<粘着剤組成物>
(1)(メタ)アクリル系樹脂(A)
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、下記式(I):
で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とする重合体である(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を含むことが好ましい。なお本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレート等というときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
上記式(I)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数7〜21のアラルキル基を表す。R2は、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基であることが好ましい。
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ラウリルのような直鎖状のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルのような分枝状のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ラウリルのような直鎖状のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチルのような分枝状のメタクリル酸アルキルエステル等を含む。
R2がアルコキシ基で置換されたアルキル基である場合、すなわち、R2がアルコキシアルキル基である場合における式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル等を含む。R2が炭素数7〜21のアラルキル基である場合における式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル等を含む。
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸n−ブチルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、これを構成する全単量体中、アクリル酸n−ブチルを50重量%以上含むことが好ましい。勿論、アクリル酸n−ブチルに加えて、それ以外の式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを併用することもできる。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は通常、上記式(I)の(メタ)アクリル酸エステルと極性官能基を有する単量体等の少なくとも1つの他の単量体との共重合体である。この極性官能基を有する単量体は、極性官能基を有する(メタ)アクリル酸系化合物であることが好ましい。当該単量体が有する極性官能基としては、遊離カルボキシル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基をはじめとする複素環基等を挙げることができる。
極性官能基を有する単量体の具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートのような遊離カルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような水酸基を有する単量体;アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,5−ジヒドロフランのような複素環基を有する単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートのような複素環とは異なるアミノ基を有する単量体等を含む。極性官能基を有する単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)の反応性の観点から、水酸基を有する単量体を、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を構成する極性官能基含有単量体の1つとして用いることが好ましい。水酸基を有する単量体に加えて、他の極性官能基を有する単量体、例えば、遊離カルボキシル基を有する単量体を併用することも有効である。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、分子内に1個のオレフィン性二重結合と少なくとも1個の芳香環を有する単量体(ただし、上記式(I)又は上記極性官能基を有する単量体に該当するものは除く。)に由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。好適な例として芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物を挙げることができる。かかる芳香環を有する(メタ)アクリル酸系化合物には、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート等も含まれるが、特に下記式(II):
で表されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルのようなアリールオキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
上記式(II)において、R3は水素原子又はメチル基を表し、nは1〜8の整数を表し、R4は水素原子、アルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。R4がアルキル基である場合、その炭素数は1〜9程度であることができ、アラルキル基である場合、その炭素数は7〜11程度、またアリール基である場合、その炭素数は6〜10程度であることができる。
式(II)中のR4を構成する炭素数1〜9のアルキル基としては、メチル、ブチル、ノニル等が、炭素数7〜11のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル等が、炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル、トリル、ナフチル等が、それぞれ挙げられる。
式(II)で表されるフェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−フェノキシエトキシ)エチル、エチレンオキサイド変性ノニルフェノールの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル等を含む。フェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フェノキシエチル基含有(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(o−フェニルフェノキシ)エチル及び/又は(メタ)アクリル酸2−(2―フェノキシエトキシ)エチルを含むことが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、その固形分全体量を基準に、上記式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、通常60〜99.9重量%、好ましくは80〜99.6重量%の割合で含有し、極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.4〜10重量%の割合で含有し、また芳香環を有する単量体に由来する構造単位を通常0〜40重量%、好ましくは6〜12重量%の割合で含有する。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、上で説明した式(I)の(メタ)アクリル酸エステル、極性官能基を有する単量体及び芳香環を有する単量体以外の単量体(以下、その他の単量体ともいう。)に由来する構造単位を含んでいてもよい。その他の単量体の例としては、分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位、(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構造単位等を挙げることができる。その他の単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
分子内に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルにおける脂環式構造とは、炭素数が通常5以上、好ましくは5〜7程度のシクロパラフィン構造である。脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルフェニル、α−エトキシアクリル酸シクロヘキシル等を含む。
