JP6520598B2 - 高強度低合金鋼材 - Google Patents
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Description
C:0.55%を超えて0.70%未満、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.30〜1.0%、
Cr:0.5〜1.5%、
V:0.30%を超えて1.0%以下、
Al:0.005〜0.10%、
N:0.0030〜0.030%、
Mo:0〜0.30%未満、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
残部がFeおよび不純物であり、
不純物としてのP、SおよびOが、P:0.030%以下、S:0.030%以下およびO:0.010%以下であり、
金属組織が、ベイナイトで、該ベイナイトは、析出したセメンタイトがラス界面を被覆する割合が10%以下であり、旧オーステナイト粒はJIS粒度番号が6.0以上である、
引張強さが1300MPa以上の、
高強度低合金鋼材。
C:0.55%を超えて0.70%未満
Cは、本発明において重要な元素であり、強度を向上させるとともに金属組織をベイナイトにするために不可欠な元素である。また、微細な析出物を生成させるのに必要な元素であり、鋼材に水素トラップ効果を付与するために必要な元素である。加えて、Cには、焼入れ性を向上させてMs点を低下させる作用もあり、所望の金属組織が得やすくなるため、製造面でも有効な元素である。さらにCには、同じ強度でも吸蔵水素濃度を低減する作用があるので、Mo、Ni等の高価な元素の含有量を低くしても、耐水素脆化特性を向上させることができる。引張強さで1300MPa以上の高強度の確保、所望の金属組織に制御しやすいMs点の確保、優れた耐水素脆化特性の確保という3つの効果を安定して得るためには、Cは0.55%を超えて含有させなくてはならない。一方、Cの含有量が増えて0.70%以上になると、粒界セメンタイトの生成が促進され、析出したセメンタイトがベイナイトのラス界面を被覆する割合が10%以下である特定のベイナイト(以下、「特定ベイナイト」という。)以外のベイナイトが生じるので、所望の金属組織の確保が難しくなって十分な耐水素脆化特性が得られず、さらに、靱性の劣化も著しくなる。したがって、Cの含有量を0.55%を超えて0.70%未満とする。C含有量の望ましい下限は0.60%、また望ましい上限は0.65%である。
Siは、脱酸作用を有し、強度および焼入れ性の向上作用もある。強度の向上は1300MPa以上の引張強さの確保に有効であり、また、焼入れ性の向上は、所望の金属組織が得やすくなるため製造の観点から有利である。これらの効果を得るには、Siの含有量は0.05%以上とする必要がある。一方、0.50%を超えてSiを含有させてもその効果は飽和することに加え、靱性の劣化が生じる。したがって、Siの含有量を0.05〜0.50%とする。Si含有量の望ましい下限は0.10%、また、望ましい上限は0.30%である。
Mnは、焼入れ性と強度を向上させる作用を有する。強度の向上は1300MPa以上の引張強さの確保に有効であり、また、焼入れ性の向上は、所望の金属組織が得やすくなるため製造の観点から有利である。また、Mnには、Sと結合して硫化物を形成し、Sの粒界偏析を抑制して耐水素脆化特性を向上する効果もある。これらの効果を得るには、Mnの含有量は0.30%以上とする必要がある。一方で、Mnを過剰に含有させると粒界に偏析し、粒界割れ型の水素脆性破壊を促進する。したがって、Mnの含有量を0.30〜1.0%とする。Mn含有量の望ましい下限は0.60%、また、望ましい上限は0.90%である。
Crは、強度を向上させるのに有効な元素である。加えて、Crは、Cの拡散を妨げ炭化物の成長を抑制して、特定ベイナイトの形成を促進する。これらの効果を得るためには、Crを0.5%以上含有させる必要がある。一方で、Crを過剰に含有させると靱性の劣化が生じる。したがって、Crの含有量を0.5〜1.5%とする。Cr含有量の望ましい下限は0.8%、また、望ましい上限は1.2%である。
