<SAW装置の構造>
図1は、本発明の実施形態に係るSAW装置1の外観斜視図であり、図2の(a)および(b)は、SAW装置1の平面図である。なお図2(b)は、カバー5を外した状態の平面図である。また、図3は図2(a)のIII−III線における断面図である。
SAW装置1は、いわゆるWLP型のSAW装置によって構成されている。SAW装置1は、基板3と、基板3の主面3aに配置された励振電極2と、励振電極2を保護するカバー5と、カバー5から露出する複数の端子7と、カバー5の上面に配置された補強層4と、補強層4を被覆する絶縁膜10を有している。なお、図1では絶縁膜10を省略して図示している。
SAW装置1は、複数の端子7のいずれかを介して信号の入力がなされる。入力された信号は、SAW装置1によりフィルタリングされる。そして、SAW装置1は、フィルタリングした信号を複数の端子7のいずれかを介して出力する。
基板3は、圧電基板により形成されている。例えば、基板3は、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶などの圧電性を有する直方体状の単結晶基板である。基板3の平面形状は適宜に設定されてよいが、例えば、所定方向(Y方向)を長手方向とする矩形である。基板3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、厚さは0.2mm〜0.5mm、1辺の長さは0.5mm〜2mmである。
基板3の主面3aには、励振電極2、接続配線11といった各種の電極および配線が設けられている。
基板3の主面3aとは反対側の面である裏面3bには導体層13が取り付けられている。裏面3bに導体層13が取り付けられていることによって、基板3に蓄積された余分な電荷が放電され、SAW装置のフィルタとしての特性を安定化させることができる。なお、導体層13を設けずに基板3の裏面が露出した状態とされていてもよい。
励振電極2は、SAWを発生させるためのものである。図2(b)に示すように励振電極2は、複数の電極指を有する一対の櫛歯状電極からなる複数のIDT電極と複数のIDT電極の両端に配置された反射器電極とを含む。このような励振電極2が圧電性の基板3の上面に配置されることによって、例えば、2重モードSAW共振器フィルタなどが構成されている。なお図2(b)は模式図であり、実際にはこれよりも多数の電極指を有する櫛歯状電極が複数対設けられている。また、複数の励振電極2が直列接続や並列接続などの方式で接続され、ラダー型SAWフィルタなどが構成されてもよい。励振電極2は、例えばAl−Cu合金などのAl合金によって形成されている。
基板3の主面3aに配置される励振電極2は、接続配線11を介して端子7と接続されている。接続配線11は、例えば、励振電極2と同じ材料により形成され、Al−Cu合金などのAl合金によって形成されている。また接続配線11の配線抵抗を小さくするために、配線接続11の厚みを励振電極2の厚みよりも大きくしてもよい。
基板3の主面3aに形成された励振電極2などの各種の電極および配線は、図3の断面図に示すように保護層14で覆われている。この保護層14は、励振電極2など基板3の主面3aに設けられた各種の電極および配線の酸化防止などに寄与する。保護層14は、例えば、絶縁性を有するとともに、SAWの伝搬に影響を与えない程度に質量の軽い材料により形成される。例えば、保護層14は、酸化珪素、窒化珪素、シリコンなどからなる。
基板3の主面3aに配置された各種の電極および配線を保護するとともに、励振電極2の封止空間6を確保するためのカバー5が基板3の主面3aに配置されている。カバー5の平面形状は、例えば、基板3の平面形状と同様であり、矩形状である。カバー5は、平面視したときに基板3の主面3aの外周部が露出するように基板3の主面3aよりもやや小さく形成されている。
カバー5は、基板3の主面3aに積層される枠部15と、枠部15に積層される蓋部17とで構成されている。枠部15には、開口部16が形成されている。開口部16は、枠部15を平面視したときに励振電極2と重なる部分に設けられている。換言すれば、平面視において枠部15の内壁は励振電極2を取り囲んでいる。この開口部16が蓋部17によって塞がれることで、基板3の主面3aとカバー5との間に封止空間6が形成されることとなる。
