図1は、第1実施例の加熱調理器1の外観形状を示す斜視図である。本実施例の加熱調理器1はいわゆるガスコンロであり、主に板金部材によって形成された筺体2と、筺体2の上に載せられた天板3とを備えており、天板3には、左コンロバーナー4Lと、右コンロバーナー4Rと、後コンロバーナー4Bとが設けられている。また、筺体2の前面側の中央部分にはグリル5が収納されており、グリル5の左側には、グリル5を操作するための操作ボタン6が搭載されている。グリル5の右側には、左コンロバーナー4Lを操作するための操作ボタン7Lと、後コンロバーナー4Bを操作するための操作ボタン7Bと、右コンロバーナー4Rを操作するための操作ボタン7Rとが設けられている。
また、筺体2の前面側の操作ボタン7L,7B,7Rの下方の位置には、左コンロバーナー4Lや、後コンロバーナー4B、右コンロバーナー4Rについての細かな設定操作を行うための操作部100が搭載されている。また、グリル5についても、細かな設定操作を行うための操作部150が、筺体2の前面側の操作ボタン6の下方の位置に搭載されている。後述するように、操作部100は可動式の可動ケース101を備えており、左コンロバーナー4Lなどについての設定操作を行わない場合は、図示されるように、可動ケース101を筺体2の前面に収納することが可能となっている。また、操作部150についても同様に、可動式の可動ケース151を備えており、グリル5についての細かな設定操作を行わない場合は、可動ケース151を筺体2の前面に収納することが可能となっている。
当然ながら、操作部100の可動ケース101が収納された状態では、左コンロバーナー4Lなどについての細かな設定操作は行えない。同様に、操作部150の可動ケース151が収納された状態では、グリル5についての細かな設定操作は行えない。しかし、可動ケース101の前面側を軽く押し込むと、収納されていた可動ケース101が筺体2の前面から突出した状態となって、左コンロバーナー4Lや、後コンロバーナー4B、右コンロバーナー4Rについての細かな設定操作を行うことが可能となる。同様に、可動ケース151についても、可動ケース151の前面側を軽く押し込むと、収納されていた可動ケース151が筺体2の前面から突出した状態となって、グリル5についての細かな設定操作を行うことが可能となる。尚、本実施例では、可動ケース101あるいは可動ケース151が本発明における「可動枠」に対応する。また、可動ケース101あるいは可動ケース151が筺体2の前面に収納されている状態が本発明における「没入状態」に対応し、可動ケース101あるいは可動ケース151が筺体2の前面から突出した状態が本発明における「突出状態」に対応する。
図2は、第1実施例の操作部100の可動ケース101を、筺体2の前面から突出させた状態を示す斜視図である。可動ケース101が筺体2の前面に収納された没入状態(図1参照)で可動ケース101の前面を軽く押し込むと、可動ケース101が下端に設けられた回転軸を中心に回動して、筺体2の内部に収納されていた操作パネル110が現れる。操作パネル110は、硬質で非導電性の材料(ガラスなど)によって形成された表面が平坦な板状部材と、板状部材の表面に貼り付けられた不透明な樹脂製シートとを備えている。そして、この樹脂製シートには、左コンロバーナー4Lや、後コンロバーナー4B、右コンロバーナー4R、グリル5に対する設定内容を表すシンボル図形が表示されている。更に、樹脂製シートには、操作者が設定内容を確認できるようにするための透明枠が形成されている。
尚、以下では、操作パネル110は、板状部材の表面側に不透明な樹脂製シートが貼り付けられているものとして説明するが、板状部材がガラスなどのように透明な材料で形成されている場合には、板状部材の裏面側から樹脂製シートを貼り付けても構わない。また、樹脂製シートを貼り付ける板状部材が不透明な材料で形成されており、その板状部材の表面側に樹脂製シートを貼り付けられる場合には、樹脂製シートを透明な材料で形成しても良い。
図3は、第1実施例の操作部100に設けられた操作パネル110を上方から見た様子を示す説明図である。図示されるように、操作パネル110には、左コンロバーナー4Lについての設定操作を行うための左操作領域110Lと、後コンロバーナー4Bについての設定操作を行うための後操作領域110Bと、右コンロバーナー4Rについての設定操作を行うための右操作領域110Rとが設けられている。そして、それぞれの操作領域(すなわち、左操作領域110L、後操作領域110B、右操作領域110R)には、設定内容を表すシンボル図形110gや、設定内容を確認するための透明枠110wが形成されている。
