JP6498817B1 - 塗料組成物、塗膜及び塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂成分及び顔料を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物中に含まれる不揮発分のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、前記塗料組成物から厚さ200μmの塗膜を形成させた場合の該塗膜の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayであることを特徴とする塗料組成物である。
【選択図】なし
Description
前記塗料組成物中に含まれる不揮発分のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、
前記塗料組成物から厚さ200μmの塗膜を形成させた場合の該塗膜の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayであることを特徴とする。
以下に、本発明の塗料組成物を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、樹脂成分及び顔料を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物中に含まれる不揮発分のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、前記塗料組成物から厚さ200μmの塗膜を形成させた場合の該塗膜の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayであることを特徴とする。本発明の塗料組成物によれば、線膨張係数及び水蒸気透過度を上記特定した範囲にすることで、耐剥離性及び防食性に優れる塗膜を形成することができる。なお、ガラス転移温度以下の温度における線膨張係数を線膨張係数α1ともいう。
参考文献1:島津熱機械分析装置TMA−60/60H取扱説明書 島津製作所、2014年5月
参考文献2:島津熱分析ワークステーションTA−60WS取扱説明書 島津製作所、2014年2月
線膨張係数測定方法
表面が清浄なブリキ板(0.3mm×75mm×150mm)に測定する塗料を塗装し、塗膜を作製する。この作業を乾燥膜厚が約6mm以上になるまで1日1回行う。その際、均一な塗膜を作製するため、塗装する方向は1回ごとに交差させる。
乾燥膜厚が6mm以上に達した塗膜をブリキ板から剥がし、約6mm×6mm×20mmの角柱になるよう紙やすり等を用いて整形した後、その質量を精秤する。その後、150℃の恒温槽に10時間加温養生した後再び精秤して、150℃恒温槽に10時間加温養生した前後の質量減量率を次式により算出する。加温養生前後の質量減少率が1%以内になるまで加温養生を繰り返す。
線膨張係数の測定は島津製作所製の島津熱機械分析装置TMA−60で行った。−50℃からの測定を行うため、低温炉LTB−60を付属品として使用した。−50℃から+120℃までの試料の温度上昇に伴う試料長の変化(線膨張量)をサンプリング間隔1秒で測定する。得られたグラフから、温度上昇と膨張率の間に比例関係が認められる区間において2点を指定し、その区間の勾配から線膨張係数α1および線膨張係数α2を得る。
なお、本明細書において不揮発分のガラス転移温度は勾配がα1である直線領域と勾配がα2である直線領域の交点となる温度をいう。
なお、線膨張係数α2も同様の手法により低下させることが可能であるが、線膨張係数α1と比べて、顔料の粒径の影響が大きい。このため、粒径の大きな顔料による線膨張係数α2を低下させる効果は、線膨張係数α1を低下させる効果よりも大きい。
水蒸気透過度測定方法
表面が清浄なポリプロピレン板(以下PP板)(5mm×100mm×150mm)に測定する塗料を刷毛塗りで乾燥膜厚が70μmになるように塗装し、塗膜を作製する。この作業を1日1回行い3回塗りする。塗装する方向は1回ごとに交差させる。塗装間の養生は50℃の恒温槽内で行い、最終塗装翌日にPP板より塗膜を剥がし、単離塗膜を50℃の恒温槽内で7日間加温養生した。
本発明の塗料組成物において、厚さ200μmの塗膜を形成させた場合の該塗膜の水蒸気透過度は、JIS Z 0203:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠した方法によって決定される。具体的に、ガラス瓶に粒状無水塩化カルシウム(吸湿剤)を入れ、厚さ200μmの単離塗膜片をPP板側を内側にして、ガラス瓶に貼り付けて封入した後、25℃、相対湿度90%の環境下で静置し、24時間毎に秤量を行い、カップの質量増加を水蒸気の透過量として測定し、質量増加量が安定した24時間あたりの質量増加量を水蒸気透過度とした。
