以下、本発明による傾斜割出し装置の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、傾斜割出し装置1は、主としてフレーム10及びテーブル20で構成されている。また、その傾斜割出し装置1において、テーブル20は、フレーム10に支持された一対の回転軸30、31によって支持されている。
より詳しくは、フレーム10は、ベースとなる架台11であって平面視において矩形状を為す板状の架台11、及びその架台11の長手方向(平面視における長辺方向であって図1における左右方向)に互いに間隔を置いて(離間して)架台11上に立設された一対の支持台12、13とで構成されている。
また、そのフレーム10には、一対の支持台12、13のそれぞれにおいて、回転軸30、31が軸受40、41を介して回転可能に支持されている。すなわち、傾斜割出し装置1は、一対の回転軸30、31を備えており、各回転軸30、31が、フレーム10における一対の支持台12、13のそれぞれにおいて軸受40、41を介して回転可能に支持された構成となっている。なお、その一対の回転軸30、31は、その回転軸線が前記長手方向と平行に延在するような向きで、且つ、前記長手方向(前記回転軸線の方向)に見て両者の回転軸線が一致する位置に設けられている。また、各回転軸30、31は、その一端に円盤状の取付部30a、31aを有している。そして、両回転軸30、31は、その取付部30a、31aが互いに対向する向きで、且つ、その取付部30a、31aが支持台12、13から突出した状態で設けられている。
また、テーブル20は、ワークが載置される略矩形状の載置面を有する板状のベース部21と、そのベース部21を支持するための一対のアーム部22、22とで構成されている。但し、その一対のアーム部22、22は、ベース部21における載置面の長手方向に離間し、ベース部21の載置面に対し直交すると共に、前記長辺方向における両端部に連続するかたちでベース部21と一体的に形成されている。そして、テーブル20は、フレーム10における一対の支持台12、13間(回転軸30、31(取付部30a、31a)間)において前記長辺方向を前記長手方向に一致させるかたちで配置され、各アーム部22がそれと対向する回転軸30、31における取付部30a、31aに固定されることで、フレーム10(一対の支持台12、13)に対し回転軸30、31を介して支持された状態となっている。
このように、本発明が前提とする傾斜割出し装置1は、テーブル20がアーム部22を介してフレーム10に対し支持されるものであって、回転軸30、31の軸心に対しテーブル20の載置面が回転軸30、31の半径方向(アーム部22の延在方向)に偏心した構成となっており、所謂クレードル型式の傾斜割出し装置となっている。そして、前記のように各回転軸30、31がフレーム10に対し軸受40、41を介して回転可能に支持されていることから、テーブル20は、一対の回転軸30、31の回転軸線50を回転中心として回転(揺動)可能に支持された状態となっている。なお、この回転軸線50について、テーブル20は、この回転軸線50を中心として回転するものであるから、この回転軸線50は、テーブル20の回転軸線であるとも言える。
そして、傾斜割出し装置1は、前記のように設けられたテーブル20を揺動駆動するための駆動装置60を備えるものであるが、本実施例では、その駆動装置60は、フレーム10における一対の支持台12、13のうちの一方(図1における左側の支持台12)の側にのみ設けられているものとする。そこで、以下では、フレーム10における一対の支持台12、13のうちの駆動装置60が設けられる側の支持台を駆動側支持台12とし、その他方の側の支持台を従動側支持台13とする。また、本発明が前提とする傾斜割出し装置1は、前述のようなアンバランストルクを補償するためのトルク補償装置を有するものであるが、本実施例では、そのトルク補償装置は、従動側支持台13において設けられているものとする。
図2は、その駆動側支持台12の一例を示している。この図2に示すように、駆動側支持台12は、前記長手方向において駆動側支持台12を貫通する貫通孔を有している。そして、駆動側支持台12の側の回転軸30(以下、「一方の回転軸30」とも言う。)は、その取付部30aを除く部分が貫通孔に挿入された状態で、貫通孔内の略中央部において貫通孔に嵌挿されるかたちで設けられた軸受40によって支持されている。
