以下、本発明の一実施形態を図1〜図31に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る物体検出装置としてのレーザレーダ20を搭載した車両1の外観が示されている。
ここでは、レーザレーダ20は、一例として、車両1の前方のナンバープレート近傍に取り付けられている。なお、本明細書では、XYZ3次元直交座標系において、路面に直交する方向をZ軸方向、車両1の前進方向を+X方向として説明する。また、レーザレーダ20によって物体検出が可能な領域を「検出領域」という。さらに、Z軸に平行な方向を「高さ方向」や「垂直方向」ともいい、Z軸に直交する方向を「水平方向」ともいう。
車両1の車内には、一例として図2に示されるように、表示装置30、監視制御装置40、メモリ50、及び音声・警報発生装置60などが備えられている。これらは、データの伝送が可能なバス70を介して電気的に接続されている。
ここでは、レーザレーダ20と、表示装置30と、監視制御装置40と、メモリ50と、音声・警報発生装置60とによって、センシング装置としての監視装置10が構成されている。すなわち、監視装置10は、車両1に搭載されている。また、監視装置10は、車両1のメインコントローラと電気的に接続されている。
レーザレーダ20は、一例として図3及び図4に示されるように、光射出系201、光偏向器204、光検出系202、及び物体情報取得部203などを有している。そして、これらは、筐体内に収納されている。この筐体は、光射出系201から射出される光及び、物体で反射された光が通過するための窓を有し、該窓にはガラスが取り付けられている。なお、以下では、該ガラスを「窓ガラス」ともいう(図12参照)。
光射出系201は、光検出系202の−Z側に配置されている。この光射出系201は、一例として図5に示されるように、光源21、カップリングレンズ22、ガラス部材31、同期レンズ23、同期検知用光検出器24、及び光源駆動装置25などを有している。
光源21は、一例として図6に示されるように、複数の発光部群AがZ軸方向に沿って、等間隔で配置されている。ここでは、各発光部群の形状は、正方形状であり、その一辺の長さをd1とする。また、隣接する2つの発光部群の間隙をd2とする。
各発光部群Aは、一例として図7に示されるように、複数の発光部が2次元配列されている。各発光部の形状は、正方形状であり、その一辺の長さをd3とする。また、隣接する2つの発光部の間隙をd4とする。上記d1の大きさは、発光部群に含まれる発光部の数によって決まる。
各発光部は、垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、光源21は、いわゆる面発光レーザアレイである。
光源21は、発光部群A毎に光源駆動装置25によって点灯及び消灯される。光源21は、+Y方向に光を射出するように配置されている。なお、以下では、光源駆動装置25から光源21に送出され、光源21を駆動するための信号を「光源駆動信号」という。
ここでは、光源21は、28個の発光部群Aを有している。そして、各発光部群Aでは、X軸方向に沿って150個の発光部が配列され、Z軸方向に沿って150個の発光部が配列されている。そこで、各発光部群Aは、22500(=150×150)個の発光部を有している。この場合、1つの発光部の発光パワーが1mWであれば、1つの発光部群Aの発光パワーは22.5Wである。そして、d1は約254.7μmであり、d2は約0.02mmであり、d3は約0.7μmであり、d4は約1μmである。
なお、28個の発光部群Aを区別する必要があるときは、図8に示されるように、―Z方向に関する並び順をi(1≦i≦28)として、発光部群A(i)と表記する。
この場合、検出領域(「視野」ともいう)をZ軸方向に関して、発光部群A(1)〜発光部群A(28)に対応する28個のエリア(エリア1〜エリア28)に分割することができる。そして、28個のエリアについてエリア毎に物体の位置情報を取得しても良いし、エリア1〜エリア20の20個のエリアについてはエリア毎に物体の位置情報を取得し、エリア21〜エリア28の8個のエリアについては路面情報を取得しても良い。
路面情報については、例えば、(a)路面の傾きを求めることで、物体の位置情報を取得する際の水平成分のキャリブレーションに使ったり、(b)ブレーキを踏んだときの制動距離を求めることで、より安全な車間距離の算出に使ったり、(c)路面からの反射光量を求めることで、レーザレーダの故障や受光面の汚れなどの検知に使ったり、することができる。
