JP6551770B2 - 不織布およびそれを用いた空気清浄機、ならびに不織布の製造方法 - Google Patents

不織布およびそれを用いた空気清浄機、ならびに不織布の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鞘芯構造を有する繊維(ナノファイバ)を含む不織布およびそれを用いた空気清浄機、ならびに不織布の製造方法に関する。
繊維の不織布は、濾材の他、様々な用途に利用されている。近年では、表面積を大きくできる観点から、nmからサブμmオーダーの繊維経を有するナノファイバを用いた不織布を濾材などの用途に利用することも検討されている。例えば、特許文献1には、ナノファイバである短繊維Aと、0.1dtex以上の単繊維繊度を有するバインダ繊維Bとを含む湿式不織布が提案されている。特許文献1には、このような不織布がフィルターなどに利用できることが教示されている。
国際公開第2008/130019号パンフレット
濾材用途では、高い捕集性能(集塵性能など)が求められるが、一般に、捕集性能を高めると、圧力損失が大きくなり、実用性が低下する。
本発明の目的は、圧力損失を抑制しながら、捕集性能に優れる不織布およびそれを備えた空気清浄機、ならびに不織布の製造方法を提供することである。
本発明の一局面は、芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、
前記芯部は、第1ポリマーを含み、
前記鞘部は、第2ポリマーを含み、
前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーよりも極性が小さい、不織布に関する。
第1局面に係る不織布では、前記第1ポリマーは、ポリエーテルスルホンおよびポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
第2局面に係る不織布では、前記ナノファイバは、前記芯部の一部の表面が露出した露出部を有し、前記芯部の表面において、前記露出部の面積が前記鞘部の面積よりも大きい。
本発明の他の一局面は、芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、
前記芯部は、第1ポリマーを含み、
前記鞘部は、第2ポリマーを含み、
前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーよりも誘電率が低い、不織布に関する。
第3局面に係る不織布では、前記第1ポリマーは、ポリエーテルスルホンおよびポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一種を含む。
第4局面に係る不織布では、前記ナノファイバは、前記芯部の一部の表面が露出した露出部を有し、前記芯部の表面において、前記露出部の面積が前記鞘部の面積よりも大きい。
本発明の別の一局面は、気体の吸い込み部と、
気体の吐き出し部と、
前記吸い込み部と前記吐き出し部との間に配置された上記の不織布と、を備えた空気清浄機に関する。
本発明のさらに別の一局面は、第1ポリマーまたはその前駆体と前記第1ポリマーよりも極性が小さい第2ポリマーとを含む第1溶液を調製する第1工程、
ナノファイバ形成空間において、前記第1溶液から静電気力によりナノファイバを生成させ、生成した前記ナノファイバを堆積させて不織布を形成する第2工程と、を含み、
前記ナノファイバは、前記第1ポリマーを含む芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆い、かつ前記第2ポリマーを含む鞘部とを含む、不織布の製造方法に関する。
圧力損失を抑制しながら、集塵性などの捕集性を高めることができる不織布を提供できる。このような不織布は、空気清浄機の濾材用途などに適している。
本発明の一実施形態に係る不織布の製造方法において、不織布を得るためのシステムの構成を概略的に示す図である。 図1の放出部42Aを概略的に示す正面図である。 図1の放出部42Aを概略的に示す側面図である。 放出体を概略的に示す拡大断面図である。 本発明の一実施形態に係る空気清浄機を概略的に示す一部切り欠き斜視図である。 実施例1の不織布の電子顕微鏡写真である。 図6の部分Aを拡大した写真である。 比較例1の不織布の電子顕微鏡写真である。
[不織布]
本発明の実施形態に係る不織布は、芯部と、芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、芯部は、第1ポリマーを含み、鞘部は、第2ポリマーを含む。ここで、第2ポリマーは、第1ポリマーよりも極性が小さい(または誘電率が低い)。
鞘芯構造を有するナノファイバの鞘部が、極性が小さい(または誘電率が低い)ポリマーを含むことで、ナノファイバの帯電性、ひいては不織布の帯電性を向上できる。その結果、集塵性能などの捕集性能(具体的には、粉塵などの捕集効率)が向上する。
一方、電界紡糸法は、ポリマーの溶融物や溶液を用いて、ナノファイバなどの繊維を比較的容易に作製できる工業的にも優れた手法である。しかし、極性が小さい(または誘電率が低い)ポリマーは、電界紡糸の条件がかなり限定されるため、このようなポリマーを含む繊維を電界紡糸法で工業的に製造することは難しい。電界紡糸し易いポリマーは、極性が大きく、帯電性が低いため、集塵性能などの捕集性能をナノファイバ自体に付与し難い。本実施形態では、鞘芯構造の鞘部に含まれる第2ポリマーよりも極性が大きい(または誘電率が高い)第1ポリマーを芯部が含む。そのため、ナノファイバの捕集性能を確保しながらも、電界紡糸により容易に不織布を形成することができ、不織布の生産性を高めることもできる。
不織布をナノファイバで構成することで、表面積が大きくなり、鞘部の高い帯電性により捕集性能をさらに高めることができる。つまり、不織繊維構造を密にしなくても、高い捕集性能を確保できるため、圧力損失が大きくなるのをさらに抑制することができる。不織布を構成するナノファイバは、電界紡糸法により形成されたものであることが好ましい。
ナノファイバは、芯部の一部の表面が露出した露出部を有していてもよい。また、芯部の表面において、露出部の面積は、鞘部の面積よりも大きくてもよい。このようなナノファイバでは、芯部の表面には部分的に第2ポリマーで形成された鞘部が形成された状態であるため、ナノファイバの表面が粗くなり、不織布の捕集性能をさらに高めることができる。
