JP6506983B2 - 水素発生用陰極およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水又はアルカリ金属化合物水溶液の電解に使用される水素発生用陰極に関するものであり、特にイオン交換膜法食塩電解に好適に使用される水素発生用陰極およびその製造方法に関する。
水素発生用陰極は、水又はアルカリ金属化合物(典型的にはアルカリ金属塩化物)の水溶液を電解して、水素、塩素、苛性ソーダなどを製造する用途に使用されている。電解工業において、エネルギー消費量の削減、具体的には電解電圧の低減が大きな課題である。近年、食塩水などのアルカリ金属塩化物水溶液の電解法としてはイオン交換膜法が主流であり、これまで様々な検討がなされてきた。実際に電解を行う場合、電解電圧は、理論的に求められる食塩の電気分解に必要な電圧に加え、陽極反応(塩素発生)の過電圧、陰極反応(水素発生)の過電圧、およびイオン交換膜の抵抗による電圧、アノードとカソードとの電極間距離による電圧がさらに必要である。これらの電圧のうち、電極反応による過電圧に注目すると、塩素発生用陽極としては所謂DSA(imensionally table node)と呼ばれる貴金属系の電極が開発され、塩素過電圧は50mV以下にまで大きく低減されている。
一方、水素発生を伴う陰極に関しても、近年、省エネルギーの観点から、水素過電圧が低く、耐久性のある陰極が求められている。かつては、水素発生用陰極としては、軟鋼、ステンレス、およびニッケルが使用されていた。そして、これら陰極の表面を活性化して水素過電圧を低減することが検討され、これまでに多くの特許出願がされている。水素発生用陰極の表面を活性化するための触媒としては、ニッケル、酸化ニッケル、ニッケルとスズとの合金、活性炭と酸化物との組合せ、酸化ルテニウム、白金などが挙げられる。これらの触媒を含有する触媒層は、合金めっき、分散・複合めっき、熱分解、もしくは溶射、またはこれらの組み合わせにより形成される。
特許文献1では、導電性基材上に、ランタン系金属化合物と白金族化合物とからなる触媒層を形成することにより、低い過電圧を有する陰極を形成している。特許文献2では、硝酸ルテニウムとランタンのカルボン酸塩とを導電性基材上に塗布し、大気中で焼成して触媒層を形成することにより、高電流密度での運転においても長期間安定な触媒層を得ている。
一方、電解槽停止時には逆電流が発生すること、およびこの逆電流により触媒層が酸化劣化することが知られている。逆電流による触媒層の劣化防止のためには、電解槽停止時に防食電流を流すなどの方法がとられている。
特許文献3では、酸化ルテニウムとニッケルと水素吸蔵能力をもつ希土類金属とからなる被覆を有する電極触媒層を形成する技術が提案されている。この技術では、触媒層に水素吸蔵合金を導入することにより、電解槽停止時に発生する逆電流による酸化を防ぐ工夫がなされている。
白金は水素過電圧が低く、電気化学的に安定な材料であり、逆電流に対しても比較的安定であるため、従来から触媒層に白金を担持してなる水素過電圧の低い陰極が提案されている。しかしながら、白金の価格は非常に高く、使用に伴う電極コストの上昇が大きな問題である。また、逆電流による劣化が少なからず起こってしまう。
以上のように、電力消費量を削減する目的で多くの取り組みがなされ、様々な水素発生用陰極が提案されている。しかし、水素過電圧が低く、かつ電解槽停止時の逆電流に対して十分な耐性を有する水素発生用陰極は未だ得られていない。
特開2000−239882号公報 特開2008−133532号公報 特開平11−140680号公報
本発明の課題は、水素過電圧が低く、かつ、電解槽停止時に発生する逆電流による触媒層の劣化が起こり難い陰極を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を進めた。その結果、ルテニウム化合物およびセリウム化合物の組み合わせに、さらに特定の金属化合物を共存させた触媒層を有する陰極により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 導電性基材と、該導電性基材上の触媒層と、からなる水素発生用陰極であって、
前記触媒層が、ルテニウム元素、セリウム元素、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)の元素、およびアルミニウム元素を含有することを特徴とする、前記水素発生用陰極。
(2) 前記3価を取りうる遷移金属が希土類金属である、(1)に記載の水素発生用陰極。
(3) 前記3価を取りうる遷移金属が、ランタン、プラセオジム、ネオジム、およびサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属である、(2)に記載の水素発生用陰極。
(4) 前記セリウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/20〜1/2モルであり、
前記3価を取りうる遷移金属元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルであり、そして
アルミニウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルである、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
(5) 前記ルテニウム元素が、酸化ルテニウムおよびルテニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、
前記セリウム元素が、酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、
