JP6584115B2 - 化学物質を吸着・吸収する複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化学物質を吸着して吸収する複合体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、環境中の有害化学物質等を、容易に再放出させることなく効果的に吸着して吸収することができる安全性の高い複合体、及びその製造方法に関する。
建造物の内装仕上げ構造として、下地材の表面に塗材や微粒子を吹き付けて多孔質の壁面を形成したりタイル化したりする技術が知られている。例えば、石膏ボード、木材、合板等からなる下地材の表面に、珪藻土、活性炭、活性炭素繊維、分子ふるい炭素、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等の無機多孔質物質を配合した塗材やシラス等の微粒子を吹き付けて多孔質の壁面を形成したり、それらの無機多孔質物質を焼成しタイル化したりする技術が知られている。特に無機多孔質物質は、その細孔内に種々の分子を物理吸着することが知られており、室内の湿度調整、臭気成分、揮発性有機化合物(VOCともいう。)を吸着する機能を有する内壁等の製品が市販されている。また、臭気成分やVOCの除去を目的に、光触媒を塗布した建造物の内壁等が開発されており、内壁、天井、壁、床、浴槽、洗面スペース、蛇口等を酸化チタンでコーティングして抗菌性を付与した製品も市販されている。
こうした技術については、例えば特許文献1には、組成にバラツキの多い天然のポゾラン物質の反応性を高め、高い吸湿性と放湿性、イオン吸着・交換能等を併せ持つケイ酸カルシウム水和物系の調湿材料とその製造方法を得ることにより、快適で安全な住環境を少ない環境負荷で提供できることが提案されている。この技術は、ゼオライト質凝灰岩を平均粒径10ミクロン以下に微粉砕することにより、メカノケミカル効果によってカルシウムイオンとの反応性を高め、180℃以下の水熱反応処理で平均細孔半径10ナノメートル以下の細孔を形成せしめた結晶性の良いケイ酸カルシウム水和物硬化体を、400℃以下で乾燥もしくは焼成することで多孔体を得るというものである。
また、特許文献2には、室内空間への臭気成分、VOCの再放出及び無機多孔質物質の細孔の飽和を防ぐ手段を提供できることが提案されている。この技術は、表面塗材としての抗菌・有害物分解性物質である酸化チタン光触媒を含有する第1層の塗材、及び内面塗材としての吸着吸放湿能を有する無機多孔質物質を含有する第2層の塗材からなる建造物用複合内装塗材を用いて、室内空間への臭気成分、VOCの再放出及び無機多孔質物質の細孔の飽和を防ぐ建造物複合内装塗装構造を形成するというものである。
特開2006−282410号公報 特開2009−68324号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術は、吸湿性、放湿性、イオン吸着・交換能等を併せ持つというものであるが、極めて小さい細孔であるため、気体を導入しにくく、効率的に機能を発揮できないという難点がある。また、マイクロ孔やメソ孔等の細孔での吸着は、吸着力の弱い物理吸着や化学吸着によって行われているため、例えば夏の閉め切った室内等のように、常温以上(例えば40℃以上)で吸着物質が再放出し易いという難点もある。
また、上記特許文献2の技術は、室内空間への臭気成分、VOCの再放出及び無機多孔質物質の細孔の飽和を防ぐ手段を提供したものであるが、室内の化学物質を吸着するというものではなく、酸化チタン光触媒を抗菌・有害物分解性物質として用いている。さらに、2層構造に施工しなければならないという煩雑さがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、環境中の有害化学物質を、容易に再放出させることなく効果的に吸着して吸収することができる安全性の高い複合体、及びその製造方法を提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係る複合体は、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有する多孔性の複合体であって、前記マクロ孔内には、化学物質と反応して該化学物質を前記マクロ孔内に吸着し吸収させる成分を有することを特徴とする。
この発明によれば、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有するので、気体を容易に導入しやすく、さらにマクロ孔内には、化学物質と反応してその化学物質をマクロ孔内に吸着し吸収させる成分を有するので、その成分の作用により、マクロ孔内に導入した化学物質の再放出を抑えて無害化させることができる。
本発明に係る複合体において、前記化学物質との反応が、中和反応又は化学反応であるように構成できる。
本発明に係る複合体において、前記成分を有する材料が、水硬性石灰であることが好ましい。
本発明に係る複合体において、マイクロ孔又はメソ孔をさらに有することが好ましい。
(2)上記課題を解決するための本発明に係る複合体の製造方法は、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有する多孔性複合体の製造方法であって、化学物質と反応して該化学物質を前記マクロ孔内に吸着し吸収させる成分を有する材料と、骨材と、水系溶媒とを有する複合体組成物を準備し、該複合体組成物を対象物上に、塗り固め手段、流し込み手段、吹付手段、及びローラー手段から選ばれる1又は2以上の手段によって前記多孔性複合体を得ることを特徴とする。