その上で、駆動装置60は、本実施例では、一方の回転軸30を回転駆動するための駆動源としての駆動モータ(図示略)と、その駆動モータの出力軸の回転を一方の回転軸30に伝達する駆動伝達機構61とで構成されている。また、駆動伝達機構61は、一方の回転軸30に対し相対回転不能に取り付けられたウォームホイール61aと、そのウォームホイール61aに噛合するかたちで駆動側支持台12において回転可能に支持されると共に駆動モータに連結されたウォームスピンドル61bとで構成されている。
そして、傾斜割出し装置1は、その駆動装置60における駆動モータが予め設定された数値制御プログラムに従って駆動を制御されることにより、それに伴って回転軸30が回転駆動され、テーブル20が目標とする角度位置(傾斜位置)に割り出されるものとなっている。なお、本発明が前提とする傾斜割出し装置1において、駆動装置60は、前記のような駆動伝達機構61を含むものに限らず、ロータが回転軸に対し直接的に連結される直接駆動型の駆動モータ(所謂、DDモータ)であっても良い。
そして、傾斜割出し装置1は、前記のように割り出されたテーブル20の角度位置を保持するためのクランプ装置70を備えるものであり、本実施例では、そのクランプ装置70は、駆動側支持台12及び従動側支持台13の両方に内蔵されるかたちで設けられている。
また、本実施例では、そのクランプ装置70として、回転軸30、31に対し相対回転不能に取り付けられたクランプディスク71と、クランプディスク71と対向する位置に組み込まれた環状のクランプピストン72と、クランプディスク71を挟んでクランプピストン72と対向するように支持台12、13に取り付けられた環状のカバー部材73とで構成された所謂ディスク型式のクランプ装置が採用されている。なお、本実施例におけるクランプ装置70においては、クランプピストン72は、軸受40、41の位置を固定するための軸受スリーブ74と支持台12、13における貫通孔の内周面とで形成される環状の溝に嵌め込まれ、回転軸30、31の回転軸線50の方向にスライド可能に設けられている。
そして、そのクランプ装置70は、圧油等の作動流体の圧力によってクランプピストン72がクランプディスク71をカバー部材73に向けて押圧し、クランプピストン72とカバー部材73とでクランプディスク71を挟持(クランプ)することにより、回転軸30、31を回転不能な状態として、割り出された角度位置でテーブル20を保持するものである。但し、本発明が前提とする傾斜割出し装置1に備えられるクランプ装置70は、前記のようなディスク型式のクランプ装置に限らず、回転軸を囲繞するようにクランプスリーブが設けられた所謂スリーブ型式のクランプ装置であっても良い。
また、前記のように、本実施例の傾斜割出し装置1は、従動側支持台13において、テーブル20が前記傾斜位置に割り出された際に回転軸31に対して加わるアンバランストルクを補償するためのトルク補償装置を備えている。さらに、本実施例では、そのトルク補償装置として、作動流体(圧油、圧縮空気等)の圧力によってロッド81が進退駆動されると共に、ロッド81を介して付勢力を作用させるバランスシリンダ80が採用されているものとする。
そのバランスシリンダ80は、フレーム10における架台11上で回転軸31の軸線と平行な軸線周りに回動可能に支持されたシリンダ本体82と、シリンダ本体82の一端側から突出すると共にシリンダ本体82に対し進退可能に支持されたロッド81とで構成されている。なお、バランスシリンダ80は、シリンダ本体82が前記のように架台11に支持された状態において、ロッド81の軸線が回転軸31(テーブル20)の回転軸線50と直交する方向に延在するように設けられている。その上で、バランスシリンダ80は、ロッド81の先端において従動側支持台13の側の回転軸31(以下、「他方の回転軸31」と言う。)に対し連結されている。
