以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るエンジンの制御装置について説明する。
(1)全体構成
図1は、本実施形態のエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステム100の概略構成図である。
エンジンシステム100は、4ストロークのエンジン本体1と、エンジン本体1に空気(吸気)を導入するための吸気通路20と、エンジン本体1から外部に排気を排出するための排気通路40と、第1ターボ過給機(過給機)51と、第2ターボ過給機(過給機)52とを備えている。このエンジンシステム100は車両に設けられ、エンジン本体1は車両の駆動源として用いられる。エンジン本体1は、例えば、ディーゼルエンジンであり、図1の紙面に直交する方向に並ぶ4つの気筒2を有する。
エンジン本体1は、気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダブロック3の上面に設けられたシリンダヘッド4と、気筒2に往復摺動可能に挿入されたピストン5とを有している。ピストン5の上方には燃焼室6が形成されている。
ピストン5はクランク軸7と連結されており、ピストン5の往復運動に応じてクランク軸7はその中心軸回りに回転する。
シリンダヘッド4には、燃焼室6内(気筒2内)に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)10と、燃焼室6内の燃料と空気の混合気を昇温するためのグロープラグ11とが、各気筒2につきそれぞれ1組ずつ設けられている。図1に示した例では、インジェクタ10は、燃焼室6の天井面の中央に、燃焼室6を上方から臨むように設けられている。また、グロープラグ11は、通電されることで発熱する発熱部を先端に有しており、この発熱部が、インジェクタ10の先端部分の近傍に位置するように燃焼室6の天井面に取り付けられている。例えば、インジェクタ10は、その先端に複数の噴口を備え、グロープラグ11は、その発熱部がインジェクタ10の複数の噴口からの複数の噴霧の間に位置して燃料の噴霧と直接接触しないように、配置されている。
インジェクタ10は、エンジントルクを得るために実施される噴射であって圧縮上死点付近で燃焼する燃料を燃焼室6内に噴射するメイン噴射と、メイン噴射よりも遅角側であって燃焼エネルギーがエンジントルクに変換される割合がメイン噴射よりも非常に小さい時期に燃焼室6内に燃料を噴射するポスト噴射とを実施できるようになっている。
シリンダヘッド4には、吸気通路20から供給される空気を各気筒2の燃焼室6に導入するための吸気ポートと、吸気ポートを開閉する吸気弁12と、各気筒2の燃焼室6で生成された排気を排気通路40に導出するための排気ポートと、排気ポートを開閉する排気弁13とが設けられている。
吸気通路20には、上流側から順に、エアクリーナ21、第1ターボ過給機51のコンプレッサ51a(以下、適宜、第1コンプレッサ51aという)、第2ターボ過給機52のコンプレッサ52a(以下、適宜、第2コンプレッサ52aという)、インタークーラ22、スロットルバルブ23、サージタンク24が設けられている。また、吸気通路20には、第2コンプレッサ52aをバイパスする吸気側バイパス通路25と、これを開閉する吸気側バイパスバルブ26とが設けられている。吸気側バイパスバルブ26は、駆動装置(不図示)によって全閉の状態と全開の状態とに切り替えられる。
排気通路40には、上流側から順に、第2ターボ過給機52のタービン52b(以下、適宜、第2タービン52bという)、第1ターボ過給機51のタービン51b(以下、適宜、第1タービン51bという)、第1触媒43、排気中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するPMフィルタ(以下、DPF(Diesel particulate filter)という)44、DPF44の下流側の排気通路40中に尿素を噴射する尿素インジェクタ45、尿素インジェクタ45から噴射された尿素を用いてNOxを浄化するSCR(Selective Catalytic eduction)触媒46、SCR触媒46から排出された未反応のアンモニアを酸化させて浄化するスリップ触媒47、が設けられている。
SCR触媒46は、尿素インジェクタ45から噴射された尿素を加水分解してアンモニアを生成し、このアンモニアを排気中のNOxと反応(還元)させて浄化する。
第1触媒43は、NOxを浄化するNOx触媒41と、排気中の酸素を用いて炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)などを酸化して水と二酸化炭素に変化させる酸化触媒(以下、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)という)42とを含む。
NOx触媒41は、排気の空燃比が理論空燃比よりも大きいリーンな状態(排気の空気過剰率をλとしてλ>1となる状態)において排気中のNOxを吸蔵し、この吸蔵したNOxを、排気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において還元する、NOx吸蔵還元型触媒(NSC:NOx Storage Catalyst)である。第1触媒43は、例えば、DOCの触媒材層の表面に、NSCの触媒材がコーティングされることで形成されている。
