以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るコイル複合部品について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、及び、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。また、以下の実施の形態において、「接続される」とは、直接接続される場合だけでなく、他の素子等を介して電気的に接続される場合も含まれる。
(実施の形態1)
実施の形態1に係るコイル複合部品では、コイル部とコイル部の中空に収容される磁性コア部とが異なる基板に設けられていることにより、コイル部の設計自由度が高められている。
図1Aは、実施の形態1に係るコイル複合部品1の外観を示す斜視図である。図1Bは、実施の形態1に係るコイル複合部品1の第1基板10と第2基板20とを分離して示す斜視図である。
本実施の形態では、板状の第2基板20の厚さ方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直かつ互いに直交する方向をそれぞれX軸方向及びY方向として説明し、Z軸方向プラス側をコイル複合部品1の天面(上面)側として説明する。しかし、実際の使用態様においては、第2基板20の厚さ方向が上下方向とはならない場合もある。このため、実際の使用態様においては、コイル複合部品1の天面側は上面側には限定されない。
これらの図に示すコイル複合部品1は、例えば、携帯電話等の小型の携帯端末機器に搭載され、バッテリから供給された直流電圧を各種回路に適した直流電圧に変換して出力するDCDCコンバータモジュールである。具体的には、コイル複合部品1は、磁性コア部11、配線部12及び電子部品13を有する第1基板10を有する。また、コイル複合部品1は、磁性コア部11が挿入される穴部21、及び、この周囲に巻回されたコイル部L1を有する第2基板20、を有する。
以下、コイル複合部品1の詳細な構成について、さらに図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態1に係るコイル複合部品1の断面構造を概念的に示す図である。具体的には、図2は、図1BのII−II線におけるコイル複合部品1の断面図である。なお、図2では、簡明のため、厳密には別断面にある構成要素を同一図面内に示して説明している場合がある。また、電子部品13については側面視で示している。これらの事項は以降の断面図においても同様である。
図1B及び図2に示すように、第1基板10は、ブロック状の磁性コア部11と、磁性コア部11の天面に接合され、磁性コア部11より透磁率の低い板状の配線部12と、配線部12に実装された電子部品13と、電子部品13に接続された第1表面電極115と、を有する。
磁性コア部11は、第2基板20の穴部21に挿入されることにより、コイル部L1のコアとして機能する。磁性コア部11は、ブロック状に設けられた磁性を有する部材であり、例えば、上面視形状が矩形の角柱である。なお、磁性コア部11の形状はこれに限定されず、円柱であってもかまわない。
本実施の形態では、磁性コア部11は、複数の磁性体セラミック層(例えば10層の磁性体セラミック層)が積層されている。この磁性体セラミック層としては、例えば、磁性フェライトセラミックが用いられ、具体的には、酸化鉄を主成分とし、亜鉛、ニッケル及び銅のうち少なくとも1つ以上を含むフェライトが用いられる。
配線部12は、コイル複合部品1の回路構成を実現するための配線が設けられる配線基板である。この配線には、例えば、配線部12の主面に沿って設けられた面内導体112と、当該主面に垂直な方向(Z軸方向)に設けられた層間接続導体113が含まれる。また、配線部12は、例えば天面に、電子部品13を実装するための表面電極である実装用電極114を有する。面内導体112、層間接続導体113、実装用電極114及び第1表面電極115の材料としては、例えば、銀を主成分とする金属または合金が用いられる。
本実施の形態では、配線部12は、上述した複数の磁性体セラミック層より透磁率の低い複数の低透磁率磁性体セラミック層(例えば4層の低透磁率磁性体セラミック層)が積層されており、例えば、複数の非磁性体セラミック層が積層された非磁性体配線部である。この低透磁率磁性体セラミック層は、上述した磁性体セラミック層の材料よりも比透磁率の低い材料が用いられ、例えば、非磁性フェライトセラミックやアルミナおよびガラスを主成分とする絶縁性ガラスセラミックが用いられる。
