JP6569238B2 - ノロウイルスgii群の検出方法 - Google Patents
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Description
核酸増幅反応および該増幅反応によって得られた増幅産物を検出することを含むノロウイルスGII群の核酸を検出する方法であって、以下の工程(1)〜(4)を全て含み、工程(2)〜(4)が1時間以内で完了し、かつ、工程(2)以降は反応系を開放することなく行われることを特徴とする、ノロウイルスGII群の核酸を検出する方法。
(1)ノロウイルスのII群を含む試料から、ノロウイルスGII群のRNAに対して逆転写反応を行い、ノロウイルスGII群由来のDNAを得る工程
(2)(1)によって得られたDNAに対して、少なくとも1対の核酸プライマーセットを含む核酸プライマー群、1種類の核酸プローブ、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、を含む反応系で、合計反応時間が50分間以内となるようPCRを行い、増幅産物を得る工程
(3)工程(2)で得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部または全部と複合体を形成しうる1種類の核酸プローブとの複合体を形成せしめる工程
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程
[項2]
項1に記載の方法であって、工程(3)において使用される1種類の核酸プローブが、少なくともいずれか一方の末端の核酸がシトシンであり、該シトシンが蛍光標識されており、該標識蛍光は当該核酸プローブが鋳型となる核酸と結合している場合は消光し、当該核酸プローブが他の核酸と結合せず遊離している場合に発光するという性質を有する、ことを特徴とする核酸プローブを用いる、ノロウイルスGII群の核酸を検出する方法。
[項3]
項1または項2に記載の方法において、工程(4)が以下の(4´)である方法。
(4´)工程(3)で得られた複合体を含む反応系の温度を段階的に上昇させて融解曲線分析を行い、複合体を形成していた核酸増幅産物と核酸プローブの解離の有無を検知する工程
[項4]
項1から項3のいずれかに記載の方法であって、さらに以下の特徴(i)および/または(ii)を含む、ノロウイルスGII群の核酸を検出する方法。
(i)工程(2)における核酸プライマーセットが、以下の(A)より選ばれるフォワードプライマーと、以下の(B)より選ばれるリバースプライマーとの組合せの対から選ばれる少なくとも1対である。
(A)配列番号1で示される塩基配列の112番目を3´末端とし、該配列の81番目〜90番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プライマー
(B)配列番号2で示される塩基配列の321番目を3´末端とし、該配列の291〜300番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プライマー
(ii)工程(3)において用いられる1種類の核酸プローブが、以下の(C)または(D)のいずれかに該当する核酸プローブである。
(C)配列番号1で示される塩基配列の153番目または154番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の135番目〜139番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プローブ。
(D)配列番号2で示される塩基配列の350番目〜352番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の330番目〜340番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プローブ。
[項5]
以下の(C)または(D)のいずれかの特徴を有する核酸プローブ。
(C)配列番号1で示される塩基配列の153番目または154番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の135番目〜139番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プローブ。
(D)配列番号2で示される塩基配列の350番目〜352番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の330番目〜340番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プローブ。
[項6]
前記核酸プローブが、配列番号9〜16のいずれかで示される塩基配列を有する、項5に記載の核酸プローブ。
[項7]
少なくとも1対の核酸プライマーからなる核酸プライマーセットであって、以下の(A)より選ばれるフォワードプライマーと、以下の(B)より選ばれるリバースプライマーとの組合せの対から選ばれる少なくとも1対である、核酸プライマーセット。
(A)配列番号1で示される塩基配列の112番目を3´末端とし、該配列の81番目〜90番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プライマー
(B)配列番号2で示される塩基配列の321番目を3´末端とし、該配列の291〜300番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プライマー
[項8]