また、変性樹脂は、水蒸気透過度を低下させる効果が低いと考えられていたが、本発明者が検討したところ、樹脂成分の一部に変性樹脂を用いる場合、好ましくは樹脂成分の一部である変性樹脂と鱗片状顔料とを併用する場合、より好ましくは該変性樹脂が液状である場合に、水蒸気透過度の低減効果が大きくなることを見出した。
変性樹脂と鱗片状顔料の併用によって奏される相乗的な水蒸気透過度の低減効果は、鱗片状顔料の濡れ性の向上と関係があると思われ、特に液状変性樹脂である場合により相乗的な効果が得られることを見出した。
このような変性エポキシ樹脂の市販品名としては、エピコート168V70(三菱ケミカル社製)、エピクロン5900−60、エピクロンHP−820(DIC社製)、エポジール748、エポジール759(エアプロダクツアンドケミカルズ社製)、カードライトNX4764(カードライト社製)、ハリポールEP−450、ハリポールEP−497(ハリマ化成グループ社製)、カージュラE10(HEXION Specialty Chemicals社製)、アデカグリシロールED−502、アデカグリシロールED−503、アデカグリシロールED−505(ADEKA社製)等を挙げることができる。
また、旧塗膜の上に塗装した場合にも旧塗膜のリフティングを発生させることが無く、更にVOC等の環境問題を考慮する場合には、水性エポキシ樹脂を含む水系塗料組成物が好ましい。
上記エポキシ樹脂のうち、水系塗料に適用できるものとしては、JERW2801、JERW1155R55、JER−W3435R67、エポルジョンEA1、2、3、7、12、20、55及びHD2、ユカレジンKE−002、KE−116、E−1022、KE−301C、アデカレジンEM−101−50、Beckpox EP2381;EPI−REZ6530−WH−53等が挙げられる。
一方、エポキシ樹脂等の硬化剤として使用可能なアミン系化合物(樹脂に分類されるものも含まれる)の市販品名としては、ラッカマイドWN−405、ラッカマイドWN−620、ラッカマイドWH−614、ラッカマイドF4、ラッカマイドWH−650(DIC社製)、トーマイド215−70X、トーマイド225−X、トーマイドTXS−53−C、トーマイドTXS−674−B、トーマイドTXS−685−A、トーマイドTXS−694、フジキュアーFXI−919、フジキュアーFXH−927、フジキュアーFXH−935、フジキュアー4011、フジキュアー4025、フジキュアー4030(T&K TOKA社製)、バーサミン340 1N、バーサミン551、バーサミン552(BASFジャパン社製)、サンマイド150−65、サンマイドWH―910、アンカミン2280、アンカミン2643、アンカマイド350A、(エアープロダクツアンドケミカルズ社製)、JERキュアXD#639、JERキュアST11、JERキュアST12、JERキュアST13、JERキュアSL11、JERキュアWD11M60(三菱ケミカル社製)、アデカハードナーEH−235R−2、アデカハードナーEH−4163X(商品名、ADEKA社製)、ベジケムグリーンV115、ベジケムグリーンV125、ベジケムグリーンV140、ベジケムグリーンG747(築野食品工業製)、ジェファーミンD-230、ジェファーミンT−403(ハンツマン社製)、ニューマイド511−55、ニューマイド3510(ハリマ化成製)、ダイトクラールI−5986、ダイトクラールI−6020、ダイトクラールX−5663H、ダイトクラールX−6102(大都産業社製)、ベッコポックスEH613W/80WA、ベッコポックスEH623W/80WA(サーフェース・スペシャリティージャパン社製)等を挙げることができる。上記アミン系化合物のうち、弱溶剤系塗料に使用できるものとしては、JERキュアXD#639、アデカハードナーEH−235R−2等がある。また、上記アミン系化合物のうち、水系塗料に適用できるものとしては、トーマイドTXS−53−C、トーマイドTXS−674−B、トーマイドTXS−685−A、トーマイドTXS−694、フジキュアーFXI−919、フジキュアーFXH−927、フジキュアーFXH−935、サンマイドWH―910、JERキュアWD11M60、アデカハードナーEH−4163X、ダイトクラールI−5986、ダイトクラールI−6020、ダイトクラールX−5663H、ダイトクラールX−6102、ベッコポックスEH613W/80WA、ベッコポックスEH623W/80WA等が挙げられる。
