図1は、本発明の実施例に係る道路機械(舗装機械)の一例であるアスファルトフィニッシャ100の図である。具体的には、図1(A)は左側面図であり、図1(B)は上面図である。
アスファルトフィニッシャ100は、主に、トラクタ1、ホッパ2、及びスクリード3で構成される。
トラクタ1はアスファルトフィニッシャ100を走行させるための機構である。本実施例では、トラクタ1は走行用油圧モータを用いて走行体としての前輪4及び後輪5を回転させてアスファルトフィニッシャ100を移動させる。走行体はクローラであってもよい。走行用油圧モータは、エンジン6によって駆動される油圧ポンプから作動油の供給を受けて回転する。トラクタ1には、エンジン6、排気ガス処理装置7、燃料タンク8、尿素水タンク9、コントローラ30、モニタ77等が搭載される。
エンジン6及び排気ガス処理装置7はエンジン室に設置される。エンジン室はトラクタ1の+X側(前側)部分に形成されている。本実施例では、エンジン室において、エンジン6が−Y側(左側)に配置され、排気ガス処理装置7がエンジン6の+Y側(右側)に隣接して配置される。
エンジン室は、ハッチングで示すエンジンフード1aによってその上面が部分的に覆われ、外装カバー1bによってその側面が覆われている。エンジン6及び排気ガス処理装置7はエンジンフード1a内に配置される。エンジンフード1aは開閉可能に構成され、その表面に通気孔が形成されている。外装カバー1bは開閉不能又は開閉可能に構成され、その表面に通気孔が形成されている。本実施例では、エンジンフード1aはその一部がパンチングメタルで構成され、別の一部に通気ルーバを有する。外装カバー1bは通気ルーバを有する。
燃料タンク8及び尿素水タンク9はタンク室内に設置される。タンク室はトラクタ1の+X側(前側)部分で且つエンジン室の−Z側(下側)に形成されている。本実施例では、タンク室において、燃料タンク8及び尿素水タンク9は−Y側(左側)に配置され、尿素水タンク9は燃料タンク8の−X側(後側)に隣接して配置される。そのため、尿素水タンク9は上面視で後輪5と燃料タンク8との間に配置される。
ホッパ2は舗装材を受け入れるための機構である。本実施例では、ホッパシリンダ2aによってY軸方向(車幅方向)に開閉できるように構成される。アスファルトフィニッシャ100は、通常、ホッパ2を全開状態にして舗装材運搬車両としてのダンプトラックの荷台から舗装材(例えばアスファルト合材である。)を受け入れる。ホッパ2内に受け入れられた舗装材はコンベア10及びスクリュ11を用いてスクリード3に給送される。
コンベア10は、ホッパ2内の舗装材をトラクタ1の−X側(後側)へ搬送する。スクリュ11は、コンベア10によって搬送されて路面上に撒かれた舗装材をY軸方向(車幅方向)に敷き拡げる。
スクリード3は舗装材を敷き均すための機構である。本実施例では、スクリード3はトラクタ1によって牽引される浮動スクリードであり、レベリングアーム3aを介してトラクタ1と連結される。レベリングアーム3aは、レベリングシリンダ3bによって上下動される。
レベリングシリンダ3bは、アスファルトの施工厚さを調整するためにレベリングアーム3aを上下動させる油圧アクチュエータである。本実施例では、レベリングシリンダ3bは、シリンダがトラクタ1に連結され、ロッドがレベリングアーム3aのトラクタ1との枢着部に連結される。また、施工厚さを増大させる場合、コントローラ30は、油圧源が吐出する作動油をレベリングシリンダ3bのロッド側油室内に流入させ、レベリングシリンダ3bを収縮させてレベリングアーム3aを上昇させる。一方、施工厚さを低減させる場合、コントローラ30は、レベリングシリンダ3bのロッド側油室内の作動油を流出させ、レベリングシリンダ3bを伸張させてレベリングアーム3aを下降させる。