フォワードプライマーが配列番号3〜5のいずれかで示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから選ばれ、かつ、リバースプライマーが配列番号6〜8のいずれかで示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドから選ばれる、項7に記載の核酸プライマーセット。
[項9]
項7または項8に記載の核酸プライマーセットと、項5または項6に記載の核酸プローブとを組み合わせてなる、ノロウイルスのGII群を検出するためのプライマー・プローブのセット。
[項10]
項7または項8に記載の核酸プライマーセット、項5または項6に記載の核酸プローブ、または、項9に記載のプライマー・プローブのセットを含む、項1〜4のいずれかに記載の方法を実施するためのキット。
本発明のノロウイルスGII群の検出方法において、ノロウイルスGII群に特異的な領域を増幅する核酸プライマーセットは、少なくとも1対の核酸プライマーからなる。
本明細書における「1対の核酸プライマーセット」は、1種類(1配列)のフォワードプライマーと1種類(1配列)のリバースプライマーとで構成される。
なお、核酸プライマーセットが複数対含まれる場合、フォワードプライマーおよびリバースプライマーのうちいずれかは共通のものであってもよい。
(A)配列番号1で示される塩基配列の112番目を3´末端とし、該配列の81番目〜90番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プライマー
(B)配列番号2で示される塩基配列の321番目を3´末端とし、該配列の291〜300番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プライマー
また、前記(B)の核酸プライマーの塩基配列は3´末端が配列番号2で示される塩基配列の321番目の塩基であるならば、5´末端は配列番号2の291番目〜300番目の中の任意の塩基にしてよい。好ましくは5´末端が配列番号2の294〜297番目である。
本明細書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムAdvanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出する。
発明者らは実験の結果、配列番号17で示される塩基配列を有するフォワードプライマーよりも、3´末端を112番目にした塩基配列を有するフォワードプライマーの方が、前記文献に記載されたフォワードプライマーよりも検出感度に優れることを発見した。
発明者らは実験の結果、配列番号18で示される塩基配列を有するリバースプライマーよりも、5´末端を294〜300番目の塩基にした塩基配列を有するリバースプライマーの方が、前記文献に記載されたリバースプライマーよりも検出感度に優れることを発見した。
本発明で用いられる核酸プローブは、ノロウイルスGII群のORF領域を検出するためのものであり、上記核酸プライマーセットによって核酸増幅された核酸増幅産物の一部または全部とハイブリダイズして複合体を形成しうるものであれば特に制限されない。より好ましくは、該核酸増幅産物のみと特異的に複合体を形成し、それ以外の塩基配列を有する核酸とは複合体を形成しない核酸プローブであり、より好ましくは該核酸増幅産物の一部または全部の塩基配列と同一または相補的な塩基配列を有する核酸プローブである。
(C)配列番号1で示される塩基配列の153番目または154番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の135番目〜139番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プローブ。
(D)配列番号2で示される塩基配列の350番目〜352番目の任意の塩基を3´末端とし、該配列の330番目〜340番目の任意の塩基を5´末端とする塩基配列と85%以上相同な塩基配列を有する核酸プローブ。
また、前記(D)の核酸プローブの塩基配列は3´末端が配列番号2で示される塩基配列の350番目〜352番目の中の任意の塩基であるならば、5´末端は配列番号2の330番目〜340番目の中の任意の塩基にしてよい。より好ましくは5´末端が配列番号2の332〜338番目であり、より好ましくは333〜335番目である。
本発明のノロウイルスGII群の検出方法は、試料中に含まれるノロウイルスGII群のRNAを逆転写して得られたDNAを検出することを特徴とする。
(1)ノロウイルスのII群を含む試料から、ノロウイルスGII群のRNAに対して逆転写反応を行い、ノロウイルスGII群由来のDNAを得る工程
(2)(1)によって得られたDNAに対して、少なくとも1対の核酸プライマーセットを含む核酸プライマー群、1種類の核酸プローブ、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、を含む反応系で合計反応時間が50分間以内となるようPCRを行い、増幅産物を得る工程
(3)工程(2)で得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部または全部と複合体を形成しうる1種類の核酸プローブ複合体を形成せしめる工程
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程
該方法で用いられる核酸プライマーセットおよび核酸プローブとしては前記のものが使用できる。
逆転写反応は、逆転写酵素または逆転写反応キットに付属のプロトコールに記載の方法や、その他従来公知の方法で行うことができる。
(4´)工程(2)で得られた複合体を含む反応系の温度を段階的に上昇させて融解曲線分析を行い、複合体を形成していた核酸増幅産物と核酸プローブの解離の有無を検知する工程
