2/3であり、室内機5bの開度流量比率FRb=1/3である。したがって、室内機5aに対応する室外膨張弁24aの台数変化後開度流量Fba=18*2/3=12となり、室内機5bに対応する室外膨張弁24bの台数変化後開度流量Fbb=18*1/3=6となる。
STB3の処理が終わるまでに、全ての室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbが算出される。台数変化後開度流量Fbの合計値と台数変化前開度流量の合計値を比較すると同じ値となり、運転台数が変化しても各室内機5で必要としている冷媒循環量を適切に分配できる開度に早く安定させることができる。図5(B)において、台数変化後開度流量Fbの合計値と台数変化前開度流量の合計値は20で同じ値となっている。
STC3の処理を終えたCPU210は、算出した室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbを室外膨張弁24の開度に変換し、当該開度となるように各室外膨張弁24の開度制御を行う(STC4)。なお、開度流量Faと室外膨張弁24の開度との相関関係は予め記憶部220に記憶されている。
STC4の処理を終えたCPU210は、圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgに到達したか否かを判定する(STC5)。所定回転数Ntgは、全ての室内機5から要求された能力を発揮するための目標となる回転数である。圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgに到達していた場合(STC5−YES)、減少時制御を終了する。圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgに到達していない場合(STC5−NO)、圧縮機21の回転数Nが図2のST2の時点で検出した圧縮機21の回転数N1から10%減少したか否かを判定する(STC6)。回転数N1から10%減少していなかった場合(STC6−NO)、STC5へ処理を戻す。
圧縮機21の回転数Nが図2のST2の時点で検出した圧縮機21の回転数N1から10%減少していた場合(STC6−YES)、室内機5に対応する室外膨張弁24の台数変化後開度流量Fbを圧縮機21の回転数Nに合わせて10%減少させ、減少させた台数変化後開度流量Fbを室外膨張弁24の開度に変換し、当該開度となるように各室外膨張弁24の開度制御を行う(STC7)。
その後、回転数N1を更新してSTC5へ処理を戻し、圧縮機21の回転数Nが所定回転数Ntgとなるまでこの処理を繰り返す。
なお、室内機5の運転台数が変化する際に圧力変動が生じる。そのため、この圧力変動を考慮して変化後の膨張弁開度を設定してもよい。つまり、本実施例において、変化後開度流量Fbを割り当てる際に、変化後開度流量Fbに室内機能力に応じた補正値を加えることでより適正な開度を設定することができる。
以上説明した実施形態によれば、運転台数が変化しても各室内機5で必要としている冷媒循環量を適切に分配できる開度に早く安定させることができる。