JP6623083B2 - 固体電解質組成物、これを用いた全固体二次電池用シートおよび全固体二次電池ならびにこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
かかる状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質および正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。さらに、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車や大型蓄電池等への応用が期待されている。
(1)周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記一般式(B1)〜(B3)のいずれかで表される含フッ素化合物とを含有する固体電解質組成物。
Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは周期律表第13族に属する金属元素のイオンを示し、nは1〜3の整数であり、nB1=nである。
上記一般式(B2)中、RB2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲノ基を示す。ただし、RB2はフッ素原子を有する。
Mm+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは周期律表第13族に属する金属元素のイオンを示し、mは1または2であり、nB2はnB2×m=2を満たす数である。
上記一般式(B3)中、RB3はアルキル基、アリール基またはハロゲノ基を示し、RB4は水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。ただし、RB3はフッ素原子を有する。
(2)含フッ素化合物が上記一般式(B3)で表される(1)に記載の固体電解質組成物。
(3)含フッ素化合物が下記一般式(B12)〜(B32)のいずれかで表される(1)に記載の固体電解質組成物。
(4)電極活物質を含有する(1)〜(3)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(5)電極活物質が正極活物質である(4)に記載の固体電解質組成物。
(6) (1)〜(5)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物の層を基材上または金属箔上に有する全固体二次電池用シート。
(7)正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、
正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層の少なくとも1つの層が(1)〜(5)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物からなる層である全固体二次電池。
(8) (1)〜(5)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上または金属箔上に配置し、これを製膜する全固体二次電池用シートの製造方法。
(9) (8)に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、メタアクリル及び/又はアクリルを意味する。また、単に「アクリロイル」又は「(メタ)アクリロイル」と記載するときは、メタアクリロイル及び/又はアクリロイルを意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基および連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
また、本発明の製造方法によれば、本発明の全固体二次電池用シート及び全固体二次電池それぞれを好適に製造することができる。
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、後述する本発明の固体電解質組成物で形成されること、すなわち、本発明の固体電解質組成物を被覆して形成される層であることが好ましい。中でも、負極活物質層および/または正極活物質層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがより好ましく、正極活物質層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがさらに好ましい。
固体電解質組成物で形成された活物質層および/または固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
その作用、メカニズムは定かではなく推定ではあるが、次のように、考えられる。すなわち、上記特定の含フッ素化合物が、反応活性が高い電極部位(特に正極表面)および/または固体電解質表面で選択的に反応することで、充放電に伴う無機固体電解質の分解等の副反応を抑制し、界面抵抗の上昇が抑えられているものと推定される。特に、60℃といった高温稼働および4.3Vといった高電位稼働においても、無機固体電解質の分解等の副反応を、効果的に抑制することができると考えられる。
本発明の全固体二次電池は、電気反応に伴う無機固体電解質の分解等の副反応を抑制し、界面抵抗の上昇を抑制し得る、上記特定の含フッ素化合物と無機固体電解質とを含有する層(本発明の固体電解質組成物からなる層)を有する全固体二次電池である。ここで、後述する初期化が施され、上記界面抵抗の上昇が抑制された全固体二次電池をも包含する
意味である。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウムまたはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウムおよびアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金またはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金およびステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためにはさらに適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金およびステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、上記の通りであり、以下に具体的に説明する。
(無機固体電解質)
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質を含有する。
無機固体電解質の固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導度材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオン及びアニオンが解離又は遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導度を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。本発明において、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導度を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導度無機固体電解質が挙げられ、好ましい。
Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。中でも、B、Sn、Si、Al又はGeが好ましく、Sn、Al又はGeがより好ましい。
Aは、I、Br、Cl又はFを示し、I又はBrが好ましく、Iが特に好ましい。
L、M及びAは、それぞれ、上記元素の1種又は2種以上とすることができる。
a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(Li2S)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、[2]硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、又は[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))と単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
