以下の説明では、直流電力を交流電力に変換する電力変換回路について説明する。例えば太陽光発電装置や蓄電装置から供給される電力を電源として使用する際に、供給される電力が直流電力である場合、交流電力に変換して使用したいという要望がある。この場合、直流電力を交流電力に変換するために電力変換回路が用いられる。例えば住宅やビルなどの建物に設置された蓄電装置や太陽光発電装置などから供給される直流電力を、電力変換回路を用いて交流電力に変換することで、交流電力で使用される負荷(例えば電気機器など)に電力を供給することができる。
(実施形態1)
本実施形態の電力変換回路1、およびそれを用いた電力変換装置100について図を参照して説明する。
電力変換回路1は、図1に示すように、インバータ回路2と、第1制御部と、第2制御部と、クランプ回路4と、(第1)コンデンサ61〜(第4)コンデンサ64と、接続部材7とを備える。電力変換回路1はさらに、(第1)リアクトル51と、(第2)リアクトル52とフィルタ回路104と、フィルタ回路105とを備える。
本実施形態の電力変換装置100は、上記した電力変換回路1と、電力変換回路1を収納する筐体110とを備える。
インバータ回路2は、電源107(直流電源)に電気的に接続される(第1)入力端201と(第2)入力端202とを有する。インバータ回路2は、電源107から供給される直流電力を交流電力に変換して出力する回路である。本実施形態のインバータ回路2は、入力端201,202間に入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する。
電源107は、例えば蓄電装置や太陽光発電装置などを含み、直流の電圧V0を出力するように構成されている。電源107の正極は入力端201に電気的に接続され、電源107の負極は入力端202に電気的に接続されている。
入力端201,202間には、フィルタ回路104が電気的に接続される。フィルタ回路104は、入力端201,202間に電気的に接続されるコンデンサ101,102の直列回路を有する。フィルタ回路104は、例えば輻射ノイズや電源107からの伝導ノイズなどを抑制するように構成されている。またフィルタ回路104は、インバータ回路2からのスイッチング・ノイズが電源107に伝わるのを抑制する。
コンデンサ101の一端は入力端201に電気的に接続され、コンデンサ101の他端はコンデンサ102の一端に電気的に接続されている。コンデンサ102の他端は入力端202に電気的に接続され、コンデンサ102の一端はコンデンサ101の他端に電気的に接続されている。コンデンサ101およびコンデンサ102の接続点106は、筐体110と電気的に接続されている。そのため接続点106の電位は、筐体110の電位と等しくなる。
コンデンサ101,102はそれぞれ、静電容量が等しく、かつ、同じ種類のコンデンサで構成されている。コンデンサ101,102のそれぞれの両端には、電源107から出力される電圧V0の半分の電圧V1が印加される。
筐体110は金属材料で形成され、電力変換回路1を収納する。筐体110は電力変換回路1に対して十分に大きい静電容量を有するように構成されていて、電力変換回路1に対する基準電位を定めている。なお、電力変換回路1に対する基準電位は、筐体110によって定められることに限定される趣旨ではない。電力変換回路1に対する基準電位を定めることができるほど静電容量が十分に大きい適宜の部材と接続点106とを電気的に接続してもよい。
つまり接続点106の電位は、基準電位と等しい。以下では、接続点106の電位を基準電位と記載して説明する。
上述したように、コンデンサ101,102のそれぞれの両端には、電圧V0の半分の電圧V1が印加される。そのため、コンデンサ101の一端が電気的に接続されている入力端201の電位は、基準電位に対して電圧V1だけ高い正電位となる。そしてコンデンサ102の他端が電気的に接続されている入力端202の電位は、基準電位に対して電圧V1だけ低い負電位となる。
入力端201,202間には、(第1)コンデンサ61と(第2)コンデンサ62との直列回路が直接接続される。ここでいう直接接続とは、2つの部品が他の素子や回路を介さずに接続されていることを言う。以下、2つの部品が他の素子や回路を介さずに接続されていることを直接接続すると表記する。コンデンサ61,62はそれぞれ静電容量が等しく、かつ、同じ種類のコンデンサで構成される。
コンデンサ61,62間をつなぐ電路には(第1)接続点601が設けられている。コンデンサ61,62の直列回路の両端には電圧V1の2倍の電圧が印加されているが、コンデンサ61,62はそれぞれ静電容量が等しく、かつ、同じ種類のコンデンサで構成されているため、コンデンサ61,62の両端間の電圧はそれぞれV1となる。ゆえに、接続点601の電位は、基準電位と等しくなる。
インバータ回路2は、入力端201と入力端202との間に電気的に接続される第1スイッチ21および第2スイッチ22の直列回路(第1アーム)を有する。インバータ回路2は、入力端201と入力端202との間に電気的に接続される第3スイッチ23および第4スイッチ24の直列回路(第2アーム)を有する。
第1スイッチ21は、導通方向が片方向のスイッチング素子211およびスイッチング素子211と逆並列に接続されるダイオード212を有する。第2スイッチ22は、導通方向が片方向のスイッチング素子221およびスイッチング素子221と逆並列に接続されるダイオード222を有する。第3スイッチ23は、導通方向が片方向のスイッチング素子231およびスイッチング素子231と逆並列に接続されるダイオード232を有する。第4スイッチ24は、導通方向が片方向のスイッチング素子241およびスイッチング素子241と逆並列に接続されるダイオード242を有する。ダイオード212,222,232,242は、導通方向が入力端202から入力端201の方向となるように設けられている。スイッチング素子211,221,231,241は、本実施形態では絶縁ゲートバイポーラトランジスタで構成されている。なお、導通方向が片方向のスイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの他にも、例えばゲートターンオフサイリスタや、ゲート転流型ターンオフサイリスタや、光トリガサイリスタや、双方向サイリスタなどでもよい。また、第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々は、寄生ダイオードを有するMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などでもよい。
インバータ回路2は、それぞれ負荷103に電気的に接続される(第1)出力端203と(第2)出力端204を有する。出力端203は、第1スイッチ21および第2スイッチ22の接続点205に電気的に接続されている。出力端204は、第3スイッチ23および第4スイッチ24の接続点206に電気的に接続されている。なお、接続点205は便宜上設けた接続点であり、第1スイッチ21と第2スイッチ22とが接続される端子が設けられていることに限定されない。また、接続点206は便宜上設けた接続点であり、第3スイッチ23と第4スイッチ24とが接続される端子が設けられていることに限定されない。