この発明によれば、化学物質と反応してその化学物質をマクロ孔内に吸着し、吸収させる成分を有する材料と、骨材と、水系溶媒とを有する複合体組成物を対象物上に、塗り固め手段、流し込み手段、吹付手段、ローラー手段等によって、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有する多孔性複合体を得るので、得られた複合体は、気体を容易に導入しやすく、さらにマクロ孔内に有する成分の作用により、マクロ孔内に導入した化学物質の再放出を抑えて無害化させることができる。
本発明に係る複合体の製造方法において、前記骨材の他に、マイクロ孔又はメソ孔を有する骨材を添加することが好ましい。
本発明によれば、環境中の有害化学物質を、容易に再放出させることなく効果的に吸着して吸収することができる安全性の高い複合体、及びその製造方法を提供することができる。
本発明に係る複合体の表面形態を示す電子顕微鏡写真である。 実施例1の複合体についての水銀圧入法による細孔径分布曲線(マクロ孔)であり、aは積分値であり、bは微分値である。 実施例1の複合体(a)と比較例1の機能性タイル(b)と比較例2の珪藻土建材(c)の窒素ガス吸着量曲線である。 実施例1の複合体と比較例1の機能性タイルと比較例2の珪藻土建材の比表面積(メソ孔)と全細孔容積である。 実施例1の複合体(a)と比較例1の機能性タイル(b)と比較例2の珪藻土建材(c)の細孔径分布曲線(メソ孔)である。 実施例1の複合体(a)と比較例1の機能性タイル(b)と比較例2の珪藻土建材(c)と比較例3の機能性クロス(d)と空試験ブランク(e)の消臭試験結果(アンモニア)である。 実施例1の複合体(a)と比較例1の機能性タイル(b)と比較例2の珪藻土建材(c)と比較例3の機能性クロス(d)と空試験ブランク(e)の消臭試験結果(ホルムアルデヒド)である。 実施例1の複合体(a)と比較例1の機能性タイル(b)と比較例2の珪藻土建材(c)と比較例3の機能性クロス(d)と空試験ブランク(e)の消臭試験結果(硫化水素)である。 実施例1の複合体(A)、比較例1の機能性タイル(B)、比較例2の珪藻土建材(C)及び比較例3の機能性クロス(D)の外観写真である。 実施例1の複合体を用い、対流時(a)、無風時(b)及び空試験ブランク(c)の消臭試験結果(アンモニア)である。 実施例1の複合体を用い、対流時(a)、無風時(b)及び空試験ブランク(c)の消臭試験結果(ホルムアルデヒド)である。 実施例1の複合体(a)と比較例3の機能性クロス(b)とを用いたPM2.5低減実験の結果である。 実施例2の複合体(a)、実施例3の複合体(b)、実施例4の複合体(c)及び実施例5の複合体(d)を用い、実施例1の複合体(e)と比較した消臭試験結果(アンモニア)である。 実施例2の複合体(a)、実施例3の複合体(b)、実施例4の複合体(c)及び実施例5の複合体(d)を用い、実施例1の複合体(e)と比較した消臭試験結果(ホルムアルデヒド)である。
本発明に係る複合体及び複合体の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
本発明に係る複合体は、図1及び図2に示すように、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有する多孔性の複合体であって、そのマクロ孔内には、化学物質と反応してその化学物質を前記マクロ孔内に吸着し吸収させる成分を有することに特徴がある。この複合体は、化学物質と反応してその化学物質をマクロ孔内に吸着して吸収させる成分を有する材料と、骨材と、水系溶媒とを有する複合体組成物を準備し、その複合体組成物を対象物上に、塗り固め手段、流し込み手段、吹付手段、及びローラー手段から選ばれる1又は2以上の手段によって製造される。
この複合体は、上記範囲のマクロ孔を有するので、気体を容易に導入しやすく、さらにマクロ孔内には、化学物質と反応してその化学物質をマクロ孔内に吸着し吸収させる成分を有するので、その成分の作用により、マクロ孔内に導入した化学物質の再放出を抑えて無害化させることができる。こうした複合体は、環境中の有害化学物質を、容易に再放出させることなく効果的に吸着して吸収することができるとともに、安全性も高いという利点がある。
以下、複合体及び複合体の製造方法の構成要素を説明する。
[複合体の多孔構造]
(マクロ孔)
マクロ孔は、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上の大きさで多数形成されている。細孔径が50nm以上の孔は、マクロ孔とも呼ばれ、直径2nm未満のマイクロ孔や直径2nm以上50nm未満のメソ孔とは異なり、大きな孔である。マクロ孔には、平均径50nm未満のメソ孔やマイクロ孔に比べて気体が入りやすく、特に室内等に存在する揮発性有機化合物(VOC)やその他の臭気成分等を含む空気や、揮発性有機化合物(VOC)やその他の臭気成分等が溶け込んだ水蒸気が入り易い。