但し、他方の回転軸31に対するロッド81の連結位置は、シリンダ本体82に対し前記作動流体が供給されることによってロッド81が進出駆動された際に他方の回転軸31に対し回転トルクが与えられるように、前記長手方向に見て回転軸31の回転軸線50から偏心した位置となっている。言い換えれば、トルク補償装置としてのバランスシリンダ80が連結される他方の回転軸31は、回転軸線50から偏心した位置にロッド81が連結可能な部分を有する偏心軸として構成されており、その偏心した部分(偏心部)が前記連結位置となっている。さらに、その前記連結位置は、バランスシリンダ80(ロッド81)が他方の回転軸31に対し与える回転トルクの方向が、傾斜割出し装置1においてテーブル20が前記傾斜状態とされたときに他方の回転軸31に対し作用するアンバランストルクの方向とは反対方向となるような位置とされている。
そして、傾斜割出し装置1においては、テーブル20上に載置されたワークの加工時において前記角度位置の割り出しのためにテーブル20が前記傾斜状態とされた際に、バランスシリンダ80におけるシリンダ本体82に対し作動流体が供給され、バランスシリンダ80がロッド81によって他方の回転軸31に対し回転トルクを作用させるものとなっており、それにより、前記のようなテーブル20の前記傾斜状態において他方の回転軸31に作用するアンバランストルクが補償されるものとなっている。
以上のような傾斜割出し装置1において、本発明は、一対の回転軸のうちの少なくとも一方の回転軸であってトルク補償装置が連結されるべく前記のように偏心軸として構成された回転軸が、一対の軸受によって支持されると共に、その回転軸に対し一対の軸受間においてトルク補償装置が連結されるものである。そして、本実施例では、前記のように、従動側支持台13において支持される他方の回転軸31が、そのトルク補償装置としてのバランスシリンダ80が連結される偏心軸となっている。以下では、その偏心軸として構成される他方の回転軸31(以下、「偏心軸35」と言う。)の構成、及び従動側支持台13の側におけるその偏心軸35の支持構成等について、図3に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、本実施例における従動側支持台13は、前記長手方向に互いに離間して架台11上に立設された2つの支持台部13a、13bにより構成されている。すなわち、従動側支持台13は、前記長手方向における中間の位置に、バランスシリンダ80を配置可能な空間部が形成された構成となっている。
また、偏心軸35は、一対の軸部材36、37と、両軸部材36、37を連結する連結軸38と、一対の軸部材36、37の一方に対し連結軸38を連結するための連結部材39とで構成されている。より詳しくは、以下の通りである。
まず、一対の軸部材36、37は、共に同じ構成であって、円筒状の軸部分36a、37aと、その軸部分36a、37aの一端において軸部分36a、37aに対しネジ部材(図示略)等で一体的に取り付けられた円盤状の円盤部36b、37bとで構成されている。また、連結部材39は、本実施例では円盤状の部材であり、一方の軸部材36における軸部分36aの他端(円盤部36bとは反対側の端部)に対し、その板厚方向を軸部材36の軸線方向(=前記の回転軸線50の方向)に一致させた状態で取り付け可能な構成となっている。その上で、連結部材39は、前記軸線方向に見てその中心を一方の軸部材36の軸心に一致させる配置で、一方の軸部材36に対し相対回転不能に取り付けられる。
そして、偏心軸35は、その連結部材39が取り付けられた一方の軸部材36と他方の軸部材37とを連結軸38により連結することで構成されている。具体的には、偏心軸35において、一方の軸部材36と他方の軸部材37とは、前記軸線方向に見て互いの軸心の位置を一致させると共に、前記軸線方向において離間するような位置関係とされる。但し、両軸部材36、37は、前記軸線方向において軸部分36a、37aに対する円盤部36b、37bの位置が同じとなるような向きとされる。従って、両軸部材36、37がそのような位置関係に置かれた状態では、一方の軸部材36に取り付けられた連結部材39と他方の軸部材37における円盤部37bとは、前記軸線方向において互いの中心を一致させて対向した状態となる。また、前記軸線方向における一方の軸部材36と他方の軸部材37との間隔は、その状態において、連結部材39と他方の軸部材37における円盤部37bとが前記軸線方向において離間した状態となるように設定されている。
