本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システム1の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムを負荷回路とともに示す回路構成図である。
ワイヤレス電力伝送システム1は、図1に示すように、ワイヤレス給電システム10と、ワイヤレス受電システム20を有する。
ワイヤレス給電システム10は、電源Vと、インバータINVと、給電コンデンサC1と、給電コイルL1と、を有する。
電源Vは、直流電力をインバータINVへ出力する。電源Vとしては、例えば、安定化電源や二次電池などが挙げられる。
インバータINVは、電源Vから供給される直流電力を交流電力に変換し、この交流電力を給電コンデンサC1へ出力する。インバータINVとしては、複数のスイッチング素子をブリッジ構成で接続したフルブリッジ回路やハーフブリッジ回路などが挙げられる。
給電コンデンサC1は、後述する給電コイルL1と接続され共振回路を構成する。給電コンデンサC1としては、誘電正接tanδが小さい方が電力伝送効率向上に望ましく、低誘電率系のコンデンサが挙げられる。本例においては、給電コンデンサC1は、給電コイルL1に直列接続されているが、これに限られることなく、並列接続するように構成してもよく、直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。また、本例においては、給電コイルL1が給電コンデンサC1とともに共振回路を構成した、いわゆる磁場の共振現象を利用した構成を対象として説明したが、これに限られることなく、給電コンデンサC1を除き、給電コイルL1と後述する受電コイルL2とが磁場結合(誘導結合)する電磁誘導を利用した構成にも適用できる。
給電コイルL1は、インバータINVから供給された交流電力を受電コイルL2へ伝送する給電コイルとして機能する。なお、給電コイルL1の具体的な構成については後述する。
ワイヤレス受電システム20は、受電コイルL2と、受電コンデンサC2と、整流器RECTと、を有する。
受電コイルL2は、給電コイルL1と所定の距離を空けて配置され、給電コイルL1から伝送される交流電力を受電する受電コイルとして機能する。ここで、ワイヤレス給電システム10の給電コイルL1とワイヤレス受電システム20の受電コイルL2は、その間に距離を空けて対向することにより、磁気的に結合し、インバータINVから給電コイルL1に供給された交流電力が近接電磁界効果によって受電コイルL2に誘導起電力が励起される。すなわち、ワイヤレス給電システム10からワイヤレス受電システム20に向けてワイヤレスにて電力が伝送される。
受電コンデンサC2は、受電コイルL2と接続され共振回路を構成する。受電コンデンサC2としては、誘電正接tanδが小さい方が電力伝送効率向上に望ましく、低誘電率系のコンデンサが挙げられる。本例においては、受電コンデンサC2は、受電コイルL2に直列接続されているが、これに限られることなく、並列接続するように構成してもよく、直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。また、本例においては、受電コイルL2が受電コンデンサC2とともに共振回路を構成した、いわゆる磁場の共振現象を利用した構成を対象として説明したが、これに限られることなく、給電コンデンサC2を除き、給電コイルL1と受電コイルL2とが磁場結合(誘導結合)する電磁誘導を利用した構成にも適用できる。
整流器RECTは、受電コイルL2が受電した交流電力を直流電力へ変換し、この直流電力を負荷回路Rへ出力する。整流器RECTとしては、半波整流回路や全波整流回路などの複数のダイオードがブリッジ接続されたブリッジ型回路と、このブリッジ型回路に並列に接続され、整流された電圧を平滑して直流電圧を生成する平滑コンデンサから構成される整流回路などが挙げられる。また、負荷回路Rとしては、DC/DCコンバータに加え、二次電池などが挙げられる。
続いて、上述した給電コイルL1または/および受電コイルL2に適用される本発明の好適な実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100の構成について説明する。
[第1実施形態]
まず、図2〜図5を参照して、本発明の第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100の構成について説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100を模式的に示した斜視図である。図3は、図2における磁性体および放熱部材を示す分解斜視図である。図4は、図2における切断線I−Iに沿う断面図である。図5は、図2における切断線II−IIに沿う断面図である。なお、図3中、説明の便宜上、巻線140は省略している。また、図5では、ワイヤレス電力伝送用コイル100が発生する磁束のうち、代表的なものとして、第1の磁性体120および第2の磁性体130とその周囲を通過する磁束を示している。
