JP2015189984A - 低降伏比高強度高靭性鋼板、低降伏比高強度高靭性鋼板の製造方法および鋼管 - Google Patents
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Abstract
【課題】−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上と高靱性を示し、降伏比が85%と低く、API 5L X80以上としても上記低降伏比および高靭性を両立できる低降伏比高強度高靭性鋼板を提供する。【解決手段】鋼組織が、ベイナイトと島状マルテンサイトとからなり、鋼組織において、島状マルテンサイトの面積率が2〜15%であり、長径が3.5μm以上である島状マルテンサイトが、個数密度で0.010個/μm2以下であり、降伏比が85%以下であり、−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上であることを特徴とする低降伏比高強度高靭性鋼板とする。【選択図】図1
Description
本発明は、300℃以下のコーティング処理後の材質劣化が小さく、ラインパイプ用の素材として好ましく利用できる低降伏比高強度高靭性鋼板、当該低降伏比高強度高靭性鋼板の製造方法および低降伏比高強度高靭性鋼板を用いて製造してなる鋼管に関する。
近年、天然ガスや原油の輸送用として使用されるラインパイプには、高圧化による輸送効率の向上や薄肉化による現地溶接施工効率の向上のため、高強度であることが要求される。特に、天然ガス輸送パイプラインにおいてパイプに延性亀裂が生じた場合、延性亀裂が進展し大規模な損害の発生が想定される。上記延性亀裂の亀裂伝播速度を抑えるために、ラインパイプの素材となる鋼板には、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(以下、シャルピー衝撃吸収エネルギーと記載する場合がある)が高いことが要求される。つまり、高靭性であることが要求される。
また、上記ラインパイプの素材となる鋼板には、高強度、高靭性に加え、地盤変動などの観点から、降伏比(以下、YRと記載する場合がある)を低くすることも要求されている。
一般に、降伏比を低下させる方法として、鋼板の鋼組織を調整する方法が知られている。具体的には、フェライトのような軟質相中に、ベイナイトやマルテンサイトなどの硬質相が適度に分散した組織とすることが有効であることが知られている。
上記のような軟質相の中に硬質相が適度に分散した組織を得る製造方法として、特許文献1には、焼入れと焼戻しの中間に、フェライトとオーステナイトの2相域から焼入れを施す熱処理方法が開示されている。
特許文献1に開示される複雑な熱処理を行わずに低降伏比を達成する技術として、特許文献2には、Ar3温度以上で鋼板の圧延を終了し、その後の加速冷却速度と冷却停止温度を制御する方法が開示されている。この特許文献2の方法によれば、針状フェライトとマルテンサイトの2相組織とし、低降伏比を達成することができるとされている。
また、特許文献3および4には、フェライトあるいはベイナイト中に島状マルテンサイト(Martensite−Austenite constituentのこと、以下、MAと記載する場合がある)などの硬質相を分散させて、低YRと高シャルピー衝撃吸収エネルギーを両立させることが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、熱処理工程が増加するため、生産性が低下し、製造コストの増加を招くという問題がある。
また、特許文献2に記載の技術では、その実施例が示すように、引張強さで490N/mm2(50kg/mm2)以上の鋼板とするために、鋼板の炭素含有量を高めるか、あるいはその他の合金元素の添加量を増やした成分組成とする必要がある。このため、特許文献2に記載の技術では、素材の製造コストの上昇を招くだけでなく、溶接熱影響部靭性の劣化の問題も生じる場合がある。
さらに、特許文献3に記載の技術では、鋼組織をベイナイトと、MAと、擬ポリゴナルフェライトとから構成される3相組織とし、ベイナイトおよびMAの面積率と、MAの円相当径を調整することで、低降伏比と高いシャルピー衝撃吸収エネルギーを達成している。しかし、特許文献3では、API 5L X65およびX70を対象としているため、X80以上でのシャルピー衝撃吸収エネルギーの低下が懸念される。
そこで、本発明は、引張強さが625N/mm2以上というX80相当の強度を有し、−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上と高靱性を示し、降伏比が85%と低く、API 5L X80以上としても上記低降伏比および高靭性を両立できる低降伏比高強度高靭性鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、目標とするシャルピー衝撃吸収エネルギーを達成するために、許容されるMAサイズおよびMAの個数密度を定量化した。なお、MAは、3%ナイタール溶液(nital:硝酸アルコール溶液)で鋼板をエッチング後、電解エッチングして鋼板を観察すると、容易に識別可能である。
図1に示すようなシャルピー衝撃試験後の試験片断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した結果、粗大なMAを起点としてボイドが発生していることが確認された。図1中の1はMA、2はボイドを示す。
