図1は、本発明の実施形態に係る圧縮機ユニット100の概略フロー図である。図2は、圧縮機ユニット100を構成する圧縮機500の概略図である。図1および図2を参照して、圧縮機ユニット100が説明される。
圧縮機ユニット100は、LNG(Liquified Natural Gas:液化天然ガス)が貯留されたLNG貯槽101を有している船舶(図示せず)内に設置されている。圧縮機ユニット100は、LNG貯槽101内で生じたボイルオフガスである対象ガスを回収するように構成されている。圧縮機ユニット100は、回収された対象ガスを約300barまで昇圧し、昇圧された対象ガスを所定の需要先(たとえば、船舶のエンジン)へ供給するように構成されている。以下の説明において、対象ガスの流れ方向を基準に、「上流」および「下流」との用語が用いられる。
圧縮機ユニット100は、対象ガスが需要先に向けて流れる流路110と、圧縮機500と、対象ガスを上流側に戻すように構成されたバイパスライン411と、複数のダンパーと、複数のクーラとを有している(図1を参照)。図1では、圧縮機ユニット100は、図1の二点鎖線の枠線内に示されている構成要素を含む装置として示されている(図6乃至図8においても同様である)。圧縮機500は、複数の圧縮ステージと、複数の圧縮ステージの共通の駆動源として用いられるクランク機構と、クランク機構が収容されたクランクケース301と、クランクケース301に取り付けられた6つのクロスガイド303とを有している(図2を参照)。複数の圧縮ステージは、第1圧縮ステージ201、第1圧縮ステージ201の次段である第2圧縮ステージ202、第2圧縮ステージ202の次段である第3圧縮ステージ203、第3圧縮ステージ203の次段である第4圧縮ステージ204および第4圧縮ステージ204の次段である第5圧縮ステージ205を備える。複数の圧縮ステージにより流路110を流れる対象ガスが順次昇圧される。複数のダンパーは、これらの圧縮ステージの上流および下流に設けられ、各圧縮ステージ201〜205でピストンの往復動に連動して行われる間欠的な吸込及び吐出による対象ガスの圧力の変動を抑制するために設けられている。複数のクーラは、複数の圧縮ステージで圧縮された対象ガスを冷却するために設けられている。
流路110の上流端は、LNG貯槽101内で生じたボイルオフガスが流入するようにLNG貯槽101の上部に接続されている。流路110の下流端は、需要先に接続されている。
流路110は、貯槽接続流路111と、ステージ接続流路113と、需要先接続流路114とを備える。貯槽接続流路111は、LNG貯槽に接続され、ボイルオフガスを圧縮機ユニット100に導く。第1圧縮ステージ201が2つあるので、分岐部111A,111Bに分岐し、これらの分岐部111A,111Bは、それぞれ第1圧縮ステージ201に接続されている。分岐部111A,111Bには、ダンパー261,262が設けられている。ステージ接続流路113は、圧縮ステージ201〜205の間を接続する。ステージ接続流路113では、第1圧縮ステージ201との接続部分が2つに分岐した分岐部113A,113Bとなっている。ステージ接続流路113のその他の部分には、第2〜第5圧縮ステージ202〜205、ダンパー263〜268,271,272および複数のクーラ281〜284が設けられている。需要先接続流路114は、第5圧縮ステージ205と需要先を接続する流路であり、ダンパー273およびクーラ285が設けられている。
2つの第1圧縮ステージ201は、互いに並列となるように2つの分岐部112に設けられている。第2〜第5圧縮ステージ202〜205は、互いに間隔を空けて、ステージ接続流路113に直列に設けられている。
クランク機構は、クランクシャフトの回転を複数のクロスヘッドの直線的な往復動に変えるように構成されている。クランクシャフトは、モータ302によって駆動される。クロスヘッドは、第1〜第5圧縮ステージ201〜205のピストンロッド213との接続部位として用いられている。
クランクケース301に形成された貫通孔を通じて、クランクシャフトがモータ302に接続されている。クランクケース301は、貫通孔の周囲において、クランク機構の潤滑に用いられる潤滑油の漏出を抑制するように構成されているけれども、密閉構造(気密構造)を有していない。したがって、クランクケース301の内部空間の圧力は、大気圧に略等しい。
6つのクロスガイド303は、水平方向において互いに間隔を空けて配列され、水平方向に対して略直角の方向(より正確には、本実施形態では、重力方向上側)に突出している。クロスガイド303の中で、上述のクロスヘッドが往復動する。
各クロスガイド303内には、閉塞部306が設けられている。閉塞部306の中心には、各圧縮ステージ201〜205内を往復動するピストンとそれぞれ対応するクロスヘッドを接続するピストンロッド213を貫通させるための貫通孔が形成されている。
閉塞部306より上側のクロスガイド303の内部空間には、圧縮機ユニット100の安全性の向上のために、不活性ガス(たとえば、窒素)が供給されている。不活性ガスの供給圧力は、大気圧と略等しい。したがって、クロスガイド303の内部空間の圧力は、クランクケース301の内部空間の圧力と同様に、大気圧に略等しい。
第1〜第5圧縮ステージ201〜205は、水平方向に配列されたクロスガイド303の位置に合わせて構築されている。モータ302側から順に、第1圧縮ステージ201、第4圧縮ステージ204、第5圧縮ステージ205、第2圧縮ステージ202、第3圧縮ステージ203および第1圧縮ステージ201が配列されている。第1〜第5圧縮ステージ201〜205は、図1に示されている配管接続が得られるように流路110によって接続されている。なお、図2では、第1〜第5圧縮ステージ201〜205の配置を模式的に示しており、実際には第1〜第5圧縮ステージ201〜205は密接している。さらに、各圧縮ステージ201〜205の配列順番は、これに限るわけではない。
第1圧縮ステージ201は、シリンダ部211と、ピストン212と、ピストンロッド213と、一対の吸込弁214と、一対の吐出弁215と、シリンダライナ(図示せず)とを有している。
シリンダ部211は、クロスガイド303と略同軸の筒部216と、クランク機構側の筒部216の開口端に取り付けられたリアヘッド217と、筒部216の他方の開口端を閉じているフロントヘッド218とを含んでいる。リアヘッド217の中心位置には、貫通孔が形成されている。リアヘッド217の中心位置には、貫通孔と、貫通孔と略同軸の凹部が形成されている。リアヘッド217の凹部は、クランク機構側に開口している。