その上で、偏心軸35は、一方の軸部材36側の連結部材39と他方の軸部材37における円盤部37bとが連結軸38により連結される構成となっている。なお、連結軸38は、その軸線が前記軸線方向と平行となる向きで、その一端が連結部材39に取り付けられると共に他端が他方の軸部材37における円盤部37bに取り付けられ、その両者間に架設されるかたちとなっている。従って、連結軸38は、前記軸線方向においては、両軸部材36、37における軸部分36a、37aの間に位置するものとなっている。また、その連結軸38の連結部材39及び他方の軸部材37に対する取り付け位置は、前記軸線方向に見て両軸部材36、37(軸部分36a、37a)の軸心から離間した(偏心した)位置となっている。
そして、そのように構成された偏心軸35は、その各軸部材36、37が従動側支持台13を構成する2つの支持台部13a、13bのそれぞれに支持されるかたちで従動側支持台13に対し支持されている。より詳しくは、偏心軸35は、一方の軸部材36が、2つの支持台部13a、13bのうちの一方であって前記長手方向における内側(駆動側支持台12の側)に位置する支持台部13aに対し、その軸部分36aにおいて支持されると共に、2つの支持台部13a、13bのうちの他方であって前記長手方向における外側(駆動側支持台12の側とは反対の側)に位置する支持台部13bに対し、その軸部分37aにおいて支持されるかたちで、従動側支持台13に対し支持されている。
なお、各軸部材36、37は、その軸部分36a、37aが支持台部13a、13b内において軸受41、41を介して支持されることにより、対応する支持台部13a、13bに対し回転可能に支持されている。従って、偏心軸35は、両軸部材36、37(軸部分36a、37a)の軸心を回転中心として、前記のように従動側支持台13に対し軸受41、41を介して回転可能に支持された状態となるものであり、両軸部材36、37(軸部分36a、37a)の軸線(軸心を通る直線)が偏心軸35の回転軸線50となる。
そして、本実施例においては、両軸部材36、37における軸部分36a、37aが、本発明の偏心軸における軸部に相当するものとなる。また、前記のように前記軸線方向においてその軸部分36a、37a(一対の軸部)の間に位置し、両軸部分36a、37aの軸心から偏心した位置に位置する連結軸38が、その偏心軸における偏心部に相当するものとなる。さらに、その偏心部としての連結軸38と一対の軸部である軸部分36a、37aとを連結する一方の軸部材36に取り付けられた連結部材39及び他方の軸部材37における円盤部37bが、その偏心軸における支持部に相当するものとなる。
また、偏心軸35は、そのように支持された状態において、一方の軸部材36における円盤部36bが一方の支持台部13aよりも前記内側に位置すると共に、一方の軸部材36に取り付けられた連結部材39が一方の支持台部13aよりも前記外側に位置し、また、他方の軸部材37における円盤部37bが他方の支持台部13bよりも前記内側に位置する状態となっている。すなわち、偏心軸35は、前記長手方向に関し、従動側支持台13を構成する2つの支持台部13a、13b間(前記空間部)に、支持部としての連結部材39及び他方の軸部材37における円盤部37bが位置する状態となっている。因みに、従動側支持台13の側においては、一方の軸部材36における円盤部36bに対しテーブル20のアーム部22が取り付けられてテーブル20が支持されるものであり、従って、その一方の軸部材36における円盤部36bが前記した取付部31aとして機能するものとなっている。
そして、偏心部としての連結軸38は、前記のように連結部材39と円盤部37bとの間に架設されるものであるから、前記のように回転軸線50に対しその軸心が偏心した位置において、前記長手方向に関し、連結部材39及び円盤部37bと同じく、従動側支持台13の前記空間部に位置している。このように、偏心軸35が従動側支持台13によって支持された状態では、支持部としての連結部材39及び円盤部37bと偏心部としての連結軸38とは、一対の軸部としての軸部分36a、37aにおける軸受41、41に支持される部分の間に位置するものとなっている。
