以下、添付図面を参照して、放射線治療システム及び超音波診断装置の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、超音波診断装置によって収集される超音波画像を用いた画像誘導放射線治療(IGRT:image-guided radiotherapy)を行う放射線治療システムを一例に挙げて説明するが、実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、種々のIGRTシステムにて実施することが可能である。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例について説明する。図1は、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例を示す図である。例えば、放射線治療システム1は、図1に示すように、放射線治療計画用CT装置100と、放射線治療装置200と、超音波診断装置300とを有し、各装置が相互に接続される。放射線治療システム1においては、放射線治療装置200による放射線治療に先立ち、まず、放射線治療計画用CT装置100を用いて治療計画が立てられ、その後、放射線治療装置200よって治療計画に沿った放射線治療が実行される。
ここで、第1の実施形態に係る放射線治療システム1における治療計画では、放射線治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像に加えて、超音波診断装置300によって収集された超音波画像が用いられる。すなわち、放射線治療システム1においては、X線を用いた撮像では明瞭な画像が得られにくい前立腺などの軟部組織に生じた腫瘍も鮮明に確認することができるように、CT画像と超音波画像とがフュージョンされた重畳画像を用いて治療計画が立てられる。そして、放射線治療システム1では、放射線治療装置200が、治療計画に基づく放射線治療を実行する。ここで、第1の実施形態に係る放射線治療システム1においては、超音波診断装置200が、収集した超音波画像を用いて放射線治療の対象となる対象部位(以下、治療対象部位と記す)の移動状況を判定し、判定結果に応じて、放射線治療装置200による放射線の照射を制御する。
ここで、上述したようにCT画像と超音波画像との重畳画像を用いた治療計画と、超音波画像を用いたIGRTを実行するため、放射線治療システム1においては、放射線治療計画用CT装置100における座標系と、放射線治療装置200における座標系と、超音波診断装置300における座標系とが予め位置合わせされる。例えば、放射線治療システム1においては、放射線治療計画用CT装置100が設置された部屋、及び、放射線治療装置200が設置された各部屋に赤外線追跡装置がそれぞれ設置され、マーカーを備えたファントム及び超音波プローブと、各部屋に設置されたレーザー照準器を用いて、座標系の位置合わせが行われる。
すなわち、放射線治療計画用CT装置100における座標系と、超音波診断装置300における座標系とが位置合わせによって対応付けられることで、各装置によって収集されたCT画像と超音波画像とを正確に重畳させることができ、重畳画像を用いて治療計画を立てることができる。また、放射線治療装置200における座標系と、超音波診断装置300における座標系とが位置合わせによって対応付けられることで、放射線治療中のX線に対する治療対象部位の移動状況を超音波画像によって判定することができる。放射線治療システム1においては、各座標を対応付けた対応情報を各装置にて共有することができる。
次に、放射線治療システム1における各装置について説明する。放射線治療計画用CT装置100は、図1に示すように、架台110と、天板122を有する寝台装置と、制御用のコンソールとを備える。天板122は、体軸方向にスライド可能に寝台装置に支持され、被検体が載置される。図2は、第1の実施形態に係る放射線治療計画用CT装置100の構成の一例を示す図である。
架台110は、被検体P(患者)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール30に出力する装置であり、X線照射制御回路111と、X線発生装置112と、検出器113と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)114と、回転フレーム115と、架台駆動回路116とを有する。
回転フレーム115は、X線発生装置112と検出器113とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、架台駆動回路116によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。X線照射制御回路111は、高電圧発生部として、X線管112aに高電圧を供給する装置であり、X線管112aは、X線照射制御回路111から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御回路111は、スキャン制御回路133の制御により、X線管112aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
また、X線照射制御回路11は、ウェッジ112bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路111は、コリメータ112cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。X線発生装置112は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置であり、X線管112aと、ウェッジ112bと、コリメータ112cとを有する。