図3に示した例では、透明枠110wは、それぞれの操作領域の上部に形成されている。この透明枠110wは、不透明な樹脂製シートに穴開け加工することによって形成しても良いし、この部分だけ樹脂製シートを透明にすることによって形成しても良い。そして、透明枠110wの裏側には、LED表示器112が搭載されている。
また、透明枠110wの下方には、それぞれの操作領域(すなわち、左操作領域110L、後操作領域110B、右操作領域110R)に応じて複数のシンボル図形110gが形成されている。例えば、右操作領域110Rには、6つのシンボル図形110gが形成されている。この中で、温度計の形をした右下のシンボル図形110gは、調理温度の設定操作を表す図形である。その左隣の時計の形をしたシンボル図形110gは、タイマーの設定操作を表す図形であり、その左隣のヤカンの形をしたシンボル図形110gは、湯を沸かすための設定操作を表す図形である。更に、その上の「高温炒め」と表示されたシンボル図形110gは、炒め物などのように高温で調理するための設定操作を表す図形である。また、その右隣に表示された「−」の形や、更にその右隣に表示された「+」の形のシンボル図形110gは、温度や時刻の設定内容を変更する操作を表す図形である。これらのシンボル図形110gの裏側には、操作スイッチ111が1つずつ搭載されている。そして、これらの操作スイッチ111には、静電容量の変化を検知することによって非接触で動作し、しかも可動部が存在しないという利点を有する静電容量式スイッチが採用されている。
左操作領域110Lについても同様に、透明枠110wの下方には、右操作領域110Rと同様な6つのシンボル図形110gが形成されており、それぞれのシンボル図形110gの裏側には、静電容量式スイッチによる操作スイッチ111が搭載されている。また、後操作領域110Bについては、透明枠110wの下方には、時計の形をしたシンボル図形110gや、ご飯が盛られた茶碗の形をしたシンボル図形110gや、「+」の形のシンボル図形110g、「−」の形のシンボル図形110gが形成されている。このうちの茶碗の形をしたシンボル図形110gは、炊飯の設定操作を表す図形である。そして、それぞれのシンボル図形110gの裏側にも、静電容量式スイッチによる操作スイッチ111が搭載されている。
図4は、操作パネル110の裏側に搭載されたLED表示器112や操作スイッチ111の大まかな結線関係を示す回路図である。図示されるように、LED表示器112や操作スイッチ111はマイコン113に接続されており、マイコン113は、周知の方法によってLED表示器112や操作スイッチ111を駆動する。また、マイコン113には、操作スイッチ111とは異なる目的に使用される静電容量式スイッチ(以下、検知スイッチ114)も接続されている。検知スイッチ114が設けられている理由については、後ほど詳しく説明する。尚、本実施例では、マイコン113が本発明における「駆動回路」に対応する。
上述したように操作スイッチ111に静電容量式スイッチを採用することにより、操作者は操作パネル110に表示されたシンボル図形110gに触れるだけで種々の設定操作を行うことが可能となる。すなわち、操作者が操作パネル110に形成された何れかのシンボル図形110gに指を触れると、その裏側に搭載された操作スイッチ111がそのことを検知する。マイコン113は、接触を検知した操作スイッチ111が何れの操作スイッチ111であるかを検出して、操作者が意図している設定内容を認識する。例えば、接触を検知した操作スイッチ111が、右操作領域110Rの右下にある温度計のシンボル図形110gの裏側に搭載された操作スイッチ111であったとする。この場合、マイコン113は、操作者が右コンロバーナー4Rの温度設定をしようとしていると認識することができるので、右コンロバーナー4Rに設定されている現状の設定温度をLED表示器112に表示する。また、操作者が、表示された温度を見て設定温度を上昇させようと思った場合は「+」が表示されたシンボル図形110gに指を触れ、逆に、設定温度を低下させようと思った場合は「−」が表示されたシンボル図形110gに指を触れるので、マイコン113は、それぞれのシンボル図形110gの裏側に搭載された操作スイッチ111の出力に基づいて、操作者の意図に応じて設定温度を変更することができる。その他の設定操作についても、同様にして行うことができる。
