図面を参照して説明する。なお、複数の実施形態において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
(第1実施形態)
先ず、図1及び図2に基づき、電子制御装置100の概略構成について説明する。
電子制御装置100は、センサ200、モータ300、電源400、及び、グランド500と電気的に接続されている。電子制御装置100には、センサ200から第1センサ信号A1が入力される。電子制御装置100は、第1センサ信号A1に応じてモータ300を制御している。本実施形態において、電子制御装置100は、車両用のECUである。
電子制御装置100は、駆動回路10と、マイコン20と、ローパスフィルタ30と、第1ADC40と、温度検出回路50と、第2ADC60と、を備えている。電子制御装置100は、端子として、電源端子100a、第1モータ端子100b、第2モータ端子100c、センサ端子100d、及び、グランド端子100eを有している。
駆動回路10は、モータ300を駆動するための回路である。モータ300は、特許請求の範囲に記載の制御対象に相当する。本実施形態において、モータ300は直流モータである。モータ300では、ロータの回転位置に伴って磁束の向きが周期的に変化している。
また、駆動回路10は、4個のFET12〜18を有し、Hブリッジ回路を構成している。本実施形態において、FET12〜18は、Nチャネル型とされている。FET12,14のドレインは、電源端子100aを介して、電源400と電気的に接続されている。電源400は、例えば、12Vを出力する車両用のバッテリである。
FET12,16のソースは、第1モータ端子100bを介して、モータ300と電気的に接続されている。FET14のソース及びFET18のドレインは、第2モータ端子100cを介してモータ300と電気的に接続されている。FET16のドレイン及びFET18のソースは、グランド端子100eを介して、グランド500と電気的に接続されている。
各FET12〜18のゲートは、マイコン20と電気的に接続されている。マイコン20は、制御部22と補正部24とを有している。制御部22は、駆動回路10の各FET12〜18と接続され、各FET12〜18に制御信号を出力している。制御信号は、High又はLowの値をとるデジタル信号である。各FET12〜18は、ゲートに入力される制御信号がHighの場合にオフとなり、制御信号がLowの場合にオンとなる。
以下、モータ300を正転させる場合における電子制御装置100の動作について説明する。制御部22は、High及びLowが周期的に変化する制御信号をFET12に出力する。これにより、FET12のオンオフ状態は、周期的に変化する。制御部22は、FET12に出力する制御信号のデューティ比を変化させることでモータ300の回転速度を変化させる。
制御部22は、Highの値をとる制御信号をFET14,16に出力する。これにより、FET14,16はオフとなる。制御部22は、FET18に出力する制御信号をHighからLowにすることで、FET18をオフからオンにする。
FET12,18の両方がオンの場合に、電源400から、FET12、モータ300、及び、FET18を介して、グランド500へ電流が流れる。これにより、モータ300では正転する方向に駆動力が発生する。図1では、電流が流れる経路を太線で示している。また、図1では、モータ300のロータが回転する方向を白抜き矢印で示している。
センサ200は、モータ300の回転を検出するものである。詳しく言うと、センサ200は、ロータの回転位置に応じた第1センサ信号A1を出力するものである。電子制御装置100は、第1センサ信号A1に基づき、モータ300をフィードバック制御している。
センサ200は、モータ300に配置され、ロータの回転に伴って周期的に変化する磁束を検出している。センサ200が出力する第1センサ信号A1は、正弦波をなすアナログ信号である。第1センサ信号A1は、ローパスフィルタ30に入力される。
ローパスフィルタ30は、第1センサ信号A1における遮断周波数fA以上の周波数成分を減衰させるものである。ローパスフィルタ30は、第1ADC40のAD変換で生じる折り返し雑音を抑制するものである。折り返し雑音は、折り返し歪みと称することもできる。ローパスフィルタ30は、アンチエイリアジングフィルタ、又は、前置フィルタと称することもできる。
ローパスフィルタ30は、抵抗32とコンデンサ34とを有するRC回路である。抵抗32の一端は、センサ端子100dを介して、センサ200と電気的に接続されている。抵抗32の他端は、第1ADC40と電気的に接続されている。コンデンサ34の一端は、抵抗32及び第1ADC40の接続点に接続されている。コンデンサ34の他端は、グランド端子100eを介してグランド500と電気的に接続されている。