インバータ回路2は、後述する制御部3によって第1スイッチ21〜第4スイッチ24のオンオフを制御される。制御部3は、第1スイッチ21および第3スイッチ23と、第2スイッチ22および第4スイッチ24とを周期的に交互にオンオフすることにより直流電圧を矩形の交流電圧に変換する。
出力端203には、(第1)リアクトル51の一端が電気的に接続されている。リアクトル51の他端には接続点511が設けられている。接続点511には負荷103の一端が電気的に接続されている。出力端204には、(第2)リアクトル52の一端が電気的に接続されている。リアクトル52の他端には接続点521が設けられている。接続点521には負荷103の他端が電気的に接続されている。負荷103の両端間には、フィルタ回路105から出力される正弦波交流電圧が印加される。リアクトル51,52はそれぞれ、出力端203,204間から出力される電圧が周期的にハイレベルからローレベルに切り替えられた際に、負荷103に出力される電流を徐々に変化させる。またリアクトル51,52はそれぞれ、出力端203,204間から出力される電圧が周期的にローレベルからハイレベルに切り替えられた際に、負荷103に出力される電流を徐々に変化させる。
本実施形態の電力変換回路1は、負荷103と並列に接続されるフィルタ回路105をさらに備えている。フィルタ回路105は、例えば大容量のコンデンサを有し、インバータ回路2から出力される交流の電圧V3の波形を滑らかにして正弦波交流電圧にする。またフィルタ回路105は、輻射ノイズや伝導ノイズや、インバータ回路2およびクランプ回路4からのスイッチング・ノイズなどのノイズが負荷103に伝わることを抑制する。
出力端203,204間には、クランプ回路4が電気的に接続されている。クランプ回路4は、第5スイッチ45(第1クランプ用スイッチ)と第6スイッチ46(第2クランプ用スイッチ)との直列回路からなるクランプ用スイッチを有し、出力端203,204間を短絡または開放する。
第5スイッチ45は、導通方向が片方向のスイッチング素子451(クランプ用スイッチング素子)およびスイッチング素子451と逆並列に接続されるダイオード452(クランプ用ダイオード)を有する。第6スイッチ46は、導通方向が片方向のスイッチング素子461(クランプ用スイッチング素子)およびスイッチング素子461と逆並列に接続されるダイオード462(クランプ用ダイオード)を有する。ダイオード452,462は導通方向が互いに逆方向となるように設けられている。この構成により、スイッチング素子461がオンの場合、スイッチング素子461→ダイオード452→リアクトル51→負荷103→リアクトル52の順(図1における時計回り)に電流が流れる電路が形成される。また、スイッチング素子451がオンの場合、スイッチング素子451→ダイオード462→リアクトル52→負荷103→リアクトル51の順(図1における反時計回り)に電流が流れる電路が形成される。すなわちクランプ回路4は、リアクトル51,52を短絡または開放する機能を有する。
またクランプ回路4は、それぞれのスイッチング素子451,461がオンの場合には、リアクトル51,52間を短絡する。リアクトル51,52間が短絡されると出力端203,204間の電圧がゼロボルトにクランプされ、出力端203,204から負荷103側に電圧が印加されなくなる。つまりクランプ回路4は、インバータ回路2の出力電圧が負荷103に印加されないようにする機能を有する。インバータ回路2の出力電圧がクランプ回路4によりゼロボルトにクランプされると、リアクトル51,52はエネルギーを電流として放出するので、クランプ回路4と負荷103とには回生する電流が流れる。
スイッチング素子451,461は、本実施形態では絶縁ゲートバイポーラトランジスタで構成されている。なお、導通方向が片方向のスイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタの他にも、例えばゲートターンオフサイリスタや、ゲート転流型ターンオフサイリスタや、光トリガサイリスタや、双方向サイリスタなどでもよい。また、第5スイッチおよび第6スイッチは、寄生ダイオードを有するMOSFETなどでもよい。
第5スイッチ45および第6スイッチ46は第2制御部(制御部3)によってオンオフ制御される。第5スイッチ45と第6スイッチ46とのうち少なくとも一方がオンすることにより、リアクトル51,52間を短絡してリアクトル51,52を流れる電流を負荷103に流す。なお、第2制御部の動作については後述する。
本実施形態の第1スイッチ21〜第4スイッチ24および第5スイッチ45、第6スイッチ46の各々は寄生容量を有しているが、容量成分の図示は省略する。
リアクトル51および負荷103の接続点511と、リアクトル52及び負荷103の接続点521との間には、(第3)コンデンサ63および(第4)コンデンサ64の直列回路が電気的に接続される。本実施形態のコンデンサ63,64の直列回路は、接続点511と接続点521とに直接接続されている。なお、接続点511,521はコンデンサ63,64の直列回路の電圧を説明するために便宜上設けた接続点であり、接続点511,521が設けられていることに限定される趣旨ではない。
コンデンサ63,64間をつなぐ電路には(第2)接続点602が設けられている。
接続点601と接続点602との間には、金属材料で形成された電線からなる接続部材7が電気的に接続されている。そのため接続点602の電位は、接続点601の電位に接続部材7の両端の電位差を加えた値となる。接続部材7のインピーダンスが十分に低い場合は接続部材7の両端の電位差は十分小さいので、接続点602の電位は接続点601の電位とほぼ同じ電位となる。接続点601の電位は基準電位と等しいので、接続部材7が接続点601,602間を電気的に接続することにより、接続点602の電位を基準電位とほぼ同じにできる。なお、接続部材7は、電線に限定されず、例えばプリント回路板上に積層された導電性の薄膜からなる導電体でもよいし、導電材料で形成されたヒートシンクを含んでいてもよいし、導電材料で形成された適宜の部材を含んでいてもよい。
接続点601,602間を直線状の電線で電気的に接続することで、電線の長さを最小にできるので、電線を電流が流れる際の輻射ノイズを極力抑えることができる。
コンデンサ63,64はそれぞれ、負荷103よりもインピーダンスが低いコンデンサで構成される。そのため接続点511,521間を流れる電流が急激に変化した場合、その電流の多くは負荷103よりもコンデンサ63,64に流れる。