図5に戻り、カップリングレンズ22は、光源21の+Y側に配置され、光源21から射出された光を平行光あるいは、わずかに発散した発散光とする。ここでは、カップリングレンズ22として平凸レンズが用いられている。カップリングレンズ22を介した光が、光射出系201から射出される光である。なお、カップリングレンズ22に代えて、同等の機能を有し、複数の光学素子を含むカップリング光学系を用いても良い。
ガラス部材31は、平行平板状のガラス板であり、カップリングレンズ22の+Y側に配置され、カップリングレンズ22を介した光の一部を反射する。ガラス部材31を透過した光は、光偏向器204に向かい、ガラス部材31で反射された光は、同期検知用光検出器24に向かうように設定されている(図9参照)。
同期レンズ23は、光射出系201に入射する同期検知用光の光路上に配置されている。なお、同期検知用光については後述する。
同期レンズ23の焦点距離は、カップリングレンズ22の焦点距離よりも長くなるように設定されている。同期レンズ23は、カップリングレンズ22で略平行光とされた光を同期検知用光検出器24に結像する光学的パワーを有している。そこで、同期レンズ23は、同期検知用光検出器24から、同期レンズ23の焦点距離だけ離れた位置に配置される。従って、同期レンズ23は、焦点距離が長いほど同期検知用光検出器24から離れた位置に配置することができ、ガラス部材31の表面で反射された光が干渉しにくくなる。
同期検知用光検出器24は、同期レンズ23を介した同期検知用光の集光位置に配置されている。また、同期検知用光検出器24は、光源21から射出され、ガラス部材31で反射された光を受光する。
同期検知用光の受光タイミングは、検出領域の走査を開始するタイミングを決定するのに利用され、ガラス部材31で反射された光の受光タイミングは、光源21の発光タイミングを知るのに利用される。
同期検知用光検出器24は、受光光量に対応した信号を光源駆動装置25及び物体情報取得部203に出力する。なお、以下では、同期検知用光検出器24から出力される信号を「同期検知信号」ともいう。
ところで、同期検知用光検出器24は、同期検知用光を受光するタイミングでは、ガラス部材31で反射された光も受光する。しかし、このタイミングでは、ガラス部材31で反射された光の光量は、同期検知用光の光量よりも非常に小さいので、以下では、煩雑さを避けるため、同期検知の説明では、ガラス部材31で反射された光については考慮しない。
光偏向器204は、Z軸に平行な回転軸まわりに回転する回転ミラー204a(図10参照)、及び該回転ミラー204aを回転駆動させるための駆動機構などを備えている。該駆動機構は、物体情報取得部203によって制御される。回転ミラー204aは4つの反射面を有している。そして、回転ミラー204aは、+Z側からみたとき、反時計回りに回転するように設定されている。また、各反射面はZ軸方向に平行である。4つの反射面を区別する必要があるときは、時計まわりに面1、面2、面3、面4とする(図10参照)。
なお、回転ミラー204aにおける反射面の数は4面に限定するものではなく、1面〜3面であっても良いし、5面以上であっても良い。図11には、反射面の数が2面の回転ミラーが示されている。また、少なくとも2つの反射面を有する回転ミラーにおいて、該少なくとも2つの反射面を、回転軸に対してそれぞれ異なった傾斜角度とし、走査領域をZ軸方向に関して切り替えることも可能である。
回転ミラー204aは、一例として図12に示されるように、光射出系201から射出された光の光路上に配置されている。すなわち、光射出系201から射出された光は、光偏向器204で偏向される。ここでは、光偏向器204は、検出領域の−X側に位置している。また、光源21、カップリングレンズ22及びガラス部材31は、光偏向器204の−Y側に配置されている。
そして、同期検知用光検出器24は、光源21に対し、検出領域と反対側(ここでは、−X側)に配置されている(図12参照)。この場合は、図13及び図14に示される比較例に対して、装置全体の高さ方向(ここでは、Z軸方向)の寸法を小さくすることができる。
そして、回転ミラー204aの回転角が所定の角度のとき、光偏向器204で偏向された光は光射出系201に戻り、同期レンズ23を介して同期検知用光検出器24で受光される(図15参照)。このとき、光射出系201に戻る光が前記同期検知用光である。
さらに回転ミラー204aが回転すると、光偏向器204で偏向された光は、検出領域に向かう。なお、以下では、光偏向器204によって偏向され、検出領域に向かう光を「検出光」ともいう。
Z軸方向に直交する平面内において、検出光の進行方向は、回転ミラー204aの回転角に応じて異なっている(図16〜図18参照)。すなわち、検出領域は、回転ミラー204aの回転に伴って、検出光によって+Y方向に走査される。