Vは、本発明において最も重要な元素であり、Cおよび/またはNと結合して形成された微細な析出物(炭窒化物、炭化物および窒化物であり、以下、まとめて「炭窒化物」という。)が水素トラップ効果を発揮することで、耐水素脆化特性を大幅に向上する元素である。焼戻しを行わないベイナイト素地で、この効果を十分に確保するためには、Vを0.30%を超えて含有させる必要がある。しかしながら、1.0%を超える量のVを含有させると、析出物の量とサイズが増大し、靱性を劣化させ、耐水素脆化特性を低下する。したがって、Vの含有量を0.30%を超えて1.0%以下とする。Vには、オーステナイト化熱処理時において、既に析出していたVの炭窒化物が旧オーステナイト粒を微細化し、耐水素脆化特性を向上させる作用もある。上記の作用は、オーステナイト化熱処理時の高温において、オーステナイト中にVの炭窒化物が完全には固溶せずに残った状態で得られる。そのためのV含有量の望ましい下限は0.50%であり、より望ましい下限は0.80%である。
Alは、脱酸作用を有する元素である。この効果を十分に確保するためにはAlを0.005%以上含有させる必要がある。一方、Alを0.10%を超えて含有させてもその効果は飽和する。したがって、Alの含有量を0.005〜0.10%とする。なお、本発明のAl含有量とは酸可溶Al(所謂「sol.Al」)での含有量を指す。
Nは、上記したVの微細な炭窒化物を生成させるのに必要な元素であり、鋼材に水素トラップ効果を付与するために必要な元素である。この効果を得るには、Nの含有量は0.0030%以上とする必要がある。一方、0.030%を超えてNを含有させてもその効果は飽和することに加え、靱性の劣化が生じる。したがって、Nの含有量を0.0030〜0.030%とする。N有量の望ましい下限は0.010%、また、望ましい上限は0.025%である。
Moは、Fe炭化物の安定性を高めて、耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてMoを含有させてもよい。しかしながら、本発明では、C等の他の元素の含有量および金属組織を適正化することで良好な耐水素脆化特性を確保することができるし、Moが非常に高価な元素であるため、Moの多量の含有は経済性を大きく損なうことになる。したがって、含有させる場合のMo含有量を0.30%未満とする。Mo含有量の上限は、0.20%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Mo含有量の下限は、0.05%であることが望ましく、0.10%であることが一層望ましい。
Tiは、Cまたは/およびNと結合し、微細な析出物を形成し、旧オーステナイト粒を微細化して耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、0.10%を超える量のTiを含有させると、析出物の量が増大し、靱性を劣化させる。したがって、含有させる場合のTi含有量の上限を0.10%とする。Ti含有量の上限は、0.06%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Ti含有量の下限は、0.005%であることが望ましく、0.03%であることが一層望ましい。
Nbは、Cまたは/およびNと結合し、微細な析出物を形成し、旧オーステナイト粒を微細化して耐水素脆化特性を向上させる元素である。このため、必要に応じてNbを含有させてもよい。しかしながら、0.10%を超える量のNbを含有させると、析出物の量が増大し、靱性を劣化させる。したがって、含有させる場合のNb含有量の上限を0.10%とする。Nb含有量の上限は、0.06%であることが望ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Nb含有量の下限は、0.005%であることが望ましく、0.03%であることが一層望ましい。
Pは、不純物として含有され、粒界に偏析して靱性および/または耐水素脆化特性を低下させる。Pの含有量が0.030%を超えると上記の悪影響が顕著になる。このため、Pの含有量を0.030%以下とする。Pの含有量は極力低いことが望ましい。
Sは、不純物として含有され、Pと同様に粒界に偏析して耐水素脆化特性を低下させる。Sの含有量が0.030%を超えると上記の悪影響が顕著になる。このため、Sの含有量を0.030%以下とする。Sの含有量は極力低いことが望ましい。
O(酸素)は、不純物として含有され、Alと結びついて酸化物を形成する。その含有量が多くなって0.010%を超えると、酸化物が過剰に形成されて靱性が低下する等の問題が生じる。したがって、Oの含有量を0.010%以下とする。Oの含有量は極力低いことが望ましい。
上記(A)項で述べた化学組成を有する高強度低合金鋼材は、金属組織が、ベイナイトで、該ベイナイトは、既に述べた特定ベイナイトである。また、旧オーステナイト粒は、JIS粒度番号が6.0以上である。