後述する表2のNo.3の鋼を用い、シャルピー衝撃試験によりMAを起点としてボイドが発生する頻度を測定し、当該頻度とMA長径との関係を求めた。すると、図2に示すような関係が得られた。図2に示す関係から、MAからボイドが発生する頻度は、MAの長径が3.5μm以上の場合に急激に大きくなることがわかった。
また、図3に示すように、長径が3.5μm以上のMAの個数密度と−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーとの関係を求めた。これらの結果より、−20℃で200Jを超えるような高いシャルピー衝撃吸収エネルギーを得るためには、長径が3.5μm以上のMAの個数密度を0.010個/μm2以下とする必要があることを知見した。なお、図3に示す結果は、後述する表2のNo.3、4、6、8、17の鋼を用いることで得られた。
さらに、−20℃で250Jを超えるような非常に高いシャルピー衝撃吸収エネルギーを得るためには、長径が3.5μm以上のMAの個数密度を0.005個/μm2以下とする必要があることを知見した。
次に、適正な成分組成と鋼板の製造方法について鋭意検討した結果、以下の知見(a)〜(c)を得た。
(a)オーステナイト安定化元素であるMnを適量添加することで、オーステナイトが安定化する。この安定化により、Cu、Niなどの高価な合金元素を多量添加しなくても硬質なMAの生成が可能となる。
(b)熱間圧延時の累積圧下率を、900℃以上のオーステナイト再結晶域で10%以上、900℃未満のオーステナイト未再結晶域で50%以上とすることで、微細なMAを鋼組織中に均一分散させることができる。その結果、低降伏比を維持しながら、シャルピー衝撃吸収エネルギーを向上させることが可能となる。
(c)熱間圧延後の加速冷却において、ベイナイト変態途中すなわち未変態オーステナイトが存在する温度領域で冷却を停止し、その後ベイナイト変態終了温度(以下Bf点と記載する。)以上から再加熱を行うことで、鋼板の鋼組織をベイナイト中にMAが均一に生成した2相組織とすることができる。この2相組織により低降伏比化することが可能となる。
本発明は上記のいずれかの知見に更に検討を加えてなされたものであり、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)鋼組織が、ベイナイトと島状マルテンサイトとからなり、前記鋼組織において、前記島状マルテンサイトの面積率が2〜15%であり、長径が3.5μm以上である島状マルテンサイトが、個数密度で0.010個/μm2以下であり、降伏比が85%以下であり、−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上であることを特徴とする低降伏比高強度高靭性鋼板。
(2)質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.002%以下、Mo:0.05〜0.5%、Al:0.01〜0.08%、N:0.01%以下及びO:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする(1)に記載の低降伏比高強度高靭性鋼板。
(3)さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、V:0.1%以下、Ca:0.005%以下及びB:0.005%以下から選択される1種類または2種類以上を含有することを特徴とする(2)に記載の低降伏比高強度高靭性鋼板。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の低降伏比高強度高靭性鋼板を製造する方法であって、スラブを、1000〜1300℃の温度に加熱するスラブ加熱工程と、前記スラブ加熱工程後のスラブを、900℃以上980℃以下での累積圧下率が10%以上、900℃未満での累積圧下率が50%以上、圧延終了温度がAr3温度以上の条件で熱間圧延し熱延板とする熱間圧延工程と、前記熱延板を、5℃/s以上の冷却速度で500〜650℃から選択される任意の温度まで加速冷却し、その後0.5℃/s以上の昇温速度で550℃〜750℃から選択される任意の温度まで再加熱する再加熱工程と、を備えることを特徴とする低降伏比高強度高靭性鋼板の製造方法。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の低降伏比高強度高靭性鋼板を用いて製造されたことを特徴とする鋼管。
本発明の低降伏比高強度高靭性鋼板は、多量の合金元素を含有しなくても、85%以下の降伏比と、−20℃で200J以上シャルピー衝撃吸収エネルギーとを有する。そして、API 5L X80以上としても上記低降伏比および高靭性を両立できる。
また、本発明によれば、低降伏比かつ高靭性を有する鋼板を、高生産性、低コストで製造することができる。このため、主にラインパイプの素材に好ましく使用できる鋼板を、安価で大量に安定して製造することができ、パイプライン敷設における生産性及び経済性を著しく高めることが可能である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