ワイヤレス電力伝送用コイル100は、図2に示されるように、磁性体110と、巻線140と、放熱部材150と、を備える。
磁性体110は、棒状または板状に成型される第1の磁性体120と第2の磁性体130を有する。図3に示されるように、第1の磁性体120は、外形形状が略直方体形状を呈しており、その外表面として、対向する略長方形状の第1および第2の主面121,122と、対向する第1および第2の側面123,124と、対向する第1および第2の端面125,126と、を有する。第1および第2の側面123,124は、第1および第2の主面121,122間を連結するように第1および第2の主面121,122の長辺方向に伸びている。第1および第2の端面125,126は、第1および第2の主面121,122間を連結するように第1および第2の主面121,122の短辺方向に伸びている。同様に、第2の磁性体130は、外形形状が略直方体形状を呈しており、その外表面として、対向する略長方形状の第1および第2の主面131,132と、対向する第1および第2の側面133,134と、対向する第1および第2の端面135,136と、を有する。第1および第2の側面133,134は、第1および第2の主面131,132間を連結するように第1および第2の主面131,132の長辺方向に伸びている。第1および第2の端面135,136は、第1および第2の主面131,132間を連結するように第1および第2の主面131,132の短辺方向に伸びている。本実施形態では、第1の磁性体120と第2の磁性体130は、第1の磁性体120の第1の端面125と第2の端面126との対向方向と第2の磁性体130の第1の端面135と第2の端面136との対向方向が同じ向きとなり、第1の磁性体120の第1の側面123と第2の側面124との対向方向と第2の磁性体130の第1の側面133と第2の側面134との対向方向が同じ向きとなるように配置されている。
第1の磁性体120と第2の磁性体130は、図4に示されるように、間に後述する放熱部材150を介して対向配置されている。具体的には、第1の磁性体120の第2の主面122と第2の磁性体130の第1の主面131が後述する放熱部材150を介して対向配置されている。これら第1の磁性体120と第2の磁性体130は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、第1の磁性体120の中心と第2の磁性体130の中心が一致するように配置されている。本実施形態では、第1の磁性体120と第2の磁性体130は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向における厚みは略同一となっている。このように構成される第1の磁性体120と第2の磁性体130は、高い電力伝送効率を実現するという観点から、酸化鉄を主成分とする粉末原料を成型・焼成して製造するフェライトであることが好ましいが、他の磁性材料であってもよい。
巻線140は、第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向方向と略直交する方向に磁束が鎖交するように巻回されている。具体的には、巻線140は、第1の磁性体120の第1の主面121上および第1および第2の側面123,124上と、第2の磁性体130の第2の主面132上および第1および第2の側面133,134上に巻回されている。言い換えれば、巻線140は、第1の磁性体120(第2の磁性体130)の第1の端面125(第1の端面135)と第2の端面126(第2の端面136)の対向方向を軸として、螺旋状に周回するように巻回されている。すなわち、ワイヤレス電力伝送用コイル100は、いわゆるソレノイド構造のコイルである。この巻線140は、ワイヤレス電力伝送用コイル100のQ値を高めるという観点から、多本数の絶縁被覆導体を撚り合わせたリッツ線で構成されると好ましいが、その他の線材であってもよい。
放熱部材150は、磁性体110から発生する熱を放熱する機能を備えている。具体的には、放熱部材150は、図3に示されるように、第1の磁性体120と第2の磁性体130との間に配置される。放熱部材150は、外形形状が略直方体形状を呈しており、その外表面として、対向する略長方形状の第1および第2の主面151,152と、対向する第1および第2の側面153,154と、対向する第1および第2の端面155,156と、を有する。第1および第2の側面153,154は、第1および第2の主面151,152間を連結するように第1および第2の主面151,152の長辺方向に伸びている。第1および第2の端面155,156は、第1および第2の主面151,152間を連結するように第1および第2の主面151,152の短辺方向に伸びている。