ピストン212は、筒部216とリアヘッド217とフロントヘッド218とによって囲まれたシリンダ部211の収容空間に収容されている。シリンダ部211内では、ピストン212のクランク機構側の端面とリアヘッド217との間、および、ピストン212のクランク機構とは反対側の端面とフロントヘッド218との間に、対象ガスを圧縮するための圧縮室221,222が形成されている。このように、第1圧縮ステージ201は、圧縮室221,222がピストン212の両側に形成されたダブルアクティング構造となっている。
一対の吸込弁214は、圧縮室221,222に対応した位置において形成された吸込口に取り付けられている。これらの吸込弁214は、圧縮室221,222内の対象ガスの圧力が、吸込弁214の上流側の圧力と同じまたはそれ以下になると、圧縮室221,222への対象ガスの流入を許容する。
一対の吐出弁215は、圧縮室221,222に対応した位置において形成された吐出口に取り付けられている。これらの吐出弁215は、圧縮室221,222内の対象ガスの圧力が、吐出弁215の下流側の圧力と同じまたはそれ以上になると、圧縮室221,222からの対象ガスの流出を許容する。
図略のシリンダライナは、シリンダ部211の摩耗を抑制するために、シリンダ部211の内周面に取付けられた筒状の部材であり、鋳鉄又は合金鋼により形成されている。シリンダライナは後述の第1シール部との接触により摩耗した場合には、取り換え可能となっている。以下の説明では、シリンダライナはシリンダ部211の一部として説明する。
ピストンロッド213は、クランク機構側におけるピストン212の端面とクランク機構のクロスヘッドとに接続されている。ピストンロッド213は、リアヘッド217を貫通しているとともに、クロスガイド303内でクランク機構側に延び、閉塞部306の貫通孔に挿通されている。
第1圧縮ステージ201は、クランク機構の潤滑に用いられた潤滑油がピストンロッド213の外周部を通じて圧縮室221,222に進入することを防止するために、ワイパー部231およびオイルスリンガ232を有している。
ワイパー部231は、ピストンロッド213の周囲を囲む環状のシール部材である。ワイパー部231は閉塞部306に固定されている。ワイパー部231の内周部は、ピストンロッド213の外周部に接触している。
オイルスリンガ232は環状の板部材である。オイルスリンガ232は、ワイパー部231とリアヘッド217との間にてピストンロッド213に固定される。
第1圧縮ステージ201は、第1シール部241と第2シール部242とを有している。第1シール部241は、圧縮室221,222間における対象ガスの流通を防ぐために設けられている。第2シール部242は、圧縮室221からクロスガイド303内への対象ガスの漏出を防ぐために設けられている。
第1シール部241は、ピストン212の外周部に装着された複数のピストンリング243(ピストンリング群)によって構成される。すなわち、第1シール部241は、ピストンリング243の外周部がシリンダ部211(より正確には、図略のシリンダライナ)に接触することにより、ピストン212とシリンダ部211の内面との間をシールする接触式のシール部材である。また、第1シール部241は、ピストンリング243に潤滑油が供給されない無給油式(換言すれば、無潤滑式)のシール部材でもある。なお、ピストン212とシリンダ部211の内面との接触を防止するためのライダーリングは図示していない。
第1圧縮ステージ201では、ピストンリング243がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)または変性PTFEを主成分とする材料を用いて形成される。第2ないし第4圧縮ステージ202〜204においても同様である。
第2シール部242の概略的な断面が、図3に示されている。図2および図3に示されるように、第2シール部242はいわゆるロッドパッキンであり、複数のケース部244と、複数のリング部249と、押さえ部294とを含んでいる。ケース部244およびリング部249は、リアヘッド217内に配置されたピストンロッド213の周囲を囲んでいる。
複数のケース部244はリアヘッド217とピストンロッド213との間において、凹部に収容されている。
ケース部244は、略円形の底部251と、底部251の外縁から圧縮室221側へ突出した周壁部252とを含んでいる。底部251の略中央には、ピストンロッド213が挿通される貫通孔が形成されている。ケース部244の内側にはリング部249が収容される。
押さえ部294は、ケース部244よりもクランク機構側に位置する。押さえ部294は図略のボルト等によりリアヘッド217に固定される。
複数のリング部249は、ピストンロッド213の軸方向に沿って並ぶ。リング部249の内周部は、ピストンロッド213の外周部に接触する。すなわち、第2シール部242は接触式のシール部材として、ピストンロッド213とリアヘッド217との間をシールしている。また、第2シール部242は、リング部249に潤滑油が供給されない無給油式(換言すれば、無潤滑式)のシール部材でもある。
本実施形態では、リング部249は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)または変性PTFEを主成分とする材料を用いて形成される。第2ないし第4圧縮ステージ202〜204においても同様である。
第2〜第4圧縮ステージ202〜204は、ピストン212の直径およびシリンダ部211の内径が第1圧縮ステージ201よりも小さい点を除いて、第1圧縮ステージ201とほぼ共通している。すなわち、第2〜第4圧縮ステージ202〜204では、それぞれの第1シール部241および第2シール部242が接触式かつ無給油式である。また、第2〜第4圧縮ステージ202〜204はダブルアクティング構造である。
第5圧縮ステージ205では、第1〜第4圧縮ステージ201〜204よりもピストン212の直径およびシリンダ部211の内径が小さい。第5圧縮ステージ205のシリンダ部211内では、第1圧縮ステージ201と同様に、ピストン212を挟んでクランク機構とは反対側の空間に圧縮室222が形成されている。
一方、ピストン212を挟んでクランク機構側の空間には、吸込弁が取り付けられる位置に当該吸込弁を介在させることなく管部材119が接続されている。管部材119は、第5圧縮ステージ205の吸込側においてステージ接続流路113に接続されている。その結果、シリンダ部211のピストン212を挟んでクランク機構側の空間は、ステージ接続流路113と常に連通した状態となる。すなわち、当該空間は対象ガスを圧縮するために用いられない非圧縮室223となっている。このように、第5圧縮ステージ205は、他の圧縮ステージ201〜204とは異なり、ピストン212の一方側の空間のみが圧縮室222とされるシングルアクティング構造である。