コントローラ30は、アスファルトフィニッシャ100を制御する制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。そして、コントローラ30の各種機能は、内部メモリに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
次に、図2を参照し、図1のアスファルトフィニッシャ100に搭載される油圧システムについて説明する。なお、図2は、図1のアスファルトフィニッシャ100に搭載される油圧システムの構成例を示す油圧回路図である。
油圧システムは、主に、油圧源14、後輪駆動部F1、及びコンベア・スクリュ駆動部F2を含む。
油圧源14は、後輪駆動部F1及びコンベア・スクリュ駆動部F2を含む各種油圧駆動部を動作させる作動油を供給する機能要素である。本実施例では、油圧源14は、主に、エンジン6、後輪走行用ポンプ14R、チャージポンプ14C、シリンダ用ポンプ14M、及びコンベア・スクリュ用ポンプ14Sを含む。
エンジン6は、後輪走行用ポンプ14R、チャージポンプ14C、シリンダ用ポンプ14M、及びコンベア・スクリュ用ポンプ14Sを駆動する駆動源である。
後輪走行用ポンプ14Rは、後輪駆動部F1に駆動用の作動油を供給する可変容量型油圧ポンプである。本実施例では、後輪走行用ポンプ14Rは、閉回路(HST)で用いられる斜板式可変容量型の双方向油圧ポンプであり、ポンプレギュレータ15によってその吐出量が制御される。なお、吐出量は、厳密にはポンプ一回転当たりの吐出量であり、押し退け容積とも称する。後輪走行用ポンプ14Rは、固定容量型油圧ポンプであってもよい。
ポンプレギュレータ15は、後輪走行用ポンプ14Rの吐出量を制御する装置である。本実施例では、ポンプレギュレータ15は、コントローラ30からのポンプ指令電流に応じて後輪走行用ポンプ14Rの吐出量を調整する。例えば、ポンプ指令電流の電流値が大きいほど後輪走行用ポンプ14Rの吐出量を大きくする。
チャージポンプ14Cは、後輪駆動部F1に制御用の作動油を供給する固定容量型の油圧ポンプである。
コンベア・スクリュ用ポンプ14Sは、コンベア・スクリュ駆動部F2に作動油を供給する可変容量型油圧ポンプである。本実施例では、コンベア・スクリュ用ポンプ14Sは、斜板式可変容量型の油圧ポンプである。本実施例では、コンベア・スクリュ用ポンプ14Sは、ポンプレギュレータ15Aによってその吐出量が制御される。ポンプレギュレータ15Aは、コントローラ30からのポンプ指令電流に応じてコンベア・スクリュ用ポンプ14Sの吐出量を調整する。例えば、ポンプ指令電流の電流値が大きいほどコンベア・スクリュ用ポンプ14Sの吐出量を大きくする。コンベア・スクリュ用ポンプ14Sは、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
シリンダ用ポンプ14Mは、ホッパシリンダ2a、レベリングシリンダ3b等の油圧アクチュエータに作動油を供給する可変容量型油圧ポンプである。本実施例では、シリンダ用ポンプ14Mは、斜板式可変容量型の油圧ポンプであり、吐出圧が所定圧で一定となるようにその吐出量が制御される。ポンプレギュレータ15Bは、コントローラ30からのポンプ指令電流に応じてシリンダ用ポンプ14Mの吐出量を調整する。例えば、ポンプ指令電流の電流値が大きいほどシリンダ用ポンプ14Mの吐出量を大きくする。シリンダ用ポンプ14Mは、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
後輪駆動部F1は、後輪5L、5Rを駆動する機能要素である。本実施例では、後輪駆動部F1は、左後輪走行用モータ20L、右後輪走行用モータ20R、チェック弁20La、20Ra、リリーフ弁20Lb、20Rb、減速比制御装置21L、21R、及びブレーキ制御装置22L、22Rを含む。
左後輪走行用モータ20Lは左側の後輪5Lを駆動する油圧モータである。また、右後輪走行用モータ20Rは右側の後輪5Rを駆動する油圧モータである。本実施例では、左後輪走行用モータ20L及び右後輪走行用モータ20Rは可変容量型油圧モータであり、後輪走行用ポンプ14Rと共に閉回路(HST)を形成する。なお、左後輪走行用モータ20L及び右後輪走行用モータ20Rは固定容量型油圧モータであってもよい。