このように、第1実施例の加熱調理器1では、操作部100(および操作部150)の操作スイッチ111に、静電容量式スイッチを採用している。そして、静電容量式スイッチは、非接触で動作し且つ可動部を有さないので、加熱調理器1を長期に亘って使用した場合でも、操作スイッチ111の固着や接触不良などによって、加熱調理器1の操作に支障をきたすことがない。また、操作スイッチ111に静電容量式スイッチを採用すれば、操作パネル110の表面を凹凸の無い平坦な形状とすることができる。このため、操作パネル110の見栄えを大きく向上させることができると共に、たとえ操作パネル110の表面に煮零れ汁や油煙などが付着しても簡単に拭き掃除することが可能となり、長期に亘る使用によっても操作パネル110を美しく保つことができる。
もっとも、静電容量式スイッチは、導電性を有する物体(ここでは操作者の指)が接近した時の静電容量を検出しているのではなく、指が接近することによる静電容量の変化を検知している。このため、操作パネル110のシンボル図形110gに操作者の指が触れていない間も、複数の静電容量式スイッチに電力を供給しておく必要がある。従って、電力の消費を抑制する観点からは、操作部100の可動ケース101が筺体2の前面に収納された状態(以下では、単に「没入状態」と称する)にある間は電力供給を停止しておき、可動ケース101が筺体2の前面から突出した状態(以下では、単に「突出状態」と称する)になったら電力供給を再開することが望まれる。また、同様なことは、操作部100の可動ケース101だけでなく、操作部150の可動ケース151についても全く同様に当て嵌まる。そこで、以下では、操作部100の可動ケース101が、操作部150の可動ケース151も代表するものとして説明する。従って、以下の説明については、操作部100は操作部150と読み替えることが可能であり、可動ケース101は可動ケース151と読み替えることが可能であるものとする。
可動ケース101が没入状態にある間は電力供給を停止し、突出状態になったら電力供給を再開しようとすると、可動ケース101が没入状態あるいは突出状態の何れであるかを検出するためのスイッチが必要となる。しかし、そのスイッチを接点スイッチとしたのでは、固着や接点不良などが生じる可能性があるので、可動ケース101が没入状態となっていることを検出できなくなり、乾電池が消耗する虞が生じる。あるいは可動ケース101が突出状態となったことを検出できずに電力供給を再開できなくなる虞が生じる。その結果、加熱調理器1の操作に支障をきたすこととなって、操作パネル110の操作スイッチ111に静電容量式スイッチを採用した目的が達せられなくなってしまう。そこで、第1実施例の加熱調理器1は、図4に示したように、静電容量式の検知スイッチ114を1つ追加することによって、こうした問題を解消した。以下では、この点について詳しく説明する。
図5には、図3中のA−A位置で取った第1実施例の操作部100の断面図が示されている。図5(a)は、操作部100の可動ケース101を筺体2の前面に収納した没入状態を表しており、図5(b)は、可動ケース101を筺体2の前面から突出させた突出状態を表している。図示されるように、可動ケース101の下端は回動軸101aによって筺体2に軸支されており、可動ケース101を回動させることによって、図5(a)に示した没入状態と、図5(b)に示した突出状態とに切り換えることができる。また、可動ケース101の上面には前述した操作パネル110が搭載されており、操作パネル110の裏面側には、複数の操作スイッチ111やLED表示器112、それらが接続されたマイコン113が搭載されている。
更に、筺体2の前面側から見て、可動ケース101の奥側(図面上では右側)には、検知スイッチ114が設けられており、検知スイッチ114は信号線116によってマイコン113に接続されている。尚、図5では、検知スイッチ114は可動ケース101の内側に取り付けられているものとしているが、可動ケース101の外側に取り付けることとしてもよい。また、本明細書中では、可動ケース101は、樹脂などの非導電性の材料によって形成されているものとしているが、可動ケース101を板金などの導電性材料によって形成する場合には、少なくとも検知スイッチ114が取り付けられる部分は非導電性材料によって形成しておく必要がある。