そして、Z軸に直交する平面内において、検出領域の+Y側端部に向かう検出光の進行方向と、検出領域の−Y側端部に向かう検出光の進行方向とのなす角度φ(図12参照)を走査角ともいう。換言すれば、Z軸方向に直交する平面内における検出領域は、走査角φで規定される走査領域(所定の走査領域)である。
このように、回転ミラー204aの一の反射面による1回の走査で、同期検知用光検出器24と検出領域とが順次走査される。
本実施形態では、同期検知用光検出器24は、光源21に対し、検出領域と反対側(ここでは、−X側)に配置されている。
ここでは、同期レンズ23の焦点距離は、光源21の射出面から回転ミラー204aの外接円までの距離よりも短くなるように設定されている。仮に、同期レンズ23の焦点距離が、光源21の射出面から回転ミラー204aの外接円までの距離よりも長くなると、同期レンズ23及び同期検知用光検出器24を光源21より遠くに配置しなければならなくなり、装置全体が大型化する。
本実施形態では、同期レンズ23の焦点距離が、光源21の射出面から回転ミラー204aの外接円までの距離よりも短くなるように設定されているため、同期検知用光検出器24を光源21の近くに配置することが可能となる。そして、光源21と同期検知用光検出器24とを、同一基板上に実装することができる。これにより、基板の小型化、及び低コスト化を図ることができる。更に、該基板上に光源駆動装置25が実装されても良い。
ところで、光源を基板に実装する際には、基板の面に対して直交する方向に光が射出されるのが一番シンプルで取り扱いも容易である。また、広角に走査する光学系の場合、筐体の窓ガラスを基板と略直交方向にする方が、光がケラレにくく、広角の走査しやすい、つまり広範囲の物体検知に適している(図19(A)〜図19(C)参照)。ここでは、窓ガラスの入射側の面及び射出側の面それぞれの面形状の原点となっている点を結んだ線を光軸と定義しており、便宜上、光軸に直交する面を窓ガラスの面と称している。なお、図19(A)は、基板の面と光軸とが平行な場合、すなわち基板の面と窓ガラスの面とが直交している場合を示し、図19(B)及び図19(C)は、基板の面と光軸とが非平行な場合、すなわち基板の面と窓ガラスの面とが直交していない場合を示している。基板の面と窓ガラスの面とが直交していない場合には、回転ミラーからの光がケラレている。
本実施形態では、光源21が実装された基板は、筐体の窓ガラスに対して直交するように配置されている(図12参照)。この場合は、光偏向器204への入射光路を筐体の窓ガラスに近づけることが可能となり、周辺(走査端部に向かう光)の光量を大きくすることができる。
光源駆動装置25は、光偏向器204によって偏向された光が同期検知用光検出器24を走査するときと、光偏向器204によって偏向された光が検出領域を走査するときとで、光源21の駆動方法を異ならせている。以下では、便宜上、光偏向器204によって偏向された光が同期検知用光検出器24を走査するときの駆動方法を「第1の駆動方法」といい、光偏向器204によって偏向された光が検出領域を走査するときの駆動方法を「第2の駆動方法」という。
本実施形態では、光源駆動装置25は、第1の駆動方法では光源21を連続発光させ、第2の駆動方法では光源21をパルス発光させる。
ここで、第2の駆動方法における発光パルス数をN個とする。この発光パルス数Nは、物体を検出した際の物***置の分解能(精度)に関係している。この場合、第2の駆動方法における最初(1番目)のパルス発光によって光源21から射出された光は、光偏向器204で偏向され、検出領域の+Y側端部に向かう検出光となる。また、第2の駆動方法における最後(N番目)のパルス発光によって光源21から射出された光は、光偏向器204で偏向され、検出領域の−Y側端部に向かう検出光となる。すなわち、パルス発光の順番(1番目〜N番目)から、検出光の進行方向を知ることができる。例えば、Nが奇数のとき、「(N+1)/2」番目のパルス発光によって光源21から射出された光は、光偏向器204で偏向され、検出領域の中央部に向かう検出光となる。
「設定1」
そして、第2の駆動方法におけるパルス発光では、パルス幅が100n秒以下となるように設定される。この場合は、省電力及び半導体レーザの長寿命化を図ることができる。なお、光源21をパルス発光させたときの光出力における半値幅をパルス幅としている。ここでは、一例として、パルス幅を15n秒としている(図20参照)。
「設定2」