前記3価を取りうる遷移金属の元素のうちの少なくとも一部が、遷移金属酸化物および遷移金属水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、そして
前記アルミニウム元素が、酸化アルミニウムおよびアルミニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
(6) 前記遷移金属元素のうちの少なくとも一部が前記酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種にドープされている、(5)に記載の水素発生用陰極。
(7) 前記導電性基材がニッケルからなり、
前記触媒層における前記セリウム元素のうちの少なくとも一部は酸化セリウムを形成する元素であり、
前記ルテニウム元素のうちの少なくとも一部は酸化ルテニウムを形成する元素であり、そして
前記触媒層を前記導電性基材とともにX線回折したときの、酸化セリウムに帰属される2θ=47.3°のピーク強度が、酸化ルテニウムに帰属される2θ=35.1°のピーク強度に対して、1/40以下である、(5)または(6)に記載の水素発生用陰極。
(8) 前記触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量が1〜20g/mである、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
(9) 導電性基材上に、
ルテニウム化合物、セリウム化合物、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)の化合物、およびアルミニウム化合物を含有する溶液を塗布した後に乾燥して塗膜を形成し、次いで前記塗膜中に含まれる前記化合物群を熱分解して触媒層を形成することを特徴とする、水素発生用陰極の製造方法。
(10) 前記3価を取りうる遷移金属化合物が希土類金属化合物である、(9)に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(11) 前記3価を取りうる遷移金属化合物が、ランタン化合物、プラセオジム化合物、ネオジム化合物、およびサマリウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である、(9)または(10)に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(12) 前記溶液中、
前記セリウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するセリウム元素の割合として、1/20〜1/2モルであり、
前記3価を取りうる遷移金属化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対する遷移金属元素の割合として、1/100〜1/2モルであり、そして
前記アルミニウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するアルミニウム元素の割合として、1/100〜1/2モルである、(9)〜(11)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(13) 前記ルテニウム化合物が塩化物である、(9)〜(12)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(14) 前記3価を取りうる遷移金属化合物が塩化物である、(9)〜(13)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(15) 前記導電性基材上に前記溶液を塗布した後の乾燥を150℃未満の温度で行い、
上記熱分解を350℃以上600℃以下の温度で行う、(9)〜(14)のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
(16) 上記熱分解の前に、150℃以上350℃未満の温度で1〜60分間の仮焼成を行う、(9)〜(15)のいずれか一項に記載の電解用陰極の製造方法。
本発明により、アルカリ金属化合物の水溶液の電気分解に使用できる水素発生用陰極であって、特にゼロギャップ電解槽に好適に使用でき、水素過電圧が低く、電解槽停止時に発生する逆電流に対する耐性が十分に高い水素発生用陰極が提供される。
実施例および比較例で得られた水素発生用陰極の逆電流印加試験における陰極電位上昇挙動を示すグラフである。 比較例4で得られた水素発生用陰極に7日間通電した後の断面SEM画像(拡大倍率:10,000倍)である。
本発明の水素発生用陰極は、導電性基材と、該導電性基材上の触媒層と、からなる。
<導電性基材>
本発明の水素発生用陰極における導電性基材としては、例えばニッケル、ニッケル合金、ステンレススチールなどを使用できる。しかし、ステンレススチールを高濃度のアルカリ水溶液中で用いた場合、鉄およびクロムが溶出すること、ならびにステンレススチールの電気伝導性がニッケルの1/10程度であることを考慮すると、導電性基材としてはニッケルが好ましい。
導電性基材の形状は特に限定されず、目的によって適切な形状を選択することができる。例えば、多孔板、エキスパンド形状、ニッケル線を編んで作製したいわゆるウーブンメッシュなどが好適に用いられる。導電性基材の形状については、電解槽における陽極と陰極との距離によって好適な仕様がある。陽極と陰極とが有限な距離を有する場合には、多孔板またはエキスパンド形状が用いられ、イオン交換膜と電極とが接するいわゆるゼロギャップ電解槽の場合には、細い線を編んだウーブンメッシュなどが用いられる。