また、筺体2の側には、図5(a)に示すように可動ケース101が没入状態になると検知スイッチ114と向き合う状態となる位置に、板金などの導電性材料によって形成された被検知部115が設けられている。このため、可動ケース101が没入状態にある間は、検知スイッチ114によって被検知部115が検知される。ところが、図5(b)に示すように可動ケース101が突出状態になると、被検知部115に向き合う位置から検知スイッチ114が移動するため、検知スイッチ114が被検知部115を検知しなくなる。このことから、マイコン113は、検知スイッチ114の出力に基づいて、可動ケース101が図5(a)のように没入状態にあるのか、図5(b)のように突出状態にあるのかを判断することができる。尚、本実施例では、マイコン113が本発明における「状態判断部」に対応する。
そして、検知スイッチ114にも、操作スイッチ111と同様に静電容量式スイッチが採用されているため、被検知部115の存在を非接触で検知することができ、可動部分も存在していない。このため、加熱調理器1を長期に亘って使用する場合でも、検知スイッチ114が固着したり、接触不良が発生したりする虞が生じない。加えて、検知スイッチ114および操作スイッチ111の何れも静電容量式スイッチなので、検知スイッチ114を追加しても、マイコン113にとっては操作スイッチ111が増加するに過ぎない。特に、マイコン113側に、操作スイッチ111に接続するための端子が余っている場合には、その余った端子に検知スイッチ114を接続するだけでよい。また、筺体2側の被検知部115は接地しておく必要があるが、筺体2を接地しておけば、単に筺体2に被検知部115を取り付けるだけでよい。このように、操作パネル110に搭載する操作スイッチ111を静電容量式スイッチとした上で、更に、静電容量式スイッチを検知スイッチ114として可動ケース101に設けることとすれば、可動ケース101が没入状態あるいは突出状態の何れにあるかを、極めて簡単な構成によって検出することが可能となる。
もちろん、検知スイッチ114に静電容量式スイッチを用いた場合には、可動ケース101が没入状態または突出状態の何れの状態であるかに拘わらず、検知スイッチ114に電力を供給する必要がある。しかし、検知スイッチ114によって可動ケース101の状態を検出することができれば、可動ケース101が没入状態にある間は、操作パネル110に搭載された複数の操作スイッチ111やLED表示器112への電力供給を停止することができる。従って、検知スイッチ114に静電容量式スイッチを用いた場合でも、電力消費を大幅に抑制することが可能となる。
上述した第1実施例には複数の変形例が存在する。以下では、これらの変形例について簡単に説明する。
上述した第1実施例では、被検知部115は、筺体2とは別部品として形成されているものとして説明した。しかし、可動ケース101に取り付けられた検知スイッチ114で検知することが可能であれば、被検知部115を筺体2の別部品とする必要は無い。従って、筺体2の一部を、被検知部115としてもよい。
図6には、このような第1変形例の操作部100の複数の態様が例示されている。尚、図6では、可動ケース101が収納された没入状態の場合を表しているが、参考として、可動ケース101が突出状態となった場合についても破線によって示されている。始めに図6(a)に例示した態様について説明すると、この態様の操作部100では、可動ケース101の底部に検知スイッチ114が取り付けられている。このため、図中に実線で示されるように、可動ケース101が没入状態のときには、検知スイッチ114が筺体2の一部に接近して、検知スイッチ114が筺体2を検知するようになる。当然ながら、図中に破線で示したように可動ケース101が突出状態になると、検知スイッチ114は筺体2から遠ざかって筺体2を検知しなくなる。このような場合は、筺体2の一部が被検知部115となる。
もちろん、可動ケース101が没入状態となった時に、検知スイッチ114で検知可能な距離に筺体2が存在するとは限らない。このような場合は、図6(b)に例示したように、筺体2の一部を突設させて、検知スイッチ114で検知可能な距離まで近付けることによって、被検知部115を形成すればよい。尚、図6では、検知スイッチ114が可動ケース101の底部に取り付けられているものとして表示したが、可動ケース101の側部に検知スイッチ114を取り付けることも可能である。
また、上述した第1実施例あるいは第1変形例では、操作パネル110に設けられた操作スイッチ111とは別に、検知スイッチ114が設けられているものとして説明した。しかし、以下のようにすれば、操作パネル110に設けられた操作スイッチ111を、検知スイッチ114の代わりとして流用することもできる。
