以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。更に、反応式(R−1)〜(R−4)で表される反応を各々、反応(R−1)〜(R−4)と記載することがある。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数6以上14以下のアリール基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)は、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)又はヨウ素原子(ヨード基)である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の芳香族縮合二環炭化水素基又は素原子数6以上14以下の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
<1.感光体>
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と感光層とを備える。感光層に含有されるバインダー樹脂は、一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(1)と記載することがある)を含む。感光層に含有される電子輸送剤は、一般式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載することがある)を含む。感光層が、ポリカーボネート樹脂(1)と化合物(2)とを含有することで、形成画像における白点の発生を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。
理解を容易にするために、形成画像に白点が発生する一因について説明する。画像形成において記録媒体(例えば、紙)と感光体とが接触するときに、記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が感光体の表面に付着することがある。感光体の表面に記録媒体の微小成分が付着すると、画像形成の露光工程において感光体に露光された光を、その微小成分が遮ることがある。露光された光が微小成分によって遮られた部分は、感光体の表面電位が低下し難い。表面電位の低下が不十分な部分にはトナーが付着し難いため、形成画像に白点が発生する。
ここで、画像形成において記録媒体(例えば、紙)と感光体とが接触するとき、記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が感光体によって摩擦されて、微小成分が負極性又は所望の値より低い正極性に帯電することがある。しかし、本実施形態の感光体の感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)と化合物(2)とを含有する。ポリカーボネート樹脂(1)はハロゲン原子を有するため、電気陰性度が高い。化合物(2)もハロゲン原子を有するため、電気陰性度が高い。微小成分と本実施形態の感光体とが接触し、電気陰性度が高いポリカーボネート樹脂(1)と化合物(2)とを含有する感光体によって微小成分が摩擦されたときに、微小成分を所望の値以上の正極性に帯電させることができる。画像形成の帯電工程で感光体の表面が正極性に帯電される場合、正極性に帯電された感光体の表面と、所望の値以上の正極性を帯びる微小成分とは電気的に反発する。微小成分の帯電量が大きな正の値になるほど、感光体の表面との電気的な反発は大きくなる。これにより、感光体の表面に微小成分が付着し難くなる。その結果、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
また、感光体としての機能を発揮させるためには、感光層中のバインダー樹脂の含有量及び電子輸送剤の含有量を、極端に増加させることは難しい。本実施形態の感光体では、ハロゲン原子を有するポリカーボネート樹脂(1)と、ハロゲン原子を有する化合物(2)とを感光層に含有させることで、感光層中のハロゲン原子の存在比率を高めることができる。その結果、記録媒体の微小成分を所望の値以上の正極性に帯電させることができ、形成画像における白点の発生を好適に抑制することができる。
以下、図1を参照して、感光体1の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体1の一例を示す断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、一層である。感光層3は、いわゆる単層型感光層である。感光体1は、いわゆる単層型感光体である。
図1(b)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接設けられてもよいし、図1(b)に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して間接的に設けられてもよい。
図1(c)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。
感光層3の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、感光層3が感光体1の最表面層として配置されることが好ましい。同様の理由から、感光体1は、正帯電単層型感光体であることが好ましい。以上、図1を参照して、感光体1の構造について説明した。
<1−1.感光層>
感光層は、電荷発生剤と電子輸送剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを一層に含有する。感光層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。以下、電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び添加剤について説明する。
(バインダー樹脂)
感光層に含有されるバインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂(1)を含む。感光層には、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(1)が含有される。ポリカーボネート樹脂(1)は、下記一般式(1)で表される。
まず、一般式(1)中のR1、R2、R5及びR6について説明する。一般式(1)中、R1、R2、R5及びR6は、各々独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R1、R2、R5及びR6のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。よって、ポリカーボネート樹脂(1)は、ハロゲン原子を必ず有する。
R1、R2、R5及びR6が表わすハロゲン原子(ハロゲン基)としては、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)が好ましい。
R1、R2、R5又はR6がハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す場合、炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基であることがより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましい。R1、R2、R5及びR6が表わすハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、ハロゲン原子を1つ以上3つ以下有する炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
R1、R2、R5又はR6がハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す場合、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましい。R1、R2、R5及びR6が表わすハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、ハロゲン原子を1つ以上3つ以下有する炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。
R1、R2、R5又はR6がハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す場合、炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基が好ましく、フェニル基であることがより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましく、フルオロ基であることがより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1つ以上3つ以下であることが好ましく、1つであることがより好ましい。R1、R2、R5及びR6が表わすハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、ハロゲン原子を1つ以上3つ以下有する炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、ハロゲン原子を1つ以上3つ以下有する炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基がより好ましく、フルオロフェニル基が更に好ましく、p(パラ)−フルオロフェニル基が特に好ましい。