中でも、Li2S−P2S5、LGPS(Li10GeP2S12)およびLi2S−P2S5−SiS2等が好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4); リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD1(D1は、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
さらに、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
その中でも、LLT、LixbLaybZrzbMbb mbOnb(Mbb、xb、yb、zb、mb及びnb上記の通りである。)、LLZ、Li3BO3、Li3BO3−Li2SO4およびLixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadPmdOnd(xd、yd、zd、ad、md及びndは上記の通りである。)が好ましく、LLZ、LLT、LAGP(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3)およびLATP([Li1.4Ti2Si0.4P2.6O12]−AlPO4)がより好ましい。
また、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
ただし、正極活物質又は負極活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、正極活物質又は負極活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
なお、本明細書において固形分とは、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、下記一般式(B1)〜(B3)のいずれかで表される含フッ素化合物を含有する。
Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは周期律表第13族に属する金属元素のイオンを示し、nは1〜3の整数であり、nB1=nである。
上記一般式(B2)中、RB2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲノ基を示す。ただし、RB2はフッ素原子を有する。
Mm+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは周期律表第13族に属する金属元素のイオンを示し、mは1または2であり、nB2はnB2×m=2を満たす数である。
上記一般式(B3)中、RB3はアルキル基、アリール基またはハロゲノ基を示し、RB4は水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。ただし、RB3はフッ素原子を有する。
なかでも、アルキル基としては、炭素数1〜16が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、1〜3が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルおよびn−オクチルが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。具体的には、例えば、フェニル、トリルおよびナフチルが挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数1〜16が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、1〜3が最も好ましい。
具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびイソプロポキシが挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。具体的には、例えば、フェノキシ、トリルオキシおよびナフトキシが挙げられる。
ハロゲノ基は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが挙げられ、フルオロが好ましい。
フルオロ基で置換されたアルキル基としては、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルが挙げられ、好ましい。
フルオロ基で置換されたアリール基としては、例えば、2−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニルおよび1−フルオロ−2−ナフチルが挙げられ、好ましい。
フルオロ基で置換されたアルコキシ基としては、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、1,2−ジフルオロエトキシおよび2,2,2−トリフルオロエトキシが挙げられ、好ましい。
フルオロ基で置換されたアリールオキシ基としては、例えば、2−フルオロフェノキシ、4−フルオロフェノキシ、2,4−ジフルオロフェノキシおよび1−フルオロ−2−ナフトキシが挙げられ、好ましい。
本発明においては、少なくともRB1aがフッ素原子を有することが好ましい。
RB1aおよびRB1bが共にフッ素原子を有することがより好ましい一態様であり、具体的には、RB1aおよびRB1bが共にフルオロ基であることが好ましい。
RB1aだけがフッ素原子を有することも、別のより好ましい態様として挙げられる。
具体的には、RB1aがフルオロ基で置換されたアルコキシ基もしくはアリールオキシ基またはフルオロ基であって、RB1bがフッ素原子を有さないアルコキシ基またはアリールオキシ基であることが好ましい。
フッ素原子を有するRB2としては、フルオロ基で置換されたアルコキシ基およびアリールオキシ基ならびにフルオロ基がより好ましく、フルオロ基がさらに好ましい。
フッ素原子を有するRB3としては、フルオロ基で置換されたアルキル基がより好ましい。
RB4としては、アルキル基およびアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
nB1およびnB2は、それぞれ一般式(B1)または(B2)で表される化合物の電荷が0となるように選択される。
nB1およびnは、1または2が好ましく、1がより好ましい。
mおよびnB2としては、mが1でnB2が2であることが好ましい。
RB32におけるアルキル基としては、炭素数1〜15が好ましく、炭素数1〜12がより好ましく、炭素数1〜7がさらに好ましく、炭素数1〜5が特に好ましく、1または2が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルおよびn−オクチルが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。具体的には、例えば、フェニル、トリルおよびナフチルが挙げられる。
フルオロ基で置換されたアルキル基としては、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルが挙げられ、好ましい。
フルオロ基で置換されたアリール基としては、例えば、2−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニルおよび1−フルオロ−2−ナフチルが挙げられ、好ましい。
フッ素原子を有するRB32としては、フルオロ基が好ましい。
具体的には、RB32は水素原子、フルオロ基で置換されたアルキル基およびフルオロ基から選択されることが好ましく、水素原子およびフルオロ基から選択されることがより好ましく、フルオロ基であることがさらに好ましい。
すなわち、特定の含フッ素化合物は、近傍に存在する活物質および/または無機固体電解質における反応活性点と選択的に反応するものと考えられる。より具体的には、特定の含フッ素化合物から生じるフッ素を含有する被膜を特に活物質表層に形成することで副反応する箇所を減らすものと推定される。