またコンデンサ63,64はそれぞれ、静電容量が等しく、かつ、同じ種類のコンデンサで構成される。そのため、コンデンサ63,64の直列回路の両端に交流の電圧V3が印加された際に、それぞれのコンデンサ63,64の両端間の電圧は、電圧V3の半分の電圧V2となる。接続点602の電位は基準電位と等しいため、それぞれの接続点511,521の電位と基準電位との電位差は電圧V2となる。また、接続点511,521の電位の正負は互いに逆となる。
第1制御部は、インバータ回路2を制御する。第1制御部は、第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々のオンオフを制御し、入力端201,202間に入力される直流電圧を矩形の交流電圧に変換して出力端203,204間から出力させる。また第1制御部は、それぞれの第1スイッチ21〜第4スイッチ24のオンオフタイミングを制御して、矩形の交流電圧のデューティ比を変化させる。本実施形態の第1制御部は、後述する制御部3によって実現されている。
第2制御部は、クランプ回路4を制御する。本実施形態のクランプ回路4は、第5スイッチ45(第1クランプ用スイッチ)および第6スイッチ46(第2クランプ用スイッチ)の直列回路からなるクランプ用スイッチを有する。つまり制御部2は、第5スイッチ45および第6スイッチ46のスイッチング動作を制御する。第2制御部は、第5スイッチ45および第6スイッチ46のオンオフを制御して、リアクトル51,52間を短絡するか、またはリアクトル51,52を流れる電流の方向を制御する。第2制御部は、リアクトル51,52によって回生する電流を制御して、負荷103に供給される交流電流の波形を正弦波に近づける。本実施形態の第2制御部は、制御部3によって実現されている。
制御部3は、マイクロコンピュータで構成されている。制御部3は、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されている適宜のプログラムを読み込んで実行することにより、所望の機能を実現する。制御部3は、第1制御部および第2制御部のそれぞれの制御機能を実現するプログラムを有している。なお、制御部3は、マイクロコンピュータで構成されることに限定されず、IC(Integrated Circuit)などで構成されていてもよい。
制御部3は、スイッチング素子211,221,231,241,451,461をそれぞれオンオフ制御するための信号S31〜S36を出力する。制御部3は、スイッチング素子211のゲート端子に信号S31を出力し、スイッチング素子221のゲート端子に信号S32を出力し、スイッチング素子231のゲート端子に信号S33を出力し、スイッチング素子241のゲート端子に信号S34を出力する。また制御部3は、スイッチング素子451のゲート端子に信号S35を出力し、スイッチング素子461のゲート端子に信号S36を出力する。制御部3は、ハイレベルの電圧信号を信号S31〜S36として出力し、対応するスイッチング素子をオン状態にする。制御部3は、ローレベルの電圧信号を信号S31〜S36として出力し、対応するスイッチング素子をオフ状態にする。なお、制御部3は、ハイレベルの電圧信号を出力して対応するスイッチング素子をオフ状態にし、ローレベルの電圧信号を出力して対応するスイッチング素子をオン状態にするように構成されていてもよい。また、制御部3は、電圧信号でスイッチング素子をオンオフ制御することに限定されず、電流信号などの適宜の信号を用いてよい。
次に、制御部3がインバータ回路のスイッチ素子(スイッチング素子211,221,231,241,451,461)のオンオフ状態を制御して直流電圧を交流電圧に変換する動作について図2、図3および図4を参照して説明する。以下では、制御部3が負荷103に正電圧を印加し、その後、負荷103に負電圧を印加する動作について説明する。なお、図3および図4では、説明を簡単にするために電源107と、インバータ回路2のスイッチング素子およびダイオードと、出力端203,204と、リアクトル51,52と、負荷103とを図示し、他の構成の図示を省略する。また、図3、図4、および後述する図5では、説明をわかりやすくするために、オン状態のスイッチング素子は点線の円で囲んで図示する。
制御部3には、それぞれ動作モードの異なる第1モード〜第6モードが設定されている。各動作モードでは制御部3によってオンオフ制御されるスイッチング素子が異なる。制御部3は、第1モード〜第6モードを周期的に繰り返すことで直流電圧を交流電圧に変換する。
制御部3は、第1モードではハイレベルの信号S31,S34,S36を出力してスイッチング素子211,241,461をオン状態にする。スイッチング素子211,241,461がオン状態になると、図3Aに示すように、電流I1が流れる。つまり電流I1は、電源107の正極→スイッチング素子211→リアクトル51→負荷103→リアクトル52→スイッチング素子241→電源107の負極の順に流れる。リアクトル51,52は電流I1によりエネルギーを蓄える。出力端203,204間には、電圧値がV0と等しい電圧V4が印加されている。出力端203の電位は正電位となっていて、出力端204の電位は負電位となっている。以下の説明では、図3Aに示す電圧V4の矢印方向(出力端204から出力端203に向かう方向)を、電圧V4の正の電圧と定義する。つまり第1モードとは、電源107から出力端203,204間に正方向の電圧を印加する動作モードである。また、図3Aに示す電流I1の矢印方向(リアクトル51から負荷103に電流が流れる方向)を電流I1の順方向と定義する。つまり第1モードでは順方向の電流I1が流れる。なお、本実施形態の第1モードでは、制御部3はスイッチング素子461をオン状態にしているが、スイッチング素子461の状態をオフ状態に維持してもよい。その場合、制御部3は、スイッチング素子461を第1モードの後でオン状態にするように構成されていればよい。
制御部3は、所望の期間だけ第1モードで動作した後、第2モードで動作する。第2モードとは、電源107から出力端203,204間に電圧を印加しない動作モードである。制御部3は、第2モードでは、ローレベルの信号S31〜S34を出力してスイッチング素子211,221,231,241を全てオフ状態にする。第2モードになると、図3Bに示すように、リアクトル52→スイッチング素子461→ダイオード452→リアクトル51→負荷103の順に電流I1が流れる。リアクトル51,52は、蓄えたエネルギーを電流として放出するので、負荷103には順方向の電流I1が流れる。出力端203,204間は短絡しているので電圧V4はゼロボルトにクランプされる。また、出力端203および出力端204の電位は接続点601の電位とほぼ同じ安定した電位となっている。
次に、制御部3が出力端203,204間に負の電圧V4(つまり電圧値が−V0)を出力する第3動作モード〜第5動作モードについて説明する。
