以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
(成形)
ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物から成るフィルムを成形する方法について、特に制限はない。例えば、溶液流延法や溶融押出法などが挙げられる。そのいずれも採用することができるが、溶剤を使用しない溶融押出法の方が、地球環境上や作業環境上、あるいは製造コストの観点から好ましい。溶融押出法としては例えば、特開2008−273140号公報に記載されているタンデム型反応押出機を用いた方法等が挙げられる。
フィルムを成形する前に、原料として用いる熱可塑性樹脂組成物(アクリル系樹脂組成物)を予備乾燥する工程を経ることが好ましい。フィルム中の発泡の原因となる可能性がある原料中に残揮するメタノールを取り除き、発泡の発生をさらに低減するためである。乾燥する工程は、例えば原料をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などを用いて行われる。
原料がアクリル系樹脂を含む組成物である場合、ペレット中のメタノールが500ppm以下になるようにすることが好ましい。
乾燥工程における乾燥条件として、メタノール除去の他に樹脂中の水分を除去するため、温度は、80℃以上120℃以下が好ましく、乾燥時間は、5hr以上が好ましい。
溶融押出法を用いる場合、まず熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給する。押出機内で加熱溶融された熱可塑性樹脂組成物は、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給される。ギアポンプの使用は、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させる効果が高く非常に有用である。また、フィルターの使用は、熱可塑性樹脂組成物中の異物を除去し欠陥の無い外観に優れたフィルムを得るのに有用である。
次に、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を2つの冷却ドラムで挟み込んで冷却することによりフィルムが成形される。2つの冷却ドラムのうち、一方が、表面が平滑な剛体性の金属ドラムであり、もう一方が、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルドラムであることが好ましい。剛体性のドラムとフレキシブルなドラムとで、Tダイから押し出されるシート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却してフィルムを成形することにより、表面の微小な凹凸やダイラインなどが矯正されて、表面の平滑な、厚みむらが5μm以下であるフィルムを得ることが出来るためである。
なお、冷却ドラムは、「タッチロール」あるいは「冷却ロール」と呼ばれることがあるが、本明細書中における「冷却ドラム」とは、これらのロールを包含する。
成形後のフィルムの厚みは、30μm以上200μm以下であることが好ましく、60μm以上180μm以下であることがより好ましく、70μm以上140μm以下であることがさらに好ましい。30μm未満であると高速で巻き取るため流れ方向厚みむらが悪化し、200μmを超えると極めて高い倍率で延伸する必要があり破断する可能性が高くなるためである。
(延伸)
図1は、ロール延伸方法の一例を示す概略図である。延伸前のフィルムを、1または2以上の予熱ロール1により搬送および加熱し、低周速の延伸前ロール2と高周速の延伸後ロール3との間で延伸を行う。延伸時には、延伸前ロール2、延伸後ロール3とそれぞれに近接するニップロール7を設置して、フィルム10の搬送と延伸を行ってもよい。延伸中のフィルム10を安定して搬送するために、ニップロール7のついたロールで延伸することが好ましい。その後、冷却ロール4によりフィルムを搬送および冷却固化することにより目的のフィルムを得ることができる。図1中、予熱ロール1の上に記載した矢印は、フィルム10の流れ(搬送)方向を示す。ニップロール7を設置する場合、フィルム10をニップロール7と延伸前ロール2により挟持する部分を挟持部11、フィルム10をニップロール7と延伸後ロール3により挟持する部分を挟持部12とする。
延伸前ロール2と延伸後ロール3との間に、補助加熱手段5を設け、延伸時のフィルム10を加熱してもよい。補助加熱手段5により、延伸ロール間で放冷されることによるフィルム10の冷却を防ぎ、延伸時のフィルム温度Teを所望の温度に保つことが容易になる。
(予熱ロール)
予熱ロールは、延伸前ロールより上流側に設けられ、延伸ロールにフィルムを搬送すると共に、フィルムを加熱することができるロールである。フィルムの温度が充分に上昇し一定になるまで充分な加熱時間が得られる構成であれば、ロールの径および本数は特に限定されない。1または2以上の各予熱ロール温度を、50℃以上延伸前ロール温度T1以下の範囲内で、同じ温度にしてもよく、フィルムの搬送方向に進むに従い徐々に上昇させてもよい。
予熱ロール温度が50℃未満であり、フィルムの温度が充分でないと、延伸ロールで加熱能力不足となる場合があり、予熱ロール温度が延伸前ロール温度T1を超えると、予熱ロールにて剥離紋が生じる可能性が高まる。
なお、予熱ロール温度は、ロールの幅方向に対し中央部のロール表面の温度を、例えば非接触式放射温度計を用いて測定することができる。
(延伸ロール)
延伸ロールは、近接した周速の異なる少なくとも一組の延伸前ロールおよび延伸後ロールからなり、フィルムを所定の温度に加熱すると共に、フィルムの搬送方向に延伸することができるロールである。延伸前ロールが低周速ロールであり、延伸後ロールが高周速ロールである。
延伸の方法としては、特に制限されず、例えば、前記周速の異なる一組の延伸ロールによって延伸を行う一段延伸と、二組以上のロールによって延伸を行う多段延伸などがあげられる。多段延伸の場合、設備が大規模となるため、前者の一段延伸により延伸を行うことが好ましい。
一段延伸としては、例えば、図2に示すような延伸前ロール2および延伸後ロール3の間にあるフィルム(延伸区間8:図2中23と24の間のフィルム)が、それぞれ延伸前ロール2の延伸後ロール3側表面および延伸後ロール3の延伸前ロール表面2側表面にフィルム10が接触するような方法(以下、方法(2))と、図1に示すような延伸前ロール2および延伸後ロール3の間にあるフィルム(延伸区間8:図1中13と14との間のフィルム)が、それぞれ延伸前ロール2の延伸後ロール3側表面および延伸後ロール3の延伸前ロール表面2側表面にフィルム10が接触しないような方法(以下、方法(1))が挙げられる。
なかでも、方法(1)を用いることが好ましい。さらに、延伸前ロール2と延伸後ロール3の回転軸を含む面とフィルム10の搬送面が平行になるように且つ、延伸前ロール2と延伸後ロール3の回転方向が同一方向となるような延伸方法を用いることが好ましい。
いずれの方法においても、ニップロール7を設けなくとも延伸することができるが、延伸前ロール2および延伸後ロール3とそれぞれに近接したニップロール7を設けることが好ましい。ニップロール7と延伸前ロール2によりフィルム10が挟持される部分を挟持部11、21、ニップロール7と延伸後ロール3によりフィルム10が挟持される部分を挟持部12、22とすると、挟持部(11、12、21、22)によりフィルムをロール間との滑りがない状態で搬送できるため、延伸中のフィルム10を安定して搬送することができる。
多段延伸の場合、少なくとも一組以上の延伸ロールにおいて、方法(1)を用いることが好ましい。ニップロール7を設けなくとも延伸することができるが、ニップロール7を設けることが好ましい。一段延伸の場合と同様、挟持部によりフィルム10をロール間との滑りがない状態で搬送できるため、延伸中のフィルム10を安定して搬送することができる。