この放熱部材150は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、放熱部材150の中心が第1の磁性体120の中心および第2の磁性体130の中心と一致するように配置されている。また、放熱部材150の外輪郭は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、第1の磁性体120の外輪郭および第2の磁性体130の外輪郭よりも内側に位置している。すなわち、放熱部材150の第1および第2の主面151,152の面積は、第1の磁性体120の第1および第2の主面121,122の面積および第2の磁性体130の第1および第2の主面131,132の面積よりも小さくなっている。このように構成される放熱部材150は、熱伝導率が比較的高い銅であることが好ましいが、その他の材質であってもよい。また、放熱部材150は、単一の部材から構成されていてもよく、複数の部材から構成されていてもよい。
次に、ワイヤレス電力伝送用コイル100が発生する磁束について詳細に説明する。巻線140に電流を流すと、ワイヤレス電力伝送用コイル100の周囲に発生する磁束は、図5に示されるように、第1の磁性体120およびその周囲を通過する磁束127と、第2の磁性体130およびその周囲を通過する磁束137となる。本実施形態では、磁束127は、第1の磁性体120の第1の端面125から第2の端面126に向かって第1の磁性体120を通過した後、第1の磁性体120の第1の主面121における第2の端面126側から空気中に放射され、第1の磁性体120の第2の端面126から第1の端面125に向かう方向に空気中を進み、第1の磁性体120の第1の主面121における第1の端面125側に至るように周回する。同様に、磁束137は、第2の磁性体130の第1の端面135から第2の端面136に向かって第2の磁性体130を通過した後、第2の磁性体130の第2の主面132における第2の端面136側から空気中に放射され、第2の磁性体130の第2の端面136から第1の端面135に向かう方向に空気中を進み、第2の磁性体130の第2の主面132における第1の端面135側に至るように周回する。つまり、ワイヤレス電力伝送用コイル100が発生する磁束127,137は、第1の磁性体120と第2の磁性体130を通過することから、放熱部材150に発生する渦電流を減少させることができるため、ワイヤレス電力伝送用コイル100のインダクタンス値とQ値の低下を抑制することができる。また、本実施形態では、第1の磁性体120と第2の磁性体130は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向における厚みは略同一となっている。したがって、第1の磁性体120を通過した磁束127によって放熱部材150に発生する渦電流と、第2の磁性体130を通過する磁束127によって放熱部材150に発生する渦電流とが互いに逆位相で略同一の電流量となる。そのため、放熱部材150に流れる渦電流を相殺させることができるため、ワイヤレス電力伝送用コイル100のインダクタンス値とQ値の低下をより抑えることができる。
以上のように、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100は、磁性体110は、間に放熱部材150を介して対向配置される第1の磁性体120と第2の磁性体130を有し、巻線140は、第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向方向と略直交する方向に磁束が鎖交するように巻回されている。そのため、磁性体110の鉄損による温度上昇に伴う熱を放熱部材150によって効率よく外部へと放熱できるとともに、巻線140に電流を流した際に放熱部材150に発生する渦電流を減少させることができるため、ワイヤレス電力伝送用コイル100のインダクタンス値とQ値の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100においては、第1の磁性体120は対向方向における厚みが第2の磁性体130の対向方向における厚みと略同一となっている。そのため、巻線140に電流を流した際の、第1の磁性体120を通過した磁束127によって放熱部材150に発生する渦電流と、第2の磁性体130を通過する磁束137によって放熱部材150に発生する渦電流とが互いに逆位相で略同一の電流量となる。その結果、放熱部材150に流れる渦電流を相殺させることができるため、ワイヤレス電力伝送用コイル100のインダクタンス値とQ値の低下をより抑えることができる。
[第2実施形態]