R1、R2、R5及びR6が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R1、R2、R5及びR6が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。
R1、R2、R5及びR6が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
R1及びR2の結合位置は、特に限定されない。R1は、フェニル基が結合する酸素原子に対して、フェニル基のオルト位又はパラ位に結合する。R2も、フェニル基が結合する酸素原子に対して、フェニル基のオルト位又はパラ位に結合する。R1及びR2の各々は、フェニル基が結合する酸素原子に対して、フェニル基のオルトに結合することが好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、R1、R2、R5及びR6は、各々独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R1、R2、R5及びR6のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するための好適な例では、R1及びR2が各々水素原子を表し、R5及びR6の一方又は両方がハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
形成画像における白点の発生を抑制するための好適な別の例では、R1及びR2が各々ハロゲン原子を表し、R5及びR6が各々炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、ポリカーボネート樹脂(1)が有するハロゲン原子の数が多いことが好ましい。ポリカーボネート樹脂(1)が有するハロゲン原子の数は、1つ以上6つ以下であることが好ましく、2つ以上6つ以下であることがより好ましく、6つであることが特に好ましい。
次に、一般式(1)中のR3及びR4について説明する。一般式(1)中、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は置換基を有していてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
R3及びR4が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましい。R3及びR4が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
R3及びR4が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。R3及びR4が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
R3及びR4が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基が好ましく、フェニル基であることがより好ましい。R3及びR4が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
R3及びR4の結合位置は、特に限定されない。R3は、フェニル基が結合する酸素原子に対して、フェニル基のオルト位又はパラ位に結合する。R4も、フェニル基が結合する酸素原子に対して、フェニル基のオルト位又はパラ位に結合する。R3及びR4の各々は、フェニル基が結合する酸素原子に対して、フェニル基のオルトに結合することが好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、R3及びR4は、各々、水素原子を表すことが好ましい。
次に、一般式(1)中のYについて説明する。一般式(1)中、Yは、単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数2以上18以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−O−又は−CO−を表す。
Yが表す炭素原子数2以上18以下のアルキレン基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、アルキル基の両端に位置する炭素原子の各々に結合手が1個ずつ結合した二価の基である。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、メチルエチレン基、n−ブチレン基、メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基又はオクタデシレン基が挙げられる。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基としては、炭素原子数2以上6以下のアルキレン基が好ましい。Yが表す炭素原子数2以上18以下のアルキレン基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
Yが表す炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、1個の炭素原子に2個の結合手が結合した二価の基である。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、n−プロピリデン基、ジメチルメチリデン基(=C(CH3)2)、n−ブチリデン基、エチルメチルメチリデン基(=C(CH3)(CH2CH3))、ペンチリデン基、イソペンチリデン基、ネオペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、デシリデン基、ウンデシリデン基、ドデシリデン基、トリデシリデン基、テトラデシリデン基、ペンタデシリデン基、ヘキサデシリデン基、ヘプタデシリデン基又はオクタデシリデン基が挙げられる。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキリデン基が好ましく、ジメチルメチリデン基(=C(CH3)2)又はエチルメチルメチリデン基(=C(CH3)(CH2CH3))がより好ましい。Yが表す炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
Yが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基は、シクロアルカンを形成する炭素原子のうちの2つの炭素原子の各々に結合手が1個ずつ結合した二価の基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロテトラデシレン基又はシクロペンタデシレン基が挙げられる。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基としては、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキレン基が好ましい。Yが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
Yが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基は、シクロアルカンを形成する炭素原子のうちの1つの炭素原子に2個の結合手が結合した二価の基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、シクロノニリデン基、シクロデシリデン基、シクロウンデシリデン基、シクロドデシリデン基、シクロトリデシリデン基、シクロテトラデシリデン基又はシクロペンタデシリデン基が挙げられる。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基としては、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基が好ましく、シクロヘキシリデン基がより好ましい。Yが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基が有する置換基は、ハロゲン原子以外であることが好ましい。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基が有する置換基の例は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、Yは、炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましく、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことがより好ましく、シクロヘキシリデン基を表すことが特に好ましい。
