JP6572970B2 - 消臭剤、消臭剤組成物及び消臭性加工品 - Google Patents
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Description
また、特許文献3〜4に記載された消臭剤も、酢酸の化学吸着性能は不十分であるという問題がある。
そこで、本発明の課題は、酢酸臭等の悪臭の化学吸着性能が高く、加工性に優れる消臭剤及び消臭剤組成物を提供することである。また、本発明の他の課題は、紙、不織布、繊維等に、当該消臭剤が展着され、優れた消臭性能を発揮する消臭繊維シート、樹脂成形品等の消臭性加工品を提供することである。
即ち、本発明は以下の通りである。
1.粉末X線回折パターンにおいて、γ−AlOOHの回折ピークを有する遷移アルミナからなることを特徴とする消臭剤。
2.2θ=14.3°〜14.6°における回折ピークの強度が、50cps以下である上記項1に記載の消臭剤。
3.上記遷移アルミナがγ−アルミナである上記項1又は2に記載の消臭剤。
4.上記遷移アルミナが、下記式(1)で示される化合物である上記項1乃至3のいずれか一項に記載の消臭剤。
xNa2O・Al2O3・nH2O (1)
(式中、xは0.002〜0.02の数であり、nは0.03〜0.3の数である。)
5.上記項1乃至4のいずれか一項に記載の消臭剤を含有することを特徴とする消臭剤組成物。
6.上記項1乃至5のいずれか一項に記載の消臭剤を含有することを特徴とする消臭性加工品。
本発明の消臭剤は、粉末X線回折パターンにおいて、γ−AlOOHの回折ピークを有する遷移アルミナからなる。遷移アルミナとは、アルミナ水和物を加熱することにより得られるもので、高安定相であるα型のアルミナ以外の結晶質アルミナである。例えば、κ型、χ型、η型、γ型、δ型及びθ型等がある。遷移アルミナは、加熱前のアルミナ水和物の組成と加熱条件で得られる結晶構造が異なるものの、結晶性の低いアルミナである。特に、ベーマイト結晶相のアルミナ水和物から得られたγ型、δ型及びθ型は、比表面積が大きいことから好ましい。また、低い加熱温度で得られたγ型遷移アルミナは、消臭性能にも優れることからより好ましい。
遷移アルミナの結晶相は、粉末X線回折パターンの回折ピークの位置で特定することが可能である。粉末X線回折パターンにおけるγ−AlOOHは、2θが14.3°〜14.6°、28.1°〜28.4°及び38.1°〜38.4°に特徴的な回折ピークが存在する。これらγ−AlOOHの回折ピークの強度は、酢酸臭の吸着性能から遷移アルミナ結晶と同程度であることが好ましい。γ−AlOOHの回折ピークのうち、最も強度が高いものは、2θ=14.3°〜14.6°の回折ピークである。この回折ピークの強度は、遷移アルミナの結晶性の程度を示しており、酢酸臭に対する消臭性の観点から、好ましくは50cps以下、より好ましくは40cps以下、更に好ましくは30cps以下である。
xNa2O・Al2O3・nH2O (1)
式中において、xは0.002〜0.02の正数であり、nは0.03〜0.3の正数である。
xは、酢酸臭に対する消臭性の観点から、0.002〜0.02であり、好ましくは、0.003〜0.18である。また、xが上記範囲にあると、消臭剤を含有する樹脂成形品とした場合でも、樹脂への悪影響がなく、樹脂が劣化することもない。
nは、酢酸臭に対する消臭性の観点から、0.03〜0.3であり、好ましくは、0.04〜0.25である。また、nが上記範囲にある消臭剤を用いて樹脂成形品を製造すると、発泡等の不具合が生じることはなく、良好な成形品が得られる。
本発明における特定の遷移アルミナのアルミナ純度は、99.0〜99.9%であることが好ましい。ナトリウムや水素を一定量結晶構造内に含有することで、特定の結晶性を有する遷移アルミナが得られる。そして、この特定の結晶性を有する遷移アルミナが酢酸臭を多く吸着することができることから、消臭性能に優れていると考えられる。
また、消臭剤の最大粒径は、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。最大粒径が15μm以下であれば、消臭剤を用いた加工品の外観が良好である。
臭気ガスが吸着し難く、かつ、空気を通さない材質であるビニルアルコール系ポリマー又はポリエステル等の試験袋に、消臭剤を入れて密封し、この密封された試験袋に臭気ガスを注入後、40℃以上の恒温器で保存する。臭気ガス注入直後及び一定時間経過後に、試験袋中の残存する臭気ガス濃度を測定する。このとき、一定時間経過後の残存ガス濃度が初期のガス濃度の1/10以下となった時点を吸着性能が破過した点とし、このときの残存ガス濃度と初期のガス濃度の差を、消臭剤が消臭、吸収した臭気ガス量とする。吸着容量が10mL未満の消臭剤は、消臭性能が低いため、満足できる消臭効果が得られない。
