JP6506983B2 - 水素発生用陰極およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1) 導電性基材と、該導電性基材上の触媒層と、からなる水素発生用陰極であって、
前記触媒層が、ルテニウム元素、セリウム元素、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)の元素、およびアルミニウム元素を含有することを特徴とする、前記水素発生用陰極。
(2) 前記3価を取りうる遷移金属が希土類金属である、(1)に記載の水素発生用陰極。
(4) 前記セリウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/20〜1/2モルであり、
前記3価を取りうる遷移金属元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルであり、そして
アルミニウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルである、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
前記セリウム元素が、酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、
前記3価を取りうる遷移金属の元素のうちの少なくとも一部が、遷移金属酸化物および遷移金属水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、そして
前記アルミニウム元素が、酸化アルミニウムおよびアルミニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
(6) 前記遷移金属元素のうちの少なくとも一部が前記酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種にドープされている、(5)に記載の水素発生用陰極。
前記触媒層における前記セリウム元素のうちの少なくとも一部は酸化セリウムを形成する元素であり、
前記ルテニウム元素のうちの少なくとも一部は酸化ルテニウムを形成する元素であり、そして
前記触媒層を前記導電性基材とともにX線回折したときの、酸化セリウムに帰属される2θ=47.3°のピーク強度が、酸化ルテニウムに帰属される2θ=35.1°のピーク強度に対して、1/40以下である、(5)または(6)に記載の水素発生用陰極。
(8) 前記触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量が1〜20g/m2である、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
ルテニウム化合物、セリウム化合物、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)の化合物、およびアルミニウム化合物を含有する溶液を塗布した後に乾燥して塗膜を形成し、次いで前記塗膜中に含まれる前記化合物群を熱分解して触媒層を形成することを特徴とする、水素発生用陰極の製造方法。
(10) 前記3価を取りうる遷移金属化合物が希土類金属化合物である、(9)に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(12) 前記溶液中、
前記セリウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するセリウム元素の割合として、1/20〜1/2モルであり、
前記3価を取りうる遷移金属化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対する遷移金属元素の割合として、1/100〜1/2モルであり、そして
前記アルミニウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するアルミニウム元素の割合として、1/100〜1/2モルである、(9)〜(11)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(14) 前記3価を取りうる遷移金属化合物が塩化物である、(9)〜(13)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
上記熱分解を350℃以上600℃以下の温度で行う、(9)〜(14)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(16) 上記熱分解の前に、150℃以上350℃未満の温度で1〜60分間の仮焼成を行う、(9)〜(15)のいずれか一項に記載の電解用陰極の製造方法。
<導電性基材>
本発明の水素発生用陰極における導電性基材としては、例えばニッケル、ニッケル合金、ステンレススチールなどを使用できる。しかし、ステンレススチールを高濃度のアルカリ水溶液中で用いた場合、鉄およびクロムが溶出すること、ならびにステンレススチールの電気伝導性がニッケルの1/10程度であることを考慮すると、導電性基材としてはニッケルが好ましい。
基材としては、ニッケルの細線を編んだウーブンメッシュが好ましい。ニッケル細線の線径としては、0.05〜0.3mmが好ましく、0.1〜0.2mmがより好ましい。また、メッシュ数としては、10〜60メッシュが好ましく、20〜50メッシュであることがより好ましく、さらに好ましくは25〜45メッシュである。