延伸前ロールが低周速ロールであり、延伸後ロールが高周速ロールであるところ、延伸倍率は延伸前ロールの周速に対する延伸前ロールの周速の比によって表すことができる。好ましい延伸倍率は延伸時のフィルム温度Teによっても異なるが、約1.1倍以上約3.0倍以下の範囲で選択されることが好ましく、約1.3倍以上約2.5倍以下がより好ましく、約1.5倍以上約2.4倍以下が特に好ましい。延伸倍率が約1.1倍未満である場合は、フィルムは延伸工程にて実質的に殆ど延伸されていないため、フィルムの機械的特性を充分に改善することができない。これにより、延伸後のフィルムは破断しやすくなる。また、延伸倍率が約3.0倍を超える場合は、延伸前のフィルムが厚くなりすぎてしまい、未延伸フィルム製造時に破断してしまう。
(延伸前ロール)
延伸前ロール温度T1がTg(ガラス転移温度)に対しTg−10℃以上Tg+15℃以下であることが好ましく、Tg−5℃以上Tg+10℃以下であることがより好ましく、Tg℃以上Tg+5以下であることがさらに好ましい。T1がTg−10℃未満である場合、フィルム温度が不足し、塑性変形できず、延伸の際に破断してしまう可能性や結果として透明性が悪化してしまう可能性が高まる。T1がTg+15℃を超える場合、フィルムが軟化し延伸前ロール上に粘着することで、剥離紋が発生やすくなる。
延伸前ロール温度T1をTg−10℃以上Tg+15℃以下にすることで、フィルムを伸長変形が可能な温度領域まで加熱することができると同時に、軟化したフィルムを延伸前ロールに粘着させることができ、発生する剥離紋を抑制することができる。
ここで、延伸前ロール温度T1は、ロールの幅方向に対し中央部のロール表面の温度を、例えば非接触式放射温度計を用いて測定することができる。
延伸前ロールの周速は、8m/min以上30m/min以下であることが好ましい。延伸前ロールの周速が8m/min未満である場合、フィルムの延伸前ロールおよび延伸後ロール通過時に、フィルムと延伸前ロールおよび延伸後ロールとの接触時間が長くなりすぎ、剥離紋が発生する可能性が高くなる。延伸前ロールの周速が30m/minを超える場合、延伸ロール間における伸長変形の歪み速度が大きくなり、より大きな張力がフィルムに付加されることで、フィルムを破断する可能性が高くなる。
延伸前ロールの表面がセラミック溶射処理されていることが好ましい。セラミック溶射処理により、延伸前ロールの表面がポーラス状となるため、フィルムとの接触面積が減り密着性が下がるため、フィルムとロールとの粘着に起因する剥離紋の抑制に効果的である。セラミック溶射処理は、例えばタングステンカーバイド材料を母材に吹き付け溶射皮膜を形成し、その後研磨することにより行うことができる。
(延伸時のフィルム)
延伸時のフィルム温度TeがTg(ガラス転移温度)に対しTg以上Tg+20℃以下であることが好ましく、Tg+5℃以上Tg+15℃以下であることがより好ましく、Tg+8℃以上Tg+13℃以下であることがさらに好ましい。TeがTg未満である場合、ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物から成るフィルムを延伸すると、ゴム状重合体がフィルム表面に対し陥没し、フィルムの表面粗さが悪化し、結果としてヘイズ値が悪化(上昇)する。TeがTg+20℃を超える場合、延伸後ロールでフィルムが設定値に冷却できず、延伸後ロールで剥離紋が生じる可能性が高くなる、延伸時のフィルムが著しく軟化し、伸長挙動が不安定になり流れ方向の厚み精度を劣化させる可能性が高くなる、また、延伸時のフィルムの張力が著しく弱くなり、ニップロールを用いた場合にも、延伸前ロールおよび延伸後ロールのニップロール上で滑りが生じ、フィルムの表面性を劣化させる可能性が高くなる。
延伸時のフィルム温度TeをTg以上Tg+20℃以下にすることで、ゴム状重合体のフィルム表面に対する、突出・陥没挙動を抑制し、平滑な表面とすることで、透明性に優れたフィルムを得ることができる。
ここで、延伸時のフィルム温度Teは、フィルムの幅方向に対し中央部であり、かつ延伸前ロール2と延伸後ロール3との間にあるフィルムの流れ方向に対し中央部である部分の温度を、例えば非接触式放射温度計を用いて測定することができる。なお、赤外線ヒーター等の補助加熱手段を用いた場合には、フィルムの幅方向に対し中央部、流れ方向に対しヒーター等の補助加熱手段の中央部にてフィルム温度を、例えば非接触式放射温度計を用いて測定することができる。
延伸時のフィルム温度TeをTg(ガラス転移温度)に対しTg以上Tg+20℃以下にすることは、延伸前ロールと延伸後ロールとの間に補助加熱手段を設けることにより容易になる。補助加熱手段を設けない場合、延伸前ロールによって加熱されたフィルムが、延伸ロール間での放冷によって、延伸時のフィルム温度がTg未満になる可能性がある。例えば、補助加熱手段が無い場合、延伸前ロールのフィルムとの接触部から100mm離れた位置でのフィルムの温度はT1より10℃程度低い温度となる。
補助加熱の方法としては、ロールによる接触加熱やヒーターによる非接触加熱が挙げられるが、赤外線ヒーターによる加熱が好ましい。赤外線ヒーターは、フィルムに非接触であり、輻射の効果によってラインスピード(フィルムの搬送速度)が速い場合でも、短時間で効率的にフィルム内部まで加熱することが可能であるためである。また、フィルムと赤外線ヒーターとの距離、出力、また照射時間を変えることにより、フィルムを所望の温度に制御することも可能である。赤外線ヒーターは特に限定されないが、最大エネルギー波長域1.2〜1.7μmの短波長、幅1mmあたり7.0W以上の出力が可能なヒーターが好ましい。ヒーター管内のコイルの温度は1000℃以上と高温になるため、ヒーターユニットは、空冷や水冷による冷却機構を備えていることが好ましい。特に、厚み精度の観点からフィルムの搬送に影響を及ばさない水冷による冷却機構が好ましい。
上記赤外線ヒーターの大きさは特に限定されないが、幅方向には、フィルム幅全てを照射できるように、フィルム幅Wより充分に長く、流れ方向には速いラインスピード(フィルムの搬送速度)においても十分な照射時間を確保できる長さ(本数)のヒーターを用いることが好ましい。特に、照射時間Tは、フィルムの搬送方向のヒーターの長さLh、延伸前ロールの周速V1、延伸後ロール周速V2とした場合、T=2×Lh/(V1+V2)で表され、0.1秒≦T≦1秒であることが好ましい。
赤外線ヒーターによる延伸時のフィルム温度Teの制御は、具体的には、例えば、短波長赤外線ヒーター(ヘレウス製:ZKB2400/340G)を用いて、フィルムとヒーター管との距離を40mm、照射時間0.2秒とした場合は、フィルム温度を約20℃、また、フィルムとヒーター管との距離を20mm、照射時間0.2秒とした場合は、フィルム温度を約30℃上昇させることが可能である。
上記赤外線ヒーターの設置位置としては、図1において、赤外線ヒーター5として示すようにフィルム上面、もしくはフィルム下面に設置することが好ましい。またフィルム搬送方向の位置は、延伸前ロールと延伸後ロールとの間であれば、特に制限されない。フィルムとヒーター管の距離は、特に限定されないが、20mm以上100mm以下であることが好ましい。フィルムとヒーター管の距離が20mm未満の場合、フィルム搬送の際の振れでフィルムがヒーター管に接触する可能性が高まる。また、フィルムとヒーター管の距離が100mmを超える場合、加熱の効果が十分でない可能性が高まる。
上記フィルム温度の測定方法は特に限定されないが、延伸ロール間に設置固定された赤外線温度計によって行われることが好ましい。上記赤外線温度計は、特に制限されないが、フィルム搬送面から20mm〜300mm離れた、フィルム上面もしくはフィルム下面に設置することが好ましい。ヒーターの出力を20%〜100%変更し、所望のフィルム温度となるように調整する。