第5圧縮ステージ205では、第2〜第5圧縮ステージ202〜205の中で最も高い圧力を受けるので、そのシリンダ部211は鍛造材によって形成されている。
第5圧縮ステージ205は、第1シール部241および第2シール部242を有する。第5圧縮ステージ205の第1シール部241は、第1圧縮ステージ201と同様に複数のピストンリング243(ピストンリング群)によって構成された接触式のシール部材であり、ピストン212とシリンダ部211の内面との間をシールする。また、第1シール部241は無給油式(すなわち、ピストンリングに潤滑油が供給されない構造)でもある。ピストンリング243は、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のうち少なくとも一方を主成分とする、または、これの一方若しくは両方とPTFE若しくは変性PTFEとを混合したものを主成分とする材料を用いて形成されている。このような主成分の材料を用いることにより、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のみを主成分とするピストンリングよりも大きな曲げ強さ(ヤング率)を有する。代替的に、ピストンリング243は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のみを主成分とするピストンリングよりも大きな曲げ強さ(ヤング率)を有している他のエンジニアリングプラスチック(たとえば、ポリアミド(PA))を主成分とする材料を用いて形成されてもよい。更に代替的に、ピストンリング243は、炭素繊維を成型することによって形成されてもよい。これらの代替的な材料も、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のうち少なくとも一方を主成分とする、または、これの一方若しくは両方とPTFE若しくは変性PTFEとを混合したものを主成分とする材料を用いて形成されたピストンリング243と同様に、高いシール性能および高い耐久性能を有する。後述のリング部249についても同様である。
第5圧縮ステージ205の第2シール部242は、第1圧縮ステージ201と同様にリング部249の内周部が、ピストンロッド213の外周部に接触する接触式のシール部材である。第2シール部242は無給油式(すなわち、リング部249に潤滑油が供給されない構造)でもある。
リング部249は、ピストンリング243と同様に、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のうち少なくとも一方を主成分とする材料を用いて形成されている。代替的に、リング部249は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)よりも大きな曲げ強さ(ヤング率)を有している他のエンジニアリングプラスチック(たとえば、ポリアミド(PA))を主成分とする材料を用いて形成されてもよい。更に代替的に、リング部249は、炭素繊維を成型することによって形成されてもよい。これらの代替的な材料も、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のうち少なくとも一方を主成分とする材料を用いて形成されたリング部249と同様に、高いシール性能および高い耐久性能を有する。
第5圧縮ステージ205では、第2シール部242のケース部244およびリング部249の組の数が第1圧縮ステージ201よりも多い。これにより、第5圧縮ステージ205における第2シール部242の軸方向の長さは、第1圧縮ステージ201よりも長くなり、第2シール部242の一部はリアヘッド217からクランク機構側に突出している。第5圧縮ステージ205では、第2シール部242のシール領域が第1圧縮ステージ201よりも大きいことから、より高圧の対象ガスをシールすることが可能となる。第5圧縮ステージ205の他の構造は、第1圧縮ステージ201と同様である。
第1〜第5圧縮ステージ201〜205では、力の不釣り合いを低減するためピストン212及びピストンロッド213の重量と対応するクロスヘッドの重量の合計は略等しくされる。なお、ウェイトを追加することによりクロスヘッドの重量が調整されてもよい。
複数のダンパーはそれぞれ流路110上に設けられた耐圧容器である。これらのダンパーの容積は、流入する対象ガスの圧力変動を低減するのに十分な大きさに設定されている。ダンパー261,262は2つの分岐部111A,111Bにそれぞれ設けられており、第1圧縮ステージ201に近接する。2つの第1圧縮ステージ201の吸込圧力の変動を抑制する。
分岐部113A,113Bの下流端に、別の1つのダンパー263が設けられている。ダンパー263には、2つの第1圧縮ステージ201で圧縮された対象ガスが流入する。ダンパー263は第1圧縮ステージ201に近接し、第1圧縮ステージ201の吐出圧力の変動を抑制する。また、ダンパー263は2つに分けられていてもよい。
ダンパー263の下流側には、さらに別のダンパー264が設けられている。ダンパー264は第2圧縮ステージ202に近接し、第2圧縮ステージ202の吸込圧力の変動を抑制する。このように、ステージ接続流路113における第1圧縮ステージ201と第2圧縮ステージ202との間の流路区間には、2つのダンパー263,264が設けられる。ダンパー263,264間の距離(ステージ接続流路113に沿った距離である。以下同様。)は、第1圧縮ステージ201とダンパー263との間の距離、および、第2圧縮ステージ202とダンパー264との間の距離よりも大きい。以下に説明する他の圧縮ステージ間においても、この距離の関係と同様の関係となるように2つのダンパーが配置される。
第2圧縮ステージ202と第3圧縮ステージ203との間の流路区間には、ダンパー265,266が設けられている。ダンパー265は第2圧縮ステージ202に近接し、第2圧縮ステージ202の吐出圧力の変動が抑制される。ダンパー266は第3圧縮ステージ203に近接し、第3圧縮ステージ203の吸込圧力の変動が抑制される。
第3圧縮ステージ203と第4圧縮ステージ204との間の流路区間には、第3圧縮ステージ203および第4圧縮ステージ204にそれぞれ近接するダンパー267,268が設けられる。ダンパー267,268により第3圧縮ステージ203の吐出圧力と第4圧縮ステージ204の吸込圧力の変動が抑制される。第4圧縮ステージ204と第5圧縮ステージ205との間の流路区間には、これらの圧縮ステージ204,205にそれぞれ近接するダンパー271,272が設けられ、第4圧縮ステージ204の吐出圧力と第5圧縮ステージ205の吸込圧力の変動が抑制される。