スチレン系単量体の具体例は、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンのようなアルキルスチレン;フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンのようなハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等を含む。
ビニル系単量体の具体例は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニルのような脂肪酸ビニルエステル;塩化ビニル、臭化ビニルのようなハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンのようなハロゲン化ビニリデン;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾールのような含窒素芳香族ビニル;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンのような共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を含む。
分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体の具体例は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのような分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのような分子内に3個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体等を含む。
(メタ)アクリルアミド化合物の具体例は、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(5−ヒドロキシペンチル)(メタ)アクリルアミド、N−(6−ヒドロキシヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル〕(メタ)アクリルアミド、2−アクリロイルアミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチルエトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−メチルプロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド〔別名:N−(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド〕、N−(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチルエトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−エトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−プロポキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(1−メチルエトキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(1−メチルプロポキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(2−メチルプロポキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド〔別名:N−(2−イソブトキシエチル)(メタ)アクリルアミド〕、N−(2−ブトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−〔2−(1,1−ジメチルエトキシ)エチル〕(メタ)アクリルアミド等を含む。中でも、N−(メトキシメチル)アクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−(2−メチルプロポキシメチル)アクリルアミドが好ましく用いられる。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、その固形分全体の量を基準に、その他の単量体を通常0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の割合で含有する。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、以上のような、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を含み、さらに芳香環を有する単量体に由来する構造単位を任意で含むような(メタ)アクリル系樹脂を2種以上含むものであってもよい。さらに、この(メタ)アクリル系樹脂(A−1)とそれとは異なる(メタ)アクリル系樹脂(A−2)、例えば、式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有し、かつ極性官能基を有さない(メタ)アクリル樹脂等を混合したものであってもよい。式(I)の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、極性官能基を有する単量体に由来する構造単位を含み、さらに芳香環を有する単量体に由来する構造単位を任意で含むような(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、粘着剤組成物の主成分であり、その含有量は、(メタ)アクリル系樹脂全体のうち、60重量%以上、さらには80重量%以上とすることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が50万〜200万の範囲にあることが好ましく、70万〜150万の範囲にあることがより好ましい。Mwが50万以上であると、高温高湿環境下における接着性が向上し、粘着剤層を貼合する部材(例えばガラス基板)と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にある。また、Mwが200万以下であると、粘着剤層付光学部材を液晶表示装置に適用した場合に、光学部材の寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にある。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布は、通常2〜10程度の範囲にある。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)の好ましいMwは、これを含む粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成される部材(光学部材)における粘着剤層形成面の材質によっても異なる。従来、一般にアクリル系粘着剤を構成する(メタ)アクリル系樹脂には、少なくとも100万程度のMwが必要とされていたが、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)を含む粘着剤層によれば、粘着剤層形成面が、例えばセルロース系樹脂フィルムのように温度40℃、相対湿度90%の条件において概ね300g/(m2・24hr)より高い透湿度を示すフィルムで構成されているときには、Mwが50万〜100万程度と比較的小さい場合でも、上述の効果を得ることができる。このような透湿度の高い樹脂フィルムを粘着剤層形成面とする場合、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)のMwはもちろん、200万以下の範囲内で大きい値になっていても構わない。
一方、粘着剤層形成面が、鎖状若しくは環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、又はそれらを延伸して得られる位相差フィルムのように温度40℃、相対湿度90%の条件において概ね300g/(m2・24hr)以下という低い透湿度を示す樹脂フィルムで構成されているときには、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)のMwが小さいと、その粘着剤層をガラス基板等に貼ったときに、それらの間に浮きや剥れが生じやすくなる傾向にある。そのため、この場合には、(メタ)アクリル系樹脂(A−1)のMwは70万以上であることが好ましい。高温高湿下での接着性を高める観点からも、Mwは70万以上であることが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(A)は、上記のような比較的高分子量の(メタ)アクリル系樹脂(A−1)だけで構成することもできるし、これに加え、それとは異なる(メタ)アクリル系樹脂(A−3)を併用することもできる。(メタ)アクリル系樹脂(A−3)としては、例えば、上記式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とし、Mwが5万〜12万の範囲にあるものを挙げることができる。