次に、一般式(1)中のm及びnについて説明する。ポリカーボネート樹脂(1)は、下記一般式(5)で表される繰返し構造単位(以下、繰返し単位(5)と記載することがある)と、一般式(6)で表される繰返し構造単位(以下、繰返し単位(6)と記載することがある)とから構成される。ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位(5)と繰り返し単位(6)との共重合体である。なお、一般式(5)中のR1、R2、R5及びR6は、各々一般式(1)中のR1、R2、R5及びR6と同義である。一般式(6)中のR3、R4及びYは、各々一般式(1)中のR3、R4及びYと同義である。
一般式(1)中のmは、ポリカーボネート樹脂(1)における繰返し単位(5)と繰返し単位(6)との合計物質量(モル数)に対する、繰返し単位(5)の物質量(モル数)の比率(モル比率)を表す。一般式(1)中のnは、樹脂(1)における繰返し単位(5)と繰返し単位(6)との合計物質量(モル数)に対する、繰返し単位(6)の物質量(モル数)の比率(モル比率)を表す。
一般式(1)中、m及びnは、各々独立して、下記数式(i)及び(ii)を満たす数を表す。mは0.0より大きい数を表す。mは0.0ではないため、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位(5)を必ず有する。一方、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位(6)を有していてもよいし、有していなくてもよい。例えば、mが1.0であるとき、nは0.0である。mが1.0であるとき、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位(5)のみを有する。mが1.0であるとき、カーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位(6)を有していない。
m+n=1.0 ・・・(i)
0.0<m≦1.0 ・・・(ii)
数式(ii)は、0.2≦m≦0.8であることが好ましく、0.3≦m≦0.7であることがより好ましく、0.4≦m≦0.6であることが特に好ましい。mが0.2以上であると、形成画像における白点の発生を抑制し易くなる。mが0.8以下であると、感光層用塗布液に含まれる溶剤に対するポリカーボネート樹脂(1)の溶解性を向上できると考えられる。また、mが0.8以下であると、感光層の耐オイルクラック性を向上できると考えられる。なお、オイルクラックは、感光体の表面(例えば、感光層)に指の油又はその他の油が付着した場合に、感光体の表面に割れ(クラック)が発生する現象である。
ポリカーボネート樹脂(1)は、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)とがランダムに共重合したランダム共重合体であってもよい。或いは、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)とが交互に共重合した交互共重合体であってもよい。或いは、ポリカーボネート樹脂(1)は、1以上の繰返し単位(5)と、1以上の繰返し単位(6)とが周期的に共重合した周期的共重合体であってもよい。或いは、ポリカーボネート樹脂(1)は、複数の繰返し単位(5)からなるブロックと、複数の繰返し単位(6)からなるブロックとが共重合したブロック共重合体であってもよい。
ポリカーボネート樹脂(1)の具体例は、下記化学式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表されるポリカーボネート樹脂である。
ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量は、25,000以上であることが好ましく、25,000以上52,500以下であることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量が25,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にポリカーボネート樹脂(1)が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層を形成し易くなる。
ポリカーボネート樹脂(1)の製造方法は、ポリカーボネート樹脂(1)を製造できれば、特に限定されない。ポリカーボネート樹脂(1)の製造方法の一例として、ポリカーボネート樹脂(1)の繰返し単位を構成するためのジオール化合物とホスゲンとを縮重合させる方法(いわゆる、ホスゲン法)が挙げられる。より具体的には、例えば、下記一般式(7)で表されるジオール化合物と、下記一般式(8)で表されるジオール化合物と、ホスゲンとを、縮重合させる方法が挙げられる。なお、一般式(7)中のR1、R2、R3及びR4は、各々一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4と同義である。一般式(8)中のR3、R4及びYは、各々一般式(1)中のR3、R4及びXと同義である。ポリカーボネート樹脂(1)の製造方法の別の例として、ジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法も挙げられる。
感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)に加えて、ポリカーボネート樹脂(1)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。その他のバインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の例は、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂である。熱硬化性樹脂の例は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂である。光硬化性樹脂の例は、エポキシアクリレート(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)又はウレタン−アクリレート(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)である。これらのバインダー樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
感光層がその他のバインダー樹脂を含有する場合、ポリカーボネート樹脂(1)の含有量は、バインダー樹脂の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。バインダー樹脂の合計質量は、ポリカーボネート樹脂(1)の質量と、その他のバインダー樹脂の質量との和である。
(電子輸送剤)
感光層に含有される電子輸送剤は、化合物(2)を含む。感光層は、電子輸送剤として化合物(2)を含有する。化合物(2)は、下記一般式(2)で表される。化合物(2)は、マロノニトリル誘導体である。
一般式(2)中、R7は、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基;ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基;ハロゲン原子を1つ以上有し、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;ハロゲン原子を1つ以上有する5員以上14員以下の複素環基:又はハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。
一般式(2)のR7が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数3以上5以下のアルキル基がより好ましく、n−プロピル基、n−ブチル基又はネオペンチル基が一層好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。R7が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R7が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましく、クロロ基であることがより好ましい。R7が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。
R7が表わす炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基又はシクロデシル基が挙げられる。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R7が表わす炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R7が表わす炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。
R7が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R7が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R7が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましく、クロロ基であることがより好ましい。R7が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子に加えて、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を更に有してもよい。