制御部3は、第1モードおよび第2モードを所定の期間だけ繰り返した後、第3モードで動作する。第3モードとは、電源107から出力端203,204間に逆方向の電圧を印加する動作モードである。制御部3は、第3モードでは、ローレベルの信号S31〜S36を出力し、スイッチング素子211,221,231,241,451,461の全てスイッチをオフ状態にする。第3モードになると、順方向に流れる電流I1は、図3Cに示すように、ダイオード232,222を流れる。そのため出力端203と電源107の負極とが電気的に接続され、出力端204と電源107の正極とが電気的に接続される。つまり、出力端203,204間には負の電圧V4(電圧値が−V0)が印加される。電流I1は、リアクトル51,52に蓄えられたエネルギーがゼロになるまで順方向に流れた後、逆方向に流れ始める。
制御部3は、所望の期間だけ第3モードで動作した後、第4モードで動作する。制御部3は、第4モードでは、ハイレベルの信号S32,S33,S35を出力してスイッチング素子221,231,451をオン状態にする。第4モードになると、図4Aに示すように、電源107の正極→スイッチング素子231→リアクトル52→負荷103→リアクトル51→スイッチング素子221→電源107の負極の順に電流I1が流れる。リアクトル51,52は電流I1によりエネルギーを蓄える。出力端203,204間には、負の電圧V4(電圧値が−V0)が印加されている。出力端203の電位は負電位となっていて、出力端204の電位は正電位となっている。つまり第4モードとは、出力端203,204間に負の電圧V4(電圧値が−V0)を印加し、逆方向の電流I1を流す動作モードである。なお、本実施形態の第4モードでは、制御部3はスイッチング素子451をオン状態にしているが、スイッチング素子451の状態をオフ状態に維持してもよい。その場合、制御部3は、スイッチング素子451を第4モードの後でオン状態にするように構成されていればよい。
制御部3は、所望の期間だけ第4モードで動作した後、第5モードで動作する。第5モードとは、電源107から出力端203,204間に電圧を印加しない動作モードである。制御部3は、第5モードでは、ローレベルの信号S31〜S34を出力してスイッチング素子211,221,231,241を全てオフ状態にする。第5モードになると、図4Bに示すように、リアクトル51→スイッチング素子451→ダイオード462→リアクトル52→負荷103の順に電流I1が流れる。リアクトル51,52は、蓄えたエネルギーを電流として放出するので、負荷103には逆方向の電流I1が流れる。出力端203,204間は短絡しているので電圧V4はゼロボルトにクランプされる。出力端203および出力端204の電位は接続点601の電位とほぼ同じ安定した電位となっている。
制御部3は、第4モードおよび第5モードを所定の期間だけ繰り返した後、第6モードで動作する。第6モードとは、電源107から出力端203,204間に正方向の電圧を印加する動作モードである。制御部3は、第6モードでは、ローレベルの信号S31〜S36を出力し、スイッチング素子211,221,231,241,451,461の全てスイッチをオフ状態にする。第6モードになると、逆方向に流れる電流I1は、図4Cに示すように、ダイオード212,242を流れる。そのため出力端203と電源107の正極とが電気的に接続され、出力端204と電源107の負極とが電気的に接続される。つまり、出力端203,204間には正の電圧V4(電圧値がV0)が印加される。電流I1は、リアクトル51,52に蓄えられたエネルギーがゼロになるまで逆方向に流れた後、順方向に流れ始める。
上記したように、インバータ回路2は、出力端203,204間に正の電圧V4(電圧値がV0)または負の電圧V4(電圧値が−V0)を出力する。制御部3は、第1モードおよび第2モードの各々の動作を所定の期間だけ繰り返し、第2モード、第3モード、第4モードの順に動作モードを切り替える。制御部3は、第4モードおよび第5モードの各々の動作を所定の期間だけ繰り返し、第5モード、第6モード、第1モードの順に動作モードを切り替える。制御部3は第1モード〜第6モードの動作を繰り返すことにより、インバータ回路2から正の矩形波電圧および負の矩形波電圧が交互に出力される。制御部3が矩形波電圧のデューティ比をPWM(Pulse Width Modulation)制御し、その矩形波電圧をフィルタ回路105が平滑することで、負荷103に正弦波電圧が印加される。なお、制御部3が出力端203,204間の矩形波電圧のデューティ比をPWM制御することに限定される趣旨ではない。電力変換回路1は、出力端203,204間に出力される交流電圧を適宜の方法で正弦波電圧にするように構成されていればよい。
ところで、制御部3が第1モードから第2モードに切り替わる際に、スイッチング素子211がオフ状態になるタイミングと、スイッチング素子241がオフ状態になるタイミングがわずかに異なる場合がある。例えば第2モードにおいてスイッチング素子241がオフ状態であってスイッチング素子211がオン状態となっている場合、図5に示すように、リアクトル52→ダイオード232→スイッチング素子211→リアクトル51→負荷103の順に電流I2が流れる。電流I2が流れる場合、出力端203,204は電源107の正極に短絡している。つまり、電流I2が流れている期間において、出力端203,204の各々の電位は、基準電位(図5の接続点106の電位)よりも高い電位となる。以下では、スイッチング素子211がオン状態であり、スイッチング素子241がオフ状態となっている場合の出力端203,204の各々の電位について図5、図6、図7および図8を参照して説明する。なお、以下の説明では、基準電位に対する出力端203の電位を電圧V203と表記し、基準電位に対する出力端204の電位を電圧V204と表記する。また、図6および図7では、電圧V203を実線で示し、電圧V204を一点鎖線で示す。
まず、本実施形態の電力変換回路1の比較例として、コンデンサ61〜64および接続部材7のいずれも備えていない電力変換回路1について説明する。
比較例の電力変換回路1において、それぞれオン状態のスイッチング素子211,241が同時にオフ状態になった場合、出力端203,204の電位は同時に基準電位に近づくように変化する。つまり、電圧V203,V204はゼロに近づくように変化する。そして電圧V203,V204はほぼ同時にゼロとなる。この場合、出力端203,204間にコモンモード・ノイズは発生しない。
しかしながら、スイッチング素子241のオフタイミングに対してスイッチング素子211のオフタイミングが遅れる可能性がある。例えば図6に示すように、オン状態のスイッチング素子241が時間t1でオフ状態になり、オン状態のスイッチング素子211が時間t1から遅れて時間t2でオフ状態になった場合、時間t1〜時間t2の期間はスイッチング素子211がオン状態になっている。スイッチング素子241のオフタイミングに対してスイッチング素子211のオフタイミングが遅れると、図5に示すように、リアクトル52→ダイオード232→スイッチング素子211→リアクトル51→負荷103の順に流れる電流I2の電路が形成される。電流I2の電路では、出力端203はオン状態のスイッチング素子211を介して電源107の正極と短絡している。電流I2の電路では、出力端204はダイオード232を介して電源107の正極と短絡している。そのためそれぞれの出力端203,204の電位は基準電位よりも高い電位(正電位)になる。そのため、時間t4においてそれぞれの出力端203,204の電位は、基準電位よりも高い正電位となった状態で、互いに等しい電位となる。この場合、電圧V203,V204はともに電圧V205となる。つまり、出力端203,204の電位が、基準電位に対して電圧V205だけ高くなるようなコモンモード・ノイズが発生する。