需要先接続流路114には、第5圧縮ステージ205に近接して残りの1つのダンパー273が配置されている。ダンパー273は、第5圧縮ステージ205の吐出圧力の変動を抑制する。
複数のクーラは、ステージ接続流路113および需要先接続流路114に設けられている。具体的には、クーラ281は、ダンパー263,264の間の流路区間に配置されている。別のクーラ282は、ダンパー265,266の間の流路区間に配置されている。さらに別のクーラ283は、ダンパー267,268の間の流路区間に配置されている。さらに別のクーラ284は、ダンパー271,272の間の流路区間に配置されている。残りのクーラ285は、需要先接続流路114においてダンパー273の下流側に配置されている。クーラ281〜285は、第1〜第5圧縮ステージ201〜205によって圧縮された対象ガスをそれぞれ冷却するために設けられている。
圧縮機ユニット100は、需要先へ供給される対象ガスの圧力や流量を調整するための制御や圧縮機500の停止時において流路110を脱圧するための制御を行うように構成されている。これらの制御に用いられる制御関連部位が以下に説明される。
需要先へ供給される対象ガスの圧力や流量を調整するために、圧縮機ユニット100は、バイパスライン411と、制御弁412と、圧力センサ413と、制御部414とを有している。バイパスライン411は、ステージ接続流路113においてクーラ284と第5圧縮ステージ205の吸込側のダンパー272との間から分岐し、貯槽接続流路111に接続されている。すなわち、バイパスライン411は、第1〜第4圧縮ステージ201〜204およびダンパー261〜268,271を跨いで、第1圧縮ステージ201の上流側に対象ガスを戻すように構成されている。制御弁412は、バイパスライン411に設けられている。圧力センサ413は、クーラ284とダンパー272との間に取り付けられ、第5圧縮ステージ205の吸込側における対象ガスの圧力を検出する。
圧力センサ413および制御弁412には、制御部414に電気的に接続されている。制御部414は、圧力センサ413で取得された圧力に基づいて制御弁412の開度を制御する。なお、制御部414はソフトウェアとして構築されてもよく、専用回路で構築されてもよい。
圧縮機ユニット100は脱圧制御のために、脱圧ライン415と、2つの開閉弁416,417と、逆止弁418とを有している。逆止弁418は、最終の圧縮ステージである第5圧縮ステージ205の吐出側流路(すなわち、需要先接続流路114)に設けられる。開閉弁416は、逆止弁418よりも下流側に設けられている。開閉弁416の開度は、制御部414からの指令信号の受信に応じて制御される。脱圧ライン415は、逆止弁418の下流側且つ開閉弁416の上流側において、需要先接続流路114から分岐している。脱圧ライン415の先端は、大気開放されていてもよいし、脱圧ライン415を通じて圧縮機ユニット100から放出された対象ガスを燃焼するフレア設備に接続されていてもよい。開閉弁417は、脱圧ライン415に設けられている。開閉弁417の開度は、制御部414からの指令信号の受信に応じて制御される。圧縮機ユニット100の駆動時には、通常、開閉弁417は閉じられている。
圧縮機ユニット100の動作および対象ガスの流れが以下に説明される。
モータ302が作動すると、クランク機構のクロスヘッドが直線的に往復動する。クロスヘッドの動力は、第1〜第5圧縮ステージ201〜205のピストンロッド213を介して、第1〜第5圧縮ステージ201〜205のピストン212に伝達される。この結果、これらのピストン212も直線的に往復動する。
このとき、各圧縮ステージ201〜205では、クランク機構に用いられた潤滑油がピストンロッド213の外周部を伝ってシリンダ部211に移動しようとする。しかし、ワイパー部231の内周部は、ピストンロッド213の外周部に接触しているので、クランクケース301から流出しようとした潤滑油の多くは、ワイパー部231によって掻き取られる。これにより、シリンダ部211への潤滑油の進入が抑制される。
さらに、ピストンロッド213のワイパー部231よりもシリンダ部211側には、オイルスリンガ232が設けられている。これにより、ごく微量の潤滑油がワイパー部231を超えたとしてもオイルスリンガ232により潤滑油の進入が阻止される。
第1〜第4圧縮ステージ201〜204では、ピストン212の往復動に伴って2つの圧縮室221,222での対象ガスの吸込および吐出が交互に繰り替えされる。第5圧縮ステージ205では1つの圧縮室222での対象ガスの吸込および吐出が行なわれる。各圧縮ステージ201〜205から吐出された対象ガスはクーラ281〜285を通過することにより冷却される。
圧縮機500が作動している間、圧力センサ413は、第5圧縮ステージ205の吸込圧力を検出している。検出された圧力は制御部414へと出力される。制御部414は、取得された圧力に基づき、第5圧縮ステージ205の吸込圧力が略一定となるように制御弁412の開度を制御する。第5圧縮ステージ205では、第1〜第4圧縮ステージ201〜204で昇圧された100bar〜150bar程度の対象ガスが、さらに300bar程度まで昇圧されることから、第1シール部241の摩耗が進行しやすく、処理量低下による圧力変動が生じやすい。これに対して、圧縮機ユニット100では、バイパスライン411を用いて第5圧縮ステージ205の吸込圧力が略一定となるように制御されるため安定した運転を継続することができる。
圧縮機500の停止時には、圧縮機ユニット100に対する脱圧処理を要求する外部信号が制御部414に入力される。外部信号は、作業者の操作に応じて生成されてもよいし、圧縮機ユニット100の状態を監視しているセンサが圧縮機ユニット100の異常を検出したときに生成されてもよい。制御部414は、圧縮機ユニット100の下流側にある設備の外部信号の受信に応じて、開閉弁416を閉じるための指令信号および開閉弁417を開くための指令信号を生成する。これらの指令信号は、開閉弁416,417へそれぞれ出力される。開閉弁416は、指令信号に応じて閉じる一方で、開閉弁417は、指令信号に応じて開く。
開閉弁417が開放されることにより、第5圧縮ステージ205内の対象ガスは脱圧ライン415を介して排出される。第5圧縮ステージ205と脱圧ライン415との間に逆止弁418が設けられることにより、脱圧ライン415から第5圧縮ステージ205への逆流が防止される。さらに、開閉弁416が閉じられているため需要先から対象ガスが逆流することも防止される。脱圧ライン415に流入した対象ガスは大気中に放出されたり、フレア設備で燃焼されたりする。なお、圧縮機ユニット100では、第1〜第4圧縮ステージ201〜204内の対象ガスも脱圧ライン415により脱圧されてもよい。また、第1〜第4圧縮ステージ201〜204に別の脱圧ラインが設けられてもよい。
