JP6551161B2 - 双ロール鋳造装置用の注湯ノズル、双ロール鋳造装置、及び鋳片の鋳造方法 - Google Patents
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図1は、従来の双ロール鋳造装置121を説明する図である。
図1において、101は鋳造用冷却ロール、102はサイド堰、103は注湯ノズル、110はタンディッシュ、122は溶融金属、123は凝固シェル、124は薄肉鋳片である。双ロール鋳造装置121を用いた鋳造において、高温の溶融金属122はタンディッシュ110とタンディッシュ110の下方に取り付けられた注湯ノズル103を通して鋳造用冷却ロール101の間に導かれ、凝固シェル123を形成したのちに薄肉鋳片124となる。
すなわち、溶融金属の湯溜りの上部は自由表面となっているので、ノズルから湯溜りへの溶融金属の注入によって自由表面の変動が避けられない。このような自由表面の変動はロール面上の凝固開始点の変動につながり、ひいては凝固シェル厚みの変動を引き起こす。凝固シェル厚の変動は、鋳片の割れや湯ジワなどの表面性状不良の原因となるので好ましくない。また、注入される溶融金属は凝固点温度よりも高い過熱度をもったものが使用されるため、凝固シェルに高温の溶融金属が強く衝突すると、シェルを溶解してしまい、このことも凝固シェル厚の変動の原因になる。
さらに、ノズルの各吐出口からの溶融金属流が不均一で、局所的に大きな下降流が存在すれば、溶融金属中の気泡が自由表面まで浮上せずに鋳片内部に取り込まれてしまい、これが気泡欠陥となるといった問題も生じる。
しかしながら、このような内部構造が複雑なノズルを使用する場合には、溶融金属として、アルミナを含むアルミキルド鋼等を用いると、ノズル内部にアルミナが付着することで、ノズル内部で目詰まりが発生し、鋳造造中に注入流が不均一になったり、所定の注入流量が得られない状態となったりする問題があった。
また、本発明は、溶融金属の流れを均一かつ安定にすることによって、溶融金属の種類によらず、内部に気泡欠陥が存在せず、かつ、割れや湯ジワなどのない良好な表面性状を有する鋳片を製造することが可能な双ロール鋳造装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、溶融金属の流れを均一かつ安定にすることによって、溶融金属の種類によらず、内部に気泡欠陥が存在せず、かつ、割れや湯ジワなどのない良好な表面性状を有する鋳片を製造することが可能な鋳片の鋳造方法を提供することを課題とする。
(1)回転軸が相互に平行になるように水平に配置された一対の鋳造ロール間の上側の窪みである湯だまり部に溶融金属を供給する注湯ノズルであって、内部空間の水平断面形状が前記鋳造ロールの配列方向の寸法よりも前記鋳造ロールの長手方向の寸法が大きい形状とされたノズル本体と、前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記内部空間における前記溶融金属の湯面の高さが、前記湯だまり部における湯面の高さより高くなるように前記ノズル本体の前記内部空間を減圧する減圧装置と、を備えることを特徴とする双ロール鋳造装置用の注湯ノズル。
(2)前記減圧装置は、前記ノズル本体の前記内部空間の前記鋳造ロールの長手方向の寸法をwとし、前記内部空間における湯面から前記内部空間の下端までの距離をhsとしたとき、hs≧w/2が成立するように前記内部空間を減圧するものであることを特徴とする(1)に記載の双ロール鋳造装置用の注湯ノズル。
(3)回転軸が相互に平行になるように水平に配置された一対の鋳造ロールと、前記一対の鋳造ロール間に形成された上側の窪みである湯だまり部に溶融金属を供給する注湯ノズルと、を備え、前記注湯ノズルは、内部空間の水平断面形状が前記鋳造ロールの配列方向の寸法よりも前記鋳造ロールの長手方向の寸法が大きな形状とされたノズル本体と、前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記内部空間における前記溶融金属の湯面の高さが前記湯だまり部における湯面の高さより高くなるように、前記ノズル本体の前記内部空間を減圧する減圧装置と、を備えることを特徴とする双ロール鋳造装置。
(4)前記減圧装置は、前記ノズル本体の前記内部空間の前記鋳造ロールの長手方向の寸法をwとし、前記内部空間における湯面から前記内部空間の下端までの距離をhsとしたとき、hs≧w/2が成立するように前記内部空間を減圧するものであることを特徴とする(3)に記載の双ロール鋳造装置。