一般的に、磁性体セラミック層に形成される配線は非磁性体セラミック層に形成される配線と比べて大きなインダクタンス成分を持ち易い。このため、コイル複合部品1の配線を非磁性体配線部に形成することにより、この配線が不要なインダクタンス成分を持つことによるコイル複合部品1の特性劣化を抑制することができる。また、一般的に、非磁性体セラミック層は磁性体セラミック層に比べて機械的な強度が大きい。このため、配線部12を非磁性体セラミック層によって構成することにより、コイル複合部品1の全体的な強度を向上することができる。
なお、配線部12は、磁性コア部11より透磁率が低ければよく、非磁性体セラミック層でなくてもかまわない。
また、本実施の形態では、配線部12は、磁性コア部11より側方に張り出した突出部12aを有し、この突出部12aに第1表面電極115が配置されている。つまり、第1基板10において、配線部12の底面(Z軸方向マイナス側)の面積は磁性コア部11の天面の面積よりも大きく、第1表面電極115は配線部12の底面のうち磁性コア部11が接合された領域以外の領域に形成されている。例えば、配線部12は上面視形状が略矩形の平板形状であり、磁性コア部11より側方に張り出している周縁部が突出部12aとして形成されている。
このような磁性コア部11と配線部12とは、本実施の形態では、焼成されて1つのセラミック多層基板を構成している。つまり、第1基板10は、磁性コア部11を構成する材料と配線部12を構成する材料とが一体に焼成されることにより構成された基板である。このため、第1基板10は、磁性コア部11のみが焼成されて構成されたセラミック多層基板と、これとは別の工程で配線部12のみが焼成されて構成されたセラミック多層基板とが接合されることにより構成された基板とは異なる構造をもつ。このことは、第1基板10の断面を例えばSEMにより解析した場合に、磁性コア部11を構成する材料と配線部12を構成する材料との間の樹脂等の接着剤の有無によって識別することができる。すなわち、このような接着剤がない場合、第1基板10は1つのセラミック多層基板によって構成されていると識別できる。
電子部品13は、コイル複合部品1の回路構成を実現するための部品であって、本実施の形態では、DCDCコンバータモジュールの回路構成を実現するスイッチングIC(Integrated Circuit)131及びコンデンサ132、133が含まれる。電子部品13は、例えば配線部12の天面に配置される。なお、電子部品13の配置場所はこれに限らず、例えば、配線部12の側面であってもかまわない。
第2基板20は、例えばポリイミド等の樹脂を材料とする基材層121が複数(例えば10層)積層された熱可塑性の多層基板であり、上方に開口する穴部21と、穴部21の周囲に巻回されたコイル部L1と、第2表面電極124と、を有する。また、第2基板20は、例えば底面に、コイル複合部品1をマザーボードに実装するための表面電極である外部接続端子125を有する。
穴部21は、磁性コア部11を挿入可能なように磁性コア部11の外形よりも僅かに大きく窪む凹部であり、本実施の形態では、第2基板20を厚み方向に貫通する貫通孔である。なお、穴部21は、コイル複合部品1の低背化及び電子部品13の放熱性向上の観点からは貫通孔であることが好ましいが、例えば有底の凹部であってもかまわない。
コイル部L1は、本実施の形態では、DCDCコンバータ回路のチョークコイルであり、第2基板20に設けられた各種導体によって構成される。この各種導体には、第2基板20の主面に沿って設けられた面内導体であるコイル導体122と、当該主面に垂直な方向(Z軸方向)に設けられた層間接続導体123が含まれる。
コイル部L1を構成する各種導体の材料、厚み、幅、導体間のピッチあるいは導体間に介在する部材(すなわち基材層121)等は、コイル部L1に要求されるインダクタンス値や直流重畳特性などの各種の電気的特性を勘案して適宜決定することができる。これらは第2基板20に設けられるため、第1基板10のプロセス、材料または厚み等に制約されない。よって、第2基板20による制約を抑制して、所望の特性を有するコイル部L1を構成することができる。
コイル導体122、層間接続導体123、第2表面電極124及び外部接続端子125の材料としては、例えば、銅を主成分とする金属または合金が用いられる。