本発明の低降伏比高強度高靭性鋼板(以下、本発明の鋼板と記載する場合がある)は、鋼組織が調整されているため、降伏比が85%以下になり、−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上になる。先ず、鋼組織について説明する。
本発明の鋼板の鋼組織は、ベイナイトと島状マルテンサイト(MA)からなる実質的に2相組織である。また、上記鋼組織は、ベイナイト中に硬質相であるMAが均一に分散した組織である。ここで、「均一に分散」とは、中心偏析あるいはバンド状にではなくベイナイト中に分散している状態を意味する。このような鋼組織とすることで、低降伏比と高靭性の両立を図っている。特に、API 5L X80以上としても低降伏比かつ高靭性を達成できる点が本発明の特徴の一つである。本発明の鋼板の鋼組織は、より具体的には以下の通りである。
本発明の鋼板の鋼組織において、MAの面積率は2〜15%である。MAの面積率が2%未満では、降伏比を85%以下にすることが困難になる。また、MAの面積率が15%を超えると鋼板の靭性を劣化させる場合がある。
また、上記の通り、本発明の鋼板の鋼組織は、実質的に2相組織であり、MA以外の成分の全て又はほとんどがベイナイトである。したがって、上記鋼組織において、ベイナイトの面積率は85〜98%である。
なお、上記「実質的に2相組織」の「実質的に」とは、本発明の効果を害さない範囲で、ベイナイト、MA以外の相を含んでもよいことを意味する。具体的には、フェライト、パーライト等を合計面積率で5%まで含んでもよい。
本発明の鋼板の鋼組織において、長径が3.5μm以上のMAが個数密度で0.010個/μm2以下である。長径が3.5μm以上のMAが個数密度で0.010個/μm2を超えると鋼板の靭性が劣化する場合がある。好ましくは、長径が3.5μm以上のMAが個数密度で0.005個/μm2以下である。
なお、MA等の相の面積率は、例えばSEM(走査型電子顕微鏡観察)により得られた少なくとも4視野以上のミクロ組織写真を画像処理したものから、MA等の占める面積率を算出することで得ることができる。また、長径3.5μm以上のMAの個数密度は、SEM観察により得られたミクロ組織写真を画像処理し、この画像処理で得られた画像から個々のMAの長径を測定し、長径が3.5μmのMAの個数を求め、それらを測定面積で割ることにより求めることができる。
本発明の鋼板の成分組成は特に限定されないが、質量%で、C:0.030〜0.08%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.002%以下、Mo:0.05〜0.5%、Al:0.01〜0.08%、N:0.01%以下及びO:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることが好ましい。
また、本発明の鋼板は、必要に応じて、質量%で、Cu:0.5%、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、V:0.1%以下、Ca:0.005%以下及びB:0.005%以下から選択される1種類または2種類以上を含有することが好ましい。
以下、上記成分について説明する。なお、成分の説明における「%」は「質量%」を意味する。
C:0.030〜0.08%
Cは炭化物として析出強化に寄与し、かつMAを生成させる元素である。Cの含有量が0.030%未満ではMAの生成が不十分になり、降伏比が高くなる場合がある。また、Cの含有量が0.08%を超えると、鋼板の靭性および溶接熱影響部(HAZ)靭性の劣化を招く場合がある。そこで、本発明の鋼板はC含有量が0.030〜0.08%であることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜0.08%である。
Cは炭化物として析出強化に寄与し、かつMAを生成させる元素である。Cの含有量が0.030%未満ではMAの生成が不十分になり、降伏比が高くなる場合がある。また、Cの含有量が0.08%を超えると、鋼板の靭性および溶接熱影響部(HAZ)靭性の劣化を招く場合がある。そこで、本発明の鋼板はC含有量が0.030〜0.08%であることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜0.08%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは脱酸のため添加する。Siの含有量が0.05%未満では脱酸効果が十分でない場合がある。また、Siの含有量が0.5%を超えると靭性や溶接性の劣化を招く場合がある。そこで、本発明では、Siの含有量を0.05〜0.5%にすることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜0.3%である。
Siは脱酸のため添加する。Siの含有量が0.05%未満では脱酸効果が十分でない場合がある。また、Siの含有量が0.5%を超えると靭性や溶接性の劣化を招く場合がある。そこで、本発明では、Siの含有量を0.05〜0.5%にすることが好ましい。さらに好ましくは、0.05〜0.3%である。
Mn:1.2〜2.5%
Mnは鋼板の強度、靭性、さらに焼入性を向上させる元素である。また、Mnは、MAの生成を促す元素である。Mnの含有量が1.2%未満ではその効果が十分でなく、MAの生成が不十分になり、降伏比が高くなる場合がある。また、Mnの含有量が2.5%を超えると鋼板の靭性と溶接性が劣化する場合がある。そこで、Mn含有量を1.2〜2.5%にすることが好ましい。さらに好ましくは、1.5〜2.0%である。