枠部15は、概ね一定の厚さの層により構成されている。枠部15の厚さは、例えば、10μm〜30μmである。蓋部17は、概ね一定の厚さの層により構成されている。蓋部17の厚さは、例えば、10μm〜30μmである。
枠部15および蓋部17は、例えば、感光性の樹脂により形成されている。感光性の樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。
枠部15および蓋部17は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。図では説明の便宜上、枠部15と蓋部17との境界線を明示しているが、実際の製品においては、枠部15と蓋部17とが同一材料により形成され、一体的に形成されていてもよい。
封止空間6はカバー5の中に設けられた空洞部であり、励振電極2の上の領域に設けられている。励振電極2の上面に封止空間6が設けられていることにより、励振電極2により発生するSAWが基板3を伝搬しやすくなる。封止空間6は図2(a)において破線で示したように、平面形状が概ね矩形状に形成されている。また、図3の断面図に示すように、封止空間6の蓋部17側の角部、すなわち枠部15の内壁面の蓋部17側の部分は、曲面状とされている。これにより、外部の回路基板に実装されたSAW装置1を樹脂モールドする際にSAW装置1に外部から大きな圧力が印加されたとしても、蓋部17が撓むのを抑制することができる。また封止空間6の大きさおよび数は適宜に設定されてよい。図2(a)では封止空間6を1つだけ設けた例を示しているが、例えば、複数の励振電極2を設けた場合には、複数の励振電極2ごとに複数の封止空間6を設けてもよい。
カバー5の四隅および長辺の中央部には、溝部18が設けられている。溝部18は、カバー5の側面の高さ方向全体にわたって延びている。カバー5の四隅に位置する溝部18の平面形状は、中心角が約90°の扇型である。カバー5の長辺の中央部に位置する溝部の平面形状は、中心角が約180°の扇型、すなわち半円状である。
溝部18は、端子7によって埋められている。より具体的には、溝部18は端子7の一部を構成する柱部9によって埋められている。柱部9は、接続配線11の末端付近に設けられたパッド8上に配置されている。柱部9の側面はカバー5の側面と同一平面に位置している。すなわち、柱部9の側面とカバー5の側面は面一となっている。このようにして柱部9は溝部18を埋めているため、その平面形状は溝部18の平面形状とほぼ同一である。すなわち、カバー5の四隅に位置する柱部9の平面形状は、中心角が約90°の扇型であり、カバー5の長辺の中央部に位置する柱部9の平面形状は、中心角が約180°の扇型である。換言すれば、カバー5の四隅に位置する柱部9は、円柱を平面視において四等分したときの1つに対応し、カバー5の長辺中央部に位置する柱部9は、円柱を平面視において二等分したときの1つに対応する。
柱部9の形状はこれに限らず、例えば、柱部9のうち枠部15に位置する部分と蓋部17に位置する部分とで径を変えてもよい。また、柱部9を高さ方向に切断したときの断面形状における側面が傾斜するようにしてもよい。換言すれば、円錐の一部分の形状となるようにしてもよい。柱部9をこのような形状とすることによって、端子7が基板3から引き抜かれるのを抑制することができる。
柱部9は、例えば、銅めっきにより形成されており、柱部9とカバー5との間には、めっき下地層(図示せず)が設けられている。めっき下地層は、例えば、チタンや銅などからなる。
柱部9と接続配線11との間には接続強化層が設けられてよい。接続強化層は、比較的薄く形成される接続配線11を補強して、接続配線11と柱部9との接続を強化するためのものである。接続強化層は、例えば、主面3a側から順にクロム、ニッケル、金を積層した3層構造からなる。
一方、柱部9のカバー5の主面5aからの露出部にはフランジ部12が接続されている。フランジ部12と柱部9とで端子7が構成されている。フランジ部12は、例えば、銅めっきなどにより形成される。フランジ部12と柱部9とを銅めっきにより形成する場合は、両者を一体的に形成することができる。
フランジ部12は、例えば、柱部9のカバー5の主面5aから露出する端面を覆うようにして、柱部9の端面よりも一回り大きく形成されており、その外周部はカバー5に積層されている。フランジ部12の平面視における形状は、接続されている柱部9の平面形状に対応している。