なお、本実施の形態では、コイル導体122は、三重に巻回されたスパイラル形状として示されているが、これに限らず、例えば、一重に巻回された環形状の一部が途切れた略C形状であってもかまわない。
以上のように構成された第1基板10と第2基板20とは、磁性コア部11が穴部21に挿入されており、かつ、第1表面電極115と第2表面電極124とが接続されている。本実施の形態では、第1表面電極115と第2表面電極124とは、磁性コア部11の挿入方向(Z軸方向)において突出部12aと第2基板20とが対向する位置に配置され、導電性接合材40を介して接続されている。
導電性接合材40としては、例えば、半田材、導電性接着ペースト(SCP)、導電性接着フィルム(SCF)、または、異方性導電フィルム(ACF)を用いることができる。
第1表面電極115と第2表面電極124とが接続されることにより、第2基板20に設けられたコイル部L1と第1基板に設けられた電子部品13とが電気的に接続される。よって、コイル複合部品1の回路構成(ここではDCDCコンバータ回路)が実現される。
図3は、実施の形態1に係るコイル複合部品1によって構成される回路構成を示す図である。なお、同図では、回路構成と第1基板10及び第2基板20との対応関係についても、概念的に示している。
同図に示すように、本実施の形態では、コイル複合部品1はDCDCコンバータ回路を構成している。つまり、第1基板10の第1表面電極115と第2基板20の第2表面電極124とが接続されることにより、同図に示されるようなDCDCコンバータ回路が構成される。すなわち、当該DCDCコンバータ回路は、スイッチングIC131、チョークコイルであるコイル部L1、入力側の平滑用のコンデンサ132及び出力側の平滑用のコンデンサ133を備える。このうち、スイッチングIC131及びコンデンサ132、133は第1基板10に設けられ、コイル部L1は第2基板20に設けられる。
コイル部L1は、一端が端子PLaを介してスイッチングIC131に接続され、他端が端子PLbを介してスイッチングIC131に接続される。この端子PLa、PLbのそれぞれは、第1基板10の第1表面電極115及び第2基板20の第2表面電極124に相当し、本実施の形態では、第1表面電極115及び第2表面電極124とこれらを接合する導電性接合材40で構成される。
スイッチングIC131は、それぞれが外部接続端子125で構成されるイネーブル端子Pen、入力端子Pin、コントロール端子PCON及び出力端子Poutに接続され、内蔵しているスイッチ素子(不図示)を所定の周波数にてスイッチングさせる、昇圧/降圧型のスイッチングICである。
コンデンサ132は、一端が入力端子PinとスイッチングIC131とを接続する入力電圧用電源ラインに接続され、他端が外部接続端子125で構成されるグランド端子PGNDに接続される。また、コンデンサ133は、一端がスイッチングIC131と出力端子Poutとを接続する出力電圧用電源ラインに接続され、他端が外部接続端子125で構成されるグランド端子PGNDに接続される。
例えば、コンデンサ132、133の各々とグランド端子PGNDとを接続するグランドラインは、配線部12を貫通する層間接続導体113及び第2基板20を貫通する層間接続導体123によって構成される。つまり、グランドラインは磁性コア部11を貫通しない導体によって構成される。このため、本実施の形態のグランドラインは、磁性コア部11を貫通する導体によって構成されるグランドラインに比べて、浮遊インダクタを抑制することができる。よって、コイル複合部品1は、グランドラインの浮遊インダクタによるノイズを抑制することができるDCDCコンバータ回路を構成することができる。
このように構成されたDCDCコンバータ回路は、スイッチングIC131が入力端子Pinに供給された入力電圧をコイル部L1に断続的に印加することにより、入力電圧よりも低い所望の出力電圧または高い所望の出力電圧を生成し、出力端子Poutから出力する。
なお、グランドラインの浮遊インダクタを抑制するために、磁性コア部11を貫通する層間接続導体を磁性コア部11の側面から露出させる構成も考えられる。しかし、この構成では、製造工程において、当該層間接続導体を露出させる工程が必要となるため、工数の増加を招くという別の問題が生じ得る。
次に、コイル複合部品1の製造工程(製造方法)について説明する。
