JP6500421B2 - 炭素繊維不織布 - Google Patents
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Description
工程A:炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に非貫通孔を形成する工程であって、該非貫通孔に対応する凸部を有する賦形部材を前記炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に押し付けて前記非貫通孔を形成する工程と、
工程B:工程Aで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程と
を有する炭素繊維不織布の製造方法である。
〔炭素繊維不織布〕
以下、本発明の炭素繊維不織布を、主に燃料電池用ガス拡散電極基材として用いる場合を例に説明する。
本発明の炭素繊維不織布は、炭素繊維不織布の平均孔面積よりも大きい開口面積を有する複数の非貫通孔が表面に分散形成されてなるものである。非貫通孔とは、炭素繊維不織布の一方の面に開口部を有し、かつ他面まで達していない孔(凹部)である。ここで、炭素繊維不織布の平均孔面積とは、前述した炭素繊維不織布の平均孔径を直径とする円の面積をいう。
本発明の炭素繊維不織布は、一例として、工程A:炭素繊維前駆体繊維不織布の表面を押圧して非貫通孔を形成する工程と、工程B:工程Aで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程とを有する炭素繊維不織布の製造方法により製造することができる。
炭素繊維前駆体繊維とは、炭化処理により炭素繊維化する繊維であり、炭化率が15%以上の繊維であることが好ましく、30%以上の繊維であることがより好ましい。本発明に用いられる炭素繊維前駆体繊維は特に限定されないが、ポリアクリロニトリル(PAN)系繊維、ピッチ系繊維、リグニン系繊維、ポリアセチレン系繊維、ポリエチレン系繊維、および、これらを不融化した繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維などを挙げることがでる。中でも強伸度が高く、加工性の良いPANを不融化したPAN系耐炎繊維を用いることが特に好ましい。繊維を不融化するタイミングは、不織布を作製する前後いずれでもよいが、不融化処理を均一に制御しやすいことから、シート化する前の繊維を不融化処理することが好ましい。また、不融化していない炭素繊維前駆体繊維不織布を用いる場合、後述する工程Aの後で不融化処理を行うこともできるが、工程Aにおける変形を最小限にする観点からは、不融化した炭素繊維前駆体繊維不織布を工程Aに供することが好ましい。
なお、炭化率は、以下の式から求めることができる。
炭化率(%)=炭化後重量/炭化前重量×100 炭素繊維前駆体繊維不織布は、炭素繊維前駆体繊維により形成されたウエブまたはシートである。ウエブとしては、乾式のパラレルレイドウエブまたはクロスレイドウエブ、エアレイドウエブ、湿式の抄造ウエブ、押出法のスパンボンドウエブ、メルトブローウエブ、エレクトロスピニングウエブを用いることができる。また、シートとしては、これらのウエブを機械的に交絡させたシート、加熱して融着させたシート、バインダーで接着させたシート等を用いることができる。溶液紡糸法で得たPAN系繊維を不融化してウエブ化する場合は、均一なシートを得やすいことから、乾式ウエブまたは湿式ウエブが好ましく、中でも工程での形態安定性を得やすいことから、乾式ウエブを機械的に交絡させたシートが特に好ましい。
工程Aは、炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に非貫通孔を賦形し、非貫通孔を有する炭素繊維前駆体繊維不織布を得る工程である。従来、このような非貫通孔は、炭化後の炭素繊維不織布にレーザー加工や機械加工を行うことで形成するのが一般的であったが、この方法は、孔形成時に非貫通孔の壁面で炭素繊維が切断されることが避けられないため、導電性と熱伝導性の低下を招くという問題があった。