以上、本実施形態に係る圧縮機ユニット100について説明したが、従来、船舶内にてボイルオフガスをエンジン等の需要先に供給する圧縮機では、特開2018−128039号公報に示されるように、給油式の圧縮機が用いられ、当該圧縮機から吐出されたボイルオフガスに含まれる潤滑油はセパレータ等により回収されていた。これに対し、圧縮機500では、全ての圧縮ステージ201〜205において第1および第2シール部241,242を無給油式とすることにより、そもそも対象ガス中に油が混入してしまうことが防止される。さらに、ワイパー部231およびオイルスリンガ232によってクランク機構の潤滑に用いられた潤滑油がシリンダ部211へ進入することが防止され、より確実に対象ガスを清浄に保つことができる。
さらに、第1および第2シール部241,242が接触式とされることから、シール性を向上することができる。特に、最終の圧縮ステージである第5圧縮ステージ205では、100bar〜150barの対象ガスを300barまで昇圧する高圧環境下となることから、第1および第2シール部241,242が接触式であることが好ましい。
このように、圧縮機500では、第1及び第2シール部241,242に無給油式かつ接触式のシール部材を用いることで信頼性を向上することができる。
圧縮機500では、最も高圧の環境下で駆動される第5圧縮ステージ205はシングルアクティング構造とすることで、第2シール部242の負荷を軽減し、かつ、他の圧縮ステージ201〜204はダブルアクティング構造とすることで対象ガスの処理量を確保することができる。
第5圧縮ステージ205では、圧縮室222と第2シール部242との間に非圧縮室223が設けられるため、第2シール部242の負荷をより低減することができる。並列に配置された2つの第1圧縮ステージ201によって対象ガスを圧縮することにより、対象ガスの処理量をより確保することができる。
圧縮機500では、従来技術とは異なり、シール部への給油は不要とされるので、給油のための付帯設備が必要とされない。その結果、給油式の圧縮機に比べて、圧縮機ユニット100内のレイアウトを簡素化することができる。
ワイパー部231が取り付けられたクランクケース301の内圧は、大気圧に略等しい。ワイパー部231よりピストン212側の空間(すなわち、クロスガイド303の内部空間)には、大気圧に略等しい圧力の不活性ガスが供給されている。したがって、ワイパー部231の前後の圧力差は略ゼロである。これにより、圧力差に起因するワイパー部231の変形を抑制することができ、ワイパー部231のシール性能を長期間に亘って発揮することができる。加えて、第1〜第5圧縮ステージ201〜205の全てにおいて、ワイパー部231の周囲における圧力差が略ゼロであるので、第1〜第5圧縮ステージ201〜205のワイパー部231は、共通の部材を用いて形成され得る。
第5圧縮ステージ205では、第1シール部241および第2シール部242に用いられるピストンリング243およびリング部249は、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のうち少なくとも一方を主成分とする、または、これの一方若しくは両方とPTFE若しくは変性PTFEとを混合したものを主成分とする材料を用いて形成されている。これらの材料は、PTFEのみをを主成分とする材料に比べて硬質であるので、高圧環境下であっても、第1シール部241および第2シール部242は変形しにくく、長期間に亘って優れたシール性能を有することができる。
ダンパー261〜268,271〜273がそれぞれ、第1〜〜第5圧縮ステージ201〜205の吸込側および吐出側の近傍に設けられることにより、対象ガスの圧力変動が効果的に抑制される。これにより、圧力変動に起因する圧縮機ユニット100の振動が抑制される。
ステージ接続流路113におけるバイパスライン411の上流端(バイパスライン411内の流れ方向における上流側の端部)の接続位置は、ダンパー271,272の間である。これにより、バイパスライン411の上流端の接続位置が、第4圧縮ステージ204とダンパー271との間である場合や、第5圧縮ステージ205とダンパー272との間である場合に比べて、第4圧縮ステージ204の吐出圧力や第5圧縮ステージ205の吸込圧力の変動の影響をバイパスライン411に受けにくくなる。
また、貯槽接続流路111におけるバイパスライン411の下流端(バイパスライン411内の流れ方向における下流側の端部)の接続位置は、第1圧縮ステージ201の吸込側のダンパー261,262よりも上流側である。バイパスライン411の下流端の接続位置が、第1圧縮ステージ201とダンパー261との間に位置する場合に比べて、第1圧縮ステージ201の吸込圧力の変動の影響をバイパスライン411に受けにくくなる。
図1に示す圧縮機ユニット100では、脱圧制御は制御部414とは別の制御部により行われてもよい。脱圧処理の他の手法として、需要先の圧力を下げるため開閉弁416が開放された状態が維持されてもよい。なお、流路110からの脱圧ライン415の分岐部の上流において、逆止弁418が設けられているので、需要先から圧縮機ユニット100に向かう対象ガスの流れが防止される。
図4はバイパスラインの他の例を示す図である。ステージ接続流路113におけるバイパスライン411の上流端は、第4圧縮ステージ204の吐出側のダンパー271とクーラ284との間において流路110から分岐してもよい。
図5はバイパスラインのさらに他の例を示す図である。バイパスライン411の上流端は、第4圧縮ステージ204の吐出側のダンパー271に直接接続されていてもよい。
図6はバイパスラインのさらに他の例を示す図である。図6では、2つのバイパスライン421,422を用いて、需要先へ供給される対象ガスの圧力や流量が制御される。圧縮機ユニット100Aの他の構成は圧縮機ユニット100と同様である。
ステージ接続流路113におけるバイパスライン421の上流端(バイパスライン411内の流れ方向における上流側の端部)の接続位置は、第5圧縮ステージ205の吸込側のダンパー272とクーラ284との間である。また、ステージ接続流路113におけるバイパスライン411の下流端(バイパスライン411内の流れ方向における下流側の端部)の接続位置は、第3圧縮ステージ203の吸込側のダンパー266とクーラ282との間である。バイパスライン421と第5圧縮ステージ205の吸込側のダンパー272との間には圧力センサ413が設けられる。