そして、トルク補償装置としてのバランスシリンダ80は、前述のように偏心軸における偏心部に連結されるものであり、本実施例では、前記のように、その偏心部としての連結軸38が、前記長手方向に関し従動側支持台13における前記空間部に位置している。従って、本実施例では、バランスシリンダ80も、従動側支持台13における前記空間部に位置するように設けられている。すなわち、バランスシリンダ80は、前記空間部内に配置された状態で、そのシリンダ本体82においてフレーム10における架台11に対し前記のように回動可能に支持されると共に、そのロッド81の先端において偏心軸35における連結軸38に連結された状態となっている。なお、バランスシリンダ80におけるロッド81と連結軸38との連結は、本実施例では、次のような構成によって行われている。
先ず、本実施例では、連結軸38は、その一端側の端部が連結部材39に嵌挿されるかたちで連結部材39に対し取り付けられるものとなっており、その上で、連結軸38は、その嵌挿される部分(嵌挿部分)に隣接するかたちで形成されたフランジ部38aを有する構成となっている。そして、連結軸38は、そのフランジ部38aにおける前記嵌挿部分側の端面を連結部材39に当接させた状態で、フランジ部38aに挿通されたボルト等の複数のネジ部材(図示略)により、連結部材39に対し相対回転不能に取り付けられている。
また、バランスシリンダ80におけるロッド81の先端には、ロッドエンド85が取り付けられている。このロッドエンド85は、ロッド81の先端が嵌挿される円筒状の取付部分85aを有しており、その取付部分85aにロッド81の先端が嵌挿されるかたちで、ロッド81の先端に対し取り付けられている。また、そのロッドエンド85の取付部分85aには、ロッド81が嵌挿される部分よりも先端側において周壁を貫通する挿通孔が、取付部分85aの軸線と直交する方向に見て中心を一致させて対向する位置で2つ形成されている。その上で、ロッド81と連結軸38とは、ロッド81の先端に取り付けられたロッドエンド85の挿通孔に対し連結軸38が挿通されることで連結状態とされる。なお、ロッドエンド85と連結軸38との間には、すべり軸受として機能するブッシュ90が介装されている。従って、ロッドエンド85は、連結軸38に対し回転可能となっている。
さらに、前記長手方向において連結部材39と対向する他方の軸部材37における円盤部37bには、その連結部材39側の端面に対しリング状の位置決め部材95が、ボルト等の複数のネジ部材(図示略)によって取り付けられている。なお、その円盤部37bに対する位置決め部材95の取り付け位置は、円盤部37bの半径方向に関し、他方の軸部材37における軸部分37aの中心から位置決め部材95の中心までの距離が、連結部材39における中心から連結軸38が嵌挿される部分の中心までの距離と等しくなるような位置となっている。その上で、前記のように一端側の端部において連結部材39に取り付けられると共にロッドエンド85に挿通された状態の連結軸38は、その他端側の端部が位置決め部材95の孔に嵌挿されるかたちで、位置決め部材95を介して他方の軸部材37における円盤部37bに対し取り付けられている。
それにより、連結軸38が前記のように連結部材39と他方の軸部材37との間に架設された状態となる。また、その状態において、バランスシリンダ80のロッド81の先端に取り付けられたロッドエンド85は、連結軸38のフランジ部38aと位置決め部材95とで挟まれた状態となる。その結果として、ロッドエンド85は、連結軸38の軸線方向(前記長手方向)における位置が、連結軸38のフランジ部38aと位置決め部材95とで位置決めされた状態となっている。なお、図示の例では、その位置が調整できるように、連結軸38のフランジ部38aとロッドエンド85との間、及びロッドエンド85と位置決め部材95との間にスペーサ100が介装されている。そして、以上のような構成により、バランスシリンダ80におけるロッド81と偏心部としての連結軸38とが、ロッドエンド85を介して連結状態とされる。
以上のように、本実施例の傾斜割出し装置1においては、従動側支持台13側の回転軸31(偏心軸35)が軸線方向に離間して配置された一対の軸受41、41により支持される構成となっており、また、テーブル20が傾斜状態となったときにトルク補償装置としてのバランスシリンダ80による付勢力がその一対の軸受41、41間において偏心軸35に作用する構成となっている。そして、そのような構成によれば、バランスシリンダ80による付勢力が作用することに伴って偏心軸35が前述の押力を受けた状態となるが、その押力が一対の軸受41、41のそれぞれに対し分散して作用することとなる。従って、そのような構成の傾斜割出し装置によれば、従来の装置と比べ、軸受1つあたりに掛かる負荷が軽減されるため、軸受の偏摩耗や変形等の破損が抑制されると共に、軸受の破損に起因する傾斜割出し装置の割り出し精度の低下が防止される。