(5)回転軸が相互に平行になるように水平に配置された一対の鋳造ロール間の上側の窪みである湯だまり部に、ノズル本体から溶融金属を供給し、前記鋳造ロールを回転させながら前記溶融金属を冷却して鋳片を鋳造する鋳片の鋳造方法であって、前記ノズル本体は、水平断面形状が前記鋳造ロールの配列方向の寸法よりも前記鋳造ロールの長手方向の寸法が大きい形状とされた内部空間を有しており、前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記内部空間における前記溶融金属の湯面の高さが、前記湯だまり部における湯面の高さより高くなるように前記ノズル本体の前記内部空間を減圧することを特徴とする鋳片の鋳造方法。
(6)前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記ノズル本体の前記内部空間の前記鋳造ロールの長手方向の寸法をwとし、前記内部空間における湯面から前記内部空間の下端までの距離をhsとしたとき、hs≧w/2が成立するように前記内部空間を減圧することを特徴とする(5)に記載の鋳片の鋳造方法。
また、本発明の双ロール鋳造装置を用いれば、溶融金属の種類によらず、気泡欠陥がなく、かつ、表面性状が良好な鋳片の製造が可能となる。
また、本発明の鋳片の鋳造方法によれば、溶融金属の種類によらず、気泡欠陥がなく、かつ、表面性状が良好な鋳片の製造が可能となる。
本実施形態に係る鋳造装置21は、図2に示すように、水平に対向して配置される一対の鋳造ロール1と注湯ノズル3とサイド堰2とを備える。また、本実施形態に係るノズルは、本実施形態に係る鋳造装置21が備える注湯ノズル3に相当し、双ロール鋳造装置21の前記一対の鋳造ロール1,1の間隙の上方に配置される。
このように、鋳造ロール1とサイド堰2とを設けることで、鋳造ロール1とサイド堰2とで囲まれた空間である、鋳造ロール1,1間の上側の窪みには、ノズル3から供給された溶融金属の湯だまり部(ロール間プール)が形成される。
減圧装置32は、ノズル本体の内部空間13を減圧する。減圧装置32は、ノズル3の上部に設けられた吸気口から配管33を通じて内部空間13の圧力を低下させる。
本実施形態に係るノズル3は、減圧装置32を備えるため、溶融金属供給時には、ノズル本体31の内部空間13(ノズル内)を減圧しながら、溶融金属を供給することができる。ノズル内を減圧することで、ノズル内の湯面7は、湯だまり部の湯面6に比べて、上方へ移動する。すなわち、ノズル内の湯面7が、湯だまり部における湯面6より高くなる。
また、本実施形態に係るノズル3は、溶融金属供給時には、ノズル本体31の下方に備えられた吐出口が、湯だまり部の湯面6より低くなるように(すなわち、吐出口11が溶融金属に浸漬されるように)配置される。吐出口11が湯だまり部の湯面6よりも高い位置にある場合、ノズル内が減圧されない。
また、本実施形態に係るノズル3の、水平方向かつ鋳造ロール1の配列方向の寸法であるノズル3の外厚さTは、ノズル3が、鋳造ロール1に接触しないように適宜設定すればよい。
また、吐出方向は、ノズル3の下面に吐出口11を設けた場合には、下向きとなるが、図5(c)に示すように、ノズル3のサイド堰側の側面の下方に所定以上の大きさの孔、もしくはスリットを設けて、吐出方向をサイド堰2に向かう方向としてもよい。吐出方向をサイド堰2に向かう方向とすることで、吐出口11から流出した溶融金属が、鋳造ロール1からの抜熱によって凝固した溶融金属に直接衝突して、再度溶融することを抑制することができる。
また、ノズル3の内部空間13の幅w及びノズル3の内部空間13の下端からノズル内の湯面の平均高さまでの距離hsが、hs≧w/2を満足する場合、ノズル3内においてより安定した流れを得ることができる。
また、ノズル3において、溶融金属の吐出方向がサイド堰2に向かう方向となるように、吐出口11が設けられている場合、吐出口11から流出した溶融金属が、鋳造ロール1からの抜熱によって凝固した溶融金属に直接衝突して、再度溶融することを抑制することができる。
次に、本実施形態に係る鋳造方法の溶融金属の挙動について、図面を参照して説明する。
図6(a)は、従来のノズル203を含む双ロール鋳造装置(従来装置)を用いた場合の、溶融金属の流れを示す図であり、図6(b)は、本実施形態に係るノズル3を含む双ロール鋳造装置21(本実施形態装置)を用いた場合の、溶融金属の流れを示す図である。
注入流5は、円形断面の自然落下流になるが、下方へ行くほど表面張力の影響で断面が収縮すると同時に、表面が不安定になる。従って自由落下する距離が長いほど注入流は不安定になり、その影響でノズル内の湯面7が大きく変動し、ノズル203内の溶融金属の流れ8が、均一かつ安定した流れとならない。
