JP6558252B2 - 油井用高強度電縫鋼管 - Google Patents

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Description

本発明は、油井用高強度電縫鋼管に関する。特に、API規格 5CT P110相当の強度を有し、さらに、靭性に優れた油井用高強度電縫鋼管に関する。
近年、油井やガス井(以下、総称して油井と呼ぶ。)の掘削深度はますます深くなる傾向にあり、ケーシングなどの圧潰強度を高めるため、油井用鋼管の高強度化が求められている。
従来、油井用鋼管として、シームレス鋼管や電縫鋼管が使用されてきた。高強度が要求される鋼管の場合、造管後に鋼管全体に対して焼入れ焼戻しを施すことで強度を確保するとともに靭性を向上させている。一方、最近では、掘削コストの削減を狙いとして、高強度であり、造管後の熱処理を実施しない造管成形したままの電縫鋼管に対する要求が強くなっている。
油井用鋼管のうち、地表近くのケーシングなど、比較的に低強度である場合は、廉価な電縫鋼管が使用されている。また、API規格 Spec5CT K55油井用電縫鋼管は、造管成形まま(焼入れ焼戻し省略)で製造される。更に、API規格 Spec5CT N80相当油井用電縫鋼管は、造管成形ままで製造されることもある。しかし、これ以上の強度、例えば、API規格 5CT P110相当の強度が要求される場合は、造管後に熱処理を行う必要がある。
しかしながら、造管後の熱処理は、製造コストを上昇させ、また、熱歪みによって寸法精度が悪化し、再度、矯正などの工程が必要になる場合がある。
特許文献1には、強度確保のためC含有量を比較的高くしつつ、Bを含まず、造管後の熱処理を実施することなく、P110相当の強度及び降伏応力を有する電縫溶接鋼管及びその製造方法が記載されている。また、特許文献2には、強度、降伏比及び靱性を高めるためにC含有量を所定の範囲とし、強度を確保するためにベイナイトの均一組織とし、かつこれらを実現するために焼入れ性を確保可能な鋼成分とした電縫溶接鋼管及びその製造方法が記載されている。
特許文献1に記載された電縫溶接鋼管は、フェライトとベイナイトに代表される低温変態生成相を主体とする組織を有しており、例えば肉厚が7〜12.7mm程度の電縫溶接鋼管に適用可能である。しかしながら、シェール井戸においては掘削深度が更に深くなるため、鋼管の厚肉化が求められるが、肉厚の増大に伴い、鋼材の熱間圧延時の冷却速度が低下し、変態温度が上昇して強度不足を生じるおそれがある。
また、特許文献2に記載された電縫鋼管は、熱間圧延後に冷却してベイナイト組織を析出させ、更に300℃以下で巻き取って熱延鋼板とし、これを電縫溶接することで、最大で20mm程度の肉厚の鋼管の製造を可能としている。しかし、特許文献2に記載の電縫鋼管では、所定の冷却速度により鋼板を連続冷却してベイナイト組織を形成するため、比較的高温で生成する上部ベイナイトと、比較的低温で生成する下部ベイナイトとの混合組織が得られるものと推定される。このため、特許文献2に記載の電縫鋼管は、降伏強度のばらつきが大きくなる可能性がある。
特許第5644982号公報 特許第5131411号公報
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであって、API規格 5CT P110相当の強度を有し、降伏強度のばらつきが小さく、さらに、靭性に優れた油井用高強度電縫鋼管を提供することを課題とする。
特許文献2では、熱間圧延後に、ベイナイト変態が開始する650℃以下の温度領域において15℃/秒以上の冷却速度で加速冷却を行うことで、均一なベイナイト組織を得ている。本発明者らが検討したところ、特許文献2に記載の製法によって得られた組織は、上部ベイナイトと下部ベイナイトの混合組織になっていた。その原因は、特許文献2に記載の鋼材のベイナイト変態開始温度が、鋼材を水冷する際の遷移沸騰領域に含まれるため、鋼材表面において冷却速度のばらつきが生じ、これにより、変態温度が異なる2種類のベイナイトが析出して混合組織が生じたものと推定した。このため、P110相当の強度を有しているものの、150MPa程度の幅で降伏強度がばらついていた。
そこで、本発明者らが検討したところ、化学成分としてBを含むB含有鋼とし、熱間圧延後のベイナイト変態開始温度の温度域において鋼板を5℃/秒以下で空冷する中間空冷を行い、その後に急冷したところ、上部ベイナイトを主体とし、島状マルテンサイトを含む組織を得るに至った。このような組織が得られた原因は、中間空冷中の鋼板の温度変化が小さいため、未変態組織の大部分が恒温変態して上部ベイナイトが多く形成し、その後の急冷によって残りの未変態組織が島状マルテンサイトになったものと推測する。一方、中間空冷時に、未変態組織であるオーステナイト相に炭素が濃化し、その後の冷却時に粗大な島状マルテンサイトが生成して靱性が低下するおそれがある。そこで、仕上圧延温度を低温化することを試みた。仕上圧延温度を比較的低温にしたところ、有効結晶粒が微細になり、島状マルテンサイトを微細化かつ少量にすることが可能になった。このように、本発明の油井用高強度電縫鋼管は、組織の大部分が上部ベイナイトになるため降伏強度のばらつきが小さくなり、また、微細かつ少量の島状マルテンサイトが含まれるため強度が高く靱性に優れたものとなる。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 化学成分が、質量%で、