ステージ接続流路113におけるバイパスライン422の上流端の接続位置は、第3圧縮ステージ203の吸込側のダンパー266とクーラ282との間である。また、貯槽接続流路111におけるバイパスライン411の下流端の接続位置は、第1圧縮ステージ201の吸込側のダンパー261,262よりも上流側である。バイパスライン422と第2圧縮ステージ202の吐出側のダンパー265との間には圧力センサ419が設けられる。
制御弁423は、バイパスライン421に取り付けられている。制御弁424は、バイパスライン422に取り付けられている。
制御部414では、圧力センサ413から取得された圧力に基づいて第5圧縮ステージ205の吸込圧力が略一定となるように制御弁423の開度が制御される。また、圧力センサ419から取得された検出値に基づいて第3圧縮ステージ203の吸込圧力が略一定となるように制御弁424の開度が制御される。
図6に示す圧縮機ユニット100Aでは、第1圧縮ステージ201の吸込側と第5圧縮ステージ205の吐出側との間で非常に大きな圧力差(約300bar)が生じているが、2つのバイパスライン421,422を用いることにより2段階で圧力を制御することができ、圧力の変動をより効果的に抑制することが可能となる。
以上に説明したように、圧縮機ユニット100,100Aでは、第1圧縮ステージ201〜第5圧縮ステージの全ての第1シール部241および第2シール部242が無給式であることから、バイパスライン411を流れる対象ガスに潤滑油は混入する虞がないため、バイパスラインの上流端および下流端の接続位置、並びに、バイパスラインの数を任意に設定することができる。
上述の実施形態に関して、対象ガスは、単一の需要先に供給されている。しかしながら、対象ガスは、複数の需要先に供給されてもよい。3つの需要先に対象ガスを供給するように構成された圧縮機ユニット100Bが、図7に示されている。図1および図7を参照して、圧縮機ユニット100Bが説明される。
図7に示す第5圧縮ステージ205の吐出側の流路(需要先接続流路114)に「需要先1」が繋がる。需要先1は船舶のエンジンである。ステージ接続流路113における第4圧縮ステージ204と第5圧縮ステージ205との間の流路区間から伸びる供給管431に「需要先2」が繋がる。需要先2は対象ガスを再液化する液化装置である。液化装置は、再液化された対象ガスがLNG貯槽101に戻るようにLNG貯槽101に図略の管部材を用いて接続される。ステージ接続流路113における第2圧縮ステージ202と第3圧縮ステージ203との間の流路区間から伸びる供給管432に「需要先3」が繋がる。需要先3は船舶に搭載された発電機である。
LNG貯槽101から需要先1へ供給される対象ガスの処理に用いられる構造は、図1を参照して説明された圧縮機ユニット100と同一である。
圧縮機ユニット100Bは、圧縮機ユニット100のバイパスライン411に代えて、バイパスライン433,434,435を有している。
バイパスライン433は第5圧縮ステージ205およびその前後のダンパー272,273を跨ぐ。バイパスライン434は第3および第4圧縮ステージ203,204、並びに、それらの前後のダンパー266〜268,271を跨ぐ。バイパスライン435は第1および第2圧縮ステージ201,202、並びに、ダンパー261〜265を跨ぐ。
制御弁436,437,438はそれぞれバイパスライン433,434,435に取り付けられている。制御弁436,437,438は制御部414に接続されている。
制御部414により、圧力センサ413の検出値に基づいて第5圧縮ステージ205の吐出圧力が一定となるように制御弁436の開度が制御される。同様に、圧力センサ441の検出値に基づき第5圧縮ステージ205の吸込圧力が一定となるように制御弁437の開度が制御がされる。圧力センサ442の検出値に基づき第3圧縮ステージ203の吸込圧力が一定となるように制御弁438の開度が制御される。
圧縮機ユニット100Bは、3つの需要先1〜3に流入する対象ガスの圧力を調整可能とするために、3つのバイパスライン433,434,435、および、これらに設けられた制御弁436,437,438を有することにより、需要先に適した流量および/又は圧力を得ることができる。
図8は圧縮機ユニットの他の例を示す図である。圧縮機ユニット100Cでは、ステージ接続流路113における各圧縮ステージ201〜205の間の流路区間の脈動を無視できる場合は、ダンパーは1つであってもよい。これにより圧縮機ユニット100Cを廉価に製造可能である。
図9は第5圧縮ステージ205の第2シール部242の他の例を示す図である。押さえ部294には、シール部249等を冷却するための冷却流体が供給される貫通孔295が形成されている。本実施形態では、冷却流体は水である。冷却流体は不凍液でもよい。貫通孔295は、ピストンロッド213が挿通された貫通孔から半径方向にずれた位置に形成されている。
最も上側のケース部244を除いて、ケース部244には、冷却流体が流れるケース冷却流路290が形成されている。
ケース冷却流路290は、圧縮室221側に向いたケース部244の面に形成された環状溝291と、環状溝291に繋がるように軸方向にケース部244を貫通した貫通孔292とを含んでいる。半径方向における貫通孔292の形成位置は、押さえ部294の貫通孔295の形成位置に対応している。
最も下側のケース部244の環状溝291は排出路(図9で破線にて示す。)に連通している。
冷却流体は押さえ部294の貫通孔295に供給されると、環状溝291に流入してケース部244を冷却し、排出路を通じて排出される。これにより、リング部249とピストンロッド213との間に生じた摩擦熱が除去される。その結果、第2シール部242は潤滑油が供給されなくとも、長期間に亘って優れたシール性能を維持することができる。
この第2シール部242の構造は、第1ないし第4圧縮ステージ201〜204に適用されてもよい。なお、図9の第2シール部242では、最も上側のケース部244に環状溝291が形成されてもよい。
図10ないし図12は第5圧縮ステージ205のシリンダ部211の他の例を示す図である。図10は、シリンダ部211の概略的な平面図である。図11は、図10のA−A線に沿うシリンダ部211の概略的な断面図である。図12は、シリンダ部211の軸上でA−A線に直交するB−B線に沿うシリンダ部211の概略的な断面図である。図2、図10〜図12を参照して、シリンダ部211が説明される。