本実施の形態に係るコイル複合部品1の製造工程では、第1基板10の磁性コア部11と配線部12とを一体に焼成して多層基板(セラミック多層基板)を作製し、コイル部L1を有する第2基板20に作製した多層基板の磁性コア部11を挿入する。これにより、設計自由度の高いコイル部L1を有するコイル複合部品1を作製することができる。
まず、多層基板(第1基板10)を作製する工程について説明する。
図4A〜図4Dは、実施の形態1における第1基板10の製造工程を示す断面斜視図である。なお、ここでは、第1基板10のうち、磁性コア部11と配線部12とを作製する工程が示されている。
まず、磁性コア部11及び配線部12を形成する各層のセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、磁性体セラミック粉末を含んだスラリーをシート成形することによって、磁性コア部11を形成するための複数の磁性体セラミックグリーンシートを準備する。また、非磁性体セラミック粉末を含んだスラリーをシート成形することによって、配線部12を形成するための非磁性体セラミックグリーンシートを準備する。
次いで、所定のセラミックグリーンシートにおいて、複数の貫通孔を形成し、当該貫通孔内に導体ペーストを充填して層間接続導体113を形成するとともに、主面上に導体ペーストを印刷して面内導体112を形成する。貫通孔は、例えば、レーザー加工により形成される。面内導体112は、例えば、Ag粉末を含んだ導体ペーストのスクリーン印刷によりパターニングされる。
次いで、複数の磁性体セラミックグリーンシートと複数の磁性体セラミックグリーンシートより透磁率の低い複数の低透磁率磁性体セラミックグリーンシート(ここでは非磁性体セラミックグリーンシート)とを一体的に焼成(Co-Fire)することにより、図4Aに示す多層基板10Maを作製する(焼成工程)。具体的には、導体ペーストが配置された複数のセラミックグリーンシートを積層・圧着し、その後、一括して焼成する。
この焼成により、各グリーンシート中の磁性体セラミック粉末、非磁性体セラミック粉末が焼結するとともに、導体ペースト中のAg粉末が焼結する。つまり、この焼成により、図4Aに示すように、磁性コア部11の板状の集合体11Mと、配線部12の板状の集合体12Mとが焼結されて、1つの多層基板10Maが構成される。すなわち、焼成工程では、磁性コア部11と配線部12と電子部品13と第1表面電極115とを有する第1基板10のうち、少なくとも磁性コア部11及び配線部12を有する多層基板(セラミック多層基板)を作製する。
次いで、多層基板10Maの底面を切削することにより、配線部12に磁性コア部11より側方に張り出す突出部12a(図2参照)を作製する(切削工程)。具体的には、多層基板10Maの底面のうち第1基板10の端部に相当する部分をダイサーDSで切削することにより、突出部12aを作製する。
ここで、本実施の形態では、多層基板10Maの焼成前の状態において層間接続導体113は最下層のセラミックグリーンシートまで形成されている。このため、焼成後の多層基板10Maの底面には、層間接続導体113の端部113aが露出することになる。したがって、露出した端部113aを基準にダイサーDSの位置を調整することができるので、切削工程の簡素化が図られる。
例えば、X軸方向に並ぶ複数の端部113aを基準にダイサーDSのY軸方向の位置を調整し、これら複数の端部113aに沿ってダイサーDSを移動させる。これにより、磁性コア部11よりY軸方向に張り出す突出部12aが作製される。また、Y軸方向に並ぶ複数の端部113aを基準にダイサーDSのX軸方向の位置を調整し、これら複数の端部113aに沿ってダイサーDSを移動させる。これにより、磁性コア部11よりX軸方向に張り出す突出部12aが作製される。
このような切削工程により、図4Bに示すように、配線部12の集合体12Mに複数の磁性コア部11が接合された多層基板が作製される。
次いで、図4Cに示すように、集合体12Mにブレイク溝12VCを形成する。
次いで、図4Dに示すように、ブレイク溝12VCに沿って集合体12Mをカットして、第1基板10ごとに個片化された多層基板10Mbを作製する。つまり、多層基板10Mbは、1つのコイル複合部品1の磁性コア部11と配線部12とに相当する。その後、本実施の形態では、配線部12の突出部12aの底面に第1表面電極115を形成する。
このような製造工程により、第1基板10の磁性コア部11と配線部12とが一体に焼成されて、1つの多層基板10Mbが構成される。
続いて、第2基板20を作製する工程について説明する。