次に、図6〜図9を参照して、本発明の第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200の構成について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200を模式的に示した斜視図である。図7は、図6における磁性体および放熱部材を示す分解斜視図である。図8は、図6における切断線III−IIIに沿う断面図である。図9は、図6における切断線IV−IVに沿う断面図である。第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200は、放熱部材250が後述する引出し部270を有する点において、第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、図7中、説明の便宜上、巻線140は省略している。また、図8および図9では、ワイヤレス電力伝送用コイル200が発生する磁束のうち、代表的なものとして、第1の磁性体120および第2の磁性体130とその周囲を通過する磁束を示している。
ワイヤレス電力伝送用コイル200は、図6に示されるように、磁性体110と、巻線140と、放熱部材250と、を備える。磁性体110、巻線140の構成は、第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100と同様である。
放熱部材250は、磁性体110から発生する熱を放熱する機能を備えている。具体的には、図7に示されるように、放熱部材250は、第1の磁性体120と第2の磁性体130に挟まれる本体部260と、本体部260から第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向領域外に引き出される引出し部270を有する。
本体部260は、図7に示されるように、外形形状が略直方体形状を呈しており、その外表面として、対向する略長方形状の第1および第2の主面261,262と、対向する第1および第2の側面263,264と、対向する第1および第2の端面265,266と、を有する。第1および第2の側面263,264は、第1および第2の主面261,262間を連結するように第1および第2の主面261,262の長辺方向に伸びている。第1および第2の端面265,266は、第1および第2の主面261,262間を連結するように第1および第2の主面261,262の短辺方向に伸びている。この本体部260は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、本体部260の中心が第1の磁性体120の中心および第2の磁性体130の中心と一致するように配置されている。また、本体部260の外輪郭は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、第1の磁性体120の外輪郭および第2の磁性体130の外輪郭よりも内側に位置している。すなわち、本体部260の第1および第2の主面261,262の面積は、第1の磁性体120の第1および第2の主面121,122の面積および第2の磁性体130の第1および第2の主面131,132の面積よりも小さくなっている。
引出し部270は、図7に示されるように、外形形状が略直方体形状を呈しており、その外表面として、対向する略長方形状の第1および第2の主面271,272と、対向する第1および第2の側面273,274と、対向する第1および第2の端面275,276と、を有する。第1および第2の側面273,274は、第1および第2の主面271,272間を連結するように第1および第2の主面271,272の長辺方向に伸びている。第1および第2の端面275,276は、第1および第2の主面271,272間を連結するように第1および第2の主面271,272の短辺方向に伸びている。この引出し部270は、本体部260に接続されている。本実施形態では、引出し部270は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、引出し部270の第2の端面276が本体部260の第1の端面265に、第1の磁性体120の外輪郭および第2の磁性体130の外輪郭よりも内側で接続されており、引出し部270の第1の端面275側の部分が第1の磁性体120の外輪郭および第2の磁性体130の外輪郭よりも外側に位置するように引き出されている。また、引出し部270の第1および第2の側面273,274の対向方向の幅は、本体部260の第1および第2の側面263,264の対向方向の幅よりも小さくなっている。またさらには、引出し部270は、第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向方向と直交する方向における本体部260の略中央に接続されている。つまり、引出し部270は、引出し部270の引出し方向(第1および第2の端面275,276の対向方向)と直交する方向(第1および第2の側面273,274の対向方向)の幅が本体部260の外形幅よりも狭く、本体部260から第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向領域外に引き出されることとなる。