R7が表わす5員以上14員以下の複素環基は、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含む。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。5員以上14員以下の複素環基は、例えば、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環の複素環が2個縮合した複素環基;このような単環の複素環と、5員又は6員の単環の炭化水素環とが縮合した複素環基;このような単環の複素環が3個縮合した複素環基;このような単環の複素環2個と、5員又は6員の単環の炭化水素環1個とが縮合した複素環基;又はこのような単環の複素環1個と、5員又は6員の単環の炭化水素環2個とが縮合した複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基又はフェナントロリニル基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基としては、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子(好ましくは窒素原子)を含む5員又は6員の単環の複素環基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。R7が表わす5員以上14員以下の複素環基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R7が表わす5員以上14員以下の複素環基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R7が表わす5員以上14員以下の複素環基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。
R7が表わす炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基が結合した炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、フェニル基が結合した炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、フェニルメチル基(ベンジル基)又はフェニルエチル基がより好ましい。R7が表わす炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R7が表わす炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R7が表わす炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。
一般式(2)中、一般式「−COOR7」で表される基の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。一般式「−COOR7」で表される基は、下記化学式中の1位、2位、3位及び4位の何れの位置に結合してもよい。一般式「−COOR7」で表される基は、下記化学式中の1位、2位又は4位に結合することが好ましく、1位又は4位に結合することがより好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、R7は、ハロゲン原子を1つ又は2つ有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はハロゲン原子を1つ又は2つ有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表すことが好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、化合物(2)が有するハロゲン原子の数が多いことが好ましい。ポリカーボネート樹脂(2)が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましく、2つであることがより好ましい。
化合物(2)の具体例は、下記化学式(2−1)〜(2−10)で表される化合物(以下、化合物(2−1)〜(2−10)と記載することがある)である。なかでも、化合物(2−1)、(2−5)及び(2−10)が好ましい。
化合物(2)は、例えば、下記の反応(R−1)及び(R−2)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。反応(R−1)及び(R−2)で示す反応式においてR7は、一般式(2)中のR7と同義である。また、下記化学式(A)、一般式(B)、一般式(C)及び化学式(D)で表される化合物を、各々、化合物(A)、(B)、(C)及び(D)と記載することがある。
反応(R−1)では、1モル当量の化合物(A)と、1モル当量の化合物(B)とを反応させて、1モル当量の化合物(C)を得る。1モルの化合物(A)に対して、1モル以上5モル以下の化合物(B)を添加することが好ましい。反応(R−1)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R−1)の反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−1)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、酸触媒が挙げられ、より具体的には、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸又はピリジニウム−p−トルエンスルホン酸が挙げられる。これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒の添加量は、1モルの化合物(A)に対して、少量であり、具体的には0.01モル以上0.5モル以下であることが好ましい。
反応(R−1)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(具体的には、塩化メチレン、クロロホルム又はジクロロエタン)又は芳香族炭化水素(具体的には、ベンゼン又はトルエン)が挙げられる。
反応(R−2)では、1モル当量の化合物(C)と、1モル当量の化合物(D、マロノニトリル)とを反応させて、1モル当量の化合物(2)を得る。1モルの化合物(C)に対して、1モル以上5モル以下の化合物(D)を添加することが好ましい。反応(R−2)の反応温度は40℃以上120℃以下であることが好ましい。反応(R−2)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−2)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、塩基触媒が挙げられ、より具体的には、ピペリジン、ピペラジンが挙げられる。
反応(R−2)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、極性溶媒が挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、アセトン又はジオキサンが挙げられる。
反応(R−2)で得られた反応生成物を、必要に応じて精製することにより、目的化合物である化合物(2)を単離することができる。精製方法としては、公知の方法が適宜採用される。精製は、例えば晶析又はシリカゲルクロマトグラフィーにより行われてもよい。精製に使用する溶媒として、例えば、クロロホルムが挙げられる。
感光層は、化合物(2)に加えて、化合物(2)以外の電子輸送剤(以下、その他の電子輸送剤と記載することがある)を含んでいてもよい。その他の電子輸送剤の例は、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸又はジブロモ無水マレイン酸である。キノン系化合物の例は、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物又はジニトロアントラキノン系化合物である。その他の電子輸送剤の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
感光層が化合物(2)に加えてその他の電子輸送剤を含有する場合、化合物(2)の含有量は、電子輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
電子輸送剤としての化合物(2)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上40質量部以下であることが好ましい。化合物(2)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して20質量部以上であると、感光体の電気特性を向上させ易い。化合物(2)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して40質量部以下であると、感光層を形成するための溶剤に化合物(2)が溶解し易く、均一な感光層を形成し易くなる。