X線管112aは、図示しない高電圧発生部により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム115の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。ウェッジ112bは、X線管112aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ112bは、X線管112aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管112aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。なお、ウェッジは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ112cは、X線照射制御回路11の制御により、ウェッジ112bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。架台駆動回路116は、回転フレーム115を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置112と検出器113とを旋回させる。検出器113は、被検体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被検体Pの体軸方向(図2に示すZ軸方向)に沿って複数列配列される。
データ収集回路114は、DASであり、X線検出器113が検出したX線の検出データから、投影データを収集する。例えば、データ収集回路114は、検出器113により検出されたX線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なって投影データを生成し、生成した投影データをコンソール130に送信する。例えば、回転フレーム115の回転中に、X線管112aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路114は、全周囲分(360度分)の投影データ群を収集する。また、データ収集回路14は、収集した各投影データに管球位置を対応付けて、コンソール30に送信する。管球位置は、投影データの投影方向を示す情報となる。
寝台装置120は、被検体Pを載せる装置であり、寝台駆動装置121と、天板122とを有する。寝台駆動装置121は、天板122をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム115内に移動させる。天板122は、被検体Pが載置される板である。
コンソール130は、操作者による放射線治療計画用CT装置100の操作を受け付けるとともに、架台110によって収集された投影データを用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール130は、図2に示すように、入力回路131と、ディスプレイ132と、スキャン制御回路133と、前処理回路134と、記憶回路135と、画像再構成回路136と、処理回路137とを有する。
入力回路131は、放射線治療用CT装置100の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路137に転送する。ディスプレイ132は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路137による制御のもと、X線CT画像データから生成されたCT画像を操作者に表示したり、入力回路131を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
スキャン制御回路133は、処理回路137による制御のもと、X線照射制御回路111、架台駆動回路116、データ収集回路114及び寝台駆動装置121の動作を制御することで、架台110における投影データの収集処理を制御する。具体的には、スキャン制御回路133は、放射線治療計画用のCT画像を収集する撮影における投影データの収集処理を制御する。
前処理回路134は、データ収集回路114によって生成された投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成して、記憶回路35に格納する。記憶回路135は、前処理回路134により生成された投影データを記憶する。また、記憶回路135は、画像再構成回路136によって生成された画像データを記憶する。
画像再構成回路136は、記憶回路135が記憶する投影データを用いてX線CT画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。ここで、再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。或いは、画像再構成回路136は、逐次近似法を用いて、X線CT画像データを再構成することもできる。また、画像再構成回路136は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行うことで、CT画像を生成する。そして、画像再構成回路136は、再構成したX線CT画像データや、各種画像処理により生成したCT画像を記憶回路135に格納する。
処理回路137は、架台110、寝台装置120及びコンソール130の動作を制御することによって、放射線治療計画用CT装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路137は、スキャン制御回路133を制御することで、架台110で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路137は、画像再構成回路136を制御することで、コンソール130における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路137は、記憶回路135が記憶する各種画像データを、ディスプレイ132に表示するように制御する。
また、処理回路137は、超音波診断装置300から超音波画像を受け付け、各座標を対応付けた対応情報に基づいて、CT画像と超音波画像とをフュージョンした重畳画像をディスプレイ132に表示させる。操作者は、ディスプレイ132に表示された重畳画像を参照して、入力回路131を介して治療対象部位や、放射線に対する感受性が高く放射線が照射されないようにすべき臓器などの輪郭を指定する。処理回路137は、指定された輪郭に基づいて、治療対象部位の3次元的な形状、位置、指定された臓器との位置関係などを解析し、解析結果に基づいて、治療に用いる放射線の線質、入射方向、照射野、線量、照射回数などを含む治療計画を決定する。そして、処理回路137は、決定した治療計画を放射線治療装置200に転送する。