(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種類以上を組み合わせる場合はそれらの混合物)は、それを酢酸エチルに溶かして濃度20重量%に調整した溶液が、25℃において20Pa・s以下、さらには0.1〜7Pa・sの粘度を示すことが好ましい。当該粘度が20Pa・s以下であると、高温高湿環境下における接着性が向上し、粘着剤層を貼合する部材(例えばガラス基板)と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にある。粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定できる。
(メタ)アクリル系樹脂(A−1)や任意で併用できる他の(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、公知の方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂の製造においては通常、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、(メタ)アクリル系樹脂の製造に用いられる全ての単量体の合計100重量部に対して、0.001〜5重量部程度使用される。また、(メタ)アクリル系樹脂は、例えば紫外線等の活性エネルギー線によって重合を進行させる方法により製造してもよい。
重合開始剤としては、熱重合開始剤や光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤として、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等を挙げることができる。熱重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)のようなアゾ系化合物;ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドのような有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素のような無機過酸化物等を挙げることができる。また、過酸化物と還元剤を併用したレドックス系開始剤等も、重合開始剤として使用しうる。
(メタ)アクリル系樹脂の製造方法としては、上に示した方法の中でも溶液重合法が好ましい。溶液重合法の一例は、単量体及び有機溶媒を混合し、窒素雰囲気下、熱重合開始剤を添加して、40〜90℃程度、好ましくは60〜80℃程度にて3〜10時間程度攪拌することである。反応を制御するために、単量体や熱重合開始剤を重合中に連続的又は間歇的に添加したり、有機溶媒に溶解した状態で添加したりしてもよい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;プロピルアルコール、イソプロピルアルコールのような脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等を用いることができる。
(2)シラン化合物(B)
本発明に係る粘着剤組成物は、上記式(B)で示されるシラン化合物(B)〔シランカップリング剤〕を含む。シラン化合物(B)を含有させることにより、耐久性とリワーク性とが高度に両立された粘着剤組成物を得ることができる。上記式(B)中、A1、A2及びA3は、互いに独立して、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が例示され、炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基が例示される。
上記式(B)中、Lは、炭素数8〜12のアルキレン基を表すか、又は当該アルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、−NH−、及び−O−からなる群より選択される基で置換された基を表す。炭素数8〜12のアルキレン基としては、−(CH2)8−、−(CH2)9−、−(CH2)10−、−(CH2)11−、−(CH2)12−が例示される。
Lが、炭素数8〜12のアルキレン基を構成する少なくとも1つのメチレン基が、−NH−、及び−O−からなる群より選択される基で置換された基である場合において、1つのメチレン基のみが−NH−又は−O−によって置換されていてもよいし、2以上のメチレン基がそれぞれ−NH−又は−O−によって置換されていてもよい。2以上のメチレン基が置換される場合、典型的には、置換した2以上の−NH−及び/又は−O−は、炭素数2以上のアルキレン基で結合されている。
上記式(B)中、Xは、チオール基(−SH)、下記式:
で表されるエポキシ基、アミノ基(−NH2)、又は脂環式エポキシ基を表す。脂環式エポキシ基としては、下記式:
(式中、nは1〜5の整数を表す。)
で表される構造から1つの水素原子が取り除かれた1価の基が例示される。
中でも、シラン化合物(B)は、A1、A2及びA3が互いに独立してメトキシ基又はエトキシ基であり、Xがチオール基、エポキシ基又はアミノ基であることが好ましく、上記式(B−1)で示されるシラン化合物(B−1)を含むか、又はこれよりなることがさらに好ましい。上記式(B−1)中、mは6〜10の整数を表す。
シラン化合物(B−1)の具体例を挙げれば、例えば、
6−グリシドキシヘキシルトリメトキシシラン、
7−グリシドキシへプチルトリメトキシシラン、
8−グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、
9−グリシドキシノニルトリメトキシシラン、
10−グリシドキシデシルトリメトキシシラン
である。シラン化合物(B−1)の多くは液体である。シラン化合物(B−1)は市販のものを用いてもよいし、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
粘着剤組成物におけるシラン化合物(B)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.1〜0.5重量部であり、より好ましくは0.2〜0.4重量部である。シラン化合物(B)の含有量がこの範囲であると、耐久性及びリワーク性の向上において有利である。
(3)架橋剤(C)
粘着剤組成物は、架橋剤(C)をさらに含有していてもよい。架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂(A)中の特に極性官能基含有単量体に由来する構造単位と反応し、(メタ)アクリル系樹脂(A)を架橋させる化合物である。具体的には、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物等が例示される。これらのうち、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物及びアジリジン系化合物は、(メタ)アクリル樹脂(A)中の極性官能基と反応しうる官能基を分子内に少なくとも2個有する。架橋剤(C)は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
イソシアネート系化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(−NCO)を有する化合物である。具体的な化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物に、グリセロールやトリメチロールプロパンのようなポリオールを反応せしめたアダクト体や、イソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたものも、架橋剤(C)となりうる。2種以上のイソシアネート系化合物を混合して用いることもできる。
エポキシ系化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。具体的な化合物としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。2種以上のエポキシ系化合物を混合して用いることもできる。