C:0.06〜0.12%、
Si:0.40%以下、
Mn:1.50〜1.90%、
P:0.020%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.100%以下、
Ti:0.010〜0.030%、
Nb:0.010〜0.050%、
B:0.0005〜0.0020%、
N:0.010%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
溶接部及び溶接熱影響部を除く母材部の組織が、90面積%以上の上部ベイナイトと、0.5〜5面積%の島状マルテンサイト(MA)と、残部組織とからなり、
前記島状マルテンサイト(MA)の長径が2.0μm以下であり、
前記母材部の降伏強度が760MPa以上970MPa以下、引張強度が860MPa以上、降伏強度ばらつきが100MPa以下である油井用高強度電縫鋼管。
(2) 更に質量%で、
Ni:0.50%以下、
Cu:0.50%以下、
Mo:0.50%以下、
Cr:0.50%以下、
V:0.10%以下、
Ca:0.0050%以下
の一種または二種以上を含有する(1)記載の油井用高強度電縫鋼管。
(3) 前記母材部の0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが60J以上である(1)または(2)記載の油井用高強度電縫鋼管。
本発明によれば、API規格 5CT P110相当の強度を有し、降伏強度のばらつきが小さく、さらに、靭性に優れた油井用高強度電縫鋼管を提供できる。
図1は、本発明の化学成分を有する鋼の仕上圧延温度と島状マルテンサイトの面積率との関係を示すグラフ。 図2は、本発明の化学成分を有する鋼の島状マルテンサイトの面積率とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示すグラフ。 図3は、熱間圧延後の冷却工程における温度と時間との関係を示すグラフ。 図4は、二次冷却時の鋼板温度とベイナイト変態率との関係を示すグラフ。 図5は、鋼板の金属組織を示す写真であって、(a)は中間空冷を実施しなかった例であり、(b)は中間空冷を実施した例。 図6は、鋼板の金属組織を示す写真であって、(a)は熱間圧延完了温度が890℃の例であり、(b)は熱間圧延完了温度が800℃の例。
以下、本実施形態の油井用高強度電縫鋼管について説明する。
本実施形態の油井用高強度電縫鋼管(以下、鋼管という)は、鋼板を電縫溶接することにより形成された鋼管であり、母材部と、溶接部と、溶接熱影響部とを備えている。鋼管の化学成分は、質量%で、C:0.06〜0.12%、Si:0.40%以下、Mn:1.50〜1.90%、P:0.020%以下、S:0.0050%以下、Al:0.100%以下、Ti:0.010〜0.030%、Nb:0.010〜0.050%、B:0.0005〜0.0020%、N:0.010%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなる。また、母材部の組織は、90面積%以上の上部ベイナイトと、0.5〜5面積%の島状マルテンサイト(MA)と、残部組織とからなる。島状マルテンサイト(MA)は、長径が2.0μm以下のサイズを有している。本実施形態の鋼管は、上記のような組成及び組織を有することで、C量に応じてAPI規格 5CT P110相当の強度、すなわち、母材部の降伏強度として760MPa以上970MPa以下、引張強度として860MPa以上を有する。また、降伏強度ばらつきは100MPa以下になる。
また、本実施形態の鋼板は、更に質量%で、Ni:0.50%以下、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cr:0.50%以下、V:0.10%以下、Ca:0.0050%以下の一種または二種以上を含有することが好ましい。
更に、本実施形態の鋼板は、母材部の0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが60J以上であることが好ましい。
以下、本実施形態の鋼管の化学成分を限定した理由について説明する。なお、%の表記は、特に断りがない場合は質量%を意味する。