ヒーターを設置する場合、フィルムに対してヒーターと反対側に反射板を設置することが好ましい。フィルムを透過した赤外線が反射され、再度フィルムに照射されるため効率的な加熱が可能となる。反射板は、例えば、板厚み2〜3mmのステンレス製板であり、ヒーター加熱部を覆うことが可能な面積を有するものを用いることができる。また、反射板とフィルム面との距離によりフィルム温度を調整可能であり、反射板とフィルムの距離は50mm〜200mmであることが好ましい。
図1または2に示すとおり、延伸前ロール2と延伸後ロール3の間にあるフィルム(延伸区間8)の長さ(図1の13と14との間の距離、並びに、図2の23と24との間の距離)を距離Lとする。ここで、前記方法(1)を用いて、延伸前ロール2と延伸後ロール3の回転軸を含む面と延伸前ロール2と延伸後ロール3との間におけるフィルム10の搬送面が平行になるよう延伸前ロール、延伸後ロール、及びニップロールを配置する場合、下記の関係が成り立つ。
(距離L)=(延伸前ロールと延伸後ロールとの距離)
また、前記方法(1)を用いる場合、図1に示す13は、フィルム10がフィルムの流れ(搬送)方向に向かって延伸前ロール2から剥離を開始する部分であり、14は、フィルム10がフィルム10の流れ(搬送)方向に向かって延伸後ロール3への接触を開始する部分である。
さらに、ニップロール7をフィルムの流れ(搬送)方向に対し垂直に設けた場合、図1に示す13は挟持部11に、14は挟持部12と同じ部分を示す。なお、ニップロール7をフィルムの流れ(搬送)方向に対し垂直に設ける場合について、例えば、フィルムの流れ(搬送)方向が水平である時は、ニップロール7を延伸前ロール2または延伸後ロール3の最も高い位置に設けるような位置関係となる。
延伸前ロールと延伸後ロールとの距離は、延伸前ロールの回転中心と延伸後ロールの回転中心との距離である。すなわち延伸前ロールと延伸後ロールとの距離を変化させることで距離Lを直接変化させることができる。
延伸前ロール2の直径R1、延伸後ロール3の直径R2、また、延伸前のフィルム幅Wである時、延伸区間8の距離Lについて、(R1+R2)/2<L<2Wを満たすことが好ましく、R1+R2<L<Wを満たすことがより好ましく、R1+R2<L<W/2であることがより好ましい。Lが(R1+R2)/2以下である場合、延伸前ロールと延伸後ロールが接触する。また、Lが2W以上であると、ネッキング量が大きくなりフィルム幅が極端に狭くなってしまう。
(延伸後ロール)
延伸後ロール温度T2がTg(ガラス転移温度)に対しTg−30℃以上Tg−10℃以下であることが好ましく、Tg−30℃以上Tg−15℃以下であることがより好ましく、Tg−30℃以上Tg−20℃以下であることがさらに好ましい。T2がTg−30℃未満である場合、フィルム温度が急激に冷却固化され収縮するため、延伸後ロールの周速とフィルムの搬送速度との間に滑りが生じ、破断する可能性が高くなる。T2がTg−10℃を超える場合、フィルムを冷却固化させる効果が十分でないため延伸時のフィルム温度Teからフィルム温度を十分に下げることができず、フィルムが延伸後ロール上に粘着しやすくなり、剥離紋が発生する可能性が高くなる。
延伸後ロール温度T2をTg−30℃以上Tg−10℃以下にすることで、軟化したフィルムを延伸後ロールに粘着させることができ、発生する剥離紋を抑制することができる。
ここで、延伸後ロール温度T2は、ロールの幅方向に対し中央部のロール表面の温度を、例えば非接触式放射温度計を用いて測定することができる。
延伸後ロールの表面が、延伸前ロールと同様に、セラミック溶射処理されていることが好ましい。セラミック溶射処理により、延伸前ロールの表面がポーラス状となるため、フィルムとの接触面積が減り密着性が下がるため、フィルムとロールとの粘着に起因する剥離紋の抑制に効果的である。セラミック溶射処理は、例えばタングステンカーバイド材料を母材に吹き付け溶射皮膜を形成し、その後研磨することにより行うことができる。
延伸前ロールと延伸後ロールのいずれも表面処理をセラミック溶射処理とすることが好ましい。
(冷却ロール)
冷却ロールは、延伸後ロールより下流側に設けられ、フィルムを搬送すると共に、フィルムを冷却することができるロールである。冷却ロールは、フィルムを冷却するため、50℃以上延伸後ロール温度T2未満にすることが好ましく、50℃以上T2−10℃以下であることがより好ましく、50℃以上T2−20℃以下であることがさらに好ましい。冷却ロールの設定値までフィルムの温度を充分に下げるため、充分な冷却時間が得られる構成であれば、ロールの径および本数は特に限定されない。1または2以上の各冷却ロール温度は、50℃以上延伸後ロール温度T2未満の範囲内で、同じ温度にしてもよく、フィルムの搬送方向に進むに従い徐々に降下させてもよい。
冷却ロール温度が、T2以上であると、充分に冷却が行われない場合があり、50℃未満であると、急冷されることでフィルムが収縮し、しわや破断が発生する場合がある。
なお、冷却ロール温度は、ロールの幅方向に対し中央部のロール表面の温度を、例えば非接触式放射温度計を用いて測定することができる。
(ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物)
ゴム粒子を含有する熱可塑樹脂組成物の一例であるゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物について具体的に説明する。なお、本発明におけるアクリル系樹脂は特に限定されず、ゴム状重合体の成分・粒子径等についても特に限定されない。
(ゴム状重合体)
ゴム状重合体としては、ガラス転移温度Tgが20℃未満である重合体であればよく、例えば、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、オルガノシロキサン系架橋重合体などが挙げられる。なかでも、フィルムの耐候性(耐光性)、透明性の面で、(メタ)アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)が特に好ましい。
アクリル系ゴム状重合体としては、例えばABS樹脂ゴム、ASA樹脂ゴムが挙げられるが、透明性等の観点から、以下に示すアクリル酸エステル系ゴム状重合体を含むアクリル系グラフト共重合体(以下、単に「アクリル系グラフト共重合体」と称する。)を好ましく用いることができる。
アクリル系グラフト共重合体は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合して得ることができる。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体は、アクリル酸エステルを主成分としたゴム状重合体であり、具体的には、アクリル酸エステル50〜100重量%および共重合可能な他のビニル系単量体50〜0重量%からなる単量体混合物(100重量%)並びに、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体0.05〜10重量部(単量体混合物100重量部に対して)を重合させてなるものが好ましい。単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
アクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アルキル基の炭素数1〜12のものを用いることが好ましい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸フェノキシエチル等があげられ、これらの単量体は2種以上併用してもよい。