SCR触媒46とNOx触媒41とは、いずれもNOxを浄化可能であるが、これらは浄化率(NOx吸蔵率)が高くなる温度が互いに異なっており、SCR触媒46のNOx浄化率(NOx吸蔵率)は排気の温度が比較的高温のときに高くなり、NOx触媒41のNOx浄化率は排気の温度が比較的低温のときに高くなる。
排気通路40には、第2タービン52bをバイパスする排気側バイパス通路48と、これを開閉する排気側バイパスバルブ49と、第1タービン51bをバイパスするウエストゲート通路53と、これを開閉するウエストゲートバルブ54とが設けられている。これら排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54とは、それぞれ、駆動装置(不図示)によって全閉と全開の状態に切り替えられるとともに、これらの間の任意の開度に変更される。
図2は、これらバルブ49、54、25の制御マップを示した図である。本実施形態では、図2に示すように、エンジン回転数と、エンジン負荷とに応じて、各バルブ49、54、25の開閉状態が決められている。具体的には、エンジン回転数が低い第1回転領域A1では、吸気側バイパスバルブ25は全閉とされ、排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54の開度がエンジン回転数とエンジン負荷とによって変更される。また、第1回転領域A1よりもエンジン回転数が高い第2回転領域A2では、吸気バイパスバルブおよび排気側バイパスバルブ49が全開とされて第2ターボ過給機52による過給は停止され、ウエストゲートバルブ54の開度のみがエンジン回転数とエンジン負荷とによって変更される。
本実施形態によるエンジンシステム100は、排気の一部を吸気に還流させるEGR装置55を有する。EGR装置55は、排気通路40のうち排気側バイパス通路49の上流端よりも上流側の部分と、吸気通路20のうちスロットルバルブ23とサージタンク24との間の部分とを接続するEGR通路56と、これを開閉する第1EGRバルブ57と、EGR通路56を通過する排気を冷却するEGRクーラ58とを有する。また、EGR装置55は、EGRクーラ58をバイパスするEGRクーラバイパス通路59と、これを開閉する第2EGRバルブ60とを有する。
(2)制御系
図3を用いて、エンジンシステムの制御系について説明する。本実施形態のエンジンシステム100は、主として、車両に搭載されたPCM(制御手段、パワートレイン制御モジュール)200によって制御される。PCM200は、CPU、ROM、RAM、I/F等から構成されるマイクロプロセッサであり、本発明にかかる制御手段に相当する。
PCM200には、各種センサからの情報が入力される。例えば、PCM200は、クランク軸7の回転数つまりエンジン回転数を検出する回転数センサSN1、エアクリーナ21付近に設けられて吸気通路20を流通する新気(空気)の量である吸入空気量を検出するエアフローセンサSN2、サージタンク24に設けられてターボ過給機51、52によって過給された後のサージタンク24内の吸気の圧力つまり過給圧を検出する吸気圧センサSN3、排気の酸素濃度であって排気通路40のうち第1ターボ過給機51と第1触媒43との間の部分を通過する排気の酸素濃度を検出する排気O2センサSN4等と電気的に接続されており、これらのセンサSN1〜SN4からの入力信号を受け付ける。また、車両には、運転者により操作されるアクセルペダル(不図示)の開度であるアクセル開度を検出するアクセル開度センサSN5や、車速を検出する車速センサSN6等が設けられており、これらのセンサSN5、SN6による検出信号もPCM200に入力される。PCM200は、各センサ(SN1〜SN6等)からの入力信号に基づいて種々の演算等を実行して、インジェクタ10等を制御する。
(2−1)通常制御
本実施形態では、後述する、DeNOx制御、DPF再生制御、DeSOx制御を実施しない通常運転時は、燃費性能を高めるべく、燃焼室6内の混合気の空燃比ひいては排気の空燃比を理論空燃比よりもリーン(λ>1)とする通常制御を実施する。この通常制御では、ポスト噴射は停止される。本実施形態では、通常制御では、メイン噴射のみが実施される。
(2−2)DeNOx制御
NOx触媒41に吸蔵されたNOx(以下、適宜、吸蔵NOxという)を還元してNOx触媒41から離脱させるための制御であるDeNOx制御について説明する。
前記のように、NOx触媒41では、排気の空燃比が理論空燃比近傍である状態(λ≒1)あるいは理論空燃比よりも小さいリッチな状態(λ<1)において、吸蔵NOxが還元される。従って、吸蔵NOxを還元するためには、排気の空燃比を通常制御時よりも低減する必要がある。
排気の空燃比を低減する一つの方法として、燃焼室6に導入される新気(空気)の量を少なくすることが考えられる。しかし、新気の量を単純に少なくするとエンジントルクを適切に得ることができないおそれがある。特に、加速時に新気の量が低減されると加速性が悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態では、新気の量の低減量を少なく抑えつつ排気の空燃比を低減させるべく、ポスト噴射を実施して吸蔵NOxを還元させるようにする。つまり、DeNOx制御では、PCM200は、インジェクタ10にメイン噴射に加えてポスト噴射を実施させ、これにより排気の空燃比を低減する。なお、本実施形態では、DeNOx制御時に、新気の量もわずかに低減させる。具体的には、スロットルバルブ23を通常制御時よりも閉じ側にするとともに排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54の少なくとも一方を通常制御時よりも開き側にして過給圧を通常制御時よりも低減する。