一方、本実施形態装置を用いた場合、吐出口11が湯だまり部に浸漬されるように配置され、さらに、ノズル3の内部空間13が減圧されることによって、ノズル内の湯面7が上昇する。この場合、ノズル内の自由落下流の長さが短くなり、前述のような流れの不安定性は減少し、鉛直方向に直線的な流れに近づく。ここで、ノズル3の内部空間13の幅w及びノズルの内部空間13の下端からノズル内の湯面の平均高さまでの距離hsが、hs≧w/2を満足する場合には、落下流がノズル3内の湯面に衝突した後、ノズル幅方向に2つの安定な円形渦が形成され、前述の自由落下流の不安定性がさらに抑制される。この円形渦が安定する現象は、ベナール対流の事例で円形の渦が安定的に列を形成することと同様である。この渦状の対流は、ノズル内の湯面7の変動を引き起こさないので、本実施形態装置では、ノズル3内の溶融金属の流れ8が、均一かつ緩やかな安定した流れとなる。ノズル3内の流れが均一であるので、ノズルの吐出口から吐出される溶融金属の流れも、均一かつ緩やかな安定した流れとなる。
ロール幅1000mm、ロール直径1200mmの一対の鋳造ロールを有する双ロール鋳造を模擬した水モデル実験装置を製作した。この水モデル実験装置を用いて、鋳造速度0.9m/sで厚み3mmの鋳片を製造する条件に相当する条件でタンディッシュから内径40mmの羽口を通じて水を供給し、回転するロール間隙から流出させた。水の接触弧角は45度であった。また、ノズルは、内部空間の幅wを600mm、内部空間の厚みtを40mm、内部空間の高さhを400mmとし、内部空間の下端から15mmを湯だまり部に浸漬させた。
表1に示すように、ノズル内の圧力を変化させない場合及びノズル内の圧力を変えることで、ノズルの内部空間の下端からノズル内平均湯面の高さhsを、100mm(湯だまり部の湯面の平均湯面高さから85mm)から順次ノズルが充満するまで変更した場合について、図7に示すP1(ノズル内の厚み方向の中心でかつ、幅方向の端部から1/4の位置)、及び、P2(湯だまり部の厚み方向の中心でかつ、ノズル端部とサイド堰との中点の位置)における、1分間の湯面レベルの変動をビデオ観察により測定し比較した。なお、図7の(1)は、ノズル内の平均湯面、(2)は、湯だまり部の平均湯面である。
この結果、hsが大きい(ノズル内の圧力が低い)ほど、ノズル内の湯面及び湯だまり部の湯面における変動が小さくなることが分かった。特に、hsがロール幅の半分(w/2=300mm)よりも大きい場合には、湯だまり部の湯面の変動が、本規模の双ロール鋳造で表面性状が安定になるとされる±5mm程度以内に収まった。
ロール幅1000mm、ロール直径1200mmの一対の鋳造ロールを有する双ロール鋳造機において、溶鋼の鋳造を行い、厚み3mmの鋳片を製造した。この際、鋳造速度を0.9m/s、接触弧角を45度として鋳造した。ノズルは、耐火物の厚みを40mmとし、内部空間については内幅600mm、内厚み40mm、内高さ400mmとし、湯だまり部への浸漬深さは内部空間の下端から15mmとした。タンディッシュからストッパー制御をしながら、溶鋼を40mmの羽口から供給した。ノズル内は常圧(減圧しない)と、ノズル内の湯面がノズル下端から300mm高さになるように減圧にした場合で比較した。
湯だまり部の湯面をビデオカメラで観察し、ロールと湯面の接触線からロール幅方向の湯面高さを算出し、ロール幅方向各位置における湯面高さの変動を求め、ロール幅方向で最大の変動を求めた。その結果常圧では、最大の変動が±30mmであり、減圧下では±5mmであった。
また、このようにして得られた鋳片を調査した結果、常圧で鋳造を行った鋳片には、内部の気泡欠陥や、表面の湯ジワが観察された。一方、減圧した場合の鋳片には、湯ジワや気泡欠陥は観察されなかった
また、本発明の双ロール鋳造装置によれば、溶融金属の種類によらず、気泡欠陥がなく、かつ、表面性状が良好な鋳片の製造が可能となる。
また、本発明の鋳造方法によれば、溶融金属の種類によらず、気泡欠陥がなく、かつ、表面性状が良好な鋳片の製造が可能となる。
そのため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
2 サイド堰
3 ノズル(注湯ノズル)
4 キス点(線)
5 注入流
6 湯だまり部の湯面
7 ノズル内の湯面
8 ノズル内の溶融金属の流れ
9 真空引き
11 吐出口
12 注入口
13 内部空間
21 双ロール鋳造装置
31 ノズル本体
32 減圧装置