フランジ部12が配置されたカバー5の主面5aには、図1乃至図3に示すように補強層4が配置されている。なお、図2(a)では補強層4を一点鎖線で示している。補強層4は、カバー5の強度を補強するためのものである。例えば、SAW装置1を外部の回路基板などに実装した後、SAW装置1全体を樹脂モールドすることがあるが、樹脂モールドする際に大きな圧力がSAW装置1に印加される。この場合であっても、補強層4を設けておくことによって、カバー5が変形するのを抑制することができる。これによって封止空間6の形状が大きく歪むのを防ぐことができるため、SAW装置1の信頼性向上に供することができる。
補強層4は、カバー5を構成する材料よりもヤング率が高い材料により形成されている。例えば、カバー5のヤング率が0.5〜1.0GPaであるのに対し、補強層4のヤング率は100〜250GPaである。具体的には、補強層4は銅などの金属からなる。補強層4の厚さは、例えば、1〜50μmである。補強層4は、カバー5の比較的広い範囲に亘って矩形状に形成されている。封止空間6の変形を防止する観点からすると、カバー5を平面透視したときに少なくとも封止空間6全体を覆うように封止空間6よりも大きく形成されていることが好ましい。より具体的には、図2(a)に示すように、補強層4の外周が封止空間6の外周縁(枠部15の開口部)よりも5μm以上外側に位置しているとよい。補強層4はフランジ部12と接続されておらず、電気的に浮遊状態となっている。
補強層4は、図3に示されるように上面および側面が絶縁膜10によって被覆されている。絶縁膜10を設けたことによって、SAW装置1を外部の回路基板に実装する際に端子7に付着される半田などの導電性接合材が補強層4に付着するのを抑制することができるため、実装不良や電気特性の劣化が起きにくいSAW装置1とすることができる。
補強層4の表面のうち少なくとも側面が絶縁膜10によって被覆されていれば、端子7に付着される半田などの導電性接合材が補強層4に付着するのを十分に抑制することができるが、補強層4の上面も絶縁膜10で覆うことによって、導電性接合材が補強層4に付着するのをより確実に抑制することができる。絶縁膜10は、平面視において補強層4に対し一回り大きい相似形状となっている。なお、絶縁膜10の平面形状はこれに限らず、例えば、フランジ部12に対応する部分に窓部を設けた状態でカバー5の主面5a全体に形成されるようにしてもよい。
この絶縁膜10は樹脂からなる。具体的には、絶縁膜10の樹脂材料として、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。このように樹脂からなる絶縁膜10が補強層4の側面を伝ってカバー5の主面5aに到達している。絶縁膜10がカバー5の主面5aまで到達していることによって、到達部分において樹脂材料からなる絶縁膜10とカバー5とが強固に接着されるため、絶縁膜10が補強層4から剥がれるのを抑制することができる。そのため、絶縁膜10が剥がれることによって補強層4が露出してしまうことが殆どなく、導電性接合材の補強層4への付着防止効果が向上する。
図4は、図3において丸で囲った領域Mを拡大した図である。
図4において、まずフランジ部12に着目すると、フランジ部12の表面には、めっき皮膜19が形成されている。このめっき皮膜19は、フランジ部12を被覆する第1金属膜19aと第1金属膜19aを被覆する第2金属膜19bとの2層構造からなる。第1金属膜19aは、フランジ部12(端子7)を構成する金属の半田中への拡散(半田食われ)を防止するためのものであり、例えば、Cu、Ni、Pt、Pd、Ti、およびそれらの合金などを用いることができる。第2金属膜19bは、第1金属膜19aの酸化を防止し、半田濡れ性を良くするためのものであり、例えば、Au、Agなどを用いることができる。
次に絶縁膜10に着目すると、絶縁膜10はフランジ部12から所定の間隔dだけ離れた位置にある。この間隔dが小さすぎると絶縁膜10のカバー5からの剥がれの発生が多くなる傾向にある。間隔dが小さすぎるとフランジ部12の表面に設けるめっき皮膜19が絶縁膜10とフランジ部12との間の領域にも成長してしまい、その領域に成長しためっき皮膜19によって絶縁膜10が押し上げられることによるものである。このように絶縁膜10とフランジ部12との間の領域にもめっき皮膜19が成長するのは、間隔dが小さすぎるとその部分にめっき液の残渣が存在しやすくなることが主な要因である。例えば、フランジ部12がCu、第1金属膜19aがNiによってそれぞれ形成されている場合は、Cuからなるフランジ部12の表面をNiめっき液中の還元剤に対して触媒活性にする処理が必要なため、フランジ部12の表面にPdを置換させる処理を行う。このとき間隔dが小さすぎると、フランジ部12と絶縁膜10との隙間にPdの微粒子が残留し、そのPdが触媒核となってその部分にNiが析出してしまう。そこで、このようなめっき液の残渣が残らないようにするには、間隔dをある程度大きくする必要があり、具体的には間隔dを20μm以上とすることが好ましい。