ボーキサイトを水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、残渣を除去した水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を仮焼し、その後、130℃〜180℃で水と接触させることで再水和アルミナを得る。水との接触は、例えば、上記水酸化アルミニウムを、水蒸気雰囲気下に、好ましくは10分〜1週間程度、より好ましくは1時間〜10時間程度載置する方法とすることができる。次に、ナトリウム成分を含む再水和性アルミナを350℃以上900℃未満で焼成することで付着水分や結晶水を除去する。γ−AlOOHを僅かに含む遷移アルミナを得るためには、焼成温度は、好ましくは400℃〜800℃、より好ましくは450〜700℃である。焼成時の昇温速度は、200℃/時間以上であることが好ましい。焼成は、燃焼ガス、電気ヒーターによる間接加熱、赤外線加熱等の加熱方式で行われる。焼成雰囲気は、特に限定されず、空気でも、窒素でも、水素でもよい。
本発明の消臭剤組成物は、上記遷移アルミナからなる消臭剤と、他の成分とを含有する組成物である。他の成分は、他の消臭剤であってよいし、配合剤であってもよい。酢酸臭を含む数種の悪臭源が混合している複合型悪臭を効率的に除去するために、本発明の消臭剤と他の消臭剤とを併用して消臭剤組成物として使用することも可能である。他の消臭剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、銅含有シリカゲル、含水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、酸化亜鉛、及びセピオライト等が挙げられる。この場合、遷移アルミナからなる消臭剤と、他の消臭剤との質量比は、通常、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、20〜90質量%及び10〜80質量%である。
本発明において、特定の遷移アルミナからなる消臭剤は、特に酢酸臭に対する消臭効果を有するので、例えば、粉末又は顆粒の形態でカートリッジ等の容器に収容された消臭性加工品(消臭製品)を与える。この消臭性加工品を、室内や室外の悪臭発生源の近傍等に静置しておくことで、不快臭又は悪臭の成分の濃度を低減することができる。以下、遷移アルミナからなる消臭剤が他の材料と組み合わされてなる消臭性加工品について、説明する。
本発明において、特定の遷移アルミナからなる消臭剤を用いた有用な消臭加工品の1つは消臭繊維である。この場合、消臭剤が、原料繊維の表面に付着又は接着されている消臭繊維(a)、又は、消臭剤が、原料繊維の表面に表出するように埋設されている消臭繊維(b)とすることができる。原料繊維としては、天然繊維及び合成繊維のいずれでよく、また、短繊維、長繊維及び芯鞘構造をもった複合繊維等いずれでもよい。消臭繊維(a)は、原料繊維の表面に、消臭剤を含有した水系あるいは有機溶剤系懸濁液からなる消臭剤含有液体組成物を、塗布やディッピング等の方法で付着させ、溶剤等の媒体を除去することにより得ることができる。また、この組成物には、原料繊維表面への消臭剤の付着力を向上させるための接着剤を配合しておいてもよい。消臭剤を含有する水系の懸濁液のpHは、特に制限はないが、消臭剤の性能を十分に発揮させるために、好ましくはpHが6〜8付近である。
本発明の消臭剤の主要な他の用途は、消臭剤含有塗料組成物である。消臭剤含有塗料組成物を製造するに際し、使用される塗料ビヒクルの主成分となる油脂又は樹脂は、特に限定されず、天然植物油、天然樹脂、半合成樹脂及び合成樹脂のいずれであってもよい。使用できる油脂及び樹脂としては、例えば、あまに油、しなきり油、大豆油等の乾性油又は半乾性油、ロジン、ニトロセルロース、エチルセルロース、酢酸酪酸セルロース、ベンジルセルロース、ノボラック型又はレゾール型のフェノール樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂及びポリ塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。尚、消臭剤含有塗料組成物は、熱可塑性及び硬化性のいずれでもよい。