ローパスフィルタ30は、出力信号として、第2センサ信号A2を出力する。第1センサ信号A1は、ローパスフィルタ30を通ることで、第2センサ信号A2となる。第2センサ信号A2は、第1センサ信号A1における遮断周波数fA以上の周波数成分が除去された信号である。
抵抗32の抵抗値をR、コンデンサ34の静電容量をCとすると、ローパスフィルタ30の遮断周波数fAは、1/2πRCである。また、ローパスフィルタ30の時定数TFは、RCである。第2センサ信号A2では、第1センサ信号A1に対して、時定数TFに基づく位相遅延が生じる。抵抗32は、温度変化により抵抗値が変化する。同様に、コンデンサ34は、温度変化により静電容量が変化する。これらにより、第2センサ信号A2で生じる位相遅延の長さは、ローパスフィルタ30の温度変化TVにより変化する。第2センサ信号A2は、第1ADC40に入力される。
第1ADC40は、アナログ信号である第2センサ信号A2をデジタル信号に変換するものである。言い換えると、第1ADC40は、第2センサ信号A2をAD変換するものである。第1ADC40は、特許請求の範囲に記載の変換部に相当する。
第1ADC40は、出力信号として第3センサ信号Xを出力する。第3センサ信号Xは、アナログ信号である第2センサ信号A2をデジタル信号に変換したものである。第1ADC40は、ローパスフィルタ30に加えて、電子制御装置100内の電源、グランド500、及び、マイコン20と電気的に接続されている。なお、本実施形態において、第3センサ信号Xは正の値とされている。
第1ADC40は、図2に示すトリガ信号に基づき、AD変換を行っている。トリガ信号は、第1ADC40のサンプリング周期TSを決定するものである。トリガ信号は、オンオフ状態が周期的に変化するパルス信号である。トリガ信号の周期は、第1ADC40のサンプリング周期TSである。本実施形態において第1ADC40は、トリガ信号の立ち上がりタイミング毎に、第3センサ信号Xを生成及び出力している。図2では、トリガ信号の立ち上がりタイミングを矢印で示している。
第1ADC40のサンプリング周期T
Sは、第2センサ信号A2の周期よりも短くされている。サンプリング周期T
Sは、第1ADC40が第2センサ信号A2を標本化する周期である。サンプリング周期T
Sは、標本化周期と称することもできる。第1ADC40の標本化周波数をf
Bとすると、ローパスフィルタ30の遮断周波数f
Aは、数式1で示される。
数式1を満たすように、抵抗32の抵抗値及びコンデンサ34の静電容量が選択されている。これにより、ローパスフィルタ30は、第1ADC40のAD変換で生じる折り返し雑音を抑制することができる。第3センサ信号Xは、補正部24に入力される。
温度検出回路50は、ローパスフィルタ30の温度を検出するものである。詳しく言うと、温度検出回路50は、電子制御装置100内におけるローパスフィルタ30の周囲温度を検出するものである。温度検出回路50は、抵抗52と、サーミスタ54と、を有している。温度検出回路50は、特許請求の範囲に記載の温度検出部に相当する。
抵抗52の一端は、電子制御装置100内の電源と電気的に接続されている。抵抗52は、接続された電源の電圧を分圧するための素子である。抵抗52の他端は、第2ADC60と電気的に接続されている。
サーミスタ54は、ローパスフィルタ30の温度を検出するための素子である。サーミスタ54の一端は、抵抗52及び第2ADC60の接続点に接続されている。サーミスタ54の他端は、グランド端子100eを介してグランド500と電気的に接続されている。抵抗52及びサーミスタ54の接続点の電位が、温度検出回路50の出力信号である第1温度信号Bの値である。第1温度信号Bは、温度検出回路50の検出結果である。
サーミスタ54は、温度に応じて抵抗値が変化する。サーミスタ54は、温度計測素子と称することもできる。本実施形態では、ローパスフィルタ30の温度が増加するほど第1温度信号Bの値が増加するように、サーミスタ54が選択されている。例えば、ローパスフィルタ30の温度が増加することにより第1温度信号Bの値がほぼ一定の割合で増加するように、サーミスタ54が選択される。なお、第1温度信号Bはアナログ信号である。第1温度信号Bは、第2ADC60に入力される。
第2ADC60は、アナログ信号である第1温度信号Bをデジタル信号に変換するものである。言い換えると、第2ADC60は、第1温度信号BをAD変換するものである。第2ADC60は、出力信号として第2温度信号Yを出力する。第2温度信号Yは、アナログ信号である第1温度信号Bをデジタル信号に変換したものである。以下、第1温度信号B及び第2温度信号Yの夫々を区別する必要がない場合、単に温度信号とも称する。
第2ADC60は、温度検出回路50に加えて、電子制御装置100内の電源、グランド500、及び、マイコン20と電気的に接続されている。第2温度信号Yは、マイコン20の補正部24に入力される。