Mnは鋼板の強度、靭性、さらに焼入性を向上させる元素である。また、Mnは、MAの生成を促す元素である。Mnの含有量が1.2%未満ではその効果が十分でなく、MAの生成が不十分になり、降伏比が高くなる場合がある。また、Mnの含有量が2.5%を超えると鋼板の靭性と溶接性が劣化する場合がある。そこで、Mn含有量を1.2〜2.5%にすることが好ましい。さらに好ましくは、1.5〜2.0%である。
P:0.015%以下
本発明において、鋼板中のPの含有量が多いと、中央偏析が著しく、鋼板の靭性と溶接性が劣化する場合がある。このため、本発明ではPの含有量を0.015%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01%以下である。なお、本発明において、Pは不可避的不純物元素として含まれる場合もあるが、本発明の鋼板はPを含まなくてもよい。
本発明において、鋼板中のPの含有量が多いと、中央偏析が著しく、鋼板の靭性と溶接性が劣化する場合がある。このため、本発明ではPの含有量を0.015%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01%以下である。なお、本発明において、Pは不可避的不純物元素として含まれる場合もあるが、本発明の鋼板はPを含まなくてもよい。
S:0.002%以下
Sは、一般的に鋼中においてMnS介在物となり、鋼板の靭性を劣化させる。このため、Sの含有量は少ないほど好ましく、本発明の鋼板はSを含まなくてもよい。しかし、Sの含有量が0.002%以下であれば、本発明の効果を害さない。このため、本発明において、S含有量の上限を0.002%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0015%以下である。
Sは、一般的に鋼中においてMnS介在物となり、鋼板の靭性を劣化させる。このため、Sの含有量は少ないほど好ましく、本発明の鋼板はSを含まなくてもよい。しかし、Sの含有量が0.002%以下であれば、本発明の効果を害さない。このため、本発明において、S含有量の上限を0.002%とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.0015%以下である。
Mo:0.05〜0.5%
Moは焼入性を向上させ、MA生成を促す元素である。Moの含有量が0.05%未満であると、その効果が十分でなく、MAの生成が不十分になり、降伏比が高くなる場合がある。また、Moの含有量が0.5%を超えると、溶接熱影響部靭性の劣化を招く場合がある。そこで、本発明においては、Mo含有量を0.05〜0.5%にすることが好ましい。さらに好ましくは、0.10〜0.3%である。
Moは焼入性を向上させ、MA生成を促す元素である。Moの含有量が0.05%未満であると、その効果が十分でなく、MAの生成が不十分になり、降伏比が高くなる場合がある。また、Moの含有量が0.5%を超えると、溶接熱影響部靭性の劣化を招く場合がある。そこで、本発明においては、Mo含有量を0.05〜0.5%にすることが好ましい。さらに好ましくは、0.10〜0.3%である。
Al:0.01〜0.08%
Alは脱酸剤として添加される。Alの含有量が0.01%未満では脱酸効果が不十分になる場合がある。Alの含有量が0.08%を超えると鋼の清浄度が低下し、靭性が劣化する場合がある。そこで、Al含有量は0.08%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01〜0.07%とする。
Alは脱酸剤として添加される。Alの含有量が0.01%未満では脱酸効果が不十分になる場合がある。Alの含有量が0.08%を超えると鋼の清浄度が低下し、靭性が劣化する場合がある。そこで、Al含有量は0.08%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01〜0.07%とする。
N:0.010%以下
Nは溶接熱影響部の靭性を劣化させる場合がある。そこで、本発明では、N含有量の上限を0.010%とすることが好ましい。さらに好ましいN含有量は、0.007%以下である。なお、本発明において、Nは不可避的不純物元素として含まれる場合もあるが、本発明の鋼板はNを含まなくてもよい。
Nは溶接熱影響部の靭性を劣化させる場合がある。そこで、本発明では、N含有量の上限を0.010%とすることが好ましい。さらに好ましいN含有量は、0.007%以下である。なお、本発明において、Nは不可避的不純物元素として含まれる場合もあるが、本発明の鋼板はNを含まなくてもよい。
O:0.0050%以下
Oは粗大な介在物生成の原因となり、鋼板の靭性を劣化させる場合がある。そこで、本発明においては、O含有量の上限を0.0050%とすることが好ましい。さらに好ましいO含有量の範囲は、0.0045%以下である。なお、本発明においてOは不可避的不純物元素として含まれる場合もあるが、本発明の鋼板はOを含まなくてもよい。
Oは粗大な介在物生成の原因となり、鋼板の靭性を劣化させる場合がある。そこで、本発明においては、O含有量の上限を0.0050%とすることが好ましい。さらに好ましいO含有量の範囲は、0.0045%以下である。なお、本発明においてOは不可避的不純物元素として含まれる場合もあるが、本発明の鋼板はOを含まなくてもよい。