本発明においては、導電性基材を酸化雰囲気中で焼鈍することによって加工時の残留応力を緩和することが好ましい。また、導電性基材の表面には、該表面に被覆される触媒層との密着性を向上させるために、スチールグリッド、アルミナ粉などを用いて凹凸を形成し、その後の酸処理によって表面積を増加させることが好ましい。
基材としては、ニッケルの細線を編んだウーブンメッシュが好ましい。ニッケル細線の線径としては、0.05〜0.3mmが好ましく、0.1〜0.2mmがより好ましい。また、メッシュ数としては、10〜60メッシュが好ましく、20〜50メッシュであることがより好ましく、さらに好ましくは25〜45メッシュである。
<触媒層>
本発明の水素発生用陰極における触媒層は、ルテニウム元素、セリウム元素、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)の元素、およびアルミニウム元素を含有する。
(ルテニウム元素)
上記触媒層に含有されるルテニウム元素は、水素発生電解における触媒として機能する成分である。このルテニウム元素は、酸化ルテニウム、ルテニウム水酸化物、および金属ルテニウムのうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、酸化ルテニウムおよびルテニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましく、酸化ルテニウムを形成する元素であることが特に好ましい。つまり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化ルテニウムを含有することが特に好ましい。
上記触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量は、多ければ多い方が低い過電圧を維持できる時間が長くなる傾向にあり、好ましい。しかしながら、ルテニウム元素は高価であるため、適正なコストメリットを得る観点から、その使用量を抑制する必要もある。これらのことに鑑み、触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量は、1〜20g/mであることが好ましく、5〜20g/mであることがより好ましく、さらに好ましくは5〜15g/mである。
(セリウム元素)
上記触媒層に含有されるセリウム元素は、酸化セリウム、セリウム水酸化物、および金属セリウムのうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましく、酸化セリウムを形成する元素であることが特に好ましい。つまり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化セリウムを含有することが特に好ましい。
酸化セリウムは、陰極電解液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)中で水素発生電解を実施すると、3価の水酸化セリウムへ還元されるとともに、針状結晶へと形態が変化する。そしてこのことにより、触媒として機能するルテニウム化合物が基材から脱落することを抑制するとともに、触媒層がより空隙の多い構造へと変化して表面積を増加させる効果がある。
セリウム元素の量が、ルテニウム元素1モルに対して1/20モル以上だと、触媒層中にルテニウム化合物を保持することが容易であり、物理的脱落が生じ難い。一方、この値が1/2モル以下だと、後述するとおり塗布液の熱分解によって形成される触媒層において、触媒活性を持たないセリウム化合物が触媒活性を有するルテニウム化合物の表面を完全に覆わないため、低過電圧の陰極が得られる。
触媒層におけるセリウム元素の含有量は、より好ましくは、ルテニウム元素1モルに対して1/8〜1/4の範囲である。
上述したとおり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化ルテニウムおよび酸化セリウムの双方を含有することが好ましい。この場合、該触媒層を前記導電性基材とともにX線回折したときの、酸化セリウムに帰属される2θ=47.3°のピーク強度が、酸化ルテニウムに帰属される2θ=35.1°のピーク強度に対して、1/40以下であることが好ましい。酸化セリウムおよび酸化ルテニウムの強度比が1/40より大きいと、非晶質の酸化セリウムが少なく、酸化セリウムが還元され難いため、本発明の効果が充分得られない場合がある。上記の強度比は、1/50以下であることがより好ましく、1/60以下であることがさらに好ましく、1/65以下であることが特に好ましい。この強度比は、小さければ小さいほど、非晶質のセリウムが多く存在することに帰する点で、好ましい。
(遷移金属元素)
本発明の水素発生用陰極における触媒層は、さらに、3価を取りうる遷移金属元素を含有する。この遷移金属元素からは、ルテニウム元素およびセリウム元素は除かれる。この、3価を取りうる遷移金属(ただし、ルテニウムおよびセリウムを除く)を、本明細書において、以下、単に「遷移金属」と呼ぶことがある。
上記遷移金属元素は、セリウムを除く希土類金属の元素から選択されることが好ましく、
ランタン、プラセオジム、ネオジム、およびサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属の元素であることがより好ましい。
上記遷移金属の元素は、そのうちの少なくとも一部が、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、および金属状の遷移金属のうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、遷移金属酸化物および遷移金属水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましい。