また、上記変性樹脂を用いる方法とは別に、2種類以上の樹脂をブレンドして用いてもよい。例えば、上記エポキシ樹脂やポリオール樹脂に炭化水素樹脂をブレンドすることが好ましい。
例えば、炭化水素樹脂としては、キシレン樹脂等の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族系炭化水素樹脂が使用できる。また、フェノール等で変性された炭化水素樹脂も使用することができる。炭化水素樹脂としては、例えば、ニカノールL、ニカノールLL、ニカノールLLL、ニカノールY−50、ニカノールY−100(フドー社製)、Necires EPX−L、Necires EPX−L2 (Nevcin社製)、Hirenol PL−1000S (KOLONケミカル社製)、日石ネオポリマーE−100、日石ネオポリマーE−130、日石ネオポリマー130S (JX日鉱日石エネルギー社製)等が使用できる。
また、本発明の塗料組成物は、樹脂成分の一部である変性樹脂を、鱗片状顔料と併用することで、水蒸気透過度を低下させる効果がより一層大きくなる。
本明細書において「変性樹脂」には、変性された樹脂と、変性作用を有する樹脂とが含まれ、これらは単独で使用してもよいし、併用してもよいが、水蒸気透過度の低減効果の観点から、好ましくは変性作用を有する樹脂、より好ましくは変性作用を有する液状の樹脂を用いることである。
ここで、「変性された樹脂」の具体例としては、アルキル変性、アルキルエーテル変性、アルキルフェノールノボラック変性、アクリル変性、脂肪酸変性、ウレタン変性、アミノ変性、イソシアネート変性、シリコーン変性、その他アリル基を利用したグラフト変性等の変性がされている樹脂(好ましくはエポキシ樹脂、ポリオール樹脂等)が挙げられる。
また、「変性作用を有する樹脂」とは、樹脂改質剤や樹脂変性剤とも呼ばれる樹脂であり、エポキシ樹脂やポリオール樹脂等の樹脂を変性することが可能な樹脂であり、その具体例としては、上述の炭化水素樹脂の他、特開2009−254939号公報に記載されるような樹脂(C4系〜C12系石油樹脂又はこれらの混合物、ケトン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、クロマン系樹脂、キシレン系樹脂、トルエン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、インデン系樹脂)等が挙げられる。
平均粒径が500μmを超え1500μm以下の場合においては、光学顕微鏡で顔料を観察し、任意の粒子50個の粒径の平均値を求め、その値を平均粒径とする。
尚、鱗片状顔料の平均粒径は、光学顕微鏡で顔料を観察し、任意の粒子50個の長径の平均値を求め、その値を平均粒径とする。なお、長径とは、光学顕微鏡で観察された粒子の最も長い方向における長さである。ここで、鱗片状顔料の平均粒径は、好ましくは5〜800μmであり、より好ましくは5〜600μmであり、外観、塗装性や遮断性を考慮すると、更に好ましくは10〜200μm、特に好ましくは30〜160μmである。
市販品名としては、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」、「スワゾール1800」(以上商品名、丸善石油社製)、「ミネラルスピリットA」、「T−SOL100」、「T−SOL150」、「T−SOL−3040」、「T−SOL AN45」(以上商品名、JXTGエネルギー社製)、「エッソナフサNo.6」、「エクソールD30」及び「ペガゾール3040」(以上商品名、エクソンモービル化学社製)、「IPソルベント」、「イプゾール100」、「イプゾール150」、「イプゾールTP」(以上商品名、出光興産社製)、「リニアレン10」及び「リニアレン12」(以上、出光石油化学社製)等が挙げられる。
上記の物性値としては、塗料粘度、塗料密度、チクソトロピックインデックス(Ti)値、顔料体積濃度(PVC)、鉛筆硬度、引張強度、引張弾性率、伸び率等があげられる。
次に、本発明の塗膜を詳細に説明する。本発明の塗膜は、該塗膜のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、該塗膜の厚さが200μmである場合の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayであることを特徴とする。本発明の塗膜によれば、水蒸気透過度及び線膨張係数を上記特定した範囲にすることで、防食性及び耐剥離性に優れる塗膜を形成することができる。