本発明における被検核酸は、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。二本鎖の場合は、例えば、被検核酸とプローブとをハイブリダイズさせてハイブリッド体を形成するために、加熱により前記二本鎖を一本鎖に解離させる工程を含むことが好ましい。
試料の採取方法、DNAやRNA等の核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。
核酸増幅にPCR法を用いる場合、使用するDNAポリメラーゼは特に制限されないが、α型DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。その理由を以下に説明する。
例えば、上記KOD DNA Polymerase以外に100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を有するDNAポリメラーゼとして、「KOD FX(東洋紡製、商標)」、「KOD −Plus−(東洋紡製、商標)」、「KOD Dash(東洋紡製、商標)」、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製、商標)なども利用できる。
なかでも、高い正確性とDNA合成活性とをあわせ持つKOD −Plus−が望ましい。
本発明のノロウイルスDNA検出方法においては、工程(1)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
中でも、増幅反応と、後述の検出反応とを連続的に行うことができるため、増幅反応前に添加することが好ましい。このように核酸増幅反応の前に前記プローブを添加する場合は、例えば、後述のように、その3’末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることが好ましい。
前記方法の(3)で示される工程において、得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、前記(3´)のように融解曲線分析による方法が挙げられる。
二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は、加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。
本発明はまた、上記で説明したノロウイルスのGII群を検出するための方法において用いるプライマーセット、プローブ、または、該プライマーセットと該プローブとを組合せたセットに関する。
[DNA合成活性]
本発明において、DNA合成活性とは鋳型DNAにアニールされたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの3’−ヒドロキシル基にデオキシリボヌクレオシド5’−トリホスフェートのα−ホスフェートを共有結合せしめることにより、デオキシリボ核酸にデオキシリボヌクレオシド5’−モノホスフェートを鋳型依存的に導入する反応を触媒する活性をいう。
A: 40mM Tris−HCl(pH7.5)
16mM 塩化マグネシウム
15mM ジチオスレイトール
100μg/ml BSA
B: 2μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C: 1.5mM dNTP(250cpm/pmol〔3H〕dTTP)
D: 20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E: 1μg/μl キャリアーDNA
本発明において、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性とは、DNAの3’末端領域を切除し、5’−モノヌクレオチドを遊離する活性をいう。
その活性測定法は、50μlの反応液(120mM Tris−HCl(pH8.8 at 25℃), 10mM KCl, 6mM 硫酸アンモニウム,1mM MgCl2, 0.1% Triton X−100, 0.001% BSA,5 μg トリチウムラベルされた大腸菌DNA)を1.5mlのエッペンドルフチューブに分注し、DNAポリメラーゼを加える。75℃で10分間反応させた後、氷冷によって反応を停止し、次にキャリアーとして、0.1%のBSAを50μl加え、さらに10%のトリクロロ酢酸、2%ピロリン酸ナトリウム溶液を100μl加え混合する。氷上で15分放置した後、12,000回転で10分間遠心し沈殿を分離する。上清100μlの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、酸可溶性画分に遊離したヌクレオチド量を測定する。
(1)試料の調製
GII群であることが分かっているノロウイルスのRNAから配列番号6の核酸プライマーと配列番号7の核酸プライマーとを各5pmolずつ混合した核酸プライマーセットと、ReverTra Ace qPCR RT Kit(東洋紡製)の5xRT BufferおよびRT Enzyme Mixを用い、37℃で15分間逆転写反応させcDNAを合成した。反応後98℃で5分間過熱し逆転写酵素を失活させた。合成したcDNAを10mMのトリス緩衝液を用いて約100コピー/μlに濃度調製し、試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線分析
上記試料にそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件により核酸増幅および融解曲線分析を行い核酸プローブと核酸増幅産物との複合体を検出した。分析には東洋紡社製GENECUBE(登録商標)を用いた。