アジリジン系化合物は、エチレンイミンとも呼ばれる1個の窒素原子と2個の炭素原子とからなる3員環の骨格を分子内に少なくとも2個有する化合物である。具体的な化合物として、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、イソフタロイルビス−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリメチロールプロパン−トリス−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリス−β−アジリジニルプロピオネート等が挙げられる。
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム及びジルコニウム等の多価金属に、アセチルアセトンやアセト酢酸エチルが配位した化合物等が挙げられる。
中でも、イソシアネート系化合物、とりわけキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート若しくはヘキサメチレンジイソシアネート;これらのイソシアネート化合物にグリセロールやトリメチロールプロパンのようなポリオールを反応せしめたアダクト体;これらのイソシアネート化合物を二量体、三量体等にしたもの又はそれらの混合物;以上に掲げたイソシアネート系化合物の2種以上の混合物等が、好ましく用いられる。好適なイソシアネート系化合物として、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートにポリオールを反応せしめたアダクト体、トリレンジイソシアネートの二量体、及びトリレンジイソシアネートの三量体、また、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートにポリオールを反応せしめたアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体、及びヘキサメチレンジイソシアネートの三量体が挙げられる。
架橋剤(C)は、(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100重量部に対し、通常0.01〜5重量部の割合で配合され、好ましくは0.05重量部以上、また好ましくは2重量部以下である。架橋剤(C)の配合量が0.01重量部以上であると、粘着剤層の耐久性が向上する傾向にあり、また5重量部以下であると、粘着剤層付光学部材を液晶表示装置に適用したときの白ヌケが目立たなくなる傾向にある。
(4)イオン性化合物(D)
粘着剤組成物は、粘着剤層に帯電防止性を付与するための帯電防止剤としてイオン性化合物(D)をさらに含有していてもよい。イオン性化合物(D)は、無機カチオン又は有機カチオンと、無機アニオン又は有機アニオンとを有する化合物である。
無機カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン〔Li+〕、ナトリウムカチオン〔Na+〕、カリウムカチオン〔K+〕のようなアルカリ金属イオンや、ベリリウムカチオン〔Be2+〕、マグネシウムカチオン〔Mg2+〕、カルシウムカチオン〔Ca2+〕のようなアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。
有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
上記したカチオン成分のうち、有機カチオン成分は、粘着剤組成物との相溶性に優れることから好ましく用いられる。有機カチオン成分の中でも特に、ピリジニウムカチオン及びイミダゾリウムカチオンは、粘着剤層の上に設けられる剥離フィルムを剥がすときに帯電しにくいという観点から好ましく用いられる。
無機アニオンとしては、例えば、クロライドアニオン〔Cl-〕、ブロマイドアニオン〔Br-〕、ヨーダイドアニオン〔I-〕、テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4 -〕、ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7 -〕、テトラフルオロボレートアニオン〔BF4 -〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6 -〕、パークロレートアニオン〔ClO4 -〕、ナイトレートアニオン〔NO3 -〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6 -〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6 -〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6 -〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6 -〕、ジシアナミドアニオン〔(CN)2N-〕等が挙げられる。
有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン〔CH3COO-〕、トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3 -〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3 -〕、p−トルエンスルホネートアニオン〔p−CH3C6H4SO3 -〕、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO2)2N-〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO2)3C-〕、ジメチルホスフィネートアニオン〔(CH3)2POO-〕、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n -〕(nは1〜3程度)、チオシアンアニオン〔SCN-〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C4F9SO3 -〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔C3F7COO-〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕、パーフルオロプロパン−1,3−ジスルホネートアニオン〔-O3S(CF2)3SO3 -〕、カーボネートアニオン〔CO3 2-〕等が挙げられる。
上記したアニオン成分の中でも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、帯電防止性能に優れるイオン性化合物(D)を与えることから好ましく用いられる。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。
イオン性化合物(D)の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分の組み合わせから適宜選択することができる。有機カチオンを有するイオン性化合物(D)の例を有機カチオンの構造ごとに分類して掲げると、次のようなものが挙げられる。
ピリジニウム塩:
N−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−4−メチルルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ドデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−テトラデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ベンジル−2−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N−ベンジル−4−メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−オクチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N−ブチル−4−メチルルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
イミダゾリウム塩:
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム p−トルエンスルホネート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム メタンスルホネート、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド。
ピロリジニウム塩:
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
4級アンモニウム塩:
テトラブチルアンモニウム p−トルエンスルホネート、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート。