以上では、本発明による傾斜割出し装置の一実施形態(実施例)について説明したが、本発明は前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
(1)トルク補償装置が連結される回転軸としての偏心軸について、前記実施例では、その偏心軸35は、独立した一対の軸部材36、37が連結部材39及び連結軸38で連結されて構成されたものとなっている。しかし、本発明の偏心軸は、そのように構成されたものに限らず、例えば、図4、図5に示すような構成であっても良い。なお、図4、図5の構成については、詳しくは以下の通りである。但し、図4、図5に示す例においても、その偏心軸を支持する支持台(前記実施例:従動側支持台13)は、前記長手方向に互いに離間して架台上に立設された2つの支持台部(前記一方の支持台部13a、前記他方の支持台部13b)により構成されているものとする。また、図4、図5においては、前記実施例と共通の部分については同じ符号が付されており、以下では、その説明については省略する。
図4に示す例において、偏心軸110は、支持台部13a、13b間に架設されるかたちで設けられる単一の軸部材111と、その軸部材111に取り付けられると共にその取り付けられる部分から軸部材111の半径方向に延びる部分を有する連結部材112と、その連結部材112とトルク補償装置としてのバランスシリンダ80とを連結する連結軸113とで構成されている。
なお、その軸部材111は、前記実施例の軸部材36、37と同様に、その軸部分111aの一端側において軸部分111aに対しネジ部材(図示略)等で一体的に取り付けられた円盤部111bであって、前記取付部として機能する円盤部111bを有している。また、その軸部材111における軸部分111aは、前記長手方向に関し、支持台13の存在範囲に相当する長さ寸法を有するものとなっている。そして、軸部材111は、その軸部分111aにおける前記一端側の部分が前記一方の支持台部13aに挿通されると共に他端側の部分が前記他方の支持台部13bに挿通された状態で、各端部が対応する支持台部13a、13bに内蔵された軸受41、41に支持されるかたちで、支持台13に対し回転可能に支持されるものとなっている。また、軸部材111がそのように支持台13に対し支持された状態においては、円盤部111bは、前記一方の支持台部13aよりも前記内側に位置している。
また、連結部材112は、前記した軸部材111に取り付けられる部分である固定部112aであって軸部材111の軸部分111aを嵌装可能な貫通孔を有する固定部112aと、その固定部112aと一体的に形成された板状の連接部112bであって板厚方向を前記貫通孔の貫通方向に向けると共に固定部112aの外周面から前記貫通孔の半径方向に延びるように形成された連接部112bとで構成されている。なお、連接部112bは、固定部112aの外周に亘って存在する例えば円盤形状を為すものであっても良いが、図示の例では、固定部112aの外周の一部から前記半径方向に延びるものとなっている。また、その連接部112bには、固定部112aの外周から離間した位置において、板厚方向に貫通する貫通孔が形成されている。
そして、その連結部材112は、固定部112aにおける貫通孔に軸部材111が挿通されるかたちで軸部材111に対し組み付けられると共に、ネジ部材等の固定手段によって軸部材111に対し相対回転不能に取り付けられている。但し、軸部材111の軸線方向におけるその取り付け位置は、軸部材111が前記のように支持台部13a、13b間に架設された状態において、連結部材112が2つの支持台部13a、13bの間に位置するような位置となっている。すなわち、連結部材112は、軸受41、41によって支持される軸部材111の両端部(前記一端部及び前記他端部)の間で軸部材111に対し取り付けられている。
また、その連結部材112における連接部112bには、その連接部112bに形成された貫通孔に嵌挿されるかたちで連結軸113が取り付けられている。なお、連結軸113は、その中間部分にフランジ部113aを有しており、そのフランジ部113aよりも一端側の部分が前記貫通孔に嵌挿されると共に、フランジ部113aの端面を連接部112bに当接された状態で、連接部112b(連結部材112)に対し取り付けられている。