以下の試薬を含む溶液を調製した。核酸プライマーセットの組合せは表1に掲載したとおりである。(表1において、プライマー列、プローブ列の数字は、配列番号を示す。)
100μMフォワードプライマー(配列番号3〜5のうちいずれか一つ)0.25μl
10μMリバースプライマー(配列番号6〜8のうちいずれか一つ)0.5μl
10μM核酸プローブ(配列番号13、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
精製水 1.95μl
試料 1μl
94℃・30秒
(以上1サイクル)
97℃・1秒
55℃・5秒
63℃・5秒
(以上50サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
39℃〜75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
図1は、表1の組合せNo.1および2で表される核酸プライマーセットと、配列番号13からなる塩基配列を有する核酸プローブとを用いて、核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。本実施例で用いた核酸プローブは消光プローブであり、核酸増幅産物と共に39℃に置くことによって増幅された標的核酸と結合し消光する。その後、徐々に温度を上げることで核酸プローブは標的核酸から遊離し、蛍光を発する。従って、徐々に温度を上げる過程で蛍光変化量が正に変化すれば、それは即ち標的核酸と結合していた核酸プローブが遊離したことを示している。
図1では両方の組合せからピークが認められる。従って、No.1および2の組合せの核酸プライマーはノロウイルスRNAから逆転写されたcDNAを核酸増幅することが可能であり、また、配列番号13で示される塩基配列を有する核酸プローブは、該cDNAを検出可能であることが示された。
さらに、核酸増幅反応が開始されてから融解曲線分析が行われ標的核酸の存在が検知されるまでの所要時間は約45分間だった。
以上から、本発明の核酸プライマーはノロウイルスGII群のRNAから逆転写されたcDNAの一部領域を核酸増幅可能であり、本発明の核酸プローブは該核酸増幅産物を検出できることが示された。また、本発明で用いられる核酸プライマーセットは1種類に限定されず、幅広い核酸プライマーの組合せが可能であることが示された。また、本発明の検出方法のうち工程(2)〜(4)は1時間以内に完了できることが示された。
ここでは本発明の方法と先行文献(特許文献2)の方法とを比較し、本発明が先行文献の方法と比較して短時間で実施できることを確認した。本発明と先行文献の方法とは、使用するDNAポリメラーゼおよび核酸プローブが異なり、本発明はKOD DNA PolymeraseとQProbeを、先行文献の方法はTaq PolymeraseとTaqMan Probe(登録商標)を用いている。そのため、本比較例では表2に示す4通りの組み合わせで実験を行った。なお、Taq PolymeraseとしてはrTaq Polymerase(東洋紡製)を使用した。
GII群であることが分かっているノロウイルスのRNAからReverTra Ace qPCR RT Kit(東洋紡製)の5xRT Buffer、RT Enzyme Mix、Primer Mix(ランダムプライマーとオリゴ(dT)プライマーの混合物)を用い、37℃で15分間逆転写反応させcDNAを合成した。反応後98℃で5分間過熱し逆転写酵素を失活させた。合成されたcDNAを、10mMのトリス緩衝液を用いて約1000コピー/μlに濃度調製し、試料とした。
核酸増幅は以下の2通りの方法で実施した。
(2−1)通常PCR・融解曲線分析
通常PCRおよび融解曲線分析は下記の条件で行った。分析にはRotor−Gene Q(QIAGEN社)を使用した。
95℃・3分
(以上1サイクル)
95℃・10秒
55℃・30秒(GreenおよびYellowの蛍光を取得)
72℃・30秒
(以上55サイクル)
94℃・30秒
40℃に冷却
40℃〜80℃(1℃ずつ上昇、1℃上昇ごとに5秒保持、Green蛍光を取得)
高速PCRおよび融解曲線分析は下記の条件で行った。分析にはLightCycler2.0(Roche社)を使用した。
95℃・1分
(以上1サイクル)
97℃・2秒
55℃・5秒
68℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・60秒
40℃・60秒
40℃〜80℃(0.4℃/秒で連続的に温度上昇)
以下の試薬を含む溶液を調製した。ここで使用した核酸プライマーである配列番号17および18は、特許文献2および非特許文献に記載されている核酸プライマーである。また、組み合わせNo.1および2で使用したTaqMan Probeである配列番号19は特許文献2に記載されている核酸プローブである。本比較例で使用したTaqMan Probeは5’末端がTETで標識され、3’末端がTAMRAで標識されたものを用いた。
各試薬はLightCyclerでは下記記載の1倍量、すなわち8μlを使用し、Rotor−Gene Qでは下記記載の2.5倍量、すなわち20μlを使用した。Rotor−Gene Qではさらに精製水3μlを追加した。そして試料であるcDNAはLightCycler、Rotor−Gene Qとも2μl、すなわち約2000コピー相当を添加した。
10μMフォワードプライマー(配列番号17)0.5μl
10μMリバースプライマー(配列番号18)0.5μl
10μMTaqMan Probe(配列番号19、5´末端をTET標識、3奪取末端をTAMRA標識)0.5μl
rTaq Polymerase(東洋紡製)0.75μl
抗rTaq Polymerase抗体(東洋紡製)0.75μl