(C:0.06〜0.12%)
Cは、本実施形態においては、母材部の引張強度及び降伏強度を高め、靭性を確保するために重要な元素である。母材部を上部ベイナイトと島状マルテンサイト(MA)を含む組織にして強度及び靱性を確保するために、C含有量の下限を0.06%とする。一方、Cの含有量が多すぎると、組織中の島状マルテンサイト(MA)の面積分率が増大して靭性が低下する。そこで、C量の上限を0.12%とする。なお、靭性と強度のバランスの観点から、C含有量を0.06〜0.11%とすることが好ましく、0.07〜0.12%とすることがより好ましい。
(Si:0.40%以下)
Siは、脱酸や強度向上に有用な元素である。しかし、Siが多量に含有されると、靭性や溶接性を劣化させるため、上限を0.40%とする。一方、Si含有量の下限は、脱酸の効果を十分に確保するため、0.03%が好ましい。なお、靭性と強度のバランスの観点から、Si含有量を0.05〜0.3%とすることが好ましく、0.1〜0.25%とすることがより好ましい。
(Mn:1.50〜1.90%)
Mnは、強度を向上させる元素であり、母材部の組織を上部ベイナイト及び島状マルテンサイト(MA)を主体として、降伏強度及び引張強度を確保するために有用である。Mn含有量の下限は、降伏強度、引張強度及び低温靭性の向上の効果を十分に発揮させるため、1.50%とする。一方、Mnを多量に含有すると、Siの場合と同様に靭性や溶接性が劣化するおそれがあるため、上限を1.90%とする。なお、より好ましくはMn含有量を1.70%以上とする。
(P:0.020%以下)
Pは、不純物であり、低温靭性を劣化させる元素であるため、その含有量は少なければ少ない程望ましい。ただし、製鋼段階でのコストと上記のような特性とのバランスを図る必要があるため、本実施形態においては上限を0.020%とする。
(S:0.0050%以下)
Sは、P同様、不純物として存在する元素である。Sの含有量もまた、少なければ少ない程望ましく、Sの含有量を低減することによりMnSを低減して、靭性を向上させることが可能となる。ただし、製鋼段階でのコストを考慮して、上限を0.0050%とする。
(Al:0.100%以下)
Alは、通常脱酸材として鋼中に含まれる元素であるが、含有量が0.100%を超えるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清浄度を害し、靭性が劣化するおそれがあるため上限を0.100%とする。また、安定した脱酸効果の確保と靭性のバランスを考慮すると、好ましくはAl含有量を0.01〜0.05%とする。
(Ti:0.010〜0.030%)
Tiは、微細なTiNを形成し、スラブ再加熱時、及び溶接熱影響部の形成時に、オーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織の微細化に寄与する。また、後述するN量が多すぎると、Bと結合してBNを生成してしまうため、変態温度を低温化させる固溶B量が減少してしまう。一方で、Tiを含有させることで、TiNとして固溶Nを固定して固溶Nを無くすとともに、BNの生成を抑制し、固溶Bを確保することができる。これらの目的のために、Ti量は0.010%以上とする。一方、Ti含有量が多すぎると粗大なTiNやTiCが生じ、靭性を劣化させるおそれがあるので、その上限を0.030%とする。なお、好ましくは、Ti含有量を0.010〜0.020%とする。
(Nb:0.010〜0.050%)
Nbは、熱間圧延時においてオーステナイトの再結晶を抑制して組織を微細化する元素である。降伏強度、引張強度及び靭性を向上させるために、本実施形態においては、Nb含有量の下限を0.010%とする。一方、Nb含有量が多すぎると、粗大な析出物を生じて靭性を阻害するおそれがあるため、Nb含有量の上限を0.050%とする。なお、好ましくは、Nb含有量を0.020〜0.050%とする。
(B:0.0005〜0.0020%)
本実施形態では、鋼板の熱間圧延後の冷却工程において中間空冷を行うことでベイナイトの恒温変態を起こさせ、金属組織を上部ベイナイトを主体とする組織として、母材部の降伏強度のばらつきを抑制する。中間空冷において恒温変態を起こして上部ベイナイトを得るためには、鋼のベイナイト変態温度を低下させる必要がある。Bは、本実施形態においてベイナイト変態温度を低下させる重要な元素であり、B含有量の下限を0.0005%とする。B含有量が0.0005%未満であると、金属組織中にフェライトが多く生成し、上部ベイナイトを主体とする組織を形成できなくなる。一方、B含有量が多すぎると、B含有析出物(Fe23(CB)など)が生成しやすくなって、機械特性がばらついたり、靭性が劣化したりするおそれがあるため、その上限を0.0020%とする。好ましくは、B含有量を0.0006〜0.0020%、より好ましくは0.0009〜0.0020%とする。