本発明の消臭剤の更に他の用途は、消臭シート(消臭フィルムを含む)である。加工前の原料シートは、特に限定されず、その材質、微細構造等も、用途等に応じたものとすることができる。原料シートの好ましい材質は、樹脂、紙等の有機材料、無機材料、あるいはこれらの複合物である。原料シートは、1面側から他面側に通気性を有するものが好ましい。原料シートの他の好ましい具体例としては、和紙、合成紙、不織布、樹脂フィルム等が挙げられ、特に好ましい原料シートは、天然パルプ及び/又は合成パルプからなる紙である。天然パルプを使用すると、微細に枝分かれした繊維間に消臭剤粒子が挟まれやすく、特に結合剤を使用しなくても実用的な担持体になり得る。一方、合成パルプは、耐薬品性に優れるという長所がある。合成パルプを使用する場合には、繊維間に粉末を挟み込むことにより消臭剤粒子を担持することが困難となることがあるので、それを抑制するために、抄紙後の乾燥工程において繊維の一部を溶融し、粉末と繊維との間の付着力を増加させたり、繊維の一部に別の熱硬化性樹脂繊維を混在させてもよい。天然パルプと合成パルプとを適当な割合で混合して使用すると、種々の特性を調整した紙を得ることができるが、一般に合成パルプの割合を多くすると、強度、耐水性、耐薬品性及び耐油性等に優れた紙を得ることができ、一方、天然パルプの割合を多くすると、吸水性、ガス透過性、親水性、成形加工性及び風合い等に優れた紙を得ることができる。
上記消臭シートとしては、消臭剤が、原料シートの1面側から他面側への全体に渡って含まれるものであってよいし、1面側又は他面側の表面層に配されたものであってもよいし、表面層を除く内部に配されたものであってもよい。
本発明において、特定の遷移アルミナからなる消臭剤は、樹脂成形品又は発泡成形品に適用することができる。樹脂成形品を製造する場合には、成形材料としての消臭剤含有樹脂組成物が用いられる。この消臭剤含有樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と消臭剤とからなる混合物であってよいし、溶融混練物であってもよい。樹脂成形品は、消臭剤含有樹脂組成物を成形機に投入することにより製造することができる。尚、消臭剤を高濃度含有したペレット状樹脂を予め調製し、これを主樹脂と混合後、成形機により成型することも可能である。また、消臭剤含有樹脂組成物には、物性を改善するために、必要に応じて、顔料、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、防湿剤及び増量剤等の添加剤を配合することもできる。上記の樹脂成形品又は発泡成形品を製造するための成型方法としては、射出成型、押出成型、インフレーション成型、真空成型、発泡成型等、一般の樹脂成型方法を適用することができる。
(1)消臭剤の粉末X線回折
粉末X線回折の測定を、リガク社製X線回折装置「RINT2400V」(型式名)を用いて、Cu Kα線により行い、X線回折像を得た。測定条件は、管電圧40kV及び電流150mAとした。得られた回折ピークの位置から結晶相を同定し、また、2θ=14.3°〜14.6°における回折ピークの強度を求めた。
消臭剤を、マルバーン社製レーザー回折式粒度分布測定装置「MS2000」(型式名)で測定し、結果を体積基準で解析した。尚、粒度分布の含有率%は、この解析方法から全粒子中の体積%であるが、測定粉末の密度が一定であるので、質量%と同じ意味を持つ。
リガク製蛍光X線分析装置「ZSX100e」(型式名)を用いて元素分析を行い、定量結果を物質量基準で解析して、Na/Alの元素組成比(モル)を算出した。更に、熱分析による重量減少からH2Oの含有量を算出した。
(4)消臭剤のBET比表面積
JIS Z8830「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」(2001年版)により、堀場製作所製連続流動式表面積計「SA−6200」(型式名)を用いて測定した。
105℃で乾燥した消臭剤粉末0.01gをビニルアルコール系ポリマーフィルム製の5L試験袋に入れ、ここに気化させた酢酸(初期濃度100ppm)3Lを注入し、5℃又は50℃で1時間後の試験袋中の残存ガス濃度をガス検知管で測定した。5℃で保存後の酢酸ガス吸着量を物理吸着及び化学吸着による吸着容量とし、50℃で保存後の酢酸ガス吸着量を化学吸着のみによる吸着容量とした。吸着容量は、試料1g当たりの吸着したガス容量で示した。
消臭繊維シート100cm2をビニルアルコール系ポリマーフィルム製の5L試験袋に入れ、ここに気化させた酢酸(初期濃度30ppm)を3L注入し、50℃で2時間後の試験袋中の残存ガス濃度をガス検知管で測定した。
実施例1
Na2O含有量が0.22%の再水和アルミナ粉末を、電気炉に入れ450℃で2時間焼成し、遷移アルミナを得た。得られた遷移アルミナの粉末を消臭剤(d−1)として、上記の評価(1)〜(5)を行った。その結果を表1に記載した。図1に、得られた消臭剤(d−1)の粉末X線回折パターンを示した。また、2θ=14.3°〜14.6°における回折ピークの強度は、10cpsであった。