25mM 塩化マグネシウム 0.6μl
10×rTaq Buffer(東洋紡製)1.0μl
2mM dNTP(東洋紡製) 1.0μl
精製水 2.4μl
合計 8μl
100μMフォワードプライマー(配列番号17)0.5μl
10μMリバースプライマー(配列番号18)0.5μl
10μMQProbe(配列番号13、3’末端をBODIPY−FL標識)0.25μl
rTaq Polymerase(東洋紡製)0.75μl
抗rTaq Polymerase抗体(東洋紡製)0.75μl
25mM 塩化マグネシウム 0.6μl
10×rTaq Buffer(東洋紡製)1.0μl
2mM dNTP(東洋紡製) 1.0μl
精製水 2.65μl
合計 8μl
10μMフォワードプライマー(配列番号17)0.5μl
10μMリバースプライマー(配列番号18)0.5μl
10μMTaqMan Probe(配列番号19、5´末端をTET標識、3奪取末端をTAMRA標識)0.5μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
25mM 硫酸マグネシウム(東洋紡製)1.2μl
精製水 2.3μl
合計 8μl
100μMフォワードプライマー(配列番号17)0.5μl
10μMリバースプライマー(配列番号18)0.5μl
10μMQProbe(配列番号13、3’末端をBODIPY−FL標識)0.25μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
25mM 硫酸マグネシウム(東洋紡製)1.2μl
精製水 2.55μl
合計 8μl
図3はLightCycler(ロシュ社)にて高速PCR・融解曲線分析を行った結果である。図3より、酵素・プローブ組み合わせNo.4、すなわち3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するKOD DNA PolymeraseとQProbeとの組み合わせで一番明瞭なピークが得られた。融解曲線分析におけるピークは核酸増幅反応産物と核酸プローブとの複合体が存在することを示すものであるため、本ピークは組み合わせNo.4の反応系で、ノロウイルスGIIタイプのcDNAを鋳型とする増幅産物が得られたことを示す。一方、組み合わせNo.2は全くピークが得られず、No.1、3はピークはあるが弱いものであるため、これらの反応系では増幅能または検出能は組み合わせNo.4よりも弱く、高速PCRには不向きであると言える。PCR開始から解析結果を得るまでは1時間以内で完了しており、この方法に適した組み合わせNo.4は、短時間でノロウイルスGII群を測定する方法として適している。
図5は同じくRotor−Gene Qでアニーリング時の蛍光をトレースしたものである。ここではNo.1とNo.2、すなわちTaqMan Probeを使用した反応系では蛍光が観測された。曲線の立ち上がりはNo.2が圧倒的に早い段階で生じていた。しかし、精製水を試料として測定した場合もNo.2は同様の傾向が見られたため、No.2における蛍光は増幅産物とは無関係に観測されたものと考えられる。おそらく、KOD DNA Polymeraseの3’−5’エキソヌクレアーゼ活性によってTaqMan Probeが鋳型DNAとの結合とは無関係に分解され蛍光物質の発光が生じたことが原因と考えられる。組み合わせNo.1はcDNAを試料とした場合のみ蛍光が観測されたが、曲線の立ち上がりは約40サイクル以降だった。曲線立ち上がりを確認するまでに1時間以上が経過していたため、反応系組み合わせNo.1で通常PCR条件による測定を行った場合でも、1時間以内でノロウイルスGII群の測定を行うことは不可能である。
以上から、先行文献の方法よりも本発明の方法の方が、より迅速にノロウイルスGII群を検出できることが示された。
(1)試料の調製
(2)核酸増幅および融解曲線分析
いずれも実施例1と同様に行った。
以下の試薬を含む溶液を調製した。
100μMフォワードプライマー(配列番号4)0.5μl
100μMリバースプライマー(配列番号6)0.1μl
10μM核酸プローブ(配列番号9または14、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
精製水 2.1μl
試料 1μl
実施例1と同様に行った。
図6は、フォワードプライマーが配列番号4、リバースプライマーが配列番号6、核酸プローブが配列番号9または14のいずれかである核酸プライマー・プローブの組合せを用いて、核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図6より明らかなように、いずれの核酸プローブを用いても実施例1と同じくノロウイルスGII群のRNA由来のcDNAを検出することができた。以上から、本発明で使用可能な核酸プローブは1通りの塩基配列ではなく、複数の塩基配列をとりうることが示された。
(1)試料の調製
GII群であることが分かっているノロウイルスのRNAからReverTra Ace qPCR RT Kit(東洋紡製)の5xRT Buffer、RT Enzyme Mix、Primer Mix(ランダムプライマーとオリゴ(dT)プライマーの混合物)を用い、37℃で15分間逆転写反応させcDNAを合成した。反応後98℃で5分間過熱し逆転写酵素を失活させた。合成されたcDNAを、10mMのトリス緩衝液を用いて約100コピー/μlまたは30コピー/μlに濃度調製し、試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線分析
実施例1と同じ。