以上が本発明の鋼板に含有されることが好ましい基本成分である。また、鋼板の強度・靭性をさらに改善し、且つ耐HIC特性を向上する目的で、本発明の鋼板は、Cu、Ni、Cr、Nb、Ti、V、Ca、Bの1種類または2種類以上を含有してもよい。
Cu:0.5%以下
Cuは鋼の焼入れ性向上に寄与する。焼入れ性向上のためにはCuの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。ただし、Cuの含有量が0.5%を超えると、鋼板の靭性が劣化する場合がある。このため、Cuを含有する場合には、その含有量を0.5%以下にすることが好ましい。
Cuは鋼の焼入れ性向上に寄与する。焼入れ性向上のためにはCuの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。ただし、Cuの含有量が0.5%を超えると、鋼板の靭性が劣化する場合がある。このため、Cuを含有する場合には、その含有量を0.5%以下にすることが好ましい。
Ni:0.5%以下
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。靭性および強度を改善する効果を得るために、Ni含有量は0.05%以上とすることが好ましい。ただし、Ni含有量が0.5%を超えるとNiを含有することによる効果が飽和し、むしろコスト的に不利になる。このため、Niを含有する場合には、その含有量は0.5%以下にすることが好ましい。
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。靭性および強度を改善する効果を得るために、Ni含有量は0.05%以上とすることが好ましい。ただし、Ni含有量が0.5%を超えるとNiを含有することによる効果が飽和し、むしろコスト的に不利になる。このため、Niを含有する場合には、その含有量は0.5%以下にすることが好ましい。
Cr:0.5%以下
Crを含有すれば、C含有量が低い場合でも、鋼板に十分な強度を付与することができる。この効果を得るためには、Cr含有量を0.05%以上にすることが好ましい。ただし、Cr含有量が0.5%を超えると溶接性が劣化する。このため、Crを含有する場合には、その含有量は0.5%以下が好ましい。
Crを含有すれば、C含有量が低い場合でも、鋼板に十分な強度を付与することができる。この効果を得るためには、Cr含有量を0.05%以上にすることが好ましい。ただし、Cr含有量が0.5%を超えると溶接性が劣化する。このため、Crを含有する場合には、その含有量は0.5%以下が好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは組織を微細化させ、鋼板の靭性を向上させる。また、Nbは炭化物を形成し、鋼板の強度上昇に寄与する。これらの効果を得るためには、Nbの含有量を0.005%以上にすることが好ましい。ただし、Nbの含有量が0.1%を超えると、溶接熱影響部靭性が劣化する。このため、Nbを含有する場合には、その含有量を0.1%以下にすることが好ましい。
Nbは組織を微細化させ、鋼板の靭性を向上させる。また、Nbは炭化物を形成し、鋼板の強度上昇に寄与する。これらの効果を得るためには、Nbの含有量を0.005%以上にすることが好ましい。ただし、Nbの含有量が0.1%を超えると、溶接熱影響部靭性が劣化する。このため、Nbを含有する場合には、その含有量を0.1%以下にすることが好ましい。
Ti:0.1%以下
TiはTiNのピニング効果により、スラブ加熱時のオーステナイト粗大化を抑制し、鋼板の靭性を向上させる。また、Tiは固溶Nを低減し歪時効による降伏比上昇を抑制する。これらの効果を得るためにはTiの含有量を0.005%以上にすることが好ましい。ただし、Tiの含有量が0.1%を超えると溶接熱影響部靭性が劣化する。このため、Tiを含有する場合には、その含有量は0.1%以下にすることが好ましい。
TiはTiNのピニング効果により、スラブ加熱時のオーステナイト粗大化を抑制し、鋼板の靭性を向上させる。また、Tiは固溶Nを低減し歪時効による降伏比上昇を抑制する。これらの効果を得るためにはTiの含有量を0.005%以上にすることが好ましい。ただし、Tiの含有量が0.1%を超えると溶接熱影響部靭性が劣化する。このため、Tiを含有する場合には、その含有量は0.1%以下にすることが好ましい。
V:0.1%以下
Vは組織を微細化させ、鋼板の靭性を向上させる。また、Vは炭化物を形成し、鋼板の強度の向上に寄与する。これらの効果を得るためにはVの含有量を0.0005%以上にすることが好ましい。ただし、Vの含有量が0.1%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。このため、Vを含有する場合には、その含有量は0.1%以下にすることが好ましい。
Vは組織を微細化させ、鋼板の靭性を向上させる。また、Vは炭化物を形成し、鋼板の強度の向上に寄与する。これらの効果を得るためにはVの含有量を0.0005%以上にすることが好ましい。ただし、Vの含有量が0.1%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。このため、Vを含有する場合には、その含有量は0.1%以下にすることが好ましい。