図7には、このような第2変形例の操作部100が例示されている。尚、図7においても図6と同様に、可動ケース101が収納された没入状態を表しているが、参考として、可動ケース101が突出状態となった場合についても破線によって示されている。図示されるように、第2変形例の可動ケース101には、検知スイッチ114は取り付けられていない。また、被検知部115は、可動ケース101が収納される部分の筺体2の一部が延長されることによって形成されている。そして、この被検知部115は、可動ケース101が没入状態となった時に、操作パネル110の操作スイッチ111と向かい合うようになっている。尚、図7では、操作パネル110に設けられた全ての操作スイッチ111と向かい合うような、大きな被検知部115が形成されているものとして表示されているが、被検知部115は、少なくとも2つの操作スイッチ111に向き合うように形成しておけばよい。そして、可動ケース101が没入状態となった時に被検知部115と向き合う少なくとも2つの操作スイッチ111については、可動ケース101が没入状態となっている間も電力を供給しておく。
こうすれば、可動ケース101が没入状態となっていれば、電力が供給された少なくとも2つの操作スイッチ111で被検知部115が検知され、可動ケース101が突出状態になると、それらの操作スイッチ111で被検知部115が検知されなくなる。もちろん、可動ケース101が突出状態にある場合は、それらの操作スイッチ111が操作者の指を検知する場合もある。しかし、図3を用いて前述したように、操作者は同時に複数のシンボル図形110gに触れることはないので、2つ以上の操作スイッチ111で同時に指が検知されることはないと考えて良い。このため、少なくとも2つの操作スイッチ111が被検知部115を検知しているか否かに基づいて、可動ケース101が没入状態または突出状態の何れにあるかを検出することができる。
また、可動ケース101が没入状態の時に電力を供給する少なくとも2つの操作スイッチ111を、例えば操作パネル110の両端の操作スイッチ111から選択するなど、互いに十分に離れた位置の操作スイッチ111としておいてもよい。こうすれば、可動ケース101が突出状態の時に、これらの操作スイッチ111に対応するシンボル図形110gを操作者が誤って触る可能性を無くすことができる。その結果、可動ケース101が突出状態にあるにも拘わらず、没入状態と誤検知することを確実に回避することが可能となる。
更には、少なくとも2つの操作スイッチ111が被検知部115を検知しているか否かに基づいて、可動ケース101が没入状態にあるか否かを検出する場合には、それら複数の操作スイッチ111が被検知部115を検知する順番に着目することで、誤検知をより一層確実に回避することができる。
例えば、可動ケース101が没入状態の時に被検知部115を検知する操作スイッチ111が、図8(a)に示すように、右操作領域110R中で「+」のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111と、温度計のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111の2つであったとする。この場合、突出していた可動ケース101が没入状態になる際には、先ず始めに、「+」のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111で被検知部115が検知され、その後、温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知される筈である。従って、この順序で操作スイッチ111が被検知部115を検知した場合に、可動ケース101が没入状態になったものと判断してやれば、誤検知を確実に防止することができる。
尚、被検知部115を検知する複数の操作スイッチ111は、可動ケース101が没入する方向に対して、必ずしも同じ列に設けられている必要は無い。例えば、図8(b)に示したように、右操作領域110R中で温度計のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111の代わりに、左操作領域110L中でヤカンのシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111を用いた場合でも、上述した説明は全く同様に成立する。