アクリル酸エステル量は、単量体混合物100重量%において50重量%以上100重量%以下が好ましく、60重量%以上99重量%以下がより好ましく、70重量%以上99重量%以下がさらに好ましく、80重量%以上99重量%以下が最も好ましい。50重量%未満では耐衝撃性が低下し、引張破断時の伸びが低下し、フィルム切断時にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
共重合可能な他のビニル系単量体としては、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル類が特に好ましく、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸n−オクチル等があげられる。また、芳香族ビニル類およびその誘導体、及びシアン化ビニル類も好ましく、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があげられる。その他、無置換及び/又は置換無水マレイン酸類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル、ハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸およびその塩、(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル等が挙げられる。これら共重合可能な他のビニル系単量体は2種以上併用してもよい。
多官能性単量体は通常使用されるものでよく、例えばアリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、テトロメチロールメタンテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびこれらのアクリレート類などを使用することができる。これらの多官能性単量体は2種以上使用してもよい。
多官能性単量体の量は、単量体混合物の総量100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05重量部未満では、架橋体を形成できない傾向があり、10重量部を超えても、フィルムの耐割れ性が低下する傾向がある。
ゴム状重合体の体積平均粒子径は、20〜450nmが好ましく、50〜400nmがより好ましく、80〜300nmが更に好ましく、100〜200nmが最も好ましい。体積平均粒子径が20nm〜450nmの場合、フィルムの耐割れ性と透明性とを維持する効果に優れる。ゴム状重合体の体積平均粒子径が100nm以上である場合、フィルムの透明性を向上させる効果が特に顕著である。なお、体積平均粒子径は、動的散乱法により、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。
アクリル系グラフト共重合体は、アクリル酸エステル系ゴム状重合体5〜90重量部(より好ましくは、5〜75重量部)の存在下に、メタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物95〜25重量部を少なくとも1段階で重合させることより得られるものが好ましい。グラフト共重合組成(単量体混合物)中のメタクリル酸エステルは50重量%以上が好ましい。50重量%未満では得られるフィルムの伸びが低下し、硬度、剛性が低下する傾向がある。グラフト共重合に用いられる単量体としては、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、これらを共重合可能なビニル系単量体を同様に使用でき、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルが好適に使用される。アクリル系樹脂との相溶性の観点からメタクリル酸メチル、ジッパー解重合を抑制する点からアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
光学的等方性の観点からは、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体(「環構造含有(メタ)アクリル系単量体」と称する。)が好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが挙げられる。その使用量は、単量体混合物の総量(環構造含有(メタ)アクリル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量)100重量%において1〜100重量%が好ましく、5〜70重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。ここでいう、これと共重合可能な他の単官能性単量体には、前述のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、共重合可能な他のビニル系単量体が同様に使用できるが、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルを含むことが好ましい。メタクリル酸エステルは、前記環構造含有ビニル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量100重量%において0〜98重量%含まれることが好ましく、0.1〜98重量%含まれることがより好ましく、1〜94重量%がさらに好ましく、30〜90重量%が特に好ましい。また、アクリル酸エステルは、前記環構造含有ビニル系単量体およびこれと共重合可能な他の単官能性単量体の総量100重量%において0〜98重量%含まれることが好ましく、0.1〜98重量%含まれることがより好ましく、1〜50重量%がさらに好ましく、5〜50重量%が特に好ましい。さらに、成形加工時の熱安定性が向上し、耐溶剤性が向上する点から、(メタ)アクリル酸および/またはその塩が含有されてもよい。
アクリル酸エステル系ゴム状重合体に対するグラフト率は、10〜250%が好ましく、より好ましくは40〜230%、最も好ましくは60〜220%である。グラフト率が10%未満では、成形体中でアクリル系グラフト共重合体が凝集しやすく、透明性が低下したり、異物原因となる恐れがある。また引張破断時の伸びが低下しフィルム切断時にクラックが発生しやすくなったりする傾向がある。250%を超えると、成形時、たとえばフィルム成形時の溶融粘度が高くなり、フィルムの成形性が低下する傾向がある。
上記グラフト率とは、アクリル系グラフト共重合体におけるグラフト成分の重量比率であり、次の方法で測定される。
得られたアクリル系グラフト共重合体2gをメチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。得られた不溶分の重量と、アクリル系グラフト共重合体に含まれるアクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量とから、以下の式によりグラフト率を算出する。
グラフト率(%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の重量)−(アクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量)}/(アクリル酸エステル系ゴム状重合体の重量)]×100
アクリル系グラフト共重合体は、一般的な乳化重合法によって製造できる。具体的には、水溶性重合開始剤の存在下、乳化剤を用いてアクリル酸エステル単量体を連続的に重合させる方法を例示できる。
乳化重合法では、連続重合を単一の反応槽で行うことが好ましく、二槽以上の反応槽を用いるとラテックスの機械的安定性が低下するため好ましくない。