次に、ワイヤレス電力伝送用コイル200が発生する磁束について詳細に説明する。巻線140に電流を流すと、ワイヤレス電力伝送用コイル200の周囲に発生する磁束は、図8および図9に示されるように、第1の磁性体120およびその周囲を通過する磁束227と、第2の磁性体130およびその周囲を通過する磁束237となる。本実施形態では、磁束227(磁束237)の多くは、第1の磁性体120(第2の磁性体130)の第1の端面125(第1の端面135)から第2の端面126(第2の端面136)に向かって第1の磁性体120(第2の磁性体130)を通過した後、第1の磁性体120(第2の磁性体130)の第1の主面121(第2の主面132)における第2の端面126(第2の端面136)側から空気中に放射され、第1の磁性体120(第2の磁性体130)の第2の端面126(第2の端面136)から第1の端面125(第1の端面135)に向かう方向に空気中を進み、第1の磁性体120(第2の磁性体130)の第1の主面121(第2の主面132)における第1の端面125(第1の端面135)側に至るように周回する。このとき、図8に示されるように、磁束227(磁束237)のうちの一部の磁束228(磁束238)は、放熱部材250の引出し部270を貫通し、引出し部270に渦電流を発生させる。ところが、本実施形態では、引出し部270の引出し方向と直交する方向の幅が本体部260の外形幅よりも狭くなっているため、図9に示されるように、引出し部270が引き出されていない領域においては、磁束227(磁束237)のうちの一部の磁束228(磁束238)は、放熱部材250の引出し部270を貫通することなく第1の磁性体120(第2の磁性体130)の第1の端面125(第1の端面135)から第1の磁性体120(第2の磁性体130)を通過するように周回することとなる。つまり、引出し部270が引き出されていない領域においては、放熱部材250の引出し部270を貫通する磁束がなく渦電流も発生しない。
以上のように、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200は、放熱部材250が、第1の磁性体120と第2の磁性体130に挟まれる本体部260と、本体部260から第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向領域外に引き出される引出し部270を有し、引出し部270の引出し方向と直交する方向の幅が本体部260の外形幅よりも狭くなっている。そのため、巻線140に電流を流した際に発生し磁性体110の周囲を通過する磁束228,238によって引出し部270に発生する渦電流を減少させることができるため、コイルのインダクタンス値とQ値の低下をより抑えることができる。
[第3実施形態]
次に、図10〜図13を参照して、本発明の第3実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル300の構成について説明する。図10は、本発明の第3実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイルを模式的に示した斜視図である。図11は、図10における磁性体および放熱部材を示す分解斜視図である。図12は、図10において、第1の磁性体とその周囲を通過する磁束を模式的に示した図である。図13は、図10において、第2の磁性体とその周囲を通過する磁束を模式的に示した図である。第3実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル300は、放熱部材350の引出し部370の位置が、第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200と異なる。以下、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、図11中、説明の便宜上、巻線140は省略している。また、図12、図13では、ワイヤレス電力伝送用コイル300が発生する磁束のうち、代表的なものとして、第1の磁性体120および第2の磁性体130とその周囲を通過する磁束を示している。
ワイヤレス電力伝送用コイル300は、図10に示されるように、磁性体110と、巻線140と、放熱部材350とを備える。磁性体110、巻線140の構成は、第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200と同様である。