(N:0.0100%以下)
Nは、不純物であり、N量が多すぎると、TiNが過度に増大して表面疵、靭性劣化等の弊害が生じるおそれがあるので、その上限を0.010%とする。一方、鋼中に微細なTiNが形成されると、スラブ再加熱時、及び溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、母材及び溶接熱影響部の低温靭性の改善に寄与する。なお、好ましくは、N含有量を0.0020〜0.0050%とする。
また、本発明では、上記の元素に加えて、Ni:0.50%以下、Cu:0.50%以下、Mo:0.50%以下、Cr:0.50%以下、V:0.10%以下、Ca:0.0050%以下から選ばれる1種又は2種以上を含んでもよい。
Niは、降伏強度、引張強度及び靭性の向上に寄与する元素である。しかし、Niは高価な元素であり、添加量が多すぎると経済性を損なうため、含有量の上限を0.50%とすることが好ましい。より好ましい上限は0.30%である。なお、本実施形態においてNiは選択元素であり、必ずしも添加する必要はないが、上記のようなNi添加による効果を安定して得るためには、その含有量の下限を0.04%とするのが好ましい。また、Niは硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking:SSC)性を大幅に劣化させる元素であるため、HSが存在する場合には、添加しないことが好ましい。
Cuは、母材部の強度向上に有効な元素であるが、多量に添加しすぎると鋳片や熱延鋼板の段階で表面割れを誘起するおそれがある。そのため、Cu量の上限を0.50%とすることが好ましい。なお、本実施形態においてCuは選択元素であり、必ずしも添加する必要はないが、上記のようなCu添加による効果を安定して得るためには、その含有量の下限を0.02%とするのが好ましい。
Moは、鋼の焼入れ性を向上させ、高強度を得るために有効な元素である。また、Moは、Nbと共存して圧延時にオーステナイトの再結晶を抑制し、オーステナイト組織の微細化に寄与する。しかし、Moは高価な元素であり、過剰に添加することは経済性を損なうので、その上限を0.50%とすることが好ましい。より好ましくは0.20%以下、更に好ましくは0.10%以下とする。なお、本実施形態においてMoは選択元素であり、必ずしも添加する必要はないが、上記のようなMo添加による効果を安定して得るためには、その含有量の下限を0.05%とするのが好ましい。
Crは、焼入れ性を向上させる元素であり、Cr量の上限を0.5%とすることが好ましい。なお、本実施形態においてCrは選択元素であり、必ずしも添加する必要はないが、上記のようなCr添加による効果を安定して得るためには、その含有量の下限を0.05%とするのが好ましい。
Vは、Nbとほぼ同様の効果を有するが、その効果はNbに比較して低い。Vは高価な元素であり、過剰に添加することは経済性を損なうので、V量の上限は、0.10%とすることが好ましい。なお、本実施形態においてVは選択元素であり、必ずしも添加する必要はないが、その含有量の下限を0.05%とすることがより好ましく、0.03%とするのが更に好ましい。
Caは、硫化物系介在物の形態を制御し、低温靭性を向上させる元素である。Ca量が0.0050%を超えると、CaO−CaSが大型のクラスターや介在物となり、靭性に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、Ca添加量の上限を0.0050%とすることが好ましい。なお、より好ましい上限は0.0045%である。また、本実施形態においてCaは選択元素であり、必ずしも添加する必要はないが、上記のようなCa添加による効果を安定して得るためには、その含有量の下限を0.0010%とするのが好ましい。更に好ましくは、0.0020%以上のCaを添加する。
また、上記した元素以外の残部は実質的にFeと不純物からなる。不純物としては、PやS、原料や製造工程において不可避的に混入する不可避的不純物、本発明の作用効果を害さない元素等が例示できる。これらは本実施形態の鋼管に微量に含まれていてもよい。
次に、母材部の組織は、90面積%以上の上部ベイナイトと、0.5〜5面積%の島状マルテンサイト(MA)と、残部組織とからなる。上部ベイナイトは、ベイナイト組織を構成するラス状のフェライト間にセメンタイトを有する組織であり、下部ベイナイトよりも比較的高温で生成する。なお、下部ベイナイトは、ラス内に鉄基炭化物を有する組織である。
母材部の組織を上部ベイナイトと主体とする組織にすることにより、90面積%未満の上部ベイナイトと下部ベイナイトとの混合組織にした場合に比べて、母材部の降伏強度のばらつきが大幅に抑制される。上部ベイナイトは、後述するように、一次冷却後の中間空冷時に未変態のオーステナイトが恒温変態することにより形成される。上部ベイナイトの面積分率が90%未満になると、下部ベイナイトやフェライト等の残部組織の面積分率が相対的に増大し、母材部の降伏強度及び引張強度の低下や、降伏強度のばらつきが生じるため好ましくない。