また、第2の駆動方法におけるパルス発光では、発光間隔に対するパルス幅の割合であるデューティ(Duty)比が1%以下となるように設定される。この場合は、半導体レーザに大きな電流を流してても、放熱のための休止時間が長くなるので、発熱の影響を低減することができる。そのため、半導体レーザの劣化を招くことなく、半導体レーザから射出される光の強度を高くすることができる。その結果、検出可能距離を長くすることができる。
ここでは、発光間隔の基準値を20.8μ秒としている(図20参照)。この場合、デューティ(Duty)比は、0.072%である。なお、発光間隔の基準値とは、回転ミラー204aの回転速度、走査角φ、パルス数Nなどから算出される値である。
「設定3」
第1の駆動方法における連続発光では、発光時間が1μ秒以上となるように設定される。この場合、一例として図21に示されるように、同期検知用光は途切れることなく同期検知用光検出器24を走査することができる。そして、同期検知用光検出器24は、受光光量及び受光領域の大きさに対応したパルスを出力する。なお、以下では、便宜上、同期検知用光を受光したときの同期検知信号におけるパルスを「同期パルス」ともいう。
ところで、仮に、第1の駆動方法が第2の駆動方法と同じであれば、一例として図22(A)及び図22(B)に示されるように、同期検知用光検出器24からの同期パルスの出力タイミングがばらついてしまい、検出領域の走査開始タイミングに誤差が生じる。
そして、一の反射面による1回の走査に際して、同期検知用光が同期検知用光検出器24を横切ると同期検知用光検出器24から1個の同期パルスが出力されるため、回転ミラー204aが連続して回転している間は同期検知用光検出器24からは定期的に同期パルスが出力されることになる。ここでは、同期検知用光検出器24は、回転ミラー204aが1/4回転する毎に同期パルスを出力する。
「設定4」
また、第2の駆動方法における光源21の光出力のピーク値(以下では、「第2のピーク値」という。)は、第1の駆動方法における光源21の光出力のピーク値(以下では、「第1のピーク値」という。)の100倍以上となるように設定される。
仮に第1のピーク値が大きいと、同期検知用光検出器24での受光量が大きくなりすぎてしまい、同期検知用光検出器24の出力信号が飽和したり、不要光の光量が大きくなる。この場合、同期検知の精度が低下したり、誤検知するおそれがある。一方、第2のピーク値が小さいと、検出可能距離が短くなる。
そこで、第1のピーク値と第2のピーク値との間に、第2のピーク値が第1のピーク値の100倍以上となる関係をもたせることにより、同期検知精度を低下させることなく、検出可能距離を長くすることが可能となる。
光源21の光出力と光源駆動信号における信号強度との関係は、予め実験等によって求められている。そして、上記設定1〜設定4は満足されている。
ところで、本実施形態では、一の反射面で偏向された光は、同期検知用光検出器24を走査した後に、検出領域を走査するように設定されている。この場合は、回転ミラー204aの回転が完全な等速でなかったり、あるいは、回転ミラー204aの複数の反射面間に形状誤差があっても、走査毎に走査角φが変化、すなわち検出領域の大きさが変化するのを抑制することができる。
光源21を用いて検出領域内の空間情報を得るには、次のような方法が考えられる。例えば、図23に示されるように、先ず、発光部群A(1)をパルス点灯し、回転ミラー204aの面1で反射された光で検出領域を走査する。次に、発光部群A(2)をパルス点灯し、回転ミラー204aの面2で反射された光で検出領域を走査する。続いて、発光部群A(3)をパルス点灯し、回転ミラー204aの面3で反射された光で検出領域を走査する。このように、一の反射面で反射された光によって検出領域を走査するが、その際は発光部群Aの1つがパルス点灯され、物体検知を行う。そして、次の反射面で反射された光によって検出領域を走査する際は、次の発光部群Aがパルス点灯され、物体検知を行う。このとき、前の物体検知におけるZ軸方向成分の範囲と、次の物体検知のZ軸方向成分の範囲とは異なっており、それを次々に繰り返すことによって、検出領域の全てでの物体検知を実行する。ここでは、回転ミラー204aが7回転する毎に、検出領域の全てで物体情報を取得することができる。
ところで、検出領域の全てでの物体情報を21ms毎に更新することを考える。ここでは、回転ミラー204aが7回転すると1つの物体情報が完成するので、回転ミラー204aの回転数は、1÷(21ms÷7)×60=20000rpm、となる。これは非常に速い回転であり、安定性や供給する電力など、考慮すべき課題が大きい。
そこで、次のような第2の方法を提案する。カップリングレンズ22の焦点距離fを60mmとすると、水平方向の角度分解能は、2×tan−1(d1/2f)=2×tan−1[(254.7μm/2)/60mm]=0.24°、である。