補正部24は、時定数TFに応じた第3センサ信号Xの位相遅延を小さくするように、第3センサ信号Xを補正するものである。補正部24は、出力信号として第4センサ信号Zを出力する。以下、第1センサ信号A1、第2センサ信号A2、第3センサ信号X、及び、第4センサ信号Zの夫々を区別する必要がない場合、単にセンサ信号とも称する。なお、本実施形態において、第4センサ信号Zは正の値とされている。
補正部24は、第3センサ信号Xを補正することで、出力信号である第4センサ信号Zの位相遅延を小さくする。すなわち、補正部24は、センサ信号の位相遅延を補償する。補正部24による第3センサ信号Xの補正については、下記で詳細に説明する。
また、補正部24は、第2温度信号Yに基づき、ローパスフィルタ30の温度変化TVに応じたセンサ信号の位相遅延を小さくするように、第3センサ信号Xを補正する。なお、温度変化TVは、詳しく言うと、ローパスフィルタ30の温度変化における絶対値である。温度変化により時定数TFが変化して第3センサ信号Xの位相遅延が大きくなった場合であっても、補正部24の補正により、第4センサ信号Zの位相遅延を小さくすることができる。以上により、補正部24は、センサ信号の温度補償を行うことができる。補正部24は、補償部と称することもできる。
次に、図2〜図4に基づき、補正部24における第3センサ信号Xの補正について説明する。
補正部24は、基準値αnと変化値βとを用いて、第4センサ信号Zを生成する。基準値αnは、ローパスフィルタ30の温度変化に応じて値が変化しない。一方、変化値βは、ローパスフィルタ30の温度変化に応じて値が変化する。
第1ADC40がn番目に出力する第3センサ信号Xの値をX
n、第1ADC40のサンプリング周期をT
S、ローパスフィルタ30の時定数をT
Fとすると、基準値α
nは、以下の数式2に示す値とされる。なお、サンプリング周期T
S及び時定数をT
Fは、正の値とされる。
また、ローパスフィルタ30の温度変化をT
V℃とすると、変化値βは、数式3に示す値とされる。変化値βの値については、下記で詳細に説明する。
ところで、図3に示すように、ローパスフィルタ30が所定の温度であって、且つ、ローパスフィルタ30が所定の温度変化をした場合にのみ、補正部24はセンサ信号の温度補償を行う。図3では、補正部24が温度補償を行う範囲にハッチングを施している。
電子制御装置100は、動作により温度が上昇し易い。これに対して、電子制御装置100は、動作している場合、温度が下降し難い。また、電子制御装置100は、動作が停止した場合であっても、温度が下降し難い。すなわち、電子制御装置100の温度は、上昇し易く、下降し難い。これに対し、補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が上昇した場合にのみ、センサ信号の温度補償を行う。
補正部24は、第2温度信号Yに応じて、ローパスフィルタ30の温度が上昇したか否かを判定する。詳しく言うと、第2ADC60がn番目に出力する第2温度信号Yの値をYnとすると、補正部24は、Yn−Yn−1が負の場合にローパスフィルタ30の温度が下降したと判定する。
補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が下降した場合、センサ信号の温度補償を行わない。詳しく言うと、補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が下降した場合、第4センサ信号Zの値を基準値α
nとする。すなわち、補正部24は、以下の数式4に基づき、第4センサ信号Zの値を算出する。
第3センサ信号Xの値が増加している場合、Xn−Xn−1は、正の値とされる。よって、数式4によると、温度補償されていない第4センサ信号Zの値は、第3センサ信号Xの値よりも大きくされる。言い換えると、第3センサ信号Xの値が増加している場合であって、センサ信号の温度補償を行わない場合、補正部24は、値Xnに較べて値Znが大きくなるように値Znを算出する。
一方、第3センサ信号Xの値が減少している場合、Xn−Xn−1は、負の値とされる。よって、数式4によると、温度補償されていない第4センサ信号Zの値は、第3センサ信号Xの値よりも小さくされる。言い換えると、第3センサ信号Xの値が減少している場合であって、センサ信号の温度補償を行わない場合、補正部24は、値Xnに較べて値Znが小さくなるように値Znを算出する。
補正部24は、センサ信号の温度補償を行わない場合、第4センサ信号Zを算出するために第2温度信号Yを用いていない。なお、時定数TF及びサンプリング周期TSに対応する値は、予めマイコン20のメモリに格納されている。数式4における時定数TFの値は、一定値に設定されている。
補正部24は、センサ信号の温度補償を行う場合に、第2温度信号Yを用いる。補正部24は、温度変化TVが大きいほど、Zn−Xnの絶対値が大きくなるように第3センサ信号Xを補正する。言い換えると、温度変化TVが大きいほど、Zn−Xnの絶対値は大きくされている。Zn−Xnは、センサ信号の値における補正前後の差である。