工程Bは、工程Aで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程である。炭化処理の方法は特に限定されず、炭素繊維材料分野における公知の方法を用いることができるが、不活性ガス雰囲気下での焼成が好ましく用いられる。不活性ガス雰囲気下での焼成は、窒素やアルゴンといった不活性ガスを供給しながら、800℃以上で炭化処理を行うことが好ましい。焼成の温度は、優れた導電性と熱伝導性を得やすいために1500℃以上が好ましく、1900℃以上がより好ましい。一方、加熱炉の運転コストの観点を考慮すると、3000℃以下であることが好ましい。
本発明の炭素繊維不織布には、そのまま固体高分子形燃料電池のガス拡散電極として用いることもできるが、発電時の水分管理に優れることから、フッ素系樹脂による撥水処理および/またはMPLといわれるフッ素系樹脂と炭素質の導電助剤からなる層を一方の面に形成することが好ましい。
1.繊維の構造
(1)曲率半径1mm以下の湾曲部を有する炭素繊維の本数
炭素繊維不織布表面の500μm×500μmの面積を走査型電子顕微鏡で観察した。炭素繊維の湾曲部で3点をとり、その3点の外接円の半径として湾曲部の曲率半径を求めた。曲率半径が1mm以下の湾曲部を有する繊維が10本以上確認できた場合に多数とし、それ以下の場合には実測の本数とした。なお、対象とする炭素繊維上で測定した曲率半径のうち最も小さい曲率半径をその炭素繊維の曲率半径とした。
(2)非貫通孔の形状
非貫通孔の開口面積および深さは、レーザー顕微鏡(VK−9710、株式会社キーエンス社製)で観察し、形状解析アプリケーション(VK−Analyzer Plus、株式会社キーエンス社製)を用いて測定した。1000μm×1400μmの視野で凹凸部の計測解析を行い、非貫通孔の非開口面から炭素繊維不織布の加圧時厚みに相当する高さだけ開口面側に存在する平面を想定した上で、当該平面における非貫通孔の断面積の平均値を非貫通孔の開口面積、当該平面より非開口面側に存在する部分の深さの平均値を非貫通孔の深さ(絶対値)とした。このとき、高さのしきい値は1MPaで加圧した際の炭素繊維不織布厚みの値とした。1000μm2よりも小さい面積は微小領域として無視した。また、開口率は、全ての非貫通孔の開口面積の総和の、炭素繊維不織布の面積に対するパーセンテージとして求めた。
(3)非貫通孔の壁面における炭素繊維の高さ方向への配向性
非貫通孔の壁面を構成している炭素繊維が非貫通孔の高さ方向に配向しているかどうかは、レーザー顕微鏡(VK−9710、株式会社キーエンス社製)で観察し、形状解析アプリケーション(VK−Analyzer Plus、株式会社キーエンス社製)を用いて判断した。1000μm×1400μmの視野を観察し、非貫通孔の1/3深さの等分面と非貫通孔内壁面との交線、および2/3深さの等分面と非貫通孔内壁面との交線を共に横切る炭素繊維が1本でも観察されれば、非貫通孔の高さ方向に配向している繊維があると判断した。
(4)炭素繊維不織布の平均孔径
ASTM F316-86の方法で測定し、平均流量細孔径を炭素繊維不織布の平均孔径とした。
2.発電性能
フッ素系電解質膜Nafion212(デュポン社製)の両面に、白金担持炭素とNafionからなる触媒層(白金量0.2mg/cm2)をホットプレスによって接合し、触媒層被覆電解質膜(CCM)を作成した。このCCMの両面にガス拡散電極を配して再びホットプレスを行い、膜電極接合体(MEA)とした。ガス拡散電極の周囲にガスケット(厚み70μm)を配したMEAをエレクトロケム社製のシングルセル(5cm2、サーペンタイン流路)にセットした。このとき、フッ素系樹脂(PTFE)とガス拡散電極の導電助剤(カーボンブラック)とを塗布した面をMEA側に向けてセットした。
(1)加湿条件での電圧
セル温度を60℃、水素と空気の露点を60℃とし、流量はそれぞれ100cc/分と250cc/分、ガス出口は開放(無加圧)とし、0.6A/cm2の電流密度で発電させ、そのときの電圧を加湿条件での電圧とした。
(2)低加湿条件での電圧
セル温度を90℃、水素と空気の露点を60℃とし、流量はそれぞれ1000cc/分と2500cc/分、ガス出口は開放(無加圧)とし、0.6A/cm2の電流密度で発電させ、そのときの電圧を低加湿条件での電圧とした。