出力端203,204間にコモンモード・ノイズが発生すると、出力端203,204の各々の電位が基準電位に対して同相で変動する。以下、このコモンモード・ノイズが発生した際の基準電位に対する出力端203の電位を電圧V206と表記する。
電圧V206の波形を図8に点線で示す。図8では、電圧V206についてハイレベルの電圧とローレベルの電圧とが交互に出力されている波形を示している。電圧V206は、矩形波電圧のハイレベルの部分にさらにコモンモード・ノイズによる交流成分が加わった波形となる。
なお、コモンモード・ノイズは、スイッチング素子211,241のオンタイミングがずれた場合にも発生する可能性がある。同様に、スイッチング素子221,231のオンタイミングおよびオフタイミングの何れか一方がずれた場合にも発生する可能性がある。加えて、入力端201,202間に輻射ノイズが加わった場合にも出力端203,204間にコモンモード・ノイズが発生する可能性がある。
ここで、本実施形態の電力変換回路1がコンデンサ61〜64によりコモンモード・ノイズを抑制する動作について説明する。以下では、スイッチング素子211がスイッチング素子241のオフタイミングに対して遅れてオフ状態になる場合について説明する。
オン状態のスイッチング素子241が時間t1でオフ状態になり、オン状態のスイッチング素子211が時間t1よりも遅れた時間t2でオフ状態になった場合、出力端203,204間の電位が正電位となる。この場合の出力端203,204の電圧V203,V204は電圧V205となる。つまり出力端203,204間にコモンモード・ノイズ(同相の電圧ノイズ)が発生する。
出力端203,204間にコモンモード・ノイズが発生すると、コモンモード・ノイズによって変化する同相の電圧に応じて同相の電流ノイズが発生する。出力端203の電路に発生した電流ノイズは、負荷103のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するコンデンサ63に流れる。出力端204の電路に発生した電流ノイズは、負荷103のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有するコンデンサ64に流れる。
コンデンサ63,64をつなぐ接続点602の電位は、接続点601の電位とほぼ同じ安定した電位となっている。そのため、コンデンサ63,64に瞬間的に電流が流れても接続点511,521のそれぞれの電位は変動しにくくなっている。また、接続点602の電位は、コンデンサ61,62の直列回路の両端電圧に安定した電圧V0が印加されているので、安定しやすい。しかもコンデンサ61,62の直列回路の両端電圧の中間の電位は基準電位とほぼ同じ電位となる。つまり、接続部材7を介してコンデンサ61,62に電流が流れても、コンデンサ61,62の接続点601の電位は基準電位から変化しにくい。そして、コモンモード・ノイズによって発生した電流は、コンデンサ61,62を介してフィルタ回路104に流れる。そのため、コモンモード・ノイズは、時間t4以降は急激に抑制され、電圧V203,V204はゼロに近づく。つまりコモンモード・ノイズは、コンデンサ61〜64により抑制される。図8では、図7の時間の縮尺を変えて電圧V203の電圧波形を示している。図8では、電圧V203がハイレベルの電圧とローレベルの電圧とが交互に出力されている電圧波形を示している。図8において実線で示す電圧V203は、ハイレベルの電圧の区間において、点線で示す電圧V206よりも電圧変動が抑制されている。
以上説明したように、本実施形態の電力変換回路1は、インバータ回路2と、第1制御部と、クランプ回路4と、第2制御部とを備える。また本実施形態の電力変換回路1は、第1コンデンサ61と、第2コンデンサ62と、第3コンデンサ63と、第4コンデンサ64と、接続部材7とを備える。そして本実施形態の電力変換回路1は、以下のように構成されている。インバータ回路2は、それぞれ直流電源(本実施形態では電源107)に電気的に接続される第1入力端201と第2入力端202、および、それぞれ負荷103に電気的に接続される第1出力端203と第2出力端204を有する。第1制御部(本実施形態では制御部3)は、インバータ回路2を制御する。クランプ回路4は、第1出力端203と第2出力端204との間に電気的に接続されるクランプ用スイッチ(本実施形態では第5スイッチ45、第6スイッチ46の直列回路)を有する。第2制御部(本実施形態では制御部3)は、クランプ回路4を制御する。第1コンデンサ61と第2コンデンサ62との直列回路は、第1入力端201と第2入力端202との間に電気的に接続される。第3コンデンサ63と第4コンデンサ64との直列回路は、第1出力端203と第2出力端204との間に電気的に接続される。インバータ回路2は、第1スイッチ21および第2スイッチ22の直列回路からなる第1アームと、第3スイッチ23および第4スイッチ24の直列回路からなる第2アームとをさらに有する。第1アームと第2アームとは第1入力端201と第2入力端202との間に電気的に並列に接続される。第1スイッチ21および第2スイッチ22の接続点205が第1出力端203に電気的に接続される。第3スイッチ23および第4スイッチ24の接続点206が第2出力端204に電気的に接続される。接続部材7は、第1コンデンサ61および第2コンデンサ62の第1接続点601と、第3コンデンサ63および第4コンデンサ64の第2接続点602との間に電気的に接続される。
上記構成によれば、入力端201,202間には電源107から安定した電圧が印加されるので、コンデンサ61,62間の接続点601の電位は安定した電位となり、この電位を基準電位とする。コンデンサ63,64の直列回路の両端には出力端203,204間の電圧が印加される。コンデンサ63,64間の接続点602は、接続部材7によってコンデンサ61,62間の接続点601に電気的に接続されているので、接続点602の電位は安定しやすくなっている。コモンモード・ノイズによって出力端203,204間に同相の電流ノイズが発生しても、その電流ノイズがコンデンサ63,64に流れるので、負荷103には電流ノイズが流れにくくなる。そして同相の電流ノイズがコンデンサ63,64の各々に流れても、接続点602の電位は変化しにくくなっているので、コンデンサ63,64の直列回路の両端電圧、つまり出力端203,204間の電圧の変動が抑制される。言い換えると、電力変換回路1は、コモンモード・ノイズを抑制することができる。