33 配管
W ノズルの外幅
T ノズルの外厚
H ノズルの外高さ
w ノズル内部空間の幅
h ノズル内部空間の高さ
hs 湯面からノズル内部空間の下端までの距離
t ノズル内部空間の厚さ
101 鋳造用冷却ロール
102 サイド堰
103 注湯ノズル
110 タンディッシュ
121 双ロール鋳造装置
122 溶融金属
123 凝固シェル
124 薄肉鋳片
Claims (6)
- 回転軸が相互に平行になるように水平に配置された一対の鋳造ロール間の上側の窪みである湯だまり部に溶融金属を供給する注湯ノズルであって、
内部空間の水平断面形状が、前記鋳造ロールの配列方向の寸法よりも前記鋳造ロールの長手方向の寸法が大きい形状とされたノズル本体と、
前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記内部空間における前記溶融金属の湯面の高さが、前記湯だまり部における湯面の高さより高くなるように前記ノズル本体の前記内部空間を減圧する減圧装置と、を備える
ことを特徴とする双ロール鋳造装置用の注湯ノズル。 - 前記減圧装置は、前記ノズル本体の前記内部空間の前記鋳造ロールの長手方向の寸法をwとし、前記内部空間における湯面から前記内部空間の下端までの距離をhsとしたとき、hs≧w/2が成立するように前記内部空間を減圧するものであることを特徴とする請求項1に記載の双ロール鋳造装置用の注湯ノズル。
- 回転軸が相互に平行になるように水平に配置された一対の鋳造ロールと、
前記一対の鋳造ロール間に形成された上側の窪みである湯だまり部に溶融金属を供給する注湯ノズルと、
を備え、
前記注湯ノズルは、内部空間の水平断面形状が前記鋳造ロールの配列方向の寸法よりも前記鋳造ロールの長手方向の寸法が大きな形状とされたノズル本体と、前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記内部空間における前記溶融金属の湯面の高さが前記湯だまり部における湯面の高さより高くなるように、前記ノズル本体の前記内部空間を減圧する減圧装置とを備える
ことを特徴とする双ロール鋳造装置。 - 前記減圧装置は、前記ノズル本体の前記内部空間の前記鋳造ロールの長手方向の寸法をwとし、前記内部空間における湯面から前記内部空間の下端までの距離をhsとしたとき、hs≧w/2が成立するように前記内部空間を減圧するものであることを特徴とする請求項3に記載の双ロール鋳造装置。
- 回転軸が相互に平行になるように水平に配置された一対の鋳造ロール間の上側の窪みである湯だまり部に、ノズル本体から溶融金属を供給し、前記鋳造ロールを回転させながら前記溶融金属を冷却して鋳片を鋳造する鋳片の鋳造方法であって、
前記ノズル本体は、水平断面形状が前記鋳造ロールの配列方向の寸法よりも前記鋳造ロールの長手方向の寸法が大きい形状とされた内部空間を有しており、
前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記内部空間における前記溶融金属の湯面の高さが、前記湯だまり部における湯面の高さより高くなるように前記ノズル本体の前記内部空間を減圧する
ことを特徴とする鋳片の鋳造方法。 - 前記ノズル本体から前記溶融金属を供給する際に、前記ノズル本体の前記内部空間の前記鋳造ロールの長手方向の寸法をwとし、前記内部空間における湯面から前記内部空間の下端までの距離をhsとしたとき、hs≧w/2が成立するように前記内部空間を減圧することを特徴とする請求項5に記載の鋳片の鋳造方法。
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JP2015214455A JP6551161B2 (ja) | 2015-10-30 | 2015-10-30 | 双ロール鋳造装置用の注湯ノズル、双ロール鋳造装置、及び鋳片の鋳造方法 |
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JPH0712523B2 (ja) * | 1987-01-26 | 1995-02-15 | 新日本製鐵株式会社 | 金属薄帯連続鋳造装置における注湯方法及び装置 |
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2015
- 2015-10-30 JP JP2015214455A patent/JP6551161B2/ja active Active
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