シリンダ部211は、フロントヘッド218と、ピストン212が収容された筒部216と、筒部216の外側面に取り付けられた2つのジャケット526と、図3と同様のリアヘッド217を有する。図10に示すように、筒部216は、平面視において略矩形状の平面形状を有している。フロントヘッド218および筒部216の周面は、一対の第1面523(図10の左右の面)と、第1面523に略直交する一対の第2面524(図10の上下の面)とを含んでいる。
筒部216には、一対の第1面523を貫通する複数の第1貫通孔541および複数の第2貫通孔542が形成されている。第1貫通孔541および第2貫通孔542の両端は、一対の第1面523において開口している。第1貫通孔541は、ピストン212が収容された収容空間と一方の(図10の上側の)第2面524との間を通過している。第2貫通孔542は、ピストン212を挟んで第1貫通孔541とは反対側の位置し、ピストン212が収容された収容空間と一方の(図10の下側の)第2面524との間を通過している。
図11に示すように、複数の第1貫通孔541および複数の第2貫通孔542の存在領域は、第1シール部241(すなわち、複数のピストンリング243)の存在領域の一部と径方向において重なる。
図10に示すように、シリンダ部211は一対の第1面523に固定された一対のジャケット526を有している。これらのジャケット526それぞれは、対応する第1面523から離間した位置に配置された底壁部527と、底壁部527の外周縁から対応する第1面523に向けて突出した周壁部528とを有している。周壁部528の先端縁面は、対応する第1面523に当接している。周壁部528および第1面523の当接部位は、シール材料によってシールされている。
シリンダ部211では、第1面523、周壁部528および底壁部527によって囲まれた流路529が形成される。流路529は第1貫通孔541および第2貫通孔542と連通する。
圧縮機500では、流路529、複数の第1貫通孔541および複数の第2貫通孔542により第1シール部241(およびピストン212)を周方向に囲むシリンダ冷却流路部540が形成される。一対のジャケット526のうち一方には、流路529へ冷却流体を供給するための供給路(図示せず)が形成されている。他方のジャケット526には、第1シール部241の冷却後の冷却流体を排出するための排出路(図示せず)が形成されている。圧縮機500の駆動時には、冷却流体は供給路を通じて一方のジャケット526の流路529に供給され、第1貫通孔541および第2貫通孔542を通過した後、他方のジャケット526の流路529に流入して排出路より排出される。
シリンダ冷却流路部540が第1シール部241を全周に亘って冷却することにより第1シール部241において発生した熱を効率よく除去することができる。その結果、第1シール部241は、潤滑油が供給されなくとも、長期間に亘って優れたシール性能を維持することができる。
上記の構成によれば、筒部216に直接的に第1貫通孔541および第2貫通孔542を設けることで、ピストン212に近い位置に冷却流体を流すことができ、冷却効率をより向上することができる。
図13は第5圧縮ステージ205に係るシリンダ冷却流路部540の他の例を示す概略的な平面図である。図14は、シリンダ部211の概略的な縦断面図である。シリンダ冷却流路部540は、ジャケット526を用いることなく形成されてもよい。
図13に示すように、シリンダ冷却流路部540は、複数の第1貫通孔541、複数の第2貫通孔542、複数の第3貫通孔543、複数の第4貫通孔544、および、複数の軸方向流路部532を備える。複数の第1貫通孔541は一対の第1面523を貫通するように形成される。複数の第2貫通孔542は、ピストン212を挟んで第1貫通孔541とは反対側に位置し、一対の第1面523を貫通する。複数の第3貫通孔543は一対の第2面524を貫通するように形成される。複数の第4貫通孔544は、ピストン212を挟んで第3貫通孔543とは反対側に位置し、一対の第2面524を貫通する。第1ないし第4貫通孔541〜544の開口は封止部材533により塞がれている。シリンダ冷却流路部540では、1組の第1ないし第4貫通孔541〜544により第1シール部241(およびピストン212)を囲む流路が形成される。図14に示すように、当該流路は軸方向流路部532により、軸方向における別の流路と相互に連通されている。冷却流体は、図略の供給路よりシリンダ冷却流路部全体を流れ、図略の排出路より排出される。軸方向流路部532の一端若しくは両端は、シリンダ部211の上面又は下面を貫通し、シールされている。
シリンダ部211は、ジャケット526を有していないので、ジャケット526の分だけ、図10を参照して説明されたシリンダ部211よりも小型化される。
図10〜図14に示されるシリンダ冷却流路部540は、ピストン212を囲むように環状に連続した流路で構成されている。しかしながら、必ずしも、環状に連続した流路でピストン212を囲む必要はなく、独立した複数の流路でピストン212を囲んでもよい。すなわち、略矩形状のシリンダ部の4つの外側面(第1面523および第2面524に相当する面)それぞれに対応する独立の流路が形成されてもよい。例えば、図15に示すように、シリンダ冷却流路部540は、2つのジャケット526により形成された2つの流路529と、2つの流路529とは独立した複数の第1貫通孔541および複数の第2貫通孔542により形成されてもよい。
図10〜図15を参照して説明されたシリンダ部211の構造は、第5圧縮ステージ205以外の圧縮ステージ201〜204に適用されてもよい。また、シリンダ部211では、第1シール部241を十分冷却することができるのであれば、第1〜第4貫通孔541〜544の数は1でもよい。
図16は第5圧縮ステージ205のシリンダ部211の他の構造を示す図である。シリンダ部211では、リアヘッド217が省略し、第2シール部242が筒部216の開口端を塞いでもよい(すなわち、リアヘッド217の役割を兼ねてもよい)。他の圧縮ステージ201〜204のシリンダ部211も図16と同様の構造が採用されてよい。
図17は圧縮機500の他の例を示す図である。圧縮機500では、第5圧縮ステージ205E(最終の圧縮ステージ)および第4圧縮ステージ204E(1つ前の圧縮ステージ)がタンデム構造とされてもよい。
第4圧縮ステージ204Eは、第5圧縮ステージ205Eよりもクランク機構側に形成されている。第4圧縮ステージ204Eのシリンダ部211は、ピストンロッド213の軸方向に延びる筒部511と、クランク機構とは反対側において筒部511の開口端を閉じる上部512とを有している。上部512には、筒部511と略同軸の貫通孔が形成されている。クランク機構側の筒部511の開口端は、リアヘッド217によって閉じられている。リアヘッド217には、第2シール部242が固定されている。