フランジ部12は、下端部の外周部が、カバー5の主面5aに向かうにつれて内方に傾斜している。フランジ部12をこのような形状とすることによって、フランジ部12の上面の面積を小さくすることなく、絶縁膜12とフランジ部12との間隔dを大きくすることができる。そのため、SAW装置1の実装強度を保持するのに必要なフランジ部12の上面の面積を所定の大きさに保ちつつ、絶縁膜10の剥がれ抑制効果を高めることができる。また、端部が内側に傾斜していないものと比べてフランジ部12の表面積が大きくなるため、半田との接触面積が増え、SAW装置1の実装強度を向上させることができるという利点もある。
次に補強層4に着目すると、フランジ部12と同様に、補強層4の下端部の外周部がカバー5の主面5aに向かうにつれて内方に傾斜している。補強層4の端部をこのような形状とすることによって、傾斜させた部分まで絶縁膜10が回り込むこととなる。そうすると、間隔dを狭めることなく、傾斜させた部分に回り込んだ絶縁膜10の分だけ絶縁膜10とカバー5との接触面積を大きくすることができるため、絶縁膜10のカバー5の主面5aからの剥がれ防止効果を高めることができる。
絶縁膜10には、いくつかの窓部20が設けられている。窓部20は絶縁膜10の一部分をくり抜くことによって形成されており、その部分からは補強層4が露出している。このような窓部20を設けることによって、SAW装置1を外部の回路基板に実装する際に補強層4を回路基板に設けたパッドと接続することが可能となる。すなわち、補強層4のうち窓部20から露出する部分を端子として機能させることができる。これにより、SAW装置1の回路基板への実装強度を向上させることができる。また、補強層4の窓部20からの露出部分を回路基板のグランド用のパッドに接続すれば、補強層4がグランド電位となり、SAW装置1の電気特性を安定化させることもできる。
窓部20の形状は、例えば、円状であるが、多角形状のものなど任意の形状が可能である。窓部20は、カバー5の主面5aのうち、枠部15の直上部分にのみ位置している。換言すれば、窓部20は振動空間6と重なる場所には位置していない。カバー5の主面5aのうち枠部15と重なる部分は、枠部15と重ならない部分(振動空間6と重なる部分)よりも形状が比較的安定しているため、この部分に窓部20を設けることによって、窓部20から露出する補強層4を外部のパッドに接続したときにSAW装置1の実装が安定化する。
SAW装置1は、例えば、図10に示すようにカバー5側の面を回路基板25の実装面に対向させて当該実装面に載置された状態で、複数の端子7を実装面上のパッド24に接続した状態で実装される。端子7とパッド24とは、半田などの導電性接合材26により接続される。また、弾性波装置1は、全体が封止樹脂27により覆われている。
封止樹脂27を形成する際、SAW装置1は大きな圧力の環境下におかれることがあるが、そのような環境下においても、金属製の補強層4が設けられているため、封止空間6が大きく変形することがない。また、上述したように補強層4は、絶縁膜10によって被覆されているため実装用の導電性接合材26の補強層4への接触が抑制される。窓部20から露出する補強層4をパッド24と接続することによってSAW装置1の実装強度が向上する。さらには、端子7の側面(柱部9の側面)が露出しているため、この部分に導電性接合材26を付着させることによってもSAW装置1の実装強度を高めることができる。
以上説明したSAW装置1によれば、カバー5の側面に溝部18を設け、この溝部18を埋めるようにして端子7が設けられており、端子7の側面はカバー5の側面と同一面内に位置している構造となっていることから、端子の柱部全体がカバーによって覆われていた従来のものと比べ、弾性波装置を小型化することができる。すなわち、従来の弾性波装置に比べ、カバーの縦と横の幅を端子が形成されている位置まで狭めた構造となっており、狭めた分だけ弾性波装置を小型化することができる。
