JP6504051B2 - 共重合ポリエステル樹脂及びこれを用いた接着剤 - Google Patents
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Description
[1] ジカルボン酸成分とグリコール成分とを主たる構成成分とする共重合ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸成分としてフランジカルボン酸成分を含み、全ジカルボン酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%としたとき、下記要件(1)、(2)のいずれかを満たすことを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(1)フランジカルボン酸成分を10モル%以上含み、かつ炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)を25モル%以上含むこと
(2)フランジカルボン酸成分を80モル%以上含み、かつ側鎖を有する炭素数4〜9の脂肪族グリコール(Y’)を30モル%以上含み、炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)を25モル%以下含むこと
[2] ガラス転移温度が100℃以下であることを特徴とする[1]に記載の共重合ポリエステル樹脂。
[3] [1]または[2]のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を用いた接着剤。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、主としてジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)からなる共重合ポリエステル樹脂である。ここで「主として」とは、本発明の共重合ポリエステル樹脂を構成する全カルボン酸成分と全アルコール成分の合計に対して、ジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)の合計がモル基準で50モル%以上を占めることを指す。ジカルボン酸成分(A)とグリコール成分(B)の合計は70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であっても差し支えない。
(1)フランジカルボン酸成分を10モル%以上含み、かつ炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)を25モル%以上含むこと。
(2)フランジカルボン酸成分を80モル%以上含み、かつ側鎖を有する炭素数4〜9の脂肪族グリコール(Y’)を30モル%以上含み、炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)を25モル%以下含むこと。
なお、要件(1)、(2)のいずれかを満たせば良く、2つの要件とも満たす場合、すなわち炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)が25モル%で、要件(1)、(2)の両方を満たす場合であっても良い。
これらのうち、汎用性等の観点から好ましくは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸である。また、セバシン酸、アゼライン酸はバイオマス原料であるため、同じくバイオマス原料であるフランジカルボン酸と併用することでバイオマス度を高くできる点でも好ましい。
フランジカルボン酸成分が10モル%未満であると、ガラス転移温度、表面エネルギーを高める効果がほとんどないので好ましくない。より優れた接着性を得るためにはフランジカルボン酸成分を30モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましく、上限は100モル%である。特に、フランジカルボン酸成分を含まずに、炭素数5〜12の直鎖脂肪族成分(X+Y)量を多くすることは、ガラス転移温度を著しく低下させ、接着性を低下させてしまうため好ましくない。
前記(X+Y)が25モル未満であると、表面エネルギーを高める効果、応力緩和効果が小さくなるため好ましくない。特に、炭素数5〜12の直鎖脂肪族成分を含まずに、フランジカルボン酸成分量を多くする(後記する要件(2)を満たす場合を除く)ことは、応力緩和の効果が得られず接着性が低下するばかりか、共重合ポリエステル樹脂の溶剤溶解性が低下し、結晶性が高くなりすぎる場合もあるため好ましくない。より優れた接着性を得るためには、前記(X+Y)が30モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上である。フランジカルボン酸成分とともに共重合することにより、それを共重合しない場合と比較して、より多くの直鎖脂肪族成分を含有することが可能であるが、ガラス転移温度が著しく低下すると接着性に悪影響を及ぼすため、前記(X+Y)は150%モル以下が好ましく、100モル%以下がより好ましい。
フランジカルボン酸成分が80モル%未満であると、炭素数5〜12の直鎖脂肪族成分の共重合なしには優れた接着性を発現できない。フランジカルボン酸成分の含有量の上限は100モル%である。
前記(Y’)が30モル%未満であると、結晶性が著しく高くなり、接着性が低下する場合があるため好ましくない。
結晶性を抑制する効果、ガラス転移温度を高くする効果の観点から、前記(Y’)は35モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、上限は100モル%である。ただし、ガラス転移温度が高すぎると、室温における接着性が低下する場合があることから、前記(Y’)は80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましい。
主鎖部:水酸基を両端にした時に挟まれる直線状の部位
側鎖部:前記主鎖部のいずれかの炭素部位に結合した部位