島状マルテンサイト(MA)は、中間空冷後の急冷時に、未変態のオーステナイトが変態することにより形成される。島状マルテンサイトが粗大化すると靱性が低下するため、本実施形態では島状マルテンサイトの長径を2.0μm以下に制限することが好ましく、1.0μm以下に制限することがより好ましい。長径が2.0μmを超えると靱性が低下するので好ましくない。また、島状マルテンサイトの面積率が0.5面積%未満になると、降伏強度が760MPa未満に低下するので好ましくない。また、島状マルテンサイトの面積率が5面積%を超えると、靱性が低下するので好ましくない。島状マルテンサイトは、従来の上部ベイナイトと下部ベイナイトの混合組織では形成されにくく、本実施形態のような上部ベイナイトを主体とする組織において形成されやすい。上部ベイナイトと下部ベイナイトの判別が難しい場合は、島状マルテンサイトの存在を確認することで、間接的に上部ベイナイトを主体とする組織であると推測できる。
残部組織は特に限定はなく、残留オーステナイト、下部ベイナイト、フェライト等を例示できる。鋼管の残部組織の全部が下部ベイナイトであっても本発明に含まれる。
母材部の金属組織を構成する、主相の上部ベイナイト、島状マルテンサイト及び残部組織の同定及び面積分率の測定は、ナイタール試薬及び特開昭59−219473号公報に開示の試薬を用いて、シーム部から90°の位置に対応する母材部の管軸方向断面又は管軸方向直角方向断面における板厚tの1/4の位置(t/4位置)を腐食し、該腐食断面を1000〜100000倍の走査型及び透過型電子顕微鏡で観察することで可能である。また、同じ断面をEBSD法(電子線後方散乱電子回折法)によって測定してもよい。
例えば、上部ベイナイトや下部ベイナイトは、炭化物の生成サイトや結晶方位(伸長方向)が異なるので、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM:Field Emission Scanning Electron Microscope)を用いてラス状結晶粒内部の鉄系炭化物の伸長方向を観察して、容易に判別することができる。また、島状マルテンサイトは、EBSD法によりt/4位置の組織をEBSD(IQ)の1000倍画像により観察し、黒色に観察される箇所を島状マルテンサイトとすることができる。島状マルテンサイトの位置は、事前に同断面をレペラ−エッチングして島状マルテンサイトの位置を確認し、EBSD(IQ)像と付き合わせることで判別できる。
上部ベイナイト、島状マルテンサイト及び残部組織の面積分率は、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、ナイタール試薬で腐食し、板厚の1/4を中心とする1/8〜3/8厚の範囲をFE−SEMで観察して面積分率を測定する。面積率は、5000倍の倍率で、10視野測定し、その平均値を面積率とする。
また、島状マルテンサイトの長径は、EBSD(IQ)の1000倍画像における長径を10視野について測定し、これを平均化することで求められる。
また、母材部の降伏強度及び引張強度は、シーム部から90°の位置に対応する母材部の位置から試験片を採取して測定する。試験片は、API5CTに準拠して、鋼管長手方向に全厚の弧状引張試験片を採取する。
また、降伏強度ばらつきは、コイルを長手方向に沿って3等分し、3等分したコイルの各端(前後部)部から採取した鋼管の進行方向管端のシーム部から90°の位置及び270°の位置より全厚の弧状引張試験片を合計12本を採取し、各試験片について降伏強度を測定し、得られた降伏強度の最大値と最小値との差を降伏強度のばらつきとする。
また、シャルピー吸収エネルギーは、API 5CTに基づき、試験片を調製するとともに温度0℃におけるシャルピー吸収エネルギーを測定する。得られた値はAPI 5CTに基づきフルサイズ換算する。
次に、本実施形態の鋼管の製造方法を説明する。
本実施形態の鋼管は、上記の化学成分を有する鋼片を熱間圧延し、Ar3点以上830℃以下で仕上圧延を完了し、10〜70℃/sの冷却速度で500〜600℃まで一次冷却し、二次冷却として冷却速度5℃/s以下で5秒以上の中間空冷を行い、冷却速度10℃/s以上で3次冷却を行い、200℃以下で巻き取って熱延鋼板とし、この熱延鋼板を素材として管状に成形加工しつつ付き合わせ面を電縫溶接することにより、製造する。