放熱部材350は、磁性体110から発生する熱を放熱する機能を備えている。具体的には、図11に示されるように、放熱部材350は、第1の磁性体120と第2の磁性体130に挟まれる本体部260と、本体部260から第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向領域外に引き出される引出し部370を有する。本体部260の構成は、第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル200と同様である。
引出し部370は、図11に示されるように、外形形状が略直方体形状を呈しており、その外表面として、対向する略長方形状の第1および第2の主面371,372と、対向する第1および第2の側面373,374と、対向する第1および第2の端面375,376と、を有する。第1および第2の側面373,374は、第1および第2の主面371,372間を連結するように第1および第2の主面371,372の短辺方向に伸びている。第1および第2の端面375,376は、第1および第2の主面371,372間を連結するように第1および第2の主面371,372の長辺方向に伸びている。この引出し部370は、本体部260に接続されている。本実施形態では、引出し部370は、第1の磁性体120と第2の磁性体130との対向方向から見て、引出し部370の第2の側面374が本体部260の第1の側面263に、第1の磁性体120の外輪郭および第2の磁性体130の外輪郭よりも内側で接続されており、引出し部370の第1の側面373側の部分が第1の磁性体120の外輪郭および第2の磁性体130の外輪郭よりも外側に位置するように引き出されている。また、引出し部370の第1および第2の端面375,376の対向方向の幅は、本体部260の第1および第2の端面365,366の対向方向の幅よりも小さくなっている。またさらには、引出し部370は、第1の磁性体120と第2の磁性体130の対向方向と直交する方向における本体部260の略中央に接続されている。つまり、引出し部370は、引出し部370の引出し方向(第1および第2の側面373,374の対向方向)と直交する方向(第1および第2の端面375,376の対向方向)の幅が本体部260の外形幅よりも狭く、巻線140の始端側から終端側に向かう方向において、隣接する巻線140の間から引き出されることとなる。
次に、ワイヤレス電力伝送用コイル300が発生する磁束について詳細に説明する。まず、図12を参照して、第1の磁性体120とその周囲を通過する磁束について説明する。巻線140に電流を流すと、ワイヤレス電力伝送用コイル300の周囲に発生する磁束は、図12に示されるように、第1の磁性体120とその周囲を通過する磁束327,328となる。本実施形態では、磁束327は、第1の磁性体120の第1の端面125から第2の端面126に向かって第1の磁性体120を通過した後、第1の磁性体120の第1の主面121における第2の端面126側から空気中に放射され、第1の磁性体120の第2の端面126から第1の端面125に向かう方向に空気中を進み、第1の磁性体120の第1の主面121における第1の端面125側に至るように周回する。また、磁束328は、第1の磁性体120の第1の端面125から第2の端面126に向かって第1の磁性体120を通過した後、第1の磁性体120の第1の側面123における第2の端面126側から空気中に放射され、第1の磁性体120の第2の端面126から第1の端面125に向かう方向に空気中を進み、第1の磁性体120の第1の側面123における第1の端面125側に至るように周回する。このとき、図12に示されるように、引出し部370が、磁束328が第1の磁性体120から空気中に放射あるいは空気中から第1の磁性体120に侵入する箇所ではなく、巻線140の始端側から終端側に向かう方向において隣接する巻線140の間から引き出されているため、第1の磁性体120の第1の側面123における第2の端面126側から第1の磁性体120の第1の側面123における第1の端面125側に向かって空気中を大きく周回する磁束328から受ける影響を抑制することができる。したがって、磁束327,328が放熱部材350の引出し部370を貫通すことにより引出し部370に発生する渦電流をより一層減少させることができる。
続いて、図13を参照して、第2の磁性体130とその周囲を通過する磁束について説明する。巻線140に電流を流すと、ワイヤレス電力伝送用コイル300の周囲に発生する磁束は、図13に示されるように、第2の磁性体130とその周囲を通過する磁束337,338となる。本実施形態では、磁束337は、第2の磁性体130の第1の端面135から第2の端面136に向かって第2の磁性体130を通過した後、第2の磁性体130の第2の主面132における第2の端面136側から空気中に放射され、第2の磁性体130の第2の端面136から第1の端面135に向かう方向に空気中を進み、第2の磁性体130の第2の主面132における第1の端面135側に至るように周回する。