本実施形態の電力変換回路1における第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々は、スイッチング素子211,221,231,241およびダイオード212,222,232,242を有してもよい。スイッチング素子211,221,231,241は、導通方向が片方向のスイッチング素子である。ダイオード212,222,232,242は、スイッチング素子211,221,231,241と逆並列に接続される。第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々のダイオード212,222,232,242は、導通方向が第2入力端202から第1入力端201の方向となるように設けられていることも好ましい。
上記構成によれば、第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々のスイッチング素子がオフ状態でも、第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々のダイオードの順方向に電流が流れる場合には、第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々がオン状態になる。そのため、第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々につながる電路に所望の方向の電流が流れる場合、制御部3は第1スイッチ21〜第4スイッチ24をオン状態にする制御を省略することができる。
本実施形態の電力変換回路1におけるクランプ用スイッチは、第1クランプ用スイッチ(第5スイッチ45)および第2クランプ用スイッチ(第6スイッチ46)の直列回路を有してもよい。第1クランプ用スイッチ(第5スイッチ45)は、クランプ用スイッチング素子(本実施形態ではスイッチング素子451)およびクランプ用ダイオード(本実施形態ではダイオード452)を有する。第2クランプ用スイッチ(第6スイッチ46)は、クランプ用スイッチング素子(本実施形態ではスイッチング素子461)およびクランプ用ダイオード(本実施形態ではダイオード462)を有する。クランプ用スイッチング素子(スイッチング素子451,461)は、導通方向が片方向のクランプ用スイッチング素子である。クランプ用ダイオード(ダイオード452,462)は、クランプ用スイッチング素子(スイッチング素子451,461)と逆並列に接続される。第1クランプ用スイッチ(第5スイッチ45)および第2クランプ用スイッチ(第6スイッチ46)の各々のクランプ用ダイオード(ダイオード452,462)は、導通方向が互いに逆方向となるように設けられることも好ましい。
上記構成によれば、クランプ用スイッチに流れる電流を制御する場合は、制御部3は、第1クランプ用スイッチおよび第2クランプ用スイッチのうち一方のクランプ用スイッチング素子をオン状態にすればよい。また、制御部3は、第1クランプ用スイッチおよび第2クランプ用スイッチの両方をオンオフ制御することにより、クランプ用スイッチの両端を短絡または開放することができる。つまり、上記構成によりクランプ用スイッチは、両端間の短絡または開放することにより、双方向の電流をオンオフする機能を有する。
本実施形態の電力変換回路1は、第1出力端203と負荷103との間に電気的に接続される第1リアクトル51と、第2出力端204と負荷103との間に電気的に接続される第2リアクトル52とをさらに備えることも好ましい。
上記構成によれば、クランプ回路4がリアクトル51,52間を導通させた際に、リアクトル51,52が負荷103に流れる電流を回生させることができる。
本実施形態の電力変換回路1において、第3コンデンサ63および第4コンデンサ64の直列回路は、第1リアクトル51および負荷103の接続点511と、第2リアクトル52および負荷103の接続点521との間に接続されることも好ましい。
上記構成によれば、第3コンデンサ63と第4コンデンサ64との直列回路は、負荷103と並列に接続される。そのため、第3コンデンサ63と第4コンデンサ64との直列回路は、負荷103の両端間に加わるコモンモード・ノイズを抑制することができる。
本実施形態の電力変換装置100は、上記した電力変換回路1と、電力変換回路1を収納する筐体110とを備える。
上記構成によれば、コモンモード・ノイズを抑制することができる電力変換装置100を実現することができる。
なお、本実施形態では、コンデンサ63,64の直列回路が、接続点511,521間に直接接続されているが、この構成に限定されない。コンデンサ63,64の直列回路は、図9に示すように、出力端203およびリアクトル51の接続点501と、出力端204およびリアクトル52の接続点502との間に直接接続されてもよい。以下では、コンデンサ63,64の直列回路が接続点501,502間に直接接続された電力変換回路1を本実施形態の変形例1として説明する。なお、接続点501,502は便宜上設けた接続点であり、接続点501,502が設けられていることに限定される趣旨ではない。
変形例1の電力変換回路1は、接続点501,502間にコンデンサ63,64の直列回路が直接接続される。本実施形態の電力変換回路1ではリアクトル51,52の負荷103側にコンデンサ63,64の直列回路が設けられているのに対し、変形例1の電力変換回路1では、リアクトル51,52のクランプ回路4側に設けられている点が相違する。
コンデンサ63,64の直列回路は、出力端203,204間に発生するコモンモード・ノイズを抑制する。しかも、コンデンサ63,64の各々は、いわゆるスナバ回路を兼ねることにより、インバータ回路2からのスイッチング・ノイズを抑制する。つまりコンデンサ63,64の直列回路は、コモンモード・ノイズを抑制する機能と、インバータ回路2からのスイッチング・ノイズを抑制する機能との2つの機能を有する。この2つの機能により、変形例1の電力変換回路1は、コモンモード・ノイズおよびスイッチング・ノイズを抑制することができる。
以上説明したように、変形例1の電力変換回路1では、第3コンデンサ63および第4コンデンサ64の直列回路は、第1出力端203および第1リアクトル51の接続点501と、第2出力端204および第2リアクトル52の接続点502との間に接続される。
上記構成によれば、コンデンサ63,64の直列回路は、コモンモード・ノイズと、インバータ回路2からのスイッチング・ノイズとを抑制することができる。
さらに別の変形例として、接続部材7が導電材料で形成されたヒートシンク9を含む電力変換回路1を、本実施形態の変形例2として説明する。
ヒートシンク9は、例えば銅やアルミなどの熱伝導性のよい金属材料で矩形板状に形成されている。変形例2のヒートシンク9は、図10に示すように、ヒートシンク9の両端部分に各々、接続部材7が電気的に接続されている。つまりヒートシンク9の一端部分が接続点601に電気的に接続され、ヒートシンク9の他端部分が接続点602に電気的に接続されている。