<SAW装置の製造方法>
次に、図5乃至図9を参照してSAW装置1の製造方法について説明する。図5乃至図9は、SAW装置1の製造方法を説明するための模式的な断面図である。各断面図は、図3に対応する部分の断面図である。
以下に説明する工程は、いわゆるウエハプロセスにおいて実現される。すなわち、分割されることによって1個の基板3となる領域を複数有するウエハを対象に、薄膜形成やフォトリソグラフィー法などが行われ、その後、ダイシングされることにより、多数個分のSAW装置1が並行して形成される。ただし、図5(a)〜図8(b)では、ウエハの中の一部分(第1領域と第2領域)のみを図示する。また、電極や配線などは、プロセスの進行に伴って形状が変化するが、変化の前後で共通の符号を用いることがある。
まず、図5(a)に示すように、第1領域T1および第1領域に隣接する第2領域T2を有するウエハ33を用意する。第1領域T1と第2領域T2との境界を境界線BLで示す。ウエハ33は、例えば、タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶などの圧電性のウエハである。
ウエハ33の主面33a上には、励振電極2、接続配線11といった各種の電極および配線が形成される。具体的には、まず、スパッタリング法、蒸着法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの薄膜形成法により、ウエハ33の主面3aに導体層が形成される。次に、導体層に対して、縮小投影露光機(ステッパー)とRIE(Reactive Ion Etching)装置とを用いたフォトリソグラフィー法などによりパターニングが行われる。これにより、各領域に励振電極2および接続配線11が形成される。
励振電極2、接続用導体11などの各種電極および配線が形成されると、図5(b)に示すように、保護層14が形成される。具体的には、保護層14となる薄膜が、励振電極2および接続配線11の上を覆うように、CVD法または蒸着法などの薄膜形成法により形成される。次に、接続配線11のうち、柱部9が配置される部分が露出するように、フォトリソグラフィー法によって薄膜の一部が除去される。これにより、保護層14が形成される。次に、必要に応じて接続強化層を形成する。接続強化層は、蒸着法などにより接続配線11の保護層14からの露出部分および保護層14上に導体層が形成されるとともに、リフトオフ法あるいはフォトリソグラフィー法などによりパターニングされることによって形成される。
保護層14が形成されると、図5(c)〜図6(a)に示すように、枠部15が形成される。
具体的には、まず、図5(c)に示すように、基板3の主面3a上に、枠部15となる枠部構成層35が形成される。枠部構成層35は、第1領域T1と第2領域T2の境界を跨ぐようにして形成される。枠部構成層35は、例えば、ネガ型のフォトレジストにより形成されたフィルムが貼り付けられることにより形成される。その後、枠部構成層35が形成されたウエハ33を加熱処理する。これにより、枠部構成層35とウエハ33との密着強度を高めることができる。
次に、図5(d)に示すように、フォトマスク40を介して紫外線などの光Lが枠部構成層35に照射される。すなわち、露光処理が行われる。フォトマスク40は、例えば、透明基板38上に遮光層39が形成されることにより構成されている。遮光層39は、枠部構成層35を除去すべき位置に対応する位置に配置されている。すなわち、封止空間6、柱部9およびダイシングラインに対応する位置にそれぞれ配置されている。各遮光層は幅が異なっており、封止空間6に対応する遮光層が最も大きく、柱部9に対応する遮光層の幅が最も小さい。露光は、投影露光であってもよいし、プロキシミティ露光であってもよいし、密着露光であってもよい。
その後、図6(a)に示すように、現像処理を行い、枠部構成層35のうち光が照射された部分を残し、光が照射されなかった部分を除去する。これにより、枠部構成層35には、封止空間6となる開口部16と、柱部9を配置するための溝部18となる第1孔部41とが形成される。このとき第1孔部41は、第1領域T1と第2領域T2の境界を跨ぐようにして形成される。またこれと同時に、ダイシングラインとなる溝部も形成される。なお、本実施形態では、第1孔部41はダイシングライン上に位置することとなるため、第1孔部41はダイシングライン用の溝部の一部と捉えられてもよい。ただし、第1孔部41の径は、通常、溝部の幅よりも大きくされている。このようにして、枠部15が形成される。