仕上圧延温度はAr3点以上830℃以下がよい。仕上圧延温度がAr3点未満になると、金属組織中にフェライトが生成し始めるので好ましくない。また、仕上圧延温度が830℃を超えると、二次冷却中に未変態オーステナイトに炭素が濃化し、その後の3次冷却において高硬度の島状マルテンサイトが過剰に生成し、靱性を大きく低下させる。図1には、本発明の化学成分を有する鋼の仕上圧延温度と島状マルテンサイトの面積率との関係を示す。また、図2には、島状マルテンサイトの面積率とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示す。図1に示すように、仕上圧延温度が830℃以下にすることで、島状マルテンサイトの面積率が5面積%以下になることがわかる。また、図2に示すように、島状マルテンサイトの面積率が5面積%以下になることで、シャルピー吸収エネルギーが60J以上になることがわかる。仕上圧延温度を830℃以下にすることで、有効結晶粒が微細化し、これにより脆化相である島状マルテンサイトのサイズ及び面積率が減少し、靱性が向上する。
なお、Ar3点は、熱延鋼板と同成分の試験材を用いて、加熱及び冷却した際の熱膨張挙動から求めることができる。また、熱延鋼板の成分から、下記(式1)によって求めることも可能である。
Ar3(℃)=910−310C−80Mn−55Ni−20Cu−15Cr−80Mo … (式1)
ここで、C、Mn、Ni、Cu、Cr、Moは各元素の含有量[質量%]である。Ni、Cu、Cr、Moは、本発明においては任意の添加元素である。これらの元素を意図的に添加しない場合は、上記(式1)では0として計算する。
熱間圧延後、上部ベイナイトを主相とする組織を得るために、ベイナイト変態開始温度まで急冷する。具体的には、1次冷却として、冷却速度10〜70℃/sで500〜600℃まで水冷する。冷却速度が10℃/s未満になると、フェライトの面積分率が増大するおそれがあるので好ましくない。また、70℃/s超の冷却速度で冷却しても効果が飽和するので、上限を70℃/sとする。また、一次冷却の冷却停止温度が500℃未満になると、2次冷却温度が低くなり、下部ベイナイトが過剰に生成するおそれがあるので好ましくない。また、一次冷却の冷却停止温度が600℃を超えると、2次冷却温度が高くなり、フェライトの面積分率が増大するおそれがあるので好ましくない。
一次冷却後、二次冷却として冷却速度5℃/s以下で5秒以上の中間空冷を行う。中間空冷の開始温度は一次冷却の停止温度とほぼ同じである。この中間空冷により、一次冷却後における未変態組織(オーステナイト組織)をベイナイト変態させる。このときの変態率は80%以上になる。冷却速度が5℃/sを超えると、中間空冷中に鋼板温度が大幅に降下し、下部ベイナイトが生成してしまうので好ましくない。また、中間空冷時間が5秒未満では、変態率が80%未満となり、上部ベイナイトの面積分率が低下する一方で島状マルテンサイト及び残部組織の面積率が増大してしまうので好ましくない。また、中間空冷時間の上限は10秒以下がよい。中間空冷時間が10秒を超えると、島状マルテンサイトの形成が阻害され、また、実質的に焼き戻しされることになり、母材部の降伏強度及び引張強度が低下するため好ましくない。
図3には、冷却時間と鋼板温度との関係を示す。従来、仕上げ圧延後の冷却を10〜70℃/sの冷却速度で連続して行った場合、冷却中に遷移沸騰領域を通過するが、同時にベイナイト変態が起きる温度域を通過することになる。このため、従来の製法では、遷移沸騰領域を通過中の鋼板において冷却速度のばらつきが生じ、また、ベイナイト変態が起きる温度域を通過中に鋼板温度が低下し続けるため、上部ベイナイトと下部ベイナイトの混合組織が得られやすくなる。一方、本実施形態では、遷移沸騰領域よりも高い温度で、冷却速度が小さな中間空冷を実施することにより、ベイナイト変態が起きる温度域を通過する際の鋼板温度の低下幅が小さくなり、上部ベイナイトが優先して生成し、強度のばらつきが小さくなる。また、中間空冷における変態率が80%以上になるため、上部ベイナイト以外の組織が占める面積分率が小さくなり、靱性の低下が起きにくくなる。
また、図4には、二次冷却時の鋼板温度とベイナイト変態率との関係を示す。符号1はB(ボロン)を含有しない鋼(比較鋼)を600℃超から急速冷却した場合の変態率の挙動を示す曲線である。また、符号2は、B(ボロン)を含有する鋼(比較鋼)を500℃超から急速冷却した場合の変態率の挙動を示す曲線である。符号1及び2の場合はいずれも、高温から低温に向けて冷却が進むにつれて変態率が上昇するが、その上昇カーブの傾きが比較的緩やかになっている。このため、符号1や2では、フェライト及び上部ベイナイト又は上部ベイナイト及び下部ベイナイトを含む混合組織が形成されることになる。一方、符号3は、B(ボロン)を含有する鋼(本発明鋼)を500℃超から5℃/s以下の冷却速度で中間空冷した場合の変態率の挙動を示す曲線である。符号3では、符号1や符号2に比べて、上昇カーブが急峻になっており、狭い温度範囲内で変態率が0%から100%近くまで急上昇していることがわかる。このように、本実施形態の鋼管の製造方法では、5℃/s以下の冷却速度で中間空冷することにより、狭い温度範囲で変態率が急上昇し、上部ベイナイトを主体とする組織が得られるようになる。