チェック弁20Laは、後輪走行用ポンプ14Rの第1ポートと左後輪走行用モータ20L及び右後輪走行用モータ20Rのそれぞれの第2ポートとを繋ぐ管路C1内の作動油の圧力を所定圧力以上に維持する。具体的には、チェック弁20Laは、管路C1内の作動油の圧力がチャージポンプ14Cの吐出圧を下回った場合にチャージポンプ14Cが吐出する作動油を管路C1内に流入させる。なお、図中の括弧内の数字はポート番号を表す。同様に、チェック弁20Raは、後輪走行用ポンプ14Rの第2ポートと左後輪走行用モータ20L及び右後輪走行用モータ20Rのそれぞれの第1ポートとを繋ぐ管路C2内の作動油の圧力を所定圧力以上に維持する。具体的には、チェック弁20Raは、管路C2内の作動油の圧力がチャージポンプ14Cの吐出圧を下回った場合にチャージポンプ14Cが吐出する作動油を管路C2内に流入させる。
リリーフ弁20Lbは、管路C1内の作動油の圧力を所定のリリーフ圧未満に維持する。具体的には、リリーフ弁20Lbは、管路C1内の作動油の圧力がリリーフ圧を上回った場合に管路C1内の作動油を閉回路外に流出させる。同様に、リリーフ弁20Rbは、管路C2内の作動油の圧力を所定のリリーフ圧未満に維持する。具体的には、リリーフ弁20Rbは、管路C2内の作動油の圧力がリリーフ圧を上回った場合に管路C2内の作動油を閉回路外に流出させる。
減速比制御装置21Lは左後輪走行用モータ20Lに連結された減速機の減速比を制御する装置である。本実施例では、減速比制御装置21Lは、コントローラ30からの制御指令に応じ、チャージポンプ14Cが吐出する作動油を利用して左後輪走行用モータ20Lに連結された減速機の減速比を調整する。右後輪走行用モータ20Rに連結された減速機の減速比を調整する減速比制御装置21Rについても同様である。
ブレーキ制御装置22Lは、アスファルトフィニッシャ100の左側の後輪5Lを制動する左後輪用ブレーキの制動力を制御する装置である。本実施例では、ブレーキ制御装置22Lは、コントローラ30からの制御指令に応じ、チャージポンプ14Cが吐出する作動油を利用して左後輪用ブレーキの制動力を調整する。右後輪用ブレーキの制動力を調整するブレーキ制御装置22Rについても同様である。
コンベア・スクリュ駆動部F2は、コンベア及びスクリュを駆動する機能要素である。本実施例では、コンベア・スクリュ駆動部F2は、主に、制御弁41、左スクリュモータ42SL、右スクリュモータ42SR、左コンベアモータ42CL、右コンベアモータ42CR、及び発電機用モータ42Gを含む。
左スクリュモータ42SL、右スクリュモータ42SRは、スクリュ11を回転駆動する。左コンベアモータ42CL、右コンベアモータ42CRは、コンベア10を回転駆動する。発電機用モータ42Gは、発電機43を回転駆動する。発電機43は、アスファルトフィニッシャ100の要加熱部位を加熱するヒータ等に供給するための電力を生成する。
左スクリュモータ42SL、右スクリュモータ42SR、左コンベアモータ42CL、右コンベアモータ42CR、及び発電機用モータ42Gのそれぞれは開回路を形成する固定容量型油圧モータである。なお、これらの油圧モータは可変容量型油圧モータであってもよい。
制御弁41は、コンベア用制御弁、スクリュ用制御弁、及び発電機用制御弁を含む。コンベア用制御弁は、コントローラ30からの制御指令に応じて切り替わり、コンベア・スクリュ用ポンプ14Sが吐出する作動油を左コンベアモータ42CL及び右コンベアモータ42CRの少なくとも一方の吸込ポートに流入させ、且つ、左コンベアモータ42CL及び右コンベアモータ42CRの少なくとも一方の吐出ポートから流出する作動油を作動油タンクTに排出する。スクリュ用制御弁は、コントローラ30からの制御指令に応じて切り替わり、コンベア・スクリュ用ポンプ14Sが吐出する作動油を左スクリュモータ42SL及び右スクリュモータ42SRの少なくとも一方の吸込ポートに流入させ、且つ、左スクリュモータ42SL及び右スクリュモータ42SRの少なくとも一方の吐出ポートから流出する作動油を作動油タンクTに排出する。同様に、発電機用制御弁は、コントローラ30からの制御指令に応じて切り替わり、コンベア・スクリュ用ポンプ14Sが吐出する作動油を発電機用モータ42Gの吸込ポートに流入させ、且つ、発電機用モータ42Gの吐出ポートから流出する作動油を作動油タンクTに排出する。