第2ポリマーの量は、第1ポリマー100質量部に対して、例えば、10〜1000質量部であり、好ましくは20〜500質量部、さらに好ましくは50〜200質量部であってもよい。第2ポリマーの量がこのような範囲である場合、第2ポリマーを芯部の表面に付着させ易く(つまり、鞘部を形成し易く)なる。また、電界紡糸によりナノファイバを作製し易くなる。
以下に、不織布の構成についてより具体的に説明する。
(第1ポリマー)
繊維の芯部を形成する第1ポリマーは、第2ポリマーよりも極性が大きい(または誘電率が高い)。なお、ポリマーの極性は誘電率(比誘電率ε)で表すことができる。
第1ポリマーの誘電率(比誘電率ε)は、周波数10Hzにおいて、例えば、2.7以上であり、3以上または3.4以上であることが好ましい。誘電率の上限は特に制限されないが、例えば、8以下または5以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。第1ポリマーの誘電率は、例えば、2.7〜8、または3〜5であってもよい。第1ポリマーの誘電率がこのような範囲である場合、電界紡糸により繊維を形成し易い。
第1ポリマーの帯電性は第2ポリマーに比べると低い傾向にある。第1ポリマーの体積固有抵抗は、25℃、50%RH(相対湿度)の条件で、1016Ω・cm以下であることが好ましく、5×1015Ω・cm以下または1015Ω・cm以下であることがさらに好ましい。
第1ポリマーとしては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン、ポリエステル(脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートなど)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。これらのポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。芯部は、これらの第1ポリマーを一種含んでもよく、二種以上含んでいてもよい。溶液が調製し易く、電界紡糸し易い(および曳糸性に優れる)観点からは、PES、PAN、および/またはPIなどが好ましい。
第1ポリマーの重量平均分子量Mは、ポリマーの種類にもよるが、例えば、30000〜120000であり、50000〜100000または50000〜80000であることが好ましい。芯部を形成する第1ポリマー(複数のポリマーを含む場合には、各ポリマー)は、第2ポリマーとともに電界紡糸し易くなり、鞘芯構造のナノファイバを形成し易くなる観点から、分子量分布幅ができるだけ狭い方が好ましい。芯部を形成する第1ポリマーの分子量分布幅は第2ポリマーの分子量分布幅よりも狭いことが好ましい。第1ポリマーの重量平均分子量Mの数平均分子量Mに対する比(=M/M)は、1.1〜1.6であることが好ましく、1.1〜1.4であることがさらに好ましい。
なお、本明細書中、ポリマーの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定される分子量分布から求められる値である。
(第2ポリマー)
芯部の表面に付着して鞘部を形成する第2ポリマーは、第1ポリマーよりも極性が小さい(または誘電率が低い)。
第2ポリマーの誘電率(比誘電率ε)は、周波数10Hzにおいて、2.7未満であることが好ましく、さらに好ましくは2〜2.65または2.2〜2.6である。
第1ポリマーの誘電率と第2ポリマーの誘電率との差は、例えば、0.5以上であり、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.9以上であってもよい。
集塵性能などの捕集性能を確保する観点から、第2ポリマーの帯電性は第1ポリマーよりも高いことが望ましい。第2ポリマーの体積固有抵抗は、25℃、50%RHの条件で、例えば、1015Ω・cm以上であり、1016Ω・cm以上または1017Ω・cm以上であることが好ましい。第2ポリマーの体積固有抵抗がこのような範囲である場合、不織布の捕集性能をさらに高めることができる。
第2ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリスチレンなどの芳香族ビニル樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂(アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをモノマー単位として含むポリマーなど)などが挙げられる。第2ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。鞘部は、第2ポリマーを一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。芯部に付着させ易い観点から、PPなどのポリオレフィンが好ましい。
第2ポリマーの重量平均分子量Mは、ポリマーの種類にもよるが、例えば、30000〜150000であり、40000〜120000または50000〜100000であることが好ましい。第2ポリマー(複数のポリマーを含む場合には、個々のポリマー)は、第1ポリマーとともに電界紡糸し易くなり、鞘芯構造のナノファイバが形成し易くなる観点から、分子量分布幅ができるだけ広い方が好ましい。第2ポリマーの重量平均分子量Mの数平均分子量Mに対する比(=M/M)は、1.8〜3.0であることが好ましく、2.0〜3.0であることがさらに好ましい。
ナノファイバにおいて、鞘部は、芯部の少なくとも一部の表面を覆っていればよく、芯部の表面全体を覆っていてもよい。集塵性能などの捕集性能を高める観点からは、芯部の一部の表面が鞘部で覆われており、芯部の表面の残りの部分が露出し、露出部を形成していることが好ましい。