置換基Zとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等、ただし本明細書においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味である。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜23のアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、環構成原子として酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択される少なくとも1つを有する5又は6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル、ピロリドン基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等、ただし本明細書においてアルコキシ基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)、アリーロイル基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイル基、例えば、ベンゾイル等、ただし本明細書においてアシル基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等、ただし本明細書においてアシルオキシ基というときには通常アリーロイルオキシ基を含む意味である。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルファニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルファニル基、例えば、メチルスルファニル、エチルスルファニル、イソプロピルスルファニル、ベンジルスルファニル等)、アリールスルファニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールスルファニル基、例えば、フェニルスルファニル、1−ナフチルスルファニル、3−メチルフェニルスルファニル、4−メトキシフェニルスルファニル等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシシリル基、例えば、モノメトキシシリル、ジメトキシシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アリールオキシシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールオキシシリル基、例えば、トリフェニルオキシシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホリル基、例えば、−OP(=O)(RP)2)、ホスホニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(RP)2)、ホスフィニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(RP)2)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルイミノ基((メタ)アクリルアミド基)、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
また、これらの置換基Zで挙げた各基は、上記の置換基Zがさらに置換していてもよい。
化合物ないし置換基および連結基等がアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基および/またはアルキニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。
なお、上記含フッ素化合物は、東京化成工業およびキシダ化学等から市販品を購入して使用したり、ジフルオロリン酸に水酸化リチウムを反応させる方法、酢酸メチルにナトリウムハイドライド及びフッ化ナトリウムを反応させる方法等の常法により合成することができる。
この場合、本発明に用いられる含フッ素化合物の固体電解質組成物中における含有量は、活性点をより効果的に被覆するため、固形分100質量%において、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が特に好ましい。また、上記含有量の上限としては、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、バインダーを含有することも好ましい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれら樹脂を構成するモノマーの共重合体などが挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えばポリ(メタ)アクリル酸メチルーポリスチレン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸メチルーアクリロニトリル共重合体およびポリ(メタ)アクリル酸ブチルーアクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
重縮合系ポリマーはハードセグメント部位とソフトセグメント部位を有することが好ましい。ハードセグメント部位は分子間水素結合を形成しうる部位を示し、ソフトセグメント部位は一般的にガラス転移温度(Tg)が室温(25±5℃)以下で分子量が400以上の柔軟な部位を示す。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
また、本発明に用いられるバインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよい、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒=スズ、チタン、ビスマス)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、質量平均分子量を意味する。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と必要により含有させる電極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+電極活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
ここで、「ポリマー粒子」とは、後述の分散媒体に添加しても完全に溶解せず、粒子状のまま分散媒体に分散し、0.01μm超の平均粒子径を示すものを指す。
また、既存のポリマーを機械的に破砕する方法またはポリマー液を再沈殿によって微粒子状にする方法を用いてもよい。
ポリマー粒子を任意の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる分散媒体。例えば、ヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒子径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、作製された全固体二次電池からの測定は、例えば、電池を分解し電極を剥がした後、その電極材料について上記ポリマー粒子の平均粒子径の測定方法に準じてその測定を行い、あらかじめ測定していたポリマー粒子以外の粒子の平均粒子径の測定値を排除することにより行うことができる。
本発明の固体電解質組成物は、分散媒体を含有することが好ましい。
分散媒体は、上記の各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)等)が挙げられる。
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒体としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒等が挙げられる。