図5A及び図5Bは、実施の形態1における第2基板20の製造工程を示す斜視図及び断面図である。
まず、第2基板20を形成する複数の基材層121のシート(例えば樹脂シート)を準備する。次いで、所定のシートにおいて、複数の貫通孔を形成し、当該貫通孔内に導体ペーストを充填して層間接続導体123を形成するとともに、主面上に導体ペーストを印刷してコイル導体122を形成する。その後、複数のシートを積層して硬化する。
これにより、図5Aに示すように、全領域に基材層121Mが形成された集合基板20Maが作製される。
次いで、図5Bに示すように、ドリル等で穴開け加工することにより、各第2基板20の穴部21を形成する。具体的には、コイル部L1の巻回中心部に中空を形成するように、穴部21を形成する。これにより、複数の第2基板20の集合体である集合基板20Mbが作製される。
続いて、焼成工程で作製された多層基板10Mbを集合基板20Mbに挿入した後に個片化する。
図6Aは、コイル複合部品1の製造工程を示す斜視図及び断面図である。図6B及び図6Cは、コイル複合部品1の製造工程を示す断面図である。
まず、図6Aに示すように、上方に開口する穴部21と、穴部21の周囲に巻回されたコイル部L1と、コイル部L1に接続された第2表面電極124と、を有する第2基板20に、多層基板10Mbを挿入する(挿入工程)。本実施の形態では、第2基板20の集合基板20Mbに多層基板10Mbを挿入する。
具体的には、この挿入工程では、穴部21に磁性コア部11が挿入されるように多層基板10Mbを挿入し、かつ、第1表面電極115と第2表面電極124とを接続する。ここで、本実施の形態では、第1表面電極115と第2表面電極124とは、磁性コア部11の挿入方向(Z軸方向)において突出部12aと第2基板20とが対向する位置に配置されている。そこで、切削工程後の多層基板10Mbを挿入し、導電性接合材40を介して第1表面電極115と第2表面電極124とを接続する。
次いで、図6Bに示すように、電子部品13を例えばリフローにより実装した後、集合基板20Mbにブレイク溝20VCを形成する。
最後に、図6Cに示すように、ブレイク溝20VCに沿って集合基板20Mbをカットして、第1基板10が挿入された第2基板20ごとに個片化する。これにより、コイル複合部品1が製造される。
以上のように、本実施の形態に係るコイル複合部品1では、第1基板10が磁性コア部11を有し、第2基板20がコイル部L1を有することにより、コイル部L1を第1基板10とは異なるプロセス、材料または厚み等で実現することができる。つまり、第1基板10による制約を抑制してコイル部L1を設計することができる。したがって、コイル複合部品1が有するコイル部L1の設計自由度を高めることができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品1では、第1表面電極115と第2表面電極124とが磁性コア部11の挿入方向における突出部12aと第2基板20とが対向する位置に配置されることにより、磁性コア部11の挿入によって導電性接合材40が第1表面電極115と第2表面電極124とで押圧されることになる。よって、第1表面電極115と第2表面電極124との電気的接続を容易にとることができるとともに、これらの機械的接続の強度を高めることができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品1では、設計自由度が高められたコイル部L1を有することにより、所望の特性を有するコイル部L1を用いてDCDCコンバータ回路を構成することができる。よって、所望の特性を有するDCDCコンバータ回路を実現することができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品1では、磁性コア部11と配線部12とが焼成されて1つのセラミック多層基板を構成していることにより、第1基板10を一般的なセラミック多層基板の製造工程によって作製することができるとともに、接着剤等を用いることなく配線部12と磁性コア部11とを強固に接合することができる。よって、製造工程の簡素化を図りつつ、耐久性に優れた第1基板10を作製することができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品1の製造工程では、焼成工程によって作製された多層基板10Mbを、コイル部L1を有する第2基板20(本実施の形態では第2基板20の集合基板20Mb)に挿入する。