図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する多気筒の内燃機関として構成されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により運転制御されている。エンジン22の排気系には、排気浄化装置23と粒子状物質除去フィルタ(以下、PMフィルタという)25とが取り付けられている。排気浄化装置23には、排気中の未燃焼燃料や窒素酸化物を除去する触媒23aが充填されている。PMフィルタ25は、セラミックスやステンレスなどにより多孔質フィルタとして形成されており、煤などの粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕捉する。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションや、エンジン22の冷却水の温度を検出する図示しない水温センサからの冷却水温Twなどを挙げることができる。また、スロットルバルブのポジションを検出する図示しないスロットルバルブポジションセンサからのスロットル開度THや吸気管に取り付けられた図示しないエアフローメータからの吸入空気量Qa、吸気管に取り付けられた図示しない温度センサからの吸気温Taなども挙げることができる。更に、排気系の排気浄化装置23の上流側に取り付けられた空燃比センサ23bからの空燃比AFや排気浄化装置23の下流側に取り付けられた酸素センサ23cからの酸素信号O2,PMフィルタ25の上流側および下流側に取り付けられた圧力センサ25a,25bからの圧力P1,P2も挙げることができる。
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための種々の制御信号が出力ポートを介して出力されている。種々の制御信号としては、例えば、燃料噴射弁への駆動信号や、スロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号を挙げることができる。
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。このエンジンECU24は、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御する。エンジンECU24は、必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。
エンジンECU24は、クランク角θcrに基づいて、クランクシャフト26の回転数、即ち、エンジン22の回転数Neを演算している。また、エンジンECU24は、エアフローメータからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて、体積効率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLも演算している。エンジンECU24は、圧力センサ25a,25bからの圧力P1,P2の差圧ΔP(ΔP=P1−P2)に基づいてPMフィルタ25に補足された粒子状物質の推定される堆積量としてのPM堆積量Qpmを演算したり、エンジン22の運転状態に基づいてPMフィルタ25の推定される温度としてのフィルタ温度Tfを演算したりしている。また、エンジンECU24は、クランク角θcrに基づいて、クランクシャフト26が所定角度(例えば10度)だけ回転するたびに、クランクシャフト26が30度だけ回転するのに要した時間である30度回転所要時間T30(msec)を取得し、当該30度回転所要時間T30に基づいて、クランクシャフト26(エンジン22)の角速度ωeg(rad/sec)を算出する。角速度ωegは、ωeg=2π×(30/360)/T30×1000として算出される。
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、エンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
モータMG1は、永久磁石が埋め込まれた回転子と三相コイルが巻回された固定子とを備える周知の同期発電電動機として構成されており、上述したように回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、モータMG1と同様に同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。モータMG1,MG2は、モータECU40によってインバータ41,42を制御することにより駆動する。インバータ41,42は、バッテリ50が接続された電力ライン54に接続されている。インバータ41,42は、6つのトランジスタと6つのダイオードとにより構成される周知のインバータとして構成されている。インバータ41,42は、電力ライン54を共用しているから、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータに供給することができる。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからの回転位置θm1,θm2や、モータMG1,MG2の各相に流れる電流を検出する電流センサからの相電流、コンデンサ46の端子間に取り付けられた図示しない電圧センサからのコンデンサ46(電力ライン54)の電圧VLなどを挙げることができる。