図3は、図1のアスファルトフィニッシャ100に搭載される排気ガス処理システム150の構成例を示す図である。排気ガス処理システム150はディーゼルエンジンであるエンジン6から排出される排気ガスを浄化する。
排気ガス処理装置7は、エンジン6の排気ガスを段階的に浄化する装置であり、第1処理部7a及び第2処理部7bを含む。第1処理部7aは、例えば、排気ガス中の粒子状物質を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタである。第2処理部7bは、例えば、排気ガス中のNOxを還元除去する選択触媒還元(Selective Catalytic Reduction: SCR)システムである。
第2処理部7bとしてのSCRシステムは、液体還元剤の供給を受けて排気ガス中のNOxを連続的に還元除去する。本実施例では取扱いの容易さから液体還元剤として尿素水(尿素水溶液)が用いられる。
エアフィルタ6aを通じて吸気管6b内に導入された空気は、ターボチャージャ61及びインタークーラ65を通過してエンジン6に供給される。そして、エンジン6からの排気ガスは、ターボチャージャ61を経た後にその下流の排気管6cに至り、排気ガス処理装置7により浄化処理が行われた後で大気中に排出される。
排気管6cには排気ガス処理装置7の第1処理部7aと第2処理部7bとが接続部63を介して直列に接続されている。接続部63にはSCRシステムに尿素水を供給するための尿素水噴射装置68が設けられている。尿素水噴射装置68は、尿素水ホース69を介して尿素水タンク9に接続されている。
尿素水ホース69の中間にはサプライモジュールSMが設けられる。サプライモジュールSMは、尿素水供給ポンプ70及びフィルタ71を含む。本実施例では、サプライモジュールSMは、尿素水タンク9と尿素水供給ポンプ70との間にフィルタ71が配置されるように構成される。
尿素水タンク9内に貯留された尿素水は、尿素水供給ポンプ70により尿素水噴射装置68に供給され、尿素水噴射装置68から排気管6cにおける第2処理部7b(SCRシステム)の上流位置に向けて噴射される。
尿素水噴射装置68から噴射された尿素水はSCRシステムに供給される。供給された尿素水は、SCRシステムのところで加水分解されてアンモニアを生成する。このアンモニアが排気ガスに含まれるNOxを還元する。このようにして排気ガスの浄化が行われる。
第1NOxセンサ72及び第2NOxセンサ73は排気ガス内のNOx濃度を検出するセンサである。本実施例では、第1NOxセンサ72が尿素水噴射装置68の上流側に配置され、第2NOxセンサ73がSCRシステムの下流側に配置される。
尿素水残量センサ74は尿素水タンク9内の尿素水残量を検出するセンサである。尿素水濃度センサ74Aは尿素水タンク9内の尿素水の濃度を検出するセンサである。本実施例では尿素水残量センサ74及び尿素水濃度センサ74Aは尿素水タンク9の上部に配置される。
第1NOxセンサ72、第2NOxセンサ73、尿素水残量センサ74、尿素水濃度センサ74A、尿素水噴射装置68、及び尿素水供給ポンプ70は、排気ガスコントローラ75に接続されている。排気ガスコントローラ75は、第1NOxセンサ72及び第2NOxセンサ73のそれぞれで検出されるNOx濃度に基づき、尿素水噴射装置68及び尿素水供給ポンプ70を制御して適正量の尿素水が噴射されるようにする。