と定義すると、ガラス転移温度を低下させずに結晶性を低下させるために、主鎖部の炭素数は3〜5が好ましい。側鎖の構成元素にとくに制限はないが、汎用性を考慮するとアルキル基であることが好ましく、その場合、側鎖部の炭素数は置換基1つあたり1〜4が好ましい。結合位置や置換数も制限はなく、置換可能な位置に1箇所以上結合されていればよい。例えば、側鎖部に炭素数が1のアルキル基(メチル基)を2個有する場合、主鎖部の同じ炭素部位に2個結合されていても良いし、異なる炭素部位に1個ずつ結合されていてもよい。
側鎖を有する炭素数4〜9の脂肪族グリコールとしては、例えば、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、等が挙げられる。これらの中でも、結晶性を抑制する効果、ガラス転移温度を高くする効果の観点から、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコールが好ましい。
前記(X+Y)が25モル%を超えると、ガラス転移温度が低下し、フランジカルボン酸成分を80モル%以上含むことで発現する高温領域での接着力が得られなくなる場合がある。前記(X+Y)は好ましくは20モル%以下であり、下限は0モル%である。
この範囲で共重合することにより樹脂の骨格に分岐が入り、末端を増加させ、反応を促進させる効果が発揮される。3官能以上の化合物の共重合比率が高すぎるとゲル化し、溶剤溶解性が悪くなる。
3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
組成によって条件を変える必要がある場合もあるが、例えば、上記のジカルボン酸成分及びグリコール成分を150〜250℃でエステル化反応後、減圧しながら200〜280℃で重縮合することにより、目的のポリエステルを得ることができる。あるいは、上記のジカルボン酸のジメチルエステル等の誘導体とグリコール成分を用いて150℃〜250℃でエステル交換反応後、減圧しながら200℃〜280℃で重縮合することにより、目的のポリエステルを得ることができる。
充分乾燥した試料0.1gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。
室温で真空乾燥した共重合ポリエステル樹脂5.0mgをDSC用のアルミパンに入れ、160℃で加熱溶融した後、液体窒素で冷却した。そのように前処理した共重合ポリエステル樹脂を日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量分析計「X−DSC7000」を用いて測定した。窒素雰囲気下中、−50〜250℃の範囲を20℃/分で昇温して、その途中において観察される、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
共重合ポリエステル樹脂の組成及び組成比の決定は、共鳴周波数400MHzの1H−NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)にて行った。測定装置はVARIAN社製、NMR装置・400−MRを用い、溶媒には重クロロホルム/トリフルオロ酢酸=85/15(質量比)を用いた。
200mLの四つ口フラスコに、樹脂40g、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)60gを入れ(濃度40質量%)、フラスコに設置したメカニカルスターラーを用い、攪拌速度100rpm、温度65℃で溶解した。溶解性評価は、目視で溶解したものを「○」、溶解しなかったものを「×」と判定した。2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)の他、塩化メチレン、シクロヘキサノンを用いて溶解性の評価をした。いずれの溶媒も樹脂濃度は40重量%であり、溶解温度は塩化メチレンの場合は30℃、シクロヘキサノンの場合は115℃とした。
A.サンプルの調製
上記(4)で調製したワニスを用いて接着性評価を実施した。実施例1〜9、比較例1、2、6は、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)を用いたワニス、比較例4、5、7は、塩化メチレンを用いたワニス、比較例3はシクロヘキサノンを用いたワニスで評価した。ワニスを50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面に100μmの厚さになるように塗布した。ワニスを塗布したフィルムを、ヤマト科学製DH−41を用いて乾燥した。乾燥後の樹脂の膜厚は40μmであった。なお、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)を用いたワニスの乾燥条件は120℃、5分間、塩化メチレンを用いたワニスの乾燥条件は60℃、5分間乾燥後、80℃、5分間の乾燥をおこなった。また、シクロヘキサノンを用いたワニスの乾燥条件は120℃、120分間とした。このように塗布したPET面に50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面を合わせ、テスター産業社製ロールラミネーターを用いて接着した。なお、ラミネートは温度130℃、圧力3MPa、速度2m/minで行った。
B.接着力測定
上記で調製したラミネート後のサンプルを、島津製作所(SHIMADZU)製精密万能試験機オートグラフ(形式;AG―1kNIS)を用いて、27℃空気下で引っ張り試験をおこなった。引っ張り速度を50mm/minとし、180°剥離接着力を測定した。接着力は値が高いほど望ましい。
A.サンプルの調製
上記(4)で調製したワニスを用いて接触角測定を実施した。各実施例、比較例で使用したワニスは、上記(5)と同様にした。ワニスを50μmの二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル、品名;E5100)のコロナ面に100μmの厚さになるように塗布した。ワニスを塗布したフィルムを、ヤマト科学製DH−41を用いて乾燥した。乾燥後の樹脂の膜厚は、40μmであった。なお、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)を用いたワニスの乾燥条件は120℃、5分間、塩化メチレンを用いたワニスの乾燥条件は60℃、5分間乾燥後、80℃、5分間の乾燥をおこなった。また、シクロヘキサノンを用いたワニスの乾燥条件は120℃、120分間とした。