本発明に係る複合体は、従来のようなメソ孔で構成された多孔性吸着体とは異なり、50nm以上のマクロ孔で構成されている。そして、そのマクロ孔が後述する成分を内部に有するので、メソ孔で構成された従来の多孔性吸着体と同等又はそれ以上の吸着性能を得ることができるという利点がある。なお、マクロ孔の細孔径の上限は特に制限されないが、製造の容易さや気体の抜け等の観点から、500μm以下であればよい。マクロ孔の細孔径が500μmを超える場合には、マクロ孔が大きすぎて、マクロ孔内に入った化学物質が吸着される前に再放出してしまうおそれがある。
細孔径は、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる。この水銀圧入法は、複合体について、圧力を加えながらその細孔に水銀を浸入させ、圧力と圧入された水銀量との関係から、比表面積や細孔径分布等の情報を得る手法である。なお、水銀圧入法による測定装置の一例としては、水銀ポロシメーター(例えば、Quantachrome社製 PoreMaster60GT等)を用いることができる。水銀圧入法の測定条件としては、後述の実施例では、室温で0.2psiaから60000psiaまで昇圧しながら測定を行い、水銀の表面張力の値としては480erg/cm、接触角の値としては140°を用いている。なお、psia(psi absolute)は、絶対圧(ゲージ圧にその地域での大気圧を足したもの)であり、ポンド毎平方インチとも呼ばれ、lbf/in又はpsiで表される。
(成分)
「成分」は、マクロ孔内に存在しており、化学物質と反応してその化学物質をマクロ孔内に吸着して吸収させるように作用したり、化学物質を含む溶媒(例えば水蒸気)と反応してその化学物質をマクロ孔内に吸着して吸収させるように作用する。成分は、マクロ孔全体を形成していてもよいし、マクロ孔の内面だけを形成していてもよいし、マクロ孔内面の一部を形成していてもよい。こうした成分は、複合体を構成する材料に含まれており、マクロ孔内に入ってくる化学物質との間で、中和反応又は化学反応を行うことができる材料である。
成分は、対応する化学物質の種類によっても異なるが、例えば、化学物質がアンモニア、トリメチルアミン、メチルアミン、エチルアミン等のアミン類等の塩基性成分である場合には、花崗岩等のようなシラノール基(Si−OH)を含む成分であることが好ましい。このシラノール基は、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性物質と化学反応を起こし易いので、室内環境中の塩基性成分を効果的に吸着し、吸収することができる。また、シラノール基は水酸基を持つものをよく吸着するので、花崗岩等のようなシラノール基を含む成分のものは、水溶性の化学物質を効果的に吸着し、吸収することができる。
化学物質がホルムアルデヒド等のように、水酸化カルシウムで縮合反応(ホルモース反応)する化学物質である場合には、その水酸化カルシウムを含む水硬性石灰が好ましい。この水酸化カルシウムは、縮合反応(ホルモース反応)を起こし易いので、室内環境中のホルムアルデヒド等の成分を効果的に吸着し、吸収することができる。
化学物質が硫化水素、フッ化水素、塩化水素、二酸化硫黄、塩素、二酸化窒素等のような酸性ガスである場合には、その酸性ガスに反応する水酸化カルシウムを含む水硬性石灰が好ましい。この水酸化カルシウムは、強アルカリ性で酸性ガスと中和し易いので、室内環境中の酸性ガス等の成分を効果的に吸着し、吸収することができる。また、花崗岩等のようなシラノール基を含む成分のものは、そうした水硬性石灰と配合することにより、強アルカリ状態では表面シラノール基はイオン化して強い電場を作り、化学反応を促すように作用することができる。
本発明に係る複合体は、水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔内に、上記した成分を有するので、環境中の有害化学物質を、容易に再放出させることなく、効果的に吸着して吸収することができ、その結果、環境中の有害化学物質を無害化することができるという格別の効果を奏する。
以下、材料として好ましく用いられる水硬生石灰について説明する。天然水硬性石灰(NHL、Natural Hydraulic Lime)は、建築用石灰の欧州規格EN459−1(2001)によれば、「粉砕に関係なく消化によって粉末化した、いくらか粘土質または珪質の石灰石の焼成によって作られる石灰。すべてのNHLは水硬性を持つ。大気中の炭酸ガスは、硬化に寄与する。」と定義されている。本願においては、天然水硬性石灰の用語を欧州規格と同じ意味で用いる。天然水硬性石灰の他に、ローマンセメントや古代セメントと呼ばれているものがあり、これは消石灰(水酸化カルシウム)にポゾラン物質(珪酸SiO、アルミナAl、酸化鉄Fe等の鉱物)を後から添加した石灰であり、粘土質又は珪質石灰石(泥灰石、marlともいう)の焼成によって得られる天然水硬性石灰とは区別されるものであって、人工水硬性石灰という。また、本願で使用する場合、「水硬性石灰」は、天然水硬性石灰と人工水硬性石灰を含む。上記の欧州規格においても、天然水硬性石灰と人工水硬性石灰とは区別されており、人工水硬性石灰は、「水硬性石灰(HL、Hydraulic Lime):水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸カルシウムを主成分とし、これらの混合によって作られる石灰。水硬性を持つ。大気中の炭酸ガスは、硬化に寄与する。」と定義されている。本願では、この点についても前記の欧州規格に従うものとする。