セリウム化合物(好ましくは酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種、特に好ましくは酸化セリウム)を含有する触媒層中に、遷移金属元素を添加すると、セリウム化合物中に3価の遷移金属元素がドープされる。セリウム化合物が例えば酸化セリウムである場合、この遷移金属元素のドープによって、該酸化セリウムの導電性が向上してより還元され易くなるとともに、針状結晶化が促進される。この結果、触媒層の空隙形成が促進され、表面積が大きくなる。従って、遷移金属元素のうちの少なくとも一部は、上記セリウム化合物にドープされていることが好ましい。ドープ量は、セリウム化合物に含まれるセリウム原子を基準として、好ましくは1〜20モル%であり、より好ましくは3〜15モル%である。
触媒層中の遷移金属元素の含有量が、ルテニウム1モルに対して、1/100以上だと、電解による酸化セリウムの還元速度が大きくなり、1/2モル以下だと、後述するとおり塗布液の熱分解によって形成される触媒層において、遷移金属化合物がルテニウム化合物の表面を完全に覆うことがなく、低い過電圧の陰極が得られる。触媒層中の遷移金属元素の含有量は、ルテニウム元素1モルに対して、1/50〜1/5であることがより好ましい。
(アルミニウム元素)
本発明の水素発生用陰極における触媒層は、さらに、アルミニウム元素を含有する。
触媒層にアルミニウム元素を添加すると、陰極電解液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)によってアルミニウム化合物が溶出し、触媒層の表面積が増加する。
このアルミニウム元素は、酸化アルミニウム、アルミニウム水酸化物、および金属アルミニウムのうちの少なくとも1種の化合物または金属を形成する元素であることが好ましく、酸化アルミニウムおよびアルミニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であることがより好ましく、酸化アルミニウムを形成する元素であることが特に好ましい。つまり、本発明の水素発生用陰極における触媒層は、酸化アルミニウムを含有することが特に好ましい。
触媒層中のアルミニウム元素の含有量が、ルテニウム元素1モルに対して、1/100以上だと、表面積増加の効果が得られ、1/2モル以下だと、アルミニウム化合物が溶出した後の触媒層の物理強度が保たれるため、触媒成分が脱落し難い。より好ましいアルミニウム元素の含有量は、ルテニウム元素1モルに対して、1/20〜1/2の範囲であり、さらに好ましくは、1/15〜1/4の範囲である。
(触媒層の厚さなど)
触媒層の厚さは、厚ければ厚いほど、低い過電圧を維持できる期間が長くなる。しかしながら、触媒層が過度に厚いと、陰極の物理強度が低下する場合がある。これらの双方を考慮すると、触媒層の厚さとしては、1〜10μmであることが好ましく、2〜5μmであることがより好ましい。
触媒層の単位面積当たりの重さも、重いほど、低い過電圧を維持できる期間が長くなるが、経済性の観点も考慮すると、1〜20g/mであることが好ましく、3〜15g/mであることがより好ましい。
(陰極劣化抑制のメカニズム)
本発明の水素発生用陰極は、その触媒層の表面積を大きくすることによって、陰極の劣化が抑制されている。この効果が発現するメカニズムについて、次に説明する。
電解槽停止後、逆電流が流れると、陰極上で酸化反応が進行しながら電位が上昇する。陰極上では、種々の物質の様々な酸化反応が、酸化還元電位が卑である順に進行する。具体的には、先ず−1.0V(vs.Ag|AgCl)付近で、陰極に吸着している水素の酸化反応(1)が進行する。次に、−0.9V(vs.Ag|AgCl)付近で、Ni金属(Ni基材表面)の酸化反応(2)が進行する。次に、−0.1V(vs.Ag|AgCl)付近で、触媒層における触媒活性成分であるRuの酸化溶出反応(3)が進行し、Ru触媒層の劣化が起こる。
このように、触媒層における触媒活性成分であるRuの酸化溶出反応(3)は、逆電流が流れたとき直ちに始まるのではなく、酸化還元電位がより卑な物質の酸化反応が終了した後に始まる。すなわち、触媒層のRuよりも卑な酸化還元電位を持つ水素、ニッケルなどのその他の酸化反応で消費される電気量を大きくすることにより、触媒層のRuの酸化溶出反応(3)を抑制することができる。
ここで、触媒層の表面積を大きくすることにより、これらその他の酸化反応に使用される逆電流電気量も大きくなるから、Ruの酸化溶出(3)を抑制することができるものと推察される。
触媒層の比表面積は、電気二重層容量の測定結果から推定することができる。
電気二重層容量が0.01C/V・cmであれば、該触媒層は十分な比表面積を有していると考えることができる。触媒層の電気二重層容量は、0.05C/V・cm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.08C/V・cm以上である。上限としては、現実的な値として、0.35C/V・cm以下が好ましい。
上記電気二重層容量は、以下のようにして測定することができる。
触媒層を有する陰極を、90℃の32wt%NaOH水溶液中に浸漬し、−0.75〜−0.55V(vs.Ag|AgCl)の間を、掃引速度を10、30、50、80、100、および150mV/sと変量して掃引し、−0.65V(vs.Ag|AgCl)における電流値を読み取る。そして、横軸に掃引速度、縦軸に−0.65V(vs.Ag|AgCl)の電流値をプロットして得られた直線の傾きを、電気二重層容量として評価する。
本発明においては、ルテニウム元素およびセリウム元素に加えて遷移金属元素およびアルミニウム元素を触媒層に添加することにより、該触媒層の表面積が増加する。そのため、逆電流が流れた時に陰極電位の上昇を抑制することが可能になったのである。