(炭酸カルシウムの摩擦帯電量)
感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量(以下、炭酸カルシウムの帯電量と記載することがある)は、7.0μC/g以上であることが好ましい。炭酸カルシウムは、記録媒体の微小成分の一例である紙粉の主成分である。炭酸カルシウムの帯電量が7.0μC/g以上であると、感光体と記録媒体の微小成分とが摩擦したときに記録媒体の微小成分が良好に正極性に帯電する傾向がある。画像形成の帯電工程で感光体の表面が正極性に帯電される場合、正極性に帯電された感光体の表面と、正極性を帯びる記録媒体の微小成分とが電気的に反発する。これにより、感光体の表面に記録媒体の微小成分が付着し難くなる。その結果、形成画像における白点の発生を一層抑制することができる。炭酸カルシウムの帯電量は、7.0μC/g以上15.0μC/g以下であることが好ましく、9.0μC/g以上15.0μC/g以下であることがより好ましく、9.0μC/g以上13.5μC/g以下であることが特に好ましい。
以下、図2を参照して、感光層3と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明する。炭酸カルシウムの帯電量は、第一ステップ、第二ステップ、第三ステップ及び第四ステップを行うことにより測定される。第一ステップでは、感光層3を2個準備する。感光層3の一方が第一感光層30である。感光層3の他方が第二感光層32である。第一感光層30及び第二感光層32は、直径3cmの円形状である。第二ステップでは、0.007gの炭酸カルシウムを、第一感光層30の上に載せる。これにより、炭酸カルシウムで構成される炭酸カルシウム層24を形成する。続いて、炭酸カルシウム層24上に第二感光層32を載せる。第三ステップでは、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、第二感光層32を固定したまま、回転速度60rpmで60秒間第一感光層30を回転させる。これにより、第一感光層30と第二感光層32との間で、炭酸カルシウム層24に含まれる炭酸カルシウムを摩擦して炭酸カルシウムを帯電させる。第四ステップでは、帯電させた炭酸カルシウムを、帯電量測定装置を用いて吸引する。吸引された炭酸カルシウムの総電気量Qと質量Mとを帯電量測定装置を用いて測定し、式「帯電量=Q/M」から炭酸カルシウムの帯電量を算出する。なお、炭酸カルシウムの帯電量は、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。以上、図2を参照して、感光層3と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明した。
(正孔輸送剤)
感光層は、例えば正孔輸送剤を含有する。正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正孔輸送剤は、下記一般式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)と記載することがある)又は下記一般式(4)で表される化合物(以下、化合物(4)と記載することがある)を含むことが好ましい。形成画像における白点の発生を抑制するためには、正孔輸送剤は、化合物(3)であることがより好ましい。まず、化合物(3)について説明する。
一般式(3)中、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。
感光層が電子輸送剤としての化合物(2)と正孔輸送剤としての化合物(3)とを含有することで、感光層の電気特性を損なうことなく、形成画像における白点の発生を抑制することができる。また、感光層がポリカーボネート樹脂(1)と化合物(3)とを含有することで、感光層にオイルクラックが発生することを抑制できると考えられる。化合物(3)が有するR8〜R19は、アルケニル基又はアリール基のような共役基ではないため、化合物(3)の分子量は比較的小さい。このような化学構造を有する化合物(3)がポリカーボネート樹脂(1)と組み合わされて感光層に含有されることで、化合物(3)が感光層のボイド(微小な空隙)を埋めると考えられるからである。
R8〜R19が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R8〜R19が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(3)中、R8〜R19は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表すことがより好ましく、水素原子又はメチル基を表すことが特に好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(3)中、R8とR11とは同じ基であることが好ましい。R9とR12とは同じ基であることが好ましい。R10とR13とは同じ基であることが好ましい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、一般式(3)中、R14〜R19は、水素原子を表すことが好ましい。
化合物(3)の具体例は、下記化学式(3−1)〜(3−4)で表される化合物(以下、化合物(3−1)〜(3−4)と記載することがある)である。なかでも、化合物(3−1)が好ましい。
次に、化合物(4)について説明する。
一般式(4)中、R20〜R25は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R20〜R25は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが特に好ましい。
一般式(4)中、a、b、c及びdは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。aが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR20は、互いに同一でも異なっていてもよい。bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR21は、互いに同一でも異なっていてもよい。cが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR22は、互いに同一でも異なっていてもよい。dが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR23は、互いに同一でも異なっていてもよい。a及びbは、各々、0を表すことが好ましい。c及びdは、各々独立して、1以上5以下の整数を表すことが好ましく、2を表すことがより好ましい。
R20〜R23の結合位置は特に限定されない。R20〜R23は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R22及びR23は、各々、フェニル基のオルト位に結合することが好ましい。
一般式(4)中、e及びfは、各々独立して、0以上4以下の整数を表す。eが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR24は、互いに同一でも異なっていてもよい。fが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR25は、互いに同一でも異なっていてもよい。e及びfは、各々、0を表すことが好ましい。
R24及びR25の結合位置は特に限定されない。R24及びR25は、各々、フェニレン基が結合する窒素原子に対して、オルト位及びメタ位の何れに結合(位置)してもよい。
化合物(4)の具体例は、下記化学式(4−1)で表される化合物(以下、化合物(4−1)と記載することがある)である。
感光層が正孔輸送剤として化合物(3)を含有する場合、化合物(3)の含有量は、正孔輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
感光層が正孔輸送剤として化合物(4)を含有する場合、化合物(4)の含有量は、正孔輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、40質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
(電荷発生剤)
感光層は、電荷発生剤を含有する。電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、X型無金属フタロシアニンが特に好ましい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
(添加剤)
感光層は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物又は有機燐化合物が挙げられる。
<1−2.導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<1−3.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層の添加剤と同様である。