Na2O含有量が0.08%の再水和アルミナ粉末を用いた以外は、実施例1と同様の操作で遷移アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−2)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.12%の再水和アルミナ粉末を用いた以外は、実施例1と同様の操作で遷移アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−3)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.08%の再水和アルミナ粉末を、約500℃で30時間焼成し、遷移アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−4)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.08%の再水和アルミナ粉末を、450℃で2時間焼成し、遷移アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−5)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.22%の再水和アルミナ粉末を、900℃で4時間焼成し、遷移アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−6)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.22%の再水和アルミナ粉末を、1100℃で4時間焼成し、アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−7)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.25%の再水和アルミナ粉末を、300℃で2時間焼成し、AlOOHを得た。得られた粉末を消臭剤(d−8)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
Na2O含有量が0.02%の再水和アルミナ粉末を、1100℃で4時間焼成し、アルミナを得た。得られた粉末を消臭剤(d−9)とし、各種評価を行い、その結果を表1に示した。
堺化学工業社製酸化亜鉛「2種」を、消臭剤(d−10)として、各種評価を行った。その結果を表1に示した。
フタムラ化学社製活性炭「太閤CW350A」(商品名)を、消臭剤(d−11)として、各種評価を行った。その結果を表1に示した。
実施例6
まず、実施例1で製造した消臭剤d1を5g、固形分40%のアクリルエマルション系バインダー100g、及び水500gを混合して、消臭剤含有液体組成物を作製した。この液体組成物をポリエステル繊維からなる生地に消臭剤の展着量が1g/m2となるように展着加工(塗布及び乾燥)して、消臭繊維シートを製造した。得られた消臭繊維シート100cm2を用いて消臭性能を評価した。その結果を表2に示した。
消臭剤(d−1)に代えて、表2に示す消臭剤(d−2)〜(d−10)を用いた以外は、実施例6と同様にして消臭繊維シートを製造して、評価した。その結果を表2に示した。
Claims (6)
- 粉末X線回折パターンにおいて、γ−AlOOHの回折ピークを有し、2θ=14.3°〜14.6°における回折ピークの強度が、50cps以下である遷移アルミナからなることを特徴とする消臭剤。
- 上記遷移アルミナがγ−アルミナである請求項1に記載の消臭剤。
- 上記遷移アルミナが、下記式(1)で示される化合物である請求項1又は2に記載の消臭剤。
xNa2O・Al2O3・nH2O (1)
(式中、xは0.002〜0.02の数であり、nは0.03〜0.3の数である。) - 粉末X線回折パターンにおいて、γ−AlOOHの回折ピークを有し、下記式(1)で示される化合物である遷移アルミナからなることを特徴とする消臭剤。
xNa 2 O・Al 2 O 3 ・nH 2 O (1)
(式中、xは0.002〜0.02の数であり、nは0.03〜0.3の数である。) - 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の消臭剤を含有することを特徴とする消臭剤組成物。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の消臭剤を含有することを特徴とする消臭性加工品。
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