これにより、コイル部L1を多層基板10Mbとは異なるプロセス、材料または厚み等で実現することができる。つまり、多層基板10Mbによる制約を抑制してコイル部L1を設計することができる。したがって、設計自由度の高いコイル部L1を有するコイル複合部品1を作製することができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品1の製造工程では、突出部12aを作製する切削工程によって、第1表面電極115と第2表面電極124とを磁性コア部11の挿入方向において対向する位置に配置することができる。このため、挿入工程において第1表面電極115と第2表面電極124とで導電性接合材40を押圧することになる。よって、第1表面電極115と第2表面電極124との電気的接続を容易にとることができるとともに、これらの機械的接続の強度を高めることができる。
なお、本実施の形態では、コイル複合部品1の製造工程において、電子部品13を実装した後に、第2基板20ごとに個片化するとした。しかし、電子部品13は、集合基板20Mbをカットした後に実装されてもかまわない。
(実施の形態1の変形例1)
上記実施の形態では、配線部12の周縁部全体が磁性コア部11より側方に張り出すとした。しかし、磁性コア部11より張り出す配線部の部分はこれに限らない。
図7は、実施の形態1の変形例1に係るコイル複合部品101の第1基板110と第2基板20とを分離して示す斜視図である。同図に示すように、本変形例では、配線部12の周縁部の一部(X軸方向マイナス側の端部)のみが磁性コア部11より側方に張り出している。
このように構成されたコイル複合部品101であっても、コイル部を第1基板110とは異なるプロセス、材料または厚み等で実現することができる。したがって、実施の形態1と同様に、コイル複合部品101が有するコイル部の設計自由度を高めることができる。
(実施の形態1の変形例2)
上記実施の形態1及びその変形例1では、第1基板において配線部が磁性コア部11より側方に張り出すとした。しかし、配線部は磁性コア部より張り出していなくてもかまなない。
図8は、実施の形態1の変形例2に係るコイル複合部品201の外観を示す斜視図である。図9は、実施の形態1の変形例2に係るコイル複合部品201の断面構造を概念的に示す図である。具体的には、図9は、図8のIX−IX線におけるコイル複合部品201の断面図である。
これらの図に示すコイル複合部品201では、実施の形態1に示したコイル複合部品1に比べて、主に、第1基板210の外形が異なる。
第1基板210は、実施の形態1の第1基板10に比べて、側面が互いに面一の磁性コア部211と配線部12とを有する。つまり、第1基板210は、例えば、切削工程を経ずに作製される。第1基板210は、磁性コア部211に加え、天面に第1表面電極215が設けられた配線部12も穴部221に収容される。
第2基板220は、実施の形態1の第2基板20に比べて、開口が大きく、かつ、磁性コア部211及び配線部12の双方を収容する穴部221が設けられている。このため、第2基板220では、上面視において(Z軸方向プラス側から見て)コイル導体を設ける領域が少なくなる。よって、コイル導体が三重に巻回されたコイル部L1に比べて、コイル部L2ではコイル導体が二重に巻回されている。
また、本変形例では、第1表面電極215と第2表面電極224とは、磁性コア部211及び配線部12の挿入方向とは異なる方向に並んで配置され、例えば、X軸方向に並んで配置されている。これら第1表面電極215と第2表面電極224とは、ワイヤー240によってワイヤーボンディング接続されている。
このように構成されたコイル複合部品201であっても、コイル部L2を第1基板210とは異なるプロセス、材料または厚み等で実現することができる。したがって、実施の形態1と同様に、コイル複合部品201が有するコイル部L2の設計自由度を高めることができる。
なお、第1表面電極215は第1基板210の側面に設けられ、第2表面電極224は穴部221の壁面の第1表面電極215と対向する位置に設けられ、第1表面電極215と第2表面電極224とは導電性接合材で接続されていてもかまわない。
(実施の形態2)
上記実施の形態1及びその変形例1、2では、コイル複合部品の底面(すなわち第2基板の底面)に外部接続端子が設けられていた。しかし、コイル複合部品は、天面に外部接続端子が設けられた、いわゆるキャビティダウン構造であってもかまわない。