その上で、そのような軸部材111、連結部材112及び連結軸113で構成された偏心軸110には、その偏心軸110が軸部材111において支持台13(2つの支持台部13a、13b)に支持された状態で、前記実施例と同様に設けられたバランスシリンダ80が、バランスシリンダ80のロッド81と連結軸113とをロッド81の先端に取り付けられたロッドエンド120を介して連結するかたちで連結される。なお、そのロッドエンド120は、前記実施例と同様の構成のものであり、連結軸113におけるフランジ部113aよりも他端側の部分がロッドエンド120に形成された挿通孔に挿通されるかたちで連結軸113に対し連結される。
従って、そのような構成の偏心軸110においては、軸部材111における前記両端部(軸受41、41を介して支持台部13a、13bに支持される部分)が本発明の偏心軸における一対の軸部に相当し、連結軸113が偏心部に相当する。また、軸部材111における軸部分111aの前記両端部を除く部分と連結部材112とが支持部に相当する。このように、本発明による偏心軸における支持部は、前記実施例のように円盤状に形成されるものに限らず、軸部から前記半径方向に延びる部分を有するものであれば良い。
また、図5に示す例においては、偏心軸130は、クランク軸の形態を為す構成となっており、単一の軸部材131に一対の軸部、偏心部及び支持部が含まれる構成となっている。
詳しくは、その偏心軸130は、単一の軸部材131の両端部であってそれぞれが支持台13の支持台部13a、13bに対し軸受41、41を介して支持される両端部(各端部が軸部に相当)がその軸線方向において連続せずに互いに離間する構成となっている。その上で、偏心軸130は、その両端部(軸部131a、131a)が、各軸部131a、131aの互いに対向する側の端縁に連続して形成されると共に軸部131a、131aの半径方向に伸びる一対の支持部133、133と、その一対の支持部133、133を軸部131a、131aの軸心から偏心した位置で連結する偏心部132とで連結されると共に、そのような一対の軸部131a、131a、一対の支持部133、133及び偏心部132が一体的に形成された構成となっている。また、そのように構成された偏心軸130は、一対の軸部131a、131aの一方における支持部とは反対側の端部に、前記の取付部として機能する円盤部131bを有している。
そして、この例では、そのように構成された偏心軸130に対し、その両軸部131a、131aが支持台13の各支持台部13a、13bによって支持された状態で、前記実施例と同様に、偏心部132に対しロッドエンド140を介してバランスシリンダ80が連結されている。
なお、そのロッドエンド140を介した偏心部132とバランスシリンダ80との連結構成について、この例では、偏心部132は、前記長手方向における中央付近が小径の取付軸132aとして形成されたものとなっている。一方、ロッドエンド140は、バランスシリンダ80のロッド81の先端が嵌挿される円筒状の取付部分140bよりも先端側の部分が、軸線を取付部分140bの軸線と直交させるように形成された筒状の固定部140aであって半割構造を為す固定部140aとして形成されたものとなっている。但し、その筒状の固定部140aは、偏心部132における前記取付軸132aよりも大きい内径を有している。そして、ロッドエンド140は、その固定部140aに偏心部132における前記取付軸132aが挿通された状態とされると共に固定部140aと前記取付軸132aとの間に半割構造のブッシュ150(すべり軸受)が介装された状態で、偏心軸130における偏心部132に対し取り付けられる。その上で、そのロッドエンド140における円筒状の取付部分140bに対しバランスシリンダ80のロッド81が嵌挿された状態とされることで、偏心部132(偏心軸130)とバランスシリンダ80とが連結状態とされる。
(2)以上で説明した例では、前提とする傾斜割出し装置は、一対の支持台のうちの一方の支持台にのみ駆動装置が設けられる構成となっているが、本発明が前提とする傾斜割出し装置は、そのような構成のものに限らず、一対の支持台の両方に駆動装置が設けられる構成であっても良い。なお、その場合、駆動装置が設けられる支持台に付設されるかたちでトルク補償装置が設けられることとなる。