重合温度としては30℃以上100℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以上80℃以下である。30℃未満では生産性が低下する傾向があり、100℃を超えた温度では、目標分子量が過剰に大きくなる等によって、品質が低下する傾向がある。重合反応槽へ連続的に添加するアクリル酸エステル単量体、開始剤、乳化剤及び脱イオン水等の原料類は、定量ポンプの制御下で正確に添加するが、反応槽内で発生する重合熱の除熱量を確保するため必要に応じて予め冷却しても支障ない。反応槽から払い出されたラテックスには、必要に応じて重合禁止剤、凝固剤、難燃剤、酸化防止剤、pH調節剤を添加しても良く、未反応単量体の回収や後重合を行っても良い。その後、凝固、熱処理、脱水、水洗、乾燥等公知の方法を経て共重合体を得ることができる。PH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、ホウ酸等が挙げられる。
乳化重合においては、通常の重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物や、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、更にアゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤も使用される。これらは単独又は2種以上併用してもよい。これらの開始剤は亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド、スルフォキシレート、アスコロビン酸、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム錯体などの還元剤と併用した通常のレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
重合開始剤と合わせて連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤には炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール、四塩化炭素などが挙げられ、これらは単独又は2種以上併用してもよい。
乳化重合法にて使用する乳化剤に関して特に制限はなく、通常の乳化重合用の乳化剤であれば使用することが出来る。例えば、アルキル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩系界面活性剤、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホン酸塩系界面活性剤、アルキルリン酸ナトリウムエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムエステル等のリン酸塩系界面活性剤、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩系界面活性剤、オレイン酸カリウム等の脂肪酸系界面活性剤、といったアニオン系界面活性剤が挙げられる。また上記ナトリウム塩はカリウム塩等の他のアルカリ金属塩やアンモニウム塩でも良い。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に、ポリオキシアルキレン類またはその末端水酸基のアルキル置換体またはアリール置換体に代表される、非イオン性界面活性剤を使用または一部併用しても差し支えない。その中でも、重合反応安定性、粒子系制御性の点から、スルホン酸塩系界面活性剤、またはリン酸塩系界面活性剤が好ましく、中でも、ジオクチルスルホコハク酸塩、またはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩がより好ましく用いることができる。
乳化剤の使用量としては、単量体成分全体100重量部に対して、0.05重量部以上10重量部が好ましく、0.1重量部以上1.0重量部以下であることがより好ましい。0.05重量部より少量では、共重合体の粒系が大きくなり過ぎる傾向があり、10重量部より多量では共重合体の粒系が小さくなりすぎる、また、粒度分布が悪化する傾向がある。
ゴム状重合体は、ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物100重量部において、1〜60重量部含まれるように配合されることが好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜25重量部がさらに好ましい。ゴム状重合体が、1〜60重量部であることにより、フィルムの耐割れ性、真空成形性、光学的等方性、フィルムの耐熱性、表面硬度、透明性、および耐折曲げ白化性を維持する効果に優れる。また、ゴム状重合体の配合量が多い場合、フィルムの透明性を向上させる効果が特に顕著である。
ゴム状重合体とアクリル系樹脂との混合は、直接、フィルム生産時に混合しても良く、また一度、ゴム状重合体とアクリル系樹脂とを混合、ペレット化してから、改めてフィルム生産を実施しても良い。
(アクリル系樹脂)
ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物として、特に限定されないが、1種類以上のアクリル系ゴム状重合体と1種類以上のアクリル系樹脂との混合組成物であることが好ましい。
アクリル系樹脂としては、特に制限が無いが、メタクリル酸メチルを単量体成分としたメタクリル系樹脂が使用でき、メタクリル酸メチル由来の構成単位が30〜100重量%含有されたものが好ましい。また、中でも耐熱性のアクリル系樹脂が好ましく、例えば、共重合成分としてN−置換マレイミド化合物が共重合されているアクリル系樹脂、無水グルタル酸アクリル系樹脂、ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂、グルタルイミドアクリル系樹脂、水酸基および/またはカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂、芳香族ビニル単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られる芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体)またはその芳香族環を部分的にまたは全て水素添加して得られる水添芳香族ビニル含有アクリル系重合体(例えば、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン含有アクリル系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン含有アクリル系重合体)、環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体などを挙げることができる。耐熱性および光学特性の観点からグルタルイミドアクリル系樹脂をより好ましく用いることができる。これらは単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。
グルタル酸無水物樹脂である無水グルタル酸アクリル系樹脂としては、特に制限されないが、特開2007−254703記載の方法などに従って製造することができる。ラクトン環構造を有するアクリル系樹脂としては、特開2008−9378記載の方法などに従って製造することができる。また、グルタルイミドアクリル系樹脂の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開2008−273140に記載されている方法などが挙げられる。
グルタルイミドアクリル系樹脂の製造方法について、具体的には、第1押出機でアクリル系樹脂とイミド化剤とを処理する第1段目反応を行い、第2押出機で第1押出機における反応生成物をさらにエステル化剤と処理する第2段目反応を行う反応をあげることができる。
第1押出機、第2押出機、および第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品、を有するタンデム型押出機を用いることができる。