なお、図2に示す各回路によって実現される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路135に記録されている。また、各回路は、各プログラムを記憶回路135から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。
図1に戻って、放射線治療装置200は、図1に示すように、回転ガントリ機構270と、天板250を有する寝台装置と、治療用の放射線を照射する放射線発生器232と、放射線絞り器233とを有し、放射線治療計画用CT装置100から転送された治療計画に沿って、治療対象部位に対して放射線を照射する。ここで、第1の実施形態に係る放射線治療装置200は、図1に示すように、撮像用の放射線を照射する放射線発生器271と、撮像用の放射線を検出する検出器272をさらに備え、位置合わせ用のコーンビームCT画像を生成することもできる。
例えば、放射線治療の前に、回転ガントリ機構270を一回転させて、その間に放射線発生器271により放射線を被検体に照射し続け、被検体を透過した放射線が検出器272によって受容される。これにより、様々な方向からの被検体の透視画像(2次元画像)が生成される。そして、生成された複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像が再構成され、ディスプレイ220に表示される。これにより、放射線治療時の治療対象部位の位置を確認することができる。なお、放射線発生器271及び検出器272は、放射線治療時の治療対象部位の位置の確認に用いることも可能である。すなわち、放射線発生器232によって治療用の放射線が照射されている間に、放射線発生器271が放射線を被検体に照射し続けてX線画像を生成することで、治療時の治療対象部位の位置を確認することができる。
図3は、第1の実施形態に係る放射線治療装置200の構成の一例を示す図である。図3に示すように、放射線治療装置200は、入力回路210と、ディスプレイ220と、放射線発生装置230と、移動機構240と、天板250と、システム制御回路260とを有する。放射線発生装置230は、放射線制御回路231と、放射線発生器232と、放射線絞り器233とを有する。放射線制御回路231は、システム制御回路260による制御のもと、治療計画に沿った放射線量の放射線を照射するように、放射線発生器232の高電圧発生器における印加電圧や印加時間等を制御する。放射線発生器232は、図示しない電子銃と加速管を備える。加速管は、電子銃から発生した熱電子を加速し、タングステンターゲットに衝突させて治療用の放射線を放射する。放射線絞り器233は、治療用の放射線の照射範囲を設定する複数の絞り羽根を有する。例えば、放射線絞り器233は、絞り移動機構241によってこれらの絞り羽根を移動させることで被検体の治療対象部位に対応した形状を有する放射線照射領域を形成する。
移動機構240は、絞り移動機構241と、機構制御回路242と、天板移動機構243とを有する。絞り移動機構241は、機構制御回路242による制御のもと放射線絞り器233の絞り羽根を移動させる。天板移動機構243は、機構制御回路による制御のもと、天板250を移動させる。機構制御回路242は、システム制御回路260による制御のもと、絞り羽根移動制御信号を絞り移動機構241に送信することにより絞り羽根を移動させる。また、機構制御回路242は、天板移動制御信号を天板移動機構242へ送信することにより、天板250を移動させる。
入力回路210は、放射線治療装置200の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御回路260に転送する。ディスプレイ220は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御回路220による制御のもと、コーンビームCT画像を操作者に表示したり、入力回路210を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUIを表示したりする。
システム制御回路260は、回転ガントリ機構270、放射線発生装置230、移動機構240の動作を制御することによって、放射線治療装置200の全体制御を行う。具体的には、システム制御回路260は、放射線治療計画用CT装置100から受信した治療計画に基づいて、放射線制御回路231を制御することで、被検体への放射線の放射を制御する。また、システム制御回路260は、治療計画に基づいて、機構制御回路242を制御することで、天板の位置を制御する。また、システム制御回路260は、コーンビームCT画像やGUIを、ディスプレイ220に表示するように制御する。ここで、放射線治療装置200においては、図示しない記憶回路を有し、放射線治療計画用CT装置100から転送された治療計画を記憶回路に記憶する。そして、システム制御回路260は、記憶回路から治療計画を読み出して、上述した制御を実行する。
また、システム制御回路260は、超音波診断装置300から受信した信号に基づいて、放射線発生装置230及び移動機構240の動作を制御する。具体的には、システム制御回路260は、超音波診断装置300から受信した信号に基づいて、放射線の照射及び天板の位置を制御する。
なお、図3に示す各回路によって実現される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で図示しない記憶回路に記録されている。また、各回路は、各プログラムを図示しない記憶回路から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。