本実施形態において、補正部24は、基準値α
nに対して変化値βを乗算することで、温度補償した第4センサ信号Zの値を算出する。すなわち、補正部24は、温度補償したZ
nの値をα
nβとする。変化値βの値は、第3センサ信号Xの値が増加しているか否かに応じて変わる。補正部24は、第3センサ信号Xに基づき、第3センサ信号Xの値が増加しているか否かを判定する。詳しく言うと、補正部24は、X
n−X
n−1が正の値である場合に、第3センサ信号Xの値が増加していると判定する。第3センサ信号Xの値が増加している場合、変化値βの値は、以下の数式5に示す値とされる。
温度変化T
Vは、第2温度信号Yに対応する値である。詳しく言うと、温度変化T
Vは、Y
n−Y
n−1に対応する値である。第3センサ信号Xの値が増加している場合、補正部24は、以下の数式6に基づき、第4センサ信号Zの値を算出する。
X
n−X
n−1が負の値の場合に、補正部24は、第3センサ信号Xの値が減少していると判定する。第3センサ信号Xの値が減少している場合、変化値βの値は、以下の数式7に示す値とされる。
よって、第3センサ信号Xの値が減少している場合、補正部24は、以下の数式8に基づき、第4センサ信号Zの値を算出する。
ところで、電子制御装置100は、高温の場合に温度変化し難い。よって、ローパスフィルタ30は、高温の場合に温度変化し難い。ローパスフィルタ30が温度変化し難いと、ローパスフィルタ30によるセンサ信号の位相遅延は生じ難い。これに対し、補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下の場合にのみ、温度補償を行う。温度閾値は、ローパスフィルタ30の温度の閾値である。温度閾値は、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以上の場合にローパスフィルタ30が温度変化し難い温度に設定されている。例えば、電子制御装置100がエンジンルームに配置されている場合に、温度閾値は100℃程度とされている。また、電子制御装置100が車室内に配置されている場合には、温度閾値が80℃程度とされている。
補正部24は、第2温度信号Yの値と、温度閾値に対応する値と、を比較することで、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下か否かを判定する。温度閾値に対応する値とは、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値とされた場合の第2温度信号Yの値である。温度閾値に対応する値は、マイコン20のメモリに予め格納されている。
補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値よりも高い場合、第4センサ信号Zの値を基準値αnとする。すなわち、補正部24は、数式4に基づき、第4センサ信号Zの値を算出する。
これに対し、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下とされ、且つ、第3センサ信号Xの値が増加している場合、補正部24は、数式6に基づき第4センサ信号Zの値を算出する。一方、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下とされ、且つ、第3センサ信号Xの値が減少している場合、補正部24は、数式8に基づき第4センサ信号Zの値を算出する。
ところで、温度変化TVが大きいほど、ローパスフィルタ30によるセンサ信号の位相遅延が大きくなる。これに対し、補正部24は、温度変化TVが変化閾値より大きい場合にのみ、センサ信号の温度補償を行う。
変化閾値とは、温度変化TVに対する閾値である。温度変化TVが変化閾値以下の場合には、ローパスフィルタ30によるセンサ信号の位相遅延が温度補償する必要のないほど小さい。言い換えると、変化閾値は、温度変化TVが変化閾値以下の場合にはセンサ信号を温度補償する必要のない値に設定されている。変化閾値は、例えば、±2℃程度とされている。
補正部24は、Yn−Yn−1の値と、変化閾値に対応する値と、を比較することで、温度変化TVが変化閾値以下か否かを判定する。変化閾値に対応する値とは、温度変化TVが変化閾値とされた場合のYn−Yn−1の値である。変化閾値に対応する値は、マイコン20のメモリに予め格納されている。
補正部24は、温度変化TVが変化閾値以下の場合、第4センサ信号Zの値を基準値αnとする。すなわち、補正部24は、数式4に基づき、第4センサ信号Zの値を算出する。
これに対し、温度変化TVが変化閾値より大きく、且つ、第3センサ信号Xの値が増加している場合、補正部24は、数式6に基づき第4センサ信号Zの値を算出する。一方、温度変化TVが変化閾値より大きく、且つ、第3センサ信号Xの値が減少している場合、補正部24は、数式8に基づき第4センサ信号Zの値を算出する。