捕集性能を高める観点から、芯部の表面において、露出部の面積は、鞘部の面積よりも大きいことが好ましい。露出部の面積Sの鞘部の面積Sに対する比(=S/S)は、例えば、1.1〜5.0であり、好ましくは1.5〜4.0または2.0〜3.0であってもよい。面積比S/Sは、例えば、電子顕微鏡写真において、所定の領域(例えば、面積が1μmの範囲の領域など)に存在するナノファイバの露出部と鞘部との面積SおよびSを測定し、SをSで除することにより算出することができる。また、複数の箇所(例えば、10箇所)について同様の計算を行い、平均値を算出してもよい。
ナノファイバの平均繊維経は、例えば、5nm以上1000nm未満であり、10〜900nmまたは20〜800nmであることが好ましく、100〜500nmまたは200〜500nmであることがさらに好ましい。
ここで、平均繊維径とは、例えば、10本の任意の繊維についてそれぞれ1箇所の直径を計測し、これらの平均値として求められる。繊維の直径とは、繊維の長さ方向に対して垂直な断面の直径である。そのような断面が円形でない場合には、最大径を直径と見なしてよい。
不織布を構成するナノファイバは、必要に応じて、第1ポリマーおよび第2ポリマー以外に、公知の添加剤を含んでもよい。添加剤の含有量は、不織布を構成するナノファイバ全体(または不織布全体)の5質量%以下であってもよい。
不織布の厚みは、1枚当たり、1〜1000μm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜700μm、好ましくは50〜600μmまたは100〜500μmである。
本実施形態に係る不織布は、鞘部を構成する第2ポリマーが、芯部を構成する第1ポリマーよりも極性が小さい(または誘電率が低い)ナノファイバを含むため、集塵性能などの捕集性能に優れている。また、ナノファイバの不織布であることにより、圧力損失を小さくすることができる。よって、様々な流体(液体および/または気体)を通過させて、流体から不要成分を除去したり、流体を清浄したりするのに適しており、特に、空気清浄機の濾材として使用するのに適している。
(不織布の製造方法)
本発明の実施形態に係る不織布は、例えば、第1ポリマーおよび第2ポリマーの溶融混合物を用いて電界紡糸法により製造してもよいが、好ましくは、第1ポリマー(またはその前駆体)および第2ポリマーの双方を含む溶液を用いる電界紡糸法により得ることができる。具体的には、第1ポリマーまたはその前駆体と第2ポリマーとを含む溶液(第1溶液)を調製する第1工程、および、繊維形成空間において、第1溶液から静電気力により繊維を生成させ、生成した繊維を堆積させて不織布を形成する第2工程とを経ることにより、不織布を製造できる。第2工程において、繊維を生成させる際に、第1ポリマーと第2ポリマーとの極性(または誘電率)の違いにより、第1ポリマーが芯部を形成し、この芯部の少なくとも一部の表面を覆うように、第2ポリマーを含む鞘部が形成される。なお、第1ポリマーがポリイミドなどの場合には、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸など)と第2ポリマーとを含む溶液を第1溶液として用い、不織布の製造過程で適宜加熱することなどにより、ポリイミド前駆体からポリイミド(第1ポリマー)を生成させてもよい。
(第1工程)
第1工程において、第1溶液は、第1ポリマー(またはその前駆体)と第2ポリマーとを溶媒に溶解させることにより調製してもよい。第1ポリマー(またはその前駆体)と第2ポリマーとは極性(または誘電率)に差がある(好ましくは差が大きい)ため、それぞれのポリマー(または前駆体)を溶解し易い溶媒が異なり、双方のポリマー(または前駆体)が一様に溶解した溶液を調製しにくい。そのため、第1溶液の調製においては、第1ポリマー(またはその前駆体)に対する良溶媒(第1溶媒)と、第2ポリマーに対する良溶媒(第2溶媒)とを少なくとも用い、必要に応じて、第1溶媒と第2溶媒との親和性(または相溶性)を高める溶媒(第3溶媒)を併用してもよい。
好ましい実施形態では、第1ポリマー(またはその前駆体)を含む第1ポリマー溶液、および第2ポリマーを含む第2ポリマー溶液をそれぞれ調製し、これらのポリマー溶液を混合することにより第1溶液を調製する。より具体的には、第1工程は、第1ポリマー(またはその前駆体)と第1ポリマー(またはその前駆体)を溶解する第1溶媒とを含む第1ポリマー溶液を調製する工程a、第2ポリマーと第2ポリマーを溶解する第2溶媒とを含む第2ポリマー溶液を調製する工程b、および第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とを混合する工程cを含むことが好ましい。第1ポリマー(またはその前駆体)および第2ポリマー、ならびに第1溶媒および第2溶媒の種類によって、工程a、工程bおよび/または工程cにおいて、上記の第3溶媒を用いることができる。
第2溶媒が第1溶媒と非相溶性である場合、第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とを混合しても相分離した状態となり、第1ポリマー(またはその前駆体)と第2ポリマーとの双方を含む第1溶液が得られ難い。この場合、工程cで第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とを混合する際に、例えば、攪拌するなどせん断力が加わり易い手段を用いることが望ましい。第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とを攪拌等により混合することで、第1ポリマー(またはその前駆体)および第2ポリマーのうち一方の少なくとも一部を他方のポリマー溶液に移行させることができる。そして、第1ポリマー(または前駆体)と第2ポリマーとの双方を含む溶液を得ることができる。工程cで得られた混合物が相分離している場合には、第1工程は、さらに、混合物から、第1ポリマー(または前駆体)および第2ポリマーを含む溶液を、第1溶液として分離する工程dを含むことができる。
(工程a)
第1ポリマー溶液は、第1ポリマー(またはその前駆体)を第1溶媒に溶解させることにより調製できる。