本実施形態では、このDeNOx制御を、図4に示す第1領域R1と第2領域R2とでのみ実施する。第1領域R1は、エンジン回転数が予め設定された第1基準回転数N1以上且つ予め設定された第2基準回転数N2以下で、エンジン負荷が予め設定された第1基準負荷Tq1以上且つ予め設定された第2基準負荷Tq2以下の領域である。第2領域R2は、第1領域R1よりもエンジン負荷が高い領域であって、エンジン負荷が予め設定された第3基準負荷Tq3以上となる領域である。
第1領域R1では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するタイミング(膨張行程の前半、例えば、圧縮上死点後30〜70°CA)でポスト噴射を実施するアクティブDeNOx制御(NOx還元制御)を実施する。なお、アクティブDeNOx制御の実施時には、ポスト噴射された燃料の燃焼を促進するためにグロープラグ11を通電して混合気を加熱する。
一方、第2領域R2では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼しないタイミング(膨張行程の後半、例えば、圧縮上死点後110°CA)でポスト噴射を実施するパッシブDeNOx制御を実施する。
これは、次の理由による。
エンジン負荷が低い、あるいは、エンジン負荷は比較的高いがエンジン回転数が低い領域では、排気の温度が低いことに伴ってNOx触媒41の温度が吸蔵NOxを還元できる温度よりも低くなりやすい。そこで、本実施形態では、この領域ではDeNOx制御を停止する。
また、前記のようにDeNOx制御ではポスト噴射を実施するが、ポスト噴射された燃料が燃焼せずにそのまま排気通路40に排出されると、この未燃燃料に起因するデポジットによってEGRクーラー58等が閉塞するおそれがある。そのため、ポスト噴射された燃料は燃焼室6内で燃焼させるのが好ましい。しかしながら、エンジン負荷が高い、あるいは、エンジン負荷は比較的低いがエンジン回転数が高い領域では、燃焼室6内の温度が高いこと、あるいは、1クランク角度あたりの時間が短いことに伴って、燃焼室6内のガスが排気されるまでの間にポスト噴射された燃料と空気とを十分に混合させることが難しく、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で十分に燃焼させることができないおそれがある。また、前記混合が不十分でることによって煤が増大するおそれがある。従って、このような領域では基本的にDeNOx制御を停止する。
ただし、エンジン負荷が非常に高い第2領域R2では、メイン噴射の噴射量(以下、適宜、メイン噴射量という)が多いことに伴って通常運転時であっても排気の空燃比が小さく抑えられる。そのため、第2領域R2では、吸蔵NOxを還元するために必要なポスト噴射の噴射量(以下、適宜、ポスト噴射量という)を小さくして、未燃燃料が排気通路40に排出されることによる前記影響を小さく抑えることができる。
そこで、本実施形態では、前記のように、第1領域R1では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するアクティブDeNOx制御を実施し、第2領域R2では、ポスト噴射された燃料を燃焼室6内で燃焼させないパッシブDeNOx制御を実施する。なお、第2領域R2は、排気の温度が十分に高くDOC触媒42が十分に活性化する領域である。そのため、排気通路40に排出された未燃燃料はこのDOC触媒42によって浄化される。
ここで、請求項におけるNOx還元制御は、アクティブDeNOx制御を指している。
(2−3)切り替え手順
次に、通常制御と、アクティブDeNOx制御と、パッシブDeNOx制御との切り替え手順について、図5のフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、これらの切り替えを表すフラグとして切り替えフラグが設定されており、切り替えフラグが0の場合は通常制御が実施され、切り替えフラグが1の場合はアクティブDeNOx制御が実施され、切り替えフラグが2の場合はパッシブDeNOx制御が実施されるようになっている。
まず、PCM200は、ステップS10にて、車両の各種情報を読み込む。例えば、PCM200は、NOx触媒41の温度であるNOx触媒温度と、SCR触媒46の温度であるSCR温度と、NOx触媒41に吸蔵されているNOxの量であるNOx吸蔵量とを取得する。
NOx触媒温度は、例えば、NOx触媒41の直上流側に設けられた温度センサによって検出された温度に基づいて推定される。また、SCR温度は、例えば、SCR触媒46の直上流側に設けられた温度センサによって検出された温度に基づいて推定される。また、NOx吸蔵量は、例えば、エンジン本体1の運転状態や排気の流量および温度等に基づいて推定された排気中のNOx量を積算していくことで求められる。
次に、PCM200は、ステップS11にて、SCR温度が予め設定されたSCR判定温度未満であるか否かを判定する。SCR判定温度は、SCR触媒46によってNOxを浄化できるSCR触媒温度の最小値である。