Ca:0.005%以下
Caは硫化物系介在物の形態制御による靭性改善に有効な元素である。この効果を得るためにはCaの含有量は0.0005%以上が好ましい。ただし、Ca含有量が0.005%を超えても上記効果が高まることなく飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させる場合がある。このため、Caを含有する場合には、その含有量を0.005%以下にすることが好ましい。
Caは硫化物系介在物の形態制御による靭性改善に有効な元素である。この効果を得るためにはCaの含有量は0.0005%以上が好ましい。ただし、Ca含有量が0.005%を超えても上記効果が高まることなく飽和し、むしろ、鋼の清浄度の低下により靭性を劣化させる場合がある。このため、Caを含有する場合には、その含有量を0.005%以下にすることが好ましい。
B:0.005%以下
Bは強度上昇、溶接熱影響部の靭性改善に有効な元素である。これらの効果を得るためにはBの含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。ただし、Bの含有量が0.005%を超えると溶接性が劣化する。このため、Bを含有する場合には、その含有量を0.005%以下にすることが好ましい。
Bは強度上昇、溶接熱影響部の靭性改善に有効な元素である。これらの効果を得るためにはBの含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。ただし、Bの含有量が0.005%を超えると溶接性が劣化する。このため、Bを含有する場合には、その含有量を0.005%以下にすることが好ましい。
上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を害さない範囲であれば、本発明の鋼板は、上記以外のその他の元素を含有してもよい。上記不可避的不純物には、原料に含まれる不純物、製造過程で混入する不純物のみならず、意図的に添加される上記その他の元素も含む。たとえば、溶接部の特性向上などを目的として、0.005%以下のMg、あるいは、0.01%以下のREMを含有することも、本発明において許容される。
本発明の上記鋼板を用いて、本発明の鋼管を製造できる。本発明の鋼板は低降伏比、高靭性であるため、本発明の鋼管はラインパイプ用として好ましい。本発明の鋼管は従来公知の方法で製造できる。
続いて、本発明の鋼板の製造方法について説明する。本発明の鋼板の製造方法は特に限定されないが、以下の工程を有することが好ましい。
(スラブ加熱工程)スラブを、1000〜1300℃の温度に加熱する。
(熱間圧延工程)スラブ加熱工程後のスラブを、900℃以上980℃以下での累積圧下率が10%以上、900℃未満での累積圧下率が50%以上、圧延終了温度がAr3温度以上の条件で熱間圧延し熱延板とする。
(冷却・再加熱工程)熱延板を、5℃/s以上の冷却速度で500〜650℃から選択される任意の温度まで加速冷却し、その後0.5℃/s以上の昇温速度で550℃〜750℃から選択される任意の温度まで再加熱する。
(スラブ加熱工程)スラブを、1000〜1300℃の温度に加熱する。
(熱間圧延工程)スラブ加熱工程後のスラブを、900℃以上980℃以下での累積圧下率が10%以上、900℃未満での累積圧下率が50%以上、圧延終了温度がAr3温度以上の条件で熱間圧延し熱延板とする。
(冷却・再加熱工程)熱延板を、5℃/s以上の冷却速度で500〜650℃から選択される任意の温度まで加速冷却し、その後0.5℃/s以上の昇温速度で550℃〜750℃から選択される任意の温度まで再加熱する。
以下、各工程について説明する。各工程の説明における温度は、鋼板の板厚方向中央部の温度とする。板厚方向中央部温度は、スラブもしくは鋼板の中央部に熱電対を挿入し、直接測定したり、あるいは、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータを用いて差分法などの伝熱計算によって算出することにより把握することができる。また、冷却速度は、熱間圧延終了後、冷却停止(終了)温度まで冷却に必要な温度差をその冷却を行うのに要した時間で割った平均冷却速度である。また、再加熱速度(昇温速度)は、冷却後、再加熱温度までの再加熱に必要な温度差を再加熱するのに要した時間で割った平均昇温速度である。
スラブ加熱工程では、例えば、上記成分組成を有するスラブを1000〜1300℃の温度に加熱する。加熱温度が1000℃未満では炭化物の固溶が不十分で必要な強度が得られない場合がある。また、加熱温度が1300℃を超えると鋼板の靭性が劣化する場合がある。そこで、本発明では、加熱温度を1000〜1300℃とすることが好ましい。
熱間圧延工程では、900℃以上980℃以下での累積圧下率を10%以上とする。900℃以上980℃以下の温度域における累積圧下量を10%以上にすることにより、オーステナイト粒を均一に微細化し、その後、旧オーステナイト粒界に生成するMAの生成サイトを均一に分散させることができる。MAの微細化および均一分散化により、靭性の改善が図れる。また、900℃以上980℃以下の温度域における累積圧下量を10%以上にすることにより、MAの生成サイトがさらに増え、MAの粗大化を抑制できる。そこで、900℃以上での累積圧下量を10%以上にすることが好ましい。より好ましくは、900℃以上980℃以下での累積圧下率を15%以上とすることである。