本発明の水素発生用陰極における触媒層は、ルテニウム元素、セリウム元素、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)の元素、およびアルミニウム元素を含有する。
上記触媒層に含有されるルテニウム元素は、水素発生電解における触媒として機能する成分である。このルテニウム元素は、酸化ルテニウム、ルテニウム水酸化物、および金属ルテニウムのうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、酸化ルテニウムおよびルテニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましく、酸化ルテニウムを形成する元素であることが特に好ましい。つまり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化ルテニウムを含有することが特に好ましい。
上記触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量は、多ければ多い方が低い過電圧を維持できる時間が長くなる傾向にあり、好ましい。しかしながら、ルテニウム元素は高価であるため、適正なコストメリットを得る観点から、その使用量を抑制する必要もある。これらのことに鑑み、触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量は、1〜20g/m2であることが好ましく、5〜20g/m2であることがより好ましく、さらに好ましくは5〜15g/m2である。
上記触媒層に含有されるセリウム元素は、酸化セリウム、セリウム水酸化物、および金属セリウムのうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましく、酸化セリウムを形成する元素であることが特に好ましい。つまり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化セリウムを含有することが特に好ましい。
触媒層におけるセリウム元素の含有量は、より好ましくは、ルテニウム元素1モルに対して1/8〜1/4の範囲である。
本発明の水素発生用陰極における触媒層は、さらに、3価を取りうる遷移金属元素を含有する。この遷移金属元素からは、ルテニウム元素およびセリウム元素は除かれる。この、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)を、本明細書において、以下、単に「遷移金属」と呼ぶことがある。
上記遷移金属元素は、セリウムを除く希土類金属の元素から選択されることが好ましく、
ランタン、プラセオジム、ネオジム、およびサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属の元素であることがより好ましい。
上記遷移金属の元素は、そのうちの少なくとも一部が、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、および金属状の遷移金属のうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、遷移金属酸化物および遷移金属水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましい。
本発明の水素発生用陰極における触媒層は、さらに、アルミニウム元素を含有する。
触媒層にアルミニウム元素を添加すると、陰極電解液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)によってアルミニウム化合物が溶出し、触媒層の表面積が増加する。
このアルミニウム元素は、酸化アルミニウム、アルミニウム水酸化物、および金属アルミニウムのうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、酸化アルミニウムおよびアルミニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましく、酸化アルミニウムを形成する元素であることが特に好ましい。つまり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化アルミニウムを含有することが特に好ましい。
触媒層の厚さは、厚ければ厚いほど、低い過電圧を維持できる期間が長くなる。しかしながら、触媒層が過度に厚いと、陰極の物理強度が低下する場合がある。これらの双方を考慮すると、触媒層の厚さとしては、1〜10μmであることが好ましく、2〜5μmであることがより好ましい。
触媒層の単位面積当たりの重さも、重いほど、低い過電圧を維持できる期間が長くなるが、経済性の観点も考慮すると、1〜20g/m2であることが好ましく、3〜15g/m2であることがより好ましい。
本発明の水素発生用陰極は、その触媒層の表面積を大きくすることによって、陰極の劣化が抑制されている。この効果が発現するメカニズムについて、次に説明する。
電解槽停止後、逆電流が流れると、陰極上で酸化反応が進行しながら電位が上昇する。陰極上では、種々の物質の様々な酸化反応が、酸化還元電位が卑である順に進行する。具体的には、先ず−1.0V(vs.Ag|AgCl)付近で、陰極に吸着している水素の酸化反応(1)が進行する。次に、−0.9V(vs.Ag|AgCl)付近で、Ni金属(Ni基材表面)の酸化反応(2)が進行する。次に、−0.1V(vs.Ag|AgCl)付近で、触媒層における触媒活性成分であるRuの酸化溶出反応(3)が進行し、Ru触媒層の劣化が起こる。