また、排気ガスコントローラ75は、尿素水残量センサ74から出力される尿素水残量に基づいて尿素水タンク9の全容積に対する尿素水残量の割合を算出する。本実施例では、尿素水タンク9の全容積に対する尿素水残量の割合を尿素水残量比とする。例えば、尿素水残量比50[%]は、尿素水タンク9の容量の半分の尿素水が尿素水タンク9内に残存していることを表す。
排気ガスコントローラ75はCAN等を介してエンジンコントロールモジュール(以下、「ECM」とする。)60に接続されている。ECM60はエンジン6を制御する装置である。ECM60はCAN等を介してコントローラ30に接続され、コントローラ30はCAN等を介してモニタ77(表示装置)に接続されている。モニタ77は警告、運転状態等を表示可能である。
ECM60及び排気ガスコントローラ75はそれぞれ、CPU、RAM、ROM、入出力ポート、記憶装置等を含む演算装置である。コントローラ30は、排気ガスコントローラ75が有している排気ガス処理システム150に関する各種情報を利用可能である。
排気ガス処理システム150は、尿素水タンク9及び尿素水ホース69に熱を供給する熱供給機構を有する。熱供給機構は、例えば、寒冷地での尿素水の凍結を防止し、或いは、凍結した尿素水を溶解するための機構である。本実施例では、冷却水ホース80を通過するエンジン6のエンジン冷却水(例えばロング・ライフ・クーラント)が利用される。
具体的には、エンジン6を冷却した直後のエンジン冷却水は、比較的高い温度を維持しながら、冷却水ホース80の第1部分81を通って第2部分82に至る。第2部分82は尿素水タンク9の外面に接する冷却水ホース80の一部である。尿素水より高温のエンジン冷却水は第2部分82を流れるときに尿素水タンク9及びその内部にある尿素水に熱を供給する。
その後、エンジン冷却水は第3部分83及びサプライモジュールSMに至る。第3部分83は尿素水ホース69に密着する冷却水ホース80の一部である。尿素水より高温のエンジン冷却水は尿素水ホース69に沿う冷却水ホース80の第3部分83を流れるときに尿素水ホース69及びその内部にある尿素水に熱を供給する。また、尿素水より高温のエンジン冷却水は、サプライモジュールSM内に形成された流路を流れるときにサプライモジュールSM(尿素水供給ポンプ70及びフィルタ71を含む。)並びにその内部にある尿素水に熱を供給する。
その後、第2部分82及び第3部分83での熱の供給を終えて比較的低い温度となったエンジン冷却水は冷却水ホース80の第4部分84を通って熱交換機ユニット13に至る。第4部分84は第3部分83と熱交換機ユニット13との間に配索される冷却水ホース80の一部であり、尿素水ホース69には密着しない。
第5部分85は、尿素水噴射装置68を冷却するために用いられる冷却水ホース80の一部である。高温状態の尿素水噴射装置68よりも低温のエンジン冷却水は第5部分85を流れるときに高温状態の尿素水噴射装置68から熱を奪い尿素水噴射装置68を冷却してその過熱を防止する。その後、熱の供給を受けて比較的高い温度となった(尿素水より高温の)エンジン冷却水は、尿素水ホース69に沿う第6部分86(第5部分85の一部)を流れるときに尿素水ホース69及びその内部にある尿素水に熱を供給する。尿素水噴射装置68が低温状態にある場合には、低温状態の尿素水噴射装置68よりも高温のエンジン冷却水は第5部分85を流れるときに尿素水噴射装置68及びその内部にある尿素水に熱を供給する。その後、第6部分86での熱の供給を終えて比較的低い温度となったエンジン冷却水は、第3部分83を流れてきたエンジン冷却水と合流した後で第4部分84を通って熱交換機ユニット13に至る。
このようにして、熱供給機構は、エンジン冷却水を利用して尿素水タンク9、尿素水ホース69、サプライモジュールSM、及び尿素水噴射装置68に熱を供給し、それらの内部にある尿素水の凍結を防止し、或いは、凍結した尿素水を溶解する。