二次冷却後、冷却速度10℃/s以上で3次冷却を行い、200℃以下で巻き取って熱延鋼板とする。三次冷却によって、残留する未変態組織が微細な島状マルテンサイトとなり、母材部の強度が向上する。三次冷却の冷却速度が10℃/s未満になると、島状マルテンサイトが生成しにくくなり、母材部の強度が低下するので好ましくない。また、巻取温度が200℃を超えると、島状マルテンサイトが分解して強度が低下するので好ましくない。
次に、本実施形態では、得られた熱延鋼板を空冷し、冷間で管状に成形し、端部同士を突合せて電縫溶接することで、本実施形態の鋼管を製造する。本実施形態では、鋼管の板厚や外形を特に規定するものではないが、鋼板の肉厚tと電縫鋼管の外径Dの比t/Dは、2〜8%程度であり、tが5mm以上乃至16mm以下のものに好適に適用できる。
さらに、電縫溶接部のみを加熱し、加速冷却するシーム熱処理を施してもよい。電縫溶接では、突き合わせ部を加熱して溶融させ、圧力を負荷して、接合することから、電縫溶接部近傍は高温で塑性変形した後、急冷された状態になっている。そのため、電縫溶接部は鋼板に比べて硬化しており、シーム熱処理を施すことにより、電縫鋼管の低温靭性、変形性能をさらに高めることができる。
図5(a)には、本発明の化学成分を有する鋼であって、熱間圧延後から巻取りまで一定の冷却速度で急冷し、中間空冷を実施しなかった鋼板の金属組織写真を示す。また、図5(b)には、本発明の化学成分を有する鋼であって、熱間圧延後から巻取りまで急冷し、かつ、中間空冷を実施した鋼板の金属組織写真を示す。図5(b)に示すように、中間空冷を実施することにより、上部ベイナイトを主相とし、島状マルテンサイトを含む組織が得られることがわかる。一方、図5(a)に示すように、中間空冷を実施しなかった場合は、上部ベイナイトと下部ベイナイトの混合組織となり、かつ、島状マルテンサイトが形成されないことがわかる。
また、図6(a)には、本発明の化学成分を有する鋼であって、熱間圧延完了温度を890℃にした鋼板の金属組織写真を示す。また、図6(b)には、本発明の化学成分を有する鋼であって、熱間圧延完了温度を800℃にした鋼板の金属組織写真を示す。図6(b)に示すように、熱間圧延温度を低温化することで、島状マルテンサイトの面積分率が1.8%となり、長径が1.5μmになる。一方、図6(a)に示すように、熱間圧延温度が高いと、島状マルテンサイトの面積分率が12.5%となり、長径が2.2μmになり、靱性が低下する原因になることがわかる。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。また、表1中の空欄は、その元素を意図的に添加していないことを示す。鋼A〜Gは本発明の成分組成の規定を満たす鋼であり、鋼AA〜DDは、本発明の成分組成の規定を満たさない鋼である。
表1に示す化学成分を有する鋼A〜G及びAA〜DDを鋳造し、鋼片とした。これらの鋼片を、表2に示した加熱温度に加熱し、表2に示す圧延仕上温度にて熱間圧延を施し、冷却し、熱延鋼板を得た。なお、表2に示す圧延仕上温度はいずれもAr3点以上の温度である。冷却工程は、冷却速度20〜30℃/sで500〜600℃まで冷却する一次冷却と、表2に記載の中間空冷温度、中間空冷時間及び5℃/s以下の冷却速度で冷却する二次冷却と、冷却速度20〜30℃/sで冷却する三次冷却とを行った。その後、表2に示す巻取温度で巻き取って熱延鋼板とした。
次いで、得られた熱延鋼板を空冷したのち、連続ロール成形工程で管状に成形し、熱延鋼板の端部を突合わせて電縫溶接を行った。その後、必要に応じて、電縫溶接部を加熱後、加速冷却するシーム熱処理を施した。
次に、得られた電縫溶接鋼管から、組織観察用の試料を採取し、鋼管長手方向と平行な断面にナイタールエッチングを施し、走査型及び透過型電子顕微鏡で観察し、同じ断面をEBSD法(電子線後方散乱電子回折法)によって測定した。具体的には、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、ナイタール試薬で腐食し、板厚の1/4を中心とする1/8〜3/8厚の範囲をFE−SEMで観察することで、上部ベイナイト、島状マルテンサイト及び残部組織の面積分率を測定した。面積率は、5000倍の倍率で、10視野測定し、その平均値を面積率とした。また、島状マルテンサイトは、EBSD法によりt/4位置の組織をEBSD(IQ)の1000倍画像により観察し、黒色に観察される箇所を島状マルテンサイトとして同定した。
また、母材部の降伏強度及び引張強度は、シーム部から90°の位置に対応する母材部から試験片を採取して測定した。試験片は、API5CTに準拠して、鋼管長手方向に弧状引張試験片を採取した。