ここで、触媒層の表面積を大きくすることにより、これらその他の酸化反応に使用される逆電流電気量も大きくなるから、Ruの酸化溶出(3)を抑制することができるものと推察される。
電気二重層容量が0.01C/V・cm2であれば、該触媒層は十分な比表面積を有していると考えることができる。触媒層の電気二重層容量は、0.05C/V・cm2以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.08C/V・cm2以上である。上限としては、現実的な値として、0.35C/V・cm2以下が好ましい。
上記電気二重層容量は、以下のようにして測定することができる。
触媒層を有する陰極を、90℃の32wt%NaOH水溶液中に浸漬し、−0.75〜−0.55V(vs.Ag|AgCl)の間を、掃引速度を10、30、50、80、100、および150mV/sと変量して掃引し、−0.65V(vs.Ag|AgCl)における電流値を読み取る。そして、横軸に掃引速度、縦軸に−0.65V(vs.Ag|AgCl)の電流値をプロットして得られた直線の傾きを、電気二重層容量として評価する。
遷移金属元素およびアルミニウム元素のうちのどちらか一方のみを大量に添加することによっても、触媒層の表面積の増加を図ることができる。しかし、この場合には、触媒層中に層状の剥離が発生し、通常使用時の耐久性に問題が出る。
本発明所定の組み合わせの元素を、好ましくは上記に記載の含有量の範囲で添加することにより、水素過電圧が低く、逆電流耐性が高く、そして通常使用時の耐久性が高い陰極とすることができるのである。
本発明の水素発生用陰極は、例えば、
導電性基材上に、
ルテニウム化合物、セリウム化合物、遷移金属化合物、およびアルミニウム化合物を含有する溶液(塗布液)を塗布した後に乾燥して塗膜を形成し、次いで前記塗膜中に含まれる前記化合物群を熱分解して触媒層を形成することによって、製造することができる。上記遷移金属化合物は、3価を取りうる遷移金属化合物から選択され、ただし、ルテニウムおよびセリウムは除かれる。
上記塗布液は、ルテニウム化合物、セリウム化合物、遷移金属化合物、およびアルミニウム化合物を含有する液体状の組成物である。
塗布液中のルテニウム化合物の濃度は、特に限定されないが、触媒層を形成するときの1回当たりの塗布厚みとの兼ね合いで、ルテニウム元素換算の濃度として、10〜200g/Lの範囲が好ましく、50〜120g/Lの範囲がより好ましい。
セリウム化合物:ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するセリウム元素の割合として、好ましくは1/20〜1/2モル、より好ましくは1/8〜1/4モル
遷移金属化合物:ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対する遷移金属元素の割合として、好ましくは1/100〜1/2モル、より好ましくは1/50〜1/10モル
アルミニウム化合物:ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するアルミニウム元素の割合として、好ましくは1/100〜1/2モル、より好ましくは1/15〜1/4モル
ここで使用されるその他の成分としては、例えばpH調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、キレート剤などを挙げることができる。
これらその他の成分は、その機能を発揮し、かつ本発明の効果を損なわない範囲で、上記塗布液に含有されることができる。
ここで使用される溶媒としては、例えば水、有機溶媒(例えばアルコール等)などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。特に好ましくは水である。
このときの塗布後の乾燥温度は、150℃未満とすることが好ましく、30〜100℃程度の温度がより好ましい。乾燥時間としては、1〜60分が好ましく、より好ましくは5〜30分、さらに好ましくは5〜15分である。
熱分解とは、塗膜中の金属化合物を加熱してその分解を促進する反応のことである。ここでは、金属塩を加熱して、金属とガス状物質とに分解する反応のことをいう。例えば、金属塩が塩化物であれば、金属と、塩化水素および/または塩素ガスとに分解し、
金属塩が硝酸化合物であれば、金属と、NOxガスおよび/または窒素とに分解し、
金属塩が硫酸化合物であれば、金属と、SOxガスおよび/または硫黄とに分解する。上記分解によって生成した金属は、多くの場合、環境中の酸素と結び付いて酸化物を形成し易い傾向にある。
以下の実施例および比較例における各種測定は、それぞれ、以下の方法によって行った。
(酸化ルテニウムおよび酸化セリウムの結晶構造解析)
酸化ルテニウムおよび酸化セリウムの結晶構造解析は、X線回折装置(UltraX18、リガク社製)を用い、以下の条件によって行った。
X線源:CuKα線(λ=1.54184Å)
加速電圧:50kV
加速電流:200mA
走査軸:2θ/θ
ステップ間隔:0.02°
スキャンスピード:2.0°/min
測定範囲:2θ=20〜60°