次に、本発明の塗装方法を詳細に説明する。本発明の塗装方法は、被塗装物を、樹脂成分及び顔料を含む塗料組成物で塗装し、ガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、厚さが200μmである場合の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayである塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする。本発明の塗装方法によれば、水蒸気透過度及び線膨張係数が上記特定した範囲にある塗膜を形成させることで、防食性及び耐剥離性を向上させることができる。
得られた主剤を表2に示した配合比率(質量割合)で硬化剤と混合して、各エポキシ樹脂塗料組成物を製造した。
(注2)ニカノールLLL:商品名、フドー社製 キシレン樹脂
(注3)ディスパロンD4200−20X:商品名、楠本化成社製、分散剤
(注4)ディスパロンOX−66:商品名、楠本化成社製、消泡剤
(注5)KBM403:商品名、信越化学社製、シランカップリング剤
(注6)K−WHITE#82:商品名、テイカ社製 縮合リン酸アルミニウム、平均粒径:3.5μm
(注7)クラウンタルク3S:商品名、松村産業社製 タルク、平均粒径:11.9μm
(注8)ベンガラ130R:商品名、戸田工業社製 酸化鉄、平均粒径:0.2μm
(注9)RCF−015:商品名、日本板硝子社製、ガラスフレーク顔料、粒径小(平均粒径:15μm)
(注10)RCF−160:商品名、日本板硝子社製、ガラスフレーク顔料、粒径中(平均粒径:160μm)
(注11)RCF−600:商品名、日本板硝子社製、ガラスフレーク顔料、粒径大(平均粒径:600μm)
(注12)サンマイド150−65:商品名、エアープロダクツアンドケミカルズ社製、変性脂肪族ポリアミドアミン、不揮発分65質量%、アミン価 62mgKOH/g
実施例1〜7及び比較例1〜4により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物について、線膨張係数(α1・α2)及びガラス転移温度の測定は、上記「線膨張係数測定方法」に記載した方法で行った。測定結果を表2に示す。
塗膜の作製方法について、具体的には、表面が清浄なブリキ板(0.3mm×75mm×150mm)に測定する塗料を刷毛で塗装し、23℃で硬化養生させた。この作業を乾燥膜厚が約6mm以上になるまで1日1回行った。その際、刷毛塗りする方向は1回ごとに交差させた。乾燥膜厚が約6mm以上に達した塗膜を、ブリキ板ごと50℃に保持した恒温槽内で1昼夜養生を行い、測定用塗膜を準備した。
実施例1〜7及び比較例1〜4により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物について、水蒸気透過度の測定は、上記「水蒸気透過度測定方法」に記載した方法で行った。結果を表2に示す。
塗膜の作製方法について、具体的には、表面が清浄なポリプロピレン板(以下PP板)(5mm×100mm×150mm)に測定する塗料を刷毛塗りで乾燥膜厚が70μmになるように塗装し、塗膜を作製した。この作業を1日1回行い3回塗りした。塗装する方向は1回ごとに交差させた。塗装間の養生は50℃の恒温槽内で行い、最終塗装翌日にPP板より塗膜を剥がし、単離塗膜を50℃の恒温槽内で7日間加温養生した。
JIS Z 0203:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠した方法について、具体的には、ガラス瓶に粒状無水塩化カルシウム(吸湿剤)を入れ、厚さ200μmの単離塗膜片をPP板側を内側にして、ガラス瓶に貼り付けて封入した後、25℃、相対湿度90%の環境下で静置し、24時間毎に秤量を行い、カップの質量増加を水蒸気の透過量として測定し、質量増加量が安定した24時間あたりの質量増加量を水蒸気透過度とした。
ヒートサイクル付着試験は下記の方法で行った。結果を表2に示す。
表面を溶剤脱脂した磨き鋼板[JIS G 3141 (SPCC〜SD) 冷間圧延鋼板 3.2mm×70mm×150mm]に予めメチルイソブチルケトン77質量部に塩化ビニル樹脂粉末(ソルバインC:塩ビ/酢ビ=87/13(質量比)の共重合物、日信化学工業社製)23質量部を溶解したクリヤー塗料液を、塗付量95g/m2で1回目の刷毛塗りを行い、23℃で3時間養生する。次いで塗付量143g/m2で2回目の刷毛塗りを行い、23℃で1昼夜養生する。