<1−4.感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び必要に応じて添加される成分(例えば、各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
感光層用塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
感光層用塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
感光層用塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
<2.画像形成装置>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る感光体1を備える画像形成装置100について説明する。図3に画像形成装置100の構成の一例を示す。
画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えばタンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、感光体1と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。画像形成ユニット40の中央位置に、感光体1が設けられる。感光体1は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。感光体1の周囲には、帯電部42を基準として感光体1の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。クリーニング部及び除電部は、例えば、転写部48と帯電部42との間に設けられる。
帯電部42は、感光体1の表面を帯電する。帯電部42は、非接触方式又は接触方式である。非接触方式の帯電部42の例は、コロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器である。接触方式の帯電部42の例は、帯電ローラー又は帯電ブラシである。
画像形成装置100は、帯電部42として帯電ローラーを備えることができる。感光体1の表面を帯電するときに、帯電ローラーは感光体1と接触する。感光体1の表面に記録媒体P(例えば、紙)の微小成分(例えば、紙粉)が付着している場合には、接触した帯電ローラーによって微小成分が感光体1の表面に押圧される。これにより、感光体1の表面に微小成分が固着し易い。しかし、画像形成装置100は、微小成分の付着により引き起こされる白点の発生を抑制可能な感光体1を備えている。このため、画像形成装置100は、帯電部42として帯電ローラーを備える場合であっても、微小成分が感光体1の表面に固着し難く、形成される画像における白点の発生を抑制することができる。
帯電部42は感光体1の表面を正極性に帯電することが好ましい。本実施形態の感光体1と記録媒体Pとが接触して摩擦されると、記録媒体Pは正極性に帯電する傾向がある。帯電部42によって感光体1の表面が正極性に帯電されると、感光体1の表面と、正極性に摩擦帯電される記録媒体Pとが、電気的に反発する。その結果、記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が感光体1の表面に付着し難く、形成画像における白点の発生を好適に抑制することができる。
露光部44は、帯電された感光体1の表面を露光する。これにより、感光体1の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、感光体1に形成された静電潜像にトナーを供給する。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。感光体1は、トナー像を担持する像担持体に相当する。
現像部46は、感光体1と接触しながら静電潜像をトナー像として現像することができる。すなわち、画像形成装置100は、いわゆる接触現像方式を採用することができる。感光体1の表面に記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が付着している場合には、接触した現像部46によって微小成分が感光体1の表面に押圧される。これにより、感光体1の表面に微小成分が固着し易い。しかし、画像形成装置100は、微小成分の付着により引き起こされる白点の発生を抑制可能な感光体1を備えている。このため、画像形成装置100は、接触現像方式を採用する場合であっても、微小成分が感光体1の表面に固着し難く、形成される画像における白点の発生を抑制することができる。
現像部46は、感光体1の表面を清掃することができる。すなわち、画像形成装置100は、いわゆるクリーナーレス方式を採用することができる。現像部46は、感光体1の表面に残留する成分(以下、「残留成分」と記載することがある)を除去することができる。残留成分の一例は、トナー成分であり、より具体的には、トナー又は遊離した外添剤である。残留成分の別の例は、非トナー成分であり、より具体的には記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)である。クリーナーレス方式を採用する画像形成装置100では、クリーニング部(例えば、クリーニングブレード)によって感光体1の表面の残留成分が掻き取られない。そのため、クリーナーレス方式を採用する画像形成装置100では、通常、感光体1の表面に残留成分が残り易い。しかし、本実施形態の感光体1は、微小成分の付着により引き起こされる白点の発生を抑制することができる。従って、このような感光体1を備える画像形成装置100は、クリーナーレス方式を採用したとしても、感光体1の表面に残留成分、特に記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が残り難い。その結果、画像形成装置100は、形成される画像における白点の発生を抑制することができる。
現像部46が感光体1の表面を効率的に清掃するためには、以下に示す条件(a)及び条件(b)を満たすことが好ましい。
条件(a):接触現像方式を採用し、感光体1と現像部46との間に周速(回転速度)差が設けられる。
条件(b):感光体1の表面電位と、現像バイアスの電位とが以下の数式(b−1)及び数式(b−2)を満たす。
0(V)<現像バイアスの電位(V)<感光体1の未露光領域の表面電位(V)・・・(b−1)
現像バイアスの電位(V)>感光体1の露光領域の表面電位(V)>0(V)・・・(b−2)
条件(a)に示す接触現像方式を採用し、感光体1と現像部46との間に周速差が設けられていると、感光体1の表面は現像部46と接触し、感光体1の表面の付着成分が現像部46との摩擦により除去される。現像部46の周速は、感光体1の周速よりも速いことが好ましい。
条件(b)では、現像方式が反転現像方式である場合を想定している。単層型感光体である感光体1の電気特性を向上させるためには、トナーの帯電極性、感光体1の未露光領域の表面電位、感光体1の露光領域の表面電位及び現像バイアスの電位が何れも正極性であることが好ましい。なお、感光体1の未露光領域の表面電位及び露光領域の表面電位は、転写部48がトナー像を感光体1から記録媒体Pへ転写した後、帯電部42が次周回の感光体1の表面を帯電する前に測定される。
条件(b)の数式(b−1)を満たすと、感光体1に残留したトナー(以下、残留トナーと記載することがある)と感光体1の未露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ大きくなる。このため、感光体1の未露光領域の残留トナーは、感光体1の表面から現像部46へと移動し、回収される。
条件(b)の数式(b−2)を満たすと、残留トナーと感光体1の露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ小さくなる。このため、感光体1の露光領域の残留トナーは、感光体1の表面に保持される。感光体1の露光領域に保持されたトナーは、そのまま画像形成に使用される。
転写ベルト50は、感光体1と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、感光体1から記録媒体Pへ転写する。転写部48によって感光体1から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、感光体1は記録媒体Pと接触している。すなわち、画像形成装置100は、いわゆる直接転写方式を採用する。転写部48は、例えば転写ローラーである。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。なお、画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置100は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
<3.プロセスカートリッジ>