上記の条件で得られたX線チャートにおいて、酸化ルテニウムに帰属される35.1°のピークと酸化セリウムに帰属される47.3°のピークとの強度を比較した。酸化ルテニウムの回折線位置はJCPDSカード番号431027を、酸化セリウムの回折線位置はJCPDSカード番号340394を、それぞれ参照して決定した。両者のピーク強度比は、以下の計算式によって算出した。
(計算式)
ピーク強度比=47.3°付近のピーク強度(count)/35.1°付近のピーク強度(count)
試験陰極に含まれるルテニウム元素の含有量は以下のように算出した。
塗布前後での陰極の重量増加を測定し、その重量増加の内訳が塗布液の組成と同一であると仮定し、さらに金属元素は酸化物を形成するとして算出した。だたし、有機物が含有される場合には、その有機物は焼成過程でCO2、H2Oなどに熱分解すると仮定し、陰極の重量増加に寄与しないものとした。
逆電流に対する耐性の評価は下記の手順で行った。
30mm×30mmに切り出した試験陰極を、電解セルにニッケル製のネジで固定した。対極には白金板を使用し、32wt%水酸化ナトリウム水溶液中、80℃において、電解電流密度1kA/m2で20分間、2kA/m2および3kA/m2で各3分間、ならびに4kA/m2で30分間、試験陰極が水素を発生させるよう順次に正電解を行った。その後、参照極にAg/AgClを用いて陰極電位を測定しながら、逆電流の電流密度0.05kA/m2で逆電解を行い、陰極電位がルテニウム溶解電位(−0.1V vs.Ag/AgCl)に到達するまでの時間を測定し、この値を逆電流耐久時間とした。
図1に試験陰極の逆電流印加試験中の電位上昇挙動を示した。図1の横軸は、比較例1の陰極がルテニウム溶解電位に到達するまでの時間を1.0とする相対値である。表1の逆電流耐久時間は、各試験陰極がルテニウム溶解電位に到達するまでの時間(相対値)である。
通電後の触媒層の断面観察を下記の手順で行った。
試験陰極を48mm×58mmのサイズに切り出し、小型電解セルにニッケルビスで固定するために2箇所の穴を開けた。これを、ニッケル製エキスパンド基材の上に固定した。陽極としては、チタン基材上に酸化ルテニウム、酸化イリジウムおよび酸化チタンが形成された、いわゆるDSAを用いた。EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製のゴムガスケットによってイオン交換膜をはさんで陽極セルと陰極セルとを隔てた状態で食塩電解を行った。イオン交換膜としては「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。陽極とイオン交換膜とは密着させ、陰極とイオン交換膜との間は2mmあけた。陽極室の塩化ナトリウム濃度205g/L、陰極室の水酸化ナトリウム濃度32wt%となるように、陽陰極タンク内の溶液濃度を調整した。また、電解セル内の温度が90℃になるように、陽陰極タンク内の温度を調節した。電解電流密度を4kA/m2の一定値として、1週間電解を行った。
導電性基材として、直径0.15mmのニッケル細線を40メッシュの目開きで編んだウーブンメッシュを用いた。これを、JIS R6001(1998)規格の320番のアルミナ粒子を用いてブラストし、次に6Nの塩酸にて室温で5分間酸処理した後、水洗し、乾燥した。
さらに、マッフル炉(KM−600、アドヴァンテック社製)を用いて大気中、300℃において10分間仮焼成をした後、500℃において10分間の加熱焼成を行って、該塗布膜を熱分解させた。このロール塗布、乾燥、および熱分解のサイクルを11回繰り返した後、最後に500℃において1時間焼成を行うことにより、試験陰極を得た。
さらに、比較例4については、上述の方法によって通電後の触媒層断面のSEM観察を行った。当該観察によって得られたSEM像を図2に示す。
これらの比較例における導電性基材としては、実施例1〜6および比較例2〜4におけるのと同じウーブンメッシュを、同じ方法で処理した後に用いた。
比較例1においては、特許文献国際公開第2003/078694号第13ページ、7行目以降に記載された実施例6の方法により、
比較例5においては、特許文献特開2006−299395号公報の段落0034以降に記載された実施例1の方法により、そして
比較例6においては、特許文献特開2009−215580号公報の段落0039以降に記載された実施例7の方法により、
それぞれ試験陰極を作製した。
実施例1〜6では、逆電解を行ったときに、陰極電位が触媒成分であるルテニウムの溶解電位である−0.1V vs.Ag/AgClに到達するまでの時間(逆電流耐久時間)が、比較例1に比較して3.1〜6.7倍大きかった。すなわち、逆電流発生中に陰極電位が上昇し難く、逆電流耐性が向上している。このことは、図1からも明らかである。
比較例5では、逆電流耐久時間が比較例1に対して0.8倍であり、逆電流耐性が不十分である。
Claims (16)
- 導電性基材と、該導電性基材上の触媒層と、からなる水素発生用陰極であって、
前記触媒層が、
ルテニウム元素と、
酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成するセリウム元素と、
ランタン、プラセオジム、ネオジム、およびサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属である3価を取りうる遷移金属の元素と、
アルミニウム元素と