第3センサ信号Xの値が増加し、且つ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う場合、Z
n−X
nの値は、以下の数式9で示される。
第3センサ信号Xの値が増加している場合、Zn−Xnは正の値とされる。言い換えると、第3センサ信号Xの値が増加している場合、温度補償した第4センサ信号Zの値は第3センサ信号Xの値に較べて大きくされる。すなわち、第3センサ信号Xの値が増加している場合、補正部24は、温度補償するか否かによらず、第3センサ信号Xの値に較べて第4センサ信号Zの値を大きくする。
また、第3センサ信号Xの値が増加し、且つ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う場合、温度変化TVが大きいほど、Zn−Xnの値は大きくされる。言い換えると、第3センサ信号Xの値が増加している場合、温度変化TVが大きいほど、補正部24は、温度補償後の値Znを大きくする。
また、数式4及び数式6によれば、第3センサ信号Xの値が増加している場合、温度補償した第4センサ信号Zの値は温度補償していない値に較べて大きくされる。すなわち、第3センサ信号Xの値が増加している場合、補正部24は、温度補償により第4センサ信号Zの値を大きくする。
第3センサ信号Xの値が減少し、且つ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う場合、Z
n−X
nの値は、以下の数式10で示される。
第3センサ信号Xの値が減少している場合、Zn−Xnは負の値とされる。すなわち、Xn−Znは正の値とされる。言い換えると、第3センサ信号Xの値が減少している場合、温度補償した第4センサ信号Zの値は第3センサ信号Xの値に較べて小さくされる。すなわち、第3センサ信号Xの値が減少している場合、補正部24は、温度補償するか否かによらず、第3センサ信号Xの値に較べて第4センサ信号Zの値を小さくする。
また、第3センサ信号Xの値が減少し、且つ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う場合、温度変化TVが大きいほど、Zn−Xnの値は小さくされる。すなわち、第3センサ信号Xの値が減少し、且つ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う場合、温度変化TVが大きいほど、Xn−Znの値は大きくされる。言い換えると、第3センサ信号Xの値が減少している場合、温度変化TVが大きいほど、補正部24は、温度補償により第4センサ信号Zの値を小さくする。
また、数式4及び数式8によれば、第3センサ信号Xの値が減少している場合、温度補償した値Znは、温度補償していない値Znよりも小さくされる。なお、図4示す例では、第3センサ信号Xの値が減少している時間t1〜時間t6において、補正部24がセンサ信号の温度補償を行っている。また、図4では、温度補償した第4センサ信号Zの値を実線で示し、温度補償していない第4センサ信号Zの値を一点鎖線で示している。第3センサ信号Xの値が減少している場合、補正部24は、温度補償により第4センサ信号Zの値を小さくする。
次に、上記した電子制御装置100の効果について説明する。
第3センサ信号Xの値が増加している場合、温度変化TVが大きいほど、ローパスフィルタ30による位相遅延によりセンサ信号の値は小さくなる。これに対し本実施形態では、第3センサ信号Xの値が増加している場合、温度変化TVが大きいほど、センサ信号の値が大きくなるように補正される。
また、第3センサ信号Xの値が減少している場合、温度変化TVが大きいほど、ローパスフィルタ30による位相遅延によりセンサ信号の値は大きくなる。これに対し本実施形態では、第3センサ信号Xの値が減少している場合、温度変化TVが大きいほど、センサ信号の値が小さくなるように補正される。
以上によれば、補正部24は、温度変化TVに応じた位相遅延を小さくするように、第3センサ信号Xを補正している。よって、ローパスフィルタ30が温度変化した場合であっても、補正部24の補正によりセンサ信号の位相遅延を小さくすることができる。
また、本実施形態では、補正部24は、第3センサ信号Xを出力するタイミング毎に、第3センサ信号Xを補正する。そのため、第3センサ信号Xの値の全てを補正部24が補正することができる。これによれば、補正部24は、第3センサ信号Xの値の全てについて、ローパスフィルタ30に応じた位相遅延を小さくすることができる。これによれば、制御部22は、温度変化TVにより位相遅延が生じた第4センサ信号Zを用いることなく、制御信号を生成することができる。