遷移金属元素およびアルミニウム元素のうちのどちらか一方のみを大量に添加することによっても、触媒層の表面積の増加を図ることができる。しかし、この場合には、触媒層中に層状の剥離が発生し、通常使用時の耐久性に問題が出る。
本発明所定の組み合わせの元素を、好ましくは上記に記載の含有量の範囲で添加することにより、水素過電圧が低く、逆電流耐性が高く、そして通常使用時の耐久性が高い陰極とすることができるのである。
<水素発生用陰極の製造方法>
本発明の水素発生用陰極は、例えば、
導電性基材上に、
ルテニウム化合物、セリウム化合物、遷移金属化合物、およびアルミニウム化合物を含有する溶液(塗布液)を塗布した後に乾燥して塗膜を形成し、次いで前記塗膜中に含まれる前記化合物群を熱分解して触媒層を形成することによって、製造することができる。上記遷移金属化合物は、3価を取りうる遷移金属化合物から選択され、ただし、ルテニウムおよびセリウムは除かれる。
(塗布液)
上記塗布液は、ルテニウム化合物、セリウム化合物、遷移金属化合物、およびアルミニウム化合物を含有する液体状の組成物である。
塗布液の成分として用いるルテニウム化合物は、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、およびカルボン酸塩のうちのいずれの形態でも構わない。しかし、熱分解のし易さ、原料塩の入手のし易さなどから、塩化物が好適に用いられる。
塗布液中のルテニウム化合物の濃度は、特に限定されないが、触媒層を形成するときの1回当たりの塗布厚みとの兼ね合いで、ルテニウム元素換算の濃度として、10〜200g/Lの範囲が好ましく、50〜120g/Lの範囲がより好ましい。
セリウム化合物、遷移金属化合物、およびアルミニウム化合物は、それぞれ、いずれの形態でも構わないが、硝酸塩、硫酸塩、塩化物などの金属塩が好ましく、さらに熱分解のし易さ、原料塩の入手のし易さなどから、塩化物が好適に用いられる。
本発明の水素発生用陰極における触媒層中の金属元素の割合は、好ましくは、使用した塗布液中の金属元素の割合を反映したものとなる。従って、該塗布液に含有される各金属化合物の含有量は、形成される触媒層が効果を十分に発現することを可能にするとの観点から、それぞれ、以下のとおりである。
セリウム化合物:ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するセリウム元素の割合として、好ましくは1/20〜1/2モル、より好ましくは1/8〜1/4モル
遷移金属化合物:ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対する遷移金属元素の割合として、好ましくは1/100〜1/2モル、より好ましくは1/50〜1/10モル
アルミニウム化合物:ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するアルミニウム元素の割合として、好ましくは1/100〜1/2モル、より好ましくは1/15〜1/4モル
上記の塗布液は、上記のような各金属化合物および後述の溶媒を必須の成分として含有するが、これら以外に、任意的にその他の成分を含有していてもよい。
ここで使用されるその他の成分としては、例えばpH調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、キレート剤などを挙げることができる。
これらその他の成分は、その機能を発揮し、かつ本発明の効果を損なわない範囲で、上記塗布液に含有されることができる。
上記の塗布液は、上記のような各金属化合物、および必要に応じて任意的に使用されるその他の成分が、適当な溶媒中に溶解された溶液として調製されることが好ましい。
ここで使用される溶媒としては、例えば水、有機溶媒(例えばアルコール等)などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。特に好ましくは水である。
上記の塗布液を導電性基材上に塗布する方法としては、基材を塗布液に浸漬するディップ法、塗布液を刷毛で塗る方法、スポンジ状のロールに塗布液を含浸させて塗布するロール法、塗布液と基材とを反対荷電に帯電させてスプレーなどを用いて噴霧を行う静電塗布法などが好適に用いられる。その中でも、生産性、および電極表面へ塗布液が均一に塗布できるとの観点から、ロール法または静電塗布法が好適に用いられる。
基材に塗布液を塗布した後、適当な温度で乾燥して塗膜を形成する。
このときの塗布後の乾燥温度は、150℃未満とすることが好ましく、30〜100℃程度の温度がより好ましい。乾燥時間としては、1〜60分が好ましく、より好ましくは5〜30分、さらに好ましくは5〜15分である。
次いで、上記のようにして形成された塗膜を加熱して、熱分解を行う。
熱分解とは、塗膜中の金属化合物を加熱してその分解を促進する反応のことである。ここでは、金属塩を加熱して、金属とガス状物質とに分解する反応のことをいう。例えば、金属塩が塩化物であれば、金属と、塩化水素および/または塩素ガスとに分解し、
金属塩が硝酸化合物であれば、金属と、NOxガスおよび/または窒素とに分解し、
金属塩が硫酸化合物であれば、金属と、SOxガスおよび/または硫黄とに分解する。上記分解によって生成した金属は、多くの場合、環境中の酸素と結び付いて酸化物を形成し易い傾向にある。