を含有することを特徴とする、前記水素発生用陰極。 - 前記セリウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/20〜1/2モルであり、
前記3価を取りうる遷移金属元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルであり、そして
アルミニウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルである、請求項1に記載の水素発生用陰極。 - 前記ルテニウム元素が、酸化ルテニウムおよびルテニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、
前記3価を取りうる遷移金属の元素のうちの少なくとも一部が、遷移金属酸化物および遷移金属水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、そして
前記アルミニウム元素が、酸化アルミニウムおよびアルミニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素である、請求項1または2に記載の水素発生用陰極。 - 前記3価を取りうる遷移金属元素のうちの少なくとも一部が前記酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種にドープされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
- 前記3価を取りうる遷移金属元素のドープ量が、前記酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物に含まれるセリウム元素を基準として、1〜20モル%である、請求項4に記載の水素発生用陰極。
- 前記導電性基材がニッケルからなり、
前記触媒層における前記セリウム元素のうちの少なくとも一部は酸化セリウムを形成する元素であり、
前記ルテニウム元素のうちの少なくとも一部は酸化ルテニウムを形成する元素であり、そして
前記触媒層を前記導電性基材とともにX線回折したときの、酸化セリウムに帰属される2θ=47.3°のピーク強度が、酸化ルテニウムに帰属される2θ=35.1°のピーク強度に対して、1/40以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。 - 前記導電性基材がニッケル細線を編んだウーブンメッシュからなる、請求項6に記載の水素発生用陰極。
- 前記触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量が1〜20g/m2である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
- 請求項1に記載の水素発生用陰極の製造方法であって、
導電性基材上に、
ルテニウム化合物と、
セリウム化合物と、
ランタン化合物、プラセオジム化合物、ネオジム化合物、およびサマリウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である3価を取りうる遷移金属の化合物と、
アルミニウム化合物と
を含有する溶液を塗布した後に乾燥して塗膜を形成し、次いで前記塗膜中に含まれる前記化合物群を熱分解して触媒層を形成することを特徴とする、前記水素発生用陰極の製造方法。 - 前記溶液中、
前記セリウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するセリウム元素の割合として、1/20〜1/2モルであり、
前記3価を取りうる遷移金属化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対する遷移金属元素の割合として、1/100〜1/2モルであり、そして
前記アルミニウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するアルミニウム元素の割合として、1/100〜1/2モルである、請求項9に記載の水素発生用陰極の製造方法。 - 前記ルテニウム化合物が塩化物である、請求項9または10に記載の水素発生用陰極の製造方法。
- 前記3価を取りうる遷移金属化合物が塩化物である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
- 前記導電性基材がニッケル細線を編んだウーブンメッシュからなる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
- 前記導電性基材上に前記溶液を塗布した後の乾燥を150℃未満の温度で行い、
上記熱分解を350℃以上600℃以下の温度で行う、請求項9〜13のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。 - 上記熱分解の前に、150℃以上350℃未満の温度で1〜60分間の仮焼成を行う、請求項9〜14のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
- 前記触媒層を形成した後に、さらに、500℃以上650℃以下の温度で30分〜8時間の焼成を行う、請求項9〜15のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
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