以下の試薬を含む溶液(1)および(2)を調製した。なお、核酸プライマーおよび核酸プローブの組合せは表3に示した。(表3において、プライマー列、プローブ列の数字は、配列番号を示す。)
100μM核酸プライマー(配列番号3または17のいずれか一つ)0.15μl
10μM核酸プライマー(配列番号18)0.25μl
10μM核酸プローブ(配列番号13、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
cDNA(100コピー/μl) 1μl
精製水 2.3μl
100μM核酸プライマー(配列番号4または5のいずれか一つ)0.5μl
100μM核酸プライマー(配列番号6または18のいずれか一つ)0.1μl
10μM核酸プローブ(配列番号13、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
cDNA(30コピー/μl) 1μl
精製水 2.1μl
実施例1と同様に行った。
図7は、表3の組合せNo.6、7で示される核酸プライマー・プローブの組合せを溶液(1)の組成で用いて、核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。ここで用いた配列番号17のフォワードプライマーおよび配列番号18のリバースプライマーは、特許文献2および非特許文献に記載されている核酸プライマーである。
図7より、配列番号17と18の組合せからなる核酸プライマーセットでは、ノロウイルスGII群由来のcDNAが増幅されていないことが示された。一方で、フォワードプライマーを本発明に記載の核酸プライマーである配列番号3に変更すると、cDNAが増幅されることが示された。
また図8〜9は核酸プライマーを表3に記載の組合せNo.8〜11にそれぞれ変更して、溶液(2)の組成で核酸増幅および融解曲線分析を行った結果である。組合せNo.8では検出ピークが見られず、組合せNo.9でもピークが低めであることから、これらの組合せを構成する核酸プライマーセットは増幅効率で劣ることが示唆された。一方で、組合せNo.10およびNo.11は検出ピークが認められたことから、これらの組合せを構成する核酸プライマーセットは、No.8およびNo.9の核酸プライマーセットよりも増幅効率に優れることが示唆された。No.8およびNo.9ではリバースプライマーに配列番号18を用いており、No.10およびNo.11ではリバースプライマーに配列番号6を用いていることから、これらの結果の差はリバースプライマーによるものと考えられ、本発明のリバースプライマーはより優れた性能を有することが示唆された。
Claims (4)
- 核酸増幅反応および該増幅反応によって得られた増幅産物を検出することを含むノロウイルスGII群の核酸を検出する方法であって、以下の工程(1)〜(4)を全て含み、工程(2)〜(4)が1時間以内で完了し、かつ、工程(2)以降は反応系を開放することなく行われることを特徴とする、ノロウイルスGII群の核酸を検出する方法。
(1)ノロウイルスのII群を含む試料から、ノロウイルスGII群のRNAに対して逆転写反応を行い、ノロウイルスGII群由来のDNAを得る工程
(2)(1)によって得られたDNAに対して、フォワードプライマーが配列番号3〜5のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから選ばれ、かつ、リバースプライマーが配列番号6〜8のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから選ばれる少なくとも1対の核酸プライマーセットを含む核酸プライマー群、1種類の核酸プローブ、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、を含む反応系で、合計反応時間が50分間以内となるようPCRを行い、増幅産物を得る工程
(3)工程(2)で得られた核酸増幅産物と、配列番号9〜12のいずれかで示される塩基配列からなり、かつ、グアニン消光プローブである核酸プローブとの複合体を形成せしめる工程
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程 - 請求項1に記載の方法であって、工程(3)において使用される1種類の核酸プローブが、少なくともいずれか一方の末端の核酸がシトシンであり、該シトシンが蛍光標識されており、該標識蛍光は当該核酸プローブが鋳型となる核酸と結合している場合は消光し、当該核酸プローブが他の核酸と結合せず遊離している場合に発光するという性質を有する、ことを特徴とする核酸プローブを用いる、ノロウイルスGII群の核酸を検出する方法。
- 請求項1または2に記載の方法において、工程(4)が以下の(4’)である方法。
(4’)工程(3)で得られた複合体を含む反応系の温度を段階的に上昇させて融解曲線分析を行い、複合体を形成していた核酸増幅産物と核酸プローブの解離の有無を検知する工程 - フォワードプライマーが配列番号3〜5のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから選ばれ、かつ、リバースプライマーが配列番号6〜8のいずれかで示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドから選ばれる核酸プライマーセットと、
配列番号9〜12のいずれかで示される塩基配列からなり、かつ、グアニン消光プローブである核酸プローブと、
3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼとを含む、
ノロウイルスのGII群を検出するためのキット。
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