また、降伏強度ばらつきは、コイルを長手方向に沿って3等分し、3等分したコイルの各端部から採取した鋼管の進行方向管端のシーム部から90°の位置及び270°の位置より全厚の弧状引張試験片を合計12本を採取し、各試験片について降伏強度を測定し、得られた降伏強度の最大値と最小値との差を降伏強度のばらつきとする。
また、シャルピー吸収エネルギーは、API 5CTに基づき、試験片を調製し、温度0℃におけるシャルピー吸収エネルギーを測定し、得られた値はAPI 5CTに基づきフルサイズ換算した。表2におけるL方向とは、管軸方向に沿う試験片を調製した場合である。また、C方向とは、鋼管の周方向に沿う試験片を調製した場合である。板厚が10mm以上の場合はC方向(管長手の直交方向)に沿って試験片を採取し、板厚が10mm未満の場合はL方向(管長手方向)に沿って試験片を採取した。
表2に示すように、試験番号1〜7の鋼管は、金属組織が90面積%の上部ベイナイトと、1〜5面積%の島状マルテンサイトを含む組織となっており、降伏強度(YS)及び引張強度(YS)が高く、かつ、降伏強度(YS)のばらつきが100MPa以下になっている。また、0℃のシャルピー吸収エネルギー(CVN)も50〜80Jとなっている。このように、試験番号1〜7の鋼管は、API規格 5CT P110相当の降伏強度及び引張強度を有し、降伏強度のばらつきが小さく、さらに、靭性に優れている。
一方、試験例8の鋼管は、中間空冷を実施しなかったため、母材部の組織が上部ベイナイトと下部ベイナイトとを含む混合組織となり、降伏強度のばらつきが大きくなった。
試験例9の鋼管は、仕上圧延温度が830℃を超えたため、オーステナイト中に炭素が濃化した結果、島状マルテンサイトの面積率が13%となり、シャルピー吸収エネルギーが大幅に低下した。
試験例10の鋼管は、中間空冷温度(一次冷却の停止温度)が650℃と高すぎたため、母材部の組織中に30面積%のフェライトが形成し、降伏強度及び引張強度が低下した。また、シャルピー吸収エネルギーも大幅に低下した。
試験例11の鋼管は、中間空冷温度(一次冷却の停止温度)が400℃と低すぎたため、母材部の組織中に上部ベイナイトとともに70面積%の下部ベイナイトが形成し、降伏強度のばらつきが増大した。
試験例12の鋼管は、中間空冷時間が3秒と短く、中間空冷中にベイナイト変態が十分に進まず、三次冷却中に下部ベイナイトが生成した。これにより、母材部の組織中に上部ベイナイトとともに60面積%の下部ベイナイトが形成し、降伏強度のばらつきが増大した。
試験例13の鋼管は、Bの含有率が低かったため、鋼のベイナイト変態温度が上昇し、熱間圧延後の一次冷却中にフェライトが生成され、降伏強度及び引張強度が低下した。
試験例14の鋼管は、Cの含有率が低かったため、降伏強度及び引張強度が低下した。
試験例15の鋼管は、Cの含有率が高すぎたため、島状マルテンサイトの面積率が8%となり、シャルピー吸収エネルギーが大幅に低下した。
試験例16の鋼管は、Mnの含有率が低かったため、降伏強度及び引張強度が低下した。

Claims (3)

  1. 化学成分が、質量%で、
    C:0.06〜0.12%、
    Si:0.40%以下、
    Mn:1.50〜1.90%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0050%以下、
    Al:0.100%以下、
    Ti:0.010〜0.030%、
    Nb:0.010〜0.050%、
    B:0.0005〜0.0020%、
    N:0.010%以下
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    溶接部及び溶接熱影響部を除く母材部の組織が、90面積%以上の上部ベイナイトと、0.5〜5面積%の島状マルテンサイト(MA)と、残部組織とからなり、
    前記島状マルテンサイト(MA)の長径が2.0μm以下であり、
    前記母材部の降伏強度が760MPa以上970MPa以下、引張強度が860MPa以上、降伏強度ばらつきが100MPa以下である油井用高強度電縫鋼管。
  2. 更に質量%で、
    Ni:0.50%以下、
    Cu:0.50%以下、
    Mo:0.50%以下、
    Cr:0.50%以下、
    V:0.10%以下、
    Ca:0.0050%以下
    の一種または二種以上を含有する請求項1記載の油井用高強度電縫鋼管。
  3. 前記母材部の0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが60J以上である請求項1または請求項2記載の油井用高強度電縫鋼管。
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