図1に戻って、超音波診断装置300は、被検体を3次元で走査可能な超音波プローブ310を有し、放射線治療計画時及び放射線治療時に超音波画像を収集して、収集した超音波画像を放射線治療計画用CT装置100に転送したり、収集した超音波画像を用いて治療対象部位の移動状況を判定して、判定結果に基づいて放射線治療装置200を制御したりする。ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置300においては、例えば、治療対象部位が前立腺の場合、図1に示すような、天板上に安定して載置可能な超音波プローブ310を用いることができる。
図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置300は、超音波プローブ310と、装置本体340と、入力回路320と、ディスプレイ330とを有する。
超音波プローブ310は、装置本体340との間で信号を送受信するためのケーブルや無線通信回路を有し、コネクタなどによる有線或いは無線によって装置本体340と接続される。例えば、超音波プローブ310は、複数の超音波振動子を有し、これら複数の超音波振動子が、送受信回路341から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ340は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ340は、超音波振動子に設けられる整合層と、超音波振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
例えば、超音波プローブ310から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ310が有する複数の超音波振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
ここで、超音波プローブ310は、複数の超音波振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2Dプローブである。或いは、超音波プローブ310は、一列に配置された複数の圧電振動子により、被検体Pを2次元で走査するとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブである。
なお、第1の実施形態に係る超音波プローブ310は、放射線治療システムの各装置における座標系を対応付けるため、放射線治療計画用CT装置100が設置された部屋及び放射線治療装置200が設置された部屋にそれぞれ設置された赤外線追跡装置から発せられた赤外線を反射するマーカーを有する。また、超音波プローブ310は、図1に示す形態の超音波プローブだけではなく、操作者によって把持される形態の超音波プローブであってもよい。
入力回路320は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置300の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体340に対して受け付けた各種設定要求を転送する。ディスプレイ330は、超音波診断装置300の操作者が入力回路320を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したり、装置本体340において生成された各種画像データ等を表示したりする。
装置本体340は、図4に示すように、送受信回路341と、Bモード処理回路342と、ドプラ処理回路343と、画像メモリ344と、記憶回路345と、処理回路346とを有する。送受信回路341は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な超音波振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波振動子に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、超音波振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路341は、処理回路346の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬時にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路341は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波振動子が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。なお、送受信回路341からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
Bモード処理回路342は、送受信回路341から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。ドプラ処理回路343は、送受信回路341から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
なお、第1の実施形態に係るBモード処理回路342及びドプラ処理回路343は、3次元の反射波データについて処理可能である。すなわち、Bモード処理回路342は、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路343は、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
画像メモリ344は、処理回路346が生成した画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ344は、Bモード処理回路342やドプラ処理回路343が生成したデータを記憶することも可能である。記憶回路345は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラム等の各種データを記憶する。また、記憶回路345は、必要に応じて、画像メモリ344が記憶する画像データの保管等にも使用される。