図10は、実施の形態2に係るコイル複合部品301の第1基板10と第2基板320と保護シート330とを分離して示す斜視図である。図11は、実施の形態2に係るコイル複合部品301の断面構造を概念的に示す図である。
これらの図に示すように、本実施の形態に係るコイル複合部品301は、実施の形態1に係るコイル複合部品1に比べて、第2基板320の構造、及び、さらに保護シート330を備える点が異なる。なお、保護シート330は設けられていなくても構わない。
第2基板320は、実施の形態1の第2基板20に比べて、外部接続端子325が天面に設けられており、第1基板10全体が収容されている穴部321を有する。
外部接続端子325は、第2基板320の天面、すなわちコイル複合部品301の天面に設けられている。このため、本実施の形態に係るコイル複合部品301は、天面側がマザーボードに実装されるキャビティダウン構造となる。
穴部321は、深底部321aと浅底部321bとを有する。深底部321aは、磁性コア部11が挿入される穴部であり、本実施の形態では、第2基板320の底面まで貫通する貫通孔である。浅底部321bは、配線部12及び電子部品13を収容する凹部である。
穴部321の周囲には、コイル部L3が巻回されている。このコイル部L3は、その内側の端面が穴部321の壁面に露出しており、具体的には、コイル導体322の最内周の端面が穴部321の側面に露出している。本実施の形態では、コイル導体322は、深底部321aでは二重に巻回され、浅底部321bでは一重に巻回されている。そして、二重に巻回されたコイル導体322の最内周の端面が深底部321aの側面に露出している。
保護シート330は、第2基板320の底面、すなわちコイル複合部品301の底面に設けられたシートである。すなわち、本実施の形態では、保護シート330は、コイル複合部品301が実装された状態において、コイル複合部品301の実装面と反対側の面を覆うことになる。保護シートの材質は特に限定されないが、例えば磁性材料を含有する樹脂からなる磁性シートであることが好ましい。
このように構成されたコイル複合部品301であっても、コイル部L3を第1基板10とは異なるプロセス、材料または厚み等で実現することができる。したがって、実施の形態1と同様に、コイル複合部品301が有するコイル部L3の設計自由度を高めることができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品301では、コイル部L3の内側の端面が穴部321の壁面に露出していることにより、コイル部L3全体の内外を周回するループ状の磁束(いわゆるメジャーループを形成する磁束)を増大させることができる。つまり、コイル部L3のコイル導体322の内外を個別に周回するループ状の磁束(いわゆるマイナーループを形成する磁束)を抑制することができる。したがって、コイル部L3のインダクタンス値を高めることができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品301では、保護シート330が設けられていることにより、キャビティダウン構造とした場合に、実装面と反対側の面を保護することができる。このことは、特に、穴部321が第2基板320を貫通している場合に有用である。また、この場合、保護シート330が磁性シートであれば、コイル部L3によって発生する磁束が保護シート330内を通過するため、外部に漏れにくくなる。このため、コイル複合部品301の放射ノイズを低減することができる。
なお、穴部321には、エポキシ樹脂を主剤としたコンポジットレジン等の液状硬化性樹脂等の封止樹脂が充填されていることが好ましい。
(実施の形態3)
以上説明したコイル複合部品は、例えば、携帯電話等の小型の携帯端末機器に搭載されるDCDCコンバータモジュールとして用いられる。このような携帯端末機器には電子部品の高密度実装化が求められるため、コイル複合部品は、電子部品が実装されたマザーボードにコイル部が設けられていてもかまわない。
図12は、実施の形態3に係るコイル複合部品401が搭載される携帯端末機器4の外観を示す上面図である。同図に示すように、携帯端末機器4は、筐体の内部にコイル複合部品401を収容する、例えば携帯電話である。
図13は、実施の形態3に係るコイル複合部品401の断面構造を概念的に示す図である。