供試塗料中の溶剤で塗装した塩化ビニル膜が影響を受けないように組成中の溶剤が弱溶剤である弱溶剤系変性エポキシ樹脂塗料下塗(エポオールスマイル:大日本塗料社製)を塩化ビニル塗膜の上に塗付量130g/m2で1回刷毛塗りする。試験片端部からの溶剤の影響を防止するよう、端部も塗装する。23℃で1昼夜養生した後、50℃で15時間加温養生し、23℃にて放冷する。
放冷した試験片に実施例1〜7及び比較例1〜4により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物を表2に規定のとおりに塗装する。例えば、表中の「60×1」は乾燥膜厚60μm×1回塗りを意味し、「60×3」は乾燥膜厚60μm×3回塗りを意味する。塗装は刷毛で行い、規定膜厚に必要な塗付量は下式で求めた理論塗付量を用いた。
養生が終了した試験片をヒートサイクル剥離試験に供する。試験片を50℃に設定した恒温槽に入れ2時間保持する。その後恒温槽から取り出して23℃で1時間放置し、−30℃の低温槽に2時間保持する。その後低温槽から取り出し、23℃で1時間放置する。このサイクルを1サイクルとし、繰り返し実施する。夜間および休日では、−30℃の条件で保持する。
ヒートサイクル剥離試験の評価は#型に切傷を入れた部位からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれ(総称して塗膜の欠陥という)を観察して行い、図1を基準にして評価点をつける。塗膜の欠陥が基準図の間にある状態では、例えば「4〜3」の様に評価点をつける。各評価点の切傷からの塗膜の欠陥の程度は下記の通りである。
評価点5:まったく変化が無い。
評価点4:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が1mm未満
評価点3:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が2mm未満
評価点2:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が4mm未満
評価点1:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が10mm未満
評価点0:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が10mm以上
ヒートサイクル試験10サイクル(60μm×1回塗り)を行った後の評価点が3以上であれば、従来の屋外構造物用のエポキシ樹脂塗料組成物と同等以上の耐剥離性を備える品質である。
JIS K 5551:2008の7.16(サイクル腐食性)に準拠して試験片を作製した。但し、乾燥膜厚60μm×2回塗りにより、試験片の乾燥膜厚は120μmであった。そして、作製した試験片に対して、JIS K 5600−7−9:2006の7.5(切り込みきずの付け方)に準じて、素地に達する交差状の切り込みきずを付け、JIS K 5600−7−9「サイクル腐食試験方法」に規定されるサイクル腐食性試験(サイクルDにて480サイクル)に供した。
試験後の一般部(カット部以外の部分)及びカット部について、下記の基準により目視評価した。
<一般部>
○:錆の発生が認められない。
×:錆の発生が認められる。
<カット部>
◎:切り込みきずからの塗膜変状幅が2.0mm未満
○:切り込みきずからの塗膜変状幅が2.0〜4.0mm
×:切り込みきずからの塗膜変状幅が4.0mmを超える。
・実施例1〜7の結果より、線膨張係数α1が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、厚さ200μmの水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayである塗膜は、耐剥離性と防食性の両立が達成できることが分かる。
・実施例1、2、4の比較により、ガラスフレーク(RCF160)の配合量を多くするとそれに連れて、線膨張係数α1が小さくなり、ヒートサイクル剥離試験10サイクル、30サイクルの結果が良くなり、耐剥離性が向上する。また、水蒸気透過度も小さくなり、防食性も良くなる。
・実施例2、3の比較により、ガラスフレークとタルクの配合比率が同じ時、配合比率が高い(実施例3)と、線膨張係数が小さくなり、ヒートサイクル剥離試験10サイクル、30サイクルの結果が良くなり、耐剥離性が向上する。また、水蒸気透過度も小さくなり、防食性も良くなる。
・実施例2、5の比較により、よりサイズの大きいガラスフレークに変えると、線膨張係数が小さくなり、ヒートサイクル剥離試験10サイクル、30サイクルの結果が良くなり、耐剥離性が向上する。また、水蒸気透過度も小さくなり、防食性も良くなる。