第1溶媒としては、第1ポリマー(またはその前駆体)を溶解し、揮発などにより除去可能なものであれば特に制限されない。このような溶媒としては、非プロトン性の極性有機溶媒、例えば、メタノール;エチレングリコール;アセトン;アセトニトリルなどのニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド(鎖状または環状アミドなど);ジメチルスルホキシドなどのスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1ポリマーまたはその前駆体の種類にもよるが、上記の溶媒のうち、Rohrschneiderの極性パラメータP’が5以上(例えば、5〜7.5)の非プロトン性の極性有機溶媒などが好ましい。第1溶媒は第2溶媒よりも極性が大きい(つまり、第2溶媒は第1溶媒よりも極性が小さい)ことが好ましい。第1溶媒と第2溶媒との極性パラメータP’の差は、2以上(例えば、2〜8)であることが好ましい。
また、アミドを含む第1溶媒を用いることも好ましい。例えば、第1ポリマーがPESおよび/またはPANを含む場合、DMFおよび/またはDMAcを含む第1溶媒を用いてもよい。第1ポリマーがPIまたはその前駆体を含む場合には、NMPを含む第1溶媒を用いてもよい。
第1ポリマーおよび第2ポリマーのうち少なくとも一方の分子量分布が広いと、第1ポリマーと第2ポリマーとの親和性を高め易くなる。そのため、第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とが相溶しない場合でも、工程cで第1ポリマー分子と第2ポリマー分子とを接近させ易くなり、両分子鎖が絡まり易くなる。よって、第1ポリマー(または第2ポリマー)の少なくとも一部を第2ポリマー溶液(または第1ポリマー溶液)に移行させ易くなる。ポリマー分子が絡み合いやすい観点からは、第1ポリマー溶液に含まれる第1ポリマーおよび第2ポリマー溶液に含まれる第2ポリマーのそれぞれの分子量分布幅は広い方が好ましい。同様の観点から、第1ポリマー溶液に含まれる第1ポリマー(複数のポリマーを含む場合には、各ポリマー)は、分子量分布において複数のピークを有してもよい。第1ポリマー溶液に含まれる第1ポリマーのM/M比は、1.8〜3.0または2.0〜3.0であることが好ましい。
第1溶媒の極性が比較的高いため、第2ポリマーを第1ポリマー溶液に移行させるよりは、第2ポリマー溶液に第1ポリマーを移行させる方が容易である。そのため、第1ポリマー溶液における第1ポリマーの分子量分布幅は大きい方が好ましい。また、第1ポリマーを第2溶液に移行させて第1溶液を調製する場合、移行する第1ポリマーの分子量分布幅はある程度限られる。そのため、第1溶液に含まれる第1ポリマーの分子量分布幅は、第2ポリマーの分子量分布幅よりも狭くなる傾向になる。第1溶液に含まれる第1ポリマーのM/M比は、芯部を形成する第1ポリマーについて記載した範囲とすることができる。また、予め第1ポリマー溶液に使用する第1ポリマーのM/M比をこのような範囲に調節しておくことで、工程cの後に第1ポリマー溶液中に残存する第1ポリマーの量を低減してもよい。
第1ポリマー溶液は、必要に応じて第3溶媒を含んでもよい。第3溶媒としては、例えば、極性パラメータP’が3以上5未満である非プロトン性の有機溶媒などが使用できる。このような第3溶媒としては、ジクロロメタン、二塩化エチレン、クロロホルムなどのハロゲン化アルカン;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール(C2−4アルコールなど);テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル;酢酸エチルなどのエステル;メチルエチルケトンなどが挙げられる。第3溶媒は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1ポリマー溶液中の第1ポリマーの濃度は、例えば、10〜40質量%であり、15〜30質量%であることが好ましい。このような濃度の場合、工程cで第1ポリマー分子と第2ポリマー分子とをより接近させ易くなる。
第1ポリマー溶液は、必要に応じて、電界紡糸で使用される公知の添加剤を含んでもよい。
(工程b)
第2ポリマー溶液は、第2ポリマーを第2溶媒に溶解させることにより調製できる。
第2溶媒としては、第2ポリマーを溶解し、揮発などにより除去可能なものが好ましい。第2溶媒は、第1溶媒よりも極性が小さいものを用いることが好ましく、第1溶媒と非相溶性の非プロトン性の有機溶媒が好ましい。このような第2溶媒としては、極性パラメータP’が3未満(例えば、−1以上3未満)である非プロトン性の有機溶媒などが挙げられる。このような有機溶媒は一般に低極性有機溶媒または無極性有機溶媒と呼ばれるものであってもよい。
第2溶媒の具体例としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどのシクロアルカン;n−ヘキサンなどのアルカン;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジイソプロピルエーテルなどの対称エーテル;四塩化炭素などが挙げられる。これらの溶媒は一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2ポリマー溶液は、必要に応じて上記の第3溶媒を含んでもよい。なお、第3溶媒は第1ポリマー溶液および第2ポリマー溶液のいずれに含まれていてもよく、双方のポリマー溶液に含まれていてもよい。
第2ポリマー溶液に使用する第2ポリマーの分子量分布幅は、第1ポリマーよりも広くてもよく、狭くてもよく、同程度であってもよい。ある程度の分子量分布幅を有する第2ポリマーを用いる場合には、工程cにおいて、少なくとも一部の第1ポリマー(所定の分布量分布幅を有する画分)を第2ポリマーと絡ませ易くなるため、第1ポリマーの分子量の最適化が不十分でも容易に第1溶液を得ることができる。第2ポリマー溶液に使用する第2ポリマーのM/M比は、鞘部を形成する第2ポリマーについて記載した範囲とすることができる。
第2ポリマー溶液中の第2ポリマーの濃度は、例えば、10〜40質量%であり、15〜30質量%であることが好ましい。このような濃度の場合、このような濃度の場合、工程cで第1ポリマー分子と第2ポリマー分子とをより接近させ易くなる。
第2ポリマー溶液は、必要に応じて、電界紡糸で使用される公知の添加剤を含んでもよい。
(工程c)