ヒートシンク9は、電力変換回路1で用いられる適宜の素子や部材と熱的に結合されて使用される。一般に、熱伝導性のよい金属材料はインピーダンスが小さい。そのため、金属線やプリント配線基板上に導電材料で積層された薄膜からなる導電体よりもインピーダンスの小さいヒートシンク9を接続部材7として用いることが可能である。接続部材7のインピーダンスが小さいほど、接続部材7の伝導ノイズや輻射ノイズを減らすことができる。
なお、ヒートシンク9は銅やアルミで形成されることに限定されず、導電性を有する適宜の材料で形成されていればよい。また、ヒートシンク9の形状は矩形板状に限定されず、適宜の形状に形成されてよい。さらに、ヒートシンク9は、電力変換回路1で用いられるヒートシンクに限定されず、電力変換装置100に用いられる適宜の部材と熱的に結合されて使用されるヒートシンクであってもよい。
本実施形態のヒートシンク9は、筐体110と電気的に絶縁されている。例えば筐体110に一定以上の電流が流れることを抑制したい場合、ヒートシンク9が筐体110と電気的に接続されていないことにより、ヒートシンク9を流れる電流が筐体110に流れにくくなる。なお、筐体110に流れる電流を考慮しなくてもよい場合、ヒートシンク9は筐体110と電気的に接続されていてもよい。
以上説明したように、変形例2の電力変換回路1は、導電材料で形成されたヒートシンク9をさらに備え、接続部材7はヒートシンク9を含む。
上記構成によれば、インピーダンスが小さいヒートシンク9を接続部材7として用いることにより、接続点602の電位変動の抑制効果を大きくすることができるので、負荷103側に出力される伝導ノイズや輻射ノイズを抑制することができる。
変形例2の電力変換装置100は、導電材料で形成されたヒートシンク9を接続部材7に含む電力変換回路1と、電力変換回路1を収納する筐体110とを備え、ヒートシンク9は筐体110と電気的に絶縁されている。
上記構成によれば、ヒートシンク9が筐体110と電気的に絶縁されていることにより、ヒートシンク9を流れる電流が筐体110に流れにくくなる。
なお、本実施形態と、変形例1と、変形例2とを組み合わせて電力変換回路1および電力変換装置100を構成してもよい。例えば、変形例1の接続部材7がヒートシンク9を含んでいてもよい。
変形例1,2を含む本実施形態では、コンデンサ61,62の静電容量およびコンデンサの種類はすべて等しく、コンデンサ63,64の静電容量およびコンデンサの種類はすべて等しいが、この構成に限定されない。例えば静電容量の異なるコンデンサや種類の異なるコンデンサを適宜組み合わせてコンデンサ61〜64を構成しても、コモンモード・ノイズを低減することは可能である。この場合、それぞれの接続点601,602の電位が基準電位と等しくなるようにコンデンサ61〜64を構成すればよい。
第1スイッチ21〜第4スイッチ24の各々は、導通方向が片方向のスイッチング素子およびそのスイッチング素子と逆並列に接続されるダイオードを有していなくてもよい。例えば、MOSFETのように寄生ダイオードを有するスイッチング素子などであればよい。その場合、制御部3は、入力端201,202と、出力端203,204との間に所望の電路が形成されるように第1スイッチ21〜第4スイッチ24のオンオフ状態を制御するように構成されていればよい。
クランプ用スイッチは、第1クランプ用スイッチ(第5スイッチ45)および第2クランプ用スイッチ(第6スイッチ46)の直列回路を有していなくてもよい。その場合、クランプ用スイッチは、両端間を短絡または開放することにより、双方向の電流をオンオフする機能を有していればよい。例えば、MOSFETのように寄生ダイオードを有するスイッチング素子を、互いの寄生ダイオードの導通方向が逆方向となるように並列に接続してもよい。
第1クランプ用スイッチ(第5スイッチ45)および第2クランプ用スイッチ(第6スイッチ46)の各々は、導通方向が片方向のクランプ用スイッチング素子およびクランプ用スイッチング素子と逆並列に接続されるクランプ用ダイオードを有していなくてもよい。その場合、第1クランプ用スイッチおよび第2クランプ用スイッチの各々は、クランプ用スイッチの両端間を短絡または開放することにより、双方向の電流をオンオフする機能を有していればよい。
(実施形態2)
本実施形態に係る電力変換回路1について図11、図12、および図13を参照して説明する。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力変換回路1は、図11に示すように、電流制限部81〜85をさらに備える。電流制限部81〜85は、2つの端子を有する。電流制限部81〜85はそれぞれ、2つの端子間に抵抗成分およびリアクタンス成分のうち少なくとも一方を有し、所望の周波数において所望のインピーダンスとなるように構成されている。電流制限部81,82とは同じインピーダンスとなるよう構成されている。電流制限部83,84とは同じインピーダンスとなるように構成されている。
電流制限部85は、2つの端子間が所定の中間インピーダンスとなるように構成され、接続部材7と直列に電気的に接続される。電流制限部85の一方の端子は、接続部材7を介して接続点601に電気的に接続される。電流制限部85の他方の端子は、接続部材7を介して接続点602に電気的に接続される。
電流制限部81,82はそれぞれ、2つの端子間が所定の1次側インピーダンスとなるように構成されている。電流制限部81は、入力端201と第1接続点601との間にコンデンサ61と直列に接続される。電流制限部82は、入力端202と第1接続点601との間にコンデンサ62と直列に接続される。本実施形態では、電流制限部81,82はそれぞれ、コンデンサ61,62の直列回路の両端に電気的に接続される。
電流制限部83,84はそれぞれ、2つの端子間が所定の2次側インピーダンスとなるように構成されている。電流制限部83は、出力端203と第2接続点602との間にコンデンサ63と直列に接続される。本実施形態の電流制限部83は、リアクトル51を介して出力端203に電気的に接続されている。電流制限部84は、出力端204と第2接続点602との間にコンデンサ64と直列に接続される。本実施形態の電流制限部84は、リアクトル52を介して出力端203に電気的に接続されている。本実施形態の電流制限部83,84はそれぞれ、コンデンサ63,64の直列回路の両端に電気的に接続される。
電流制限部81がコンデンサ61に流れる電流の電流値を小さくし、電流制限部82がコンデンサ62に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。電流制限部83がコンデンサ63に流れる電流の電流値を小さくし、電流制限部84がコンデンサ64に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。電流制限部85が接続部材7に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。