・実施例2、6、7の比較により、ガラスフレーク(RCF160)を入れた場合には、変性樹脂ニカノールを5質量部、10質量部として配合量を多くすると、線膨張係数が若干ではあるが、樹脂が柔らかくなるため小さくなり、水蒸気透過度は予想外の結果で、0質量部より5質量部の方が小さく、一方で10質量部になると、また、高くなり、最適値が見られる。
・比較例1、2の比較により、アスペクト比の小さいタルクでは、変性樹脂を入れても、線膨張係数を小さくする効果は見られず、また、水蒸気透過度も、これまでの知見通り、むしろ悪くなり、全体に防食性に劣る。変性樹脂を入れると、付着性は良くなる傾向があるが、防食性は悪くなる傾向がある。
・実施例1と比較例3の比較により、ガラスフレーク(RCF160)の添加量が少なすぎると、線膨張係数が大きくなり、耐剥離性が低下する上、水蒸気透過度も、良くないので、防食性に劣る。
・実施例2と比較例4の比較により、ガラスフレークのサイズを小さくすると、線膨張係数が大きくなり、耐剥離性が低下する上、水蒸気透過度も、良くないので、防食性に劣る。
以上の結果より、以下のことが言える。
・従来の変性エポキシ塗料では、付着性を良くしようとして、防食性を犠牲にして、変性樹脂を添加するが、それ程の効果はなく、線膨張係数を小さくすることの方が耐剥離性を良くできる。
・耐剥離性を良くする(線膨張係数を小さくする)には大きな鱗片状顔料を沢山入れることが効果的である。
・タルクの場合、変性樹脂ニカノールを入れた方が、耐剥離性は若干向上するが、防食性が低下している。
・大きな鱗片状顔料の場合、変性樹脂ニカノールを適量入れた方が、相乗効果で水蒸気透過度が低下し、防食性が向上する上、耐剥離性も良好である。
・従来の変性エポキシ塗料では、防食性を犠牲にして変性樹脂を入れ、付着性を確保していたが、大きな鱗片状顔料を使う事によって、防食性と耐剥離性の双方を良くすることができ、また、変性樹脂を若干加えることが相乗効果で、水蒸気透過度を下げ、防食性を良くできる。
Claims (9)
- 樹脂成分及び顔料を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物中に含まれる不揮発分のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、
前記塗料組成物から厚さ200μmの塗膜を形成させた場合の該塗膜の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayであることを特徴とする塗料組成物。 - 前記顔料が鱗片状顔料を含み、該鱗片状顔料の平均粒径が5〜600μmであることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
- 前記不揮発分中における鱗片状顔料の含有量が15〜60質量%であることを特徴とする請求項2に記載の塗料組成物。
- 前記樹脂成分の一部が変性樹脂であり、前記不揮発分中における変性樹脂の含有量が0.1〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
- 前記変性樹脂が液状変性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の塗料組成物。
- 前記塗料組成物が、構造物の塗装に使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
- 前記構造物が、鋼構造物であることを特徴とする請求項6に記載の塗料組成物。
- 樹脂及び顔料を含む塗膜であって、該塗膜のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、該塗膜の厚さが200μmである場合の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayであることを特徴とする塗膜。
- 被塗装物を、樹脂成分及び顔料を含む塗料組成物で塗装し、ガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が2.5×10−5/K〜5.4×10−5/Kであり、厚さが200μmである場合の水蒸気透過度が0.1〜1.4g/m2・dayである塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする塗装方法。
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