上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物には、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質、負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極層用組成物(正極層用組成物、負極層用組成物)ということがある。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、CuおよびVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、PまたはBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物および(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8およびLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4およびLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類ならびにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩およびLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4およびLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO、NCA又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体およびリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、SiおよびIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵および放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
本発明の固体電解質組成物は、活物質の電子導電性を向上させる等のために用いられる導電助剤を適宜必要に応じて含有してもよい。導電助剤としては、一般的な導電助剤を用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛および人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維類ならびにグラフェンおよびフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅およびニッケルなどの金属粉または金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。またこれらの内1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物が導電助剤を含む場合、固体電解質組成物中の導電助剤の含有量は、0〜10質量%が好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩(支持電解質)を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、上記バインダー粒子で説明したリチウム塩が挙げられる。
このリチウム塩は、上記バインダー粒子(バインダー粒子を形成する上記ポリマー)に内包されていない(固体電解質層組成物中に例えば単独で存在している)点で、バインダー粒子に内包されているリチウム塩とは異なる。
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して、0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、分散剤を含有してもよい。分散剤を添加することで電極活物質及び無機固体電解質のいずれかの濃度が高い場合においてもその凝集を抑制し、均一な活物質層及び固体電解質層を形成することができる。
分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。例えば、分子量200以上3000未満の低分子又はオリゴマーからなり、官能基群(I)で示される官能基と、炭素数8以上のアルキル基又は炭素数10以上のアリール基を同一分子内に含有するものが好ましい。
官能基群(I):酸性基、塩基性窒素原子を有する基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアノ基、スルファニル基及びヒドロキシ基(酸性基、塩基性窒素原子を有する基、アルコキシシリル基、シアノ基、スルファニル基及びヒドロキシ基が好ましく、カルボキシ基、スルホン酸基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基がより好ましい。)
本発明の全固体二次電池において、分散剤を含む層がある場合、層中の分散剤の含有量は、0.2〜10質量%が好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質および特定の含フッ素化合物と、必要により分散媒体等の他の成分とを、混合又は添加することにより、製造できる。例えば、各種の混合機を用いて上記成分を混合することにより、製造できる。混合条件としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダーおよびディスクミルが挙げられる。
固体電解質組成物の製造方法において、活物質を含有する場合には、無機固体電解質、特定の含フッ素化合物と、必要により分散媒体を混合した後に添加および混合することが好ましい。別の態様としては、活物質(好ましくは正極活物質)、特定の含フッ素化合物および分散媒体を10〜50℃の条件で1〜10時間混合(攪拌)した後、分散媒体を留去し、真空乾燥させることで活物質に、特定の含フッ素化合物を被覆させる工程を含むことも好ましい。この工程を含む製造方法においては、特定の含フッ素化合物で被覆された活物質および無機固体電解質と、必要により他の成分とを、混合又は添加することにより、固体電解質組成物を製造できる。
本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池に用いられるシートであればよく、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう)、電極又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
本発明に用いられる全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、固体電解質層と保護層とを基材上に、この順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、上記集電体で説明した材料、有機材料および無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびセルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラスおよびセラミック等が挙げられる。
このシートは、本発明の固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。すなわち、本発明の全固体二次電池用シートは、本発明の固体電解質組成物を被覆して形成される層を基材上または金属箔上に有する。本発明の全固体二次電池用シートは、全固体二次電池を形成した際に、電気反応に伴う無機固体電解質の分解等の副反応を抑制し、界面抵抗の上昇を抑制する作用を奏する。
ここで、本発明の固体電解質組成物は、上記の方法によって、調製できる。
電極シートを構成する各層の構成および層厚は、本発明の全固体二次電池において説明した各層の構成および層厚と同じである。
電極シートは、本発明の、活物質を含有する固体電解質組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。
全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。なお、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれかの層が、本発明の固体電解質組成物を用いて形成されていればよい。以下詳述する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極層用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。さらに、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