回転ミラー204aの1反射面あたりの走査で1つの物体情報を完成させるとすると、回転ミラー204aの回転数は、1÷[21ms×(360°/90°)]×60=731.7rpm、というように非常に小さく抑えることが可能となる。
このとき、0.24°の範囲を走査するのに要する時間は、21ms×(0.24°/90°)=56μs、なので、56μs÷28=2μs、という間隔で28個の発光部群Aを順次パルス点灯させれば、0.24°の走査時間で、検出領域の全てでの物体情報を得ることができる。
この場合のタイミングチャートが図24に示されている。1つの発光部群Aがパルス点灯する時間は高々20nsである。そこで、1つの発光部群Aが20ns点灯して、次の発光部群Aが点灯するまでには、2μs−20ns=1980nsの間隔があり、熱的クロストーク及び電気的クロストークについては全く考慮しなくて良い。
物体情報取得部203は、監視制御装置40から物体情報の取得開始要求を受信すると、光偏向器204の駆動機構を駆動させる。そして、物体情報取得部203は、回転ミラー204aの回転速度が所定の回転速度に達すると、光源21の駆動開始要求を光源駆動装置25に送信する。
そして、物体情報取得部203は、監視制御装置40から物体情報の取得終了要求を受信すると、光源21の駆動終了要求を光源駆動装置25に送信する。
次に、物体情報取得部203から光源21の駆動開始要求を受信したときに、光源駆動装置25で行われる光源駆動処理について、図25を用いて説明する。図25のフローチャートは、光源駆動装置25によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
最初のステップS401では、発光部群を特定するための変数iに初期値1をセットする。
次のステップS403では、発光部群A(i)に対して、第1の駆動方法に対応した光源駆動信号の出力を開始する。
次のステップS405では、同期検知信号を監視し、同期パルスを受信したか否かを判断する。ここでは、同期検知信号の信号強度が予め設定されているしきい値を超えると同期パルスを受信したと判断する。そして、同期パルスを受信していなければ、ここでの判断は否定され、第1の駆動方法に対応した光源駆動信号の出力を継続しつつ、同期パルスを受信するのを待つ。同期パルスを受信すれば、ここでの判断は肯定され、ステップS407に移行する。
このステップS407では、光源駆動信号の出力を停止する。
次のステップS409では、同期パルスを受信してからの経過時間が予め設定されている時間になるまで待機する。そして、該経過時間が予め設定されている時間になると、ステップS411に移行する。
次のステップS411では、発光部群A(i)に対して、第2の駆動方法に対応した光源駆動信号の出力を開始する。すなわち、光源駆動装置25は、同期検知信号に基づいて、検出領域の走査を開始するタイミングを決定する。
次のステップS413では、N個のパルス発光が終了したか否かを判断する。N個のパルス発光が終了していなければ、第2の駆動方法に対応した光源駆動信号の出力を継続しつつ、N個のパルス発光が終了するのを待つ。N個のパルス発光が終了すれば、ここでの判断は肯定され、ステップS415に移行する。
このステップS415では、光源駆動信号の出力を停止する。
次のステップS417では、物体情報取得部203から光源21の駆動終了要求を受信したか否かを判断する。該駆動終了要求を受信していなければ、ここでの判断は否定され、ステップS419に移行する。一方、駆動終了要求を受信していれば、光源駆動処理を終了する。
このステップS419では、変数iの値が28以上であるか否かを判断する。変数iの値が28未満であれば、ここでの判断は否定され、ステップS421に移行する。
このステップS421では、変数iの値を+1し、上記ステップS403に戻る。
一方、上記ステップS419において、変数iの値が28以上であると、上記ステップS419での判断が肯定され、ステップS423に移行する。
このステップS423では、変数iに初期値1をセットし、上記ステップS403に戻る。
ところで、検出領域内に物体があると、レーザレーダ20から射出され物体で反射された光の一部は、レーザレーダ20に戻ってくる。以下では、便宜上、物体で反射されレーザレーダ20に戻ってくる光を「物体からの反射光」ともいう。
物体からの反射光であって、光偏向器204により光検出系202に向かう方向に偏向された光は、光検出系202に入射する。
光検出系202は、一例として図26に示されるように、結像光学系28、及び受光器29などを有している。