また、無機カチオンを有するイオン性化合物(D)の例を挙げると、次のようなものがある。
リチウム ブロマイド、
リチウム ヨーダイド、
リチウム テトラフルオロボレート、
リチウム ヘキサフルオロホスフェート、
リチウム チオシアネート、
リチウム パークロレート、
リチウム トリフルオロメタンスルホネート、
リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
リチウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、
リチウム p−トルエンスルホネート、
ナトリウム ヘキサフルオロホスフェート、
ナトリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
ナトリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ナトリウム p−トルエンスルホネート、
カリウム ヘキサフルオロホスフェート、
カリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
カリウム p−トルエンスルホネート。
イオン性化合物(D)は、室温において固体であることが好ましい。常温で液体であるイオン性化合物(D)を用いる場合に比べ、帯電防止性能を長期間保持することができる。このような帯電防止性の長期安定性という観点からすると、イオン性化合物(D)は、30℃以上、さらには35℃以上の融点を有することが好ましい。一方で、その融点があまり高すぎると、(メタ)アクリル系樹脂(A)との相溶性が悪くなるため、融点は好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃未満である。
粘着剤組成物におけるイオン性化合物(D)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(A)(2種以上用いる場合はそれらの合計)の固形分100重量部に対して、0.2〜8重量部であることが好ましく、0.2〜5重量部であることがより好ましく、0.5〜3重量部であることがさらに好ましい。イオン性化合物(D)の含有量が0.2重量部以上であることは、帯電防止性能の向上に有利であり、8重量部以下であることは、粘着剤層の耐久性向上に有利である。
(5)その他の成分
粘着剤組成物は、架橋触媒、耐候安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、光散乱性微粒子、(メタ)アクリル系樹脂(A)以外の樹脂等の添加剤を含有することができる。そのほか、粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
粘着剤組成物が、架橋剤(C)とともに架橋触媒を含有する場合、粘着剤層を短時間の熟成で調製することができる。また、架橋触媒を含有させると、粘着剤層とこれに隣接する部材との界面での浮きや剥れ、粘着剤層の発泡をより効果的に抑制でき、またリワーク性も一層良好になることがある。架橋触媒としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、トリメチレンジアミン、ポリアミノ樹脂及びメラミン樹脂等のアミン系化合物を挙げることができる。粘着剤組成物に架橋触媒としてアミン系化合物を配合する場合、架橋剤(C)としてはイソシアネート系化合物が好適である。
<粘着剤層>
本発明に係る粘着剤層は、上述の本発明に係る粘着剤組成物を含むものであり、典型的には本発明に係る粘着剤組成物からなる。粘着剤層は、上記粘着剤組成物を構成する各成分を溶剤に溶解又は分散して溶剤含有の粘着剤組成物とし、次いで、基材フィルム上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。本発明に係る粘着剤層は、耐久性及びリワーク性に優れている。
基材フィルムは、プラスチックフィルムであるのが一般的であり、その典型的な例として離型処理が施された剥離フィルム(セパレーター)を挙げることができる。剥離フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等の各種樹脂からなるフィルムの粘着剤層が形成される面に、シリコーン処理等の離型処理が施されたものであることができる。また、光学部材の表面に粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成し、必要に応じて粘着剤層の外面に剥離フィルムを積層して粘着剤層付光学部材としてもよい。粘着剤層を光学部材の表面に設ける際には、必要に応じて光学部材の貼合面及び/又は粘着剤層の貼合面に表面活性化処理、例えばプラズマ処理、コロナ処理等を施してもよい。
粘着剤層の厚みは、10〜45μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましく、10〜20μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが45μm以下であると、高温高湿環境下における接着性が向上し、粘着剤層を貼合する部材(例えばガラス基板)と粘着剤層との間に浮きや剥れの発生する可能性が低くなる傾向にあり、しかもリワーク性が向上する傾向にある。またその厚みが10μm以上であると、粘着剤層付光学部材を液晶表示装置に適用した場合に、光学部材の寸法が変化しても、その寸法変化に粘着剤層が追随して変動するので、液晶セルの周縁部の明るさと中心部の明るさとの間に差がなくなり、白抜けや色ムラが抑制される傾向にある。従来一般的には、液晶セルに貼着される粘着剤層の厚みは、25μmが標準とされていたが、本発明においてはその厚みを20μm以下としても、粘着剤層として十分な性能を発揮する。
<粘着剤層付光学部材>
本発明に係る粘着剤層は、部材同士、とりわけ光学部材同士を貼合するための粘着剤層として好適に用いることができる。本発明に係る粘着剤層付光学部材は、例えば、ある光学部材に粘着剤層が積層されたものであることができるほか、その粘着剤層の外面にさらに他の光学部材が積層貼合されたものであることができる。
(1)第1実施形態
本発明に係る粘着剤層付光学部材の1つの好ましい実施形態は、樹脂フィルムとその少なくとも一方の面に積層される粘着剤層とを含むものである。樹脂フィルムは、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムや、被保護体である光学フィルム等に貼合され、その表面を傷や汚れから保護する目的で用いられる表面保護フィルムを挙げることができる。
偏光子は、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有するフィルムであり、好適な例は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素が吸着配向しているものである。偏光子の厚みは特に制限されないが、通常0.5〜35μmである。
保護フィルムは、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂からなるフィルムであることができる。保護フィルムには、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤が配合されていてもよい。好ましくは、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂である。
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等のノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
セルロース系樹脂は、セルロースの部分又は完全エステル化物であり、例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステル等が挙げられる。中でも、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が好ましく用いられる。
ポリエステル系樹脂はエステル結合を有する、上記セルロース系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としてはジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしてはジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルを主たるモノマーとする重合体であることができ、これに少量の他のコモノマー成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、より好ましくはメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体であり、第三の単官能モノマーをさらに共重合させてもよい。