代表的な天然水硬性石灰には、以下の3種類があり、欧州規格EN459−1には圧縮強度が規定されている。NHLの種類としては、NHL2、NHL3.5、NHL5があり、それぞれの圧縮強度は、NHL2が2〜7N/mmであり、NHL3.5が3.5〜10N/mmであり、NHL5が、5〜15N/mmである。
天然水硬性石灰は、二酸化ケイ素SiO等を含有する石灰石を焼成・消化することによって得られ、水酸化カルシウムCa(OH)を主成分として、ケイ酸二カルシウムCS等の水和物を含む石灰である。NHLに含有される水和物CSは、β−CSが主である。水との接触で、CS等の水和物は水酸化カルシウムCa(OH)の結晶間を結合させ、さらに炭酸化により水酸化カルシウムCa(OH)は表層面から次第に炭酸カルシウムCaCO結晶へと変化する。炭酸カルシウムCaCO結晶は、CS等の水和物によって結合状態を保っており、その水和物は同じ炭酸化作用によって炭酸カルシウムCaCO結晶へと変化する。表層が炭酸化すると、炭酸カルシウムCaCO結晶は空隙を含んだ粒状構造を形成し、奥の水酸化カルシウムCa(OH)に空気中の炭酸ガスが供給され、炭酸化が緩やかに進行する。すなわち、天然水硬性石灰は、水硬性・気硬性を併せ持つ材料であり、骨材・水との混合により硬化後、強度を発現するものである。
[複合体の構成材料]
複合体は、上記した成分を含む材料と、骨材と、水系溶媒とを有する複合体組成物を対象物上に塗り固め手段等によって形成されている。したがって、製造された複合体は、水系溶媒が乾燥除去されたものであり、成分を含む材料と骨材とで構成されている。
材料は、上記した成分を含むものであればよいので、マクロ孔全体がその材料で形成されている場合は、マクロ孔の内面にはその成分が存在している。一方、マクロ孔の内面だけをその成分で形成してもよいが、その場合は、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル樹脂のような樹脂成分と水硬性石灰等を混ぜることにより、マクロ孔の内面の全体又は一部に成分を存在させることができる。
材料には、化学物質に対して、中和反応や化学反応を起こすことができる成分が含まれるので、化学物質が入り易い細孔径50nm以上のマクロ孔内に化学物質が入ると、その成分と化学物質とが反応し、化学物質を事実上吸着して吸収することになる。本発明に係る複合体は、こうしたメカニズムによって、化学物質の効率的な吸着して吸収を行うことができる。さらに、従来の多孔性吸着体では、夏の室内のように、室内の温度が40℃を超える場合に、多孔性吸着体の中から化学物質が再放出される場合があったが、本発明に係る複合体は、そうした再放出が起きないという利点がある。
骨材は、複合体の脆さ等を補填して強度や耐久性を高めるための素材である。骨材としては、花崗岩;麦飯石等の花崗斑岩;珪砂等の石英;石英斑岩;凝灰岩(十和田石等);火山灰;等の天然鉱物を挙げることができる。また、モンモリロナイト、ベントナイト等の粘度鉱物、珪藻土、ゼオライト、パーライト、マールライト、バーミキュライト、ガラスビーズ、活性炭、籾殻、藁すさ、グラスファイバー、グラスウール、等々を挙げることができる。これらは、同様の成分や構造を有するものであれば、天然物であってもよいし、人工物であってもよい。
こうした骨材として、2以上の骨材を混合してもよい。この場合において、添加する骨材としては、吸着性能を高めることができる骨材を添加することが望ましい。例えば、後述の実施例で説明するように、骨材として花崗岩を用いた場合、添加する骨材として、モンモリロナイト、ゼオライト、珪藻土、活性炭等を用いることができる。これらの添加骨材は、マイクロ孔やメソ孔を有することができ、本発明に係る複合体が有するマクロ孔の効果(気体の導入容易効果・通風効果)に加え、添加骨材が有するマイクロ孔やメソ孔の効果(吸着効果)を重畳させることができる。
水系溶媒は、代表的には水であるが、大部分が水であれば、その中に水溶性の有機化合物等が含まれていてもよい。
複合体は、成分を含む材料と、骨材とで主に構成されており、それぞれの特性を生かし、マイクロ孔やメソ孔よりも大きいマクロ孔を主に有している。そのマクロ孔の通風効果を最大限に利用するとともに、そのマクロ孔内の「成分」の作用により、環境中の有害化学物質を容易に再放出させることなく効果的に吸着して吸収することができ、低コストで安全性の高いものとすることができる。
複合体は、上記した材料と、骨材と、水系溶媒とを混練して複合体組成物を準備し、その複合体組成物を対象物上に設けて得ることができる。対象物としては、住宅の内壁、パネル、パーテーション、床、天井、プレート、タイル等の板状物や、空調機や空気清浄機の内部、テーブルやタンス等の家具、種々のフィルター、その他の構造物を挙げることができる。これらの構造物の設置環境では、通常、空気の流れ(通風)があり、例えば自然な通風としては、部屋内への屋外からの風の吹きこみや人の移動等による自然対流があり、人口通風としては、エアコンや装置への吸排気等がある。複合体組成物をそれらの構造物に設けて多孔性複合体を形成することにより、多孔性複合体に形成されたマクロ孔は、上記の通風によって、その孔径よりも小さな化学物質と接触して取込む時間が増え、効率良く孔の中に化学物質を取り込んで化学物質を再放出することなく吸着して吸収することができ、消臭等をすることができる。