結像光学系28は、光偏向器204で偏向された物体からの反射光の光路上に配置され、該光を集光する(図27〜図29参照)。ここでは、結像光学系28は1枚のレンズで構成されているが、2枚のレンズで構成されても良いし、3枚以上のレンズで構成されても良いし、ミラー光学系を用いても良い。
受光器29は、結像光学系28を介した光を受光し、受光光量に対応した信号を物体情報取得部203に出力する。
受光器29の受光素子としては、PD(photodiode)、APD(avalanche photodiode)、ガイガーモードAPDであるSPAD(single photon avalanche diode)等を用いることができる。なお、APDやSPADはPDに対して感度が高いため、検出精度や検出可能距離の点で有利である。
物体情報取得部203は、検出領域の走査が開始されると、同期検知用光検出器24からの同期検知信号に基づいてガラス部材31で反射された光の受光タイミングを求め、該受光タイミングを時間計測のスタート時間とする。ここでは、同期検知用光検出器24の出力レベルが予め設定されているしきい値以上のとき、同期検知用光検出器24がガラス部材31で反射された光を受光したと判断する。
また、物体情報取得部203は、受光器29の出力レベルが予め設定されているしきい値以上のとき、受光器29が物体からの反射光を受光したと判断する。
そして、物体情報取得部203は、受光器29が物体からの反射光を受光すると、一例として図30に示されるように、上記スタート時間から受光器29での受光タイミングまでの経過時間tを求め、物体までの距離を算出する。
また、物体情報取得部203は、受光器29が物体からの反射光を受光すると、そのときの第2の駆動方法におけるパルス発光がN個のうちの何番目のパルス発光であるかから、物体からの反射光の入射方向を知ることができる。
さらに、物体情報取得部203は、物体の位置、物体の大きさ及び物体の形状などの物体情報を求め、メモリ50に保存する。
また、物体情報取得部203は、光源21を発光させてから所定の時間が経過しても、受光器29の出力レベルが予め設定されているしきい値未満のままであれば、物体は検出されなかったものと判断し、該判断結果をメモリ50に保存する。
図2に戻り、監視制御装置40は、所定のタイミング毎に、メモリ50に格納されている物体情報などに基づいて、車両1の前方に物体があるときにその物体の移動の有無を求めるとともに、該物体が移動しているときにはその移動方向及び移動速度を含む移動情報を求める。そして、物体情報及び移動情報を表示装置30に表示する。
また、監視制御装置40は、物体情報及び移動情報に基づいて、危険の有無を判断し、危険があると判断すると、車両1のメインコントローラ及び音声・警報発生装置60に通知する。
音声・警報発生装置60は、一例として図31に示されるように、音声合成装置61、警報信号生成装置62及びスピーカ63などを有している。
音声合成装置61は、複数の音声データを有しており、監視制御装置40から危険有りの情報を受け取ると、対応する音声データを選択し、スピーカ63に出力する。
警報信号生成装置62は、監視制御装置40から危険有りの情報を受け取ると、対応する警報信号を生成し、スピーカ63に出力する。
本実施形態では、光射出系201と光検出系202は、Z方向に関して重なって配置されており、光偏向器204は、光射出系201と光検出系202とで共用されている。この場合は、物体における光源21からの光の照射範囲と受光器29における受光可能範囲の相対的な位置ずれを小さくすることができ、安定した物体検出を実現できる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、光射出系201と光偏向器204とによって、本発明の光走査装置が構成されている。そして、ガラス部材31によって本発明の光走査装置における光学部材が構成され、同期検知用光検出器24によって本発明の光走査装置における光検出器が構成され、同期レンズ23によって本発明の光走査装置における同期光学系が構成されている。また、光検出系202によって、本発明の物体検出装置における受光手段が構成されている。
以上説明したように、本実施形態に係るレーザレーダ20は、光射出系201、光偏向器204、光検出系202、及び物体情報取得部203などを有している。
光射出系201は、光源21、カップリングレンズ22、ガラス部材31、同期レンズ23、同期検知用光検出器24、及び光源駆動装置25などを有している。光検出系202は、結像光学系28、及び受光器29などを有している。