第三の単官能モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ブチルのようなヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類;クロロスチレン、ブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α−メチルスチレンのような置換スチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、無水シトラコン酸のような不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドのような不飽和イミド類等を挙げることができる。第三の単官能モノマーは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂には、多官能モノマーをさらに共重合させてもよい。多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような2価アルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールをアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等にグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンのような芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。また(メタ)アクリル系樹脂は、グルタルイミド誘導体、グルタル酸無水物誘導体又はラクトン環構造のいずれかの構造を有してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは90〜160℃、より好ましくは110〜160℃、さらに好ましくは120〜150℃である。
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。
(メタ)アクリル樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。この弾性重合体の例として、アクリル酸アルキルを主成分とし、これに共重合可能な他のビニルモノマー及び架橋性モノマーを共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、特に炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸が好ましく用いられる。このアクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニルモノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メチルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。架橋性モノマーとしては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
ゴム粒子を含まないアクリル樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含むアクリル樹脂からなるフィルムとの積層物を保護フィルムとすることもできる。
位相差フィルムは、光学異方性を示す光学フィルムであり、上記保護フィルムに用いることができる樹脂のほか、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニル系樹脂等からなる樹脂フィルムを1.01〜6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムであることができる。中でも、ポリカーボネート系樹脂フィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルム又はセルロース系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸した延伸フィルムが好ましい。また本明細書においては、ゼロレタデーションフィルムも位相差フィルムに含まれる(ただし、保護フィルムとして用いることもできる。)。そのほか、一軸性位相差フィルム、広視野角位相差フィルム、低光弾性率位相差フィルム等と称されるフィルムも位相差フィルムとして適用可能である。
ゼロレタデーションフィルムとは、面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthがともに−15〜15nmであるフィルムをいう。この位相差フィルムは、IPSモードの液晶表示装置に好適に用いられる。面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、好ましくはともに−10〜10nmであり、より好ましくはともに−5〜5nmである。ここでいう面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値である。
面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、それぞれ下記式:
Re=(nx−ny)×d
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d
で定義される。式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向(x軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向(面内でx軸に直交するy軸方向)の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向(フィルム面に垂直なz軸方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚みである。
ゼロレタデーションフィルムには、例えば、セルロース系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂フィルムを用いることができる。特に、位相差値の制御が容易で、入手も容易であることから、セルロース系樹脂、ポリオレフィン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂が好ましく用いられる。例えば、(メタ)アクリル系樹脂とは異なる樹脂からなる位相差発現層の片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂を積層したものを位相差フィルムとすることもできる。
位相差フィルムや保護フィルムのような光学フィルムに粘着剤層を積層し、その粘着剤層を介してガラス基板等に貼合する場合、その光学フィルムの透湿度が小さいと、粘着剤層中の水分が抜けにくくなるため、その水分に起因して発泡が生じる等、特に高温条件下での耐久性において不利になることが多い。これに対し、本発明に係る粘着剤層付光学部材においては、光学部材として光学フィルムを用いる場合、その光学フィルムが、JIS Z 0208に規定されるカップ法により、40℃の温度及び90%の相対湿度で測定される透湿度が300g/(m2・24hr)以下と小さい場合であっても、優れた耐久性を示すことができる。透湿度の低い光学フィルムの例としては、上に掲げたような環状ポリオレフィン系樹脂フィルムや(メタ)アクリル系樹脂フィルムが挙げられる。
また、液晶性化合物の塗布・配向によって光学異方性を発現させたフィルムや、無機層状化合物の塗布によって光学異方性を発現させたフィルムも、位相差フィルムとして用いることができる。このような位相差フィルムには、温度補償型位相差フィルムと称されるもの、また、JX日鉱日石エネルギー(株)から「NHフィルム」の商品名で販売されている棒状液晶が傾斜配向したフィルム、富士フイルム(株)から「WVフィルム」の商品名で販売されている円盤状液晶が傾斜配向したフィルム、住友化学(株)から「VACフィルム」の商品名で販売されている完全二軸配向型のフィルム、同じく住友化学(株)から「new VACフィルム」の商品名で販売されている二軸配向型のフィルム等がある。
一方、表面保護フィルムは、被保護体である光学フィルム等の表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるフィルムであり、例えば、液晶表示装置用の光学部材である偏光子、保護フィルム、位相差フィルム、光拡散シート、反射シート等の各種光学フィルムは通常、その表面(片面に粘着剤層を有する場合は、その粘着剤層と反対側の面)に表面保護フィルムを貼合した状態で流通している。表面保護フィルムは、上記光学フィルムを液晶セル等に貼合した後、剥離除去されるのが通例である。