熱間圧延工程では、900℃未満での累積圧下率を50%以上とする。900℃未満の温度域における累積圧下率を50%以上とすることにより、オーステナイト粒を微細化することができ、旧オーステナイト粒界に生成するMAの生成サイトが増え、MAの粗大化を抑制できる。MAの微細化により、靭性の改善が図れる。このため、900℃未満の累積圧下率は50%以上が好ましい。より好ましくは、900℃未満での累積圧下率が55%以上である。
熱間圧延工程では、圧延終了温度をAr3温度以上とする。圧延終了温度がAr3温度未満であると、その後のフェライト変態速度が低下し、圧延による塑性歪がフェライト相中に残存してフェライト強度が高くなり、フェライト相とベイナイト相の硬度差が低下する。その結果、所望の降伏比が達成できなくなる。そこで、圧延終了温度をAr3温度以上にすることが好ましい。より好ましくは、圧延終了温度が(Ar3温度+50℃)以上である。
なお、Ar3温度は、以下の式より計算される。
Ar3(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo
なお、元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
Ar3(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo
なお、元素記号は各元素の含有量(質量%)を示す。
冷却・再加熱工程では、先ず、熱間圧延工程後の熱延板を加速冷却する。加速冷却の際の冷却速度は5℃/s以上とすることが好ましい。冷却速度が5℃/s未満では冷却時にパーライトを生成し、十分な強度や低降伏比が得られない場合がある。
上記加速冷却において、冷却開始温度はAr3温度以上がフェライト生成による靭性劣化を抑えやすいという理由で好ましい。
上記加速冷却において、冷却停止温度は500〜650℃から選択される任意の温度とする。冷却停止温度は本発明において、重要な製造条件である。本発明では再加熱後に存在するCの濃縮した未変態オーステナイトがその後の空冷時にMAへと変態する。すなわち、ベイナイト変態途中の未変態オーステナイトが存在する温度域で冷却を停止する必要がある。冷却停止温度が500℃未満では、ベイナイト変態が完了するため空冷時にMAが生成せず低降伏比化が達成できない。冷却停止温度が650℃を超えると冷却中に析出するパーライトにCが消費されMAが生成しない。そこで、本発明では、加速冷却の冷却停止温度を500〜650℃から選択される任意の温度とすることが好ましい。
本発明においては、加速冷却後、直ちに再加熱を行うことが好ましい。「直ちに」とは製造効率や熱処理に要する燃料コストを削減する観点から、冷却停止の後120秒以内であることが好ましい。未変態オーステナイトが存在する状態から再加熱を行うことが好ましいからである。
確実にフェライト変態させるCを未変態オーステナイトへ濃化させるためには、再加熱の際に、再加熱開始温度より50℃以上昇温することが望ましい。
また、再加熱工程では、昇温速度を0.5℃/s以上、再加熱温度(再加熱したときの到達温度)を550〜750℃から選択される任意の温度とすることが好ましい。このプロセスも本発明において重要な製造条件である。再加熱時の未変態オーステナイトからフェライト変態と、それに伴う未変態オーステナイトへのCの排出により、再加熱後の空冷時にCが濃化した未変態オーステナイトがMAへと変態する。このようなMAを得るためには、加速冷却後Bf点以上の温度から550〜750℃から選択される任意の温度まで再加熱する必要がある。
上記再加熱の際の昇温速度が0.5℃/s未満では、目的の再加熱温度に達するまでに長時間を要するため製造効率が悪化する。また、昇温速度が0.5℃/s未満では、パーライト変態が生じるためMAが得られず、十分な低降伏比を得ることができない。
上記再加熱の際の、再加熱温度が550℃未満では、フェライト変態が十分起こらずCの未変態オーステナイトへの排出が不十分となり、MAが生成せず低降伏比化を達成できない。また、再加熱温度が750℃を超えると、ベイナイトの軟化により十分な強度が得られない。そこで、再加熱温度を550〜750℃から選択される任意の温度とすることが好ましい。
なお、再加熱後の冷却速度は基本的には空冷とすることが好ましい。
本発明は上述の方法によって製造された鋼板を用いて鋼管となす。鋼管の成形方法としては、UOEプロセスやプレスベンド(ベンディングプレスとも称する)等の冷間成形によって鋼管形状に成形する方法が挙げられる。
UOEプロセスでは、素材となる厚鋼板の幅方向端部に開先加工を施したのち、プレス機を用いて鋼板の幅方向端部の端曲げを行い、続いて、プレス機を用いて鋼板をU字状にそしてO字状に成形することにより、鋼板の幅方向端部同士が対向するように鋼板を円筒形状に成形する。次いで、鋼板の対向する幅方向端部をつき合わせて溶接する。この溶接をシーム溶接と呼ぶ。このシーム溶接においては、円筒形状の鋼板を拘束し、対向する鋼板の幅方向端部同士を突き合わせて仮付溶接する仮付溶接工程と、サブマージアーク溶接法によって鋼板の突き合わせ部の内外面に溶接を施す本溶接工程との、二段階の工程を有する方法が好ましい。シーム溶接を行った後に、溶接残留応力の除去と鋼管真円度の向上のため、拡管を行う。拡管工程において拡管率(拡管前の管の外径に対する拡管前後の外径変化量の比)は、通常、0.3%〜1.5%の範囲で実施される。真円度改善効果と拡管装置に要求される能力とのバランスの観点から、拡管率は0.5%〜1.2%の範囲であることが好ましい。