光源駆動装置25は、光偏向器204によって偏向された光が同期検知用光検出器24を走査するとき、第1の駆動方法として光源21を連続発光させ、光偏向器204によって偏向された光が検出領域を走査するとき、第2の駆動方法として光源21をパルス発光させる。この場合、装置の小型化と走査位置の高精度化とを両立させることができる。
そして、第2の駆動方法におけるパルス発光では、パルス幅を100ns以下とし、デューティ(Duty)を1%以下としている。この場合は、省電力及び半導体レーザの長寿命化を図ることができる。
また、第1の駆動方法における連続発光では、発光時間を1μs以上としている。さらに、第2の駆動方法における光源21の光出力のピーク値を、第1の駆動方法における光源21の光出力のピーク値の100倍以上としている。この場合は、同期検知精度を低下させることなく、物体の検出可能距離の長距離化を図ることができる。
ガラス部材31は、カップリングレンズ22を介した光の一部を反射する。ガラス部材31を透過した光は、光偏向器204に向かい、ガラス部材31で反射された光は、同期検知用光検出器24に向かう。同期検知用光検出器24は、同期検知用光、及びガラス部材31で反射された光を受光する。
光源駆動装置25は、同期検知用光検出器24が同期検知用光を受光すると、所定の時間経過後に検出領域の走査を開始する。物体情報取得部203は、検出領域の走査が開始されると、ガラス部材31で反射された光の同期検知用光検出器24での受光タイミングと受光器29での受光タイミングとに基づいて、物体までの距離を含む物体情報を取得する。
この場合は、回転ミラー204aの回転角度に関係なく、光源21の発光タイミングが含まれる信号を取得できる。
ところで、光源をパルス駆動する光源駆動信号が光源に出力されても、電気的な遅延などにより、光源は遅れて発光する。そこで、仮に、光源駆動信号に基づいて時間計測をスタートするタイミングを取得する場合には、上記遅れに対応してオフセット調整をすることが必要となる。しかしながら、予め、計測スタートのタイミングが光源の発光タイミングと一致するようにオフセット時間を調整しても、経時変化や温度変化などによって、電気的な時間遅延量が変化し、それに伴い、オフセット調整量を頻繁に変える必要があった。
また、光学的にスタート信号を取得しようとすると、そのためのセンサを新たに設けなければならず、センサの追加や光路確保などに伴って、コストの上昇及び装置の大型化を招くという不都合があった。
一方、本実施形態では、新たなセンサを設けることなく、電気的な遅延に影響されない時間計測のスタートとなる信号を取得することができる。その結果、低コスト化及び小型化を図ることができる。
そして、本実施形態に係る監視装置10によると、レーザレーダ20を備えているため、物体情報及び移動情報の検出精度を低下させることなく、小型化を図ることができる。
なお、上記実施形態では、第2の駆動方法におけるパルス幅が15n秒の場合について説明したが、これに限定されるものではない。パルス幅は100n秒以下であれば良い。
また、上記実施形態では、第2の駆動方法において、デューティ(Duty)比が0.072%の場合について説明したが、これに限定されるものではない。デューティ(Duty)比は1%以下であれば良い。
第2の駆動方法の変形例が図32に示されている。この場合、連続して3つのパルス発光(各パルス幅は15n秒)がなされ、3連続パルスの発光間隔を20.8μ秒としている。このときのデューティ(Duty)比は0.216%(=パルス幅15n秒×3÷20.8μ秒)となり、1%以下を満足している。
また、上記実施形態では、同期検知用光を受光すると、同期検知用光検出器24の出力信号がローレベルからハイレベルに変化するものとしているが、これに限定されるものではなく同期検知用光を受光すると、同期検知用光検出器24の出力信号がハイレベルからローレベルに変化しても良い。
また、上記実施形態では、光射出系201が、光検出系202の−Z側に配置されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。
また、上記実施形態において、ガラス部材31として、平行平板状のガラス板に代えて、光源側を凹形状とするメニスカス形状のガラス板を用いても良い。この場合は、ガラス部材31の表面で反射された光を同期検知用光検出器24の受光面上で集光しつつ、ガラス部材31を透過して光偏向器204に向かう光は再び略平行光の状態とすることができる。
また、上記実施形態において同期検知用光検出器24の出力、及び受光器29の出力をA/D変換してデジタルデータとし、同期検知信号と受光器29の出力信号を相関演算することで、時間tを求めることも可能である。