表面保護フィルムの基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレンのようなフッ素化ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体のようなポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6のようなポリアミド;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンのようなビニル重合体;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンのようなセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル系樹脂;その他、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等が挙げられる。樹脂フィルムが表面保護フィルムである本発明に係る粘着剤層付光学部材は、この基材上に粘着剤層を設けたものである。
本実施形態に係る粘着剤層付光学部材において、その粘着剤層表面には、上述の剥離フィルムを貼着し、使用時まで仮着保護しておくことが好ましい。剥離フィルムが貼着された本実施形態に係る粘着剤層付光学部材は、剥離フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層にさらに樹脂フィルムを積層する方法、樹脂フィルムの上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成し、その粘着剤面に剥離フィルムを貼り合わせる方法によって製造できる。
(2)第2実施形態
本発明に係る粘着剤層付光学部材の他の好ましい実施形態は、樹脂フィルムの積層体とその少なくとも一方の面に積層される粘着剤層とを含むものである。樹脂フィルムの積層体は、偏光子、保護フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム等から選択される光学フィルムの積層体であることが好ましい。光学フィルムの積層体の代表例は、偏光板である。本実施形態に係る粘着剤層付光学部材においても、その粘着剤層表面には、剥離フィルムを貼着し、使用時まで仮着保護しておくことが好ましい。
偏光板としては、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する直線偏光板、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を反射し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する偏光分離板、直線偏光板に位相差フィルムを積層した楕円偏光板等が挙げられる。
直線偏光板は一般に、上述の偏光子の片面又は両面に、上述の保護フィルムが貼合された構成を有する。偏光子の両面に保護フィルムが貼合される場合は、その保護フィルムの表面に粘着剤層が形成される。偏光子の片面にのみ保護フィルムを貼合する場合は、偏光子の表面(保護フィルムの貼合されていない面)に粘着剤層を形成することができる。楕円偏光板は、直線偏光板に位相差フィルムを積層したものであるが、その直線偏光板も一般に、上と同じ構成を有する。楕円偏光板に粘着剤層を積層するときは通常、位相差フィルム側に粘着剤層を積層する。
光学部材が偏光板である場合における粘着剤層付光学部材の具体例を図面を参照して説明する。図1に示す例では、偏光子1の片面に、表面処理層2を有する保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着して偏光板10が構成されている。偏光子1の保護フィルム3とは反対側の面に粘着剤層20が設けられ、粘着剤層付偏光板(粘着剤層付光学部材)25が構成されている。この粘着剤層20は、偏光板10とは反対側の面でガラス基板30に貼合することができるが、ガラス基板30については後述する。
図2に示す例では、偏光子1の片面に、表面処理層2を有する第1の保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光子1の他面には、第2の保護フィルム4を貼着して偏光板10が構成されている。第2の保護フィルム4の外面に粘着剤層20が設けられ、粘着剤層付偏光板25が構成されている。
図3に示す例では、偏光子1の片面に、表面処理層2を有する保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光子1の他面には、層間粘着剤8を介して位相差フィルム7を貼着して偏光板10が構成されている。位相差フィルム7の外面に粘着剤層20が設けられ、粘着剤層付偏光板25が構成されている。
図4に示す例では、偏光子1の片面に、表面処理層2を有する第1の保護フィルム3をその表面処理層2とは反対側の面で貼着し、偏光子1の他面には、第2の保護フィルム4を貼着し、さらにその外面に層間粘着剤8を介して位相差フィルム7を貼着して偏光板10が構成されている。位相差フィルム7の外面に粘着剤層20が設けられ、粘着剤層付偏光板25が構成されている。
保護フィルム3の表面に形成される表面処理層2は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層等であることができる。これらのうち複数の層を設けることも可能である。
図3及び図4に示す例のように、偏光板10が位相差フィルム7を含む場合、中小型の液晶表示装置であれば、位相差フィルム7の好適な例として、1/4波長板を挙げることができる。この場合は、偏光子1の吸収軸と位相差フィルム7の遅相軸とがほぼ45度で交差するように配置するのが一般的であるが、液晶セルの特性に応じてその角度を45度からある程度ずらすこともある。一方で、テレビ等の大型液晶表示装置であれば、液晶セルの位相差補償や視野角補償を目的に、その液晶セルの特性に合わせて各種の位相差値を有する位相差フィルム7が用いられる。この場合は、偏光子1の吸収軸と位相差フィルム7の遅相軸とがほぼ直交又はほぼ平行の関係となるように配置するのが一般的である。位相差フィルム7を1/4波長板で構成する場合は、一軸又は二軸の延伸フィルムが好適に用いられる。また、位相差フィルム7を液晶セルの位相差補償や視野角補償の目的で設ける場合には、一軸又は二軸延伸フィルムのほか、一軸又は二軸延伸に加えて厚み方向にも配向させたフィルム、支持フィルム上に液晶等の位相差発現物質を塗布して配向固定させたフィルム等、光学補償フィルムと呼ばれるものを、位相差フィルム7として用いることもできる。
図3及び図4における層間粘着剤8には、一般的なアクリル系粘着剤を用いるのが通例であるが、本発明に係る粘着剤層を形成することももちろん可能である。先に述べた大型液晶表示装置のように、偏光子1の吸収軸と位相差フィルム7の遅相軸とがほぼ直交又はほぼ平行の関係となるように配置する場合等においては、層間粘着剤8に代えて、接着剤を用いることも可能である。接着剤としては、例えば、水溶液又は水分散液で構成され、溶剤である水を蒸発させることによって接着力を発現する水系接着剤、紫外線照射によって硬化し、接着力を発現する紫外線硬化型接着剤等を挙げることができる。偏光子1と保護フィルム3,4との貼合も通常接着剤を用いて行われる。
(3)第3実施形態
本発明に係る粘着剤層付光学部材のさらに他の好ましい実施形態は、上記第1又は第2実施形態に係る粘着剤層付光学部材における粘着剤層の外面にさらに他の光学部材が積層貼合されたものである。当該他の光学部材は、好適にはガラス基板であり、図1〜図4には、第2実施形態に係る粘着剤層付偏光板をガラス基板30に貼合する様子を併せて示している。
ガラス基板30としては、例えば、液晶セルのガラス基板、防眩用ガラス、サングラス用ガラス等を挙げることができる。ガラス基板30の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。中でもガラス基板は、液晶セルのガラス基板であることが好ましい。
液晶セルには通常、その両面に粘着剤層を介して偏光板が積層されるが、これらの偏光板のうち、液晶セルの前面側(視認側)に配置される偏光板のみが本発明に係る粘着剤層付偏光板であってもよいし、液晶セルの背面側(バックライト側)に配置される偏光板のみが本発明に係る粘着剤層付偏光板であってもよいし、これらの双方が本発明に係る粘着剤層付偏光板であってもよい。液晶セルの駆動方式は、従来公知のいかなる方式であってもよい。背面側(バックライト側)に配置される偏光板は通常、表面処理層2を有しない。背面側に配置される外側の偏光板の外面に輝度向上フィルム、集光フィルム、拡散フィルム等、液晶セルの背面側に配置されることが知られている各種光学フィルムを設けることもできる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下、使用量ないし含有量を表す部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