次に、図4を参照し、尿素水タンク9について説明する。図4(A)は尿素水タンク9の正面図(−Y側から見た図)であり、図4(B)は尿素水タンク9の側面図(−X側から見た図)である。また、図4(C)は、外殻部材90内に収容された尿素水タンク9を斜め下から見た図である。
尿素水タンク9は、図4(A)に示すように、前面(−Y側の面)に残量インジケータ9aを有し、底面(−Z側の面)にドレインプラグ9bが取り付けられている。また、上面前端(+Z側の面の−Y側端部)のタンク給液口9eにはフィラーホース52を介してフィラー50が接続されている。フィラーホース52の両端はホースバンド53で締め付けられている。また、図4(B)に示すように、上面後端(+Z側の面の+Y側端部)には尿素水残量センサ74が取り付けられている。
フィラー50は、尿素水を尿素水タンクに補給するための部材であり、そのフィラー給液口50eにはフィラーキャップ50cが取り付けられる。また、フィラー50にはフィラー側ブラケット51が取り付けられる。
フィラー側ブラケット51は、フィラー50のフィラー給液口50eを所望の方向に向けて固定するための部材である。フィラー側ブラケット51は、例えば、本体フレームから延びるフレーム側ブラケットにボルトを介して締め付けられる。図4の例では、フィラー給液口50eは尿素水タンク9から見て右斜め上を向くように固定される。
外殻部材90は、尿素水タンク9を覆う部材であり、少なくとも尿素水タンク9の底部を覆うように構成される。図4(C)の例では、外殻部材90は、前板部材91、右板部材92、左板部材93、後板部材94、及び底板部材95で構成され、尿素水タンク9の略下半分をカバーする。底板部材95は、開口95a及び開口95bを有する。ドレインプラグ9bは、開口95aを貫通して下方(−Z方向)に突出する。開口95bは、軽量化のための構成であり、省略されてもよい。
作業者は、尿素水タンク9を外殻部材90内に収容した後、尿素水タンク9の上面中央の鞍部に逆U字型の留め具を取り付けることで尿素水タンク9と外殻部材90とを固定する。なお、外殻部材90は、アスファルトフィニッシャ100の本体から尿素水タンク9と共に取り外し可能である。
次に図5を参照し、尿素水タンク9のドレインプラグ9bの保護構造について説明する。図5は、図1の矢印Vで示すようにアスファルトフィニッシャ100の下面(尿素水タンク9が搭載される部分)を斜め下から見た図である。図5に示すように、尿素水タンク9は、外殻部材90に収容された状態で搭載部材96の上に置かれている。また、尿素水タンク9は、コンベア10の車幅方向の外側(−Y側)に配置されている。
搭載部材96は、尿素水タンク9を載せるように構成された部材である。図5の例では、搭載部材96は本体フレームに取り付けられている。搭載部材96は開口96a及び開口96bを有する。搭載部材96は、ドレインプラグ9bに対応する位置に開口96aを有する。ドレインプラグ9bは、開口96aを貫通して下方(−Z方向)に突出する。開口96bは、軽量化のための構成であり、省略されてもよい。
搭載部材96の下側(−Z側)の表面には尿素水タンク9のドレインプラグ9bを保護する保護部材97が取り付けられている。図5の例では、保護部材97は、ドレインプラグ9bに対応する位置に開口97aを有する。ドレインプラグ9bは、開口97a内に突出するが、開口97aを貫通することはない。すなわち、ドレインプラグ9bの下端(−Z側の先端)は、保護部材97の底面(−Z側の面)よりも高い位置にある。これは、地面から保護部材97までの距離が地面からドレインプラグ9bまでの距離より小さいことを意味する。地面は、例えば、施工面である。
この構成により、保護部材97は、アスファルトフィニッシャ100が前進或いは後進した場合であっても、アスファルトフィニッシャ100の下にある障害物等の物体がドレインプラグ9bと接触するのを防止できる。その物体は、ドレインプラグ9bと接触する前に保護部材97と接触するためである。そのため、保護部材97は、ドレインプラグ9bの損傷を確実に防止できる。