PAN系耐炎糸のけん縮糸を数平均繊維長76mmに切断した後、カード、クロスレヤーでシート化した後、針密度100本/cm2のニードルパンチを行って炭素繊維前駆体繊維不織布を得た。
実施例1と同様にして得た炭素繊維前駆体繊維不織布に対して、固形分で10重量%付着するようにフェノール樹脂を含浸付与した。その後、エンボス加工以降の処理を実施例1と同様に実施して炭素繊維不織布を得た。この炭素繊維不織布に、実施例1と同様の処理を施してガス拡散電極を得た。
実施例1と同様にして得た数平均繊維長76mmの耐炎糸と、数平均繊維長37mmのナイロンステープルを、それぞれ80重量%と20重量%の割合で混綿した後、カード、クロスレヤーおよび針密度100本/cm2のニードルパンチを行って炭素繊維前駆体繊維不織布を得た。当該炭素繊維前駆体繊維不織布を用いた以外は実施例1と同様にして、炭素繊維不織布を得た。
繊維長10mmのPAN系耐炎糸を用い、抄造法によって湿式不織布を得た。この湿式不織布に対して、10重量%のフェノール樹脂を含浸し、炭素繊維前駆体繊維不織布とした。当該炭素繊維前駆体繊維不織布を用いた以外は実施例1と同様にして、炭素繊維不織布を得た。
実施例3と同様にして得た炭素繊維前駆体繊維不織布に、ビーム径が100μmのYAGレーザーを照射し、MD、CDとも0.5mmに一孔の頻度で孔加工を行った。その後、窒素雰囲気下で15分間、1500℃で加熱して炭化処理を行い、炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布の平均孔径は12.5μmだった。
実施例4と同様にして得た炭素繊維前駆体繊維不織布を用いた以外は比較例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。
繊維長51mmのPAN系耐炎糸ステープルのストランドで得た平織物に対し、10重量%のフェノール樹脂を含浸付与して炭素繊維前駆体繊維平織物を得た。炭素繊維前駆体繊維不織布の代わりにこの炭素繊維前駆体繊維平織物を用いた以外は実施例1と同様にして、炭素繊維平織物を得た。
実施例3と同様にして、炭素繊維前駆体繊維不織布を得た。得られた炭素繊維前駆体繊維不織布に、YAGレーザーの照射時間を比較例1の10倍とした以外は比較例1と同様にして、炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布に形成された孔は、貫通孔となっていた。
実施例1と同様にして得た炭素繊維前駆体繊維不織布に、一対のフラットロールでプレス加工を行った。一対のフラットロールの加熱温度は220℃、線圧は50kN/m、加工速度は50cm/分とした。プレス加工後の見かけ密度は0.40g/cm3だった。その後、窒素雰囲気下で15分間、1500℃で加熱して炭化処理を行い、炭素繊維不織布を得た。当該炭素繊維不織布に、実施例1と同様のエンボス加工を施した。
Claims (7)
- 曲率半径が1mm以下の湾曲部を有する炭素繊維を含み、炭素繊維不織布の平均孔面積よりも大きい開口面積を有する複数の非貫通孔が表面に分散形成されるとともに、該非貫通孔の壁面を構成している炭素繊維のうち少なくとも一部の炭素繊維が前記非貫通孔の高さ方向に配向している炭素繊維不織布。
- 前記非貫通孔の高さ方向に配向している炭素繊維が、前記非貫通孔の底面まで連続している、請求項1に記載の炭素繊維不織布。
- 平面視において、前記非貫通孔の開口面積の総和が、前記炭素繊維不織布の面積の1.5%〜60%である、請求項1または請求項2に記載の炭素繊維不織布。
- 前記非貫通孔の開口面積が1000μm2〜500mm2である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の炭素繊維不織布。
- 前記非貫通孔の深さが10〜500μmである、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の炭素繊維不織布。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の炭素繊維不織布を用いてなる電極用基材。
- 請求項6に記載の電極用基材を用いてなる燃料電池用ガス拡散電極。
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