上記イミド化剤としては特に限定されず、例えば、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。上記一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有一級アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有一級アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有一級アミンが挙げられる。
上記イミド化剤としては、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素等の、加熱によりアンモニア又は一級アミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
上記イミド化剤のうち、コスト、物性の面から、アンモニア、メチルアミン、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。
上記イミド化剤の添加量は特に限定されず、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂における後述のグルタルイミド単位の含有量に応じて調整すればよい。
開環促進剤としては、グルタルイミドアクリル系樹脂中に残存するエステル基やカルボキシル基をグルタル酸無水物化することができれば特に制限されないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン等のアミン類、2−フェニルメチルイミダゾール、グアニジン等のイミン類、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化第四アンモニウム塩、p−トルエンスルホニウム塩基、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート等のアルカリ金属誘導体アルコキシドが挙げられる。
グルタルイミドアクリル系樹脂については、以下に詳述する。グルタルイミドアクリル系樹脂としては具体的には、例えば、下記一般式(1)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、
下記一般式(2)
(式中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミドアクリル系樹脂を好適に用いることができる。
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)
(式中、R
7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
上記一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R3は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であることが好ましく、R1はメチル基であり、R2は水素であり、R3はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR1、R2、およびR3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。
また、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
上記一般式(2)において、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R6は水素またはメチル基であることが好ましく、R4は水素であり、R5はメチル基であり、R6はメチル基であることがより好ましい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR4、R5、およびR6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル構成単位として、スチレン、α−メチルスチレン等を含むことが好ましく、スチレンを含むことがより好ましい。
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂は、芳香族ビニル構成単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R7、およびR8が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、R3の構造等に依存して変化させることが好ましい。
一般的には、上記グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミドアクリル系樹脂の1重量%以上とすることが好ましく、1重量%〜95重量%とすることがより好ましく、2重量%〜90重量%とすることがさらに好ましく、3重量%〜80重量%とすることが特に好ましい。グルタルイミド単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が低下したりすることがない。一方、グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に脆くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂において、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されるものではなく、求められる物性に応じて適宜設定することが可能である。使用される用途によっては、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は0であってもよい。一般式(3)で表される芳香族ビニル単位を含む場合は、グルタルイミドアクリル系樹脂の総繰り返し単位を基準として、10重量%以上とすることが好ましく、10重量%〜40重量%とすることがより好ましく、15重量%〜30重量%とすることがさらに好ましく、15重量%〜25重量%とすることが特に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足したり、フィルム加工時の機械的強度が低下したりすることがない。一方、芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂の耐熱性が不足する傾向がある。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
その他の単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を挙げることができる。
これらのその他の単位は、上記グルタルイミドアクリル系樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
上記グルタルイミドアクリル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×104〜5×105であることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
また、上記グルタルイミドアクリル系樹脂のガラス転移温度Tgは特に限定されるものではないが、110℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度Tgが上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の適用範囲を広げることができる。
ここで、ガラス転移温度Tgの測定方法は次の通りである。セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度Tgを求めることができる。