固体電解質組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布およびバーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性と、非加圧でも良好なイオン伝導度を得ることができる。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒体をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒体が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布しても良いし、塗布乾燥プレスを同時および/または逐次行っても良い。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオおよびバックアップ電源が挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラおよび医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。さらに、各種軍需用または宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
無機固体電解質とは、上述した、ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラス、LLTおよびLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときにはこれを「電解質塩」又は「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)が挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。また、特に固体電解質組成物というときには、基本的に固体電解質層等を形成するための材料となる組成物(典型的にはペースト状)を指し、上記組成物を硬化して形成した電解質層等はこれに含まれないものとする。
<硫化物系無機固体電解質の合成>
−Li−P−S系ガラスの合成−
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(Li2S、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P2S5、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。なお、Li2SおよびP2S5の混合比は、モル比でLi2S:P2S5=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66個投入し、上記硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製の遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、温度25℃、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行い、黄色粉体の硫化物固体電解質(Li−P−S系ガラス)6.20gを得た。
<各組成物の調製>
(1)酸化物固体電解質組成物(SO−1)の調製
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、酸化物系無機固体電解質LLT(豊島製作所製)9.1g、バインダーとしてPVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(アルケマ(株)社製)0.8gを加え、分散媒体として、エチルメチルケトン20gを投入した。更に添加剤として例示化合物(P1−1)0.1gを添加した。その後、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合を続け、酸化物固体電解質組成物(SO−1)を調製した。
添加剤を下記表1に記載の構成に変えた以外は酸化物固体電解質組成物(SO−1)と同様にして、下記表1に記載の酸化物固体電解質組成物を調製した。また、添加剤を含有しない酸化物固体電解質組成物(eO−1)を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス9.3g、バインダーとしてPVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(アルケマ(株)社製)0.7gを加え、分散媒体としてヘプタン15.0g、更に添加剤として例示化合物(P1−1)0.1gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続け、硫化物固体電解質組成物(SS−1)を調製した。
添加剤および分散媒体を下記表2に記載の構成に変えた以外は硫化物固体電解質組成物(SS−1)と同様にして、下記表2に記載の硫化物固体電解質組成物を調製した。また、添加剤を含有しない硫化物固体電解質組成物(eS−1)および(eS−2)を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、酸化物系無機固体電解質LLT(豊島製作所製)1.9g、バインダーとしてPVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(アルケマ(株)社製)0.15gを加え、分散媒体としてエチルメチルケトン20gを投入した。更に添加剤として例示化合物(P1−1)0.1gを添加した。その後、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合を続けた後、活物質としてNMC(日本化学工業(株)製)7.9gを容器に投入し、更に遊星ボールミルを用いて、温度25℃、回転数200rpmで20分間攪拌を続け、正極用組成物(SOA−1)を調製した。
添加剤および正極活物質を下記表3に記載の構成に変えた以外は正極用組成物(SOA−1)と同様にして、下記表3に記載の正極用組成物を調製した。また、添加剤を含有しない正極用組成物(eOA−1)〜(eOA−3)を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチェ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス1.9g、添加剤として例示化合物(P1−1)0.001g、バインダーとしてPVdF−HFP 0.15gを加え、分散媒体としてトルエン20gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続けた後、活物質としてNMC(日本化学工業(株)製)7.9gを容器に投入し、更に遊星ボールミルを用いて、温度25℃、回転数200rpmで15分間攪拌を続け、正極用組成物(SSA−1)を調製した。
添加剤、正極活物質および分散媒体を下記表4に記載の構成に変えた以外は正極用組成物(SSA−1)と同様にして、下記表4に記載の正極用組成物を調製した。また、添加剤を含有しない正極用組成物(eSA−1)〜(eSA−3)を調製した。
300mL三口フラスコに、正極活物質としてNMC(日本化学工業(株)製)10g、添加剤として例示化合物(P1−1)0.06g、分散媒体としてテトラヒドロフラン90mlを投入し、2時間攪拌を行った。その後、分散媒体を留去し、真空乾燥を行うことで、例示化合物で修飾された正極活物質を得た。
正極用組成物(SSA−1)の調製において、正極活物質NMCに代えてこの修飾された正極活物質を用いた以外は、正極用組成物(SSA−1)と同様にして、正極用組成物(SSA’−1)を調製した。
例示化合物(P1−1)の代わりに(P2−1)または(P3−2)を用いた以外は正極用組成物(SSA’−1)と同様にして、正極用組成物(SSA’−2)および(SSA’−3)を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチェ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記で合成したLi−P−S系ガラス3.9g、バインダーとしてPVdF−HFP 0.2g、添加剤として例示化合物(P1−1)0.1gを加え、分散媒体としてヘプタン20gを投入した。その後、この容器を遊星ボールミルP−7(フリッチュ社製)にセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間攪拌を続けた後、活物質として黒鉛 5.9gを容器に投入し、更に遊星ボールミルを用いて、温度25℃、回転数200rpmで15分間攪拌を続け、負極用組成物(SSB−1)を調製した。