第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液との混合には、公知の混合装置(または攪拌装置)、例えば、各種ミキサ(遊星式など)、種々の攪拌翼(または攪拌羽)を備えた攪拌機、ディスパー、および/またはスターラーなどが使用できる。第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とが相分離する場合には、遊星式ミキサなどの大きなせん断力が付与され易い混合装置を用いることが好ましい。
混合の際には、必要に応じて加熱してもよい。
攪拌速度および攪拌時間は、第1ポリマー(またはその前駆体)および第2ポリマーの少なくともいずれか一方を他方のポリマー溶液に移行させることができるように、適宜決定できる。工程cで得られた混合物が均一な溶液(単一相)である場合、そのまま第1溶液として電界紡糸工程(第2工程)に供してもよく、溶媒の一部を除去することで濃縮して第2工程に供してもよい。工程cで得られた混合物が相分離している場合には、混合物を工程dに供して第1溶液を分離することができる。
工程cにおいて、第1ポリマー溶液および第2ポリマー溶液に加え、さらに上記の第3溶媒を混合してもよい。
(工程d)
工程dでは、工程cで得られた混合物から、第1ポリマー(またはその前駆体)および第2ポリマーを含む溶液を、第1溶液として分離する。より具体的には、工程cで得られた混合物を静置して、第1ポリマー(またはその前駆体)、第2ポリマー、および第2溶媒を含む溶液を相分離させ、この溶液を第1溶液として回収することで第1溶液を分離してもよい。
なお、工程cでは、第1ポリマーの少なくとも一部(比較的低分子量の画分など)が第2ポリマー溶液に移行しやすいが、第2ポリマーの一部が第1ポリマー溶液に移行することもある。相分離した各相が、第1ポリマーおよび第2ポリマーの双方を含む場合、移行したポリマーの量が多い相を第1溶液として用いてもよい。分離した各相のいずれも第1溶液として電界紡糸に供してもよい。第1溶液に含まれる第1ポリマーのM/M比は、芯部を形成する第1ポリマーについて記載した範囲とすることができる。
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得られた第1溶液を電界紡糸により繊維化し、不織布を形成する。
電界紡糸法では、静電延伸現象によりナノファイバを生成させる。より具体的には、第1溶液を電界紡糸の原料液として用いると、帯電された空間中に流出された原料液からは、空間を飛行中に徐々に溶媒が蒸発していく。これにより、飛行中の原料液の体積は徐々に減少していくが、原料液に付与された電荷は、原料液に留まる。その結果、空間を飛行中の原料液の電荷密度は、徐々に上昇することとなる。そして、原料液の電荷密度が高まり、原料液の中に発生する反発方向のクーロン力が原料液の表面張力よりも勝った時点で、原料液が爆発的に線状に延伸される現象が生じる。この現象が静電延伸現象である。静電延伸現象によれば、ナノファイバを効率よく製造することができる。
原料液である第1溶液には、極性(または誘電率)の異なる第1ポリマーと第2ポリマーが含まれる。第1ポリマーは、第2ポリマーよりも静電延伸され易いため、静電紡糸により繊維状の芯部を形成する。第2ポリマーは、第2ポリマーだけでは静電延伸し難いが、第1ポリマーとともに電界紡糸することで延伸され、芯部の少なくとも一部の表面を覆うように鞘部を形成する。このようにして、第1溶液から鞘芯構造を有するナノファイバが形成される。
繊維形成空間で生成したナノファイバを、基材の表面に堆積させることにより、本実施形態に係る不織布が得られる。形成された不織布は、基材の表面から剥離してもよい。この場合、不織布の製造方法は、さらに基材の表面から不織布を剥離する工程を含むことができる。ここで、基材としては、剥離性の基材シート、または繊維を搬送するための搬送コンベアのベルトなどを利用できる。また、基材として不織繊維構造を有する基材(市販の不織布など)を用い、この表面にナノファイバを堆積させることで、不織布と不織繊維構造を有する基材とが一体化した不織布を形成してもよい。
不織布を形成する工程では、必要に応じて、複数の電界紡糸ユニットを用いて、各ユニットで、それぞれ異なるナノファイバを生成させ、堆積させてもよい。例えば、各ユニットで、繊維経および/またはポリマー組成の異なるナノファイバを生成させ、堆積させることで不織布を形成してもよい。なお、ナノファイバ径は、原料液の状態、放出体の構成、帯電手段により形成される電界の大きさなどにより調節することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る不織布の製造方法を実施するための、製造システムの構成を概略的に示す図である。図1は、不織繊維構造を有する基材Eを利用する場合の例である。
図1の製造システムは、不織布を製造するための製造ラインを構成している。製造システムは、不織布形成装置40と、形成された不織布を回収するための回収装置70とを備えている。図1の製造システムでは、基材Eが製造ラインの上流から下流に搬送される。搬送途中の基材Eには、ナノファイバの不織布の形成が随時行われる。
製造システムの最上流には、ロール状に捲回された基材Eを内部に収容した基材供給装置20が設けられている。基材供給装置20は、ロール状の基材Eを捲き出して、自身の下流側に隣接する別の装置に基材Eを供給する。具体的には、基材供給装置20は、モータ24により供給リール22を回転させて、供給リール22に捲回された基材Eを第1搬送ローラ21に供給する。
捲き出された基材Eは、第1搬送ローラ21により、不織布形成装置40に移送される。
不織布形成装置40は、電界紡糸機構を具備する。より具体的には、電界紡糸機構は、装置内の上方に設置された原料液を放出するためのノズル(放出体)を含む放出部42Aと、放出された原料液(第1溶液)を帯電させる帯電手段と、放出部42Aと対向するように不織布Eを上流側から下流側に搬送する搬送コンベア41と、を備えている。搬送コンベア41は、基材Eとともに繊維を収集するコレクタ部として機能し、基材Eの表面(主面)には、放出部42Aから放出されたナノファイバが堆積される。