ステップS11の判定がNOであって、SCR温度がSCR判定温度以上でありSCR触媒46によってNOxを適切に浄化させることができる場合は、ステップS31に進み、PCM200は、切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。一方、ステップS11の判定がYESの場合は、ステップS12に進む。
ステップS12では、PCM200は、NOx触媒温度が予め設定されたNOx還元可能温度以上であるか否かを判定する。NOx還元可能温度は、NOx触媒41が吸蔵NOxを還元可能なNOx触媒温度の最小値である。
ステップS12の判定がNOであってNOx触媒温度がNOx還元可能温度未満の場合は、ステップS31に進み、PCM200は切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。一方、ステップS12の判定がYESの場合は、ステップS13に進む。
ステップS13では、PCM200は、エンジン本体1が第1領域R1で運転されているか否かを判定する。この判定がNOの場合は、ステップS21に進む。一方、この判定がYESの場合は、ステップS14に進む。
ステップS14では、PCM200は、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していないか否かを判定する。この判定がYESの場合は、ステップS15に進む。一方、この判定がNOの場合は、ステップS16に進む。
ステップS15では、PCM200は、NOx吸蔵量が予め設定された第1吸蔵量判定値以上であるか否かを判定する。第1吸蔵量判定値は、例えば、NOx触媒41が吸蔵できるNOxの量の最大値よりもある程度低い値に設定されている。
ステップS15の判定がNOであってNOx吸蔵量が第1吸蔵量判定値未満の場合は、NOx触媒41の還元処理を行う必要がないため、PCM200は、ステップS31に進み、切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。一方、ステップS15の判定がYESの場合は、ステップS17に進む。ステップS17では、PCM200は、切り替えフラグを1に設定してアクティブDeNOx制御を実施する。
一方、ステップS14の判定がNOの場合に進むステップS16では、PCM200は、NOx吸蔵量が予め設定された第2吸蔵量判定値以上であるか否かを判定する。第2吸蔵量判定値は、第1吸蔵量判定値よりも大きな値に設定されている。例えば、第2吸蔵量判定値は、NOx触媒41が吸蔵できるNOxの量の最大値付近の値に設定されている。ステップS16の判定のNOであってNOx吸蔵量が第2吸蔵量判定値未満である場合は、PCM200は、ステップS31に進み、切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。一方、ステップS16の判定がYESの場合は、PCM200は、ステップS17に進み、切り替えフラグを1に設定してアクティブDeNOx制御を実施する。
ステップS13の判定がNOの場合に進むステップS21では、PCM200は、エンジン本体1が第2領域R2で運転されているか否かを判定する。この判定がNOの場合は、PCM200は、ステップS31に進み、切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。一方、この判定がYESの場合は、ステップS22に進む。
ステップS22では、PCM200は、NOx吸蔵量が予め設定された第3吸蔵量判定値以上であるか否かを判定する。第3吸蔵量判定値は、第1吸蔵量判定値よりも小さな値に設定されている。例えば、第3吸蔵量判定値は、NOx触媒41が吸蔵できるNOxの量の最大値の半分程度の値に設定されている。
ステップS22の判定がNOであってNOx吸蔵量が第3吸蔵量判定値未満の場合は、NOx触媒の還元処理を行う必要がないため、PCM200は、ステップS31に進み、切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。一方、ステップS22の判定がYESの場合はステップS23に進む。
ステップS23では、後述する手順で算出したポスト噴射量が、予め設定された基準ポスト噴射量未満か否かを判定する。基準ポスト噴射量は、例えば、オイル希釈を抑制する観点から、あるいは、これに加えてパッシブDeNOx制御の実行に起因する燃費悪化を抑制する観点から、設定されている。つまり、パッシブDeNOx制御では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼しない遅角側のタイミングで実施されるため、燃焼室6からクランクケースに未燃の燃料が漏えいしやすい。そこで、本実施形態では、ポスト噴射量が基準ポスト噴射量未満であって前記漏えいをある程度少なく抑えられる場合にのみパッシブDeNOx制御が実施されるように、ステップS23の判定を実施する。
つまり、ステップS23の判定がYESの場合はステップS24に進み、PCM200は、切り替えフラグを2に設定してパッシブDeNOx制御を実施する。一方、ステップS23の判定がNOの場合は、PCM200は、ステップS31に進み、切り替えフラグを0に設定して通常制御を実施する。