もちろん、可動ケース101が没入状態の時に被検知部115を検知する操作スイッチ111が、右操作領域110R中で「+」のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111と、その隣の「−」のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111の2つであった場合には、これらの操作スイッチ111が同時に被検知部115を検知した場合に、可動ケース101が没入状態になったものと判断してやればよい。
また、図7に示した例では、可動ケース101が没入状態にある間は、操作スイッチ111で被検知部115が検知されるようになっている。従って、複数の操作スイッチ111(ここでは、右操作領域110R中で「+」の図形の操作スイッチ111と、温度計の図形の操作スイッチ111)がこの順番で被検知部115を検知し、更に、一定時間(例えば5秒間)、検知し続けたことが確認された場合に、可動ケース101が没入状態になったものと判断してもよい。こうすれば、可動ケース101が没入状態になったものと誤検知することを、より一層確実に防止することができる。
以上では、突出状態にあった可動ケース101が没入状態になったことを検出する場合について説明したが、逆の場合、すなわち、没入状態にあった可動ケース101が突出状態になったことを検出する場合にも、同様なことが当て嵌まる。例えば、没入状態で被検知部115を検知している操作スイッチ111が、右操作領域110R中の「+」のシンボル図形110gの操作スイッチ111と、温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111であったとする(図8(a)参照)。この場合、没入状態にあった可動ケース101が没入状態になる際には、先ず始めに、温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知されなくなり、その後、「+」のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知されなくなる筈である。従って、この順序で操作スイッチ111が被検知部115を検知しなくなった場合に、可動ケース101が没入状態から突出状態になったものと判断してやれば、誤検知を確実に防止することができる。
また、以上の説明では、操作パネル110上の操作スイッチ111は、図3に例示したように、LED表示器112の一段下と、更にその一段下の、合わせて2段に配置されているものとして説明した。この場合、可動ケース101の没入状態で被検知部115を検知する複数の操作スイッチ111は、これら2段に配置された操作スイッチ111の何れかに設定される。従って、可動ケース101が没入状態となる際には、全ての操作スイッチ111が同時に被検知部115を検知する場合を除けば、操作スイッチ111が被検知部115を検知するタイミングは、早いタイミングか遅いタイミングかの2種類しか取り得ない。
しかし、操作スイッチ111が3段以上の多段に配置されている場合には、早いタイミングか遅いタイミングかの2種類だけでなく、中間のタイミングで被検知部115を検知する操作スイッチ111も設定することができる。そして、被検知部115を検知する複数の操作スイッチ111をこのように設定しておけば、可動ケース101が没入状態になったことや、突出状態になったことを、より一層確実に検出することが可能となる。
図9には、このような第3変形例の操作パネル110が例示されている。図示した操作パネル110上での操作スイッチ111の配置は、図3に示した操作パネル110上での操作スイッチ111の配置とほぼ同様であるが、図9(a)に例示した第3変形例の操作パネル110では、右操作領域110RのLED表示器112の横に、矢印のシンボル図形110gが表示された操作スイッチ111が追加されている。従って、図9(a)の操作パネル110には、LED表示器112の下方に2段に設けられた操作スイッチ111に、LED表示器112の横の操作スイッチ111を加えて、合わせて3段に操作スイッチ111が配置されていることになる。尚、この矢印のシンボル図形110gの操作スイッチ111は、直前に行った操作を取り消す際に操作される操作スイッチ111である。