本実施形態では、補正部24が、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下の場合にのみ、センサ信号の温度補償を行っている。詳しく言うと、補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値より高い場合に、基準値αnを第4センサ信号Zの値としている。そのため、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値より高い場合、第4センサ信号Zの値を算出するために温度信号を用いる必要がない。これによれば、ローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下か否かによらず温度信号を用いて第4センサ信号Zの値を算出する構成に較べて、補正部24の処理を簡略化することができる。
本実施形態では、補正部24が、温度変化TVが変化閾値より大きい場合にのみ、センサ信号の温度補償を行っている。詳しく言うと、補正部24は、温度変化TVが変化閾値以下の場合に、基準値αnを第4センサ信号Zの値としている。そのため、温度変化TVが変化閾値以下の場合、第4センサ信号Zの値を算出するために温度信号を用いる必要がない。これによれば、温度変化TVが変化閾値以下か否かによらず温度信号を用いて第4センサ信号Zの値を算出する構成に較べて、補正部24の処理を簡略化することができる。
本実施形態では、補正部24が、ローパスフィルタ30の温度が上昇した場合にのみ、センサ信号の温度補償を行っている。詳しく言うと、補正部24は、ローパスフィルタ30の温度が下降した場合に、基準値αnを第4センサ信号Zの値としている。そのため、ローパスフィルタ30の温度が下降した場合、第4センサ信号Zの値を算出するために温度信号を用いる必要がない。これによれば、ローパスフィルタ30の温度が上昇したか否かによらず温度信号を用いて第4センサ信号Zの値を算出する構成に較べて、補正部24の処理を簡略化することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
上記実施形態では、変化値βの値が数式5及び数式7に示す値とされた例を示したが、これに限定するものではない。例えば、数式5及び数式7に示す値に対してさらに定数を乗算した値を変化値βとして採用してもよい。
上記実施形態において、補正部24は、基準値αnと変化値βとを乗算することで第4センサ信号Zの値を算出する例を示したが、これに限定するものではない。基準値αnに変化値βを加えることで補正部24が第4センサ信号Zの値を算出する例を採用することもできる。
上記実施形態において、温度検出回路50は、ローパスフィルタ30の温度を検出する素子としてサーミスタ54を有する例を示したが、これに限定するものではない。温度検出回路50が、ローパスフィルタ30の温度を検出する素子としてMOSを有する例を採用することもできる。この例では、MOSの電流値が、ローパスフィルタ30の温度に応じて変わる。
上記実施形態では、第1ADC40が第3センサ信号Xを出力するタイミング毎に、補正部24が第3センサ信号Xを補正する例を示したが、これに限定するものではない。言い換えると、トリガ信号の1周期毎に補正部24が第3センサ信号Xを補正する例を示したが、これに限定するものではない。
上記実施形態では、電子制御装置100の制御対象がモータ300である例を示したが、これに限定するものではない。電子制御装置100の制御対象が、インジェクタのソレノイドであってもよい。この例では、電子制御装置100が、センサ信号に応じてソレノイドに流す電流を決定することで、インジェクタの弁体の開閉動作を制御する。
上記実施形態では、ローパスフィルタ30は、抵抗32とコンデンサ34とを有するRCフィルタである例を示したが、これに限定するものではない。ローパスフィルタ30は、コイルとコンデンサとを有するLCフィルタであってもよい。
上記実施形態では、ローパスフィルタ30が所定の温度であって、且つ、ローパスフィルタ30が所定の温度変化をした場合にのみ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う例を示した。しかしながら、これに限定するものではない。ローパスフィルタ30の温度及び温度変化TVによらず、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う例を採用することもできる。また、ローパスフィルタ30の温度、及び、温度変化TVの大きさによらず、ローパスフィルタ30の温度が上昇した場合にのみ補正部24がセンサ信号の温度補償を行う例を採用することもできる。
温度変化TVによらずローパスフィルタ30の温度が温度閾値以下の場合にのみ、補正部24がセンサ信号の温度補償を行う例を採用することもできる。また、ローパスフィルタ30の温度、及び、ローパスフィルタ30の温度が上昇したか否かによらず、温度変化TVが変化閾値よりも大きい場合にのみ補正部24がセンサ信号の温度補償を行う例を採用することもできる。