処理回路346は、超音波診断装置300の処理全体を制御する。具体的には、処理回路346は、図4に示す設定機能346a及び制御機能346bに対応するプログラムを記憶回路345から読み出して実行することで、種々の処理を行う。例えば、制御機能346bは、Bモード処理回路342及びドプラ処理回路343が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、制御機能346bは、Bモード処理回路342が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、制御機能346bは、ドプラ処理回路343が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
ここで、制御機能346bは、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、制御機能346bは、超音波プローブ310による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、超音波画像を生成する。また、制御機能346bは、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。
更に、制御機能346bは、Bモード処理回路342が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、制御機能346bは、ドプラ処理回路343が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。3次元Bモードデータ及び3次元ドプラ画像データは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータとなる。
更に、制御機能346bは、ボリュームデータをディスプレイ330にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して種々のレンダリング処理を行なう。また、制御機能346bは、上述した装置全体における種々の制御を実行する。例えば、制御機能346bは、入力回路320を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路345から読込んだ各種データに基づき、送受信回路341、Bモード処理回路342、ドプラ処理回路343の処理を制御する。また、制御機能346bは、画像メモリ344や記憶部345が記憶する表示用の超音波画像をディスプレイ320にて表示するように制御する。なお、設定機能346aによる処理及び制御機能346bによるその他の処理については、後に詳述する。
図4に示す各回路によって実現される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で図示しない記憶回路に記録されている。また、各回路は、各プログラムを図示しない記憶回路から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。また、図4に示す設定機能346aは、特許請求の範囲における設定部に対応する。また、図4に示す制御機能346bは、特許請求項の範囲における制御部に対応する。
なお、上述した放射線治療計画用CT装置100、放射線治療装置200及び超音波診断装置300の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
以上、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る放射線治療システム1においては、超音波診断装置300における設定機能346a及び制御機能346bによる処理により、放射線治療における被検体の負荷を低減することを可能にする。以下、前立腺に生じた腫瘍に対する放射線治療を一例に挙げて説明する。
まず、第1の実施形態に係る放射線治療システム1における前立腺に生じた腫瘍に対する放射線治療の一例について、図5A及び図5Bを用いて説明する。図5A及び図5Bは、第1の実施形態に係る放射線治療の一例を説明するための図である。例えば、第1の実施形態に係る放射線治療システム1における前立腺の腫瘍に対する放射線治療は、図5Aに示すように、放射線治療装置200の天板上に載置された超音波プローブ310が、放射線治療中の被検体Pの治療対象部位を走査し続けることで、超音波画像が生成される。そして、放射線治療システム1では、超音波診断装置300が、生成した超音波画像を用いて、治療中の治療対象部位の移動状況を判定する。すなわち、超音波診断装置300は、図5Bに示すように、治療計画によって設定された放射線を照射する領域である計画標的体積(PTV:planning target volume)を走査し続けて超音波画像を生成し、生成した超音波画像を用いて治療対象部位の移動状況を判定する。
ここで、放射線治療システム1においては、PTVに含まれる肉眼的腫瘍体積(GTV:gross tumor volume)の周囲に許容範囲を設定し、GTVが許容範囲を超えたか否か、そして、超えた場合にはどの程度超えたかが判定される。図6A及び図6Bは、第1の実施形態に係る移動状況の判定処理を説明するための図である。例えば、放射線治療システム1における治療計画では、図6Aに示すように、CT画像と超音波画像の重畳画像において、腫瘍の進展や存在が肉眼的に確認できる3次元領域としてGTVが抽出される。そして、治療計画では、抽出したGTVと、肉眼的には確認できないが潜在的な腫瘍領域とをそれぞれ含む臨床的標的体積(CTV:clinical target volume)が設定される。さらに、治療計画では、CTVが生理的な動きに伴って位置が変化することを考慮して、CTVの外側にマージンを付加したPTVが設定される。
このように、治療計画にてGTVが抽出されて、PTVが設定されると、放射線治療システム1においては、図6Bに示すように、GTVの周囲に許容範囲が設定される。ここで、許容範囲の設定は、治療対象部位の種類や治療内容に応じて、操作者によって設定される。超音波診断装置300は、このように設定された許容範囲に対するGTVの移動状況を判定する。そして、例えば、GTVが許容範囲から超えた場合に、超音波診断装置300は、警告を発したり、放射線治療装置200に対して制御信号を送信することで、放射線の照射を停止したりする。