このような第3変形例では、可動ケース101が没入状態になった時に被検知部115を検知する操作スイッチ111として、例えば、LED表示器112の右側にある矢印のシンボル図形110gの操作スイッチ111と、右操作領域110R中の「+」のシンボル図形110gの操作スイッチ111と、温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111の3つの操作スイッチ111を選択する。こうすれば、突出していた可動ケース101が没入状態になる際には、先ず始めに、矢印のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知され、その次に、「+」のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知され、最後に、温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知される筈である。従って、3つの操作スイッチ111がこの順序で被検知部115を検知した場合に、可動ケース101が没入状態になったものと判断してやれば、可動ケース101が突出状態から没入状態になったことを確実に検出することができる。
また、このように3つの操作スイッチ111が順番に被検知部115を検知する場合には、1つめの操作スイッチ111が被検知部115を検知してから、2つめの操作スイッチ111が被検知部115を検知するまでの経過時間(第1経過時間)と、2つめの操作スイッチ111が被検知部115を検知してから、3つめの操作スイッチ111が被検知部115を検知するまでの経過時間(第2経過時間)とは、自ずから一定の関係が存在すると思われる。例えば、ユーザーが可動ケース101を急いで押し込んだ場合には、第1経過時間が短くなり、それに伴って第2経過時間も短くなると予想される。これに対して、ユーザーが可動ケース101を軽く押し込んだことで、可動ケース101が自動的に閉まるような場合には、第1経過時間は長くなり、それに伴って第2経過時間も長くなると予想される。従って、第1経過時間と第2経過時間との関係が一定の関係を満たしている場合(例えば、第1経過時間に対する第2経過時間の比率が所定範囲内にある場合)には、可動ケース101が突出状態から没入状態になったものと判断しても良い。
また、以上では、突出状態の可動ケース101が没入状態になったことを検出する場合について説明したが、没入状態の可動ケース101が突出状態になったことを検出する場合にも、同様なことが当て嵌まる。すなわち、没入状態の可動ケース101が突出状態になる際には、先ず始めに、右操作領域110R中の温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知されなくなり、その次に、「+」のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知されなくなり、最後に、矢印のシンボル図形110gの操作スイッチ111で被検知部115が検知されなくなる筈である。従って、3つの操作スイッチ111がこの順序で被検知部115を検知しなくなった場合には、没入状態にあった可動ケース101が突出状態になったものと判断してやれば、可動ケース101が突出状態になったことを確実に検出することができる。
また、この時、1つめの操作スイッチ111(ここでは、温度計のシンボル図形110gの操作スイッチ111)が被検知部115を検知しなくなってから、2つめの操作スイッチ111(ここでは、「+」のシンボル図形110gの操作スイッチ111)が被検知部115を検知しなくなるまでの経過時間を「第3経過時間」とし、2つめの操作スイッチ111が被検知部115を検知してから、3つめの操作スイッチ111(ここでは、矢印のシンボル図形110gの操作スイッチ111)が被検知部115を検知しなくなるまでの経過時間を「第4経過時間」とすると、第3経過時間と第4経過時間との間にも、自ずから一定の関係が存在すると思われる。そこで、第3経過時間と第4経過時間との関係が一定の関係を満たしている場合(例えば、第3経過時間に対する第4経過時間の比率が所定範囲内にある場合)には、可動ケース101が没入状態から突出状態になったものと判断しても良い。
また、上述した第1実施例や、第1変形例ないし第3変形例では、可動ケース101が収納される部分の筺体2は、板金部材によって形成されているものとして説明した。しかし、可動ケース101が没入状態となった時に検知スイッチ114と向き合う位置に被検知部115を設けることができれば良く、可動ケース101が収納される部分の筺体2は、必ずしも板金部材で形成する必要はない。