複合体組成物を対象物上に設けて多孔性複合体を形成する手段としては、塗り固め手段、流し込み手段、吹付手段、ローラー手段等を挙げることができる。塗り固め手段は、複合体組成物を対象物に塗って乾燥させる手段であり、流し込み手段は、複合体組成物を型に流し込んだ後に乾燥させる手段であり、吹付手段は、複合体組成物を対象物に吹き付けた後に乾燥させる手段であり、ローラー手段は、対象物上に複合体組成物を載せた後にローラーで引き延ばしてならす手段である。複合体は、上記の手段を単独で適用してもよいし、2以上の手段を適用してもよい。
材料と骨材との配合比は特に限定されないが、少なくとも、細孔径が50nm以上のマクロ孔を生成することができる配合比で調整されていることが好ましい。例えば、後述の実施例では、材料:骨材を1:4の質量割合で配合しているが、この材料に対する骨材の質量割合は、材料1質量部に対し、骨材が0.5質量部以上、10質量部以下の範囲内であれば、得られた複合体の強度を確保できるので、任意に設定することができる。材料に対する骨材の割合が0.5質量部未満では、骨材の配合量が少なくなって強度低下が起こることがある。
実施例と比較例により本発明を詳しく説明する。
[実施例1]
水硬性石灰(産地:フランス東部、CaO:60.1質量%、SiO:11.5質量%、Al:2.83質量%、Fe:0.90質量%、MgO:1.73質量%)と、花崗岩(産地:滋賀県)とを質量比で1:4の割合で水中に入れて混練し、複合体組成物を調製した。これを、幅100mm、長さ100mm、厚さ9mmの石膏ボード上に塗り、自然乾燥させて、実施例1の複合体を得た。その外観写真を図9(A)に示した。
[比較例1]
二酸化ケイ素を含む粘土鉱物からなる幅100mm、長さ100mm、厚さ約7mmの市販の消臭・調湿性のタイルを購入した。この購入したタイルは、社団法人日本建材・住宅設備産業協会より「調湿建材」、「ホルムアルデヒド低減建材認定」に登録されているものである。これを幅100mm、長さ100mm、厚さ9mmの石膏ボード上にアルミニウムテープで貼付固定し、比較例1の機能性タイルを得た。その外観写真を図9(B)に示した。
[比較例2]
無機質骨材約60質量%、有機質骨材約10質量%、酸化チタン約5質量%、無機質紛体約5質量%、添加剤約10質量%、酢酸ビニル系再乳化形粉末樹脂約10質量%を含む市販の消臭・調湿性の珪藻土建材を購入した。この購入した珪藻土建材は、日本工業標準調査会より「建築用仕上塗材」に認定されているものである。これを幅100mm、長さ100mm、厚さ9mmの石膏ボード上に塗り、自然乾燥させて、比較例2の珪藻土建材を得た。その外観写真を図9(C)に示した。
[比較例3]
ポリ塩化ビニル樹脂、フタル酸ビス、炭酸カルシウム、二酸化チタン、安定剤、防カビ剤を含む市販の消臭・調湿性の壁紙を購入し、幅100mm、長さ100mm、厚さ約0.2mmに切り出した。この購入した壁紙は、壁紙工業会よりSV規格に認定されている。これを幅100mm、長さ100mm、厚さ9mmの石膏ボード上に接着剤で貼り付けて、比較例3の機能性クロスを得た。その外観写真を図9(D)に示した。
[特性評価1]
(比表面積の測定)
先ず、比表面積を測定した。比表面積は、マクロ孔については水銀圧入法による細孔径分布測定で得たP−V曲線から測定した。測定は、水銀ポロシメーター(Quantachrome社製、PoreMaster60GT)を用いて測定した。測定条件としては、室温(22℃〜25℃)で0.2psiaから60000psiaまで昇圧しながら行った。なお、水銀の表面張力の値としては480erg/cm、接触角の値としては140°を用いた。一方、メソ孔については高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−max−N−VP−CM、日本ベル株式会社製)を用い、得られた窒素ガス吸着等温線からBET理論(多分子層吸着理論)により解析した。
(細孔径分布の測定)
細孔径分布の測定は、マクロ孔については、上記した比表面積の測定と同じ装置を用い、得られた結果をWashburn式に基づいて計算した。メソ孔についても、上記した比表面積の測定と同じ装置を用い、BJH法(シリンダー型)により解析した。このBJH法は、毛管凝縮理論(ケルビン式)に基づき計算され、一般的にメソ孔(2〜50nm)の細孔径に適用される方法である。
(吸着量の測定)
吸着量の測定は、上記同様、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−max−N−VP−CM、日本ベル株式会社製)を用い、材料を一定温度(−196℃)にし、圧力を変化させたときの吸着量を測定し、その吸着等温線から評価した。このとき、IUPACで定義されている等温線の分類により、実施例1の複合体はメソ孔が少ないII型であり、比較例1〜3の比較対照品はメソ孔を持つIV型(ヒステリシス有り)であった。
(消臭試験1)
消臭試験1をガス検知管法によって評価した。実施例の試料と比較例の試料とを、それぞれポリフッ化ビニリデン製のにおい袋(テドラーバッグ、アズワン株式会社製)に入れ、ヒートシールを施した後、空気9Lを封入し、設定したガス濃度となるように試験対象ガス(アンモニア、ホルムアルデヒド、硫化水素)を添加した。これを静置し、経過時間ごとに袋内のガス濃度を下記のガス検知管を用いて測定した。また、実施例の試料と比較例の試料を入れずに同様な操作をしたものを空試験(ブランク)とした。また、24時間経過した後のテドラーバッグを40℃の恒温槽内に静置し、1時間経過した後、及び3時間経過した後に袋内のガス濃度をガス検知管を用いて測定した。