モータECU40からは、モータMG1,MG2を駆動制御するためのインバータ41,42の各トランジスタへのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。このモータECU40は、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御する。また、モータECU40は、必要に応じてモータMG1,MG2の駆動状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、モータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいて、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、インバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりを行なう。バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52により管理されている。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号が入力ポートを介して入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。入力ポートを介して入力される信号としては、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbや、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib、バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどを挙げることができる。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために蓄電割合SOCや入出力制限Win,Woutを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合であり、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて演算される。入出力制限Win,Woutは、バッテリ50を充放電してもよい最大許容電力であり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいて演算される。
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。また、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速Vなども挙げることができる。HVECU70からは、各種制御信号などが出力ポートを介して出力されている。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。このHVECU70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン22の運転を伴って走行するハイブリッド走行モード(HV走行モード)や、エンジン22の運転を停止して走行する電動走行モード(EV走行モード)で走行する。
HV走行モードでの走行時には、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて、走行に要求される(駆動軸36に出力すべき)要求トルクTr*を設定する。続いて、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nrを乗じて、走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算する。ここで、駆動軸36の回転数Nrとしては、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数を用いることができる。そして、計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じて、車両に要求される要求パワーPe*を設定する。ここで、充放電要求パワーPb*は、バッテリ50の蓄電割合SOCと目標割合SOC*との差分ΔSOCに基づいて、差分ΔSOCの絶対値が小さくなるように設定する。次に、要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共に要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるように、エンジン22の目標運転ポイント(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)や、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する。エンジン22の目標運転ポイント(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)は、エンジン22の運転ポイント(回転数,トルク)のうち騒音や振動等を加味して燃費が最適となる最適動作ラインを予め定めておき、要求パワーPe*に対応する最適動作ライン上の運転ポイント(回転数,トルク)を求めて設定する。エンジン22の目標運転ポイント(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)については、エンジンECU24に送信する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*については、モータECU40に送信する。エンジンECU24は、目標運転ポイントに基づいてエンジン22が運転されるように、エンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。モータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるように、インバータ41,42の各トランジスタのスイッチング制御を行なう。