また、磁束338は、第2の磁性体130の第1の端面135から第2の端面136に向かって第2の磁性体130を通過した後、第2の磁性体130の第1の側面133における第2の端面136側から空気中に放射され、第2の磁性体130の第2の端面136から第1の端面135に向かう方向に空気中を進み、第2の磁性体130の第1の側面133における第1の端面135側に至るように周回する。このとき、図13に示されるように、引出し部370が、磁束338が第2の磁性体130から空気中に放射あるいは空気中から第2の磁性体130に侵入する箇所ではなく、巻線140の始端側から終端側に向かう方向において隣接する巻線140の間から引き出されているため、第2の磁性体130の第1の側面133における第2の端面136側から第2の磁性体130の第1の側面133における第1の端面135側に向かって空気中を大きく周回する磁束338から受ける影響を抑制することができる。したがって、磁束337,338が放熱部材350の引出し部370を貫通すことにより引出し部370に発生する渦電流をより一層減少させることができる。
以上のように、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル300は、放熱部材350の引出し部370が、巻線140の始端側から終端側に向かう方向において隣接する巻線140の間から引き出されている。すなわち、引出し部370は巻線140に電流を流した際に発生する磁性体110の周囲を通過する磁束の密度が低い箇所から引出されている。そのため、引出し部370に発生する渦電流をより一層減少させることができるため、コイルのインダクタンス値とQ値の低下をより抑えることができる。
以下、上述の実施形態によって、放熱部材を備えつつ、ワイヤレス電力伝送用コイルのインダクタンス値とQ値の低下を抑制できることを実施例1と比較例1とによって具体的に示す。
実施例1として、上述した第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100を用いた。比較例1として、実施例1と特性を比較するために、第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送用コイル100において、放熱部材を磁性体の表面に配置したワイヤレス電力伝送用コイル400を用いた。
まず、図14を参照して、比較例1のワイヤレス電力伝送用コイル400の構成を説明する。図14は、比較例1に係るワイヤレス電力伝送用コイルを模式的に示した斜視図である。ワイヤレス電力伝送用コイル400は、磁性体410と、巻線440と、放熱部材450を有する。磁性体410は、棒状または板状に成型され、外形形状が略直方体形状を呈している。放熱部材450は、磁性体410の表面上に配置されている。巻線440は、複数の絶縁被覆導体を撚り合わせたリッツ線から構成され、間に放熱部材450を介して磁性体410に螺旋状に巻回されている。
ここで、実施例1と比較例1における巻線140,440には、ポリイミドで被覆した直径0.1mmの銅線を20本撚り合わせた直径約1mmのリッツ線を用いた。実施例1における第1の磁性体120には、長さ100mm、幅100mm、厚さ5mmのフェライト(比透磁率3000程度)を用い、第2の磁性体130には、長さ100mm、幅100mm、厚さ5mmのフェライト(比透磁率3000程度)を用いた。また、比較例1における磁性体410には、長さ100mm、幅100mm、厚さ10mmのフェライト(比透磁率3000程度)を用いた。さらに、実施例1と比較例1における放熱部材150,450には、長さ80mm、幅80mm、厚さ1mmの銅板を用いた。またさらには、実施例1と比較例1におけるワイヤレス電力伝送用コイル100,400の巻数は、いずれも11ターンとした。
続いて、実施例1と比較例1において、インピーダンスアナライザを用いてワイヤレス電力伝送用コイル100,400のインダクタンス値と等価直列抵抗値を測定した。また、ワイヤレス電力伝送の伝送周波数を100〔kHz〕とし、測定したインダクタンス値と等価直列抵抗値からQ値を求めた。
インダクタンス値およびQ値の測定結果を図15、図16に示す。図15および図16に示されるように、実施例1は、比較例1に比べて、インダクタンス値およびQ値が著しく高い。比較例1より、放熱部材450を磁性体410の表面上に配置した場合、インダクタンス値およびQ値が著しく低下することが確認された。具体的には、比較例1では、放熱部材450に渦電流が流れ、巻線440から発生する磁束とは逆位相の磁束が発生してしまい、インダクタンス値とQ値が大幅に低下してしまったためと考えられる。以上のことから、実施例1では、放熱部材150を備えつつ、ワイヤレス電力伝送用コイル100のインダクタンス値およびQ値の低下が抑制されていることが確認できた。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明したが、本発明は上述の実施形態に限られることなく、様々な変形や変更が可能である。