枠部構成層35の光Lが照射される領域の縁部においては、照射された光Lが、枠部構成層35の光Lが照射されない領域へ発散されることから、ウエハ33の主面33a側まで十分に光が到達しない。したがって、枠部構成層35の光が照射される領域の縁部は、ウエハ33の主面33a側が十分に硬化されずに、除去される。その結果、第1孔部41および開口部16は、主面33a側ほど径が広がるテーパ状(順テーパ状)に形成されやすい。
第1孔部41および開口部16が形成されると、図6(b)〜図6(d)に示すように、蓋部17が形成される。
具体的には、まず、図6(b)に示すように、枠部15上に蓋部17となる蓋部構成層37が形成される。このとき蓋部構成層37は、第1領域T1と第2領域T2の境界を跨ぐようにして形成される。蓋部構成層37は、例えば、ネガ型のフォトレジストにより形成されたフィルムが貼り付けられることにより形成される。蓋部構成層37が形成されることにより、枠部15の開口部16が塞がれて、封止空間6が構成される。枠部15と蓋部構成層37とは加熱されることによって接合される。
次に、図6(c)に示すように、フォトマスク50を介して紫外線などの光Lが蓋部構成層37に照射される。すなわち、露光処理が行われる。フォトマスク50は、フォトマスク40と同様に、透明基板51上に所定パターンの遮光層52を張り付けて構成されるものである。遮光層52は、蓋部構成層37を除去すべき位置に対応する位置に配置されている。すなわち、柱部9に対応する位置およびダイシングラインに対応する位置に配置されている。フォトマスク50は、例えば、フォトマスク40において、遮光層39のうち封止空間6に対応する部分を除去した構成となっている。なお、露光は、投影露光であってもよいし、プロキシミティ露光であってもよいし、密着露光であってもよい。
その後、図6(d)に示すように、現像処理を行い、蓋部構成層37のうち、光が照射された部分を残し、光が照射されなかった部分を除去する。これにより、蓋部構成層37には、柱部9を配置するための第2孔部43が形成される。すなわち、蓋部17が形成される。蓋部17が形成されることにより、枠部15と蓋部17とからなるカバー5が完成する。第2孔部43は、第1孔部41上に形成される。すなわち、第1孔部41と第2孔部43とが連結され、1つの貫通孔45となる。
カバー5が形成されると、図7(a)および図7(b)に示すように、貫通部9およびフランジ部12が形成される。具体的には、まず、カバー5の露出部分を覆うようにしてめっき用下地層(図示せず)が形成される。また、めっき用下地層は、カバー5の露出部分以外にも貫通孔45の内周面および底面、ダイシングライン上の溝部の内周面および底面にも形成される。めっき用下地層は、例えば、スパッタリング法、フラッシュめっき法などにより、Ti−Cuなどで形成するのが好適な一例である。
めっき用レジスト層55は、めっき用下地層上に形成される。めっき用レジスト層55は、例えば、スピンコートなどの手法で基板上に形成される。めっき用レジスト層55には、安通孔45上にフランジ用孔部57が形成されるとともに、補強層4が形成される領域に補強層用孔部54が形成されている。フランジ用孔部57は、径が第2孔部43の径よりも大きく、また、深さ(めっき用レジスト層55の厚さ)がフランジ部12の厚さ以上である。補強層用孔部54は、平面透視したときに封止空間6全体が含まれるように封止空間6よりも大きく形成され、その深さは、フランジ用孔部57と同じ大きさに設定されている。フランジ用孔部57および補強層用孔部54は、例えば、フォトリソグラフィーにより形成される。
次に、図7(b)に示すように、めっき用レジスト層55を変形させて、めっき用レジスト層55の下端部の外周部がカバー5の主面5aに向かうにつれて外方に傾斜するようにする。換言すれば、めっき用レジスト層55に設けた孔部(補強層用孔部54、フランジ用孔部57)の下側端部の内周部がカバー5の主面5aに向かうにつれて内方に傾斜するようにめっき用レジスト層55を変形させる。具体的には、めっき用レジスト層55を所定の温度で加熱することによって、めっき用レジスト層55の下側の端部の外周部が外方に傾斜するように変形させることができる。