実施例の試料と比較例の試料の仕様としては、幅100mm、長さ100mm、高さ9mmの石膏ボード上に実施例1の試料と比較例1〜3の試料を塗布又は貼付した。側面及び裏面は、アルミニウムテープでシールした。また、テドラーバッグの仕様は、幅500mm、長さ500mmである。ガス検知管(株式会社ガステック製)は、試験対象ガスとしてアンモニア用とホルムアルデヒド用と硫化水素用の検知管をそれぞれ用い、それぞれの初期ガス濃度は、13ppmと20ppmと10ppmに設定した。この測定は、室温(22℃〜25℃)で行い、測定時間は、30分、1時間、2時間、3時間、6時間、24時間で行った。また40℃でも1時間と3時間で行った。結果を、図6〜図8及び表1〜表3に示す。
[結果]
図2に、水銀圧入法でWashburn式に基づき計算された実施例1の複合体の細孔径分布(マクロ孔)を示す。図2に示すように、実施例1の複合体は、50nm以上のマクロ孔を有する複合体であり、4.6μm近辺にマクロ孔分布のピークをもつことが分かった。なお、この水銀圧入法による測定から、実施例1の複合体の比表面積(マクロ孔)は、22m/gであることが分かった。
図3に示すように、窒素ガス吸着法による測定から、実施例1の複合体(a)はINPACで定義されている等温線分類のII型に該当し、マイクロ孔やメソ孔が少なくマクロ孔が多いことが分かった。また、比較例1の機能性タイル(b)と比較例2の珪藻土建材(c)はIV型に該当し、マイクロ孔やマクロ孔が少なくメソ孔が多いことが分かった。なお、図3の縦軸の吸着量の単位中、Vaは吸着窒素ガス量であり、cm(STP)は窒素ガスの標準体積(1気圧、25℃)である。
図4に示すように、実施例1の複合体、比較例1の機能性タイル、比較例2の珪藻土建材の比表面積(メソ孔)は、それぞれ2.8m/g、26.8m/g、14.3m/gであった。
図5に、窒素ガス吸着BJH法のケルビン式に基づき計算された実施例1の複合体(a)、比較例1の機能性タイル(b)、比較例2の珪藻土建材(c)の細孔径分布(メソ孔)を示す。図5に示すように、実施例1の複合体(a)はメソ孔分布のピークが確認できないが、比較例1の機能性タイル(b)は8nm近辺にメソ孔分布のピークが確認され、比較例2の珪藻土建材(c)は10nm近辺にメソ孔分布のピークが確認された。
図6及び表1に示す消臭試験結果(アンモニア)より、実施例1の複合体(a)は、試験開始6時間後にガス検知管の検出限界値以下となり、比較例1の機能性タイル(b)、比較例2の珪藻土建材(c)と比較してほぼ同等であることを確認できた。また、比較例3の機能性クロス(d)と比較しても、より良好な消臭効果があることが確認できた。また、環境温度を40℃に設定した場合、試験開始1時間後では、比較例1の機能性タイル、比較例2の珪藻土建材、比較例3の機能性クロスのいずれにおいても、アンモニアガスの再放出が確認されたが、実施例1の複合体は、3時間後においても再放出は確認されなかった。なお、検出限界は0.20ppmであり、符号eはブランクである。
図7及び表2に示す消臭試験結果(ホルムアルデヒド)より、実施例1の複合体(a)は、比較例2の珪藻土建材(c)と比較してやや不良、比較例1の機能性タイル(b)と比較して同等、比較例3の機能性クロス(d)と比較してより良好な消臭効果があることが確認された。また、環境温度を40℃に設定した場合、試験開始1時間後で比較例1の機能性タイル(b)、比較例2の珪藻土建材(c)、比較例3の機能性クロス(d)のいずれにおいてもホルムアルデヒドガスの再放出が確認されたが、実施例1の複合体(a)は、3時間後においても再放出は確認されなかった。なお、検出限界は0.05ppmであり、符号eはブランクである。
図8及び表3に示す消臭試験結果(硫化水素)より、実施例1の複合体(a)は試験開始2時間後にガス検知管の検出限界値以下となり、比較例1の機能性タイル(b)、比較例2の珪藻土建材(c)、比較例3の機能性クロス(d)と比較してより良好な消臭効果があることが確認された。また、環境温度を40℃に設定した場合、実施例1の複合体(a)は、3時間後においても再放出は確認されなかった。なお、検出限界は0.1ppmであり、符号eはブランクである。
通常、有害化学物質ガスはマイクロ孔やメソ孔で吸着するとされており、それらの細孔が多くなるほど比表面積が増大することが分かっている。しかしながら、実施例1の複合体は、上記測定結果より、マイクロ孔やメソ孔の分布ピークを持たず、比表面積が小さく、マイクロ孔やメソ孔が少ないにもかかわらず、実施例1の複合体は、メソ孔の分布ピークを持ち比表面積が大きい比較例1の機能性タイルや比較例2の珪藻土建材と比較して、同等の消臭効果があることが証明された。
この原因としては、上記測定結果より、実施例1の複合体は、比較例1の機能性タイルや比較例2の珪藻土建材に少ないマクロ孔が多く分布することで比表面積が増大し、有害化学物質ガスの吸着吸収に大きく影響している。図2に示すように、実施例1の複合体は、細孔径が0.1μm〜10μmと広く分布するマクロ孔によって効率よく有害化学物質ガスがマクロ孔内に導入され、マクロ孔内で有する成分によって中和反応又は化学反応で無害化され、有害化学物質ガスが再放出されないことが確認された。