添加剤、負極活物質および分散媒体を下記表5に記載の構成に変えた以外は負極用組成物(SSB−1)と同様にして、下記表5に記載の負極用組成物を調製した。また、添加剤を含有しない負極用組成物(eSB−1)および(eSB−2)を調製した。
P1−1〜4、8、9および12、P2−1〜5ならびにP3−1〜3および9:上記含フッ素化合物の例示化合物
LLT:Li0.33La0.55TiO3(豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成した硫化物系無機固体電解質Li−P−S系ガラス
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2 ニッケルマンガンコバルト酸リチウム
LCO:LiCoO2 コバルト酸リチウム
NCA:LiNi0.85Co0.10Al0.05O2 ニッケルコバルトアルミニウムリチウム
PVdF−HFP(ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体(アルケマ(株)社製、商品名「KYNAR FLEX 2500−20」)
「−」:成分を含有していないことを示す。
−全固体二次電池用正極シートの作製−
上記で調製した正極用組成物を厚み20μmのアルミ箔(集電体)上に、アプリケーター(商品名 SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)により塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、正極用組成物を乾燥した。その後、ヒートプレス機を用いて、120℃加熱しながら加圧し(150MPa、1分)、正極活物質層/アルミ箔の積層構造を有する厚み110μmの全固体二次電池用正極シートを作製した。
上記で作製した全固体二次電池用正極シート上に、上記で調製した固体電解質組成物を、アプリケーター(商品名 SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)により塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに100℃で1時間加熱し、厚み50μmの固体電解質層を形成した。その後、上記で調製した負極用組成物をさらに塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間加熱し、厚み100μmの負極活物質層を形成した。負極活物質層上に厚み20μmの銅箔を合わせ、ヒートプレス機を用いて、120℃加熱しながら加圧し(500MPa、1分)、図1に示す層構造を有する全固体二次電池シートを作製した。
ここで、試験No.1−1〜1−29および2−1〜2−13が本発明の全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池であり、試験No.c1−1〜c1−5およびc2−1〜c2−4が比較の全固体二次電池用電極シートおよび全固体二次電池である。
上記作製した全固体二次電池(以下、単に「電池」とも称する。について、下記電池特性試験を行った。
上記で作製した電池を用い、30℃で充電電流値0.35mA、放電電流値0.7mAで4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。
その後、サイクル試験として、30℃環境下、充電および放電電流値0.7mAの条件で4.3V〜3.0Vの充放電を繰り返す試験を実施した。
このサイクル試験において、1サイクル目の放電容量を100%としたときの、放電容量が80%となるサイクル数を評価した。下記表6および7には、サイクル数を記載した。
この試験により、4.3V(高電位)で電池を稼動した際の固体電解質副反応に起因する電池劣化を観察することができる。
上記で作製した電池を用い、30℃で充電電流値0.35mA、放電電流値0.7mAで4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。この電池を用い、充電電流値0.35mA、放電電流値7mAで充放電を行い、放電容量を測定した。
その後、サイクル試験として60℃環境下、充電および放電電流値0.7mAの条件で、4.2V〜2.5Vの充放電を50回繰り返す試験を実施した。その後、充電電流値0.35mA、放電電流値7mAで充放電を行い、サイクル試験後の放電容量を測定した。
以下の計算式により、60℃サイクル試験前後での放電時容量維持率を評価した。下記表6および7には、放電容量維持率(%)を単位「%」を省略して記載した。
/サイクル試験前の2C電流値における放電容量×100
上記で作製した電池を用い、30℃で充電電流値0.35mA、放電電流値0.7mAで4.2V〜3.0Vの充放電を4回繰り返した。この電池を用い、充電電流値0.35mA、放電電流値7mAで充放電を行い、放電容量を測定した。
その後、サイクル試験として30℃環境下、充電および放電電流値0.7mAの条件で4.2V〜2.5Vの充放電を50回繰り返す試験を実施した。その後、充電電流値0.35mA、放電電流値7mAで充放電を行い、サイクル試験後の放電容量を測定した。
以下の計算式により、サイクル試験後での放電時容量維持率を評価した。下記表6および7には、放電容量維持率(%)を単位「%」を省略して記載した。
/サイクル試験前の2C電流値における放電容量×100
これに対して、全固体二次電池におけるいずれの層も、本発明に用いられる特定の含フッ素化合物を含有していない、No.c1−1〜c1−5およびc2−1〜c2−4の全固体二次電池は、4.2V、30℃での電池稼働にける抵抗上昇の抑制ならびに高電位稼働および高温稼働におけるサイクル特性のいずれも十分ではなかった。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 コインケース
12 全固体二次電池シート
13 電池特性試験用セル(コイン電池)
Claims (9)
- 周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記一般式(B1)〜(B3)のいずれかで表される含フッ素化合物とを含有する固体電解質組成物。
Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは周期律表第13族に属する金属元素のイオンを示し、nは1〜3の整数であり、nB1=nである。
上記一般式(B2)中、RB2はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはハロゲノ基を示す。ただし、RB2はフッ素原子を有する。
Mm+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたは周期律表第13族に属する金属元素のイオンを示し、mは1または2であり、nB2はnB2×m=2を満たす数である。
上記一般式(B3)中、RB3はアルキル基、アリール基またはハロゲノ基を示し、RB4は水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。ただし、RB3はフッ素原子を有する。 - 前記含フッ素化合物が前記一般式(B3)で表される請求項1に記載の固体電解質組成物。
- 電極活物質を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記電極活物質が正極活物質である請求項4に記載の固体電解質組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物の層を基材上または金属箔上に有する全固体二次電池用シート。
- 正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層を具備する全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層の少なくとも1つの層が請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物からなる層である全固体二次電池。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を基材上または金属箔上に配置し、これを製膜する全固体二次電池用シートの製造方法。
- 請求項8に記載の製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
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