B.接触角測定
樹脂の表面エネルギーは、接触角から算出した。接触角の測定は、協和界面化学製接触角計CA−X型を用いて、JISR3257の静滴法に準じ測定した。具体的には23℃、湿度50%RHの環境下で、サンプルを水平に置き、水およびヨウ化メチレンで各7回測定し、上限値と下限値を除き、n=5で測定した接触角の平均値を各溶媒の接触角とした。なお、水の接触角を求める際、滴下量を1.8μlとし、1分間静置後の接触角を読み取った。また、ヨウ化メチレンの接触角を求める際は滴下量を0.9μlとし、30秒間静置後の接触角を読み取った。
接触角θと表面エネルギーの関係は、Youngの式より、
γs=γsl+γlcosθ ・・・(式1)
が成り立つ。ここでγsは固体の表面エネルギー、γlは液体の表面エネルギー、γslは固体と液体の界面エネルギーを表す。また、拡張Fowkes式より、
γsl=γs+γl−2(γsd×γld)1/2−2(γsh×γlh)1/2 ・・・(式2)
ここでγsd、γshは固体の表面エネルギーの分散成分、極性成分、γld、γlhは、液体の表面エネルギーの分散成分、極性成分を表す。
(式1)、(式2)より、(式3)が導き出される。
1+cosθ=2[(γsd×γld)1/2/γl+(γsh+γlh)1/2/γl] ・・・(式3)
また、
γs=γsd+γsh ・・・(式4)
と近似できる。
接触角測定に水を用いた場合、(式3)に表面張力γl=72.8、分散成分γld=21.8、極性成分γlh=51.0、サンプルに水を滴下した際の接触角(θ(H2O))を代入し、(式5)を得た。
1+cosθ(H2O)=2[(γsd×21.8)1/2/72.8+(γsh+51.0)1/2/72.8] ・・・(式5)
接触角測定にヨウ化メチレンを用いた場合、(式3)に表面張力γl=50.8、分散成分γld=48.5、極性成分γlh=2.3、サンプルにヨウ化メチレンを滴下した際の接触角(θ(CH2I2))を代入し、(式6)を得た。
1+cosθ(CH2I2)=2[(γsd×48.5)1/2/50.8+(γsh+2.3)1/2/50.8] ・・・(式6)
(式4)、(式5)、(式6)から樹脂の表面エネルギーγsを算出した。
攪拌機付き容量2リッターのステンレス製オートクレーブに2,5‐フランジカルボン酸269.5g(1.73モル)、セバシン酸149.6g(0.74モル)、エチレングリコール269.4g(4.34モル)、ネオペンチルグリコール61.6g(0.59モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.25gを仕込み、200℃まで昇温しつつ、0.25MPaの加圧下で150分間エステル化反応を行い、オリゴマー混合物を得た。その後、60分間かけて220℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて、13.3Pa(0.1Torr)として、さらに220℃、13.3Pa下でポリエステル重縮合反応を45分間行った。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水にストランド状に吐出して急冷し、その後20秒間冷水中で保持した後、カッティングして長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。このポリエステルペレットの組成並びに特性、上記の方法に従い実施した溶解性、表面エネルギー測定、及び接着性評価の結果を表1に示す。
使用原料、組成を変更した以外は、実施例1と同様の方法により合成した。組成及び物性は表1、2に示すような値となった。
比較例1はフランジカルボン酸成分を含まないため、フランジカルボン酸成分を含む類似の組成(例えば実施例2)に比べ、表面エネルギーが低く、接着力も低下した。
比較例2は炭素数5〜12の直鎖脂肪族成分を規定量以上含むが、フランジカルボン酸成分を含まないため、ガラス転移温度を保持できずに著しく低下し、接着力も低下した。
比較例3、4はフランジカルボン酸成分、炭素数5〜12の直鎖脂肪族成分をともに含有しないため、ガラス転移温度は高いが表面エネルギーは低いため、接着力が低下した。
比較例5は側鎖を有する炭素数4〜9の脂肪族グリコール(Y’)を規定量以上含むが、フランジカルボン酸成分が規定量に対し少ないため、表面エネルギーを高くする効果、応力緩和効果が得られず、接着力が低下した。
比較例6、7はフランジカルボン酸成分を規定量以上含むが、炭素数5〜12の直鎖脂肪族成分、及び側鎖を有する炭素数4〜9の脂肪族成分が規定量に対し少ないため、結晶性が高くなり、応力緩和効果も得られず、接着性が著しく低下した。
Claims (2)
- ジカルボン酸成分とグリコール成分とを主たる構成成分とする共重合ポリエステル樹脂であって、ジカルボン酸成分としてフランジカルボン酸成分を含み、全ジカルボン酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%としたとき、下記要件(1)、(2)のいずれかを満たす共重合ポリエステル樹脂を用いた接着剤。
(1)フランジカルボン酸成分を10モル%以上含み、かつ炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)を25モル%以上含むこと
(2)フランジカルボン酸成分を80モル%以上含み、かつ側鎖を有する炭素数4〜9の脂肪族グリコール(Y’)を30モル%以上含み、炭素数5〜12の直鎖脂肪族ジカルボン酸(X)及び炭素数5〜12の直鎖脂肪族グリコール(Y)からなる群から選ばれる一種以上の合計(X+Y)を25モル%以下含むこと - 共重合ポリエステル樹脂が、ガラス転移温度が100℃以下の共重合ポリエステル樹脂である請求項1に記載の接着剤。
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