本発明に係る高強度低合金鋼材は、前記(B)項で述べた金属組織を有し、引張強さが1300MPa以上必要とされる部品に用いる。なお、鋼材の引張強さの上限は2000MPaであることが望ましく、1800MPaであればより望ましい。
等温変態熱処理した直径25mmの丸棒を長手方向にその中心線をとおって切断(以下、「縦断」という。)して試験片を採取し、JIS G 0551(2013)に則って旧オーステナイト粒度番号を調査した。具体的には、上記試験片の縦断面が被検面となるように樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、上記JISの附属書JAに記載の、界面活性剤を添加したピクリン酸飽和水溶液によってエッチングして旧オーステナイト粒界を現出し、倍率200倍で10視野光学顕微鏡観察して、上記JISの附属書Cに記載の切断法により旧オーステナイト粒度番号を測定した。また、鋼Aの油焼入れままの丸棒を縦断して採取した試験片を用いて、上述の方法で旧オーステナイト粒度番号を調査した。
等温変態熱処理および油焼入れ−焼戻し処理した直径25mmの丸棒のR/2部(「R」は丸棒の半径を表す。)から、長手方向に平行部の直径が6mmで標点距離が40mmの丸棒引張試験片を切り出し、室温で引張試験して、引張強さおよび伸びを求めた。なお、伸びが10%以上の場合に、大きい伸びを有するとしてこれを目標とした。
上記〈2〉の調査で1300MPa以上の引張強さおよび10%以上の伸びが得られた直径25mmの各丸棒のR/2部から、長手方向に図2に示す形状の切欠き付引張試験片を切り出し、引張強さの70%の応力を負荷した陰極チャージ下での定荷重試験を200時間行った際の破断の有無で、耐水素脆化特性を調査した。その際、試験片内部に1ppmの濃度で水素が吸蔵されるように陰極水素チャージの電流密度を調整した。なお、試験片内部に吸蔵される水素量は、3%NaCl溶液を用いて0.8〜1.5mA/cm2の電流密度で陰極水素チャージを72時間行った時に、昇温脱離装置により10℃/分で昇温した際に350℃までに放出される水素量を用いた。
Claims (4)
- 化学組成が、質量%で、
C:0.55%を超えて0.70%未満、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:0.30〜1.0%、
Cr:0.5〜1.5%、
V:0.30%を超えて1.0%以下、
Al:0.005〜0.10%、
N:0.0030〜0.030%、
Mo:0〜0.30%未満、
Ti:0〜0.10%、
Nb:0〜0.10%、
残部がFeおよび不純物であり、
不純物としてのP、SおよびOが、P:0.030%以下、S:0.030%以下およびO:0.010%以下であり、
金属組織が、ベイナイトで、該ベイナイトは、析出したセメンタイトがラス界面を被覆する割合が10%以下であり、旧オーステナイト粒はJIS粒度番号が6.0以上である、
引張強さが1300MPa以上の、
高強度低合金鋼材。 - 質量%で、V:0.50〜1.0%を含有する、請求項1に記載の高強度低合金鋼材。
- 質量%で、Mo:0.05%以上で0.30%未満を含有する、請求項1または2に記載の高強度低合金鋼材。
- 質量%で、Ti:0.005〜0.10%およびNb:0.005〜0.10%から選択される1種以上を含有する、請求項1から3までのいずれかに記載の高強度低合金鋼材。
Priority Applications (1)
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JP2015182877A JP6520598B2 (ja) | 2015-09-16 | 2015-09-16 | 高強度低合金鋼材 |
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JP2015182877A JP6520598B2 (ja) | 2015-09-16 | 2015-09-16 | 高強度低合金鋼材 |
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JP2017057457A JP2017057457A (ja) | 2017-03-23 |
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2015
- 2015-09-16 JP JP2015182877A patent/JP6520598B2/ja active Active
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