金属化合物の混合物を含む塗膜の熱分解を促進するためには、熱分解温度として、350℃以上600℃以下の温度範囲を採用することが好ましく、450〜550℃の温度範囲がより好ましい。350℃より低い温度では、金属化合物の熱分解の速度が遅く、一方で600℃を超えるとニッケル基材の軟化が急速に進む。金属化合物の熱分解促進とニッケル基材の強度保持とを両立させる観点から、500〜550℃の温度範囲が最も好ましい。熱分解の時間としては、熱分解を充分行うためには長い方が好ましい。しかしながら、電極の生産性の点も考慮して、熱分解時間は、好ましくは5〜60分、さらに好ましくは10〜30分の範囲である。
乾燥して塗膜を形成した後、熱分解の前に、各金属化合物の結晶水がなくなる温度である150℃以上350℃未満の温度範囲において、仮焼成を実施してもよい。仮焼成を実施することにより、熱分解工程において、水分および結晶水の急激な蒸発が抑制されるから、触媒層が緻密な構造を取り易くなる。また、この仮焼成により、熱分解工程における酸化ルテニウムの結晶核形成および結晶成長が進み易くなるから、緻密な触媒層を形成させることができる。仮焼成の温度範囲は、好ましくは200℃以上350℃未満、より好ましくは250℃以上320℃以下である。仮焼成の時間としては、1〜60分が好ましく、より好ましくは1〜30分、さらに好ましくは1〜15分である。
上記の塗布、乾燥、および熱分解を含む触媒層形成のサイクルは、1回のみ行ってもよいし、これを複数回繰り返して行ってもよい。塗布・乾燥・熱分解のサイクルを必要に応じて繰り返すことにより、厚膜の触媒層が得られる。
厚膜の触媒層を形成させるためには、1回当たりの塗布量を増やすか、あるいは塗布液中のルテニウム化合物濃度を高くすればよい。しかしながら、1回当たりの塗布量が多いと塗布時にムラが生じるおそれがあり、被覆層が均一に形成され難い。そのため、塗布・乾燥・熱分解のサイクルを複数回行うことが好ましい。仮焼成を含む場合には、塗布・乾燥・仮焼成・熱分解のサイクルを複数回行うことが好ましい。好ましくは、形成される触媒層中のルテニウム元素の含有量を、1サイクル当たり0.1〜2g/mにして、上記サイクルを繰り返すことである。1サイクル当たりで形成される触媒層中のルテニウム元素含有量は、より好ましくは0.3〜1.8g/m、さらに好ましくは、0.5〜1.5g/mにする。
所定の厚みの触媒層を形成した後に、該触媒層の熱分解を完全に行って触媒層の安定化を図るために、さらに長時間焼成を行うことが望ましい。この場合の焼成条件としては、温度範囲が、好ましくは500〜650℃、より好ましくは500〜550℃である。触媒層の熱分解を行う時間が短いと、該触媒層の熱分解が充分に進まず、長すぎると該触媒層のセリウムの酸化が過度に進んで遷移金属を添加することの効果が発現され難いため、いずれも好ましくない。従ってこの焼成の時間としては、30分〜8時間程度が好ましく、より好ましくは1時間〜3時間の範囲である。
本実施形態を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例における各種測定は、それぞれ、以下の方法によって行った。
(酸化ルテニウムおよび酸化セリウムの結晶構造解析)
酸化ルテニウムおよび酸化セリウムの結晶構造解析は、X線回折装置(UltraX18、リガク社製)を用い、以下の条件によって行った。
X線源:CuKα線(λ=1.54184Å)
加速電圧:50kV
加速電流:200mA
走査軸:2θ/θ
ステップ間隔:0.02°
スキャンスピード:2.0°/min
測定範囲:2θ=20〜60°
(酸化ルテニウムおよび酸化セリウムのピーク強度比測定)
上記の条件で得られたX線チャートにおいて、酸化ルテニウムに帰属される35.1°のピークと酸化セリウムに帰属される47.3°のピークとの強度を比較した。酸化ルテニウムの回折線位置はJCPDSカード番号431027を、酸化セリウムの回折線位置はJCPDSカード番号340394を、それぞれ参照して決定した。両者のピーク強度比は、以下の計算式によって算出した。
(計算式)
ピーク強度比=47.3°付近のピーク強度(count)/35.1°付近のピーク強度(count)
(ルテニウム元素の含有量)
試験陰極に含まれるルテニウム元素の含有量は以下のように算出した。
塗布前後での陰極の重量増加を測定し、その重量増加の内訳が塗布液の組成と同一であると仮定し、さらに金属元素は酸化物を形成するとして算出した。だたし、有機物が含有される場合には、その有機物は焼成過程でCO、HOなどに熱分解すると仮定し、陰極の重量増加に寄与しないものとした。
(逆電流印加試験)
逆電流に対する耐性の評価は下記の手順で行った。
30mm×30mmに切り出した試験陰極を、電解セルにニッケル製のネジで固定した。対極には白金板を使用し、32wt%水酸化ナトリウム水溶液中、80℃において、電解電流密度1kA/mで20分間、2kA/mおよび3kA/mで各3分間、ならびに4kA/mで30分間、試験陰極が水素を発生させるよう順次に正電解を行った。その後、参照極にAg/AgClを用いて陰極電位を測定しながら、逆電流の電流密度0.05kA/mで逆電解を行い、陰極電位がルテニウム溶解電位(−0.1V vs.Ag/AgCl)に到達するまでの時間を測定し、この値を逆電流耐久時間とした。
図1に試験陰極の逆電流印加試験中の電位上昇挙動を示した。図1の横軸は、比較例1の陰極がルテニウム溶解電位に到達するまでの時間を1.0とする相対値である。表1の逆電流耐久時間は、各試験陰極がルテニウム溶解電位に到達するまでの時間(相対値)である。
(断面SEM観察)
通電後の触媒層の断面観察を下記の手順で行った。