以下の例において、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel XL」を4本、及び昭和電工(株)製で昭光通商(株)が販売する「Shodex GPC KF−802」を1本の計5本を直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度5mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
<製造例:粘着剤層用(メタ)アクリル系樹脂(A)の製造>
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル77.0部、アクリル酸メチル20.0部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2.0部及びアクリル酸1.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.14部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。開始剤添加1時間後に、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が35%になるよう、添加速度17.3部/hrで酢酸エチルを連続的に反応容器内に加えながら、内温54〜56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20%となるように調節し、(メタ)アクリル系樹脂(A)の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂(A)は、重量平均分子量Mwが143万、分子量分布Mw/Mnが5.23であった。
<実施例1〜4、比較例1〜3>
(1)粘着剤組成物の調製
上記製造例1で得られた(メタ)アクリル系樹脂(A)の固形分100部に対し、表1に示すシラン化合物(B)、架橋剤(C)、及びイオン性化合物(D)をそれぞれ表1に示す量混合し、さらに固形分濃度が14%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物の溶液を調製した。
表1において略称で示される各配合成分の詳細は次のとおりである。
〔シラン化合物(B)〕
下記表2参照。
〔架橋剤(C)〕
コロネートL:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)、日本ポリウレタン(株)から入手。
〔イオン性化合物(D)〕
AS1:N−オクチル−4−メチルピリジニウム へキサフルオロホスフェート(融点44℃)。
(2)粘着剤層の作製
上記(1)で調製した各粘着剤組成物を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレーター〔リンテック(株)から入手した「PLR−382051」〕の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層(粘着剤シート)を作製した。
(3)(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムの作製
メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル(重量比96/4)の共重合体を(メタ)アクリル系樹脂として用意した。また、最内層がメタクリル酸メチルと少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された硬質の重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分とし、さらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質の重合体からなる3層構造の弾性体粒子であって、中間層である弾性体までの平均粒径が240nmのものをゴム粒子として用意した。
上記の(メタ)アクリル系樹脂とゴム粒子とが前者/後者=70/30の重量比で配合されているペレットに、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加したものを、二軸押出機で溶融混練しつつ、そのペレット100部に対して滑剤であるステアリン酸を0.05部加えて混合し、樹脂組成物のペレットとした。このペレットを65mmφの一軸押出機に投入し、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、押し出されたフィルム状溶融樹脂の両面を、45℃に温度設定された鏡面を有する2本のポリシングロールで挟み込んで冷却して、厚み80μmの(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムを作製した。
(4)粘着剤層付偏光板の作製
一軸延伸ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向された厚み23μmの偏光子の片面に上記(3)で作製した(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムを、他方の面に環状ポリオレフィン系樹脂からなる厚み50μmの位相差フィルムを、エポキシ系接着剤を介して貼合することにより偏光板を作製した。次いで、位相差フィルムの外面に、上記(2)で作製した粘着剤シートにおけるセパレーターとは反対側の面(粘着剤層面)をラミネーターにより貼り合わせた後、温度23℃、相対湿度65%の条件で7日間養生して、粘着剤層付偏光板を得た。ただし、実施例4の粘着剤組成物を用いた粘着剤層付偏光板の作製においては、(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムの代わりに、トリアセチルセルロース(TAC)からなる厚み60μmの保護フィルム〔富士フイルム(株)製の「フジタック TD60UL」、紫外線吸収剤含有〕を用いた。
各実施例・比較例で作製した粘着剤層付偏光板の層構成を表3に示す。
(5)耐久性の評価
上記(4)で作製した粘着剤層付偏光板からセパレーターを剥がした後、その粘着剤層面を液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の「Eagle XG」〕の両面にクロスニコルになるように貼着して評価用サンプルを作製した。このサンプルを用いて次の3種の耐久性試験を実施した。
〔耐久性試験〕
・温度80℃の乾燥条件下で750時間保持する耐熱試験、
・温度60℃、相対湿度90%の環境下で750時間保持する耐湿熱試験、
・温度70℃の乾燥条件下で30分保持し、次いで温度−40℃の乾燥条件下で30分保持する操作を1サイクルとし、これを500サイクル繰り返す耐ヒートショック(HS)試験。
各試験後のサンプルを目視観察し、下記の評価基準に従って耐久性を評価した。結果を表4に示す。
A:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が全くみられない、
B:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がほとんどみられない、
C:浮き、剥れ、発泡等の外観変化がやや目立つ、
D:浮き、剥れ、発泡等の外観変化が顕著に認められる。
(6)リワーク性の評価
上記(4)で作製した粘着剤層付偏光板をサイズ25mm×150mmの試験片に裁断した。次に、この試験片からセパレーターを剥がした後、その粘着剤層面を、液晶セル用ガラス基板〔コーニング社製の「Eagle XG」〕に貼着し、温度50℃、圧力5kg/cm2(490.3kPa)で20分間オートクレーブ処理を行った。次いで、前処理を実施した後に、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、ガラス基板に貼着された試験片から偏光板を粘着剤層ごと300mm/分の速度で180°方向(偏光板を剥がして裏返しとなった状態でガラス基板面に平行な方向)に剥離する剥離試験を行った。この剥離試験を、下記3種の前処理を行った試験片それぞれについて実施した。
〔前処理の条件〕
・常温前処理:23℃で24時間保持、
・加温前処理1:50℃で4時間保持した後、23℃で5日間保持、
・加温前処理2:50℃で48時間保持した後、23℃で4時間保持。
剥離試験後のガラス基板表面の状態を目視観察し、下記の評価基準に従ってリワーク性を評価した。結果を表4に示す。
A:ガラス板表面に曇り及び糊残りが全く認められない、
B:ガラス板表面に曇り及び糊残りがほとんど認められない、
C:ガラス板表面に糊残りはほとんどみとめられないが、曇りが認められる、
D:ガラス板表面に糊残りが認められる。