第4圧縮ステージ204Eのピストン513はピストンロッド213に接続されている。ピストン513の外周部には、複数のピストンリング243が装着され、これらのピストンリング243は、第4圧縮ステージ204Eの第1シール部241を形成している。
シリンダ部211内においてピストン513を挟んでクランク機構とは反対側の空間は、第4圧縮ステージ204Eの圧縮室224aとして用いられる。ピストン513を挟んでクランク機構側の空間は非圧縮室224bであり、非圧縮室224bには、第4圧縮ステージ204Eの吸込側の流路に開放されるように配管が接続される。なお、非圧縮室は吐出側に接続されてもよい。
第5圧縮ステージ205Eのシリンダ部211は、筒部514とフロントヘッド515とを有している。筒部514は、第4圧縮ステージ204Eの上部512に設けられる。第5圧縮ステージ205Eの筒部514の内径は、第4圧縮ステージ204Eの筒部511の内径よりも小さい。
第5圧縮ステージ205Eのピストン516は、第4圧縮ステージ204のピストン513と一体的に形成される。第5圧縮ステージ205Eのピストン516の直径は、第4圧縮ステージ204Eのピストン513の直径よりも小さい。ピストン516の外周部には、複数のピストンリング243が装着され、これらのピストンリング243は、第5圧縮ステージ205Eの第1シール部241を形成している。
シリンダ部211内においてピストン516を挟んでクランク機構とは反対側の空間は、第5圧縮ステージ205Eの圧縮室225として用いられる。
第4圧縮ステージ204Eおよび第5圧縮ステージ205Eがタンデム構造であるため、第2シール部242は、第4圧縮ステージ204Eおよび第5圧縮ステージ205Eに共通して用いられる。第4圧縮ステージ204Eのピストン513と第2シール部242との間の空間が非圧縮室224bとされるため、第2シール部242に加わる負荷が軽減される。
図18は第4および第5圧縮ステージ204E,205Eのタンデム構造の他の例を示す図である。第4圧縮ステージ204Eでは、ピストン513を挟んでクランク機構とは反対側の空間が非圧縮室224bとされ、ピストン513を挟んでクランク機構側の空間が圧縮室224cとして用いられる。また、図19に示すように、第4圧縮ステージ204Eでは、ピストン513の両側の空間が圧縮室224d,224eとされてもよい。
図20は圧縮機500のさらに他の例を示す図である。第4圧縮ステージ204および第5圧縮ステージ205が1つのシリンダ部211により実現されてもよい。シリンダ部211では、ピストン212の前方および後方に吸込弁214および吐出弁215がそれぞれ設けられる。シリンダ部211内においてピストン212を挟んでクランク機構とは反対側の空間は、図1の第3圧縮ステージ203の吐出側の流路に接続されており、第4圧縮ステージ204の圧縮室224fとして機能する。
また、シリンダ部211内においてピストン212を挟んでクランク機構側の空間は、圧縮室224fに接続されており、第5圧縮ステージ205の圧縮室225aとして機能する。圧縮室224f,225aを繋ぐ流路上には、2つのダンパー271,272および当該ダンパー271,272の間に位置するクーラ284が設けられる。
圧縮機500では、第4圧縮ステージ204の圧縮室224fで対象ガスが圧縮されて吐出されると同時に第5圧縮ステージ205の圧縮室225aに対象ガスが吸い込まれる。第4圧縮ステージ204の圧縮室224fで対象ガスが吸い込まれると同時に第5圧縮ステージ205の圧縮室225aで対象ガスが圧縮されて吐出される。図20に示す構成では、部品数が削減される。
図21は圧縮機ユニット100のさらに他の例を示す図である。図21に示すように、図1の開閉弁416は省略されてもよい。この場合、需要先接続流路114において、脱圧ライン415は逆止弁418よりも上流側に位置する。脱圧処理の際には、需要先内の対象ガスの逆流(圧縮機ユニット100に向かう対象ガスの流れ)が逆止弁418によって防止される。図21に示されている脱圧構造は、開閉弁416が設けられていない分だけ、図1を参照して説明された脱圧構造よりも簡素化されている。
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
上述の第5圧縮ステージ205では、第1シール部241の主たるシール機能がピストンリング243とシリンダ部211との接触によって実現されるのであれば、一部にラビリンス等の非接触式シール構造を有するものが用いられてもよい。第2シール部242についても同様である。第1ないし第4圧縮ステージ201〜204の第1シール部241および第2シール部242においても同様である。また、確実にシール機能を果たすことができるのであれば、第5圧縮ステージ205を除く圧縮ステージ201〜204の全て又は一部において、第1および第2シール部241,242が非接触式のみのシール構造(たとえば、ラビリンスシール)とされてもよい。
第1ないし第4圧縮ステージ201〜204のピストンリング243は、第5圧縮ステージ205のピストンリング243と同じ材料のものが用いられてもよい。第2シール部242のリング部249においても同様である。
図2に示す第5圧縮ステージ205では、フロントヘッド218とピストン212との間の空間を圧縮室222として利用しているが、リアヘッド217とピストン212との間の空間が、第5圧縮ステージ205の圧縮室として利用されてもよい。
上述の実施形態に関して、圧縮機ユニット100は、図22に示すように単一の第1圧縮ステージ201を有していてもよい。
図1を参照して説明された2つの第1圧縮ステージ201を並列に接続する構造は、第2〜第5圧縮ステージ202〜205に適用されてもよい。
上述の実施形態に関して、バイパスラインに代えて、無段階の容量調整機構が最終の圧縮ステージに設けられてもよい。容量調整機構は、吸込弁アンローダ方式であってもよいし、クリアランスポケット方式であってもよいし、スピードコントロール方式であってもよい。容量調整機構は、圧力センサ413の検出圧力が所定の制御目標範囲に収まるように、制御部414によって制御される。
上述の実施形態に関して、圧縮機ユニット100,100Aでは、最終の圧縮ステージが吐出すべき圧力に応じて圧縮ステージの数は3、4または6のいずれかに設定されてもよい。
上述の実施形態に関して、圧縮機500と同様の構造は、ピストン212が水平方向に往復動する横型の圧縮機に適用されてもよい(図23を参照)。