同図に示すように、本実施の形態に係るコイル複合部品401は、実施の形態1に係るコイル複合部品1に比べて、コイル部L1を有する第2基板420がマザーボードである点が異なる。
第2基板420は、スイッチングIC131とは異なる電子部品413が実装されたマザーボードである。電子部品413は、例えば、液晶駆動回路、RF(Radio Frequency)フロントエンド回路、または、電源回路等を構成する電子部品である。この電子部品413は、例えば、コイル部L1及び電子部品13によって構成されるDCDCコンバータ回路によって電源(電源電圧)が供給される。
このように構成されたコイル複合部品401であっても、コイル部L1を第1基板10とは異なるプロセス、材料または厚み等で実現することができる。したがって、実施の形態1と同様に、コイル複合部品401が有するコイル部L3の設計自由度を高めることができる。
また、本実施の形態に係るコイル複合部品401では、第2基板420がマザーボードであることにより、DCDCコンバータ回路と、例えばDCDCコンバータ回路によって電源が供給される電子部品との、高密度実装化が図られる。
さらに、第2基板420がマザーボードであることにより、マザーボードとコイル複合部品401とを併せた高さ(すなわち、本変形例ではコイル複合部品401の高さ)を低くすることができる。このため、本実施の形態に係るコイル複合部品401は、低背化が求められる小型の携帯端末機器に搭載されるコイル複合部品として、特に有用である。
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態及び変形例に係るコイル複合部品及びその製造方法について説明したが、本発明は、個々の実施の形態及び変形例には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態及びその変形例に施したものや、異なる実施の形態及びその変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
また、本発明は上述したコイル複合部品として実現できるだけでなく、コイル複合部品に用いられる多層基板(上記説明では第1基板)としても実現できる。つまり、当該多層基板は、コイル複合部品が有するコイル部の中空に挿入される多層基板であって、積層された複数の磁性体セラミック層を有し、中空を形成する穴部に挿入されるブロック状の磁性コア部と、磁性コア部の天面に接合され、複数の磁性体セラミック層より透磁率の低い積層された複数の低透磁率磁性体セラミック層を有する板状の配線部と、配線部に実装された電子部品と、電子部品に接続され、コイル部に接続された第2電極に接続される第1表面電極とを有し、磁性コア部と配線部とは、焼成されて1つのセラミック多層基板を構成している。
また、例えば、上記説明では、第1基板は1つのセラミック多層基板によって構成されているとしたが、これに限らない。例えば、第1基板は、磁性コア部及び配線部の各々が1つのセラミック多層基板によって構成され、これら2つのセラミック多層基板が接合されることにより構成されていてもかまわない。また、第1基板は、磁性コア部及び配線部のいずれか一方が1つのセラミック多層基板によって構成されていてもかまわない。あるいは、第1基板は、いずれもセラミック多層基板とは異なる態様で構成された磁性コア部と配線部とが接合されることにより構成されていてもかまわない。
また、第2基板の穴部は、例えば、第2基板の底面側ほど(Z軸方向マイナス側ほど)、断面が小さくなるテーパー形状であってもかまわない。このような形状にすることにより、コイル複合部品の製造工程において、第2基板の穴部に第1基板の磁性コア部を容易に挿入することができる。
また、実施の形態1及びその変形例、ならびに、実施の形態3において、第1基板は第2基板の天面を覆う封止樹脂によって封止されていてもかまわない。
また、上記説明したマザーボード、あるいは、実施の形態2における保護シート330は、フレキシブル基板であってもかまわない。
なお、本発明では、多層基板の各層の厚みや形状、導体の位置や大きさなどの各種の寸法値は、特には限定されない。また、多層基板の各層を構成するセラミック材料の成分及び成分の配合比、透磁率などの物性値、多層基板内の導体等に用いられる材料の成分及び成分の配合比、導電率などの物性値も特には限定されない。これらの数値は、コイル複合部品に要求されるインダクタンス値や直流重畳特性などの各種の電気的特性を勘案して適宜決定されるものとする。