このような、治療対象部位の移動状況の判定において、従来技術では、許容範囲の設定のされ方によって、放射線の照射が停止されやすくなり、放射線治療にかかる時間が長くなる場合があった。例えば、従来の許容範囲の設定は、放射線治療計画用CT装置100で治療計画を立てた後、治療計画に用いられた超音波画像を参照して行われている。すなわち、従来においては、静止画像で抽出されたGTVに対して許容範囲が設定されるため、実際のGTVの動きが考慮されておらず、設定されるタイミングによってはGTVが許容範囲を超えやすくなってしまう場合があった。
図7A及び図7Bは、従来技術に係る課題を説明するための図である。例えば、図7Aに示すように、PTVの範囲内でGTVが左右に動いており、図7Bの左側の図に示すように、動きが左端にある際のGTVを参照して許容範囲が設定されると、GTVが許容範囲を超えやすくなってしまう。すなわち、図7Bの右側の図に示すように、GTVが右側に動くたびに許容範囲を大きく超えてしまうこととなり、放射線の照射が停止されやすくなってしまう。
そこで、第1の実施形態に係る放射線治療システム1では、超音波診断装置300が放射線治療直前の被検体から治療対象部位の動画像を収集してGTVの動きを観察し、観察結果に基づいて許容範囲を設定することで、GTVが許容範囲を大きく超えることを抑止して、放射線の照射を停止しにくくすることで、放射線治療に係る時間を短縮して被検体に係る負荷を低減させる。
具体的には、超音波診断装置300における設定機能346aは、放射線が治療対象部位に照射される前に撮像された所定時間の当該対象部位の動画像を用いて、放射線の照射範囲内に所定の範囲(許容範囲)を設定する。より具体的には、設定機能346aは、所定時間内の各時間における治療対象部位の重心の位置に基づいて、所定時間における治療対象部位の平均重心位置を算出し、算出した平均重心位置に基づいて許容範囲を設定する。ここで、所定時間は、対象部位に対する放射線の照射時間である。
図8は、第1の実施形態に係る設定機能346aによる設定処理を説明するための図である。例えば、超音波診断装置300は、放射線治療装置200の天板250に横臥した治療直前の被検体の前立腺を走査して動画像を収集する。一例を挙げると、超音波診断装置300は、図8(A)に示すように、放射線治療の時間と同じ1分間の動画像を収集する。ここで、許容範囲の設定に用いられる動画像のフレーム数は任意に選択することができ、例えば、画像メモリ344の容量に応じて決定される場合であってもよい。
例えば、設定機能346aは、所定のフレームレートで収集された動画像の中から、10フレームごとに1フレーム抽出して画像メモリ344に格納する。設定機能346aは、画像メモリ344に格納した複数のフレームを読み出し、各フレームからGTVをそれぞれ抽出して、各GTVの重心の位置を算出する。そして、設定機能346aは、図8(B)に示すように、算出した各GTVの重心の位置を平均した平均重心位置を算出することで、平均重心位置を有する平均腫瘍位置を推定する。
このように、動画像の各フレームに含まれるGTVの重心の位置を平均した平均重心位置を用いることで、治療対象部位が各位置に留まる時間も考慮した平均腫瘍位置を推定することができる。例えば、前立腺に生じた腫瘍は、規則的に動くわけではなく、不規則な動きを示す。すなわち、前立腺に生じた腫瘍は、1分間の動きの中で、ある位置には長く留まるが、別の位置では非常に短い時間しか留まらないという場合が多い。そこで、上述したように、収集したフレーム全てのGTVの重心の位置を平均することで、各位置における腫瘍の滞在時間を考慮した平均腫瘍位置を推定することができる。
なお、平均腫瘍位置の推定には、上述したように滞在時間を考慮した平均腫瘍位置だけではなく、単にGTVの位置を平均したものが用いられてもよい。すなわち、各フレームにおいて、同一位置にあるGTVの位置を複数用いることなく、平均した平均腫瘍位置が用いられる場合であってもよい。
そして、設定機能346aは、図8(C)に示すように、推定した平均腫瘍位置に対して許容範囲を設定する。このように、平均腫瘍位置を用いて許容範囲を設定することにより、GTVが許容範囲から大きく外れることを抑止することができる。制御機能346bは、治療対象部位に対する放射線の照射中に、許容範囲に対する治療対象部位の移動状況に応じて、放射線の照射を制御する。すなわち、設定機能346aによって許容範囲が設定されると、制御機能346bは、PTVに対する放射線の照射を開始する。そして、制御機能346bは、設定機能346aによって設定された許容範囲に対するGTVの移動状況を判定して、GTVが許容範囲を超えた場合に、警告を発するように放射線治療装置200を制御する。また、制御機能346bは、GTVが許容範囲を大きく超えた場合に、放射線の照射を停止するための制御信号を放射線治療装置200に送信する。
ここで、第1の実施形態に係る放射線治療システム1では、設定機能346aによって推定された平均腫瘍位置を用いて放射線の照射位置を補正することで、腫瘍が治療計画通りに照射される時間が最大限にすることも可能である。具体的には、制御機能346bは、平均重心位置が放射線の照射範囲の中心に位置するように、被検体の位置を移動させる。例えば、制御機能346bは、放射線の照射方向において、平均腫瘍位置の平均重心位置と、PTVの重心とが一致するように天板250を移動させる制御信号を放射線治療装置200に対して送信する。放射線治療装置200のシステム制御回路260は、超音波診断装置300から制御信号を受信すると、制御信号に基づいて、天板250を移動させるように制御する。
また、第1の実施形態に係る放射線治療システム1では、設定機能346aによって推定された平均腫瘍位置を用いて治療計画を再計算することも可能である。すなわち、制御機能346bは、推定した平均腫瘍位置の情報(例えば、平均重心位置の座標)を放射線治療計画用CT装置100に送信することで、治療計画を再計算させる。放射線治療計画用CT装置100の処理回路137は、平均腫瘍位置の情報を受信すると、受信した情報に基づいて、治療計画を再計算する。このとき、実際の治療対象部位の移動状況を考慮した治療計画を立てることができることから、放射線の照射領域であるPTVを小さくすることも可能となり、被検体の被曝量を低減して、放射線治療における負担を低減させることも可能である。