このように、本実施形態では、SCR温度がSCR判定温度未満で、NOx触媒温度がNOx還元可能温度以上で、第1領域R1でエンジン本体1が運転されており、かつ、NOx吸蔵量が所定量以上のときに、アクティブDeNOx制御が実施される。ただし、エンジン始動後にアクティブDeNOx制御を一度も実行していない場合には、NOx触媒41のNOx浄化性能を確保するべく、前記所定量が比較的小さい値に設定される。
なお、ポスト噴射に起因するオイル希釈を抑制するべく、ステップS16の判定の後に、アクティブDeNOx制御の前回実行時点からの走行距離が所定の判定距離以上であるか否かの判定を行い、この判定がYESのときにステップS17に進みアクティブDeNOx制御を実施する一方、この判定がNOのときにはステップS31に進み、切り替えフラグを0として通常制御を実施するようにしてもよい。
また、本実施形態では、SCR温度がSCR判定温度未満で、NOx触媒温度がNOx還元可能温度以上で、第2領域R2でエンジンが運転されており、NOx吸蔵量が所定量以上、かつ、ポスト噴射の噴射量が所定量未満のときに、パッシブDeNOx制御が実施される。
(2−4)燃料噴射制御
次に、燃料噴射の制御手順の手順について、図6および図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、PCM200は、ステップS51にて、車両の各種情報を読み込む。例えば、PCM200は、回転数センサSN1で検出されたエンジン回転数、エアフローセンサSN2で検出された吸入空気量、排気O2センサSN4で検出された排気の酸素濃度、アクセル開度センサSN5で検出されたアクセル開度、車速センサSN6で検出された車速等を取得する。
次に、ステップS52にて、PCM200は、吸気酸素濃度と、トータル吸入ガス量を推定する。吸気酸素濃度は、燃焼室6内の酸素濃度であって燃焼が行われる前の酸素濃度である。例えば、PCM200は、吸入空気量、排気の酸素濃度、EGRバルブ57、60の開度等に基づいて、吸気酸素濃度を推定する。トータル吸入ガス量は、燃焼室6内に存在するガス(燃焼が開始する直前における燃焼室6内に存在するガス)の全量である。例えば、PCM200は、吸入空気量、EGRバルブ57、60の開度等に基づいてトータル吸入ガス量を推定する。
次に、ステップS53にて、PCM200は、アクセル開度と車速等に基づいて、車両の加速度の目標値である目標車両加速度を算出する。
次に、ステップS54にて、PCM200は、目標車両加速度とエンジン回転数等に基づいて、エンジントルクの目標値である目標エンジントルク、つまり、要求されているエンジントルクを設定する。
次に、ステップS55にて、PCM200は、目標エンジントルクとエンジン回転数等に基づいて、メイン噴射量の基本値である基本メイン噴射量を設定する。
ここで、アクティブDeNOx制御では、ポスト噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼する。その結果、ポスト噴射された燃料の燃焼エネルギーの一部がエンジントルクに変換される。従って、アクティブDeNOx制御時の基本メイン噴射量は、メイン噴射とポスト噴射の一部とによって目標エンジントルクが実現されるように、その他の制御時(通常制御時およびパッシブDeNOx制御時)の基本メイン噴射量よりもわずかに小さい量とされる。つまり、アクティブDeNOx制御の開始前後および終了前後において、エンジントルクが大きく変動しないように、アクティブDeNOx制御では基本メイン噴射量を小さくする。
次に、ステップS56にて、PCM200は、切り替えフラグが1であるか否か、つまり、アクティブDeNOx制御の実施時であるか否かを判定する。
ステップS61の判定がYESであってアクティブDeNOx制御の実施時である場合はステップS63に進む。
一方、ステップS61の判定がNOであってアクティブDeNOx制御の実施時でない場合は、PCM200は、ステップS62に進み、切替フラグが1から0または2に変化してから予め設定された基準時間(所定の期間)が経過したか否かを判定する。つまり、アクティブDeNOx制御が終了してから基準時間が経過したか否かを判定する。ステップS62の判定がNOの場合はステップS63に進む。一方、ステップS62の判定がYESの場合はステップS64に進む。
このように、本実施形態では、アクティブDeNOx制御の実施中およびアクティブDeNOx制御が終了してから基準時間が経過するまでの間はステップS63に進み、その他の場合はステップS64に進む。
ステップS64では、PCM200は、排気O2ガード値を第1排気O2ガード値に設定する。一方、ステップS63では、PCM200は、排気O2ガード値を第2排気O2ガード値であって第1排気O2ガード値よりも小さい値に設定する。
排気O2ガード値は、メイン噴射によって燃焼室6に噴射された燃料の燃焼(以下、適宜、メイン燃焼という)によって生成される煤の量を所定量以下に抑えることのできる、メイン燃焼後のガスの酸素濃度(メイン噴射のみが実施される場合には排気の酸素濃度)の最小値である。つまり、メイン燃焼によって生成される煤の量とメイン燃焼後のガスの酸素濃度とには高い相関があってこの酸素濃度を所定値以上に維持できればメイン燃焼によって生成される煤の発生量を所定量以下にできることが分かっており、前記排気O2ガード値は、メイン燃焼に伴う煤の発生量を所定量以下に抑えることが可能なメイン燃焼後のガスの酸素濃度の下限値である。