帯電手段は、放出体に電圧を印加する電圧印加装置43と、搬送コンベア41と平行に設置され、かつ電気的に接続された対電極44とで構成されている。対電極44は接地されている。これにより、放出体と対電極44との間には、電圧印加装置43により印加される電圧に応じた電位差(例えば20〜200kV)を設けることができる。なお、帯電手段の構成は、特に限定されず、例えば、対電極44は必ずしも接地しなくてもよく、高電圧が印加されていてもよい。また、対電極44を設ける代わりに、搬送コンベア41のベルト部分を導体から構成するなどしてもよい。
図2は、図1の放出部42Aを概略的に示す正面図であり、図3は、図1の放出部42Aを概略的に示す側面図である。図4は、図2および図3の放出体42を放出口42aを通る平面でカットし、一部を拡大した概略縦断面図である。
図2および図3に示されるように、放出部42Aは、原料液を放出するための放出体42を有しており、放出体42の上部には、放出体42に原料液45を供給するための導管50が接続されている。また、放出体42の上方には、図示しない送風機構が設けられている。送風機構により、放出体42の上方から送風を行うことで、ナノファイバ生成を阻害する溶媒蒸気やイオン風を効率よく換気することができる。
放出体42は、長尺の形状を有しており、放出体42の内部には、径D1の中空円筒状の収容部52が形成されている。放出体42の搬送コンベア41のベルト(基材)と対向する側には、複数の放出口42aが、一定の間隔で、規則的な配列で設けられている。
放出体42の上部は、断面が方形に形成されており、放出口42aに向かって、断面形状の幅が徐々に小さくなるテーパ部42bが形成されている。このように、放出体42の放出口42aの周囲に、テーパ部42bを形成することで、電荷が角部などに集中することによるイオン風の発生を抑制することができる。
また、放出口42aに向かって、放出体42の断面形状の幅を徐々に小さくすることにより、電荷を適度に集中させることができ、放出口42aから放出される原料液に効率よく電荷を供給することができる。収容部52と放出口42aとを連通する貫通孔の径は、例えば、0.25〜0.4mmであり、貫通孔の長さは、例えば、0.1〜5mmである。貫通孔の断面形状は、円形、三角形や四角形などの多角形、星形などの内側に突出する部分のある形状などの任意の形状を選択できる。
原料液45は、放出体42の中空部と連通するポンプ46の圧力により、原料液タンク45aから、導管50を通して、放出体42の収容部52に供給される。そして、原料液45は、ポンプ46の圧力により、複数の放出口42aから不織布Eの主面に向かって放出される。放出された原料液は、帯電した状態で放出体42と搬送コンベア41(また不織布E)との間の空間を移動中に静電爆発を起し、鞘芯構造を有するナノファイバを生成する。生成したナノファイバは、静電誘引力によって基材の主面に誘引され、そこで堆積する。これにより、不織布Fが形成される。
搬送コンベア41のベルト部分は、誘電体であってもよい。ベルト部分が導体で構成されている場合には、放出体42の放出口に近いコレクタ部に、ナノファイバがやや集中して堆積する傾向がある。ナノファイバを、より均一に、コレクタ部に分散させる観点からは、搬送コンベア41のベルト部分を誘電体により形成することがより望ましい。
ベルト部分を誘電体により形成した場合には、ベルト部分の内周面(不織布Eと接触する面の反対側の面)に、対電極44を接触させてもよい。このような接触により、ベルト部分の内部で誘電分極が起こり、基材Eとの接触面に一様な電荷が発生する。これにより、ナノファイバが基材Eの表面Eaの一部に集中して堆積する可能性が更に低減される。
図1において、不織布Fと搬送コンベア41のベルトとが離間(剥離)する箇所には、これらが剥離するときに起こり得るスパークの発生を抑制するために、不織布Fを除電する除電装置を設けてもよい。また、不織布形成装置40と、これに隣接する各装置との間の窓部近傍には、紡糸空間に発生する帯電した溶媒蒸気、帯電した空気を換気して、紡糸性能を向上させる吸引ダクトを設けてもよい。
不織布形成装置40から搬出された完成した不織布Fは、搬送ローラ71を介して、回収装置70に回収される。回収装置70は、搬送されてくる不織布Fを捲き取る回収リール72を内蔵している。回収リール72はモータ74により回転駆動される。
図1に示すような製造システムでは、不織布を回収する回収装置70を回転させるモータ74を、不織布Fの搬送速度(搬送コンベア41の速度)が一定になるような回転速度に制御する。これにより、不織布Fは、所定のテンションを維持しつつ搬送される。このような制御は、製造システムに備えられた制御装置(図示せず)によって行われる。制御装置は、製造システムを構成する各装置を統括的に制御し、管理できるように構成されている。
不織布形成装置40と不織布回収装置70との間には、予備回収部を配置してもよい。予備回収部は、完成した不織布Fの回収装置70による回収が容易となるように設けられる。具体的には、予備回収部では、不織布形成装置40から移送されてくる完成した不織布Fを、一定の長さまでは捲き取らずに弛んだ状態で回収する。その間、回収装置70の回収リール72は回転させずに停止させておく。そして、予備回収部により回収された弛んだ状態の不織布Fの長さが一定の長さになる度に、回収装置70の回収リール72を所定時間だけ回転させて、回収リール72により不織布Fを捲き取る。
このような予備回収部を設けることで、搬送コンベア41の搬送速度と、不織布回収装置70が具備するモータ74の回転速度を厳密に連動させて制御する必要がなくなり、製造システムの制御装置を簡略化することができる。
なお、上記の不織布の製造システムは、本発明の実施形態に係る不織布の製造方法を実施するために用いることができる製造システムの一例に過ぎない。不織布の製造方法は、第1溶液を調製する第1工程、および、ナノファイバ形成空間において、第1溶液からナノファイバを生成させて堆積させ、不織布を形成する第2工程を有する限り、特に限定されない。
また、第2工程についても、所定のナノファイバ形成空間において、第1溶液から静電気力によりナノファイバを生成させ、生成したナノファイバを堆積させる工程であれば、どのような電界紡糸機構を用いてもよい。例えば、放出体の形状は、特に限定されない。放出体の長手方向に垂直な断面の形状は、図3に示されるように、上方から下方に向かって次第に小さくなる形状(V型ノズル)に限らず、放出体を回転体により構成してもよい。