EV走行モードでの走行時には、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定すると共に、要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nrを乗じて走行用パワーPdrv*を計算する。続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に、要求トルクTr*(走行用パワーPdrv*)が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*については、モータECU40に送信する。モータECU40は、上述したように、インバータ41,42を制御する。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、エンジン22の燃料噴射量の各気筒間のインバランスが生じているか否かを判定する際の動作について説明する。図2は、エンジンECU24により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、HV走行モードで走行しているときにに繰り返し実行される。
本ルーチンが実行されると、エンジンECU24は、エンジン22の吸入空気量Qaや回転数Ne,ディザ制御フラグFを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の吸入空気量Qaは、吸気管に取り付けられた図示しないエアフローメータにより検出されたものを入力している。回転数Neは、クランク角θcrに基づいて演算したものを入力している。ディザ制御フラグFは、ディザ制御の実行が要求されていないときに値0に設定され、ディザ制御の実行が要求されているときに値1に設定されるフラグである。
ここで、ディザ制御について説明する。ディザ制御は、エンジン22の空燃比をリッチ(理論空燃比に比して燃料量を多くした状態)とリーンとが繰り返されるように燃料噴射を行なってエンジン22を運転する制御である。このディザ制御では、エンジン22の複数の気筒のうち一部の気筒をリッチとし、残余の気筒をリーンとし、エンジン22全体としての燃料噴射量の増減の平均値が値0となるようにエンジン22を運転する。例えば、エンジン22を6気筒の内燃機関とした場合、各気筒の燃料噴射量は、最初に点火する気筒の燃料噴射量をエンジン22の燃料噴射量を気筒数で除した気筒平均噴射量に対して5%減のリーンとし、次に点火する気筒の燃料噴射量を気筒平均噴射量に対して10%増のリッチとし、残りの気筒の燃料噴射量を、以降点火順に、5%減のリーン,5%減のリーン,10%増のリッチ,5%減のリーンとして、エンジン22を運転する。こうした制御により、PMフィルタ25の温度を迅速に再生可能温度(例えば600℃など)以上の状態に上昇させてPMフィルタ25を再生する。
こうしたディザ制御は、PMフィルタ25の再生の要求がなされている第1条件と、エンジン22が運転している(エンジン22が停止中や燃料カット中ではない)第2条件と、エンジン22の空燃比が安定している(エンジン22の空燃比制御おけるフィードバック補正量が所定範囲内にあって空燃比に関する学習が完了している)第3条件と、エンジン22の暖機が完了している(エンジン22の冷却水温Twが所定温度(例えば、70℃,75℃,80℃など)以上である)第4条件と、車速Vが所定車速(例えば、45km/h,50km/h,55km/hなど)以上である第5条件と、の全ての条件が成立しているときに、実行要求がなされる。PMフィルタ25の再生要求は、PMフィルタ25に堆積した粒子状物質の堆積量としてのPM堆積量Qpmが閾値Qpmref以上であるときになされる。ここで、PM堆積量Qpmは、圧力センサ25a,25bからの圧力P1,P2の差圧ΔP(ΔP=P1−P2)に基づいて演算(推定)される。閾値Qpmrefは、PMフィルタ25の再生が必要であると判断できるPM堆積量Qpmである。ディザ制御フラグFは、上述した第1条件〜第5条件のうち少なくとも一つの条件が成立していないときには値0に設定され、第1条件〜第5条件の全ての条件が成立しているときには値1に設定される。
続いて、現在のトリップにおいてエンジン22の燃料噴射量の気筒間のインバランスが生じているか否かを判定するインバランス判定が完了しているか否かを判定する(ステップS110)。インバランス判定については、後述する。ここで、「トリップ」とは、イグニッションオンされてからイグニッションオフされるまでの期間をいう。