次にめっき処理を行うことによって、補強層用孔部54、貫通孔45、およびフランジ用孔部57がCuなどの金属材料によって埋められる。めっき法は、適宜に選択されてよいが、電気めっき法が好適である。電気めっき法は、柱状の端子7の高さの自由度が高く、また、めっき用下地層との密着性が良好なためである。めっき処理を行った後、めっきによって形成された金属層の上面を化学機械研磨などにより研磨し、所定の厚みにする。
その後、めっき用レジスト層55を除去することによって、図7(c)に示すように、振動空間6上に補強層4となる金属層44が形成され、貫通孔45内に端子7となる端子構成部材47が形成される。ここで、めっき用レジスト層55は先に述べたように、その端部がカバー5の主面5aに向かうにつれて外方に傾斜しているため、そのめっき用レジスト層55をガイドとして形成される金属層44の端部などは、めっき用レジスト層55とは逆に、端部がカバー5の主面5aに向かうにつれて内方に傾斜したものとなる。
図9は、図7(c)の段階におけるウエハ33の平面図である。なお、図9のVII−VII線における断面が図7(c)に対応している。図9に示すように、端子7となる端子構成部材47が境界線BL上に位置しているため、最後の切断工程において境界線BLに沿ってウエハ33を切断するだけでカバー5の側面と同一面に側面が位置する端子7を簡単に形成することができる。
次に、図7(d)に示すように、絶縁膜10となる絶縁膜構成層59を形成する。絶縁膜構成層59は、例えば、ネガ型の感光性樹脂をスピンコート法などによりカバー5の上面5に塗布することによりフランジ部12および補強層4を覆うようにして形成される。
次に、図8(a)に示すように、フォトマスク60を介して紫外線などの光Lが絶縁膜構成層59に照射される、すなわち、露光処理が行われる。フォトマスク60は、透明基板61に遮光層62が取り付けられることにより構成されたものである。遮光層62は、絶縁膜構成層59を除去すべき位置に対応する位置に配置されている。すなわち、フランジ部12を含むカバー5の主面5aの外周に沿った領域に対応する位置と窓部20を形成する位置に遮光層62が設けられている。ここで遮光層62は、フランジ部12の幅よりも大きい幅を有するように形成されている。これによって続く工程において、絶縁膜構成層59のうちフランジ部12に対応する部分を除去したときに、絶縁膜10とフランジ部12との間には所定間隔の隙間が形成されることとなる。このようなフォトマスク60を用いて露光を行った後、現像処理を行うことで図8(b)に示すように、補強層4を被覆し、一部に窓部20が形成された絶縁層10が形成される。
その後、フランジ部12にめっき処理を施すことにより、めっき皮膜19を形成する。最後にダイシングライン(境界線BL)に沿ってウエハ状33を切断する。このとき第1領域T1と第2領域T2の境界上に位置するウエハ33、カバー構成層39および端子構成部材47を切断することによって個々のSAW装置1が完成する。切断は、主にカバー構成層39の部分を切断する第1切断工程と、主にウエハ33の部分を切断する第2切断工程とからなる。第1切断工程は、カバー構成層39を切断するのに適した第1ブレードを用いて行われ、第2切断工程は、ウエハ33を切断するのに適した第2ブレードを用いて行われる。第1ブレードの刃幅は第2ブレードの刃幅よりも大きいため、切断後は、その刃幅の差に応じた段差が形成される。
上述の製造方法によれば、従来の製造プロセスを大きく変更することなく小型のSAW装置1を簡単に作製することができる。また、1枚のウエハ33から取得できるSAW装置1の個数が増えるため、SAW装置の生産性を向上させることができる。
以上の実施形態において、SAW装置1は本発明の弾性波装置の一例である。また枠部構成層35および蓋部構成層37は、本発明のカバー構成層の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
弾性波装置は、SAW装置に限定されない。例えば、弾性波装置は、圧電薄膜共振器であってもよい。弾性波装置において、保護層14、接続強化層8および導体層13は省略されてもよいし、逆に、他の適宜な層が形成されてもよい。例えば、実施形態において、導体層13を覆う樹脂層を設けてもよい。導体層13を覆う樹脂層を設けることによって、マーキングがしやすくなるといった利点がある。