ナノファイバ形成装置では、搬送コンベアのベルトの主面に繊維を連続的に堆積させることにより、長尺状の不織布を形成することができる。また、ナノファイバの堆積を間欠的に行うことにより、矩形の不織布を形成することもできる。
(空気清浄機)
本発明の一実施形態に係る空気清浄機は、濾材としての上記の不織布を備えていればよく、これ以外の構成要素は公知のもので構成できる。空気清浄機は、例えば、気体(具体的には、空気)の吸い込み部と、気体の吐き出し部と、これらの間に配置された上記の不織布とを備えていてもよい。濾材は、1枚の不織布で構成してもよく、2枚以上の不織布を積層した積層体で構成してもよい。
図5は、本発明の一実施形態に係る空気清浄機を示す一部切り欠き斜視図である。
空気清浄機100は、不織布10と、気体の吸い込み部60と、気体の吐き出し部61とを備える。不織布10は、主面2Aが吸い込み部60に対向するように、吸い込み部60と吐き出し部61との間に配置される。不織布10は、蛇腹状にプリーツ加工されて配置されても良い。
空気清浄機100は、外部の大気を吸い込み部60から空気清浄機100内部に取り込む。取り込まれた大気は、濾材(不織布)10等を通過する間に集塵され、清浄化された大気が吐き出し部61から再び外部に放出される。大気が不織布10を通過する際には、大気に含まれる微細な粉塵が不織布10の不織繊維構造により物理的に除去されるとともに、帯電したナノファイバにより電気的に除去される。不織布10には、必要に応じて、空気清浄機で不織布(または濾材)に使用される公知の触媒および/または添加剤(吸着剤など)などを担持させてもよい。
空気清浄機100は、さらに、吸い込み部60と不織布10との間に、大きな塵等を捕捉するプレフィルター62等を備えても良い。また、不織布10と吐き出し部61との間に消臭フィルター63や加湿フィルター(図示せず)等が備えられても良い。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)ポリマー溶液の調製
第1ポリマーとしてPESをDMAcに溶解させ、PESを20質量%の濃度で含む第1ポリマー溶液を調製した。使用したPESは、分子量30000〜120000の範囲に複数のピークを有しており、Mは75000であり、M/M比は2.4であった。また、PESの誘電率は約3.5であり、体積固有抵抗は1015Ω・cmであった。
第2ポリマーとしてPPをメチルシクロヘキサンに溶解させ、PPを20質量%の濃度で含む第2ポリマー溶液を調製した。使用したPPのMは70000であり、M/M比は2であった。PPの誘電率は、約2.5であり、体積固有抵抗は1016Ω・cmであった。
(2)ポリマー溶液の混合
第1ポリマー溶液と第2ポリマー溶液とを、第1ポリマーと第2ポリマーとが質量比1:1となるような割合で混合し、遊星式ミキサを用いて攪拌速度1000rpm(公転速度)で、8分間攪拌した。
(3)第1溶液の分離
上記(2)で得られた混合物を分液ロートに移し、4時間静置したところ、メチルシクロヘキサンを含む上層とDMAcを含む下層の2相に分離した。なお、この混合物を相分離する静置時間は最低限10分必要であるが、1時間以上とすることが望ましい。分液ロートを用いて、下層を除去し、上層の溶液を回収した。上層の溶液の成分を高速液体クロマトグラフにより分析したところ、PESとPPの双方を含んでいた。上層の溶液に含まれるPESの分子量分布を調べたところ、PESのMは64000であり、M/M比は1.3であった。
(4)電界紡糸
図1に示すような製造システムにより、上記(3)で得られた溶液(第1溶液)を原料液として用いて、下記の条件で、電界紡糸することにより基材の主面にナノファイバを堆積させ、不織布を作製した。
電界紡糸条件:
印加電圧:50kV
溶液吐出圧:20kPa
温度:26℃、
湿度:57%RH
得られた不織布において、ナノファイバの平均繊維経は795nmであった。また、不織布の厚みは300μmであり、単位面積当たりの質量は0.8g/mであった。
得られた不織布の電子顕微鏡写真を図6および図7に示す。図7は、図6の四角で囲んだ部分Aの拡大図である。
(5)評価
不織布を用いて、下記の手順で集塵効率および圧力損失を評価した。
(a)集塵効率(計数法)
不織布を縦12cm×横12cmのサイズに裁断し、サンプルとした。このサンプルに、大気粉塵を、面風速5.3cm/secで吸引させた。サンプルの上流側の粉塵濃度(個数)をC、下流側の粉塵濃度(個数)をCとして、集塵効率(=1−C/C)×100(%)を算出した。個数濃度は、光散乱式自動粒子計数器を用いて求めた。
(b)圧力損失
上記(a)と同様に集塵試験を行い、サンプルの上流側の空気圧Pと下流側の空気圧Pとを測定し、圧力損失(=P−P)を算出した。空気圧の測定には、JIS B 9908形式1(計数法)の規格に準拠して、マノメータを使用した。
比較例1
第1溶液に代えて、第1ポリマー溶液を原料液として用いて電界紡糸を行った以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し、評価を行った。得られた不織布の厚みは300μmであり、単位面積当たりの質量は0.9g/mであり、繊維の平均繊維経は832nmであった。
不織布の電子顕微鏡写真を図8に示す。
比較例2
第1溶液に代えて、第2ポリマー溶液を原料液として用い電界紡糸を試みた以外は、実施例1と同様の操作を行ったが、繊維を形成できなかった。
実施例および比較例の結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1では、比較例1に比べて、圧力損失を抑制しながらも、高い集塵効率が得られた。
図8に示されるように比較例1の不織布の繊維の表面は滑らかである。それに対して、図7に示されるように実施例1の不織布の繊維では、PESで形成された芯部の表面をところどころ覆うようにPPの鞘部が形成されていた。鞘部が形成されていることで実施例1の不織布の繊維表面は、比較例1とは異なり凹凸が形成されていた。この凹凸と表面に帯電性が高いPPが存在することで、実施例1では比較例1に比べて高い集塵効果が得られたと考えられる。