次に、図3を引き続き参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、ユニット化された感光体1を備える。プロセスカートリッジは、感光体1に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジには、クリーニング装置(不図示)及び除電器(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体1の感度特性等が劣化した場合に、感光体1を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下のバインダー樹脂、電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤を準備した。
<1−1.バインダー樹脂>
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリカーボネート樹脂(1−1)〜(1−4)を準備した。ポリカーボネート樹脂(1−1)〜(1−4)の粘度平均分子量は、50000であった。
比較用のバインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(1−5)〜(1−7)を準備した。ポリカーボネート樹脂(1−5)〜(1−7)の各々は、下記化学式(1−5)〜(1−7)で表される。ポリカーボネート樹脂(1−5)〜(1−7)の粘度平均分子量は、50000であった。なお、化学式(1−5)〜(1−7)中の繰り返し単位に付された添え字は、各繰り返し単位のモル比率を表す。化学式(1−5)及び(1−7)中の添え字である「1.0」は、ポリカーボネート樹脂(1−5)及び(1−7)の各々が、添え字が付された繰り返し単位のみから構成されていることを示す。
<1−2.電荷発生剤>
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニンを準備した。
<1−3.正孔輸送剤>
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(3−1)及び(4−1)を準備した。
<1−4.電子輸送剤>
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(2−1)、(2−5)、(2−10)を準備した。具体的には、以下の方法で化合物(2−1)、(2−5)、(2−10)を合成した。
(化合物(2−1)の製造)
下記反応(R−3)及び(R−4)に従って、化合物(2−1)を製造した。下記反応式中の化学式(A−1)、(B−1)、(C−1)及び(D)で表される化合物を、各々、化合物(A−1)、(B−1)、(C−1)及び(D)と記載することがある。
反応(R−3)では、化合物(A−1)と化合物(B−1)とを反応させて化合物(C−1)を得た。詳しくは、フラスコに、化合物(A−1)2.24g(0.010モル)、化合物(B−1)3.26g(0.030モル)及びトルエン(100mL)を加え、フラスコの内容物を溶解させた。フラスコ内に、p−トルエンスルホン酸(0.001モル)を加えた。フラスコをディーン・スターク装置にセットした。フラスコの内容物を、90℃で5時間、脱水しながら還流した。得られたフラスコの内容物を減圧し、トルエンを留去した。減圧留去後の混合物にイオン交換水を加え、クロロホルムで抽出した。得られた有機層を乾燥した後、有機層を減圧しクロロホルムを留去した。その結果、化合物(C−1)が粗生成物として得られた。化合物(C−1)の収量は2.84gであり、化合物(A−1)からの化合物(C−1)の収率は90mol%であった。
反応(R−4)では、化合物(C−1)と化合物(D、マロノニトリル)とを反応させて化合物(2−1)を得た。詳しくは、化合物(C−1)1.57g(0.005モル)及び化合物(D)0.66g(0.010モル)をメタノール(100mL)に加えて、メタノール溶液を得た。メタノール溶液に、ピペリジン0.08g(0.001モル)を加えて、混合物を得た。混合物を還流しながら80℃で3時間攪拌した。続いて、混合物をイオン交換水(200mL)に加えて固体を析出させ、固体をろ取した。得られた固体を、展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、化合物(2−1)が得られた。化合物(2−1)の収量は1.45gであり、化合物(C−1)からの化合物(2−1)の収率は80mol%であった。
(化合物(2−5)の製造)
以下の点を変更した以外は、化合物(C−1)の製造と同様の方法で、反応(R−3)を行った。化合物(C−1)の製造で添加した化合物(B−1)3.26g(0.030モル)を、化合物(B−5)5.31g(0.030モル)に変更した。その結果、化合物(C−1)の代わりに、化合物(C−5)が得られた。化合物(C−5)の収量は3.26gであり、化合物(A−1)からの化合物(C−5)の収率は85mol%であった。化合物(B−5)及び(C−5)は、各々、下記化学式(B−5)及び(C−5)で表される化合物である。
続けて、以下の点を変更した以外は、化合物(2−1)の製造と同様の方法で、反応(R−4)を行った。化合物(2−1)の製造で添加した化合物(C−1)1.57g(0.005モル)を、化合物(C−5)1.92g(0.005モル)に変更した。その結果、化合物(2−1)の代わりに、化合物(2−5)が得られた。化合物(2−5)の収量は1.73gであり、化合物(C−5)からの化合物(2−5)の収率は80mol%であった。
(化合物(2−10)の製造)
以下の点を変更した以外は、化合物(C−1)の製造と同様の方法で、反応(R−3)を行った。化合物(C−1)の製造で添加した化合物(A−1)2.24g(0.010モル)を、化合物(A−10)2.24g(0.010モル)に変更した。化合物(C−1)の製造で添加した化合物(B−1)3.26g(0.030モル)を、化合物(B−10)3.84g(0.030モル)に変更した。その結果、化合物(C−1)の代わりに、化合物(C−10)が得られた。化合物(C−10)の収量は2.81gであり、化合物(A−1)からの化合物(C−10)の収率は84mol%であった。化合物(A−10)、(B−10)及び(C−10)は、各々、下記化学式(A−10)、(B−10)及び(C−10)で表される化合物である。
続けて、以下の点を変更した以外は、化合物(2−1)の製造と同様の方法で、反応(R−4)を行った。化合物(2−1)の製造で添加した化合物(C−1)1.57g(0.005モル)を、化合物(C−10)1.67g(0.005モル)に変更した。その結果、化合物(2−1)の代わりに、化合物(2−10)が得られた。化合物(2−10)の収量は1.76gであり、化合物(C−10)からの化合物(2−10)の収率は92mol%であった。
次に、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計)を用いて、製造した化合物(2−1)の1H−NMRスペクトルを測定した。磁場強度は300MHzに設定した。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl3)を使用した。内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。化合物(2−1)の1H−NMRスペクトルの化学シフト値を以下に示す。測定された1H−NMRスペクトルの化学シフト値から、化合物(2−1)が得られていることを確認した。なお、化合物(2−5)及び(2−10)についても、同様に、化合物(2−5)及び(2−10)が得られていることを確認した。
化合物(2−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.53(dd,1H),8.39(d,1H),8.18(d,1H),7.85(dd,1H),7.49(dt,1H),7.35(t,1H),7.34(dt,1H),4.45(t,2H),3.63(t,2H),1.90−2.07(m,4H).
比較用の電子輸送剤として、下記化学式(2−11)及び(2−12)で表される化合物(以下、化合物(2−11)及び(2−12)と記載することがある)を準備した。
<2.感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(P−1)〜(P−19)を製造した。
<2−1.感光体(P−1)の製造>
容器内に、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニン2質量部、正孔輸送剤としての化合物(3−1)55質量部、電子輸送剤としての化合物(2−1)35質量部、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(1−1)100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン700質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて12時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で80分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、一層の感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、感光体(P−1)が得られた。
<2−2.感光体(P−2)〜(P−19)の製造>