図33には、光射出系201の変形例1が示されている。この変形例1では、カップリングレンズ22の表面で反射された光が同期検知用光検出器24に向かうように設定されている。図33には、カップリングレンズ22の射出光学面で反射されて同期検知用光検出器24に向かう光、及びカップリングレンズ22の入射光学面で反射されて同期検知用光検出器24に向かう光が示されている。この場合、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、変形例1では、上記実施形態におけるガラス部材31が不要となり、部品点数を削減できるとともに、光源21から光偏向器204までのY軸方向に関する寸法を小さくすることができる。さらに、光源21と同期検知用光検出器24の距離を近づけることが可能となり、X軸方向に関する寸法も小さくすることができる。なお、変形例1の光射出系201では、カップリングレンズ22によって本発明の光走査装置における光学部材が構成されている。
また、変形例1では、上記実施形態に比べて、光偏向器204で偏向された光が検出領域に向かうタイミングでの、同期検知用光検出器24に向かう光が、同期レンズ23に干渉しにくくなり、より効率的に同期検知用光検出器24に導光することが可能となる。
なお、一例として図34に示されるように、カップリングレンズ22と同期レンズ23が一体化されても良い。この場合は、部品点数が削減でき、装置の小型化が可能となる。
図35には、光射出系201の変形例2が示されている。この変形例2では、カップリングレンズ22の表面で反射された光が同期検知用光検出器24に向かうとともに、同期検知用光がカップリングレンズ22を介して同期検知用光検出器24に入射するように設定されている。この場合は、同期レンズ23が不要である。
そして、変形例2では、変形例1よりもさらに光源21と同期検知用光検出器24の距離を近づけられるため、X軸方向に関して更なる小型化が可能である。なお、変形例2の光射出系201では、カップリングレンズ22によって本発明の光走査装置における光学部材が構成されている。
また、変形例2では、単レンズ一枚でカップリングレンズと同期レンズを兼ねるため、簡素な構成とすることができる。
ところで、光源21から射出される光は、+Y方向に進行する光線が最も強いエネルギーを有し、そこから傾斜するにつれて光線のエネルギーは弱まっていく。このため、カップリングレンズ22で反射されて同期検知用光検出器24に向かう光では、カップリングレンズ22の入射光学面で反射された光より、カップリングレンズ22の射出光学面で反射された光の方がより強いエネルギーを有することとなる。
そこで、上記変形例1及び変形例2の光射出系201では、カップリングレンズ22の入射光学面を反射防止コート面とし、射出光学面をノンコート面とすることにより、射出光学面で反射される光量を増加させ、かつ光偏向器204に向かう光量を増加させることができる。すなわち、同期検知用光検出器24の受光タイミングの検知精度を向上させるとともに、物体検知可能距離を長距離化することができる。
また、上記実施形態において、同期検知用光を集光する必要がないときは、前記同期レンズ23はなくても良い。
また、上記実施形態では、同期光学系が1つのレンズで構成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、同期光学系が複数のレンズで構成されても良い。
また、上記実施形態において、物体情報取得部203での処理の一部を監視制御装置40が行っても良いし、監視制御装置40での処理の一部を物体情報取得部203が行っても良い。
また、上記実施形態では、監視装置10が1つのレーザレーダ20を備える場合について説明したが、これに限定されるものではない。車両の大きさ、監視領域などに応じて、複数のレーザレーダ20を備えても良い。
また、上記実施形態では、レーザレーダ20が車両の進行方向を監視する監視装置10に用いられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両の後方や側面を監視する装置に用いられても良い。
さらに、レーザレーダ20は、車載用以外のセンシング装置にも用いることができる。この場合には、監視制御装置40は、センシングの目的に応じたアラーム情報を出力する。
また、レーザレーダ20は、物体の有無のみを検出する用途にも用いることができる。
また、レーザレーダ20は、センシング装置以外の用途(例えば、距離計測装置や形状測定装置)にも用いることができる。
また、光射出系201と光偏向器204とからなる光走査装置は、物体検出装置以外の用途(例えば、画像表示装置や画像形成装置)にも用いることができる。