本発明の実施形態に係る不織布は、長期間にわたり使用した場合でも、集塵効率が高く、圧力損失の増加を抑制することが可能である。そのため、静音性が求められる家庭用や事務所用等の空気清浄機に(特に濾材として)適用することができる。但し、本発明の不織布の用途は、空気清浄機の濾材に限るものではない。例えば、本発明の不織布は、様々な濾材の他、電池用の分離シート(セパレータ)、妊娠検査シート等の体外検査シート、塵や汚れなどを拭き取る拭取シート、基材等の他の用途にも適用可能である。
20:基材供給装置、21:第1搬送ロール、22:供給リール、24:モータ
40:不織布形成装置、41:搬送コンベア、42A:放出部、42:放出体、42a:放出口、42b:テーパ部、43:電圧印加装置、44:対電極、45:原料液(第1溶液)、45a:原料液タンク、46:ポンプ、48:第1支持体、49:第2支持体、50:導管、52:収容部
70:回収装置、71:搬送ローラ、72:回収リール、74:モータ
E:不織繊維構造を有する基材、Ea:基材の主面、F:不織布
100:空気清浄機、10:不織布、60:吸い込み部、61:吐き出し部、62:プレフィルター、63:消臭フィルター

Claims (14)

  1. 芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、
    前記芯部は、ポリエーテルスルホンおよびポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一種を含む第1ポリマーを含み、
    前記鞘部は、第2ポリマーを含み、
    前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーよりも極性が小さい、不織布。
  2. 芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、
    前記芯部は、ポリエーテルスルホンおよびポリアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも一種を含む第1ポリマーを含み、
    前記鞘部は、第2ポリマーを含み、
    前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーよりも誘電率が低い、不織布。
  3. 前記ナノファイバは、電界紡糸法により形成される、請求項1または2に記載の不織布。
  4. 前記第2ポリマーの量は、前記第1ポリマー100質量部に対して10〜1000質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 前記ナノファイバは、前記芯部の一部の表面が露出した露出部を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 前記芯部の表面において、前記露出部の面積が前記鞘部の面積よりも大きい、請求項5に記載の不織布。
  7. 気体の吸い込み部と、
    気体の吐き出し部と、
    前記吸い込み部と前記吐き出し部との間に配置された請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布と、を備えた空気清浄機。
  8. 第1ポリマーまたはその前駆体と前記第1ポリマーよりも極性が小さい第2ポリマーとを含む第1溶液を調製する第1工程、
    ナノファイバ形成空間において、前記第1溶液から静電気力によりナノファイバを生成させ、生成した前記ナノファイバを堆積させて不織布を形成する第2工程と、を含み、
    前記ナノファイバは、前記第1ポリマーを含む芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆い、かつ前記第2ポリマーを含む鞘部とを含む、不織布の製造方法。
  9. 前記第1工程は、
    前記第1ポリマーと前記第1ポリマーを溶解する第1溶媒とを含む第1ポリマー溶液を調製する工程a、
    前記第2ポリマーと前記第2ポリマーを溶解し、かつ前記第1溶媒と非相溶性の第2溶媒とを含む第2ポリマー溶液を調製する工程b、
    前記第1ポリマー溶液と前記第2ポリマー溶液とを攪拌により混合する工程c、ならびに
    前記工程cで得られた混合物から、前記第1ポリマーおよび前記第2ポリマーを含む溶
    液を、前記第1溶液として分離する工程d、を含む請求項8に記載の不織布の製造方法。
  10. 前記第2溶媒は、前記第1溶媒よりも極性が小さい請求項9に記載の不織布の製造方法。
  11. 前記第1ポリマー溶液に含まれる前記第1ポリマーは、分子量分布において複数のピークを有する、請求項9または10に記載の不織布の製造方法。
  12. 前記第1溶液に含まれる前記第1ポリマーの分子量分布幅は、前記第2ポリマーの分子量分布幅よりも狭い、請求項8〜11のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
  13. 芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、
    前記芯部は、第1ポリマーを含み、
    前記鞘部は、第2ポリマーを含み、
    前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーよりも極性が小さく、
    前記ナノファイバは、前記芯部の一部の表面が露出した露出部を有し、前記芯部の表面において、前記露出部の面積が前記鞘部の面積よりも大きい、不織布。
  14. 芯部と、前記芯部の少なくとも一部の表面を覆う鞘部とを含むナノファイバを含み、
    前記芯部は、第1ポリマーを含み、
    前記鞘部は、第2ポリマーを含み、
    前記第2ポリマーは、前記第1ポリマーよりも誘電率が低く、
    前記ナノファイバは、前記芯部の一部の表面が露出した露出部を有し、前記芯部の表面において、前記露出部の面積が前記鞘部の面積よりも大きい、不織布。
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