ステップS110の処理でインバランス判定が完了していると判定されたときには、続いて、ディザ制御フラグFが値1であるか否かを判定する(ステップS120)。ディザ制御フラグFが値1であるときには、ディザ制御を実行して(ステップS130)、本ルーチンを終了し、ディザ制御フラグFが値0であるときに、ディザ制御を実行せずに、本ルーチンを終了する。ディザ制御フラグFが値1であるとき、すなわち、ディザ制御の実行要求がなされたときには、上述したディザ制御を実行することにより、PMフィルタ25を昇温させてPMフィルタ25を再生することができる。
ステップS110の処理でインバランス判定が完了していないと判定されたときには、続いて、インバランス判定条件が成立しているか否かを判定する(ステップS140)。インバランス判定条件は、インバランス判定を実行するための前提条件であり、冷却水温Twが閾値Twref以上であるときに、成立していると判定する。閾値Twrefは、エンジン22の暖機が完了しているか否かの判定に用いられる閾値であり、例えば、70℃,75℃,80℃などを用いることができる。
ステップS140の処理でインバランス判定条件が成立していないと判定されたときには、インバランス判定の実行が要求されていないと判断して、ステップS120の処理に進み、ディザ制御フラグFが値1であるか否かを判定する(ステップS120)。ディザ制御フラグFが値1であるときには、ディザ制御を実行し(ステップS130)、ディザ制御フラグFが値0であるときには、ディザ制御を実行せずに、本ルーチンを終了する。こうした処理により、ディザ制御の実行要求がなされたときには、ディザ制御を実行することにより、PMフィルタ25を昇温させてPMフィルタ25を再生することができる。
ステップS140の処理でインバランス判定条件が成立していると判定されたときには、続いて、ステップS120の処理と同様に、ディザ制御フラグFが値1であるか否かを判定する(ステップS150)。ディザ制御フラグFが値0であるときには、インバランス判定を実行するか否かを判定するための判定領域Ainを領域A1に設定する(ステップS160)。領域A1は、ディザ制御を実行していないときにインバランス判定を誤判定せずに実行可能なエンジン22の運転領域として、予め実験や解析などにより設定される。図3は、判定領域Ain1の一例を示す説明図である。図中、ハッチングを施していない領域は、領域A1である。ハッチングを施している領域は、後述する領域A2である。領域A1は、実施例では、エンジン22の回転数Neが所定回転数Ne1以上かつ所定回転数Ne2以下であると共にエンジン22の吸入空気量Qaが所定空気量Qa1以上かつ所定空気量Qa2以下の領域として定められる。ここで、所定回転数Ne1は、例えば、1150rpm,1200rpm,1250rpmなどを用いることができる。所定回転数Ne2は、例えば、1950rpm,2000rpm,2050rpmなどを用いることができる。また、所定空気量Qa1は、所定空気量Qa2より小さい値として設定されている。
こうして判定領域Ainを設定すると、続いて、エンジン22の動作点Pが判定領域Ain内にあるか否かを判定する(ステップS190)。エンジン22の動作点Pは、エンジン22の回転数Neと吸入空気量Qaとにより定める点である。エンジン22の動作点Pが判定領域Ain外にあるときには、インバランス判定を実行せずに、本ルーチンを終了し、エンジン22の動作点Pが判定領域Ain内にあるときには、インバランス判定を実行して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。燃料噴射量の気筒間のインバランスとしては、何れかの気筒の燃料噴射量が他の気筒の燃料噴射量よりも多くなっているリッチインバランスと、何れかの気筒の燃料噴射量が他の気筒の燃料噴射量よりも少なくなっているリーンインバランスと、がある。インバランス判定では、燃焼室ごとに点火時期が到来すると、その時点で算出されている角速度ωegと当該燃焼室の前回の点火時期における角速度ωegとに基づいてエンジン22の回転変動量Δωを算出し、回転変動量Δωと判定用閾値dωrefとを比較する。ここで、判定用閾値dωrefは、所定値に設定されている。そして、回転変動量Δωが判定用閾値dωref以上であるときには、当該燃焼室においてインバランス(リッチインバランスまたはリーンインバランス)が生じていると判定する。このように、インバランス判定条件が成立している場合において、ディザ制御フラグFが値0であり、且つ、動作点Pが判定用領域Ain内にあるときに、ディザ制御を実行せずに、インバランス判定を実行する。
ステップS150の処理でディザ制御フラグFが値1であると判定されたときには、ディザ制御を実行して(ステップS170)、判定領域Ainを領域A2に設定する(ステップS180)。領域A2は、ディザ制御を実行しているときにインバランス判定を誤判定せずに実行可能なエンジン22の運転領域として、予め実験や解析などにより領域A1より小さい領域として設定されている。領域A2は、図3に示すように、エンジン22の回転数Neが所定回転数Ne3以上かつ所定回転数Ne4以下であると共にエンジン22の吸入空気量Qaが所定空気量Qa3以上かつ所定空気量Qa4以下の領域として定められている。ここで、所定回転数Ne3は、例えば、1300rpm,1350rpm,1400rpmなどを用いることができる。所定回転数Ne4は、例えば、1700rpm,1750rpm,1800rpmなどを用いることができる。所定空気量Qa3,Qa4は、所定空気量Q1より大きく所定空気量Q2より小さい値であり、所定空気量Qa3は、所定空気量Qa4より小さい値である。