有害化学物質ガスは、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性化学物質、硫化水素、メチルメルカプタン等の酸性化学物質、ホルムアルデヒド、トルエン等の揮発性有機化合物のいずれに対しても、実施例1の複合体は、比較例1の機能性タイルや比較例2の珪藻土建材と比較して、同等もしくはそれ以上の吸着吸収効果が確認された。実施例1の複合体は、特に水溶性の高い化学物質のアンモニア、硫化水素、ホルムアルデヒドについて効果が高いことが確認された。
[特性評価2]
(消臭試験2)
消臭試験2をガス検知管法によって評価した。この消臭試験2は、(1)用いたにおい袋(テドラーバッグ)の中に小型ファンを入れて対流状態(通風状態)を作り出したこと、(2)実施例1の複合体で行ったこと、(3)試験対象ガスとしてアンモニアとホルムアルデヒドを用いたこと以外は、上記した消臭試験1と同じ測定方法で行った。結果を図10、図11、表4、表5に示す。なお、図10及び図11において、符号aは対流時、符号bは無風時、符号cは空試験ブランクの結果である。
これらの結果より、アンモニアに対して、試験開始から0.5時間後の初期濃度からの減少率は、無風時で46.2%、対流時で84.6%であった。また、試験開始から1時間後の初期濃度からの減少率は、無風時で84.6%、対流時で88.5%であった。試験開始から0.5時間後の結果では、対流時は無風時の約1.8倍の効果が確認された。
また、ホルムアルデヒドに対して、試験開始から0.5時間後の初期濃度からの減少率は、無風時で50.0%、対流時で75.0%であった。また、試験開始から1時間後の初期濃度からの減少率は、無風時で70.0%、対流時で84.0%であった。また、試験開始から2時間後の初期濃度からの減少率は、無風時で86.0%、対流時で90.0%であった。試験開始から0.5時間後の結果では、対流時は無風時の約1.5倍の効果が確認され、試験開始から1時間後の結果では、対流時は無風時の約1.2倍の効果が確認された。
これらの結果から、複合体は、通風(対流)時においては、極めて短時間で消臭効果が向上することが確認された。この特性は実際の生活環境において、健康面や精神面での改善に大きく寄与できる。
[特性評価3]
(PM2.5低減実験)
PM2.5は、粒子径2.5μm以下の大気中の微粒子で、大気汚染の原因であり、健康被害が問題となっている。このPM2.5は、粒子径が2.5μmと大きいため、直径2nm未満のマイクロ孔や直径2nm以上50nm未満のメソ孔が粒子を捕捉することは困難である。なお、建築物室内では、PM2.5の濃度上昇に寄与する粒径は0.1μm前後であるとされているが、それでもマイクロ孔やメソ孔よりも大きく、PM2.5を捕捉することは困難である。
一方、マクロ孔は、直径50nm以上であるが、PM2.5粒子を捕捉するためには最低でも直径0.1μm以上が必要となる。本発明に係る複合体は、図2及びその説明欄からもわかるように、直径が4.6μm近辺にピークを持ち、0.1μm〜10μmに広く分布するマクロ孔を有しており、PM2.5粒子を容易に捕捉できる構造となっている。
PM2.5低減実験として、アクリル樹脂製の密閉箱(内寸:幅300mm、縦190mm、深さ300mm)の内面を実施例1の複合体で覆ったものと、比較例3の機能性クロスで覆ったものの2箱用意した。処理面は両側面、背面、天面の4面とし、処理面積は2610cmであった。箱内部の底面にレーザー光散乱方式のダストモニター(佐藤商事株式会社製、DC170)を設置し、箱内部でフィルター付きタバコを先端から5秒間自然燃焼させて副流煙を発生させた。ダストモニターで副流煙の粉塵量を計測し、経過時間による粉じん量の減少率を比較した。
試験結果を図12に示した。符号aは実施例1の複合体の結果であり、符号bは比較例3の機能性クロスの結果である。図12に示すように、開始直後から実施例1の複合体の方の減少が大きくなり、120分後に10%以下となった。一方、比較例3の機能性クロスは150分後にようやく10%以下になった。120分後における両者の比較では、約20%の差が確認できた。この結果より、本発明に係る実施例1の複合体で処理した室内においては、タバコの副流煙の低減効果が確認され、健康面や精神面での改善に大きく寄与できることがわかった。
[特性評価4]
実施例1で使用した複合体組成物に他の骨材をさらに添加し、得られた複合体の消臭効果を測定した。添加した骨材として、モンモリロナイト、ゼオライト、珪藻土、活性炭を用いた。
(実施例2)
実施例1で使用した複合体組成物を構成する水硬生石灰と花崗岩に、モンモリロナイトを加えて実施例2で使用する複合体組成物を調製した。モンモリロナイトの配合量は、そのモンモリロナイトの配合に起因した吸着効果が向上する程度の量とし、この例では、水硬生石灰:花崗岩:モンモリロナイトが1:1:1の割合となるように配合した。この複合体組成物を用いて、実施例1と同様にして複合体を作製した。なお、用いたモンモリロナイトは、酸処理を行うことで吸着性能を向上させたものであり、メソ孔を有し、極性物質、不飽和物質、芳香族物質の吸着性がある。
(実施例3)
実施例1で使用した複合体組成物を構成する水硬生石灰と花崗岩に、ゼオライトを加えて実施例3で使用する複合体組成物を調製した。ゼオライトの配合量は、そのゼオライトの配合に起因した吸着効果が向上する程度の量とし、この例では、水硬生石灰:花崗岩:ゼオライトが1:1:1の割合となるように配合した。この複合体組成物を用いて、実施例1と同様にして複合体を作製した。なお、用いたゼオライトは、水分子を結晶水の形で構造中に主成分として含む、アルミニウムの含水珪酸塩鉱物であり、マイクロ孔を有し、このゼオライトの結晶水は、立体網目構造になっており、加熱処理すると空洞として残りスポンジ状の構造となり、この空洞にガスや水分を強力に吸着する特性がある。