ここで、アクティブDeNOx制御では、前記のように、メイン噴射に加えてポスト噴射が実施されるとともに、ポスト噴射によって燃焼室6に噴射された燃料が燃焼室6内で燃焼するように制御される。そのため、アクティブDeNOx制御の実施時は、ポスト噴射によって燃焼室6に噴射された燃料の燃焼時に、メイン燃焼によって生成された煤の一部が燃焼される。従って、アクティブDeNOx制御の実施時とその他の運転時(通常制御やパッシブDeNOx制御の実施時)とでは、メイン燃焼によって生成された煤の量が同じであっても、アクティブDeNOx制御の実施時の方が、他の運転時よりもエンジン本体1から排出される煤の量が少なくなり、アクティブDeNOx制御の実施時は、排気O2ガード値をその他の運転時より小さくすることができる。
そこで、本実施形態では、その他の運転時は排気O2ガード値を第1排気O2ガード値とし、アクティブDeNOx制御の実施時は排気O2ガード値を第1排気O2ガード値よりも小さい値に設定された第2排気O2ガード値とする。
具体的には、PCM200には、エンジン回転数とエンジントルクとについて、予め実験等により設定された第1排気O2ガード値と第2排気O2ガード値の値がマップで記憶されている。これらのマップは、同じエンジン回転数とエンジントルクであっても第2排気O2ガード値のマップから抽出される第2排気O2ガード値の方が第1排気O2ガードマップから抽出される第1排気O2ガード値よりも小さくなるように設定されている。また、本実施形態では、エンジン回転数とエンジントルクとが同じ運転条件において、DeNOx制御時とその他の運転時とにおいてエンジン本体1から排出される煤の量が同等となるように、各マップの値が設定されている。そして、PCM200は、ステップS57において、排気O2ガード値を第1排気O2ガードのマップから抽出し、ステップS58では、排気O2ガード値を第2排気O2ガードのマップから抽出する。
ステップS63あるいはステップS64の後は、ステップS65に進む。ステップS65では、PCM200は、吸気酸素濃度、トータル吸入ガス量、排気O2ガード値とに基づいてメイン噴射ガード量を設定する。
メイン噴射ガード量は、メイン噴射量の上限値であり、メイン燃焼後のガスの酸素濃度が排気O2ガード値となるときのメイン噴射量の値である。メイン噴射ガード量は、排気O2ガード値と、ステップS52で算出した吸気酸素濃度およびトータル吸入ガス量とから算出される。
具体的には、メイン燃焼後のガスの酸素濃度は、吸気酸素濃度からメイン燃焼によって消費された酸素濃度を引いた値であり、メイン燃焼によって消費される酸素の量はメイン噴射量に所定の係数をかけた値である。従って、吸気酸素濃度をX_inO2、トータル吸入ガス量をMtotal、メイン噴射量をQm、前記係数をKとすると、メイン燃焼後のガスの酸素濃度X_exO2は、X_exO2=X_inO2−(K×Qm)/Mtotalで算出される。そこで、この式を用い、X_exO2に排気O2ガード値を適用し、X_inO2とMtotalにそれぞれステップS52で算出した吸気酸素濃度とトータル吸入ガス量を適用し、Kに予め設定された値を適用して、Qmを算出し、このQmをメイン噴射ガード量として算出する。
このように、本実施形態では、メイン噴射量の上限値であるメイン噴射ガード量を、吸気酸素濃度およびトータル吸入ガス量を用い、燃焼室6内の酸素状態に基づいて算出する。
次に、ステップS66において、PCM200は、ステップS55で算出した基本メイン噴射量が、ステップS63あるいはステップS64で算出したメイン噴射ガード量以下であるか否かを算出する。
ステップS66の判定がYESであれば、PCM200は、ステップS67に進み、基本メイン噴射量を最終的なメイン噴射量に設定する。一方、ステップS66の判定がNOであれば、PCM200は、ステップS68に進み、テップS63あるいはステップS64で算出したメイン噴射ガード量を最終的なメイン噴射量に設定する。つまり、ステップS68では、PCM200は、メイン噴射量を、基本メイン噴射量よりも小さいメイン噴射ガード量に制限する。ステップS67あるいはS68の後は、ステップS69に進む。
ステップS69では、PCM200は、切り替えフラグが1または2であるか否か、つまり、アクティブDeNOx制御の実施時またはパッシブDeNOx制御の実施時であるか否かを判定する。この判定がNOであって通常制御の実施時であれば、PCM200は、ステップS71に進んでポスト噴射量を0に設定し、ステップS72に進む。
一方、ステップS69の判定がYESの場合は、ステップS70に進む。ステップS70では、PCM200は、ステップS63またはS64で設定された最終的なメイン噴射量と、予め設定されたDeNOx制御空燃比とから、ポスト噴射量を算出する。DeNOx制御空燃比は、NOx触媒41において吸蔵NOxを還元させるのに必要な気筒内の混合気の空燃比であり、予め設定されている。前記のように、この空燃比は、理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりも小さい値に設定されている。例えば、DeNOx制御空燃比は、空気過剰率λが0.94〜1.06の間の値となるように設定されている。ステップS70の後は、ステップS72に進む。
ステップS72では、PCM200は、ステップS67またはS68で設定した最終的なメイン噴射量分の燃料をインジェクタ10にメイン噴射させるとともに、ステップS70またはS71で設定したポスト噴射量分の燃料をインジェクタ10にポスト噴射させる。なお、ステップS71でポスト噴射量が0と設定された場合は、ポスト噴射は停止される。ステップS72の後は、処理を終了する(ステップS51に戻る)。