(任意成分)
ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物には、熱や光に対する安定性を向上させるための酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを単独又は2種以上併用して添加してもよい。
(ゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物から成るフィルム)
本発明の製造方法にて製造されるゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物から成るフィルムの幅については特に限定されないが、例えば、500〜2000mm程度の幅を持つフィルムを製造することができる。また、本発明の製造方法にて製造されるゴム状重合体を含有するアクリル系樹脂組成物から成るフィルムの長さについては特に限定されないが、例えば、1000〜5000mの長さを持つフィルムを、十分な透明性と表面性を以て製造することができる。
本開示の製造方法によれば、透明性に優れヘイズ値が低いフィルムを製造することができる。また、フィルムの全幅にわたって、剥離紋等の横段模様の無いフィルムを製造することができる。したがって、外観美麗であり、光学用途においても好適なフィルムを製造することができる。
本開示の製造方法によって得られるフィルムにおいて、フィルムの流れ(搬送)方向の延伸を縦延伸と称するのに対し、フィルムの幅方向の延伸を横延伸と称するところ、二軸方向に強度を発現させるため、さらに幅方向に延伸する横延伸を連続して行うことが好ましい。横延伸の延伸時の温度はTg〜Tg+20℃であることが好ましい。この範囲で横延伸することで、透明性を更に向上させることが可能である。
幅方向に延伸する方法としては特に限定されないが、テンター内でフィルム端部を保持しながら、延伸する方法などが挙げられる。
幅方向の延伸倍率は、縦延伸の倍率と同じであることが好ましい。延伸倍率が異なると、均一な光学特性は得られない。
本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下「部」および「%」は、特記がない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。以下の製造例、実施例、および比較例に記載の各物性の測定方法は次の通りである。
(ガラス転移温度)
セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度Tgを求めた。
(重合転化率)
重合において得られた重合体の重合転化率を以下の方法で求めた。
重合系から重合体を含む約2gの試料(重合体ラテックス)を採取・精秤し、それを熱風乾燥機中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率を試料中の固形分比率として求めた。最後に、この固形分比率を用いて、以下の計算式により重合転化率を計算した。なお、この計算式において、多官能性単量体および連鎖移動剤は仕込み単量体として取り扱った。
重合転化率(%)={(仕込み原料総重量×固形分比率−水および単量体以外の原料総重量)/仕込み単量体重量}×100
(ゴム含有グラフト共重合体の平均粒子径)
ゴム状重合体の平均粒子径は、ラテックスの状態で測定した。動的散乱法により、測定装置としてMICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いて、体積平均粒子径として求めた。
(ロール表面温度)
ロール表面温度は、ロールの表面の温度を非接触放射温度計(TMC50、ジャパンセンサー(株)製)を用いて測定した。
(透明性評価方法)
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社:NDH2000、Nippon Denshoku)を用いて、ヘイズ値を測定することにより評価した。
(表面性評価方法)
図3に示すように、点光源としてキセノンランプ31(浜松ホトニクス株式会社製150WキセノンランプC2577)を使用し、A4サイズ(210mm×297mm)に切り出したフィルム32に対して、400mm離れた位置から90度の角度で光を照射し、フィルムと300mm離れた位置にフィルムに平行に配置されたスクリーン33へ透過光を投影した。フィルムとスクリーンの角度を30°以上傾けて剥離紋を観察し、表面性を評価した。
(製造例1)
<グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)の製造>
原料樹脂として、アクリル系樹脂であるポリメタクリル酸メチル、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)を製造した。
この製造においては、押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いた。
タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機、第2押出機共に直径が75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の噛合い型同方向二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機の原料供給口に原料樹脂を供給した。
第1押出機、第2押出機における各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。
第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極めるために、第1押出機の吐出口、第1押出機と第2押出機間の接続部品の中央部、および、第2押出機の吐出口に樹脂圧力計を設けた。
第1押出機において、原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機の最高温部の温度は280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。定流圧力弁は第2押出機の原料供給口直前に設置し、第1押出機のモノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
第2押出機において、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルを添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機の各バレル温度は260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することで、グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)を得た。
得られたグルタルイミドアクリル系樹脂(A1)は、グルタミルイミド単位と(メタ)アクリル酸エステル単位が共重合したアクリル系樹脂である。
(製造例2)
<グラフト共重合体(B2)の製造>
最内層重合体の作成:
以下の組成の混合物をガラス製反応器に仕込み、窒素気流中で撹持しながら800℃に昇温したのち、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸アリル1部からなる単量体混合物とt−ブチルハイド口パーオキサイド0.1部との混合液のうち25%を一括して仕込み45分間の重合を行なった。
脱イオン水 220部
ホウ酸 0.3部
炭酸ナトリウム 0.03部