開口96a及び開口97aは、尿素水タンク9が搭載部材96の上を車幅方向(Y軸方向)に摺動できるように構成される。図5の例では、開口96a及び開口97aは、車幅方向外側(−Y側)に向かって開くように構成される。搭載部材96の上に搭載された(尿素水タンク9を収容した)外殻部材90を、外殻部材90の底面と搭載部材96の上面とを摺動させながら−Y側に引き出すことができるようにするためである。また、アスファルトフィニッシャ100から取り外されている(尿素水タンク9を収容した)外殻部材90を、外殻部材90の底面と搭載部材96の上面とを摺動させながら+Y側に押し込むことができるようにするためである。
図5の例では、保護部材97は、−Y側に向かってのみ開くように、すなわちドレインプラグ9bの+X側、−X側、及び+Y側を取り囲むように一部材で構成されている。但し、保護部材97は、ドレインプラグ9bの+X側及び−X側のそれぞれを別々に保護するように二部材で構成されてもよい。
次に図6を参照し、搭載部材96の上に搭載された(尿素水タンク9を収容した)外殻部材90を−Y側に引き出す手順について説明する。図6は、尿素水タンク9が搭載される部分を示すアスファルトフィニッシャ100の部分側面図である。図6(A)は、レベリングアーム3aが下限近くまで下降したときの状態を示し、図6(B)は、レベリングアーム3aが上限近くまで上昇したときの状態を示す。
最初に、作業者は、燃料タンク8のフィラー8cと尿素水タンク9のフィラー50とが視認できる図6(A)に示すような状態において、レベリングシリンダ3bを収縮させてレベリングアーム3aを上昇させる。
レベリングシリンダ3bを収縮させて図6(B)に示すような状態までレベリングアーム3aを上昇させると、尿素水タンク9及び外殻部材90の全体が露出する。残量インジケータ9aも全体が露出して視認性が向上するため、作業者は、尿素水の残量を容易に確認できるようになる。
この状態において、作業者は、外殻部材90と搭載部材96とを締結しているボルトを取り外し、且つ、ハーネス類を取り外すと、(尿素水タンク9を収容した)外殻部材90をレベリングアーム3aに接触させることなく、−Y側に引き出すことができる。
このように、作業者は、レベリングアーム3aを上限近くまで上昇させることで、外殻部材90を尿素水タンク9と共にアスファルトフィニッシャ100から取り外すことができる。
なお、上述の例では、尿素水タンク9はトラクタ1の左側面に配置されているが、右側面に配置されていてもよい。
次に図7を参照し、フィラー50のフィラー給液口50eを所望の方向に向けて固定する方法について説明する。図7は、タンク給液口9eに取り付けられたフィラー50を示す尿素水タンク9の上部の部分正面図である。
図7に示すように、フィラー50にはフィラー側ブラケット51が取り付けられている。フィラー側ブラケット51は、フィラー給液口50eを所望の方向に向けて固定するための部材であり、基部51a及び舌部51bを有する。基部51aはフィラー50を取り囲むようにフィラー50に取り付けられる平板部材である。舌部51bは基部51aから傾斜して延びる平板部材である。
フィラー側ブラケット51は、アスファルトフィニッシャ100の本体(本体フレーム110)から延びるフレーム側ブラケット111にボルトを介して締め付けられる。フレーム側ブラケット111は、フィラー側ブラケット51と同様、フィラー給液口50eを所望の方向に向けて固定するためにフィラー側ブラケット51と協働する部材であり、基部111a及び舌部111bを有する。基部111aは本体フレーム110から延びるように本体フレーム110に取り付けられる平板部材である。舌部111bは基部111aから傾斜して延びる平板部材である。