ここで、治療計画の再計算が実行されて放射線の照射方向などが変化した場合、超音波診断装置300は、変更後の照射方向におけるGTVの平均腫瘍位置を推定して、許容範囲を再設定することも可能である。
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の処理について説明する。図9は、第1の実施形態に係る放射線治療システム1による処理の手順を示すフローチャートである。ここで、図9に示すステップS101、ステップS106及びステップS107は、処理回路346が記憶回路345から制御機能346bに対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、図9に示すステップS102〜ステップS105は、処理回路346が記憶回路345から設定機能346aに対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。
ステップS101では、処理回路346が、3次元の超音波画像を動画像で収集する(ステップS101)。ステップS102では、処理回路346が、規定時間中の3次元画像を予め設定された周期で画像メモリ344に格納する。ステップS103では、処理回路346が、格納された3次元画像を読み出し、平均重心位置を算出する。ステップS104では、処理回路346が、算出した平均重心位置を有する平均腫瘍位置を推定する。
ステップS105では、処理回路346が、推定した平均腫瘍位置に対する許容範囲を設定する。ステップS106では、処理回路346が、腫瘍が計画通りに照射される時間が最大限になる天板250の移動方向を算出する。ステップS107では、処理回路346が、算出した方向に天板250を移動させるように、制御信号を放射線治療装置200に送信する。
上述したように、第1の実施形態によれば、放射線発生装置230が治療対象部位に対して放射線を照射する。設定機能346aが、放射線が治療対象部位に照射される前に撮像された所定時間の治療対象部位の動画像を用いて、放射線の照射範囲内に許容範囲を設定する。制御機能346bが、治療対象部位に対する放射線の照射中に、許容範囲に対する治療対象部位の移動状況に応じて、放射線の照射を制御する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療システム1は、放射線治療中に治療対象部位が許容範囲から大きく外れることを抑止することができ、放射線治療中の被検体の負荷を低減することができる。
また、第1の実施形態によれば、設定機能346aは、所定時間内の各時間における治療対象部位の重心の位置に基づいて、所定時間における治療対象部位の平均重心位置を算出し、算出した平均重心位置に基づいて許容範囲を設定する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療システム1は、GTVが許容範囲から外れる時間を短縮することができ、被検体にかかる負担を低減することができる。
また、第1の実施形態によれば、制御機能346bは、平均重心位置が放射線の照射範囲の中心に位置するように、被検体の位置を移動させる。従って、第1の実施形態に係る放射線治療システム1は、GTVが許容範囲から外れる時間を最短にすることができ、被検体にかかる負担をさらに低減することができる。
また、第1の実施形態によれば、制御機能346bは、被検体の位置を移動させた後、放射線の照射範囲を再計算する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療システム1は、PTVを小さくすることも可能となり、被検体の被曝量を低減することができる。
また、第1の実施形態によれば、所定時間は、前記対象部位に対する前記放射線の照射時間である。従って、第1の実施形態に係る放射線治療システム1は、放射線の照射時間における治療対象部位の動きから平均腫瘍位置を推定することができ、適切な推定を行うことができる。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した第1の実施形態においては、放射線治療計画用CT装置100が治療計画を立てる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線治療計画装置としてのワークステーションが、図1に示す放射線治療システム1に接続されて、放射線治療計画用CT装置100と超音波診断装置300とからそれぞれCT画像と超音波画像とを受信して、治療計画を立てる場合であってもよい。かかる場合には、超音波診断装置300の制御機能346bから送信される治療計画の再計算に係る制御信号は、ワークステーションに対して送信される。
また、上述した第1の実施形態では、超音波診断装置300が、所定時間の超音波画像の動画像を用いて許容範囲を設定し、放射線治療計画用CT装置100や放射線治療装置200を制御する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、放射線治療システム1に含まれるいずれの装置が制御する場合であってもよい。ここで、上述した設定機能と制御機能とが同一の装置によって実行されてもよく、異なる装置で実行される場合であってもよい。
また、第1の実施形態では、IGRTとして超音波画像が用いられる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、MRI装置が放射線治療システム1に含まれ、MRI装置によって収集されたMR画像を用いてIGRTが実行される場合であってもよい。
また、第1の実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、第1の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、放射線治療における被検体の負荷を低減することを可能にする。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。