このように、本実施形態では、エンジン本体1から排出される煤の量が所定量以下となるように、メイン噴射の噴射量がメイン噴射ガード量以下に抑えられる。そして、アクティブDeNOx制御の実施中およびアクティブDeNOx制御が終了してから基準時間が経過するまでの間は、このメイン噴射ガード量が他の運転時よりも大きくされる。
(3)作用等
図8に、前記の制御を実施したときの各パラメータの時間変化を模式的に示す。図8は、定常走行(アクセル開度が一定で車速が一定の走行)途中の時刻t1でアクティブDeNOx制御が開始され、その後の時刻t2にてアクセル開度が踏み込まれて加速が行われ、この加速途中の時刻t4でアクティブDeNOx制御が終了したときの図である。
図8のメイン噴射ガード量のグラフにおいて、第1メイン噴射ガード量は、排気O2ガード値を第1排気O2ガード値としたときに算出されるメイン噴射ガード量であり、第2メイン噴射ガード量は、排気O2ガード値を第2排気O2ガード値としたときに算出されるメイン噴射ガード量である。具体的には、第1メイン噴射ガード量は、現在のエンジン回転数とエンジントルクとに基づいて注出された第1排気O2ガード値と、現在の吸気酸素濃度と、現在のトータル吸入ガス量とを用いて、ステップS65に係る手順に従って算出したメイン噴射ガード量であり、第2メイン噴射ガード量は、現在のエンジン回転数とエンジントルクとに基づいて注出された第2排気O2ガード値と、現在の吸気酸素濃度と、現在のトータル吸入ガス量とを用いて、ステップS65に係る手順に従って算出したメイン噴射ガード量である。第2メイン噴射ガード量は、本発明における「補正上限値」に相当する。
前記のように、同じエンジン回転数とエンジントルクであっても第2排気O2ガード値の方が第1排気O2ガード値よりも小さくなるように設定されている。従って、エンジン回転数、エンジントルク、吸気酸素濃度、トータル吸入ガス量としてともに現在の値が用いられることで、図8に示すように、第1メイン噴射ガード量は第2メイン噴射ガード量よりも小さい値となる。
なお、図7のステップS61〜65に係る前記説明のように、本実施形態では、ステップS62の判定に応じて排気O2ガード値が第1排気O2ガード値と第2排気O2ガード値とに切り替えられるようになっており、実際には、メイン噴射ガード量として一つの値のみが算出されるが、ここでは、説明を容易にするために、前記の第1メイン噴射ガード量と第2メイン噴射ガード量とを用いて説明を行う。
図8に示すように、時刻t1までの定常走行では、切り替えフラグが0であることに伴い通常制御が実施されており、ポスト噴射は停止され(ポスト噴射量が0とされ)、混合気の空気過剰率λは1よりも大きい値とされる。
一方、時刻t1にて切り替えフラグが1となりアクティブDeNOx制御が開始されると、ポスト噴射が開始される(ポスト噴射量が0より大きい値とされる)。また、本実施形態では、アクティブDeNOx制御の開始に伴って、前記のように、スロットルバルブ23が閉じ側に制御されるとともに排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54の少なくとも一方が開き側に制御される。これらの制御に伴い、時刻t1から混合気の空気過剰率λは徐々に低下する。また、図8に示したように、通常制御が仮に継続された場合に比べて、過給圧が低下する。また、図示は省略するが、気筒2内に導入される空気量および酸素量が低下する。
また、時刻t1では、ポスト噴射が開始されることに伴って、実メイン噴射量が低下する。なお、実メイン噴射量は、最終的に噴射されるメイン噴射の噴射量である。
具体的には、時刻t1までは通常制御が行われている。そのため、最終的なメイン噴射ガード量である最終メイン噴射ガード量(ステップS65にて実際に算出されるメイン噴射ガード量)は第1排気O2ガード値を用いて算出された第1メイン噴射ガード量である。そして、図8の例では、時刻t1までの期間、基本メイン噴射量がこの第1メイン噴射ガード量未満であることに伴い、実メイン噴射量は基本メイン噴射量とされている。また、時刻t1後は、最終メイン噴射ガード量は第2メイン噴射ガード量となるが、第2メイン噴射ガード量は第1メイン噴射ガード量よりも大きく、時刻t1直後においても実メイン噴射量は基本メイン噴射量となる。ここで、前記のように、アクティブDeNOx制御時の基本メイン噴射量は、その他の制御時(通常制御時およびパッシブDeNOx制御時)の基本メイン噴射量よりも小さい量とされる。従って、時刻t1においてポスト噴射が開始されると実メイン噴射量が低減される。なお、時刻t1の直前において実メイン噴射量が第1メイン噴射ガード量に設定されている(基本噴射量が第1メイン噴射ガード量より大きいことに伴い実メイン噴射量が第1メイン噴射ガード量に設定されている)場合には、時刻t1でアクティブDeNOx制御の開始に伴って算出された基本メイン噴射量が第1メイン噴射ガード量よりも大きい値に算出される場合があり、このときには、時刻t1にて最終メイン噴射ガード量が第1メイン噴射ガード量よりも大きい第2メイン噴射ガード量となることで、実メイン噴射量が増大することもある。つまり、本実施形態では、メイン噴射の噴射量が基本メイン噴射量であって第1メイン噴射ガード量よりも小さい状態でアクティブDeNOx制御が開始されたときには、メイン噴射の噴射量が減少するようになっている。