プレスベンドの場合には、鋼板に三点曲げを繰り返すことにより逐次成形し、ほぼ円形の断面形状を有する鋼管を製造する。その後は、上述のUOEプロセスと同様に、シーム溶接を実施する。プレスベンドの場合にも、シーム溶接の後、拡管を実施してもよい。
表1に示す成分組成の鋼(鋼種A〜J)を用い、表2に示す条件で板厚20mm〜28mmの鋼板を製造した。なお、表2中の、加熱温度、圧延終了温度、冷却停止(終了)温度及び、再加熱温度等の温度は鋼板の中央部温度とした。中央部温度は、スラブもしくは鋼板の中央部に熱電対を挿入し、直接測定、あるいは、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータを用いて差分法などの伝熱計算によって算出した。
また、冷却速度は、熱間圧延終了後、冷却停止(終了)温度まで冷却に必要な温度差をその冷却を行うのに要した時間で割った平均冷却速度である。また、再加熱速度(昇温速度)は、冷却後、再加熱温度までの再加熱に必要な温度差を再加熱するのに要した時間で割った平均昇温速度である。
上記のように製造した鋼板の板幅中央部より鋼組織観察用サンプルを採取し、圧延長手方向と平行な板厚断面を鏡面研磨した後、2段エッチング法を用いてMAを出現させた。その後、SEMを用い、2000倍の倍率で無作為に5視野について鋼組織写真を撮影し、写真中のMAの面積率および長径を画像解析装置にて測定した。なお、MA以外のほとんどはベイナイトであった。
次に、それぞれの鋼板から圧延長手方向と直行する方向が、試験片長手方向となるようにAPI−5Lに準拠した全厚引張試験片、および板厚中央部よりJIS Z2202(1980改訂版)のVノッチシャルピー衝撃試験片を採取し、引張試験およびシャルピー衝撃試験(JIS Z2242)を実施して、強度と靭性を評価した。
次に、それぞれの鋼板から圧延長手方向と平行する方向が、試験片長手方向となるようにAPI−5Lに準拠した全厚引張試験片を採取し、引張試験を実施して、0.5%降伏強度と引張強度から降伏比を算出した。
母材の金属組織の画像解析結果をおよび強度、靭性調査結果を表2に併せて示す。
表2において、本発明例であるNo.1〜6はいずれも、引張強度625MPa以上の高強度で降伏比85%以下、−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギー200J以上を示した。
また、本発明例では、鋼板の組織はベイナイトとMAであり、島状マルテンサイトの体積分率が2〜15%であり、長径3.5μm以上のMAが個数密度で0.010個/μm2以下であった。
一方、比較例であるNo.7〜13は、降伏比、シャルピー衝撃吸収エネルギーのいずれかが不十分であった。
1 島状マルテンサイト(MA)
2 ボイド
2 ボイド
Claims (5)
- 鋼組織が、ベイナイトと島状マルテンサイトとからなり、
前記鋼組織において、前記島状マルテンサイトの面積率が2〜15%であり、
長径が3.5μm以上である島状マルテンサイトが、個数密度で0.010個/μm2以下であり、
降伏比が85%以下であり、
−20℃でのシャルピー衝撃吸収エネルギーが200J以上であることを特徴とする低降伏比高強度高靭性鋼板。 - 質量%で、C:0.030〜0.08%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.015%以下、S:0.002%以下、Mo:0.05〜0.5%、Al:0.01〜0.08%、N:0.01%以下及びO:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする請求項1に記載の低降伏比高強度高靭性鋼板。
- さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、V:0.1%以下、Ca:0.005%以下及びB:0.005%以下から選択される1種類または2種類以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の低降伏比高強度高靭性鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の低降伏比高強度高靭性鋼板を製造する方法であって、
スラブを、1000〜1300℃の温度に加熱するスラブ加熱工程と、
前記スラブ加熱工程後のスラブを、900℃以上980℃以下での累積圧下率が10%以上、900℃未満での累積圧下率が50%以上、圧延終了温度がAr3温度以上の条件で熱間圧延し熱延板とする熱間圧延工程と、
前記熱延板を、5℃/s以上の冷却速度で500〜650℃から選択される任意の温度まで加速冷却し、その後0.5℃/s以上の昇温速度で550℃〜750℃から選択される任意の温度まで再加熱する再加熱工程と、を備えることを特徴とする低降伏比高強度高靭性鋼板の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の低降伏比高強度高靭性鋼板を用いて製造されたことを特徴とする鋼管。
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