例えば、図10(a)、図10(b)に示した第1実施例の第4変形例では、可動ケース101が収納される部分の筺体2は、非電導性の樹脂材料によって形成されている。このような場合でも、検知スイッチ114(あるいは検知スイッチ114の代わりに用いる操作スイッチ111)と向き合う位置に、導電性の材料によって形成された被検知部115を設けて、その被検知部115を接地しておけばよい。
以上では、可動ケース101が下端側を中心に回動するものとして説明した。しかし、筺体2の前面に収納された可動ケース101が手前に移動することによって突出状態となり、逆に可動ケース101を筺体2に向けて押し込むことによって没入状態となるようにしてもよい。以下では、このような第2実施例について説明する。
図11は、第2実施例の操作部100の可動ケース101を突出させた状態を示す斜視図である。第2実施例では、可動ケース101が筺体2の前面に収納された没入状態(図1参照)で可動ケース101の前面を軽く押し込むと、可動ケース101全体が手前にスライドして、筺体2の内部に収納されていた操作パネル110が現れる。尚、操作パネル110については、前述した第1実施例と同様であるため、説明は省略する。
図12には、可動ケース101が没入状態にある時の第2実施例の操作部100の断面図が示されている。尚、図中では、参考として、可動ケース101が突出状態となった場合についても破線によって示されている。図示したように、可動ケース101には、筺体2の前面側から見て奥側(図面上では右側)に、検知スイッチ114が設けられており、検知スイッチ114は信号線116によってマイコン113に接続されている。尚、図12では、検知スイッチ114が可動ケース101の内側に取り付けられているが、可動ケース101の外側に取り付けてもよい。また、筺体2には、可動ケース101が没入状態になった時に検知スイッチ114と向き合う状態となる位置に、板金などの導電性材料によって形成された被検知部115が取り付けられている。このため、可動ケース101が没入状態にある間は検知スイッチ114によって被検知部115が検知されるが、可動ケース101が突出状態になると、被検知部115から検知スイッチ114が遠ざかって、検知スイッチ114で被検知部115が検知されなくなる。従って、第2実施例においても、検知スイッチ114の出力に基づいて、可動ケース101が没入状態または突出状態の何れにあるのかを検出することができる。
上述した第2実施例でも、検知スイッチ114には、操作スイッチ111と同様に静電容量式スイッチが採用されている。このため上述した第1実施例と同様な理由により、第1実施例と同様な様々な利点を得ることができる。
また、第2実施例についても、前述した第1実施例と同様な複数の変形例が存在する。例えば、検知スイッチ114を取り付ける位置は、可動ケース101の奥側に限られるわけではなく、可動ケース101の底部としても良い。あるいは、操作パネル110に設けられた操作スイッチ111を、検知スイッチ114として流用しても良い。図13には、これら第2実施例についての複数の変形例が例示されている。尚、図13でも、可動ケース101が没入状態の場合を表しているが、可動ケース101が突出状態となった場合についても破線によって示されている。
例えば、図13(a)には、可動ケース101の底部に検知スイッチ114が取り付けられた場合が例示されている。このような場合でも、可動ケース101が没入状態となった状態で検知スイッチ114と向き合う位置に被検知部115を設けておけば、検知スイッチ114の出力に基づいて、可動ケース101の状態を検知することができる。
あるいは、図13(b)には、操作パネル110に設けられた操作スイッチ111を検知スイッチ114として流用した場合が例示されている。図示した例では、可動ケース101が収納される部分の筺体2の一部が延長されて、被検知部115が形成されている。
そして、この被検知部115は、可動ケース101が没入状態となった時に、操作パネル110の操作スイッチ111と向かい合うようになっている。こうすれば、図7を用いて前述した第1実施例の第2変形例と同様に、没入状態で被検知部115と向き合う少なくとも2つの操作スイッチ111に電力を供給することで、可動ケース101が没入状態あるいは突出状態の何れにあるかを検知することが可能となる。
以上、各種の実施例および変形例について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。