N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 0.09部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.09部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
硫酸第一鉄 0.002部
続いてこの混合液の残り75%を1時間にわたって連続添加した。添加終了後、同温度で2時間保持し重合を完結させた。また、この聞に0.2部のN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを追加した。得られた最内層架橋メタクリル系重合体ラテックスの重合転化率は98%であった。
ゴム粒子の作製:
得られた最内層重合体ラテックスを窒素気流中で80℃に保ち、過硫酸カリウム0.1部を添加したのち、アクリル酸n−ブチル41部、スチレン9部、メタクリル酸アリル1部からなる単量体混合物を5時間にわたって連続添加した。この間にオレイン酸カリウム0.1部を3回に分けて添加した。モノマー混合液の添加終了後、重合を完結させるためにさらに過硫酸カリウムを0.05部添加し2時間保持した。得られたゴム粒子の重合転化率は99%であった。
グラフト共重合体の作製:
得られたゴム粒子ラテックスを80℃に保ち、過硫酸カリウム0.02部を添加したのちメタクリル酸メチル14部、アクリル酸n−ブチル1部の単量体混合物を1時間にわたって連続添加した。モノマー混合液の追加終了後1時間保持しグラフ卜共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
ゴム含有グラフト共重合体の作製:
得られたゴム粒子ラテックスを80℃に保ち、メタクリル酸メチル5部、アクリル酸n−ブチル5部の単量体混合物を0.5時間にわたって連続添加した。モノマー混合液の追加終了後1時間保持しゴム含有グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
得られたゴム含有グラフ卜共重合体ラテックスを塩化カルシウムで塩析凝園、熱処理、乾燥を行ない、白色粉末状のゴム含有グラフト共重合体を得た。なお、ゴム含有グラフト共重合体の平均粒子径は250nmであった。
(製造例3)
<樹脂ペレットの製造>
直径40mmのフルフライトスクリューを用いた単軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を255℃、スクリュー回転数を52rpmとし、グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)95重量部、および白色粉末状のグラフト共重合体(B2)5重量部の混合物を、10kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。
(製造例4)
<フィルムの製造>
(成形)
押出製造装置を使用しフィルムを成形した。押出機としては、直径65mmの単軸押出機を使用し、窒素ラインを設置したホッパーから、製造例3で製造したペレットを供給した。吐出量が一定となるように、ギアポンプを用いた。Tダイとしては、フィルム幅方向のダイ出口の幅が1850mmで、手動偏肉ボルトによりリップクリアランス(フィルム厚み方向におけるダイ吐出口の高さ)の調整が可能であるものを用いた。Tダイのリップ(吐出口を構成する部材)はフィルム幅方向に7つの領域に分割され、各領域毎に温度調節が可能である。吐出後には、キャストロールとタッチロールで挟み込みつつ引き取ることでフィルムを冷却固化した。キャストロールは直径200mmの剛体ロールを用い、オイル温調を用いてロール温度100℃とし、速度(引き取り速度)20m/分で回転させ120μmのフィルムを製膜した。タッチロールとしては、金属製スリーブを有した弾性ロールを用いた。なお、フィルムのガラス転移温度TgはDSCによる中点法で評価したところ、122℃であった。
(延伸)
各実施例および比較例では、図1に示されるロール延伸機を用いた。予熱ロール1の径は250mm、延伸前ロール2の径は180mm、延伸後ロール3の径は180mm、冷却ロール4の径は250mmとした。図1に記載するように、延伸前ロール2と延伸後ロール3との間におけるフィルム10におけるフィルム10の搬送経路が延伸前ロール2と延伸後ロール3の回転軸を含む面と平行になるように、延伸前ロール2および延伸後ロール3を配置して、延伸前ロール2および延伸後ロール3とそれぞれに近接したニップロール7とによってそれぞれフィルム10を挟持することで、フィルム10の搬送と延伸を行った。そして、延伸前ロール2および延伸後ロール3は共に、フィルム10の搬送方向であり、同方向に回転させた。また、延伸区間8の距離Lを400mmとした。フィルム幅1000mm全体を加熱する、幅1300mm3本組(フィルム流れ方向の照射長さは160mm)の赤外線ヒーターをフィルム上面から、延伸区間8の中央部に向けて、フィルムから50mmの高さ、延伸区間8の中央位置に設置した。延伸区間8のフィルム中央部の温度である延伸時のフィルム温度Teを測定するためにフィルム上面500mmの位置からヒーター照射部の延伸区間8の中央部に向けて、放射式温度計(フルーク株式会社 Raytec XR)を設置した。また、各実施例および比較例では、延伸時の延伸前ロールの周速20m/min、延伸倍率2.0倍、延伸後ロールの周速40m/minとして延伸を行った。
(実施例1)
延伸前ロールと延伸後ロールの温度をそれぞれ130℃、100℃に設定した。その結果、放射式温度計にて延伸前ロール温度T1は130℃でTg+8℃であり、延伸後ロール温度T2は100℃でTg−22℃であった。また、ヒーター出力を40%とし、延伸時のフィルム温度Teは135℃でTg+13℃とした。その結果、得られたフィルムに剥離紋は無く、ヘイズ値は0.5%であった。
(実施例2)
延伸前ロールと延伸後ロールの温度をそれぞれ130℃、100℃に設定した。その結果、放射式温度計にて延伸前ロール温度T1は130℃でTg+8℃であり、延伸後ロール温度T2は100℃でTg−22℃であった。また、ヒーター出力を37%とし、延伸時のフィルム温度Teは130℃でTg+8℃とした。その結果、得られたフィルムに剥離紋は無く、ヘイズ値は0.9%であった。
(比較例1)
延伸前ロールと延伸後ロールの温度をそれぞれ130℃、100℃に設定した。その結果、放射式温度計にて延伸前ロール温度T1は130℃でTg+8℃であり、延伸後ロール温度T2は100℃でTg−22℃であった。また、ヒーター出力を30%とし、延伸時のフィルム温度Teは117℃でTg−5℃とした。その結果、得られたフィルムに剥離紋は無く、ヘイズ値は2.0%であった。
(比較例2)
延伸前ロールと延伸後ロールの温度をそれぞれ139℃、100℃に設定した。その結果、放射式温度計にて延伸前ロール温度T1は139℃でTg+17℃であり、延伸後ロール温度T2は100℃でTg−22℃であった。また、ヒーター出力を34%とし、延伸時のフィルム温度Teは135℃でTg+13℃とした。その結果、延伸前ロールで剥離紋が発生し、ヘイズ値は0.4%であった。
(比較例3)
延伸前ロールと延伸後ロールの温度をそれぞれ130℃、122℃に設定した。その結果、放射式温度計にて延伸前ロール温度T1は130℃でTg+8℃であり、延伸後ロール温度T2は122℃でTgであった。また、ヒーター出力を40%とし、延伸時のフィルム温度Teは135℃でTg+13℃とした。その結果、延伸後ロールで剥離紋が発生し、ヘイズ値は0.6%であった。
(比較例4)
延伸前ロールと延伸後ロールの温度をそれぞれ130℃、100℃に設定した。その結果、放射式温度計にて延伸前ロール温度T1は130℃でTg+8℃であり、延伸後ロール温度T2は100℃でTg−22℃であった。また、ヒーター出力を52%とし、延伸時のフィルム温度Teは150℃でTg+28℃とした。その結果、延伸後ロールで剥離紋が発生し、ヘイズ値は1.1%であった。