このように、本発明は、前記実施例等のように駆動装置が設けられない支持台(従動側支持台13)の側にトルク補償装置を設けた傾斜割出し装置に適用される場合に限らず、駆動装置が設けられた支持台(駆動側支持台12)の側にトルク補償装置が設けられる傾斜割出し装置にも適用可能である。従って、本発明が前提とする傾斜割出し装置は、前記実施例等のように一対の支持台のうちの一方にのみ駆動装置が設けられるものにおいて、その駆動側支持台の側にトルク補償装置が設けられたものであっても良い。
また、本発明が前提とする傾斜割出し装置は、前記実施例等のようにトルク補償装置が一対の支持台の一方の側にのみ設けられるものに限らず、トルク補償装置が両方の支持台に付設されるかたちで設けられる構成であっても良い。そして、本発明では、そのトルク補償装置が連結される回転軸であって軸受を介して支持台に回転可能に支持される回転軸が、前述のような偏心軸として構成されるものである。
(3)なお、本発明が前提とする傾斜割出し装置に採用されるトルク補償装置は、前記したようなバランスシリンダ80に限らず、テーブルが前記傾斜状態となったときに偏心軸に対し作用するアンバランストルクを補償するための回転トルクを偏心軸に対し作用させるものであればどのような構成のものであっても良く、例えば、特開2009−255266号公報(従来技術文献)に記載された構成のものであっても良い。
具体的には、その従来技術文献の構成におけるトルク補償装置は、回転軸側の歯車(第1の歯車)と噛合する歯車(第2の歯車)、及びその第2の歯車に回転運動を与える駆動装置とで構成されたものとなっている。そして、その構成は、トルク補償装置において駆動装置により第2の歯車に対し回転運動が与えられることにより、その回転力が第2の歯車と噛合する回転軸側の第1の歯車に作用し、回転軸に対しアンバランストルクを補償するための回転トルクが作用するものである。因みに、その第2の歯車に回転運動を与える駆動装置については、前記従来技術文献に開示されているような流体圧シリンダやウエイトを用いた構成であっても良いし、トルクモータ等の電動機であっても良い。
なお、その構成においては、本発明で言う回転軸は、単一の軸部材とその軸部材に対し相対回転不能に取り付けられた第1の歯車とを組み合わせたものを指し、その回転軸が本発明における偏心軸となる。但し、本発明においては、前記従来技術文献の構成と異なり、偏心軸における第1の歯車は、前記軸部材に対しその軸線方向における中央付近に取り付けられるものとなる。そして、その偏心軸においては、前記軸部材における支持台に支持される部分が本発明における軸部に相当し、第1の歯車における第2の歯車と噛合する部分(歯部)が偏心部に相当する。また、その偏心軸における軸部と歯部との間の部分が支持部に相当する。
また、トルク補償装置は、偏心軸に対し取り付けられるバランスウエイトとして構成されたものであっても良い。具体的には、トルク補償装置は、従来技術文献に開示されているようなウエイトがワイヤロープで支持されると共にそのワイヤロープ等を介してウエイトが偏心軸に連結される構成において、その一端でウエイトに連結されるワイヤロープの他端が直接的に偏心軸の偏心部に連結される構成であっても良い。
また、偏心軸の一部を為す軸部材であってその両端部のそれぞれにおいて支持台(支持台部)に支持される軸部材に対し、その軸部材の軸線方向における略中央に、ブラケット等によって軸部材の半径方向に伸びるようなかたちで支持軸を取り付け、その支持軸の先端(軸部材側とは反対側の端部)にウエイトを取り付けることにより、テーブルの前記傾斜状態におけるアンバランストルクが補償される構成としても良い。その構成の場合、ウエイトそのものがトルク補償装置として機能する。また、偏心軸は、前記の軸部材と支持軸とを組み合わせたものとなり、その軸部材における支持台に支持される両端部が一対の軸部に相当すると共に支持軸におけるウエイトが取り付けられる部分が偏心部に相当し、その軸部と偏心部との間の部分が支持部に相当するものとなる。
なお、本発明は、上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。