(実施例4)
実施例1で使用した複合体組成物を構成する水硬生石灰と花崗岩に、珪藻土を加えて実施例4で使用する複合体組成物を調製した。珪藻土の配合量は、その珪藻土の配合に起因した吸着効果が向上する程度の量とし、この例では、水硬生石灰:花崗岩:珪藻土が1:1:1の割合となるように配合した。この複合体組成物を用いて、実施例1と同様にして複合体を作製した。なお、用いた珪藻土は、多孔質性天然鉱物であり、メソ孔を有し、吸放出作用及び塩基性ガスの吸着に優れている。
(実施例5)
実施例1で使用した複合体組成物を構成する水硬生石灰と花崗岩に、活性炭を加えて実施例5で使用する複合体組成物を調製した。活性炭の配合量は、その活性炭の配合に起因した吸着効果が向上する程度の量とし、この例では、水硬生石灰:花崗岩:活性炭が1:2:1の割合となるように配合した。この複合体組成物を用いて、実施例1と同様にして複合体を作製した。なお、用いた活性炭は、ファンデルワールス力による物理吸着で吸着速度は速く、可逆的(再放出)であり、メソ孔とマクロ孔を有している。
(消臭試験3)
消臭試験3をガス検知管法によって評価した。この消臭試験3は、上記した消臭試験2と同じである。結果を図13、図14、表6、表7に示す。なお、図13及び図14中、符号aは実施例2の複合体の結果であり、符号bは実施例3の複合体の結果であり、符号cは実施例4の複合体の結果であり、符号dは実施例5の複合体の結果であり、符号eは比較対象とした実施例1の複合体の結果である。
これらの結果より、添加骨材を配合した実施例2〜5の複合体で実施例1の複合体に対して消臭効果の改善が確認された。アンモニアでは、特に実施例2〜4の複合体で短時間(0.5時間経過)での改善効果が大きかった。ホルムアルデヒドでは、特に実施例5の複合体で短時間(0.5時間経過)での改善効果が大きかった。
有害化学物質ガスは、通常、マイクロ孔やメソ孔で吸着するが、実施例2〜5の複合体に添加した添加骨材は、いずれもマイクロ孔やメソ孔が多く、比表面積も大きいため、実施例2〜5の複合体は、ガス吸着能力が大きくなったものと考えられる。なお、どのような骨材を添加してもよいというものではなく、添加する骨材によってはマイクロ孔やメソ孔が埋まってしまい、本来の能力を発揮できないことがあるが、ここで用いたモンモリロナイト、ゼオライト、珪藻土、活性炭は、上記結果のように、添加骨材の性能を落とすことなく効果を改善できることがわかった。実施例2〜5の複合体は、マクロ孔の内壁に添加骨材が分布することにより、マクロ孔の効果(気体の導入効果・通風効果)にマイクロ孔とメソ孔の効果(吸着効果)が付加され、特性が改善されたものと考えられる。
(吸放湿試験)
吸放出試験を、実施例1と実施例3の複合体を用いて行った。試験方法は、JIS A 1470−1(調湿建材の吸放湿性試験方法−湿度応答法)に準じ、恒温恒湿槽内で温度(23℃)を一定にし、相対湿度を50%〜75%の範囲で変化させた時の試験試料の質量変化を測定して吸放出性を評価した。湿度50%でサンプル質量が安定するまで22時間養生し、安定したら湿度75%に上げて12時間吸湿させた。その後、湿度50%に下げて12時間放出させた。
その結果、実施例1の複合体に比べ、実施例3の複合体は、相対値で2倍を超える吸湿量と放湿量を有することが確認できた。この実験例からも、添加骨材が有するマイクロ孔やメソ孔は、有害化学物質ガス吸着と同様に調湿機能も併せ持っているといえ、複合体にこうした骨材をさらに添加することにより、マクロ孔の内壁に添加骨材を分布させ、吸放湿特性を大幅に改善することができることがわかった。

Claims (5)

  1. 水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有する多孔性の複合体であって、化学物質と反応して該化学物質を前記マクロ孔内に吸着し吸収させる水硬性石灰と、花崗岩とを有し、前記細孔径分布測定で測定された細孔径分布は、0.1μm〜10μmのマクロ孔分布内に該マクロ孔の分布ピークを持つ、ことを特徴とする複合体。
  2. 前記化学物質との反応が、中和反応又は化学反応である、請求項1に記載の複合体。
  3. イクロ孔又はメソ孔をさらに有する、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 水銀圧入法による細孔径分布測定から求められる細孔径が50nm以上のマクロ孔を有する多孔性複合体の製造方法であって、
    化学物質と反応して該化学物質を前記マクロ孔内に吸着し吸収させる水硬性石灰と、花崗岩と、水系溶媒とを有する複合体組成物を準備し、該複合体組成物を対象物上に、塗り固め手段、流し込み手段、吹付手段、及びローラー手段から選ばれる1又は2以上の手段によって、前記細孔径分布測定で測定された細孔径分布において0.1μm〜10μmのマクロ孔分布内に該マクロ孔の分布ピークを持つ前記多孔性複合体を得ることを特徴とする複合体の製造方法。
  5. イクロ孔又はメソ孔を有する骨材を添加する、請求項に記載の複合体の製造方法。
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