こうして判定領域Ainを設定すると、続いて、エンジン22の動作点Pが判定領域Ain内にあるか否かを判定し(ステップS190),エンジン22の動作点Pが判定領域Ain内にないときには、インバランス判定を実行せずに、本ルーチンを終了し、エンジン22の動作点Pが判定領域Ain内にあるときには、インバランス判定を実行して(ステップS200)、本ルーチンを終了する。このように、インバランス判定条件が成立している場合において、ディザ制御フラグFが値1であり、且つ、動作点Pが判定用領域Ain内にあるときに、ディザ制御とインバランス判定とを実行する。
図4は、エンジン22の回転変動量Δωの時間変化の一例を示している。図中、実線は、ディザ制御を実行しているときにおける回転変動量Δωの時間変化を示している。破線は、ディザ制御を実行していないときにおける回転変動量Δωの時間変化を示している。ディザ制御では、エンジン22の空燃比を気筒別にリッチまたはリーンとなるように燃料噴射を行なってエンジン22を運転する。このとき、リーンとなっている気筒を点火するときのエンジン22の回転変動量Δωが大きくなって、燃料噴射量の気筒間のインバランスが発生していないにも拘わらずインバランス判定の判定用閾値dωrefを超えてしまうことがある。実施例では、領域A2をディザ制御を実行しているときにインバランス判定を誤判定せずに実行可能なエンジン22の運転領域として定められた領域としているから、インバランス判定条件が成立している場合において、ディザ制御フラグFが値1であり、且つ、動作点Pが判定用領域Ain(領域A2)内にあるときに、ディザ制御とインバランス判定とを実行することにより、燃料噴射量の気筒間のインバランスの誤判定を抑制することができる。また、領域A2を領域A1より小さい領域としているから、領域A1と領域A2とを同一の領域とする場合に比してディザ制御とインバランス判定との双方が実行される機会が減少し、誤判定する機会が減少する。これにより、燃料噴射量の気筒間のインバランスの誤判定を抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、領域A2を領域A1より小さい領域とし、インバランス判定条件が成立している場合において、ディザ制御フラグFが値1であり、且つ、動作点Pが判定用領域Ain(領域A2)内にあるときに、ディザ制御とインバランス判定とを実行することにより、燃料噴射量の気筒間のインバランスの誤判定を抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS180の処理で、領域A2をディザ制御を実行しているときにインバランス判定を誤判定せずに実行可能なエンジン22の運転領域として定められた領域A1より小さい領域としているが、領域A2をディザ制御を実行しているときにインバランス判定を誤判定せずに実行可能なエンジン22の運転領域であるか否かを考慮せずに、領域A1より小さい領域としてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、ディザ制御フラグFを、第1条件〜第5条件のうち少なくとも一つの条件が成立していないときには値0に設定し、第1条件〜第5条件の全ての条件が成立しているときには値1に設定している。しかしながら、少なくとも第1条件が成立しているときに値1に設定されればよいから、第5条件を考慮せずに第1〜第4条件が成立しているときに値1に設定したり、第2,第3条件を考慮せずに第1,第4,第5条件のみが成立したときに値1に設定してもよい。また、第1〜第5条件に限定されず、他の条件に基づいてディザ制御フラグFを設定してもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS140の処理で、インバランス判定条件を冷却水温Twが閾値Twref以上となる条件としているが、冷却水温Twとは異なるエンジン22のパラメータを用いた条件を用いてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、ステップS160,S180の処理で、判定領域Ainをエンジン22の回転数Neと吸入空気量Qaとにより定める領域としているが、エンジン22の回転数Neとエンジン22の負荷を示すパラメータとにより定める領域としたらよいから、吸入空気量Qaに代えて、エンジン22から出力されているトルクやエンジン22の体積効率KLなどを用いてもよい。
実施例では、エンジン22とモータMG1とモータMG2とがプラネタリギヤ30に接続されたタイプのハイブリッド自動車に本発明を適用したが、排気系に粒子状物質を除去する粒子状物質除去フィルタを有するエンジンと、走行用の動力を出力するモータと、を備える種々のタイプのハイブリッド自動車、例えば、駆動輪に連結された駆動軸に変速機を介してモータを接続すると共にモータの回転軸にクラッチを介してエンジンを接続するハイブリッド自動車などに本発明を適用してもよい。また、排気系に粒子状物質を除去する粒子状物質除去フィルタを有するエンジンを備えるが、走行用の動力を出力モータを備えないタイプの自動車に適用しても構わない。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、PMフィルタ25が「フィルタ」に相当し、エンジン22が「エンジン」に相当し、エンジンECU24とHVECU70とが「制御装置」に相当し、エンジンECU24が「インバランス判定装置」に相当する。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。