図7の例では、フィラー側ブラケット51の基部51a及び舌部51bは一体的に形成されている。また、基部51aに対する舌部51bの傾斜角度は、フィラー給液口50eの向きを決める。同様に、フレーム側ブラケット111の基部111a及び舌部111bは一体的に形成されている。また、基部111aに対する舌部111bの傾斜角度は、フィラー給液口50eの向きを決める。図7の例では、フィラー側ブラケット51がフレーム側ブラケット111に締結されたときにフィラー給液口50eが尿素水タンク9から見て右斜め上を向くように各傾斜角度が決定される。フィラー給液口50eを右斜め上に向けることは、作業者による給液ノズルのフィラー給液口50eへの差し込みを容易にする。
尿素水タンク9のタンク給液口9eは、図6(A)に示すように、アスファルトフィニッシャ100の外から見てアスファルトフィニッシャ100の構成部品であるレベリングアーム3aの陰になる位置に配置されている。そのため、作業者は給液ノズルをタンク給液口9eに直接差し込むことができない。
一方で、フィラー50のフィラー給液口50eは、図6(A)に示すように、アスファルトフィニッシャ100の外から見てレベリングアーム3aの陰にならない位置に配置されている。そのため、作業者は、アスファルトフィニッシャ100の外からフィラー給液口50eを視認でき、給液ノズルをフィラー給液口50eに容易に差し込むことができる。その結果、尿素水を容易に補給でき、尿素水のこぼれを防止できる。
次に図8を参照し、尿素水タンク9への尿素水の補給を容易にする別の構造的特徴について説明する。図8は、尿素水タンク9が搭載される部分を示すアスファルトフィニッシャ100の部分側面図である。図8は、レベリングアーム3aが下限近くまで下降したときの状態を示す。
図8のレベリングアーム3aは、切り欠き部3axが形成された点で、図6のレベリングアーム3aと相違する。フィラー給液口50eは、アスファルトフィニッシャ100の外から見てレベリングアーム3aの陰にならないよう、切り欠き部3axに対応する位置に配置される。
この構成により、作業者は、レベリングアーム3aが下限近くまで下降しているときばかりでなく、レベリングアーム3aがある程度上昇している場合であっても、フィラー給液口50eを視認できる。そのため、尿素水を容易に補給でき、尿素水のこぼれを防止できる。
次に図9を参照し、アスファルトフィニッシャにおける尿素水タンク9の別の配置例について説明する。図9(A)はアスファルトフィニッシャ100Aの左側面図であり図1(A)に対応する。図9(B)はアスファルトフィニッシャ100Aの上面図であり図1(B)に対応する。
図9のアスファルトフィニッシャ100Aは、トラクタ1の後部左側に尿素水タンク9を搭載している点で、左側のレベリングアーム3aの前端の内側に尿素水タンク9を配置する図1のアスファルトフィニッシャ100と相違する。
図9の例では、尿素水タンク9は、本体フレーム110を構成する後部隔壁110Rの前側(+X側)に配置されている。本体フレーム110は、前部隔壁110F及び後部隔壁110Rを含む。尿素水タンク9のタンク給液口9eとフィラー50とを接続するフィラーホース52は、後部隔壁110Rを貫通して後方(−X方向)に延びる。フィラーホース52の先端に取り付けられたフィラー50は、トラクタ1の後端部でフィラー給液口50eが外部から見えるようにブラケット等を用いて固定される。
このように、尿素水タンク9のタンク給液口9eは、アスファルトフィニッシャ100の外から見てアスファルトフィニッシャ100の構成部品である後部隔壁110Rの陰になる位置に配置されている。
一方で、フィラー50のフィラー給液口50eは、アスファルトフィニッシャ100の外から見て後部隔壁110Rの陰にならない位置に配置されている。
この構成により、作業者は、アスファルトフィニッシャ100の外からフィラー給液口50eを視認でき、給液ノズルをフィラー給液口50eに容易に差し込むことができる。その結果、尿素水を容易に補給でき、尿素水のこぼれを防止できる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。