試験陰極を48mm×58mmのサイズに切り出し、小型電解セルにニッケルビスで固定するために2箇所の穴を開けた。これを、ニッケル製エキスパンド基材の上に固定した。陽極としては、チタン基材上に酸化ルテニウム、酸化イリジウムおよび酸化チタンが形成された、いわゆるDSAを用いた。EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製のゴムガスケットによってイオン交換膜をはさんで陽極セルと陰極セルとを隔てた状態で食塩電解を行った。イオン交換膜としては「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。陽極とイオン交換膜とは密着させ、陰極とイオン交換膜との間は2mmあけた。陽極室の塩化ナトリウム濃度205g/L、陰極室の水酸化ナトリウム濃度32wt%となるように、陽陰極タンク内の溶液濃度を調整した。また、電解セル内の温度が90℃になるように、陽陰極タンク内の温度を調節した。電解電流密度を4kA/mの一定値として、1週間電解を行った。
上記のように通電した後の試験陰極の一部を切り出し、エポキシ樹脂に包埋した後、クロスセクションポリッシャ(日立社製)を用い、6kVにて加速したArイオンビームによる断面加工処理を行うことにより、触媒層断面の観察用試料を作製した。これをSEM試料台へマウントした後、FE−SEM「S−4700」(日立社製)を用いて、加速電圧5kVで反射電子像の観察を実施した。
[実施例1〜6および比較例2〜4]
導電性基材として、直径0.15mmのニッケル細線を40メッシュの目開きで編んだウーブンメッシュを用いた。これを、JIS R6001(1998)規格の320番のアルミナ粒子を用いてブラストし、次に6Nの塩酸にて室温で5分間酸処理した後、水洗し、乾燥した。
次に、塩化ルテニウム水溶液(田中貴金属製、ルテニウム元素濃度100g/L)に対して、各金属元素の含有量が表1に記載の組成になるように、希土類塩化物およびアルミニウム化合物(塩化アルミニウム)を加え、塗布液を調製した。
上記塗布液をバットに入れ、その上部に、EPDM製の塗布ロールを塗布液と常に接するように設置して、該塗布ロールに該塗布液を浸み込ませた。その上部に、該塗布ロールと常に接するようにEPDM製のロールを設置し、さらに、上側のEPDM製塗布ロールの上に、PVC製ロールを設置した。上記の導電性基材を、上記上側のEPDM製塗布ロールとPVC製ロールとの間に通過させて、基材上に塗布液を塗布した(ロール法)。必要に応じて、塗布液が乾燥する前に手早く、塗布後の導電性基材を2つのEPDM製スポンジロールの間に通過させて、該導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。その後、50℃において10分間乾燥させて塗布膜を形成した。
さらに、マッフル炉(KM−600、アドヴァンテック社製)を用いて大気中、300℃において10分間仮焼成をした後、500℃において10分間の加熱焼成を行って、該塗布膜を熱分解させた。このロール塗布、乾燥、および熱分解のサイクルを11回繰り返した後、最後に500℃において1時間焼成を行うことにより、試験陰極を得た。
上記の試験陰極について、上述の方法により、X線回折および逆電流耐久時間の測定を実施した。実施例1〜6の結果を表1に、比較例2〜4の結果を表2に、それぞれ示す。また、逆電流印加試験中の陰極の電位挙動を図1に示す。
さらに、比較例4については、上述の方法によって通電後の触媒層断面のSEM観察を行った。当該観察によって得られたSEM像を図2に示す。
[比較例1、5、および6]
これらの比較例における導電性基材としては、実施例1〜6および比較例2〜4におけるのと同じウーブンメッシュを、同じ方法で処理した後に用いた。
上記の導電性基材を用いて、
比較例1においては、特許文献国際公開第2003/078694号第13ページ、7行目以降に記載された実施例6の方法により、
比較例5においては、特許文献特開2006−299395号公報の段落0034以降に記載された実施例1の方法により、そして
比較例6においては、特許文献特開2009−215580号公報の段落0039以降に記載された実施例7の方法により、
それぞれ試験陰極を作製した。
上記の各試験陰極について、上述の方法により、X線回折および逆電流耐久時間の測定を実施した。表2にX線回折および逆電流耐久時間の結果を示す。また、図1に逆電流印加試験中の陰極の電位挙動を示す。
上記の表1および表2、ならびに図1および2から、以下のことが理解される。
実施例1〜6では、逆電解を行ったときに、陰極電位が触媒成分であるルテニウムの溶解電位である−0.1V vs.Ag/AgClに到達するまでの時間(逆電流耐久時間)が、比較例1に比較して3.1〜6.7倍大きかった。すなわち、逆電流発生中に陰極電位が上昇し難く、逆電流耐性が向上している。このことは、図1からも明らかである。
比較例2、3および6では、逆電流耐久時間が比較例1に対してそれぞれ2.3〜2.8倍大きい。しかしながら、これらの値はいずれも実施例1〜6より小さい値である。このことから、実施例と同量のルテニウム元素を含有していたとしても、本発明所定の構成を有さない触媒層では、十分な効果が得られないことが理解される。
比較例4では、逆電流耐久時間が比較例1に対して5.7倍となり、ランタンの大量添加によって大きな逆電流耐性が得られることが示された。しかし、この比較例4の陰極は、図2に示すように被覆層内における層状の剥離の発生が見られる。すなわち、比較例4の陰極は、被覆強度が低く、電解中に触媒層の脱落が進行するため、実用に供しうるものではない。
比較例5では、逆電流耐久時間が比較例1に対して0.8倍であり、逆電流耐性が不十分である。

Claims (16)

  1. 導電性基材と、該導電性基材上の触媒層と、からなる水素発生用陰極であって、
    前記触媒層が、
    ルテニウム元素と、
    酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成するセリウム元素と、