次の点を変更した以外は、感光体(P−1)の製造と同様の方法で、感光体(P−2)〜(P−19)の各々を製造した。感光体(P−1)の製造に用いたバインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(1−1)を、表1に示す種類のバインダー樹脂に変更した。感光体(P−1)の製造に用いた電子輸送剤としての化合物(2−1)を、表1に示す種類の電子輸送剤に変更した。感光体(P−1)の製造に用いた正孔輸送剤としての化合物(3−1)を、表1に示す種類の正孔輸送剤に変更した。
<3.電気特性の評価>
製造した感光体(P−1)〜(P−19)の各々に対して、電気特性を評価した。電気特性の評価は、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+600Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光エネルギー1.5μJ/cm2)を取り出した。取り出された単色光を、感光体の表面に照射した。照射が終了してから0.5秒経過した時の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、感度電位(VL、単位:+V)とした。測定された感光体の感度電位(VL)を、表1に示す。なお、感度電位(VL)の絶対値が小さいほど、感光体の電気特性が優れていることを示す。
<4.摩擦帯電性の評価>
製造した感光体(P−1)〜(P−19)の各々に対して、摩擦帯電性を評価した。
以下、図2を再び参照して、感光層3と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明する。炭酸カルシウムの帯電量は、下記の第一ステップ、第二ステップ、第三ステップ及び第四ステップを行うことにより測定した。炭酸カルシウムの帯電量の測定には、治具10を使用した。
治具10は、第一台12と、回転シャフト14と、回転駆動部16(例えば、モーター)と、第二台18とを備えている。回転駆動部16は、回転シャフト14を回転させる。回転シャフト14は、回転シャフト14の回転軸Sを中心に回転する。第一台12は、回転シャフト14と一体になって、回転軸Sを中心に回転する。第二台18は、回転することなく固定されている。
(第一ステップ)
第一ステップでは、感光層3を2個準備した。以下、感光層3の一方を第一感光層30と、感光層3の他方を第二感光層32と記載する。まず、膜厚L1が30μmである第一感光層30を備える第一フィルム20を準備した。また、膜厚L2が30μmである第二感光層32を備える第二フィルム22を準備した。詳しくは、第一フィルム20及び第二フィルム22として、オーバーヘッドプロジェクタ(OHP)フィルムを使用した。第一フィルム20及び第二フィルム22の大きさは、各々、直径3cmの円形状であった。第一フィルム20及び第二フィルム22の各々の上に、感光体(P−1)の製造に使用した感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で80分間熱風乾燥させた。その結果、第一感光層30を備える第一フィルム20、及び第二感光層32を備える第二フィルム22が得られた。
(第二ステップ)
第二ステップでは、0.007gの炭酸カルシウムを、第一感光層30上に載せた。これにより、炭酸カルシウムから構成される炭酸カルシウム層24を、第一感光層30上に形成した。そして、炭酸カルシウム層24上に第二感光層32を載せた。第二ステップの具体的な手順は以下の通りであった。
まず、第一フィルム20を、両面テープを用いて第一台12に固定した。第一フィルム20が備える第一感光層30上に、0.007gの炭酸カルシウムを載せた。これにより、炭酸カルシウムから構成される炭酸カルシウム層24を第一感光層30上に形成した。炭酸カルシウム層24が第二感光層32と接触するように、両面テープを用いて第二フィルム22を第二台18に固定した。これにより、下から順に、第一台12、第一フィルム20、第一感光層30、炭酸カルシウム層24、第二感光層32、第二フィルム22及び第二台18が配置された。第一台12、第一フィルム20、第一感光層30、第二感光層32、第二フィルム22及び第二台18の各中心が、回転軸Sを通るように配置された。
(第三ステップ)
第三ステップでは、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、第二感光層32を固定したまま、回転速度60rpmで60秒間第一感光層30を回転させた。具体的には、回転駆動部16を駆動させて、回転シャフト14、第一台12、第一フィルム20及び第一感光層30を、回転速度60rpmで60秒間、回転軸Sを中心に回転させた。これにより、炭酸カルシウム層24に含まれる炭酸カルシウムが第一感光層30と第二感光層32との間で摩擦され、炭酸カルシウムが帯電した。
(第四ステップ)
第四ステップでは、第三ステップで帯電させた炭酸カルシウムを治具10から取出し、帯電量測定装置(吸引式小型帯電量測定装置、トレック社製「MODEL 212HS」)を用いて吸引した。吸引された炭酸カルシウムの総電気量Q(単位:+μC)と質量M(単位:g)とを、帯電量測定装置を用いて測定した。式「帯電量=Q/M」から、炭酸カルシウムの帯電量(摩擦帯電量、単位:+μC/g)を算出した。
感光体(P−2)〜(P−19)の各々の摩擦帯電性は、次の点を変更した以外は、感光体(P−1)の摩擦帯電性の評価と同様の方法で評価した。第一ステップにおいて、感光体(P−1)の製造に使用した感光層用塗布液の代わりに、感光体(P−2)〜(P−19)の製造に使用した感光層用塗布液の各々を使用した。
感光体(P−1)〜(P−19)の各々について、算出された炭酸カルシウムの帯電量を表1に示す。なお、炭酸カルシウムの帯電量が大きい正の値であるほど、第一感光層30及び第二感光層32に対して炭酸カルシウムが正極性に帯電し易いことを示す。
<5.画像特性の評価>
製造した感光体(P−1)〜(P−19)の各々に対して、画像特性を評価した。画像特性の評価は、温度32.5℃、相対湿度80%RHの環境下で行った。評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「モノクロプリンターFS−1300D」の改造機)を用いた。具体的には、非接触現像方式を接触現像方式に改造した。ブレードクリーニング方式をクリーナーレス方式に改造した。スコロトロン帯電器を帯電ローラーに改造した。なお、この画像形成装置は、直接転写方式を採用しており、帯電部の帯電極性は正極性であった。記録媒体として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。評価機による評価には、一成分現像剤(試作品)を使用した。
評価機を用いて、感光体の回転速度168mm/秒の条件で、20000枚の記録媒体に画像I(印字率1%の画像)を連続して印刷した。続いて、1枚の記録媒体に画像II(A4サイズの黒色ソリッド画像)を印刷した。画像IIが形成された記録媒体を肉眼で観察し、画像II内に現れる白点の数を数えた。感光体に記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が付着するほど、画像II内の白点の個数が増加する傾向がある。画像II内に現れる白点の個数を、表1に示す。
表1中、HTM、ETM及びVLは、各々、正孔輸送剤、電子輸送剤及び感度電位を示す。
感光体(P−1)〜(P−12)及び(P−18)の感光層は、電荷発生剤と電子輸送剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含有する一層の感光層であった。バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(1)を、具体的にはポリカーボネート樹脂(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)を含んでいた。電子輸送剤が化合物(2)を、具体的には化合物(2−1)、(2−5)又は(2−10)を含んでいた。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−1)〜(P−12)及び(P−18)では、形成画像における白点の個数が少なく、白点の発生が抑制されていた。また、これらの感光体では、感光体の電気特性を損なうことなく、形成画像における白点の発生を抑制することができた。
一方、感光体(P−13)〜(P−15)の感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)及び化合物(2)を含有していなかった。感光体(P−16)の感光層は、化合物(2)を含有していなかった。感光体(P−17)の感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)を含有していなかった。感光体(P−19)の感光層は、化合物(2)を含有していなかった。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−13)〜(P−17)及び(P−19)では、形成画像における白点の個数が多く、白点が発生した。
以上のことから、本発明に係る感光体は、形成画像における白点の発生を抑制することが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、形成画像における白点の発生を抑制することが示された。