前記のように、時刻t1後は、アクティブDeNOx制御が実施されていることに伴い最終メイン噴射ガード量は第2メイン噴射ガード量に切り替わり、その値が大きくされる。
詳細には、前記のように、時刻t1後は気筒2内に導入される空気量および酸素量が低下する。これに伴い、時刻t1後、第1、第2メイン噴射ガード量および最終メイン噴射ガード量は低下する。
時刻t2にて加速が開始されて目標エンジントルクが増大すると、これに合わせて基本メイン噴射量つまり実メイン噴射量は増大されていく。また、これに伴って過給圧が増大していく。
ここで、図8の例では、時刻t3において基本メイン噴射量(実メイン噴射量)が第1メイン噴射ガード量を超えてしまう。つまり、メイン燃焼によって生成されるガスのO2濃度が第1排気O2ガード値未満に低下してしまう。しかしながら、本実施形態では、このときの最終メイン噴射ガード量は第1排気O2ガード量よりも大きい第2排気O2ガード量に設定されている。従って、実メイン噴射量は第1メイン噴射ガード量を超える基本メイン噴射量とされ、目標エンジントルクに対応した量の燃料がメイン噴射によって噴射される。
その後、時刻t4にて切り替えフラグが0となりアクティブDeNOx制御が終了されると、ポスト噴射が停止される(ポスト噴射量が0とされる)。そして、実メイン噴射量(基本メイン噴射量)が増大される。また、スロットルバルブ23が開き側に制御されるとともに排気側バイパスバルブ49とウエストゲートバルブ54の少なくとも一方が閉じ側に制御される。これらの制御に伴い、時刻t1から混合気の空気過剰率λは徐々に増大する。また、過給圧が時刻t4までの上昇率よりも高い上昇率で上昇する。また、図示は省略するが、気筒2内に導入される空気量および酸素量が時刻t4までの上昇率よりも高い上昇率で上昇する。
このように、過給圧、気筒2内に導入される空気量および酸素量が増大することで、各メイン噴射ガード量も増大する。詳細には、まず、スロットルバルブ23の変更によって気筒2内に導入される空気量および酸素量が増大することで時刻t5にかけて各メイン噴射ガード量は増大する。その後、過給圧が増大することによって各メイン噴射ガード量はさらに増大する。
ここで、本実施形態では、前記のように、アクティブDeNOx制御が終了しても基準時間が経過するまでは第2排気O2ガード値を排気O2ガード値に設定するようにしている。従って、時刻t4から基準時間が経過した時刻t5までは、最終メイン噴射ガード量は第2メイン噴射ガード量とされ、時刻t5後に最終メイン噴射ガード量が第1メイン噴射ガード量に切り替えられる。そして、時刻t5後は、通常制御での加速が継続される。図8に示すように、時刻t5は、混合気の空気過剰率λが通常制御時の値程度に復帰する時刻であり、本実施形態では、このように、基準時間を、アクティブDeNOx制御を終了してから混合気の空気過剰率λが通常制御時の値程度に復帰する時刻までの時間に設定している。
このように、本実施形態では、時刻t3にて実メイン噴射量(基本メイン噴射量)が第1メイン噴射ガード量を超えるが、時刻t3での最終メイン噴射ガード量が第1メイン噴射ガード量よりも高い第2メイン噴射ガード量とされていることで、実メイン噴射量を目標エンジントルクに対応した基本メイン噴射量にすることができる。従って、目標エンジントルクを実現することができる。つまり、時刻t3にて(エンジン回転数、目標エンジントルク、トータル吸入ガス量、吸気酸素濃度が時刻t3の値となる運転条件にて)、および、時刻t3後において、仮に通常制御を実施してポスト噴射を停止した場合には、実メイン噴射量は、基本メイン噴射量よりも小さい値に抑えられてしまうため、エンジントルクを目標エンジントルクまで高めることができないのに対して、本実施形態では、これを実現して加速性を高くすることができる。
以上のように、本実施形態では、ポスト噴射の実施によって排気の空燃比を理論空燃比近傍あるいは理論空燃比よりもリッチとして、NOx触媒41に吸蔵されているNOxである吸蔵NOxを還元する。そのため、燃焼室6に導入される新気の量を低減することなく、あるいは、この低減量を少なく抑えつつ、排気の空燃比を、吸蔵NOxを還元可能なリッチ状態にすることができる。従って、新気量の低減に伴う加速性の悪化を回避しながら吸蔵NOxを適切に還元することができる。
しかも、本実施形態では、アクティブDeNOx制御を実施して、ポスト噴射された燃料を燃焼室6で燃焼させるとともに、このときのメイン噴射ガード量(最終メイン噴射ガード量)を他の運転時よりも大きくしている。そのため、吸気の遅れに伴って吸気酸素濃度等が所望の値よりも小さくなる加速時等であって、エンジン本体1から排出される煤の量を抑制するためにはメイン噴射の噴射量をメイン噴射ガード量以下に抑えねばならない場合でも、ポスト噴射された燃料の燃焼によってメイン燃焼で生成された煤を燃焼させ、これによりエンジン本体1から排出される煤の量を小さく抑え、かつ、メイン噴射の噴射量を多く確保することができる。従って、排気性能を良好に維持しつつ加速性をより一層高めることができる。
また、本実施形態では、アクティブDeNOx制御の終了後、基準時間が経過するまでは、最終的なメイン噴射ガード量を、第2排気O2ガード値を用いて算出される第2メイン噴射ガード量に設定している。そのため、アクティブDeNOx制御終了直後に、メイン噴射量が急変してエンジントルクが急変するのを抑制することができる。