また、電流制限部81〜85の各々のインピーダンスを調整することにより、コンデンサ61〜64がコモンモード・ノイズを抑制する効果を変化させることができる。例えば、所望の周波数でインピーダンスが小さくなるように電流制限部81〜85の各々のインピーダンスを調整すると、コモンモード・ノイズのうち所望の周波数のノイズ成分を抑制することができる。
また、電流制限部85のインピーダンスを調整することにより、接続部材7の輻射ノイズの周波数帯を変化させることができる。そのため、電流制限部81〜84を用いてコモンモード・ノイズの所望の周波数のノイズ成分を抑制しつつ、接続部材7からの輻射ノイズのうち所望の周波数の輻射ノイズを抑制できる。
ここで、本実施形態の変形例として、コンデンサ63,64の直列回路が出力端203,204間に電気的に接続されている電力変換回路1を変形例1として説明する。
電流制限部83は、図12に示すように、出力端203と接続部材7との間にコンデンサ63と直列に接続されている。また電流制限部84は、出力端204と接続部材7との間にコンデンサ64と直列に接続されている。この構成により、コンデンサ63,64のスナバ回路の特性を変化させることができる。例えば、RCスナバ回路のように、インピーダンス成分と容量成分とを所望の値に定めることにより、ノイズを抑制する周波数帯を変化させることができる。これにより所望の周波数のノイズを抑制することができる。さらに、電流制限部83,84の抵抗成分は、RCスナバ回路のダンピング抵抗も兼ねている。
ここで、本実施形態の別の変形例として、ヒートシンク9と電流制限部86とを備える電力変換回路1を変形例2として説明する。なお、電流制限部86は、電流制限部81〜85と同様に構成されているため、説明を省略する。
電流制限部85,86はそれぞれ、図13に示すように、ヒートシンク9の両端に電気的に接続される。電流制限部85は接続部材7を介して接続点601に電気的に接続される。電流制限部86は接続部材7を介して接続点602に電気的に接続される。すなわち電流制限部85,86とヒートシンク9との直列回路が、接続点601,602間に電気的に接続される。
電流制限部85,86がヒートシンク9に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。
また、電流制限部85,86のインピーダンスを調整することにより、ヒートシンク9の輻射ノイズの周波数帯を変化させることができる。そのため、電流制限部81〜84を用いてコモンモード・ノイズの所望の周波数のノイズ成分を抑制しつつ、ヒートシンク9からの輻射ノイズのうち所望の周波数の輻射ノイズを抑制できる。なお、電流制限部85,86のうち一方は省略されてもよい。
以上説明したように、本実施形態および変形例1,2の電力変換回路1は、それぞれ所定の2次側インピーダンスを有する電流制限部83(第1出力側電流制限部)をさらに備える。また本実施形態および変形例1,2の電力変換回路1は、電流制限部84(第2出力側電流制限部)をさらに備え、以下のように構成されることも好ましい。電流制限部83(第1出力側電流制限部)は、第1出力端203と第2接続点602との間に第3コンデンサ63と直列に接続される。電流制限部84(第2出力側電流制限部)は、第2出力端204と第2接続点602との間に第4コンデンサ64と直列に接続される。
上記構成によれば、それぞれの出力端203,204と接続点602との間のインピーダンス、または接続点511,602間および接続点521,602間のインピーダンスをそれぞれ所望の値に定めることができる。これにより電流制限部83がコンデンサ63に流れる電流の電流値を小さくし、電流制限部84がコンデンサ64に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。また、コンデンサ63,64の直列回路が抑制するコモンモード・ノイズの周波数帯を変えることができるので、コンデンサ63,64の直列回路は所望の周波数のコモンモード・ノイズを抑制できる。
本実施形態および変形例1,2の電力変換回路1は、それぞれ所定の1次側インピーダンスを有する電流制限部81(第1入力側電流制限部)および電流制限部82(第2入力側電流制限部)をさらに備え、以下のように構成されることも好ましい。電流制限部81(第1入力側電流制限部)は、第1入力端201と第1接続点601との間に第1コンデンサ61と直列に接続される。電流制限部82(第2入力側電流制限部)は、第2入力端202と第1接続点601との間に第2コンデンサ62と直列に接続される。
上記構成によれば、それぞれの入力端201,202と接続点601との間のインピーダンスを所望の値に定めることができる。これにより電流制限部81がコンデンサ61に流れる電流の電流値を小さくし、電流制限部82がコンデンサ62に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。また、コンデンサ61,62の直列回路が抑制するコモンモード・ノイズの周波数帯を変えることができるので、コンデンサ61,62の直列回路は所望の周波数のコモンモード・ノイズを抑制できる。
本実施形態および変形例1の電力変換回路1は、所定の中点インピーダンスを有する電流制限部85(中点電流制限部)をさらに備える。本実施形態の変形例2の電力変換回路は加えて電流制限部86(中点電流制限部)をさらに備える。電流制限部85,86(中点電流制限部)は、第1接続点601と直列に電気的に接続されるように構成されることも好ましい。
上記構成によれば、電流制限部85,86が接続部材7やヒートシンク9に流れる電流の電流値を小さくすることにより、負荷103側に出力される輻射ノイズを抑制することができる。また、電流制限部85,86に所望のインピーダンスを定めることにより、接続部材7からの輻射ノイズのうち、所望の周波数の輻射ノイズを抑制できる。
なお、本実施形態と、変形例1と、変形例2とを組み合わせて電力変換回路1および電力変換装置100を構成してもよい。例えば、変形例1の接続部材7がヒートシンク9を含んでいてもよい。また、直列接続された電流制限部およびコンデンサは、接続の順番を入れ替えてもよい。具体的に言うと、電流制限部81はコンデンサ61と接続点601との間に電気的に接続されていてもよい。電流制限部82はコンデンサ62と接続点601との間に電気的に接続されていてもよい。電流制限部83はコンデンサ63と接続点602との間に電気的に接続されていてもよい。電流制限部84はコンデンサ64と接続点602との間に電気的に接続されていてもよい。
本実施形態および変形例1,2では、電流制限部81,82とは同じインピーダンスを有するように定められ、電流制限部83,84とは同じインピーダンスを有するように定められているが、この構成に限定されない。つまり電流制限部81〜84のインピーダンスは個別に適宜の値に定められてもよい。
また、電流制限部81〜86はそれぞれ、適宜省略されてもよい。