    ランタン、プラセオジム、ネオジム、およびサマリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属である3価を取りうる遷移金属の元素と、
    アルミニウム元素と
    を含有することを特徴とする、前記水素発生用陰極。
  2. 前記セリウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/20〜1/2モルであり、
    前記3価を取りうる遷移金属元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルであり、そして
    アルミニウム元素の含有量が、前記ルテニウム元素1モルに対して1/100〜1/2モルである、請求項1に記載の水素発生用陰極。
  3. 前記ルテニウム元素が、酸化ルテニウムおよびルテニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、
    前記3価を取りうる遷移金属の元素のうちの少なくとも一部が、遷移金属酸化物および遷移金属水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素であり、そして
    前記アルミニウム元素が、酸化アルミニウムおよびアルミニウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物を形成する元素である、請求項1または2に記載の水素発生用陰極。
  4. 前記3価を取りうる遷移金属元素のうちの少なくとも一部が前記酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種にドープされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
  5. 前記3価を取りうる遷移金属元素のドープ量が、前記酸化セリウムおよびセリウム水酸化物のうちの少なくとも1種の化合物に含まれるセリウム元素を基準として、1〜20モル%である、請求項4に記載の水素発生用陰極。
  6. 前記導電性基材がニッケルからなり、
    前記触媒層における前記セリウム元素のうちの少なくとも一部は酸化セリウムを形成する元素であり、
    前記ルテニウム元素のうちの少なくとも一部は酸化ルテニウムを形成する元素であり、そして
    前記触媒層を前記導電性基材とともにX線回折したときの、酸化セリウムに帰属される2θ=47.3°のピーク強度が、酸化ルテニウムに帰属される2θ=35.1°のピーク強度に対して、1/40以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
  7. 前記導電性基材がニッケル細線を編んだウーブンメッシュからなる、請求項6に記載の水素発生用陰極。
  8. 前記触媒層に含まれるルテニウム元素の含有量が1〜20g/mである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
  9. 請求項1に記載の水素発生用陰極の製造方法であって、
    導電性基材上に、
    ルテニウム化合物と、
    セリウム化合物と、
    ランタン化合物、プラセオジム化合物、ネオジム化合物、およびサマリウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である3価を取りうる遷移金属の化合物と、
    アルミニウム化合物と
    を含有する溶液を塗布した後に乾燥して塗膜を形成し、次いで前記塗膜中に含まれる前記化合物群を熱分解して触媒層を形成することを特徴とする、前記水素発生用陰極の製造方法。
  10. 前記溶液中、
    前記セリウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するセリウム元素の割合として、1/20〜1/2モルであり、
    前記3価を取りうる遷移金属化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対する遷移金属元素の割合として、1/100〜1/2モルであり、そして
    前記アルミニウム化合物の含有量が、前記ルテニウム化合物中のルテニウム元素1モルに対するアルミニウム元素の割合として、1/100〜1/2モルである、請求項9に記載の水素発生用陰極の製造方法。
  11. 前記ルテニウム化合物が塩化物である、請求項9または10に記載の水素発生用陰極の製造方法。
  12. 前記3価を取りうる遷移金属化合物が塩化物である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
  13. 前記導電性基材がニッケル細線を編んだウーブンメッシュからなる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
  14. 前記導電性基材上に前記溶液を塗布した後の乾燥を150℃未満の温度で行い、
    上記熱分解を350℃以上600℃以下の温度で行う、請求項9〜13のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
  15. 上記熱分解の前に、150℃以上350℃未満の温度で1〜60分間の仮焼成を行う、請求項9〜14のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
  16. 前記触媒層を形成した後に、さらに、500℃以上650℃以下の温度で30分〜8時間の焼成を行う、請求項9〜15のいずれか一項に記載の水素発生用陰極の製造方法。
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